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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-182309(P2016-182309A)
(43)【公開日】2016年10月20日
(54)【発明の名称】加熱用容器
(51)【国際特許分類】
   A47J 36/28 20060101AFI20160926BHJP
【FI】
   A47J36/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-65379(P2015-65379)
(22)【出願日】2015年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】598154051
【氏名又は名称】しらたき酒造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161285
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 正彦
(72)【発明者】
【氏名】篠原 博
(72)【発明者】
【氏名】山田 寛
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA50
4B055FA02
4B055FB16
4B055FC17
4B055FD10
(57)【要約】

【課題】
従来の食品を加熱する加熱用の容器では、加熱操作が面倒で、間違え易く、リサイクルにも適さないという問題があった。
【解決手段】
加熱用容器1は、内部に被加熱物6を納める筒部材10と、筒部材10の内面側から所定の隙間を設けて筒部材10の内部に載置され、内部に発熱開始剤32がシール部材A39で封入された第一容器部材30と、筒部材10の下側開口部24の内面に嵌合して、所定の力を加えることで筒部材10の奥方向に移動可能なように取り付けられ、内部に発熱剤42と、開封部材48が前記シール部材A39と対向する側をシール部材B49で封入されている第二容器部材40とを備え、第二容器部材40を筒部材10の奥方向に移動させると、開封部材48が前記シール部材Bと前記シール部材A39の開封を行うことで、発熱剤42が発熱を開始し、被加熱物6を加熱する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に被加熱物を納め、前記被加熱物に開け口がある場合には前記開け口側に上側開口部が密着し、前記被加熱物の側面と所定の間隔を有し、下側開口部を有する筒部材と、
前記筒部材の内面側から所定の隙間を設けて前記筒部材の内部に載置され、内部に発熱開始剤が前記下側開口部の向かう側がシール部材Aで封入され、前記被加熱物の底面に密着する第一容器部材と、
前記筒部材の下側開口部の内面に嵌合して、所定の力を加えることで前記筒部材の奥方向に移動可能なように取り付けられ、内部に発熱剤と、開封部材が前記シール部材Aと対向する側に取り付けられている第二容器部材とを備え、
前記第二容器部材を前記筒部材の奥方向に移動させると、前記開封部材が前記シール部材Aの開封を行うことで、前記発熱剤が発熱を開始し、前記被加熱物を加熱する加熱用容器。
【請求項2】
内部に被加熱物を納め、前記被加熱物に開け口がある場合には前記開け口側に上側開口部が密着し、前記被加熱物の側面と所定の間隔を有し、下側開口部を有する筒部材と、
前記筒部材の内面側から所定の隙間を設けて前記筒部材の内部に載置され、内部に発熱開始剤が前記下側開口部の向かう側がシール部材Aで封入され、前記被加熱物の底面に密着する第一容器部材と、
前記筒部材の下側開口部の内面に嵌合して、所定の力を加えることで前記筒部材の奥方向に移動可能なように取り付けられ、内部に発熱剤と、開封部材が前記シール部材Aと対向する側をシール部材Bで封入されている第二容器部材とを備え、
前記第二容器部材を前記筒部材の奥方向に移動させると、前記開封部材が前記シール部材Bと前記シール部材Aの開封を行うことで、前記発熱剤が発熱を開始し、前記被加熱物を加熱する加熱用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を加熱したい場合に、適当な加熱手段を用意でき無い屋外や非常時等に、簡易な手段で、被加熱物が加熱できる加熱用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、飲料を含めた食品、特に加工食品については、長期保存や運搬を容易にできることから、金属、合成樹脂や紙等に密閉した状態で流通させる場合が多い。所謂、缶詰、缶飲料、アルミラミネート袋入り飲料や食品、ペットボトル飲料、紙パック飲料等(以下、「パック食品」と略して説明する。)である。これらのパック食品に関しては、加工されている段階では内部の食品は加熱されている場合もあるが、販売される段階では、内部の食品は外気温度と同じになっており冬等の寒い季節では内部の食品は冷たいものとなっている。
【0003】
一方、これらのパック食品については、食品自体が温めて食べた方が美味しいとされる場合や、寒い時期では暖かい食品を食べることで暖を取りたい場合や、冷たい食品のままでは飲食することが難しい場合もある。例えば、食品が飲料の場合は、清酒、焼酎、コーヒー、紅茶、スープ等であり、固形物と液体の混在した食品や流動体の食品の場合は、豆腐、おでん、味噌汁、カレールー、ミートスパゲッティ用のルー等である。
【0004】
このような被加熱物を加熱する容器として、特許文献1の発明の名称「熱調整するための装置」や、特許文献2の発明の名称「加熱用容器」が出願されている。また、パック食品のみならず、おしぼりや塗料等についても、温めて使用した方が使用感や使いやすいものもある。そこで以降、前述のパック食品や、おしぼり等の温めた方が良い対象物に関して被加熱物と呼んで説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2012―500756号公報
