【解決手段】生産管理システム10は、複数の製造ラインL1〜L4について稼働状況に関する情報である稼働状況情報をそれぞれ取得し、報知すべき対象である報知対象LD、PD1、PD2を決定する。生産管理システム10は、取得された各稼働状況情報と報知対象とに基づいて報知情報を生成し、決定された報知対象LD、PD1、PD2に対して報知情報を送信する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、少なくとも、製造ラインの稼働状況に応じた対応の効率化および製造ラインの稼働情報に関する情報の効率的な提供のいずれか一方を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は以下の種々の態様を採る。
【0008】
第1の態様は、製造ラインの稼働状況を管理するための生産管理システムを提供する。第1の態様に係る生産管理システムは、製造ラインの稼働状況を管理するための生産管理システムであって、複数の前記製造ラインについて、前記製造ラインの稼働状況に関する情報である稼働状況情報をそれぞれ取得する稼働状況情報取得部と、報知すべき対象である報知対象を決定する報知対象決定部と、取得された各前記稼働状況情報と前記報知対象とに基づいて報知情報を生成する報知情報生成部と、決定された前記報知対象に対して前記報知情報を送信する送信部とを備える。
【0009】
第1の態様に係る生産管理システムによれば、少なくとも、製造ラインの稼働状況に応じた対応の効率化および製造ラインの稼働情報に関する情報の効率的な提供のいずれか一方を実現することができる。
【0010】
第1の態様に係る生産管理システムにおいて、前記報知情報生成部は、前記報知情報と前記報知対象とを予め対応付けた対応情報に基づいて、前記報知情報を生成しても良い。この場合には、報知対象者に応じた稼働状況情報を提供することができ、製造ラインの稼働情報に関する情報を効率的に提供することができる。
【0011】
第1の態様に係る生産管理システムはさらに、前記報知情報を受け取り、表示する表示装置を備えても良い。この場合には、表示装置に報知情報を表示することができる。
【0012】
第1の態様に係る生産管理システムにおいて、前記報知情報生成部は、前記各稼働状況情報の少なくとも一部について予め定められた優先順位に基づいて前記報知情報を生成し、前記表示装置は、前記優先順位が判別可能であるように前記稼働状況情報を表示しても良い。この場合には、優先順位に応じて稼働状況情報を提供し、優先順位に応じて稼働状況情報を表示することができるので、稼働状況情報の優先順位を容易に把握することができる。
【0013】
第1の態様に係る生産管理システムにおいて、前記報知情報は、製造ラインにおいて発生した、または、発生するであろう要対応状況に関する情報を含み、前記優先順位は、対応すべき前記要対応状況の順序であっても良い。この場合には、要対応状況の順序に応じた対応を促すことができる。
【0014】
第1の態様に係る生産管理システムはさらに、前記報知情報を受信し、報知するための端末装置を備え、前記端末装置は、受信した前記報知情報を表示しても良い。この場合には、端末装置に報知情報を表示することができる。
【0015】
第1の態様に係る生産管理システムにおいて、前記報知情報生成部は、前記各稼働状況情報の少なくとも一部について予め定められた優先順位に基づいて前記報知情報を生成し、前記端末装置は、前記報知情報に基づいて、前記優先順位が判別可能であるように前記稼働状況情報を表示しても良い。この場合には、稼働状況情報の優先順位を容易に把握することができる。
【0016】
第1の態様に係る生産管理システムにおいて、前記報知情報は、製造ラインにおいて発生した、または、発生するであろう要対応状況に関する情報を含み、前記優先順位は、対応すべき前記要対応状況の順序であっても良い。この場合には、要対応状況の順序に応じた対応を促すことができる。
【0017】
第1の態様に係る生産管理システムはさらに、前記端末装置の位置を特定するための位置特定部を備え、前記報知対象決定部はさらに、特定された前記端末情報の位置に基づいて、前記報知情報の報知対象を決定しても良い。この場合には、報知対象の位置に応じた報知情報を提供することが可能となり、報知情報に応じた対応を迅速化させることができる。
【0018】
第1の態様に係る生産管理システムにおいて、前記報知先決定部は、前記特定された端末情報の位置、前記要対応状況の順序および前記製造ラインにおける前記要対応状況の発生または発生するであろう場所に基づいて、前記報知対象を決定しても良い。この場合には、要対応状況に応じた対応を迅速化させることができる。
