【解決手段】ガラス基板の製造方法は、研削工程を含む。研削工程は、ガラス基板の端面と研削手段とを接触させながら、ガラス基板と研削手段とを端面の長手方向に沿って相対的に移動させて端面を研削する。研削工程は、浮上工程と、搬送工程とを有する。浮上工程は、ガラス基板の主表面に流体を吹き付けてガラス基板を浮上させる。搬送工程は、浮上工程によって浮上しているガラス基板の端面が研削手段と接触している状態で、端面を研削しながら、主表面に平行な推進力をガラス基板に与えてガラス基板を搬送する。搬送工程は、研削手段が端面から受ける力である研削抵抗が一定となるように、推進力を調整する。
ガラス基板の端面と研削手段とを接触させながら、前記ガラス基板と前記研削手段とを前記端面の長手方向に沿って相対的に移動させて前記端面を研削する研削工程を含むガラス基板の製造方法であって、
前記研削工程は、
前記ガラス基板の主表面に流体を吹き付けて前記ガラス基板を浮上させる浮上工程と、
前記浮上工程によって浮上している前記ガラス基板の前記端面が前記研削手段と接触している状態で、前記端面を研削しながら、前記主表面に平行な第1方向の推進力を前記ガラス基板に与えて前記ガラス基板を搬送する搬送工程と、
を有し、
前記搬送工程は、前記研削手段が前記端面から受ける力である研削抵抗が一定となるように、前記推進力を調整する、
ガラス基板の製造方法。
脆性材料からなる基板の端面と加工手段とを接触させながら、前記基板と前記加工手段とを前記端面の長手方向に沿って相対的に移動させて前記端面を加工する加工工程を含む脆性材料からなる基板の製造方法であって、
前記加工工程は、前記端面を加工しながら、前記基板の主表面に平行な推進力を前記基板に与えて前記基板を搬送する搬送工程を有し、
前記搬送工程は、前記加工手段が前記端面から受ける力である加工抵抗が一定となるように、前記推進力を調整する、
脆性材料からなる基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1)ガラス基板端面加工装置の構成
本発明に係るガラス基板の製造方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係るガラス基板の製造方法は、ガラス基板の端面を加工するガラス基板端面加工装置を用いる。
図1は、ガラス基板端面加工装置1の概略図である。ガラス基板端面加工装置1は、ガラス基板3を浮上させた状態で搬送しながら、ガラス基板3の端面3a,3dを研削する。端面3a,3dは、互いに対向する一対の端面である。以下、必要に応じて、一方の端面3aを第1端面3aと呼び、他方の端面3dを第2端面3dと呼ぶ。
【0019】
ガラス基板端面加工装置1によって加工されるガラス基板3は、フロート法およびダウンドロー法等によって熔融ガラスから成形されたガラスリボンを、所定の寸法に切断して得られる。ガラス基板端面加工装置1は、特に、0.3mm以下の厚みを有する薄型のガラス基板3の端面3a,3dの加工に適している。ガラス基板端面加工装置1によって加工されたガラス基板3は、必要に応じて研磨等による端面加工がさらに行われ、洗浄工程および検査工程等を経て、製品として出荷される。
【0020】
図1に示されるように、ガラス基板端面加工装置1は、主として、搬送機構10と、研削機構20と、制御部(図示せず)とを備える。搬送機構10は、ガラス基板3を浮上させた状態で、ガラス基板を所定の搬送方向に搬送する。搬送方向は、端面3a,3dの長手方向である。ガラス基板3は、ベルトコンベア等によって搬送機構10に一枚ずつ供給される。
【0021】
研削機構20は、最初に第1端面3aを研削し、次に第2端面3dを研削する。研削機構20によって、ガラス基板3の端面3a,3dの角部が面取りされる。研削機構20は、端面3a,3dのそれぞれと対向するように設置される一対の研削ホイール21a,21dを有する。以下、必要に応じて、一方の研削ホイール21aを第1研削ホイール21aと呼び、他方の研削ホイール21dを第2研削ホイール21dと呼ぶ。第1研削ホイール21aは、搬送機構10によって搬送されているガラス基板3の第1端面3aを研削する。第2研削ホイール21dは、搬送機構10によって搬送されているガラス基板3の第2端面3dを研削する。研削ホイール21a,21dが端面3a,3dと接触している状態で、ガラス基板3を搬送方向に沿って搬送することで、端面3a,3dが研削される。