【特許文献2】特開2014―124415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の発明については、容器と加熱機構(特許文献1では反応槽)が一体となる構造となっている。そのため、必ず内部の食品を加熱する場合でないと、この様な容器に入れた被加熱物を販売することは、被加熱物の製造価格が上昇することになり好ましいものではない。そこで、同一の食品を封入する場合には、加熱機構付と、加熱機構無しの二種類を製造する必要があり、製造面や在庫面で好ましいものとは言えないものとなる。
【0007】
また、特許文献1記載の発明については、容器自体の内部に中央部に張り出すように加熱機構を備えるものとなっている。このため、食品が入れられる場所に制限があり、固形物や流動体の食品の場合には、そのまま、飲食する場合には適さないという問題があった。
【0008】
さらには、特許文献1記載の発明の加熱機構においては、容器開口部(飲み口)を上にした状態で、発熱剤(特許文献1では反応物R1として生石灰)が上側に、発熱剤の発熱という化学反応を開始させる発熱開始剤(特許文献1では反応物R2として水)が下側に配置されている。このため、下側の水が、上側の生石灰に混ざって発熱反応を起こさせることや、発熱を継続させるためには、容器開口部を下向きにして、底側を上にするという容器を逆転させる必要があった。
【0009】
容器を逆転した状態で、生石灰が発熱している状態においては、生石灰に加えられた水は、高温の水蒸気となるが、反応槽の内部で膨張するため、反応槽が内部の膨張に耐えるようにしなければならない。そのため、反応槽は耐圧を有した素材にしなければならないと言う問題があった。
【0010】
発熱を継続させるために、容器を逆転した状態では反応槽は上部にあることになり、この反応槽の外面に接する食品(飲料)との間で熱交換が行われる。しかしながら、上側にある反応槽では、容器内部の食品(飲料)の対流による熱交換の効果は部分的になり、食品(飲料)を十分に加熱させるためには、発熱剤や、水の量を多くしなければならないと言う問題があった。
【0011】
この容器を逆転させる操作は初めて使用する人にとっては判りにくい操作であるため、説明書を読まずに誤って飲み口側のシールを開封すると、容器全体を逆転することができなくなるので、食品の加熱をすることができなくなると言う問題があった。また、所定の時間継続させる必要がある加熱時間の説明を読んでない場合で、早く飲料を飲もうとして加熱の途中で逆転を止めた場合には、加熱が出来ない又は不十分になると言う問題があった。
【0012】
我が国においては、平成7年に、「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」が制定され、容器包装に対してリサイクルが義務づけられている観点からは、特許文献1記載の発明については、熱調整するための装置が金属や樹脂、生石灰等の様々な部材を一体として成形してあり、分離することが難しいので、リサイクルすることに適してないと言う問題があった。
【0013】
特許文献2記載の発明については、使用時以外の容積を減らすことが主目的であるので、紙製の容器については折り紙の様に折り曲げて紙製の加熱用容器を作成し、折り曲げて紙製の容器とした内側に、別に用意した生石灰等の発熱剤と水を投入することで紙製の容器の内部に配置した、飲み物が入ったペットボトルを加熱させるというものであり、加熱させるまでの作業に時間が掛かるという問題があった。また、紙製の加熱用容器の内部に投入する水に関しては、使用者が指定された水の量を計量カップ等で計って入れる必要があり、大変手間が掛かると同時に、使用者が適切な作業をしないと、十分に加熱できないという問題があった。
【0014】
さらには、生石灰を紙製の容器の内部に投入するだけであるので、紙製の容器内部において、ペットボトルに生石灰が局部的に密着している場合がある。この場合には、ペットボトルに対して生石灰が局部的に加熱することになり、ペットボトルの内部にある飲み物の加熱が全体に行き渡らない可能性があるという問題があった。
【0015】
さらには、飲み終わったペットボトルと紙製の容器を分別して捨てる場合には、ペットボトルを容器から取り出す必要がある。この場合に、前述の様にペットボトルに生石灰が局部的に密着していればペットボトルの外周には、生石灰や水と反応した後に生じている消石灰の溶液が付着していることになる。この生石灰や消石灰の溶液は強いアルカリ性であるので、皮膚に付着すると危険であると言う問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0017】
第1発明の加熱用容器は、内部に被加熱物を納め、前記被加熱物に開け口がある場合には前記開け口側に上側開口部が密着し、前記被加熱物の側面と所定の間隔を有し、下側開口部を有する筒部材と、
前記筒部材の内面側から所定の隙間を設けて前記筒部材の内部に載置され、内部に発熱開始剤が前記下側開口部の向かう側がシール部材Aで封入され、前記被加熱物の底面に密着する第一容器部材と、
前記筒部材の下側開口部の内面に嵌合して、所定の力を加えることで前記筒部材の奥方向に移動可能なように取り付けられ、内部に発熱剤と、開封部材が前記シール部材Aと対向する側に取り付けられている第二容器部材とを備え、
前記第二容器部材を前記筒部材の奥方向に移動させると、前記開封部材が前記シール部材Aの開封を行うことで、前記発熱剤が発熱を開始し、
前記被加熱物を加熱する構成となっている。
【0018】
第2発明の加熱用容器は、内部に被加熱物を納め、前記被加熱物に開け口がある場合には前記開け口側に上側開口部が密着し、前記被加熱物の側面と所定の間隔を有し、下側開口部を有する筒部材と、
前記筒部材の内面側から所定の隙間を設けて前記筒部材の内部に載置され、内部に発熱開始剤が前記下側開口部の向かう側がシール部材Aで封入され、前記被加熱物の底面に密着する第一容器部材と、