【0019】
第1の態様に係る生産管理システムはさらに、前記製造ラインに配置され、前記製造ラインの稼働状況に関する検出信号を出力する複数の検出部から入力された前記検出信号に基づいて、前記製造ラインの稼働状況に関する情報を生成する稼働状況情報生成部を備え、前記稼働状況情報取得部は、前記稼働状況情報生成部によって生成された前記稼働状況情報を取得しても良い。この場合には、生産管理システムのみによって稼働状況情報の生成および報知を実現することができる。
【0020】
第1の態様に係る生産管理システムにおいて、前記稼働状況情報取得部は、前記製造ラインに配置され、前記稼働状況情報を生成する複数の生産設備によって生成された前記稼働状況情報を取得しても良い。この場合には、既存の設備を利用して稼働状況情報の報知を実現することができる。
【0021】
第1の態様に係る生産管理システムは、この他に、生産管理方法、生産管理プログラムとして実現され得ると共に、生産管理プログラムが記録されたコンピューター読み取り可能な媒体として実現され得る。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る生産管理システムおよび生産管理方法について、図面を参照しつつ、実施形態に基づいて説明する。
図1は第1の実施形態に係る生産管理システムおよび製造ラインを示す概略構成図である。なお、
図1に示す生産管理システムおよび製造ラインは他の実施形態においても共通して用いられる。
【0024】
図1において、生産管理システム10は、第1の製造ラインL1、第2の製造ラインL2、第3の製造ラインL3および第4の製造ラインL4の稼働状況を管理する。生産管理システム10は、大型表示装置LDおよび端末装置PD1、PD2に対して稼働状況に関する情報を提供する。なお、生産管理システム10は、狭義には生産管理を行うコンピュータ(計算機)を意味するが、本実施形態の機能を実現する観点から、大型表示装置LDおよび端末装置PD1、PD2を含めて生産管理システム10と呼ぶことがある。
【0025】
各製造ラインL1〜L4は、加工対象品(加工部品、ワーク)を搬送するための搬送機構、たとえば、ベルトコンベア、軌道上を移動する搬送機が備えられており、搬送機溝上には種々の生産設備が配置されている。各生産設備は、たとえば、金属加工機、溶接機、樹脂成形機、塗装機、熱間鍛造機、完成品回収機、加工部品供給機といった設備である。これら生産設備あるいは搬送機構には加工部品の到着あるいは通過を検出するための光電センサ、加工部品の寸法を測る寸法センサが備えられている。加工部品を切削加工する切削金属加工機には加工部品を加工するための刃具の使用回数をカウントするカウンタが備えられ、完成品回収機には完成品の排出個数をカウントするためのエリアセンサ、あるいは、完成品を搬送するハンド機構の開閉回数をカウントするカウンタ、ハンド機構の開動作間隔を計測するサイクル計測器が備えられている。この他にも、生産設備に応じて、加工部品の温度を検出する温度センサ、樹脂の吐出圧力または鍛造圧力を検出する圧力センサ、加工後の加工部品の厚さを検出する厚さセンサ等が備えられる。
【0026】
図1の例において、第1の製造ラインL1には、第1の生産設備E11、第2の生産設備E21および第3の生産設備E31が配置されている。第2の製造ラインL2には、第1の生産設備E12、第2の生産設備E22および第3の生産設備E23が配置されている。第3の製造ラインL3には、第1の生産設備E13、第2の生産設備E23および第3の生産設備E33が配置されている。第4の製造ラインL4には、第1の生産設備E14、第2の生産設備E24および第3の生産設備E34が配置されている。
【0027】
本実施形態においては、各生産設備には、各種センサ(検出器)によって検出された検出信号を無線にて送信し、生産管理システム10からの送信信号を無線にて受信するための無線通信装置WCが備えられている。各生産設備は、検出器によって検出された検出信号が入力されると予め定められた演算処理を実行して稼働状況情報を生成するシーケンサが備えられていても良い。なお、シーケンサが備えられている場合には、一般的に、各生産設備には個別のアンドン(表示器)が備えられており、個別のアンドンは、シーケンサによる演算処理、あるいは、作業員による異常入力に応じて、色表示点灯する。さらに、この場合には、各生産設備において、個別のアンドンに入力される表示制御信号を稼働状況情報として取得する信号取得器を配置し、無線通信装置WCを介して信号取得器によって取得された稼働状況情報が生産管理システム10に送信されても良い。
