【解決手段】 本発明の包装袋10は、積み重ねた複数枚の枚葉シート91が収納され且つその枚葉シート91を取り出すための取出口2が形成された柔軟な袋本体1を有し、前記取出口2の第1縁部2aと前記枚葉シート91の第1辺部91aの間に指入れ口4を有するように、前記取出口2の第1縁部2aが枚葉シート91の第1辺部91aの外側に形成され、前記指入れ口4の両側における前記取出口2の第1縁部2aには、前記枚葉シート91の第1辺部91aに交差して枚葉シート91に被さる被さり片部3がそれぞれ延設されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本明細書において、横方向及び縦方向は、包装袋を任意に平坦面上に置いてその法線方向から見たときの方向性を指し、横方向と縦方向は、袋本体の面内で互いに直交する方向である。また、平面視形状は、包装袋を任意に平坦面上に置いてその法線方向から見たときの形状である。また、角度及びその関係(例えば、直交、平行など)は、本発明の属する技術分野において許容される誤差範囲を含むものとする。例えば、直交などは、厳密な角度±10度の範囲内であることを意味し、好ましくは、±5度の範囲内である。さらに、「A〜B」という記載は、A以上B以下を意味する。
各断面図において、各層の大きさ及び厚みは、実際の製品とは異なっていることに留意されたい。
【0011】
[第1実施形態]
図1乃至
図6に於いて、本発明の包装袋10は、基材を袋状に形成した柔軟な袋本体1を有し、その袋本体1は、シート積層物9を収納するための空間からなる収納部11と、前記基材の面内の一部分に形成され且つシート積層物9を取り出すための取出口2と、前記取出口2を覆う蓋部12と、を有する。
シート積層物9は、複数の枚葉シート91から構成される。
なお、
図3、
図4及び
図6において、シート積層物(枚葉シート)を二点鎖線で表している。また、
図3及び
図4において、(各枚葉シートを表さず)シート積層物の外形のみを記載している。
【0012】
枚葉シート91は、平面視所望形状に形成された柔軟且つ薄いシートである。本明細書において、柔軟とは、人力で容易に変形させることができる性質をいう。
枚葉シート91の平面視形状は特に限定されないが、例えば、1つの辺部91a(本明細書において、この辺部を「第1辺部91a」という)を有する形状であり、好ましくは、直線状に延びる第1辺部91aの両側にその辺部に対して直交する方向に延びる2つの辺部91b,91cを有する形状であり、より好ましくは略矩形状である。前記2つの辺部91b,91cを、それぞれ「第2辺部91b」及び「第3辺部91c」という。また、第1辺部91aとは反対側の辺部91dを「第4辺部91d」という。
本明細書において、略矩形状の「略」は、例えば、角部が面取りされている形状、辺の一部が僅かに膨らむ又は窪んでいる形状、辺が若干湾曲している形状などが含まれる。矩形状は、長方形状や正方形状などが含まれる。
前記枚葉シート91は、第1辺部91aの両側に角部をそれぞれ有する。角部は、枚葉シート91の2つの辺部が交わる辺りの領域を意味し、2つの辺部が直交する点という意味ではない。つまり、枚葉シート91の角部は、枚葉シート91の一部の領域であって、2つの辺部が交わる点(交点)を含む領域又は(その交点を含まず)その交点の近傍の領域をいう。
第1辺部91aの両側の角部のうちの一方は、第1辺部91aと第2辺部91bで画成される角部であり、その他方は、第1辺部91aと第3辺部91cで画成される角部である。
【0013】
枚葉シート91の縦方向の長さ(以下、枚葉シート91の縦幅という)は、枚葉シート91の第1辺部91aから第4辺部91dまでの長さであり、枚葉シート91の横方向の長さ(以下、枚葉シート91の横幅という)は、枚葉シート91の第2辺部91bから第3辺部91cまでの長さである。略矩形状の枚葉シート91の場合、枚葉シート91の縦幅は、第2辺部91bの長さに等しく、枚葉シート91の横幅は、第1辺部91aの長さに等しい。