前記筒部材の下側開口部の内面に嵌合して、所定の力を加えることで前記筒部材の奥方向に移動可能なように取り付けられ、内部に発熱剤と、開封部材が前記シール部材Aと対向する側をシール部材Bで封入されている第二容器部材とを備え、
前記第二容器部材を前記筒部材の奥方向に移動させると、前記開封部材が前記シール部材Bと前記シール部材Aの開封を行うことで、前記発熱剤が発熱を開始し、
前記被加熱物を加熱する構成となっている。
【発明の効果】
【0019】
以上のような技術的手段を有することにより、以下の効果を有する。
【0020】
第1発明によれば、この加熱用容器は内部に被加熱物を納め、前記被加熱物に開け口がある場合には前記開け口側に上側開口部が密着し、前記被加熱物の側面と所定の間隔を有し、下側開口部を有する筒部材と、前記筒部材の内面側から所定の隙間を設けて前記筒部材の内部に載置され、内部に発熱開始剤が前記下側開口部の向かう側がシール部材Aで封入され、前記被加熱物の底面に密着する第一容器部材と、前記筒部材の下側開口部の内面に嵌合して、所定の力を加えることで前記筒部材の奥方向に移動可能なように取り付けられ、内部に発熱剤と、開封部材が前記シール部材Aと対向する側に取り付けられている第二容器部材とを備え、前記第二容器部材を前記筒部材の奥方向に移動させると、前記開封部材が前記シール部材Aの開封を行うことで、前記発熱剤が発熱を開始し、前記被加熱物を加熱する構成となっているので、既存の被加熱物に合わせた加熱用容器を提供できるので、被加熱物を製造する場合に加熱専用とした被加熱物を製造する必要がない。
【0021】
また、加熱用容器の使用性に関しては、被加熱物を納めた加熱用容器の発熱を開始する前に逆転させる必要はないことや、発熱剤と発熱開始剤の混合が容易であるので、被加熱物を加熱するための操作を間違えることもなく容易に加熱の操作が可能となる。
【0022】
加熱用容器の製作面に関しては、発熱開始剤と発熱剤を別に分離して加熱用容器とすることができるので、加熱用容器自体の製作が容易となる。リサイクル性に関しては、使用後にリサイクルするための加熱用容器と被加熱物の分離が可能となる。安全性に関しては、使用後の発熱開始剤が混合した発熱剤が、第一容器部材と第二容器部材の内部に包むことが可能であり、被加熱物の外面に触れにくい構造となっているので安全性が高いものとなる。
【0023】
第2発明によれば、この加熱用容器は内部に被加熱物を納め、前記被加熱物に開け口がある場合には前記開け口側に上側開口部が密着し、前記被加熱物の側面と所定の間隔を有し、下側開口部を有する筒部材と、前記筒部材の内面側から所定の隙間を設けて前記筒部材の内部に載置され、内部に発熱開始剤が前記下側開口部の向かう側がシール部材Aで封入され、前記被加熱物の底面に密着する第一容器部材と、前記筒部材の下側開口部の内面に嵌合して、所定の力を加えることで前記筒部材の奥方向に移動可能なように取り付けられ、内部に発熱剤と、開封部材が前記シール部材Aと対向する側をシール部材Bで封入されている第二容器部材とを備え、前記第二容器部材を前記筒部材の奥方向に移動させると、前記開封部材が前記シール部材Bと前記シール部材Aの開封を行うことで、前記発熱剤が発熱を開始し、前記被加熱物を加熱する構成となっているので、既存の被加熱物に合わせた加熱用容器を提供できるので、被加熱物を製造する場合に加熱専用とした被加熱物を製造する必要がない。
【0024】
また、加熱用容器の使用性に関しては、被加熱物を納めた加熱用容器の発熱を開始する前に逆転させる必要はないことや、発熱剤と発熱開始剤の混合が容易であるので、被加熱物を加熱するための操作を間違えることもなく容易に加熱の操作が可能となる。
【0025】
加熱用容器の製作面に関しては、発熱開始剤と発熱剤を別に分離して加熱用容器とすることができるので、加熱用容器自体の製作が容易となる。リサイクル性に関しては、使用後にリサイクルするための加熱用容器と被加熱物の分離が可能となる。安全性に関しては、使用後の発熱開始剤が混合した発熱剤が、第一容器部材と第二容器部材の内部に包むことが可能であり、被加熱物の外面に触れにくい構造となっているので安全性が高いものとなる。
【0026】
さらには、第二容器部材の開口部はシール部材Bで封入が可能であり、第二容器部材の内部に納められた発熱剤の密閉が可能となり、発熱剤が外気によって変質することがないので、保存性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る実施例1の加熱用容器の分解図である。
図2】本発明に係る実施例1の加熱用容器の組立外観図である。
図3】本発明に係る実施例1の加熱用容器の断面図である。
図4】本発明に係る実施例1の加熱用容器の断面図で加熱状況説明図である。
図5】本発明に係る実施例1の加熱用容器の断面図で加熱状況説明図である。
図6】本発明に係る実施例1の加熱用容器の断面図で加熱状況説明図である。
図7】本発明に係る実施例1の加熱用容器の断面図で加熱状況説明図である。
図8】本発明に係る実施例2の加熱用容器の断面図である。
図9】本発明に係る実施例3の加熱用容器の組立外観図である。
図10】本発明に係る実施例4の加熱用容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明を実施する形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0029】
本発明の加熱用容器について、図1の加熱用容器1の分解図を用いて、加熱用容器1の構成及び組立方法について説明する。
加熱用容器1を大きく分けると、筒部材10と、第一容器部材30と第二容器部材40とで構成されている。
【0030】