【0028】
大型表示装置LDは、たとえば、従来のアンドンに代えて、工場内に一基備えられ、全作業者に対して稼働状況情報を提供する表示器であり、無線通信または有線通信によって、生産管理システム10と通信を行う。端末装置PD1、PD2は、作業者の内、たとえば、ライン責任者、管理者および工場長といった製造ラインの管理および生産の管理を行う作業者が個別に携帯する、表示装置および入力装置を備える情報機器であり、生産管理システム10とは無線通信によって通信を行う。
【0029】
図2を参照して生産管理システム10の機能構成について説明する。
図2は第1の実施形態に係る生産管理システムの機能構成を示すブロック図である。生産管理システム10は、バス16を介して相互に通信可能に接続されている。中央演算処理装置(CPU)11、記憶装置12、送受信部13、表示装置14および入力装置15を備えている。中央演算処理装置(CPU)11、記憶装置12および送受信部13は互いに双方向に通信可能である。記憶装置12は、たとえば、RAM、ROM、ハードディスクドライブ(HDD)である。HDD(またはROM)には本実施形態において提供される機能を実現するための各種プログラムが格納されており、HDDから読み出された各種プログラムはRAM上に展開されて、CPU11によって実行される。記憶装置12はさらに、生産管理システム10が生成した報知情報T1、報知情報と報知対象との対応関係を示す報知情報対応テーブルT2、稼働状況情報の少なくとも一部についての優先順位を格納する優先順位テーブルT3、および設備責任者(作業者)の現在位置に関する位置情報を格納する位置情報テーブルT4を格納している。CPU11は、各種プログラムを実行することによって、稼働状況情報取得部111、稼働状況情報生成部112、報知情報生成部113、報知対象決定部114、位置特定部115として機能する。なお、本明細書において、設備責任者とは、製造ラインの異常、保守に関して責任を負う者を意味する。
【0030】
稼働状況情報取得部111は、製造ラインL1〜L4の稼働状況に関する稼働状況情報を取得する。本明細書において、稼働状況情報とは、製造ラインにおいて発生した、または、発生するであろう要対応状況に関する情報、並びに製造ラインにおける製造個数、停止時間および稼働時間といった生産および生産管理に関する情報の双方を含む。稼働状況情報生成部112は、製造ラインL1〜L4の各生産設備から取得した検出信号に基づいて製造ラインL1〜L4の稼働状況に関する情報を生成する。より具体的には、各生産設備が備える検出部によって検出された製造ラインL1〜L4の稼働状況を示す検出信号を取得し、検出信号に基づいて稼働状況、たとえば、異常発生、要刃具交換等を判断し、異常発生、要刃具交換を示す稼働状況情報を生成する。なお、稼働状況情報は、製造ラインにおいて発生した、または、発生するであろう要対応状況に関する情報を含むと言うこともできる。以下に、稼働状況情報の生成についてさらに詳述する。
【0031】
切削金属加工機から出力される刃具の回転起動回数(使用回数)のカウント数を検出信号として取得する場合には、取得した使用回数が予め定められた交換しきい値を超えたか否かを判断し、取得した使用回数が交換しきい値を超えている場合には、要刃具交換を示す稼働状況情報が生成される。各生産設備あるいは搬送機構に備えられている光電センサから、加工部品の通過を示す通過信号が予め定められた待機時間を超えても通過検出信号が入力されない場合には、部品欠品または搬送機構異常を示す稼働状況情報が生成される。また、各生産設備において加工部品を前後させる制御信号が出力された後、予め定められた待機時間を超えても前進端到着確認センサおよび更新端到着確認センサから検出信号が入力されない場合には、生産設備の異常を示す稼働状況情報が生成される。なお、各生産設備における制御信号は、後述するようにシーケンサから出力される。
【0032】
