【解決手段】甲板上でホールドを挟んで設けられ、貨物を吊り下げるジブ22、及び前記甲板から上方に向かう第一軸線O1回りに旋回可能であるとともに、上方の端部で第一軸線O1と交差する方向に延びる第二軸線O2回りに俯仰可能にジブ22を支持するクレーン本体21をそれぞれ有する一対のデッキクレーン2と、クレーン本体21を第一軸線O1回りに旋回させるとともに、ジブ22を第二軸線O2回りに俯仰させる駆動部と、一対のジブ22が旋回、及び俯仰の少なくとも一方を行う場合に、これらジブ22同士の相対距離が予め定められた値以上になるように前記駆動部を制御する制御装置と、を備える船上デッキクレーン設備。
前記第一軸線の周方向に互いに間隔を空けて設けられ、オン状態とされることで前記クレーン本体の前記第一軸線回りの旋回を停止させる旋回停止信号を前記制御装置に送出する一対の旋回用リミットスイッチと、
前記第二軸線の周方向に互いに間隔を空けて設けられ、オン状態とされることで前記ジブの前記第二軸線回りの俯仰を停止させる俯仰停止信号を前記制御装置に送出する一対の俯仰用リミットスイッチと、
を備え、
前記危険領域は、前記ジブの動作する空間内で、前記一対の旋回用リミットスイッチ、及び前記一対の俯仰用リミットスイッチによって画定される請求項2に記載の船上デッキクレーン設備。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された装置では、クレーン同士の接近検知が、無線による信号の授受で行われることから、周囲の環境条件によっては検知の精度が影響を受ける可能性がある。このため、上記の装置をデッキクレーンとして船上に設置した場合、荷役作業の効率性が限定的となってしまう。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであって、より安定的かつ効率的に運用することが可能な船上デッキクレーン設備、船上デッキクレーン設備の制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の一態様に係る船上デッキクレーン設備は、船舶の甲板上に開口するとともに、前記開口を通じて貨物を収容するホールドと、前記甲板上で前記ホールドを挟んで設けられ、前記貨物を吊り下げるジブ、及び前記甲板から上方に向かう第一軸線回りに旋回可能であるとともに、上方の端部で前記第一軸線と交差する方向に延びる第二軸線回りに俯仰可能に前記ジブを支持するクレーン本体をそれぞれ有する一対のデッキクレーンと、前記クレーン本体を前記第一軸線回りに旋回させるとともに、前記ジブを前記第二軸線回りに俯仰させる駆動部と、前記一対のジブが旋回、及び俯仰の少なくとも一方を行う場合に、これらジブ同士の相対距離が予め定められた値以上になるように前記駆動部を制御する制御装置と、を備える。
【0009】
上記の構成によれば、駆動部によるデッキクレーンの旋回、及びジブの俯仰に際して、ジブ同士の相対距離が予め定められた値以上になるように制御される。これにより、ジブ同士が衝突する可能性を低減することができる。
【0010】
本発明の一態様に係る船上デッキクレーン設備では、前記ジブが動作する空間内で、一対の前記ジブ同士の軌跡が互いに重なる領域である危険領域が画定され、前記制御装置は、前記一対のジブの旋回及び俯仰を前記危険領域の外側で停止させる停止制御部を有してもよい。
【0011】
上記の構成によれば、これらジブ同士の旋回、俯仰時の軌跡が重なる領域が、危険領域として画定される。停止制御部はそれぞれのジブが当該危険領域内に侵入する前に、その外側で停止させることから、ジブ同士が衝突する可能性を低減することができる。
【0012】
本発明の一態様に係る船上デッキクレーン設備は、前記第一軸線の周方向に互いに間隔を空けて設けられ、オン状態とされることで前記クレーン本体の前記第一軸線回りの旋回を停止させる旋回停止信号を前記制御装置に送出する一対の旋回用リミットスイッチと、前記第二軸線の周方向に互いに間隔を空けて設けられ、オン状態とされることで前記ジブの前記第二軸線回りの俯仰を停止させる俯仰停止信号を前記制御装置に送出する一対の俯仰用リミットスイッチと、を備え、前記危険領域は、前記ジブの動作する空間内で、前記一対の旋回用リミットスイッチ、及び前記一対の俯仰用リミットスイッチによって画定されてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、旋回動作に伴って旋回用リミットスイッチがオン状態とされることで、クレーン本体の危険領域への侵入を検知することができるとともに、これに基づいて旋回動作を停止させることができる。同様に、俯仰用リミットスイッチがオン状態とされることで、ジブの危険領域への侵入を検知することができるとともに、これに基づいて俯仰動作を停止させることができる。
【0014】
本発明の一態様に係る船上デッキクレーン設備は、前記クレーン本体の前記第一軸線回りの角度座標としての旋回座標を検出する旋回検出部と、前記ジブの前記第二軸線回りの角度座標としての俯仰座標を検出する俯仰検出部と、を有し、前記制御装置は、一方の前記ジブの前記旋回座標、及び前記俯仰座標を基準として、その大小両側に、予め定められたマージン量の分だけ広がる数値範囲をそれぞれ設定することで前記危険領域を形成し、他方の前記ジブの旋回及び俯仰を前記危険領域の外側で停止させる停止制御部を有してもよい。
【0015】
上記の構成によれば、危険領域はクレーン本体の旋回座標、及びジブの俯仰座標に基づいて、適宜に決定される。これにより、危険領域を画一的に設定した場合に比べて、それぞれのデッキクレーンの動作可能な範囲を広く確保することができる。
【0016】
さらに、本発明の一態様に係る船上デッキクレーン設備では、前記旋回検出部、及び前記俯仰検出部は、ロータリエンコーダであってもよい。