図1において、研削ホイール21a,21dが回転する方向、および、ガラス基板3が移動する方向は、矢印で示されている。
【0022】
なお、以下の説明において、ガラス基板端面加工装置1は、研削ホイール21a,21dを用いて、端面3a,3dの下方の角部をR形状に加工して面取りする。しかし、ガラス基板端面加工装置1は、研削ホイール21a,21dを同様に用いて、さらに、端面3a,3dの上方の角部をR形状またはC形状に加工して面取りすることができる。次に、搬送機構10および研削機構20の構成および動作の詳細について説明する。
【0023】
(1−1)搬送機構
搬送機構10は、主として、複数のフロートベアリング22と、複数のスライドベアリング24とを備える。
図2は、ガラス基板端面加工装置1の上面図である。
図3は、ガラス基板端面加工装置1の側面図である。
図2には、ガラス基板3の搬送方向が矢印で示されている。
図3は、ガラス基板3の搬送方向に沿って視た図である。
【0024】
図2および
図3に示されるように、フロートベアリング22およびスライドベアリング24は、ガラス基板3の下方に設置されている。ガラス基板3は、鉛直方向上側の主表面である上面3bと、鉛直方向下側の主表面である下面3cとを有する。上面3bおよび下面3cは、水平面に平行な面である。端面3a,3dは、上面3bと下面3cとを接続する面である。以下の説明において、「幅方向」は、ガラス基板3の上面3bおよび下面3cに平行であり、かつ、搬送方向に直交する方向を意味する。図面において、搬送方向は「y軸」で示され、幅方向は「x軸」で示され、鉛直方向は「z軸」で示されている。第1端面3aは、搬送方向左側の端面である。
【0025】
フロートベアリング22は、ガラス基板3の下面3cに流体を吹き付けて、ガラス基板3を浮上させる。フロートベアリング22によって、ガラス基板端面加工装置1によって加工されるガラス基板3は、研削ホイール21a,21d以外のものと接触しない。フロートベアリング22の鉛直方向の位置は、フロートベアリング位置調節機構(図示せず)によって調節可能である。フロートベアリング22の鉛直方向の位置は、ガラス基板端面加工装置1の使用前に予め調節されている。
【0026】
フロートベアリング22は、ガラス基板3の下面3cと対向するパネル表面22aと、パネル表面22aに形成される複数の流体噴出孔22bと、パネル表面22aに形成される複数の流体吸引孔22cとを有する。流体噴出孔22bは、パネル表面22aと対向する下面3cに向かって空気を噴出する。流体吸引孔22cは、パネル表面22aと下面3cとの間の空間から空気を吸引する。
【0027】
流体噴出孔22bは、ガラス基板3に鉛直方向上向きの力を与える作用を有する。流体吸引孔22cは、ガラス基板3に鉛直方向下向きの力を与える作用を有する。流体噴出孔22bおよび流体吸引孔22cは、ガラス基板3に鉛直方向の力を作用させて、ガラス基板3の鉛直方向の位置、および、ガラス基板3の形状を安定化させる。また、フロートベアリング22は、流体噴出孔22bから噴出される空気、および、流体吸引孔22cに吸入される空気の流量を制御することで、ガラス基板3の鉛直方向の位置を調節することができる。端面3aの鉛直方向の位置の調整可能範囲は、最大30μmである。ガラス基板3の下面3cとパネル表面22aとの間の間隔が小さいほど、ガラス基板3が支持される力が強い。フロートベアリング22によってガラス基板3が浮上しているときにおいて、下面3cとパネル表面22aとの間の距離は、例えば5μm〜40μmであり、好ましくは10μ〜30μmであり、より好ましくは15μ〜30μmである。
【0028】
