【解決手段】本発明は、車室部前方のフロントサイドメンバ17、車室部下方のフロアサイドメンバ15、フロントサイドメンバ下方のサブフレーム19、サブフレームの後端部を弾性マウント部29を介してフロントサイドメンバ下部に固定する弾性固定部26、弾性固定部とサブフレーム後方のフロアサイドメンバを連結する補強ブラケット39を備え、補強ブラケットが、一端部が弾性マウント部下端に固定され、他端部がフロアサイドメンバに固定される第1支持脚43、第1支持脚の一端部から分岐し、分岐端部が第1支持脚とは異なる車室部下部の部材に固定される第2支持脚45、第1支持脚と第2支持脚間を埋める壁部65、壁部に弾性マウント部が車体後方側へ傾いた際、弾性マウント部が嵌まる凹部67を有するものとした。
【背景技術】
【0002】
自動車(車両)の車体前部では、車室部の前方へ延在させたフロントサイドメンバと、このフロントサイドメンバの下方に配置されてパワーユニットやサスペンションなどを支持するサブフレームとが設けられている。近時では、フロントサイドメンバへ伝わるサスペンション入力を減衰するため、サブフレームの各端部とフロントサイドメンバとを弾性固定部を用いて固定している。多くの弾性固定部は、サブフレームの各端部にラバーブッシュなどで構成される筒形の弾性マウント部を設け、同弾性マウント部をボルト部材などの締結部材でフロントサイドメンバ下部に締結することで、サブフレームをフロントサイドメンバの前後部に弾性固定している。
【0003】
このような車両では、車両が前面衝突した際の荷重をサブフレームで受け、フロントサイドメンバ後方のフロアサイドメンバに伝達することで衝突荷重を減少させて、サブフレームやパワーユニット等の車室部側への侵入を抑制している。
ところで、車両が前面衝突しサブフレームが後方に押されると、サブフレーム後方の弾性固定部では、弾性マウント部を支持しているボルト部材が、フロントサイドメンバ側を支点に車体後方へ倒れ込む現象が起こる。ボルト部材が後方に倒れると、ボルト部材には抜け方向への引っ張り荷重が作用するため、ボルト部材が弾性マウント部から抜け落ち、サブフレームが衝突初期に脱落してしまうおそれがある。サブフレームが衝突初期の段階で脱落してしまうと、衝突荷重を十分に支えきれない。このため、衝突荷重を効果的に減少させることができず、パワーユニットやサブフレーム等の車室部側への侵入量が増大する等の問題がある。
【0004】
そこで、サブフレーム後方を支持する弾性固定部(弾性マウント部)とフロントサイドメンバ後方のフロアサイドメンバとをステーなどの補強部材を用いて連結し、サブフレーム前部から加わる衝突荷重をフロアサイドメンバ側へ伝達する構造が提案されている(特許文献1,2を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車体の構造によっては、サブフレーム後方の弾性固定部(弾性マウント部)が、フロントサイドメンバ後部(キックアップ部)の下端から突き出た構成となるため、弾性固定部(弾性マウント部)の下端と、フロアサイドメンバとの間には段差が生ずる。段差が生じていると、弾性固定部(弾性マウント部)とサイドメンバとを連結する補強部材は、弾性固定部の下端とフロアサイドメンバとの間の段差にならう屈曲形状が強いられる。
【0007】
このような補強部材の場合、段差に合わせて屈曲されている分だけ、補強部材は変形しやすくなるため、サブフレーム前部からの衝突荷重に対して十分な反力を得られず、衝突荷重を十分に減少させることができないおそれがある。そのため、補強部材は、材料の厚みを増したり材質を変更するなど、剛性強度を増す必要があった。