【0017】
上記の構成によれば、ロータリエンコーダを用いることで、旋回検出部、及び俯仰検出部を低廉かつ容易に構成することができる。
【0018】
本発明の一態様に係る船上デッキクレーン設備は、前記甲板上で前記船舶の航行方向に互いに間隔を空けて配列された複数の前記ホールドと、前記複数のホールド同士の間にそれぞれ設けられた上記のいずれか一態様に係る複数のデッキクレーンと、を備えてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、複数のホールド、及びデッキクレーンを備えることにより、荷役作業に要する時間とコストをさらに低減することができる。
【0020】
本発明の一態様に係る船上デッキクレーン設備の制御方法は、船舶の甲板上に開口するとともに、前記開口を通じて貨物を収容するホールドと、前記甲板上で前記ホールドを挟んで設けられ、前記貨物を吊り下げるジブ、及び前記甲板から上方に向かう第一軸線回りに旋回可能であるとともに、上方の端部で第二軸線回りに俯仰可能に前記ジブを支持するクレーン本体をそれぞれ有する一対のデッキクレーンと、前記クレーン本体を前記第一軸線回りに旋回させるとともに、前記ジブを前記第二軸線回りに俯仰させる駆動部と、前記駆動部を制御する制御装置と、を備える船上デッキクレーン設備の制御方法であって、一方の前記ジブが、一対の前記ジブ同士の軌跡が互いに重なる領域である危険領域内に位置するか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにて、前記ジブが前記危険領域内に位置すると判定された場合に、前記一対のジブの旋回又は俯仰を前記危険領域の外側で停止させる停止ステップと、を含む。
【0021】
上記の方法によれば、判定ステップによっていずれか一方のジブが危険領域内に位置すると判定された場合に、一対のジブをともに停止させることで、さらなる安全を確保することができる。
【0022】
本発明の一態様に係る船上デッキクレーン設備の制御方法では、前記船上デッキクレーン設備は、前記ジブの旋回時又は俯仰時における軌跡上に配置されるとともに、該ジブと当接することでオン状態とされるリミットスイッチを備え、前記判定ステップでは、前記リミットスイッチがオン状態とされた場合に、前記ジブが前記危険領域内に位置すると判定してもよい。
【0023】
上記の方法によれば、リミットスイッチがオン状態とされることで、ジブの危険領域への侵入を判定するとともに、この判定に基づいてジブの動作を停止させることができる。
【0024】
本発明の一態様に係る船上デッキクレーン設備の制御方法では、前記判定ステップは、前記クレーン本体の前記第一軸線回りの角度座標としての旋回座標、及び前記ジブの前記第二軸線回りの角度座標としての俯仰座標を検出するとともに、一方の前記ジブの前記旋回座標、及び前記俯仰座標を基準として、その大小両側に、予め定められたマージン量の分だけ広がる数値範囲をそれぞれ設定することで前記危険領域を画定するステップを含んでもよい。
【0025】
上記の方法によれば、危険領域はクレーン本体の旋回座標、及びジブの俯仰座標に基づいて、適宜に決定される。これにより、危険領域を画一的に設定した場合に比べて、それぞれのデッキクレーンの動作可能な範囲を広く確保することができる。
【0026】
本発明の一態様に係るプログラムは、船舶の甲板上に開口するとともに、前記開口を通じて貨物を収容するホールドと、前記甲板上で前記ホールドを挟んで設けられ、前記貨物を吊り下げるジブ、及び前記甲板から上方に向かう第一軸線回りに旋回可能であるとともに、上方の端部で第二軸線回りに俯仰可能に前記ジブを支持するクレーン本体をそれぞれ有する一対のデッキクレーンと、前記クレーン本体を前記第一軸線回りに旋回させるとともに、前記ジブを前記第二軸線回りに俯仰させる駆動部と、前記駆動部の駆動状態を制御する制御装置と、を備える船上デッキクレーン設備における前記制御装置のコンピュータを、前記一対のジブが旋回、及び俯仰の少なくとも一方を行う場合に、これらジブ同士の相対距離が予め定められた値以上になるように前記駆動部を制御する衝突防止制御手段として機能させる。
【0027】
上記のプログラムによれば、駆動部によるデッキクレーンの旋回、及びジブの俯仰に際して、ジブ同士の相対距離が予め定められた値以上になるように制御される。これにより、ジブ同士が衝突する可能性を低減することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、十分な分離性能を備えるとともに、種々の環境下で使用することが可能な気液分離装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る船舶100は、コンテナやバルク貨物等の貨物を運搬に供される貨物運搬船である。
図1に示すように、船舶100の甲板101上には、これら貨物の荷役作業を行うための船上デッキクレーン設備1が設けられている。
【0031】
この船上デッキクレーン設備1は、上記船舶100の甲板101上に設けられた複数の船倉102(ホールド102)と、ホールド102に対して貨物を搬出入するための複数のデッキクレーン2と、これらデッキクレーン2を駆動するための駆動部3と、駆動部3の動作を制御する制御装置4と、を備えている。
【0032】
ホールド102は、甲板101上に形成された開口部103から、船底方向に向かって凹状に形成された空間である。ホールド102内には例えばコンテナ等の貨物が多数収容される。本実施形態に係る船舶100では、複数のホールド102が、該船舶100の航行方向に間隔を空けて配列されている。互いに隣接する一対のホールド102同士の間の領域には、デッキクレーン2が設けられている。
【0033】