図4は、フロートベアリング22の上面図である。フロートベアリング22は、多孔質体から成形される。多孔質体の材質は、セラミックス、カーボンおよびアルミニウム等の、高温および高圧の液体および気体に対する高い耐久性を有する材質である。流体噴出孔22bは、パネル表面22aに形成される、多孔質体の細孔であり、
図4において点で示されている。流体吸引孔22cは、ドリル等を用いてパネル表面22aに形成される孔であり、
図4において白丸で示されている。流体吸引孔22cの径は、多孔質体の細孔の径より大きく、0.3mm〜1.0mmである。流体噴出孔22bは、パネル表面22aの全体に形成されている。流体吸引孔22cは、幅方向および搬送方向における複数の位置に形成されている。すなわち、流体噴出孔22bおよび流体吸引孔22cは、幅方向および搬送方向の両方において広がりを持って配置されている。
【0029】
図4では、流体吸引孔22cは、パネル表面22aにおいて格子点位置に形成されている。幅方向における流体吸引孔22cの間隔d1、および、搬送方向における流体吸引孔22cの間隔d2は、ガラス基板3の厚さ等に応じて適宜に設定される。例えば、ガラス基板3の厚さが0.5mmの場合、間隔d1,d2は18mmに設定され、ガラス基板3の厚さが0.25mmの場合、間隔d1,d2は4mmに設定されてもよい。
【0030】
スライドベアリング24は、フロートベアリング22によって浮上しているガラス基板3に所定の方向の推進力を非接触で与えて、ガラス基板を搬送する。スライドベアリング24の鉛直方向の位置は、スライドベアリング位置調節機構(図示せず)によって調節可能である。スライドベアリング24の鉛直方向の位置は、ガラス基板端面加工装置1の使用前に予め調節されている。
【0031】
図5は、スライドベアリング24の上面図である。スライドベアリング24は、ガラス基板3の下面3cと対向するパネル表面24aと、複数の流体噴出孔24bと、複数の流体吸引孔24cと、複数の流体溝24dとを有する。流体噴出孔24b、流体吸引孔24cおよび流体溝24dは、パネル表面24aに形成される。流体噴出孔24bの数は、流体吸引孔24cの数、および、流体溝24dの数と同じである。流体噴出孔24bおよび流体吸引孔24cは、ドリル等を用いてパネル表面24aに形成される孔である。
図5において、流体噴出孔24bは白丸で示され、流体吸引孔24cは黒丸で示されている。流体噴出孔24bおよび流体吸引孔24cの径は、0.3mm〜1.0mmである。流体溝24dは、流体噴出孔24bと流体吸引孔24cとを接続する溝である。流体溝24dの深さは、1.0mm〜2.0mmである。
【0032】
スライドベアリング24の流体噴出孔24bは、空気を噴出する。流体噴出孔24bから噴出された空気は、流体溝24dを流れて、流体吸引孔24cに吸引される。スライドベアリング24は、流体溝24dを流れる空気によって、浮上しているガラス基板3に所定の方向の推進力を非接触で与える。
図5には、スライドベアリング24がガラス基板3に与える推進力の方向が、白抜きの矢印で示されている。例えば、流体溝24dが搬送方向に沿って形成されている場合、浮上しているガラス基板3は、搬送方向の推進力を受ける。また、流体溝24dが幅方向に沿って形成されている場合、浮上しているガラス基板3は、幅方向の推進力を受ける。
図3に示されるように、ガラス基板端面加工装置1では、搬送機構10は、搬送方向(y軸方向)の推進力をガラス基板3に与えるスライドベアリング24、および、幅方向(x軸方向)の推進力をガラス基板3に与えるスライドベアリング24を有する。
図2および
図3には、各スライドベアリング24がガラス基板3に与える推進力の方向が、白抜きの矢印で示されている。スライドベアリング24は、ガラス基板3に搬送方向の推進力を与えることで、ガラス基板3を搬送方向に沿って搬送し、ガラス基板3に幅方向の推進力を与えることで、後述するように、研削ホイール21a,21dがガラス基板3から受ける力を調整する。
【0033】