生産設備に備えられている寸法センサから入力された寸法測定値が既定値を超える、あるいは既定値に満たない場合には、加工部品の寸法異常を示す稼働状況情報が生成される。完成品回収機が備えるエリアセンサ、あるいは、ハンド機構の開閉回数をカウントするカウンタから取得した個数信号が示す総個数、加工完成品保管エリアにおいて加工完成品が一杯となる、予め定められた加工完成品上限しきい値を超えたか否かを判断し、取得した総個数が加工完成品上限しきい値を超えた場合には、完成品一杯を示す稼働状況情報が生成される。完成品回収機が備えるハンド機構の開動作間隔を計測するサイクル計測器から入力された開動作間隔が所定時間を超えた場合には、加工品の製造サイクルの異常を示す稼働状況情報が生成される。この他にも、温度センサからの検出温度に応じた温度異常を示す稼働状況情報、圧力センサからの検出圧力に応じた圧力異常を示す稼働状況情報、厚さセンサからの検出厚さに応じた厚さ異常を示す稼働状況情報が生成され得る。
【0033】
稼働状況情報取得部111は、稼働状況情報生成部112によって生成された上記の稼働状況情報を取得しても良く、あるいは、各生産設備におけるシーケンサによって生成された稼働状況情報を取得しても良い。
【0034】
報知情報生成部113は、取得された稼働状況情報と報知対象とに基づいて報知対象への報知に用いられる報知情報T1を生成し、記憶装置12に格納する。なお、本明細書において報知情報とは、稼働状況情報自体、および稼働状況情報に基づき算出された情報、たとえば、進捗率等を含み得る。
図3は第1の実施形態において用いられる報知情報の一例を示す説明図である。
図4は第1の実施形態において用いられる報知対象と報知対象に対して報知すべき報知情報が含む稼働状況情報とを対応付けた報知情報対応テーブルの一例を示す説明図である。報知情報対応テーブルT2には、出力先が大型表示装置(パネル)であるか端末装置であるかに応じて、表示されるべき稼働状況情報が異なっており、更には、工場外(管理部署)と工場内(現場)においても表示されるべき稼働状況情報が異なっている。
【0035】
報知情報生成部113は、報知情報対応テーブルT2を参照して、決定された報知対象に対応する稼働状況情報を含む報知情報T1を生成する。報知情報T1は、取得した稼働状況情報と各製造ラインとを対応付けた情報であり、
図3の例では、ライン責任者を報知対象とする場合における、製造ラインの稼働状況(稼働、刃具交換、異常発生)、対応を要する要対応設備、製造ライン停止からの経過時間、総運転時間、総異常時間(総停止時間)および計画生産数に対する実生産数の割合を示す進捗状況が例示されている。稼働状況情報としては、この他に、報知対象に応じて、たとえば、異常内容の詳細、ライン担当者(設備責任者)、設備、ライン、工場単位での進捗状況、異常内容が含まれていても良い。一般的に、報知対象が工場外である場合には、進捗状況に関する詳細な稼働状況情報が含まれ、報知対象が工場内である場合には、ラインの稼働状況に関する詳細な稼働状況情報が含まれる傾向にある。
【0036】
報知情報生成部113は、さらに、同一グループの報知対象に対して、報知対象の位置情報に基づいて異なる報知情報を生成しても良い。すなわち、設備責任者が報知対象である場合に、設備責任者と、異常を示す生産設備との位置関係に応じて、優先対応すべき稼働状況情報を決定し、異常を示す生産設備に近い設備責任者に対しては、当該生産設備が配置されている製造ラインの情報のみを含む、あるいは、当該生産設備における稼働状況情報をハイライトさせる報知情報を生成し、他の設備責任者に対しては、全ての製造ラインの情報を含む、あるいは、当該生産設備における稼働状況情報を他の生産設備における稼働状況情報と同様に表示させる報知情報が生成されても良い。端末装置PD1、PD2における具体的な表示例については後述する。
【0037】
報知情報生成部113は、報知情報を生成するに際して、優先順位テーブルT3を参照して、取得された稼働状況情報の少なくとも一部について優先順位を決定し、決定した優先順位に基づいて報知情報を生成しても良い。
図5は第1の実施形態において用いられる優先順位テーブルの一例である。
図5の例では、工場内を意味する現場と、工場外を意味する管理とに応じて稼働状況情報の項目に応じて優先順位が規定されている。優先順位テーブルT3において、1は優先順位が最も高く(優先度が最高)、5は優先順位が最も低い(優先度が最低)ことを意味する。報知情報生成部113は、優先順位テーブルT3に応じて、たとえば、報知情報が各稼働状況情報をリスト形式に表示させる情報である場合には、第1行目または第1列目に優先順位の最も高い稼働状況情報を配置し、第5行目または第5列目に優先順位の最も低い稼働状況情報を配置した報知情報を生成する。あるいは、優先順位の最も高い稼働状況情報を点滅または点灯させし優先順位の最も低い稼働状況情報についてはグレーアウトさせる報知情報が生成されても良い。報知情報は、少なくとも、優先順位が高−低と変化するにつれて、視覚効果が低下するように生成されれば良い。