筒部材10は、上部筒部材11と、下部筒部材21により分割されており、上部筒部材11の下側開口部12に下部筒部材21の上側開口部22を差し込むことで、一体に結合できるようになっている。上部筒部材11と、下部筒部材21の結合が簡単に外れない様に、上部筒部材11の対向する2ヶ所に長方形の角孔13が開けられており、下部筒部材21の上側開口部22の上端には、上部筒部材11の角孔13に結合する箇所に釣り針のかえし状が付いた抜け止め防止付爪23が設けられている。
【0031】
上部筒部材11は、円筒形の側壁部14を有しており、この側壁部14は上側と下側で2つの異なった径になる様に途中で径を変化させた形状に形成されている。下側開口部12側の内径は、被加熱物6の外周と所定の隙間(5〜10ミリメートル)が得られる様に形成されている。また。上側開口部15は側壁部14の上端で内側に断面「略逆U字」状に折り曲げられ、上側開口部15の所定の範囲においては、二重の側壁部14を有するように形成されている。上側開口部15の折り曲げがない箇所の内径は、被加熱物6の外径とほぼ等しいか、または若干小さい径となっており、上側開口部15の二重になった箇所の内径は、被加熱物6の外径よりも若干小さくなるように、形成されている(図3を参照)。
【0032】
下部筒部材21は、ほぼ同一の径の円筒形の側壁部25を有し、上側開口部22と下側開口部24は、ほぼ同じ径で、上部筒部材11の下側開口部12側の内径と同様の内径に形成されている。下部筒部材21の下側開口部24側端においては、外周側全周にすべり止め用の膨張部26が設けられており、内面側には、所定の幅(5〜15ミリメートル)でわずかに(0.5〜2ミリメートル)爪状に突出させた複数の突起27が設けられている。この突起27は、後述する第二容器部材40に外周面に設けられている溝46に嵌合して第二容器部材40の筒部材10(下部筒部材21)からの脱落を防止する(図3を参照)。上部筒部材11は、被加熱物6の開封口が設けられた上部付近を納め、被加熱物6の大部分を下部筒部材21が納めている。
【0033】
第一容器部材30は、第一容器31と、内部に納められている本実施例においては水の発熱開始剤32と、第一容器31の下側に向いた開口部33を覆うシール部材A39から構成されている。第一容器31は、上面が球面状に膨らんだ天部34と、第一容器21の筒状の側壁部35から等間隔に六方向に一定の長さで突出する脚部36により構成されている。発熱開始剤32の水の量については、後述する生石灰の発熱剤42が加熱に必要な量が入れられている。
【0034】
天部34とこの周囲から下方に延ばされた側壁部35により、第一容器31は下方に開口部33の有る器(うつわ)状に形成されている。第一容器21の筒状の側壁部35から等間隔に六方向に突出する脚部36は、下部筒部材21の内部にあって、第一容器21の側壁部35の外面の全周と、下部筒部材21の内面との間において、脚部36を除き一定の幅の隙間(5〜10ミリメートル)を有すように設けられている。
【0035】
第二容器部材40は、第二容器41と、第二容器41の内部に納められている発熱剤42と、第二容器41の上側に向いた開口部43を覆うシール部材B49から構成されている。なお、発熱剤42は本実施例においては粉末の生石灰であり、粉末の生石灰は、被加熱物6の加熱に必要な量だけ、水や空気を透過する紙や布等の袋に入れられている。第二容器41は、上部に開口部43があり、底部44の周囲に上方に直立した筒状の側壁部45が設けられた器(うつわ)状に形成されている。側壁部45の外周面は、下部筒部材21の内周に摺動可能な径で形成されており、側壁部45の高さは、発熱剤42を納めた状態で、発熱開始剤32が全て流れ込んだとしても、溢れることのない容積となる様に形成されている。
【0036】
底部44の外縁部には、側壁部45の径よりも少しだけ小さく(0.5〜2ミリメートル)した溝46が全周に設けられており、溝46の底部側の端については側壁部45の径よりも少しだけ大きく(0.1〜1ミリメートル)なるように形成され、先端に行くほど薄くなる鍔部47が形成されている。第二容器部材40の溝46と鍔部47と、下部筒部材21の突起27が設けられていることにより、第二容器部材40の下部筒部材21の脱落を防止すると共に、第二容器部材40が簡単に下部筒部材21の内部に入らないようになっている。
【0037】
底部44の上側、第二容器41の内部には複数本(実施例においては3本)の開封部材48が底部44から起立するように設けられている。開封部材48は、第一容器部材30の側壁部35の内面に収まる範囲で配置されており、開封部材48は三角柱で、三つの垂直に伸びる角の内、一つの角を他の二つの角より高くすることで、底部44から最も離れた先端においては、鋭角に尖った形状に形成されている。開封部材48の先端までの高さは、側壁部35の高さよりも、やや低い位置(2〜3ミリメートル)になるようにしてある。
【0038】
また、第一容器部材30と第二容器部材40の関係については、第二容器部材40が、第一容器部材30に向かって下部筒部材21の内部を摺動して行く場合には、第一容器部材30の大部分が第二容器部材40の内側に入る様に、第一容器部材30の側壁部35及び、脚部36の側壁部35に近い側については、第二容器部材40の側壁部45の内周よりも小さい大きさになるように形成されている。
【0039】
上部筒部材11と、下部筒部材21と、第一容器31と、第二容器41は、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ABS樹脂等の硬質で、摂氏100度程度の耐熱性を有した合成樹脂を用いて成型されている。
また、シール部材A39と、シール部材B49については、水や空気を通さない材質のフィルム状の材質である。フィルム状の材質の一例としては、アルミ箔の両面にポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートを貼り付けた、所謂、アルミラミネートフィルムがあり、本実施例においては、シール部材A39とシール部材B49はアルミラミネートフィルムが用いられている。
【0040】