図2に示されるように、フロートベアリング22およびスライドベアリング24は、それぞれ、搬送方向に沿って設置されている。スライドベアリング24は、フロートベアリング22と幅方向において隣り合っている。ガラス基板3に搬送方向の推進力を与えるスライドベアリング24と、ガラス基板3に幅方向の推進力を与えるスライドベアリング24とは、搬送方向において交互に設置されている。幅方向において、研削ホイール21a,21dによって研削される端面3a,3dが位置する側に、フロートベアリング22が設置されている。
【0034】
(1−2)研削機構
研削機構20は、主として、第1研削ホイール21aと第2研削ホイール21dとを備える。
図6は、ガラス基板3の第1端面3aを研削する第1研削ホイール21aの上面図である。
図7は、ガラス基板3の第1端面3aを研削する第1研削ホイール21aの側面図である。
図7は、ガラス基板3の幅方向(x軸方向)に沿って視た図である。
図6および
図7には、ガラス基板3の第1端面3a近傍の部分が示され、かつ、ガラス基板3の移動方向が矢印で示されている。なお、ガラス基板3の第2端面3dを研削する第2研削ホイール21dは、以下に説明する第1研削ホイール21aと同じ構成および動作を有する。
【0035】
第1研削ホイール21aは、円筒形状の砥石である。第1研削ホイール21aは、円形状の上表面31a、円形状の下表面31b、および、上表面31aと下表面31bとを連結する側周面31cを有する。第1研削ホイール21aは、上表面31aの中心と下表面31bの中心とを結ぶ回転軸31eを中心に回転する。
【0036】
第1研削ホイール21aは、メタルボンド砥石で成形されている。メタルボンド砥石は、複数種類の金属の粉末、または、合金の粉末を、鉄系の結合剤で固めて焼結し、焼結体の表面に砥粒を固定して製造される砥石である。砥粒は、ダイヤモンド、酸化アルミニウムおよび炭化ケイ素等の微小な粒である。メタルボンド砥石は、形状の保持力が高い砥石である。メタルボンド砥石は、例えば、ダイヤモンドホイールである。第1研削ホイール21aがダイヤモンドホイールである場合、ダイヤモンド砥粒の粒度は、♯400〜#3000であることが好ましい。第1研削ホイール21aは、電動モータ(図示せず)によって回転軸31e周りに回転する。
【0037】
図6に示されるように、鉛直方向(z軸方向)に沿って視た場合において、第1研削ホイール21aは、回転軸31eと、ガラス基板3の搬送方向(y軸方向)との間の角度である第1設置角度θ1が鋭角となるように設置されている。
図7に示されるように、幅方向(x軸方向)に沿って視た場合において、第1研削ホイール21aは、回転軸31eと、ガラス基板3の搬送方向(y軸方向)との間の角度である第1設置角度θ2が鋭角となるように設置されている。第1設置角度θ1は、2°未満であり、好ましくは1°未満である。第2設置角度θ2は、2°未満であり、好ましくは1°未満である。第1研削ホイール21aの加工領域の長さ、砥粒の粒度、および、砥粒の密度は、加工条件に合わせて適宜に設定される。第1端面3aは、回転軸31e周りに回転する第1研削ホイール21aの側周面31cと接触することで研削される。第1研削ホイール21aの回転方向は、
図6および
図7に示されるように、第1研削ホイール21aの側周面31cが、第1端面3aに下方から衝突する方向である。
【0038】
第1研削ホイール21aの位置、および、回転軸31eの角度は、研削ホイール位置調節機構(図示せず)によって調節可能である。第1研削ホイール21aの位置、および、回転軸31eの角度は、ガラス基板端面加工装置1の使用前に予め調節されている。本実施形態では、ガラス基板3の端面3aの加工時において、第1研削ホイール21aの位置、および、回転軸31eの角度は固定されている。
【0039】
(1−3)制御部
制御部は、主として、CPU、ROM、RAMおよびハードディスク等から構成されているコンピュータである。制御部は、搬送機構10および研削機構20に接続されている。制御部は、ROM、RAMまたはハードディスク等に記憶されているプログラムおよびデータに基づいて、搬送機構10および研削機構20を制御する。
【0040】