デッキクレーン2は、
図1又は
図2に示すように、甲板101上から上方に延びる旋回塔21(クレーン本体21)と、旋回塔21の上端部で回動可能に支持されるジブ22と、ジブ22の先端部から垂下されるワイヤ23、及び貨物を吊り下げるフック24と、を備えている。
【0034】
旋回塔21は、甲板101に対して略直交する方向に延びる第一軸線O1回りに回動可能とされている。より詳細には、旋回塔21は、甲板101に対して略垂直に固定されるポスト25と、このポスト25の上方で第一軸線O1回りに回動可能に支持される台板26と、台板26の上方に設けられた上部構造体27と、を有している。ポスト25は、軸受装置等を介して台板26を第一軸線O1回りに回動可能に支持する。上部構造体27には、例えばオペレータが搭乗する運転室や、後述するジブ22を支持するための支持装置(不図示)が収容される。
【0035】
ジブ22は、旋回塔21の上方で第二軸線O2回りに回動可能に支持されている。この第二軸線O2は上記第一軸線O1と交差(直交)するとともに、甲板101に対しておおむね平行をなす方向に延びる回転軸線である。以下の説明では、旋回塔21の第一軸線O1回りの回動動作を旋回動作と呼び、ジブ22の第二軸線O2回りの回動動作を俯仰動作と呼ぶ。
【0036】
これら旋回動作、及び俯仰動作は、いずれも駆動部3によって行われる。駆動部3は、旋回塔21の旋回動作を行う旋回駆動部31と、ジブ22の俯仰動作を行うための俯仰駆動部32と、を有している。これら旋回駆動部31、及び俯仰駆動部32は、一例として電動モータや、油圧駆動ウインチ等によって構成される。特に、ジブ22を俯仰させるに当たっては、後者の油圧駆動ウインチが好適に用いられる。具体的には、ウインチのドラムに巻回されるチェーンやワイヤ23等の巻出し、又は巻き取りによってジブ22を第二軸線O2回りに俯仰させる構成が考えられる。
【0037】
さらに、上記の旋回塔21、及びジブ22には、旋回用リミットスイッチ51と、俯仰用リミットスイッチ52とが設けられている。これら旋回用リミットスイッチ51及び俯仰用リミットスイッチ52は、旋回塔21の旋回する範囲と、ジブ22の俯仰する範囲を規制するためのものである。特に、本実施形態における船舶100では、甲板101上でホールド102を挟んで一対のデッキクレーン2が配置されている。一例として
図3又は
図4に示すように、これら一対のデッキクレーン2を用いて1つのホールド102に対する荷役を行う状況では、ジブ22同士の衝突を回避する必要がある。
【0038】
そこで、本実施形態では、互いに隣り合う一対のデッキクレーン2におけるジブ22同士の軌跡が重なる領域を、危険領域Z1として規定している。
図3に示すように、旋回塔21の旋回に伴ってジブ22(特に、ジブ22の先端部)が描く軌跡は、第一軸線O1を中心とする円弧となる。同様に、隣接する他方のデッキクレーン2におけるジブ22も、自身の第一軸線O1を中心とする円弧状の軌跡を描く。このとき、一方のジブ22の軌跡は、他方のジブ22の軌跡と、2点で交わる。
図3上ではこれらジブ22の先端部の軌跡同士が重なる点を、それぞれ点S1,点S2と呼ぶ。すなわち、上記の危険領域Z1は、これら点S1,点S2を繋ぐ2つの円弧によって画定される。
【0039】
上記の危険領域Z1に対するジブ22の侵入を回避するため、旋回塔21は、一対の旋回用リミットスイッチ51と、これら旋回用リミットスイッチ51と当接することでオン/オフを切り替える旋回用キッカー53と、を備えている。
【0040】
一対の旋回用リミットスイッチ51は、例えばポスト25上で第一軸線O1の周方向に互いに間隔を空けて固定されている。より詳細には、これら旋回用リミットスイッチ51は、第一軸線O1の周方向において、上記した危険領域Z1の点S1,点S2に対応する位置に設けられる。
【0041】
旋回用キッカー53は、台板26上における任意の箇所に固定されることで、旋回用リミットスイッチ51と当接する部材である。望ましくは、このキッカーは、第一軸線O1の周方向においてジブ22の延びる位置とおおむね同一の位置に設けられる。
【0042】
以上のような構成により、旋回部が旋回動作(すなわち、ポスト25に対する台板26の回動)を行うに際して、台板26に設けられた旋回用キッカー53が、いずれか一方の旋回用リミットスイッチ51に当接すると、この旋回用リミットスイッチ51はオン状態となる。詳しくは後述するが、オン状態となった旋回用リミットスイッチ51は、旋回塔21の旋回動作を停止させるためのトリガーとなる旋回停止信号を電気信号として送出する。
【0043】
さらに、本実施形態におけるデッキクレーン2では、上記した旋回用リミットスイッチ51に加えて、一対の旋回警告用リミットスイッチ54が設けられている。これら旋回警告用リミットスイッチ54は、いずれも旋回用リミットスイッチ51と同様の構成を有しているが、設けられる位置が異なっている。
【0044】
具体的には、旋回警告用リミットスイッチ54は、ポスト25上における旋回用リミットスイッチ51に対して、第一軸線O1の周方向に離間した位置にそれぞれ設けられている。すなわち、これら4つのリミットスイッチは、第一軸線O1回りの円周上における一方側から他方側に向かって、一方の旋回警告用リミットスイッチ54、一方の旋回用リミットスイッチ51、他方の旋回警告用リミットスイッチ54、他方の旋回用リミットスイッチ51の順に配列されている。
【0045】
このような旋回警告用リミットスイッチ54により、上記の危険領域Z1の外側(周方向外側)には、点C1,点C2の2つの点により、2つの旋回警告領域Z2が画定される。旋回警告領域Z2は、危険領域Z1の周方向両側に隣接して設けられる。より詳細には、それぞれの旋回警告領域Z2は、第一回転軸線を中心として、点S1と点C1とを結ぶ円弧によって画定される。