シール部材A39は第一容器31の開口部33を覆うことが可能な程度の径の円形に加工されており、開口部33側の側壁部35の先端に熱によって溶着されている。また、シール部材B49は第二容器41の開口部43を覆うことが可能な程度の径の円形に加工されており、開口部43側の側壁部45の先端に熱によって溶着されている。本実施例においては、組立が容易なため溶着としているが、接着剤を使用した接着としても良い。
【0041】
第一容器31の内部に、発熱開始剤32の水を入れ、シール部材A39で第一容器31を密封された状態にすることにより、第一容器部材30の組立品は完成する。また、第二容器41の内部の複数の開封部材47が囲む箇所(第二容器41の中央部)に、発熱剤42の生石灰を袋に入ったままで入れ、シール部材B49で第二容器41を密封された状態にすることで第二容器部材40の組立品は完成する。
【0042】
発熱剤42と発熱開始剤32については、加熱に必要な熱量を発生する組合せであれば、生石灰と水の組み合わせ以外でも良い。例えば塩化カルシウムと水の組合せによるものである。また、発熱剤42の粉末の生石灰に粉末のアルミニウムを混合して、水と生石灰が反応して、水酸化カルシウムと反応熱が発生し,第二段階として粉末アルミニウムと水酸化カルシウムと水が反応しさらに反応熱を発生させる様にしても良い。
【0043】
加熱用容器1への被加熱物6を入れる組立方法について図1を用いて説明する。なお、被加熱物6は、コーヒーや紅茶、酒やスープ等の食品を鉄やアルミニウム等の金属製の缶に納めた、所謂缶飲料である。被加熱物6の缶飲料を飲むために、缶切りを使用しなくても開封可能な様に、缶の上部にはプルトップ方式の開封手段が設けられている。缶の開封に関しては、被加熱物6の内容によって、缶の上部の全体を開ける場合や、缶の上部の一部だけを飲み口として開封するものとしても良い。開封方式については、ステイオンタイプとしても良い。
【0044】
筒部材10は、上部筒部材11と下部筒部材21に分離された状態であり、第一容器部材30と、第二容器部材40については夫々、発熱開始剤32と発熱剤42が密封された状態になっている。まず、下部筒部材21の内部に、第一容器部材30を上側開口部22から、天部34が上になるように入れる。下部筒部材21の内面においては、「略V字」状に所定の厚み内側に張り出し受け部28が、脚部36の受けが脚部36に対応する位置に設けられている。この6か所の受け部28に6本の脚部36がそれぞれ収まることで、第一容器部材30は下部筒部材21の所定の位置に取り付けられる(受け部28と脚部36の関係については、図3参照。)。
【0045】
次に、第一容器部材30が取り付けられた下部筒部材21の内部に、上側開口部22から被加熱物6を開封手段が設けられた方を上にして入れ、下部筒部材21の上側開口部22を上部筒部材11の下側開口部12の内側に差し込み、角孔13に、抜け止め防止付爪23が差し込まれて、上部筒部材11と下部筒部材21を結合する。
【0046】
最後に、下部筒部材21(筒部材10)の下側開口部24に発熱剤42が密封された第二容器部材40を差し込み、突起27と溝46で第二容器部材40が下部筒部材21の内部の所定の位置に固定されて、被加熱物6を納めた加熱用容器1は完成する。
【0047】
図2は、被加熱物6を納めた加熱用容器1の組立後の外観図である。被加熱物6が入った加熱用容器1の外観は、上部筒部材11と下部筒部材21が結合した、筒部材10の状態となり、外側に見えるのは、上側開口部15から覗く開封手段が設けられた被加熱物6の上部と、上部筒部材11の側壁部14と、下部筒部材21の側壁部25であり、図示してないが、底部においては、第二容器部材40の底部44になる。
【0048】
また、上部筒部材11の側壁部14には、抜け止め防止付爪23が嵌合している角孔13があり、角孔13の幅は、抜け止め防止付爪23の幅より広く形成されているので、角孔13の両端には、部分的に開口した孔が形成されている。この部分的に開口した孔は後述する、加熱用容器1で発熱を開始して、発熱開始剤32の蒸気が被加熱物6を加熱した後に、外部にわずかずつ抜けるための孔となる。
【0049】
図2の加熱用容器1を組み立てた状態における加熱用容器1の内部の関係を説明するために、図2のA−Aで切断した状態を示す図3の断面図を用いて説明する。なお、図2のA−Aで切断した場合図3においては、第一容器部材30の脚部36と、下部筒部材21内部の受け部28を切断することになる。このため、後述する被加熱物6の加熱を説明する場合に、脚部36と受け部28が邪魔になる場合があり、脚部36と受け部28が無い切断箇所であるB―Bでの切断箇所についても図2に示してある。
【0050】
図3は、図2のA−Aで切断した状態を示す断面図である。図3において、被加熱物6がある状態で図示すると分かり難ため、一点鎖線の想像線で被加熱物6を示す。まず、加熱用容器1の内部での被加熱物6の状態について説明する。
【0051】
被加熱物6の開封手段が設けられている天部については、上部筒部材11の上側開口部15の二重になった箇所に、被加熱物6の缶の上部の外周に設けられているカシメされた部分に嵌まり込む様な状態となり、被加熱物6の缶の上部の外周から発熱開始剤32の蒸気が漏れない様に形成されている。なお、被加熱物6の缶の形状で、上側開口部15の二重になった箇所との密着が十分できない場合には、上側開口部15の二重になった箇所にパッキン貼付して被加熱物6の上側と密着させる様にしても良い。
【0052】
次に被加熱物6底側については、通常缶の底については、底の中央部が凹んだ状態であり、第一容器部材30の上面が球面状に膨らんだ天部34の頂上部で被加熱物6の底部の中央を押すことになる。そして、第一容器部材11と第二容器部材21は、二組の角孔13と抜け止め防止付爪23によって、簡単に分離できない様に結合されているので、この上側開口部15の二重になった箇所と、上面が球面状に膨らんだ天部34とにより、被加熱物6は加熱用容器1の内部にガタツキのないように保持される。よって、被加熱物6の外形寸法に合わせた、上側開口部15の二重になった箇所から、上面が球面状に膨らんだ天部34の頂上部までの寸法については、寸法精度が出るように形成されている。