【0038】
報知対象決定部114は、報知情報生成部113によって生成された報知情報を報知(配信)すべき対象を決定する。報知対象決定部114は、たとえば、予め設定されたタイミングにて報知対象を決定し、決定した報知対象に適当な報知情報を報知情報生成部113に生成させる。報知対象決定部114はさらに、取得された稼働状況情報に生産設備または製造ラインの異常を示す情報が含まれている場合には、端末装置を報知対象として決定しても良い。また、報知対象決定部114は、端末装置または大型表示装置から報知情報の送信要求を受けた場合には、送信要求を送信した端末装置または大型表示装置を報知対象に決定する。
【0039】
さらに、報知対象決定部114は、当該稼働状況情報または当該稼働状況情報を生成するために用いられた検出信号を送信してきた生産設備の近くに位置する端末装置を報知対象に決定しても良い。具体的には、位置特定部115によって生成された位置情報テーブルT4を用いることによって、報知対象となる端末装置を特定することができる。この場合には、製造ラインの異常に対して迅速に対応可能な端末装置(設備責任者)を報知対象として決定することが可能となり、上述したように、報知情報生成部113に対して、異常を示す生産設備に近い設備責任者に対する最適な報知情報の生成を促すことができる。
【0040】
位置特定部115は、製造ラインL1〜L4における端末装置PD1、PD2(所有者)の位置を特定する。端末装置PD1、PD2の位置の特定は、後述する無線中継器を用いた位置特定手法によって行うことができる。この位置特定手法(無線LAN位置情報技術)は、無線中継器に対する端末装置PD1、PD2からの電波強度の強弱、複数の無線中継器間における電波の到達時間差等を用いる手法として知られている。
図6は第1の実施形態において用いられる位置情報テーブルの一例を示す説明図である。
図6の位置情報テーブルT4では、設備責任者と、設備責任者の位置とが対応付けられている。設備責任者の位置は、製造ラインと生産設備とによって特定されているので、生産設備における不具合に関して、近隣の設備責任者を容易に特定し、適切な報知情報を設備責任者(が有する端末装置)に対して送信することができる。
【0041】
送受信部13は、無線通信を介して、製造ラインL1〜L4上における各生産設備から稼働状況に関わる情報を受信し、大型表示装置LDおよび端末装置PD1、PD2に対して稼働状況情報を送信し、あるいは、大型表示装置LDおよび端末装置PD1、PD2からの入力を受信する。送受信部13が無線通信機能を有する入出力I/Fである場合には、送受信部13は工場内に接地されている図示しない無線中継器(アクセスポイント)を介して、製造ラインL1〜L4の各生産設備からの無線電波を受信しても良く、あるいは、送受信部13自身が製造ラインL1〜L4の各生産設備からの無線電波を受信可能な場所に配置されていても良い。また、送受信部13は、無線中継器に対して有線接続されていても良い。いずれにしても、各生産設備に対して有線接続することなく稼働状況に関わる情報を取得できれば良い。このようにすることによって、各生産設備に対して無線通信装置WCを装着するという比較的簡単な変更だけで、本実施形態に係る生産管理システム10を既存の工場に導入することができる。無線通信は、たとえば、IEEE802.11規格に準拠した無線ローカルネットワーク(LAN)を通じた無線接続によって実現され得る。
【0042】
表示装置14は、生産管理システム10を操作する際に処理内容の表示に用いられるディスプレイである。入力装置15は、生産管理システム10に対して入力を行うために用いられる装置であり、たとえば、キーボード、マウスであり、更には、表示装置14の画面上に備えられる感圧式のタッチパネルであっても良い。
【0043】
図7を参照して生産設備の構成について説明する。
図7は第1の実施形態における一の生産設備に管理システムの機能構成を示すブロック図である。
図7においては、第1の製造ラインL1に備えられている第1の生産設備E11を例にとって説明するが、他の各生産設備においても同様の構成を備えている。
【0044】