【0014】
枚葉シート91の材質は、特に限定されず、不織布、フェルト、織物生地又は編物生地、紙、合成樹脂フィルムなどが上げられる。特に、本発明においては、一般的に1枚ずつ取り出し難い枚葉シート、例えば、表裏面の摩擦係数の大きい枚葉シートを袋本体1に収納することにより、本発明の効果が顕在化し易い。
表裏面の摩擦係数の大きい枚葉シートとしては、表裏面に比較的大きいな凹凸を有する枚葉シート、相手方に対して静電的に吸着し易い枚葉シートなどが挙げられる。表裏面に比較的大きいな凹凸を有する枚葉シートとしては、例えば、表裏面に繊維や毛などの糸条が起毛しているシート(例えば、不織布、フェルト、織物生地又は編物生地など)、表裏面にエンボス加工が施されたシートなどが挙げられる。
具体的な用途において、枚葉シート91としては、掃除用シート、ウェットシート、或いは、防塵やウイルス侵入防止などの目的で使用されるマスクなどが挙げられる。なお、前記マスクは、顔に当てるマスクであって、収納時には扁平状に畳まれて枚葉状を成しており、使用時にゴム紐など耳に掛け且つマスク本体を口に当てた際に立体的に変形されるマスクである。
【0015】
シート積層物9は、互いの表裏面が接した状態で、複数枚(2枚以上)の枚葉シート91が重ねられている。枚葉シート91の枚数は、特に限定されないが、好ましくは、3枚以上であり、より好ましくは4枚以上である。
シート積層物9を構成する各枚葉シート91は、好ましくは、平面視形状が同一のシートである。また、各枚葉シート91は、少なくとも第1辺部91aが略一致して重ねられ、好ましくは、第1辺部91a、第2辺部91b及び第3辺部91cの全てが略一致して重ねられている。
シート積層物9を構成する各枚葉シート91は、袋本体1に収納していない状態では、それぞれ1枚ずつ簡単に取り外すことができる。もっとも、袋本体1にシート積層物を収納すると、隣接した枚葉シート91(裏面と表面が接した2つの枚葉シート91)が、その接する面において摩擦を生じ(特に、上記表裏面の摩擦係数の大きい枚葉シート91の場合)、シート積層物9から枚葉シート91を1枚ずつ取り出し難くなる。
【0016】
図示例の袋本体1は、例えば、平面視略矩形状に形成されている。詳しくは、袋本体1は、縦方向を長手とする平面視略長方形状に形成されている。この袋本体1は、柔軟な基材から形成された包材(いわゆる軟包材)である。
袋本体1は、例えば、中央部にシート積層物9を介在させた状態で2つの基材A,B(以下、2つの基材をそれぞれ正面基材A及び背面基材Bという場合がある)を重ね合わせ、シート積層物9を封入するように2つの基材A,Bを接着することにより形成されている。このような袋本体1は、シート積層物9を介在させない状態では、2つの基材A,Bが接して扁平状となり、シート積層物9を介在(収納)させた状態では、シート積層物9の厚み分だけ膨らんだ扁平状となっている。
なお、本発明の包装袋10の袋本体1は、このような形態に限られず、例えば、正面基材A及び背面基材Bの側方に折り込まれた側面ガゼット基材を有するガゼット袋などの態様であってもよい(図示せず)。
【0017】
この正面基材A及び背面基材Bは、別々の基材でもよく、同じ1枚の基材から構成されていてもよい。図示例では、正面基材A及び背面基材Bは、同じ1枚の基材から構成され、その1枚の基材の両側部でそれぞれ折り返し、その両側部の端を重ね合わせて接着することによって、袋本体1が構成されている。
このような袋本体1の形態は、ピロー包装袋と同様であって、背面基材Bの中央部に接着部が形成されると共に、正面基材Aの第1側部と背面基材Bの第1側部、及び、正面基材Aの第2側部と背面基材Bの第2側部にもそれぞれ接着部が形成される。前記正面基材Aの第1側部と第2側部は、袋本体の縦方向において向かい合った側部であり、前記背面基材Bの第1側部と第2側部は、袋本体の縦方向において向かい合った側部である。なお、前記接着部は、枚葉状の基材を用いて袋本体1を形成する際に基材の側部同士を接着した部分である。