【0046】
旋回塔21の旋回動作中に、上記の旋回用キッカー53が一対の旋回警告用リミットスイッチ54のうちのいずれか一方に当接した場合、当該旋回警告用リミットスイッチ54はオン状態となる。オン状態となった旋回警告用リミットスイッチ54は、上記の旋回用リミットスイッチ51と同様に、制御装置4に対して旋回警告信号を電気信号として送出する。
【0047】
さらに、本実施形態に係るデッキクレーン2では、旋回塔21の旋回動作に加えて、ジブ22の俯仰動作の範囲を規制する俯仰用リミットスイッチ52、及び俯仰警告用リミットスイッチ55と、これらリミットスイッチに当接する俯仰用キッカー56と、が設けられている。
【0048】
俯仰用リミットスイッチ52、及び俯仰警告用リミットスイッチ55は、例えばデッキクレーン2の上部構造体27の内部に設けられることで、
図4に示すようなジブ22の俯仰動作における危険領域Z1を画定する。より詳細には、ホールド102を挟んで互いに対向する一対のデッキクレーン2のジブ22が描く軌跡が重なる領域である危険領域Z1と、これに隣接する俯仰警告領域Z3とが画定される。
【0049】
俯仰用キッカー56は、ジブ22の俯仰に際して、上記の俯仰用リミットスイッチ52、俯仰警告用リミットスイッチ55に対してそれぞれ当接することが可能な位置に設けられる。俯仰動作に伴って、ジブ22が上記危険領域Z1、又は俯仰警告領域Z3に近接した場合、俯仰用キッカー56が俯仰警告用リミットスイッチ55に当接することで、制御装置4に対して俯仰警告信号が送出される。同様に、俯仰用キッカー56が俯仰用リミットスイッチ52に当接することで、制御装置4に対して俯仰停止信号が送出される。
【0050】
なお、上記の旋回用リミットスイッチ51、旋回警告用リミットスイッチ54、俯仰用リミットスイッチ52、俯仰警告用リミットスイッチ55は、デッキクレーン2の旋回動作、及びジブ22の俯仰動作を物理的に規制するものではない。言い換えれば、上記の旋回用キッカー53が旋回用リミットスイッチ51、又は旋回警告用リミットスイッチ54に当接した後も旋回塔21、又はジブ22の物理的な回動は規制されない。同様に、俯仰用キッカー56が俯仰用リミットスイッチ52、又は俯仰警告用リミットスイッチ55に当接した後もジブ22の物理的な回動は規制されない。
さらに、ジブ22の動作可能な範囲において、上述の危険領域Z1と警告領域を除く領域は可動領域ZSとされている。すなわち、ジブ22がこの可動領域ZS内にある場合には、当該ジブ22は、オペレータの指示に基づいて自在に動作することができる。
【0051】
制御装置4は、上記した旋回用リミットスイッチ51、旋回警告用リミットスイッチ54、俯仰用リミットスイッチ52、俯仰警告用リミットスイッチ55、及び駆動部3(旋回駆動部31、俯仰駆動部32)に対して電気的に接続されている。これにより、制御装置4は、上記した旋回警告信号、旋回停止信号、俯仰警告信号、俯仰停止信号の入力に基づいて、駆動部3(旋回駆動部31、俯仰駆動部32)の動作を制御する。
【0052】
具体的には、制御装置4は、
図11に示すように、警告信号生成部41と、停止制御部42と、主記憶部43と、外部記憶部44と、を有している。警告信号生成部41は、上記の旋回警告信号の入力に基づいて、ジブ22が旋回警告領域Z2に入った旨を不図示の警告用ブザーや警告用ランプなどを通じてデッキクレーン2のオペレータに通知する。同様にして、警告信号生成部41に俯仰警告信号が入力された場合には、ジブ22が俯仰警告領域Z3に入った旨をオペレータに通知する。これにより、オペレータは、自身の操作するデッキクレーン2のジブ22が、旋回動作、又は俯仰動作の安全限界(危険領域Z1)に近づいていることを認知する。
【0053】
停止制御部42は、上記の旋回用リミットスイッチ51から入力された旋回停止信号、又は俯仰用リミットスイッチ52から入力された俯仰停止信号に基づいて、駆動部3(旋回駆動部31、俯仰駆動部32)に対して旋回停止命令、又は俯仰停止命令を送出する。旋回停止命令を受け取った旋回駆動部31はオペレータの操作状況を問わず、強制的に停止される。同様に、俯仰停止命令を受け取った俯仰駆動部32は強制的に停止される。これにより、デッキクレーン2の旋回、及びジブ22の俯仰に際して、ジブ22同士の相対距離は、予め危険領域Z1、及び警告領域が定められていることによって、荷役作業中を通じて一定の値以上になるように制御される。
【0054】
以上のような警告信号生成部41、及び停止制御部42は、コンピュータ上で実行可能なプログラム(プログラムモジュール)として、上記の外部記憶部44に格納され、不図示のCPUによる指令に基づいて、主記憶部43上に呼び出されて実行される。また、これらプログラムモジュールの相互に授受される電気信号に係るプロトコル等も外部記憶部44に適宜格納されている。また、本実施形態における制御装置としては、PLC(プログラマブル ロジック コントローラ)が好適に用いられる。
【0055】
次に、本発明の第一実施形態に係る船上デッキクレーン設備1の動作、及びその制御方法について、主に
図5を参照して説明する。なお、
図5における表記では、一対のデッキクレーン2のうち、一方のデッキクレーン2をNo.1と表し、他方のデッキクレーン2をNo.2と表している。さらに、同図中におけるL/Sは、リミットスイッチの略号を表している。
【0056】
さらに、以下で説明する制御方法においては、旋回動作、及び俯仰動作のいずれか一方を制御対象とする場合について説明する。すなわち、旋回動作のみを制御対象とする場合には、上述の旋回警告用リミットスイッチ54、及び旋回用リミットスイッチ51のみに通電される。一方で、俯仰動作のみを制御対象とする場合には、俯仰警告用リミットスイッチ55、及び俯仰用リミットスイッチ52のみに通電される。いずれの場合も制御に係る各ステップは同様であることから、以下では旋回動作のみを制御対象とした場合について代表的に説明する。