第1の生産設備E11は、シーケンサ(PLC)E110、シーケンサE110に対してそれぞれ別々に通信可能に接続されている検出部E111、送受信部E112および表示部E113を備えている。検出部E111は、製造ラインの稼働状況を検出するためのセンサであり、検出した検出信号をシーケンサE110に出力する。なお、検出部E111から出力される検出信号は、シーケンサE110を介することなく、送受信部E112を介して直接、生産管理システム10に提供(送信)されても良い。
【0045】
シーケンサE110は、検出部E111からの検出信号に応じて、生産設備E11の機能に合わせた専用プログラムにより所定の制御信号を出力する。第1の実施形態においては、シーケンサE110は、稼働状況情報を制御信号として出力し、表示部E113の表示態様を制御する。すなわち、シーケンサE110は、異常、刃具交換、稼働といった稼働状況を表示部E113を介して、視覚的に報知する。
【0046】
送受信部E112は、シーケンサE110から表示部E113に対して出力される稼働状況情報を無線通信にて生産管理システム10に対して送信する。送受信部E112は、たとえば、第1の生産設備E11に予め備えられ、シーケンサE110からの制御信号によって稼働状況情報を無線送信してもよく、あるいは、後付け(アドオン)にて、シーケンサE110と表示部E113とを接続する信号線に割り込み接続されても良い。なお、送受信部E112は、他の生産設備からの信号を無線接続を介して受信しても良く、また、生産管理システム10からシーケンサE110に対する制御信号を無線接続を介して受信しても良い。
【0047】
生産管理システム10の動作:
図8〜
図10を参照して、第1の実施形態に係る生産管理システム10の動作について説明する。
図8は第1の実施形態に係る生産管理システムにおける報知制御において実行される処理ルーチンである。
図9は第1の実施形態に係る生産管理システムにおける報知制御において実行される変形例としての処理ルーチンである。
図10は対応すべき生産設備の位置情報と報知対象としての設備責任者との対応関係を示す説明図である。
【0048】
図8に示す処理ルーチンは、生産設備からの検出信号の入力をトリガとして、所定の時間間隔毎に、あるいは、端末装置PD1、PD2または大型表示装置LDからの報知情報送信要求を受けてCPU110によって実行される。より具体的には、CPU110がプログラムを実行し、稼働状況情報取得部111、稼働状況情報生成部112、報知情報生成部113、報知対象決定部114、位置特定部115として機能することによって実行される。
【0049】
CPU110は、送受信部13を介して、生産設備から無線通信によって検出信号を取得し(ステップS100)、稼働状況情報生成部112として、取得した検出信号を用いて稼働状況情報を生成する(ステップS102)。検出信号に応じて生成される稼働状況情報については説明済みであるから詳細な説明は省略する。CPU110は、稼働状況情報取得部111として、稼働状況情報生成部112によって生成された稼働状況情報を取得し(ステップS104)、報知対象決定部114として報知対象を決定する(ステップS106)。報知対象の決定は、既述の通りであり、予め定められた報知対象群の中から、報知対象を順次変更し、決定することによって実行されても良く、あるいは、取得された稼働状況情報に応じて報知情報の送信が必要となる報知対象を個別に決定することによって実行されても良い。さらには、大型表示装置LDまたは端末装置PD1、PD2から報知情報の送信要求を受けた場合には、送信要求の送信元である大型表示装置LDまたは端末装置PD1、PD2を報知対象に決定しても良い。すなわち、報知情報の閲覧者からの要求に応じて、任意のタイミングにて報知情報が提供され得る。
【0050】
CPU110は、報知情報生成部113として、報知情報対応テーブルT2を参照して、決定された報知対象に応じた稼働状況情報を含む報知情報を生成する(ステップS108)。CPU110は、さらに、優先順位テーブルT3を用いて稼働状況情報の表示順を変更して報知情報を生成して良く、位置情報テーブルT4を用いて
図10に示す対応すべき生産設備の位置情報と報知対象としての設備責任者との対応関係を確立し、報知対象毎に個別の報知情報を生成しても良い。
【0051】
CPU110は、生成した報知情報を決定した報知対象に送信して本処理ルーチンを終了する。
【0052】
図8の処理ルーチンでは、生産管理システム10が、生産設備から検出信号を取得し、稼働状況情報生成する場合について説明したが、
図9に示すように、生産設備において生成された稼働状況情報を取得し、取得した稼働状況情報を用いて報知対象を決定し、報知情報を生成しても良い。すなわち、ステップS100およびS102を省略してステップS104〜S110が実行されても良い。