しかし、単に補強部材の剛性強度を増す手立てだけでは、重量やコストの増加を招くため、改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、コストや重量の増加を抑えた簡単な構成で、前面衝突時の衝突荷重に対するサブフレーム後部の弾性固定部における耐力を向上させる車体前部構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、車室部の前方で車両前後方向に延びるフロントサイドメンバと車室部の下方で車両前後方向に延びるフロアサイドメンバとを有するサイドメンバ部材と、フロントサイドメンバの下方に配置されてサスペンション部材を支持するサブフレームと、サブフレームの後端部に設けられ、弾性マウント部を介してフロントサイドメンバの下部に固定される弾性固定部と、弾性固定部とサブフレーム後方のフロアサイドメンバとを車両前後方向に連結する補強ブラケットとを備え、補強ブラケットは、一端部が弾性マウント部の下端に固定されて車両後方斜め上方に延び、他端部がフロアサイドメンバに固定される第1支持脚と、第1支持脚の一端部から分岐されて車両後方斜め上方へ延び、分岐された端部が第1支持脚とは異なる車室部下部の部材に固定される第2支持脚と、第1支持脚と第2支持脚との間を埋めるとともに、弾性マウント部と車両前後方向で対向するよう設けられる壁部と、壁部に設けられ、弾性マウント部が車体後方側へ傾いた際に同弾性マウント部が嵌まる凹部とを有するものとした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コストや重量の増加を抑制した簡単な構成で、サブフレーム後部の弾性固定部における耐力を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を
図1から
図5に示す一実施形態にもとづいて説明する。
図1は本発明の要部となる車両の車体前部構造を示していて、
図1中1は、フロントシートやリヤシート(いずれも図示せず)などが配置される車室部、3は同車室部1の前部に形成されたパワーユニット収容部をそれぞれ示している(いずれも二点鎖線で図示)。
図1に示されるように車両には、車幅方向に間隔を開けて配置された一対のサイドメンバ部材9が車両の前端部から後端に亘って車両前後方向に延設されている。サイドメンバ部材9は、車室部1の前方で車両前後方向に延びるフロントサイドメンバ17と車室部1の下方で車両前後方向に延びるフロアサイドメンバ15とを含んで構成されている。
【0013】
車室部1の下方に、上記一対のフロアサイドメンバ15と、同フロアサイドメンバ15の車幅方向両側で車室部1の最外側に配置された一対のサイドシル13と、サイドシル13の前端部とフロアサイドメンバ15との間を連結するフロントガセット18(本願のガセットに相当)とが設けられている。ちなみに、サイドシル13、フロアサイドメンバ15は、いずれも車体前後方向に沿って延びる閉断面部材で構成され、フロントガセット18は車幅方向に延びる部材で構成される。
【0014】
一方、車室部1の前方では、フロントサイドメンバ17が、フロアサイドメンバ15の前部から、上下方向に曲成するキックアップ部17aを介して前方へ延在されている。このフロントサイドメンバ17の下側に枠形のサブフレーム19が配置されている。
サブフレーム19は、例えば、フロントサイドメンバ17の前部から後部(キックアップ部17a後方)までの下側にそれぞれ配置される一対の側フレーム21と、同側フレーム21の前後部間に掛け渡された前後フレーム23a,23bとを有した角枠形状に形成される。このサブフレーム19の両側(車幅方向)に、前輪7のサスペンション部材11の各部品(アームやショックアブソーバやスプリングなど:一部しか図示せず)が支持され、前輪7を支える。ちなみに、サブフレーム19の例えば後フレーム23bには、パワートレインの後部がマウント部材(いずれも図示しない)によって支持される。そして、各側フレーム21の前後方向の各端部が、それぞれ弾性固定部25,26を介して、直上のフロントサイドメンバ17に弾性支持されている。
【0015】
すなわち、側フレーム21の後側の弾性固定部26は、
図2および
図3に拡大して示されるように側レール21の後端部に、例えば締結部材としてのボルト部材31が挿通可能な筒状の弾性マウント部29(縦向き)を設けて構成される。具体的には弾性マウント部29は、例えば
図2〜