【0053】
そして、被加熱物6が、上側開口部15の二重になった箇所と上面が球面状に膨らんだ天部34とにより保持されると、被加熱物6の外周側面の全周と、下部筒部材21(上部筒部材11の一部も含む)の内側の面については、所定の隙間(5〜10ミリメートル)を有する状態になっている。
【0054】
第一容器31の内部に発熱開始剤32が密封された第一容器部材30は、第一容器部材30の周囲に延びた6本の脚部36が下部筒部材21の側壁部25の内側に設けられている6か所の受け部28に案内されて、下部筒部材21の下部開口部24との距離を所定の位置に保つ様に取り付けられる。これにより第一容器部材30の下部筒部材21内部での下側方向の動きは規制されており、同時に第一容器部材30の上側方向への動きも前述の被加熱物6と、結合した上部筒部材11と下部筒部材21との関係により規制されている。これにより第一容器部材30は、下部筒部材21の内部の所定の位置で動かない様に取り付けられている。
【0055】
第二容器41の内部に発熱剤42が密封された第二容器部材40は、第二容器部材40の底部44の外周にある溝46と、下部筒部材21の下側開口部24の近傍の側壁部25の内周に設けられた複数の突起27により、第二容器部材40の底部44の下側の面が下部筒部材21の下側開口部24を塞ぎ、下部筒部材21の側壁部25から第二容器部材40の鍔部47が覗く位置で取り付けられている。第二容器部材40は溝46と突起27、及び鍔部47により、底部44の強い力を加えない限り、下部筒部材21の下端で保持された状態になっている。
【0056】
図3の状態(以下、セット状態と呼ぶ)の場合には、第一容器部材30と第二容器部材40は、下部筒部材21の内部の所定の位置で保持されており、発熱開始剤32と発熱剤42は分離された状態であるので、簡単に発熱を開始することはなく、梱包した状態での運搬や、梱包から取り出した状態での持ち運びができる。また、発熱開始剤32と発熱剤42は密封されているので、長期に保存することも可能となる。
【0057】
次にセット状態から、被加熱物6を加熱する場合について、図4図7を用いて説明する。図4は、図3状態から、加熱用容器1を持ち上げ、第二容器部材40の底部44を下側から、強い力を込めて指で押し込む、又は指の力が入り難い場合には、机や椅子の角等に押し付ける操作をした場合の図である。底部44が加熱用容器1の内部に向かって押し込まれると、第二容器部材40の溝46に入り込んでいる下部筒部材21の突起27は外れ、同時に、第二容器部材40の鍔部47は、下部筒部材21の側壁部25の端で、破断又は折り曲げられることにより、第二容器部材40は、下部筒部材21の内部に摺動する。
【0058】
なお、鍔部47の食み出した箇所の食み出し寸法及び、食み出した部分の形状については、所定の強い力(例えば、100〜150N)を加えた場合には、破断又は折り曲げられるように調整して形成してある。例えば、食み出した箇所の厚みを薄くするまたは、破断又は折り曲げし易くするために、浅い溝を付ける等の方法である。また、溝46の深さ、突起27の高さ・幅についても、同様に調整して形成してある。
【0059】
図4の状態では、第二容器部材40は、第一容器部材30と接触した状態となっている。第二容器部材40のシール部材B49と、第一容器部材30のシール部材A39とは接触して、第二容器部材40の側壁部45の径よりも、第一容器部材30の側壁部35の径の方が小さいので、シール部材Bは、第一容器部材30の側壁部35により、第二容器部材40の内側に向かって押し込まれている状態となっている。
【0060】
これは、セット状態における、シール部材A39とシール部材B46との間隔は、0.5〜1.5ミリメートルになる様に調整してあり、開封部材48の先端から、シール部材B49までの間隔は2〜3ミリメートルであるため、先にシール部材B49が、第一容器部材30の側壁部35によって押し込まれることによる。
【0061】
これにより、シール部材B49は、シール部材B49の材質や厚みと、シール部材B49と側壁部45先端との溶着の程度にもよるが、シール部材B49は、引っ張られ、側壁部45の開口部43側で溶着された箇所から破断を開始する。なお、シール部材A39とシール部材B49間隔と、シール部材B49と開封部材48の先端との間隔がこの様な関係にしてあることで、発熱開始剤32の水をより安全に密封させることと同時に、シール部材Aの破断よりも先にシール部材B49の周囲での破断が可能となり、発熱剤42に対して発熱開始剤32が適切に混合させることが可能となっている。
【0062】
第二容器部材40をさらに押し込んだ図5図6の状態について説明する。図5図6における第二容器部材40の位置は同一の状態であるが、図5は、図3図4と同じ図2におけるA−A断面図であり、図6は、図2におけるB―B断面図である。図5図6においては、複数の開封部材48が、シール部材B49とシール部材A39を合わせた状態で、破断させている状態である。シール部材B49については、シール部材A39に重なった状態になっているため、シール部材B49の周囲の溶着部分の破断が開始していても開封部材48による破断が可能となる。
【0063】
この状態で、シール部材A39には、開封部材48により複数の孔が開けられており、発熱開始剤32の水は下方の第二容器部材40に側に流れる。既に、シール部材B49にも、開封部材48により、対応する箇所に孔が開いているので、第二容器部材40の内部の側にある発熱剤42に向かって流れ、発熱剤42は発熱を開始する。なお、発熱開始剤32の水の流れ込む量が多い場合であっても、既に、シール部材B49の側壁部45の開口部43側の溶着は破れているので、シール部材B49の周囲からも、発熱開始剤32の水は発熱剤42向かって流れ込むことになる。
【0064】