【0053】
大型表示装置および端末装置における報知情報の表示態様:
図11〜14を参照して、大型表示装置LDおよび端末装置PD1、PD2における報知情報の表示態様について説明する。
図11は第1の端末装置における報知情報に基づく表示画面の一例を示す説明図である。
図12は第2の端末装置における報知情報に基づく表示画面の一例を示す説明図である。
図13は工場内に配置されている大型表示装置における報知情報に基づく表示画面の一例を示す説明図である。
図14は工場外に配置されている大型表示装置における報知情報に基づく表示画面の一例を示す説明図である。
【0054】
図11および
図12は、第1の端末装置PDの携帯者である設備責任者は第2の製造ラインL2の近傍に位置し、第2の端末装置PD2の携帯者である設備責任者は第4の製造ラインL4の近傍に位置している場合における第1および第2の端末装置PD1、PD2の表示画面を示している。第1の端末装置および第2の端末装置PD1、PD2の表示画面においては、各製造ラインL1〜L4について、稼働状況情報として、各製造ラインL1〜L4の稼働状況が表示されると共に、各製造ラインの運転時間および異常時間が表示され、製造ラインの模式図が表示されている。製造ラインにおける稼働状況として、第1および第3のラインL1、L3は正常に稼働しており、第2の製造ラインL2においては刃具交換が必要であり、第4の製造ラインL4においては異常が発生している。
【0055】
第1の端末装置PD1の表示画面においては、第2の製造ラインL2において刃具交換が必要な第2の生産設備E22について刃具交換が必要な表示と共に表示が点滅しているが、第4の製造ラインL4において異常が発生している第1の生産設備E14については異常を示す表示はなされているものの点滅はしていない。したがって、第1の端末装置PD1の携帯者である設備責任者は、向かうべき製造ラインは第2の製造ラインL2であり、刃具交換を要する生産設備は第2の生産設備E22であることを瞬時に把握することができる。
【0056】
一方、第2の端末装置PD2の表示画面においては、第4の製造ラインL4において異常が発生している第1の生産設備E14について異常が発生している表示と共に表示が点滅しているが、第2の製造ラインL2において刃具交換を要する第2の生産設備E22については刃具交換を要する表示はなされているものの点滅はしていない。したがって、第2の端末装置PD2の携帯者である設備責任者は、向かうべき製造ラインは第4の製造ラインL4であり、異常が発生している生産設備は第1の生産設備E14であることを瞬時に把握することができる。
【0057】
なお、優先順位を考慮して報知情報が生成される場合には、個々の要対応生産設備と設備責任者との物理的な距離のみならず、異常発生中の生産設備に対する設備責任者との物理的な距離が考慮される。たとえば、上記の例において、第2の端末装置PD2を携帯する設備責任者が第2の製造ラインL2における第2の生産設備E22の近傍に位置していたとしても、他の設備責任者と第4の製造ラインL4における第1の生産設備E11との距離が遠い場合には、第2の端末装置PD2においては
図12に示す表示画面を生成させる報知情報が送信される。このように、優先順位、設備責任者および要対応生産設備とを考慮することによって、必要な対応を迅速に実行することができる。
【0058】
図13は工場内における大型表示装置LDにおける表示画面であり、製造ライン、稼働状況、要対応設備、要対応事象発生からの経過時間、運転時間および異常時間が要対応順序に従って上段から並んでいる。
図13の例では、刃具交換の事象発生から10分、異常発生の事象発生から3分が経過しており、単に経過時間のみを考慮すれば、刃具交換が優先されるべきであるが、
図5に示す優先順位テーブルT3が考慮された結果、稼働状況情報のうち、異常が経過時間および刃具交換よりも優先されている報知情報が生成され、当該報知情報に従い大型表示装置LDにおいて表示されている。なお、
図13に示す表示態様は、
図11および
図12に示す表示態様に代えて、端末装置PD1、PD2における表示態様として用いられても良く、
図11および
図12に示す表示態様のうち要対応生産設備の点滅表示を除く表示態様が大型表示装置の表示態様として用いられても良い。
【0059】
図14は工場外における大型表示装置LDにおける表示画面であり、製造ライン、進捗状況、在庫量、要対応事象発生からの経過時間、運転時間および稼働状況が進捗状況順に上段から並んでいる。すなわち、