具体的には、制御部は、フロートベアリング22の鉛直方向の位置、流体噴出孔22bから噴出される空気の流量、および、流体吸引孔22cに吸入される空気の流量を制御する。これにより、制御部は、ガラス基板3の下面3cと、フロートベアリング22のパネル表面22aとの間の間隔を調節する。
【0041】
また、制御部は、スライドベアリング24の鉛直方向の位置、流体噴出孔24bから噴出される空気の流量、および、流体吸引孔24cに吸入される空気の流量を制御する。これにより、制御部は、ガラス基板3に作用する推進力の大きさを調節する。
【0042】
また、制御部は、研削ホイール21a,21dの位置、研削ホイール21a,21dの回転軸31eの角度、および、研削ホイール21a,21dの回転速度を制御する。これにより、制御部は、ガラス基板3の研削量を調節する。
【0043】
また、制御部は、回転する研削ホイール21a,21dと端面3a,3dとの接触による電動モータの負荷電流値に基づいて研削抵抗を取得する。研削抵抗は、搬送されるガラス基板3から研削ホイール21a,21dが受ける幅方向の力である。負荷電流値が大きいほど、研削抵抗は大きくなる。制御部は、研削抵抗が一定となるように、スライドベアリング24を制御して、ガラス基板3に作用する幅方向の推進力、および、ガラス基板3に作用する搬送方向の推進力の大きさを調整する。
【0044】
(2)ガラス基板端面加工装置の動作
ガラス基板3は、搬送機構10によって搬送されながら、研削機構20によって研削される。ガラス基板端面加工装置1は、最初に、ガラス基板3の第1端面3aを研削して、次に、ガラス基板3の第2端面3dを研削する。ガラス基板端面加工装置1が、第1端面3aを研削して、第1端面3aの下方の角部を面取りする工程について説明する。ガラス基板3は、搬送機構10によって浮上しながら搬送方向に沿って搬送される。ガラス基板3には、スライドベアリング24によって、搬送方向および幅方向の推進力が作用している。ガラス基板端面加工装置1は、研削抵抗が一定となるように、ガラス基板3に作用する幅方向の推進力を調節する。また、ガラス基板端面加工装置1は、研削抵抗が一定となるように、ガラス基板3に作用する搬送方向の推進力を調整する。これにより、ガラス基板端面加工装置1は、ガラス基板3の第1端面3aを、研削機構20の第1研削ホイール21aによって研削された分だけ搬送する。すなわち、ガラス基板3の第1端面3aが第1研削ホイール21aによって研削されない限り、ガラス基板3は搬送方向に搬送されない。ガラス基板3が搬送されながら研削される間、第1研削ホイール21aが第1端面3aから受ける研削抵抗は一定に保たれる。
【0045】
(3)特徴
従来のガラス基板の端面加工では、ガラス基板の端面に、回転する溝付きの研削ホイールを押し付けることで、端面を面取りする。しかし、この方法では、研削ホイールの押し付け方向にガラス基板が移動することにより加工抵抗(研削抵抗)が低減して、ガラス基板の端面が均一に研削されないおそれがある。また、薄型のガラス基板等の剛性が低いガラス基板を加工する場合には、加工抵抗によってガラス基板が加工中に破損するおそれがある。
【0046】
しかし、本実施形態のガラス基板端面加工装置1では、搬送方向に搬送されながら研削されるガラス基板3にかかる研削抵抗は一定に保たれる。そのため、ガラス基板端面加工装置1は、ガラス基板3の端面3a,3dを均一に研削することができる。また、ガラス基板端面加工装置1は、搬送されるガラス基板3に作用する搬送方向および幅方向の推進力を調節して、研削抵抗を制御することができる。そのため、ガラス基板端面加工装置1は、剛性が低いガラス基板の端面加工を行う場合に、研削抵抗を低く抑えることで、研削抵抗によってガラス基板3が加工中に破損することを防止することができる。特に、ガラス基板端面加工装置1は、厚みが0.3mm以下の薄型のガラス基板3の端面3a,3dを均一に加工することができる。従って、ガラス基板端面加工装置1は、剛性が低いガラス基板3の端面3a,3dを均一に面取り加工することができる。