図2において、接着部を判り易く図示するために、接着部に対応する範囲に網掛けを付加している。
【0018】
取出口2は、例えば、袋本体1の正面基材Aの面内に形成される。また、取出口2を開閉するための蓋部12も、例えば、正面基材Aに形成される。
本実施形態では、取出口2及び被さり片部3の形成と同時に蓋部12を形成できることから、正面基材Aの一部分を捲り上げ可能に構成し(その正面基材Aの一部分が蓋部12となる)、その正面基材Aの一部分を捲り上げた際に取出口2及び被さり片部3が形成されるようにしている。
もっとも、例えば、正面基材Aの面内の一部分を切り抜いて又は一部分に切込み線を形成することによって取出口2及び被さり片部3を形成し、正面基材Aとは別体の蓋部を前記切り抜いた取出口を塞ぎつつ蓋部の一部分を正面基材Aに接着することにより、袋本体1に取出口2及び被さり片部3と蓋部を形成してもよい(図示せず)。或いは、正面基材Aの面内の一部分を切り抜いて取出口2を形成し、正面基材Aとは別体の基材からなる被さり片部を前記取出口の一部分を塞ぐように接着し、正面基材Aの一部分からなる蓋部にて又は別体の蓋部を接着することにより、前記取出口2及び被さり片部と蓋部を形成してもよい(図示せず)。
【0019】
取出口2は、正面基材Aの面内に形成された平面視環状の開口縁部で囲われた範囲内の部分(開口)である。
取出口2の開口縁部は、枚葉シート91の第1辺部91aに対応する第1縁部2aと、枚葉シート91の第2辺部91bに対応する第2縁部2bと、枚葉シート91の第3辺部91cに対応する第3縁部2cと、枚葉シート91の第4辺部91dに対応する第4縁部2dと、被さり片部3の縁部3aと、からなる。
取出口2の第1縁部2aは、前記枚葉シート91の第1辺部91aの間に指入れ口4を有するように、枚葉シート91の第1辺部91aの外側に対応して形成されている。この指入れ口4は、取出口2の第1縁部2aと枚葉シート91の第1辺部91aとで画成される隙間である。指入れ口4は、少なくとも指の爪を差し入れることができる大きさに形成され、好ましくは、指先を指し入れることができる大きさに形成される。本実施形態では、取出口2の第1縁部2aは、外側に膨らむ弧状に形成されている。指入れ口4の縦方向の長さは、特に限定されないが、例えば、2mm〜20mmであり、好ましくは3mm〜10mmである。前記指入れ口4の縦方向の長さは、取出口2の第1縁部2aと枚葉シート91の第1辺部91aとの間の縦方向の長さであり、その長さが横方向で異なる場合にはそのうち最大長さをいう。
【0020】
取出口2の開口横幅は、枚葉シート91を取り出すことができる大きさであれば特に限定されない。枚葉シート91を取出口2からスムースに取り出し易いことから、取出口2の開口横幅は、枚葉シート91の横幅マイナス10mm以上が好ましく、枚葉シート91の横幅以上であることがより好ましく、枚葉シート91の横幅プラス3mm以上且つ枚葉シート91の横幅プラス20mm以下がさらに好ましい。取出口2の開口横幅は、取出口2の第2縁部2bと第3縁部2cとの間の長さである。
取出口2の開口縦幅は、枚葉シート91を取り出すことができる大きさであれば特に限定されない。もっとも、取出口2の開口縦幅が、余りに大きいと、蓋部12を捲って取出口2を開けたときに、シート積層物9が取出口2から不用意に出るおそれがあり、他方、余りに小さいと、枚葉シート91を取り出すことが困難となる。かかる観点から、取出口2の開口縦幅は、枚葉シート91の縦幅×1/3以上且つ枚葉シート91の縦幅未満であることが好ましく、枚葉シート91の縦幅×2/5以上且つ枚葉シート91の縦幅×4/5以下であることがより好ましく、枚葉シート91の縦幅×1/2以上且つ枚葉シート91の縦幅×3/4以下であることがさらに好ましい。前記取出口2の開口縦幅は、取出口2の第1縁部2aと第4縁部2dとの間の長さである。