【0057】
図5に示すように、船上デッキクレーン設備1を運転するに当たっては、まず、制御対象となる一対のジブ22を、それぞれ上記の可動領域ZS内に配置するステップS10を実行する。このステップS10は、例えば双方のデッキクレーン2のオペレータによって実行される。
【0058】
一対のジブ22がそれぞれの可動領域ZS内にあることが確認された状態で、制御装置4による制御を開始する(
図5におけるステップS11)。具体的には、このステップS11では、制御装置4に電源が投入される。これに伴って、旋回用リミットスイッチ51、旋回警告用リミットスイッチ54がそれぞれ通電状態となる。このステップS11を実行した後で、なおもジブ22の位置が危険領域Z1内にあると制御装置4が判定した場合には、再びステップS10に戻る。このとき、制御装置4はジブ22が危険領域Z1内にあることを警告する。この警告に基づいて、オペレータはジブ22を可動領域ZS内に配置し直す(ステップS12)。
【0059】
上記のステップS12を完了することで、制御装置4は、船上デッキクレーン設備1の衝突防止制御を開始する(ステップS12−1)。すなわち、制御装置4は、オペレータの指示に基づいて、一対のデッキクレーン2をそれぞれ動作させることで、荷役作業を行う(ステップS13)。
【0060】
この荷役作業の継続中にわたって、制御装置4の停止制御部42は、上記した旋回警告用リミットスイッチ54のオン/オフ状態を断続的に判定する(ステップS14)。
【0061】
上記のステップS14で、旋回警告用リミットスイッチ54がオフ状態であると判定された場合には、オペレータは通常の操作を続行する。つまり、上記のステップS13を継続する。
【0062】
一方で、ジブ22の旋回動作に伴って、旋回用キッカー53が旋回警告用リミットスイッチ54に当接した場合、当該旋回警告用リミットスイッチ54はオン状態となる。オン状態となった旋回警告用リミットスイッチ54は、停止制御部42に対して旋回警告信号を送出する。旋回警告信号が入力された停止制御部42は、警告信号生成部41に対する信号を出力する。続いて、警告信号生成部41は、警告用ブザー、及び警告用ランプに信号を送る。これにより、警告用ブザーが鳴動するとともに、警告用ランプが点灯する(ステップS15)。
【0063】
さらに、上記の制御装置4は、旋回用リミットスイッチ51のオン/オフ状態も断続的に判定する(ステップS16/判定ステップ)。この判定は、上記制御装置4における停止制御部42によって、デッキクレーン2ごとに独立して行われる。
【0064】
ジブ22が上記ステップS14とステップ15とを経て、旋回警告領域Z2に侵入した後もなお同一方向への旋回動作を継続した場合、ジブ22(旋回用キッカー53)は上述の旋回用リミットスイッチ51に当接する。これにより、当該旋回用リミットスイッチ51はオン状態となる。オン状態となった旋回用リミットスイッチ51は、自身の制御装置4における停止制御部42に旋回停止信号を送出する。旋回停止信号を受け取った一方の制御装置4は、他方のデッキクレーン2における停止制御部42に対しても旋回停止信号を送出する。旋回停止信号を受け取ったそれぞれの停止制御部42は、各デッキクレーン2の旋回駆動部31を強制的に停止する(ステップS17/停止ステップ)。
すなわち、このステップS17では、一方のデッキクレーン2のみで旋回停止信号が送出された場合であっても、他方のデッキクレーン2における停止制御部42が、該他方のデッキクレーン2を強制停止する。
【0065】
その後、ステップS18として、停止したデッキクレーン2(ジブ22)の復旧が行われる。この復旧作業では、一例としてオペレータの指示に基づいて、ジブ22は、上記の可動領域ZS側に移動する。この復旧作業を経て、再び上述のステップS13に遷移し、荷役作業が再開される。
【0066】
なお、上記のような衝突防止制御は、1つのホールド102に対して一対のデッキクレーン2を用いた荷役作業を行う場合にのみ実行される。すなわち、1つのホールド102に対して1つのデッキクレーン2を用いた荷役作業を行う場合には、制御装置4の電源をオフとすることで、該制御装置4は、衝突防止制御を終了する(ステップS19)。以上により、本実施形態に係る船上デッキクレーン設備1の制御方法に各ステップが完了する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態に係る船上デッキクレーン設備1、及びその制御方法によれば、デッキクレーン2の旋回、及びジブ22の俯仰に際して、ジブ22同士の相対距離が予め定められた値以上になるように制御される。これにより、ジブ22同士が衝突する可能性を低減することで、より安定的かつ効率的な運用を実現することができる。
【0068】
さらに、ジブ22同士の旋回、俯仰時の軌跡が重なる領域が、危険領域Z1として画定される。停止制御部42はそれぞれのジブ22が当該危険領域Z1内に侵入する前に、その外側で停止させることから、ジブ22同士が衝突する可能性を低減することができる。
【0069】
加えて、上記の構成によれば、旋回動作に伴って旋回用リミットスイッチ51がオン状態とされることで、クレーン本体21の危険領域Z1への侵入を検知することができるとともに、これに基づいて旋回動作を停止させることができる。同様に、俯仰用リミットスイッチ52がオン状態とされることで、ジブ22の危険領域Z1への侵入を検知することができるとともに、これに基づいて俯仰動作を停止させることができる。