【0047】
また、ガラス基板端面加工装置1では、研削ホイール21a,21dの回転軸31eが鉛直方向(z軸方向)に対して傾斜していることにより、研削ホイール21a,21dの側周面31cに存在し、搬送されるガラス基板3の端面3a,3dと接触する砥粒の数を増加させることができる。仮に、研削ホイール21a,21dの回転軸31eが鉛直方向に平行である場合には、ガラス基板3の端面3a,3dは、側周面31cの一部の領域に存在する砥粒のみと接触する。しかし、研削ホイール21a,21dの回転軸31eを鉛直方向に対して傾斜させることにより、ガラス基板3の端面3a,3dは、側周面31cの大部分の領域に存在する砥粒と接触することができる。
図6および
図7には、ガラス基板3の端面3aと接触することができる砥粒が存在する側周面31cの領域がハッチングされて示されている。そのため、ガラス基板端面加工装置1は、研削ホイール21a,21dの砥粒1粒当たりの加工負荷を低減することができる。従って、ガラス基板端面加工装置1は、研削ホイール21a,21dの寿命を延ばすことができ、それにより、ガラス基板端面加工装置1自体の寿命も延ばすことができる。
【0048】
また、ガラス基板端面加工装置1は、フロートベアリング22を用いて、ガラス基板3の上面3bおよび下面3cに他の部材を接触させることなく、ガラス基板3を搬送しながら、ガラス基板3の端面3a,3dを研削加工することができる。そのため、ガラス基板端面加工装置1は、研削機構20による加工後のガラス基板3の上面3bおよび下面3cの状態を良好に保つことができる。ガラス基板3がFPDに用いられる場合、ガラス基板3の主表面(上面3bおよび下面3c)に形成されるキズやクラックは、ガラス基板3の品質を低下させる主な原因となる。ガラス基板端面加工装置1は、ガラス基板3の上面3bおよび下面3cにおけるキズやクラックの発生を防止できるので、ガラス基板3の品質を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態では、ガラス基板3のみに搬送方向の推進力が作用して、ガラス基板3のみが搬送される。そのため、ガラス基板をステージの表面に吸着固定した状態で、ガラス基板をステージと共に搬送する従来の構成と比較して、搬送される対象の慣性質量が小さいので、ガラス基板3に作用する力を高精度で調整でき、ガラス基板3の搬送量を高精度で制御できる。
【0050】
また、本実施形態では、研削ホイール21a,21dの回転軸31eを鉛直方向に対して傾斜させることにより、ガラス基板3の端面3a,3dの加工時に端面3a,3dと接触する範囲である、研削ホイール21a,21dの加工範囲を大きくして、端面3a,3dと接触する研削ホイール21a,21dの砥粒の数を増やすことができる。その結果、従来と同程度の端面3a,3dの品質を得るために必要な加工時間を短縮することができ、また、従来と同程度の加工時間を用いて端面3a,3dを加工することで端面3a,3dの品質を向上させることができる。
【0051】
(4)変形例
(4−1)変形例A
実施形態に係るガラス基板端面加工装置1は、最初に、ガラス基板3の第1端面3aを研削して、次に、ガラス基板3の第2端面3dを研削する。しかし、ガラス基板端面加工装置1は、ガラス基板3の第1端面3aおよび第2端面3dを同時に研削してもよい。
図8は、本変形例のガラス基板端面加工装置1の上面図である。
図9は、本変形例のガラス基板端面加工装置1の側面図である。
図8には、ガラス基板3の搬送方向が矢印で示されている。
図9は、ガラス基板3の搬送方向に沿って視た図である。本変形例のガラス基板端面加工装置1は、実施形態と同様に、ガラス基板3の第1端面3aおよび第2端面3dの下方の角部を面取り加工する。
【0052】
本変形例のガラス基板端面加工装置1は、搬送機構10を備える。搬送機構10は、複数のフロートベアリング22と、複数のスライドベアリング24とを備える。フロートベアリング22およびスライドベアリング24は、
図8および
図9に示されるように設置されている。
図8および