発熱剤42に発熱開始剤32が混合することで、発熱が開始し、発熱開始剤32の水は蒸発し、蒸気が発生する。この蒸気の発生する状況について、脚部36の箇所の断面図でない図6を用いて説明する。第二容器部材40の内部で発生した蒸気は、シール部材B49の側壁部45の開口部43側の溶着は破れているので、側壁部45に沿った周囲から、上方に向かって移動する。そして、上方に移動した蒸気は、加熱用容器1の内部の下部筒部材21の側壁部25の内面と被加熱物6の側面の間で、さらに上方に移動する。
【0065】
この発生した蒸気は、上部筒部材11の2個の角孔13で、下部筒部材21の抜け止め防止付爪23で大部分が塞がれている残り孔から、加熱用容器1の外部に出る。この蒸気が被加熱物6の側面に接触する時に、蒸気の持つ熱量は、被加熱物6に移動して、被加熱物は加熱される。このため、蒸気の外部の排出は、熱交換された後の蒸気であることと、塞がれている角孔13が小さいことから、蒸気は十分に冷却されながら排出される。
【0066】
図7は、第二容器部材40を第一容器部材30と接触するまで押し込んだ場合の状態を示す。図7図6と同様に図2におけるB―B断面図である。第二容器部材40の側壁部45の開口部33の端は、第一容器部材30の6本の脚部36の下部に接触して、第二容器部材40の下部筒部材21の内部での摺動は止まる。第一容器部材30の発熱開始剤32の水は全部、第二容器部材40の側に移動して、発熱剤42の発熱は継続する。
【0067】
そして、被加熱物6に必要な熱容量に合わせた発熱剤42と発熱開始剤32の量で決まる加熱時間の間被加熱物6の加熱は行われる。この間、被加熱物6への加熱は前述の被加熱物6の側面からだけではなく、第一容器部材30の天部34も蒸気によって加熱されており、被加熱物6の底部と接触している天部34の熱も伝達して、被加熱物6は加熱される。
【0068】
本実施例1での加熱の具体例について以下に記載する。
180ccの液体(水)が入った被加熱物6について、
発熱開始剤32の水を15ccとし、発熱剤42の生石灰を7gとした場合に、
発熱を開始して、
2分後に液体の温度は摂氏19.7度、
3分後に液体の温度は摂氏30.1度、
4分後に液体の温度は摂氏37.9度、
5分後に液体の温度は摂氏42.5度、
6分後に液体の温度は摂氏44.4度となった。
なお、液体の当初の温度は摂氏10.4度であり、室温は、摂氏24.6度である。
【0069】
以上のように被加熱物6の加熱が行われるため、被加熱物6が入った加熱用容器1を逆転させる必要はない。また、発熱剤42と発熱開始剤32が混合することによって発生する蒸気を、第一容器部材30と第二容器部材40の内部に閉じ込めることなく、被加熱物6の外面に効果的に接触させて熱交換できるので、発熱剤42と発熱開始剤32の使用される量を少なくすることが可能となる。
【0070】
加熱された被加熱物6が飲食された後に、加熱用容器1とこれに入った被加熱物6を捨てる場合には、上部筒部材11の角孔13に覗いている、下部筒部材21の抜け止め防止付爪23の先端を加熱用容器1の内側に押し込むことで、上部筒部材11と下部筒部材21は容易に分離することができる。これにより、被加熱物6の缶は金属であるので、分離して、資源の有効活用できるリサイクルを容易に実施することができる。
【0071】
また、第二容器部材40の内側には第一容器部材30が入り込んでおり、若干の隙間を有しているが、内部の発熱剤42や発熱開始剤32は外部に漏れにくい状態となっており、強アルカリ性の溶液が外部に漏れにくいものとなっている。そして、被加熱物6を除いた加熱用容器1は分離して焼却可能なゴミとして捨てることができる。
【実施例2】
【0072】
本発明の加熱用容器2について、図8を用いて説明する。実施例1の加熱用容器1と異なる点は、実施例1の第二容器部材40の開口部43には、シール部材B49が溶着されているのに対して、加熱用容器2の第二容器部材40aの開口部43にはシール部材Bが溶着されて無いことである。図8は、実施例1の図1と同様な箇所での断面図である。図8において、異なる箇所はシール部材Bが無いことだけであるので、図8において同一の符号を附して、説明を省略する。
【0073】
第二容器部材40aの開口部43に、シール部材B49が溶着されてない場合であっても、発熱剤42は、水を透過する袋に入れられた状態で、第二容器部材40aの底部44の中央部に置かれており、周囲には、複数の開封部材48があると共に、第二容器部材40aの開口部43の近傍には、第一容器部材30のシール部材A39があることから、発熱剤42の動きはある程度規制されている。そして、シール部材B49によって水分を吸収するおそれがあるが、短期間の使用されるものならば問題はない。また、被加熱物6を入れた加熱用容器2の全体をビニール袋に入れる場合やシュリンク包装等で密閉包装するならば、長期の保存も可能となる。
【0074】
加熱用容器2の組立方法や加熱用容器2を加熱に用いる方法等については、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【実施例3】
【0075】
本発明の加熱用容器3について、図9を用いて説明する。実施例1の加熱用容器1と異なる点は、加熱用容器3の内部で加熱する被加熱物7は、ペットボトル飲料の場合である。被加熱物7がペットボトル飲料の場合であっても、ペットボトル飲料の外形寸法に合わせて加熱用容器3が形成されており、基本的な構造は同一のものとなる。ただ、上部筒部材11aに上側開口部15aの二重になった箇所において、天然ゴムや合成ゴム、合成樹脂の発泡体等をパッキンが貼付されており、被加熱物7上部の飲み口側周囲と、上部筒部材11aの上側開口部15aとの隙間がない様に密着させて蒸気が漏れないようになっている。その他の加熱用容器3の構造や、加熱用容器3の組立方法や加熱用容器3を加熱に用いる方法等については、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【実施例4】