さらに加えて、上記の制御方法においては、判定ステップでいずれか一方のジブ22が危険領域Z1内に位置すると判定された場合には、一対のジブ22をともに停止させることで、さらなる安全を確保することができる。
【0070】
また、本実施形態では、危険領域Z1のさらに外側に警告領域(旋回警告領域Z2、俯仰警告領域Z3)がそれぞれ設けられていることから、危険領域Z1にジブ22が侵入するに先立って、オペレータへの警告が行われる。これにより、オペレータに対して予め注意を促すことができるとともに、急激にジブ22が停止されることによる安全性の低下を回避することができる。
【0071】
以上、本発明の第一実施形態に係る船上デッキクレーン設備1、及びその制御方法について図面を参照して説明した。しかしながら、上記の実施形態は一例に過ぎず、種々の変更を加えることが可能である。
【0072】
例えば、上述の実施形態では、制御方法として、旋回動作、及び俯仰動作のいずれか一方のみを制御対象とした場合について説明した。しかしながら、これら旋回動作、及び俯仰動作を同時に制御対象とすることも可能である。
【0073】
旋回動作と俯仰動作が同時に制御対象とする場合には、具体的には
図6に示す各ステップを実行する。なお、
図6における各ステップのうち、ステップS141、及びステップS161を除く各ステップは、第一実施形態にて説明した
図5の各ステップと同様である。ステップS141では、一対の旋回警告用リミットスイッチ54、及び一対の俯仰警告用リミットスイッチ55におけるそれぞれのオン/オフ状態が断続的に判定される。
【0074】
ステップS141において、一方の制御装置4は自身のデッキクレーン2の旋回警告用リミットスイッチ54、俯仰警告用リミットスイッチ55のいずれか1つがオン状態となった時に、他方のデッキクレーン2における旋回警告用リミットスイッチ54、俯仰警告用リミットスイッチ55が全てオフ状態であれば、制御装置4(警告信号生成部41)は上記の警告(警告用ブザーの鳴動、警告用ランプの点灯)は行わない。
【0075】
一方で、旋回動作、又は俯仰動作に伴って、上記4つのリミットスイッチ(一対の旋回警告用リミットスイッチ54、及び一対の俯仰警告用リミットスイッチ55)のうち、2つ以上がオン状態となった場合(すなわち、上記の条件Aが満たされない場合)には、制御装置4は、警告用ブザーの鳴動、及び警告用ランプの点灯を行う(ステップS15)。
【0076】
さらに、制御装置4は、旋回用リミットスイッチ51のオン/オフ状態も断続的に判定する(ステップS161)。ジブ22が
図6のステップS14とステップ15とを経て、旋回警告領域Z2、又は俯仰警告領域Z3に侵入した後もなお同一方向への旋回動作を継続された場合、言い換えると、上記の条件Aが当該ステップS161においても満たされていると判定された場合、停止制御部42は、旋回駆動部31を強制的に停止する(ステップS17/停止ステップ)。
特に、このステップS17では、一方のデッキクレーン2のみで旋回停止信号が送出された場合であっても、他方のデッキクレーン2における停止制御部42は、一対のデッキクレーン2をともに強制停止する。
【0077】
このような構成によれば、デッキクレーン2の旋回動作、及び俯仰動作がともに制御対象とされるため、いずれか一方の動作のみを制御対象とした場合に比べて、デッキクレーン2をさらに安定的かつ安全に運用することができる。
【0078】
さらに、制御装置4が、上記ステップ12−1における衝突防止制御の開始と、ステップS19における制御の終了とを行う構成とすることも可能である。より詳細には、一方のデッキクレーン2(ジブ22)の制御装置4は、他方のデッキクレーン2(ジブ22)の位置情報を参照して、自身のジブ22が、他方のジブ22と同一のホールド102を挟んで対向しているか否かを判定する。このような判定を行うに当たっては、船舶100の航行方向に沿って甲板101上の領域を複数の区画に分割した上で、一対のジブ22が同一の区画内に位置しているか否かを検出する構成が考えられる。
【0079】
なお、1つの区画は、1つのみのホールド102を含む領域とされる。ジブ22の位置情報は、該ジブ22の先端部の位置座標に基づいて検出されてもよいし、ジブ22の向く方位(角度座標)に基づいて検出されてもよい。
【0080】
以上のような構成のもとで、具体的には
図4に示すように、一対のジブ22同士が互いに対向している場合には、制御装置4は上記の衝突防止制御を開始する。一方で、
図1における計4つのデッキクレーン2のうち、図示左側の2つのデッキクレーン2のように、1つのホールド102を基準としてそれぞれのジブ22が互いに離間する方向を向いている場合には、制御装置4は衝突防止制御を終了する。
【0081】
このような構成によれば、一対のジブ22が同一のホールド102に臨んでいる場合、すなわち、ジブ22同士の衝突を積極的に回避すべき場合のみ、制御装置4は上記の衝突防止制御を自動的に開始することが可能となる。一方で、一対のジブ22が同一のホールド102を基準として互いに離間する方向を向いている場合には、制御装置4は衝突防止制御を終了することが可能となる。これにより、デッキクレーン2の操作性を向上させることができる。特に、衝突防止制御の開始と終了をオペレータの判断に基づいて行う場合に比べて、荷役作業中の安全性をさらに高めることができる。また、オペレータにとっては、自身の搭乗するデッキクレーン2に加えて、隣接する他方のデッキクレーン2の状況を監視する負担が軽減される。これにより、デッキクレーン2の操作性をさらに向上させることができる。
【0082】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について、
図7から
図10を参照して説明する。なお、上記の第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