図9には、スライドベアリング24によってガラス基板3に付与される推進力が、白抜きの矢印で示されている。幅方向において、スライドベアリング24は、フロートベアリング22の両側に設置されている。フロートベアリング22は、ガラス基板3の幅方向中央部において鉛直方向の力をガラス基板3に付与して、ガラス基板3を浮上させる。スライドベアリング24は、各端面3a,3dから中央部に向かう幅方向の推進力と、搬送方向の推進力との合力をガラス基板3に付与するように設置されている。
図8に示されるように、スライドベアリング24の流体溝24dは、水平面において、幅方向および搬送方向に対して所定の角度を形成する方向に沿って形成されている。また、フロートベアリング22の幅方向両側には、同数のスライドベアリング24が設置されている。フロートベアリング22の幅方向両側のスライドベアリング24がガラス基板3に付与する推進力の方向は、ガラス基板3の幅方向中心を搬送方向に沿って延びる直線に対して対称である。これにより、ガラス基板3は、幅方向において、第1端面3aから第2端面3dに向かう推進力、および、第2端面3dから第1端面3aに向かう推進力を受けるので、搬送方向に搬送されるガラス基板3が幅方向に移動することが抑制される。実施形態と同様に、ガラス基板3の第1端面3aおよび第2端面3dは、それぞれ、第1研削ホイール21aおよび第2研削ホイール21dによって研削される。
【0053】
本変形例においても、ガラス基板端面加工装置1では、搬送方向に搬送されながら研削されるガラス基板3にかかる研削抵抗を一定に保つことができるので、ガラス基板3の端面3a,3dを均一に研削することができる。
【0054】
(4−2)変形例B
実施形態に係るガラス基板端面加工装置1では、フロートベアリング22およびスライドベアリング24の上方において、ガラス基板3は、フロートベアリング22およびスライドベアリング24と接触することなく支持されている。
【0055】
しかし、ガラス基板3は、フロートベアリング22およびスライドベアリング24の下方において、フロートベアリング22およびスライドベアリング24と接触することなく支持されてもよい。フロートベアリング22は、パネル表面22aの下方に位置するガラス基板3の上面3bを非接触で支持することができる。スライドベアリング24は、パネル表面24aの下方に位置するガラス基板3に推進力を付与することができる。そのため、本変形例においても、ガラス基板端面加工装置1では、搬送方向に搬送されながら研削されるガラス基板3にかかる研削抵抗を一定に保つことができるので、ガラス基板3の端面3a,3dを均一に研削することができる。
【0056】
(4−3)変形例C
実施形態に係るガラス基板端面加工装置1は、多孔質体から成形されるフロートベアリング22を有し、ガラス基板3に上向きの力を作用させる流体噴出孔22bは、多孔質体の細孔である。しかし、流体噴出孔22bは、流体吸引孔22cと同様に、ドリル等を用いてパネル表面22aに形成される孔であってもよい。
【0057】
図10は、本変形例のフロートベアリング322を鉛直方向に沿って上方から下方に向かって見た図である。フロートベアリング322のパネル表面322aには、複数の流体噴出孔322bおよび複数の流体吸引孔322cが形成されている。
図10において、流体噴出孔322bは、黒丸で示され、流体吸引孔322cは、白丸で示されている。
図10では、流体噴出孔322bおよび流体吸引孔322cは、パネル表面322aにおいて格子点位置に形成されている。流体噴出孔322bの径は、多孔質体の細孔の径より大きい。流体噴出孔322bは、幅方向および搬送方向における複数の位置に形成されている。すなわち、流体噴出孔322bは、幅方向および搬送方向の両方において広がりを持って配置されている。流体吸引孔322cは、実施形態の流体吸引孔22cと同じである。流体噴出孔322bおよび流体吸引孔322cは、幅方向において交互に配置されている。
【0058】
(4−4)変形例D