図4にも示されるように側フレーム21端に結合された外筒33と、ボルト部材31が挿通される内筒34と、外筒33と内筒34との間に設けられるラバーブッシュ35とから構成される。そして、弾性マウント部29の内筒34にボルト部材31が下側から挿通され、このボルト部材31が、直上のフロントサイドメンバ17の下部、具体的にはキックアップ部17aの下部へ締結されることにより、側フレーム21の後端部(弾性固定部26)がフロントサイドメンバ17の下部に固定される。また側フレーム21の前端部の弾性固定部25も、同様に弾性マウント部37を用いて、フロントサイドメンバ17の下部に固定され、サブフレーム19全体が、フロントサイドメンバ17に弾性支持される。これにより、前輪7のサスペンション部材11から入力されるサスペンション入力(振動など)が、フロントサイドメンバ17から車室部1側へ伝わるのを抑えられるようにしている。なお、弾性マウント部37は、弾性マウント部29と同じ構造が用いられているので、詳細な構造については省略する。
【0016】
そして、サブフレーム19の後端部、すなわち側フレーム21の後端部の弾性固定部26には、弾性固定部26と車室部1下方の部材とを前後方向で連結する補強ブラケット39(補強部材)が設けられている。
この補強ブラケット39は、車両の前面衝突時にサブフレーム19前部からの衝突荷重を受けて弾性マウント部29の後方側への倒れを抑制するとともに、衝突荷重をフロアサイドメンバ15およびサイドシル13側(フロントガセット18)へ伝える部品である。左右いずれ共、同じ構造が用いられている。このうち片側の補強ブラケット39の構造を代表的な例として、
図2および
図3の斜視図や
図4の断面図(
図2中のA−A線)を用いて説明する。
【0017】
図2〜
図4に示されるように補強ブラケット39は、板金部材で構成され、弾性マウント部29の下部とフロアサイドメンバ15およびフロントガセット18とを連結するよう弾性マウント部29の下部からV形状に延びるV形脚41を有して構成されている。このV形脚41は、一端が弾性マウント部29の下端に固定され、他端が弾性マウント29の下部から後方のフロアサイドメンバ15の前端部へ向かって直線状に延びる第1支持脚43と、弾性マウント部29の下端からV形に分岐して、第1支持脚43とは異なる車室部下部の部材であるフロントガセット18へ向かって斜めに延びる第2支持脚45とを有している。つまり、第1支持脚43と第2支持脚45とは、一端部から次第に間隔が拡がるV字状に分岐される。
【0018】
このうち第1支持脚43は、一端部に設けられた、弾性マウント部29の下部に固定される固定座部47と、他端部に設けられた、フロアサイドメンバ15の前部下端に固定される固定座部49と、固定座部47から固定座部49へ連続して帯状に延びる中間部51とを有して形成される。そして、第1支持脚43は、弾性マウント部29が下方へ突出した分、ここでは弾性マウント部29の下端部とフロントサイドメンバ15の下端との高さ方向での差分だけ、上下方向に屈曲した段形状とされている。具体的には、高さの異なる固定座部47と固定座部49との間で中間部51が上下方向に傾斜して延びるよう段状に屈曲された形状とされている。つまり中間部51は、一端部の固定座部47から他端部の固定座部49に向かって車両後方斜め上方に延びるよう形成されている。そして、固定座部47が、弾性マウント部29の下端に重ねられた状態で、サブフレーム19(弾性マウント部29)をフロントサイドメンバ17に固定するボルト部材31よって共締めされ、弾性マウント部29の下端に固定される。一方、固定座部49は、例えばボルト部材55にて、キックアップ部17aの後方のフロアサイドメンバ15下端に固定される。なお、固定座部47、固定座部49、中間部51の周りは、連続するフランジ部53で囲まれていて、第1支持脚43の剛性が確保されている。
【0019】
また第2支持脚45は、上記固定座部47から第1支持脚43とV形をなして分岐される分岐部57と、分岐した端部に設けられた、フロントガセット18の下端に固定される固定座部59と、分岐部57から固定座部59へ連続して帯状に延びる中間部61とを有して形成される。そして、第2支持脚45も、弾性マウント部29が下方に突出した分、すなわち弾性マウント部29の下端部とフロントガセット18の下端との高さ方向での差分だけ、上下方向に屈曲した段形状とされている。具体的には、高さの異なる固定座部47と固定座部59との間で中間部61が上下方向に傾斜して延びるよう段状に屈曲された形状とされている。つまり中間部61は、一端部の固定座部47から固定座部59に向かって車両後方斜め上方に延びるよう形成されている。そして、固定座部59は、例えばボルト部材63にて、フロントガセット18の下端に固定される。なお、固定座部59、中間部61の周りも、上記フランジ部53で囲まれていて、第2支持脚45の剛性が確保されている。