本実施形態に係る船上デッキクレーン設備1は、上述の旋回用リミットスイッチ51、旋回警告用リミットスイッチ54、及び俯仰用リミットスイッチ52、俯仰警告用リミットスイッチ55に代えて、それぞれ旋回検出部61と、俯仰検出部62と、を備えている。
【0083】
本実施形態における旋回検出部61、俯仰検出部62は、いずれもロータリエンコーダによって構成される。旋回検出部61は、例えば上述の上部構造体27の内部で、第一軸線O1と同軸上に設けられることで、ポスト25に対する台板26の旋回量を検出する。より具体的には、旋回検出部61は、旋回塔21の旋回動作に伴う第一軸線O1回りの相対的な座標の変化を検知する。すなわち、旋回検出部61によって、第一軸線O1を中心として設定された角度座標(旋回座標)が検出される。なお、この旋回座標は予め設定された原点を基準として、この原点に対してジブ22がなす角度を表す。
【0084】
俯仰検出部62は、例えば上述の上部構造体27の内部で、第二軸線O2と同軸上に設けられることで、上部構造体27に対するジブ22の俯仰量を検出する。また、旋回検出部61と同様に、俯仰検出部62はジブ22の俯仰動作に伴う第二軸線O2回りの相対的な座標の変化を、俯仰座標として検出する。この俯仰座標も予め設定された原点を基準として、この原点に対してジブ22が角度を表す。
【0085】
これら旋回検出部61によって検出された旋回座標と、俯仰検出部62によって検出された俯仰検出部62とは、いずれも電気信号として制御装置4に入力される。制御装置4は、これら座標情報に基づいて危険領域Z1を算出する。なお、旋回動作に係る危険領域Z1と、俯仰動作に係る危険領域Z1とはいずれも同様の処理によって算出・画定されることから、以下では旋回動作に係る危険領域Z1を算出する際の処理についてのみ説明する。
【0086】
図7に示すように、旋回動作中のデッキクレーン2(旋回塔21)において、ジブ22が任意の角度座標(θt)にある時、制御装置4はこの角度座標θtを基準として、その大小両側に、予め定められたマージン量の分だけ広がる数値範囲を設定する。すなわち、角度座標θtに対して、絶対値Δθの分だけ大小両側に離れた角度座標(θt+Δθ,θt−Δθ)をそれぞれ設定する。これら2つの角度座標(θt+Δθ,θt−Δθ)によって囲まれた領域は、上述の第一実施形態における危険領域Z1として設定される。したがって、旋回動作に伴って角度座標θtが変化した場合、危険領域Z1を画定する2つの角度座標(θt+Δθ,θt−Δθ)も追従することとなる。
なお、マージン量(Δθ)は、制御装置4における外部記憶部44に予め格納されていてもよいし、不図示の入力手段によってオペレータが適宜入力してもよい。
【0087】
さらに、本実施形態では、制御装置4は、上記の危険領域Z1の外側に、上記第一実施形態と同様の旋回警告領域Z2を設定する。具体的には、ジブ22の角度座標θtに対して、上記のマージン量Δθよりもさらに大きな絶対値を有するΔθcを設定することにより、旋回警告領域Z2が形成される。
同様にして、俯仰角度座標θsが俯仰検出部62によって検出され、これに基づく俯仰警告領域Z3、及び俯仰動作時の危険領域Z1が設定される。
【0088】
さらに、一方のデッキクレーン2(ジブ22)の旋回座標、及び俯仰座標は、他方のデッキクレーン2の制御装置4に対して電気信号として送出される。すなわち、他方のデッキクレーン2の制御装置4は、一方のデッキクレーン2のジブ22の位置(角度座標)に基づいて、自身のジブ22が動作可能な範囲を決定する。ジブ22の動作可能な範囲を決定するに当たっては、例えば
図7に示すように、それぞれのジブ22の角度座標系を設定することが望ましい。すなわち、同図に示すように、双方のデッキクレーン2における第一軸線O1を結んだ直線を角度座標の原点(0°位置)として、この直線を挟んで一方の側を+θ方向、他方の側を−θ方向とする例が考えられる。
このように角度座標系を設定することで、例えば一方のジブ22の旋回座標がθtである場合には、−θ側の旋回警告領域Z2は、0°位置からθt−(Δθ+Δθc)までの領域となる。このとき、他方のジブ22の制御装置4は、自身の角度座標系において、上記のθt−(Δθ+Δθc)よりも+θ側に旋回した場合に、一方のジブ22の旋回警告領域Z2に侵入したことを検知することができる。言い換えると、上記のような角度座標系を設定することで、一方のジブ22の角度座標値に対して特別な操作を加えることなく、直接的に他方のジブ22の可動領域ZSを画定することができる。
【0089】
次に、本実施形態に係る船上デッキクレーン設備1を動作させる方法(制御方法)の一例について、
図9を参照して説明する。なお、以下では旋回動作、及び俯仰動作のいずれか一方を制御対象とする場合について説明する。すなわち、旋回動作のみを制御対象とする場合には、上述の旋回検出部61のみに通電される。一方で、俯仰動作のみを制御対象とする場合には、俯仰検出部62のみに通電される。いずれの場合も制御に係る各ステップは同様であることから、以下では旋回動作のみを制御対象とした場合について代表的に説明する。
【0090】
図9に示すように、衝突防止制御の開始に先立って、まず一対のジブ22がそれぞれの可動領域ZS内にあることが確認される(ステップS20,ステップS21)。具体的には、ステップS21では、制御装置4に電源が投入される。これに伴って、旋回検出部61が通電状態となる。このステップS21を実行した後で、なおもジブ22の位置が危険領域Z1内にあると制御装置4が判定した場合には、再びステップS20に戻る。このとき、制御装置4はジブ22が危険領域Z1内にあることを警告する。この警告に基づいて、オペレータはジブ22を可動領域ZS内に配置し直す(ステップS22)。