ガラス基板端面加工装置1は、研削抵抗が一定となるように、ガラス基板3に作用する搬送方向および幅方向の推進力を調節する。しかし、ガラス基板端面加工装置1は、研削抵抗が所定の範囲内となるように、ガラス基板3に作用する搬送方向および幅方向の推進力を調節してもよい。
【0059】
(4−5)変形例E
実施形態に係るガラス基板端面加工装置1は、メタルボンド砥石で成形された研削ホイール21a,21dを有している。しかし、研削ホイール21a,21dは、弾性砥石で成形されてもよい。弾性砥石は、硬い粒である砥粒を、弾性を有する軟らかい結合材で結び付けて成形した砥石である。砥粒は、ダイヤモンド、酸化アルミニウムおよび炭化ケイ素等の微小な粒である。結合材は、ポリビニルアルコールおよびポリウレタン等の軟質樹脂である。弾性砥石は、結合材から構成されるスポンジ構造の内部に、無数の砥粒が保持されている構造を有している。
【0060】
(4−6)変形例F
実施形態に係るガラス基板端面加工装置1は、研削ホイール21a,21dによって研削されたガラス基板3の端面3a,3dを研磨する研磨機構をさらに備えてもよい。研磨機構は、弾性砥石で成形された研磨ホイールを用いて、端面3a,3dを研磨する。研磨ホイールの砥粒は炭化ケイ素が好ましく、炭化ケイ素砥粒の粒度は♯400〜#1200であることが好ましい。研磨ホイールの砥粒を結び付ける結合剤は、柔軟性および弾性を有するポリウレタン系の樹脂結合剤であることが好ましい。
【0061】
また、ガラス基板端面加工装置1の研磨機構は、実施形態の搬送機構10および研削機構20と同じ機構を用いて、研磨ホイールが端面3a,3dから受ける力である研磨抵抗が一定となるように、ガラス基板3の搬送方向および幅方向の推進力を調節して、ガラス基板3を搬送してもよい。これにより、研磨機構は、研削された端面3aを均一に研磨することができる。その結果、ガラス基板端面加工装置1によって加工されたガラス基板3の端面3aは、未研磨の部分をほとんど有さないので、加工されたガラス基板3からは、ガラスの微小な粒子が生じにくい。従って、ガラス基板端面加工装置1は、製品としてのガラス基板3の品質を向上させることができる。
【0062】
(4−7)変形例G
実施形態に係るガラス基板端面加工装置1は、研削機構20によって端面3a,3dが研削されたガラス基板3を洗浄する洗浄機構と、洗浄機構によって洗浄されたガラス基板3を光学的に検査する検査機構をさらに備えてもよい。洗浄機構は、ガラス基板3の端面3a,3dに流体を吹き付けることにより、端面3a,3dに付着しているガラス微小片等の異物を取り除く。検査機構は、ガラス基板3の端面3a,3dの品質に関する端面品質データを取得する。端面品質データは、例えば、端面3a,3dの形状、端面3a,3dの表面粗さ(RaおよびRz等)、および、端面3a,3dに形成されているキズ等の欠陥の数に関する。
【0063】
本変形例のガラス基板端面加工装置1は、加工対象のガラス基板3に対して、検査機構によって取得された端面品質データと、搬送機構20によって与えられた搬送方向および幅方向の推進力との関連性に関する相関データを取得して保存する。ガラス基板端面加工装置1は、相関データに基づいて、ガラス基板3の端面3a,3dの品質が所定の条件を満たすように、ガラス基板3に与えられる推進力を調整する。このように、ガラス基板端面加工装置1は、検査機構によるガラス基板3の検査の結果に基づいて、搬送機構によってガラス基板3に与えられる推進力を調整するフィードバック制御を行う。
【0064】
(4−8)変形例H
実施形態および各変形例は、ガラス基板3の端面3a,3dを加工する方法に関する。ガラス基板3は、例えば、フラットパネルディスプレイに用いられるガラス基板である。しかし、実施形態および各変形例は、ガラス基板3以外の脆性材料からなる基板の端面を加工する方法に適用可能である。脆性材料からなる基板は、例えば、半導体基板およびセラミクス基板である。また、基板の形状は、矩形状に限定されない。例えば、基板は、円盤形状のウェハであってもよい。この場合、基板に作用する推進力は、基板の周方向に作用する力である。