【0020】
このように補強ブラケット39は、V形に分岐された第1支持脚43と第2支持脚45からなるV形脚41を有しているので、サブフレーム19の前部から加わる衝突荷重を第1支持脚43および第2支持脚45を介して、フロアサイドメンバ15およびサイドシル13側であるフロントガセット18へ効率よく分散して伝えることができる。
また、この補強ブラケット39には、サブフレーム19の後端部における弾性固定部26の弾性マウント部29の倒れを抑制して衝突荷重(前面衝突)によって変形した後も、継続してサブフレーム19前部からの衝突荷重を受けて、フロントサイドメンバ15やサイドシルへ衝突荷重を伝達し続けられるように構造が工夫されている。
【0021】
すなわち、補強ブラケット39のV形脚41の間、つまりV形に分岐された第1支持脚43と第2支持脚45との間には、壁部65が設けられている。そして、この壁部65の中央部分に車体後方へ凹む凹部67が形成されている。
【0022】
具体的には
図2および
図3に示されるように壁部65は、例えばV形脚41を形成する第1支持脚43と第2支持脚45間のV形の開放部分を埋めるように設けられる。ここでは壁部65は、V形の開放部分の頂部から、各支持脚43,45の中間部分までの開放部分の領域を塞ぐように設けられている。そして、壁部65は、第1支持脚43と第2支持脚45の中間部51、61の延設方向に沿って上下方向に傾斜するように設けられる。これにより、壁部65は、弾性マウント部29と外周方向で対向するように配置される。つまり、傾斜した壁部65は、弾性マウント部29と車両後方側から対向するよう設けられる。
【0023】
凹部67は、壁部65のうち、固定座部47寄りに設けられ、固定座部47側(下方側)に向かって次第に凹みが深くなるよう形成される。同凹部67は、弾性マウント部29と対向して設けられる。具体的には凹部67は、弾性マウント部29が車体後方へ倒れたときに、弾性マウント部29の下側の外周縁部である下側角部29aを受ける凹みで形成される。さらに述べると凹部67は、サブフレーム19の前部から加わる衝突荷重で、各支持脚43,45や壁部65が車体後方へ屈曲変形し、弾性マウント部29を固定しているボルト部材31がフロントサイドメンバ17側を支点に車体後方へ所定量傾いたときに、車体後側へ押し出される弾性マウント部29の下側角部29a、つまり外筒33の下端縁部が嵌る大きさの凹みで形成されている。例えば凹部67は、
図2〜
図4に示されるように傾いたときの弾性マウント部29の下側角部29a(外筒33の下端縁部)の形状に対応して、固定座部47へ近づくにしたがい次第に深さが増す半円形状の凹みで形成される。ちなみに、この凹部67の凹み形状のうち、67aは弾性マウント部29の下側角部29aに対応する稜線、67bは同稜線67aに連なる下側角部29aの下面に対応する底面、67cは上記同稜線67aに連なる下側角部29aの外周面に対応する側壁面(側面)をそれぞれ示している。
【0024】
つまり、衝突荷重により補強ブラケット39が変形し、弾性マウント部29(ボルト部材31)が車体後方へ所定量、傾いた場合に、凹部67内に弾性マウント部29の下側角部29aが嵌るように構成されており、弾性マウント部29が凹部67内に嵌まることで弾性マウント部29の傾き(後退)と補強ブラケット39の変形が抑制される仕組みとなっている。これにより、補強ブラケット39は、変形が始まってからも衝突荷重に対して反力を得て、より長い期間、衝突荷重を受け止めることができるようにしている。
【0025】
つぎに、
図4および
図5(a), (b)を用いて車両の前面衝突時における本実施形態の作用・効果について説明する。
例えば車両の前面衝突により、衝突荷重F1がフロントサイドメンバ17の前部やサブフレーム19の前部へ加わったとする。
すると、フロントサイドメンバ17では、前端部から圧縮変形されて加わる衝突荷重F1を吸収しながらキックアップ部17a後方のフロアサイドメンバ15へ伝達する。