図5に示す優先順位テーブルT3が考慮された結果、稼働状況情報のうち、進捗状況が優先されている報知情報が生成され、当該報知情報に従い大型表示装置LDにおいて表示されている。工場内における製造ラインが並ぶ現場以外の工場外では、より管理項目に関する稼働状況情報が重視された報知情報が生成される。
【0060】
以上説明した第1の実施形態に係る生産管理システム10によれば、報知情報を提供すべき報知対象に合わせて報知情報を生成し、送信するので、必要とされる稼働状況情報を含む報知情報を提供することができるので、情報伝達の効率化を図ることができ、また、製造ラインにおける稼働状況に応じた対応を効率良く促すことができる。
【0061】
第1の実施形態に係る生産管理システム10によれば、稼働状況情報の優先順位に応じて報知情報が生成されるので、閲覧者に対して、必要な稼働状況情報を適切に報知することができる。また、優先順位を要対応事象と関連付けて決定することによって、迅速な対応を要する事象を優先して報知し、要対応事象を迅速に解消させることができる。
【0062】
第1の実施形態に係る生産管理システム10によれば、端末装置PD1、PD2の位置情報を用いて、報知対象を決定し、報知情報を生成することができるので、製造ラインにおける設備責任者に対してより適切な稼働状況情報を含む報知情報を提供することが可能となり、製造ラインにおける保守・管理の効率化を図ることができる。
【0063】
第1の実施形態に係る生産管理システム10によれば、製造ラインL1〜L4(生産設備)からの稼働状況情報、および稼働状況情報に基づき生成される報知情報を一括管理することができるので、稼働状況情報の統計的解析、原因究明、進捗管理等を容易に行うことができる。
【0064】
・変形例:
(1)上記実施形態では、報知情報の報知手段として表示が用いられているが、表示に代えて、あるいは、表示と共に音声による報知が行われても良い。たとえば、端末装置PD1、PD2において新たな報知情報を受信したタイミングで音声が鳴動するようにしても良い。この場合には、端末装置PD1、PD2を視認することなく、報知情報の到来を知らせることができる。
【0065】
(2)上記実施形態においては、製造ラインL1〜L4にそれぞれ3つの生産設備が配置されているが、1つまたは2つであっても良く、また、4つ以上備えられていても良い。また、製造ラインの数についても、1〜3ラインでも良く、あるいは、5ライン以上であっても良い。
【0066】
(3)大型表示装置LDとして表示ディスプレイを例にとって説明したが、大型表示装置LDとして、あるいは、大型表示装置LDに代えて、パーソナルコンピュータが用いられても良い。この場合には、会議等において稼働状況情報をリアルタイムにて表示させることができる。
【0067】
(4)上記実施形態における、表示画面上における表示態様は一例であり、同一の報知対象群に対しては一律に同様の表示画面を表示させる報知情報が提供されても良く、その表示態様は、リスト形式、グラフ形式、図形式等種々の態様を取り得る。また、同一の報知対象群において、報知対象からの要求に応じて、優先順位を適用した、あるいは、優先順位を適用しない報知情報が提供されるようにしても良い。この場合には、他の報知対象が視認している稼働状況情報を確認することができる。
【0068】
(5)上記実施形態に係る生産管理システムは、製造ラインの稼働状況を管理するための生産管理方法としても実現され得る。生産管理方法は、複数の前記製造ラインについて、前記製造ラインの稼働状況に関する情報である稼働状況情報をそれぞれ取得し、報知すべき対象である報知対象を決定し、取得された各前記稼働状況情報と前記報知対象とに基づいて報知情報を生成し、決定された前記報知対象に対して前記報知情報を送信することを備える。
また、上記実施形態に係る生産管理システムは、製造ラインの稼働状況を管理するための生産管理プログラムとしても実現され得る。生産管理プログラムは、複数の前記製造ラインについて、前記製造ラインの稼働状況に関する情報である稼働状況情報をそれぞれ取得する機能と、報知すべき対象である報知対象を決定する機能と、取得された各前記稼働状況情報と前記報知対象とに基づいて報知情報を生成する機能と、決定された前記報知対象に対して前記報知情報を送信する機能とをコンピュータによって実現させる。
【0069】
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。