【0076】
本発明の加熱用容器4について、図10を用いて説明する。実施例1の加熱用容器1と大きく異なる点は、筒部材10bが2分割するのではなく一体として形成されていることである。筒部材10bを一体として形成したことにより、筒部材10bは、二重になった箇所を備えた上部開口部15と、狭い側壁部14aと、広い側壁部24aと、下部開口部24から形成されている。そして、筒部材10bの広い側壁部24aの上端には側壁部24aの全周に溝16が設けられている。さらに、溝16には複数の孔17が穿たれている。なお、この複数の孔17が加熱時の蒸気を逃がす孔になる。
【0077】
次に、筒部材10bへの第一容器部材30aの取り付け方法がことなっている。筒部材10bの広い側壁部24aの下側近傍の内面には、メネジ29が形成されている。そして、第一容器部材30aの6本の脚部36aの側壁部24aの内面に対向する部分には、6本の脚部36a全体としてメネジ29に嵌合するオネジ37が設けられている。その他の加熱用容器4の構造や、加熱用容器4を加熱に用いる方法等については、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0078】
加熱用容器4への被加熱物6を入れる組立方法について説明する。なお、被加熱物6は、コーヒーや紅茶、酒のスープ等の食品を鉄やアルミニウム等の金属製の缶に納めた、所謂缶飲料である。被加熱物6の缶飲料を飲むために、缶切りを使用しなくても開封可能な様に、缶の上部にはプルトップ方式の開封手段が設けられている。缶の開封に関しては、被加熱物6の内容によって、缶の上部の全体を開ける場合や、缶の上部の一部だけを飲み口として開封するものとしても良い。開封方式については、ステイオンタイプとしても良い。
【0079】
第一容器部材30aと、第二容器部材40については夫々、発熱開始剤32と発熱剤42が密封された状態になっている。まず、筒部材10bの下部開口部24から、被加熱物6の開封手段が設けられた側を上にして、筒部材10bの内部に入れ、上部開口部15の二重になった箇所に密着するまで差し込む。次に、第一容器部材30aの天部34を上にして、筒部材10bの下部開口部24から差し込む。
【0080】
その後、第一容器部材30aの脚部36aのオネジ37が、筒部材10bの内面にあるメネジ29に接触すると、第一容器部材30aを回動させながら、さらに第一容器部材30aを奥に移動させ、第一容器部材30aの天部34が被加熱物6に当たる所まで、第一容器部材30aを移動(回動)させる。これにより、第一容器部材30aは所定の位置に取り付けられる。また、被加熱物6も上部開口部15の二重の箇所に密着することができる。
【0081】
最後に、実施例1と同様に、筒部材10bの下側開口部24に発熱剤42が密封された第二容器部材40を差し込み、突起27と溝46で第二容器部材40が筒部材10bの内部の所定の位置に固定されて、被加熱物6を納めた加熱用容器4は完成する。
【0082】
加熱された被加熱物6が飲食された後に、加熱用容4とこれに入った被加熱物6を捨てる場合には、筒部材10bの上部にある溝16の部分は薄くなっており、同時に複数の孔17が穿たれているので、この部分を折り曲げることで、筒部材10bを分割することができる。これにより、被加熱物6の缶は金属であるので、分離して、資源の有効活用できるリサイクルを容易に実施することができる。また、第二容器部材40の内側には第一容器部材30bが入り込んでおり、若干の隙間を有しているが、内部の発熱剤42や発熱開始剤32は外部に漏れにくい状態となっており、強アルカリ性の溶液が外部に漏れにくいものとなっている。そして、被加熱物6を除いた加熱用容器4は分離して焼却可能なゴミとして捨てることができる。
【0083】
なお、筒部材10bへの第一容器部材30aの取り付け方法については、前述のような筒部材10bのメネジと第一容器部材30aのオネジで取り付けるのではなく、筒部材の所定の位置で、筒部材の外周側や内側から第一容器部材の6本の脚部を金属製のビス(小ネジ)で止める構造にしても実施は可能である。
【0084】
以上、本発明について、実施例に基づき説明してきたが、本発明は何らこれらの実施例の構成に限定するものではない。例えば、被加熱物の多くが円筒形であるため、加熱用容器もそれに合わせて円筒形として説明しているが、被加熱物が四角柱や三角柱等であっても筒部材や内部に入れる第一容器部材と第二容器部材との構成を同じにすることにより、同様に実施可能である。また、第一容器部材の脚部については、6本として説明しているが、第一容器部材を筒部材の内部に安定して取り付けられるのであれば、2本〜5本またはそれ以上の本数でも実施可能である。
【0085】
さらには、筒部材を円筒形とした場合には、下部筒部材の内部を第二容器部材が摺動して押し込まれる様に説明しているが、下部筒部材の内面側にメネジ、第二容器部材の側面外周にオネジを付けて、第二容器部材を下部筒部材に回動させながら、押し込む用にしても良い。その場合には、第二容器部材の底部の外側にコイン等で回す溝を設けることで実施可能である。
【符号の説明】
【0086】
1、2、3、4:加熱用容器
6、7:被加熱物
10、10a、10b:筒部材
11、11a:上部筒部材
12:下側開口部
13:角孔
14、14a:側壁部
15、15a:上側開口部
16:溝
17:孔
21:下部筒部材
22:上側開口部
23:抜け止め防止付爪
24:下側開口部
25:側壁部
26:膨張部
27:突起
28:受け部
29:オネジ
30、30a:第一容器部材
31:第一容器
32:発熱開始剤
33:開口部
34:天部
35:側壁部
36、36a:脚部
37:メネジ
39:シール部材A
40、40a:第二容器部材
41:第二容器
42:発熱剤
43:開口部
44:底部
45:側壁部
46:溝
47:鍔部
48:開封部材
49:シール部材B
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10