【0091】
上記のステップS22にて、ジブ22が可動領域ZS内に位置していると判定した場合には、制御装置4は衝突防止制御を開始する(ステップS22−1)続いて、ステップS23を実行することで、制御装置4は、危険領域Z1、及び旋回警告領域Z2を算出する。これら領域の算出は、上述のようにジブの旋回座標値、及び予め定められたマージン量に基づいて適宜算出される。以上により危険領域Z1、旋回警告領域Z2が定められた後、一対のデッキクレーン2がオペレータの指示に基づいてそれぞれ動作することで、荷役作業が行われる(ステップS24)。
【0092】
この荷役作業の継続中にわたって、制御装置4は、一方のジブ22の旋回警告領域Z2に対する他方のジブ22の侵入の有無を断続的に判定する。より具体的には、一方のジブ22の旋回角度値、及びこれに基づいて決定された旋回警告領域Z2の角度座標を、他方のデッキクレーン2の制御装置4が断続的に参照することで、当該旋回警告領域Z2への侵入の有無が判定される。例えば、
図7の例では、他方のジブ22が、θt−(Δθ+Δθc)よりも+θ側に旋回した場合に、旋回警告領域Z2に侵入したものと判定される(ステップS25)。この判定に基づいて、制御装置4は、警告用ブザーの鳴動、及び警告用ランプの点灯を行う(ステップS26)。
【0093】
一方で、上記のステップS25で、旋回警告領域Z2への侵入がないと判定された場合には、オペレータは通常の操作を続行する。つまり、上記のステップS24を継続する。
【0094】
同様にして、制御装置4は、危険領域Z1への侵入の有無も断続的に判定する(ステップS27)。例えば、
図7の例では、他方のジブ22が、θt−Δθよりもさらに+θ側に旋回した場合に、危険領域Z1に侵入したものと判定される。この判定に基づいて、停止制御部42は、一対のデッキクレーン2それぞれの旋回駆動部31を強制的に停止する(ステップS28)。
すなわち、このステップS28では、一方のデッキクレーン2のみで旋回停止信号が送出された場合であっても、制御装置4は一対のデッキクレーン2をともに強制停止する。
【0095】
その後、ステップS29として、停止したデッキクレーン2(ジブ22)の復旧が行われる。この復旧作業では、一例としてオペレータの操作によって、ジブ22が上記の可動領域ZS側に移動する。この復旧作業を経て、再び上述のステップS24に遷移し、荷役作業が再開される。
【0096】
なお、上記のような衝突防止制御は、1つのホールド102に対して一対のデッキクレーン2を用いた荷役作業を行う場合にのみ実行される。すなわち、1つのホールド102に対して1つのデッキクレーン2を用いた荷役作業を行う場合には、制御装置4の電源をオフとすることで、衝突防止制御を終了する(ステップS30)。以上により、本実施形態に係る船上デッキクレーン設備1の制御方法に各ステップが完了する。
【0097】
以上説明したように、本実施形態に係る船上デッキクレーン設備1、及びその制御方法によれば、上記第一実施形態と同様に、危険領域Z1、及び警告領域がそれぞれ設定されることにより、荷役作業の継続中にわたって一対のジブ22同士の相対距離を十分に確保することができる。
【0098】
さらに、本実施形態では、危険領域Z1はクレーン本体21の旋回座標、及びジブ22の俯仰座標に基づいて、適宜に決定される。これにより、危険領域Z1を画一的に設定した場合に比べて、それぞれのデッキクレーン2の動作可能な範囲を広く確保することができる。したがって、荷役作業をさらに効率的に行うことができる。
【0099】
加えて、上記の構成は、旋回検出部61、及び俯仰検出部62としてそれぞれ1つのロータリエンコーダを用いるのみでよい。これにより装置を低廉かつ容易に構成することができる。
【0100】
以上、本発明の第二実施形態に係る船上デッキクレーン設備1、及びその制御方法について図面を参照して説明した。しかしながら、上記の実施形態は一例に過ぎず、種々の変更を加えることが可能である。
【0101】
例えば、上述の第二実施形態では、制御方法として、旋回動作、及び俯仰動作のいずれか一方のみを制御対象とした場合について説明した。しかしながら、これら旋回動作、及び俯仰動作を同時に制御対象とすることも可能である。
【0102】
旋回動作と俯仰動作が同時に制御対象とする場合には、具体的には
図10に示す各ステップを実行する。なお、
図10における各ステップのうち、ステップS251、及びステップS271を除く各ステップは、第二実施形態にて説明した
図9の各ステップと同様である。ステップS251では、一方の旋回座標、及び俯仰座標と、これらに基づいて設定される警告領域に、他方のジブ22が侵入しているか否かが判定される。
【0103】
ステップS251において、他方のジブ22における旋回座標、又は俯仰座標の少なくとも一方が、警告領域内に位置していると判定された場合には、警告用ブザーの鳴動、及び警告用ランプの点灯が行われる(ステップS26)。
【0104】
さらに、ステップS271では、他方のジブ22が一方のジブ22の危険領域Z1に侵入しているか否かが断続的に判定される。他方のジブ22が上記の旋回警告領域Z2、又は俯仰警告領域Z3に侵入した後もなお同一方向への旋回動作を継続した場合、制御装置4は、旋回駆動部31、及び俯仰駆動部32を強制的に停止する(ステップS28)。
特に、このステップS28では、一方のデッキクレーン2のみで旋回停止信号が送出された場合であっても、一対のデッキクレーン2がともに強制停止される。
【0105】
このような構成によれば、デッキクレーン2の旋回動作、及び俯仰動作がともに制御対象とされるため、いずれか一方の動作のみを制御対象とした場合に比べて、デッキクレーン2をさらに安定的かつ安全に運用することができる。