【0026】
一方、サブフレーム19へ加わる衝突荷重F1は、サブフレーム19後端部の弾性マウント部29を補強している補強ブラケット39の第1支持脚43および第2支持脚45を介して、フロアサイドメンバ15やフロントガセット18へ伝わる。
そして、補強ブラケット39が、加わる衝突荷重F1に耐えきれなくなると、
図5(a)に示されるように第1支持脚43および第2支持脚45の中間部51、61が、後方側に湾曲するように変形し始める。つまり、補強ブラケット39が後方に湾曲変形され始める。この補強ブラケット39の変形により、
図2中の二点鎖線や
図5(a)に示されるようにボルト部材31は、フロントサイドレール17側を支点として、車体後方である第1支持脚43と第2支持脚45間へ傾く。つまり、弾性マウント部29が車体後方へ傾き、凹部67に嵌り込む。
【0027】
具体的には、車体後方へ押し出される弾性マウント部29の下側角部29aが凹部67内へ入り込み、側壁面67cと当接して引っ掛かった状態となる。なお、
図5(a)中の符号αは、その下側角部29aと凹部67の稜線67a付近の壁面部分とだけが接触した状態を示している。
そして、補強ブラケット39の屈曲変形が進行するにしたがい、
図5(b)に示されるように次第に凹部67の側壁面67cに対する弾性マウント部29の接触領域が増加する。これにより、弾性マウント部29に対する補強ブラケット39の抵抗が増し、弾性マウント部29の後退が補強ブラケット39によって抑制される。同時に補強ブラケット39は、弾性マウント部29によってそれ以上の変形が抑制される。つまり、補強ブラケット29は、変形した状態でも反力を維持して衝突荷重F1を受けることができる。
【0028】
それ故、補強ブラケット39は、変形し始めてからもしばらくは衝突荷重F1に対する反力を得ることができるので、従来のものより長くサブフレーム19前部からの衝突荷重F1を受けて、フロアサイドメンバ15やサイドシル13側のフロントガセット18へ分散させ続けることができる。
特に弾性マウント部29の外周面と凹部67の側壁面67cとが接触する領域(接触面積)は、補強ブラケット39の変形が進行するにしたがい大きくなるので、効果的に衝突荷重F1を吸収しながらサイドレール15やサイドシル13へ衝突荷重F1が伝えられる。それだけでなく、変形の進行により、
図5(b)に示されるように荷重付加位置も、当初の最も下側のα位置からフロントサイドレール17に近づくβ位置へと変化するので、ボルト部材31や弾性マウント部29に加わる曲げモーメントも抑えられる。これにより、より長期間に亘って衝突荷重F1を補強ブラケット39で受けることができ、効果的に衝突荷重F1を減少させることが可能となる。すなわち、サブフレーム19後端部の弾性固定部26における耐力を向上させることができる。
【0029】
しかも、衝突荷重F1を伝える構造は、V形に配置された第1支持脚43と第2支持脚45間のV形の開放部分を壁部65で塞ぎ、同壁部65に、弾性マウント部29を受ける凹部67を形成するだけでよく、構造は簡単であり、コストや重量の増加を極力抑えることができる。
そのうえ、凹部67は、弾性マウント部29の下側角部29aの一部形状に相当する開口とし、V形脚41の固定座部47(補強ブラケット39の一端部)に近づくにしたがい深さが次第に増す凹み形状にするといった、予め倒れる弾性マウント部29の姿勢に対応した形状に設定してあるので、倒れる弾性マウント部29を最も効果的に受けることができ、衝突荷重F1の伝達には最も有効である。
【0030】
以上説明したようにコストや重量の増加を抑えた簡単な構成で、サブフレーム19に作用する衝突荷重F1をフロアサイドメンバ15やサイドシル13側へ効果的に分散して伝達することができ、サブフレーム19後端部の弾性固定部26における耐力を向上することができる。
なお、上述した一実施形態における各構成およびその組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能であることはいうまでもない。また本発明は、一実施形態によって限定されることはなく、「特許請求の範囲」によってのみ限定されることはいうまでもない。