【0021】
本実施形態では、取出口2の第4縁部2dが枚葉シート91の第1辺部91aと第4辺部91dの間に位置するように、取出口2が形成されている。かかる位置に取出口2の第4縁部2dが形成されていることより、枚葉シート91の第4辺部91d及びその両側の角部が取出口2に臨まず、蓋部12を開けたときにも前記第4辺部91d及びその両側の角部が袋本体1にて覆われる。取出口2の第4縁部2dと枚葉シート91の第4辺部91dとの間の縦方向の長さは、特に限定されないが、好ましくは枚葉シート91の縦幅×1/4を越え且つ枚葉シート91の縦幅×2/3未満であり、より好ましくは枚葉シート91の縦幅×1/3以上且つ枚葉シート91の縦幅×1/2未満である。
【0022】
また、前記指入れ口4の両側における取出口2の第1縁部2aには、前記枚葉シート91の第1辺部91aに交差して枚葉シート91に被さる被さり片部3がそれぞれ延設されている。好ましくは、この2つの被さり片部3は、それぞれ枚葉シート91の角部に被さるように延設されている。
詳しくは、
図7を参照して説明する。
図7において、各部を判り易く図示するため、蓋部を不図示とし、被さり片部に無数のドットを付加し、取出口に斜線を付加し、指入れ口(指入れ口は取出口の一部でもある)に網掛けを付加している。
被さり片部3は、正面基材Aの一部分から形成されている。この被さり片部3の縁部3aは、取出口2の開口縁部の一部を構成している。この点、本発明では、概念上、取出口2は、その第1縁部2a、第2縁部2b及び第3縁部2cが、
図7の一点鎖線で示された部分にまで形成されているとみなしている(以下、実際の取出口(取出口の縁部の一部に被さり片部3の縁部3aが含まれるもの)と区別するために、概念上の取出口という)。そして、2つの被さり片部3は、その概念上の取出口の、一点鎖線で示された第1縁部2aからそれぞれ延設されているものと特定している。さらに、その延設された一方の被さり片部3は、枚葉シート91の第2辺部91bに交差して、概念上の取出口の、一点鎖線で示された第2縁部2bにも繋がっている。延設された他方の被さり片部3は、枚葉シート91の第3辺部91cに交差し、同様に概念上の取出口2の、一点鎖線で示された第3縁部2cにも繋がっている。つまり、一方の被さり片部3は、前記概念上の取出口の第1縁部2aと第2縁部2bの双方に連設され、且つ枚葉シート91の第1辺部91aと第2辺部91bで画成される角部に被さるように設けられている。他方の被さり片部3は、前記概念上の取出口の第1縁部2aと第3縁部2cの双方に連設され、且つ枚葉シート91の第1辺部91aと第3辺部91cで画成される角部に被さるように設けられている。この2つの被さり片部3の縁部3aは、図示のように、枚葉シート91の第1辺部91aに対して鋭角を成して傾斜状に形成されている。なお、被さり片部3の縁部3aの形状は図示のような直線傾斜状に限らず、内側又は外側に湾曲又は屈曲した形状、波状、鋸刃状などの様々な形状に形成してもよい。
【0023】
上記取出口2、被さり片部3及び蓋部12は、正面基材Aの一部分を捲り上げることにより、同時に形成されるようになっている。
具体的には、取出口2などが形成される正面基材Aは、表フィルム61及び裏フィルム62を有する積層フィルムから構成されている。なお、正面基材Aと背面基材Bが1枚の基材から構成されている本実施形態においては、背面基材Bも表フィルム61及び裏フィルム62を有する積層フィルムから構成されている。
前記積層フィルムは、表フィルム61と裏フィルム62が貼着層63を介して接着された積層体からなるが、取出口2を形成するために、正面基材Aの表フィルム61の一部の領域と裏フィルム62の一部の領域は、剥離可能に接着されている。この剥離可能に接着された領域を「剥離部」という場合がある。なお、被さり片部3の外面は、剥離部でもある。
【0024】
袋本体1の一面に前記収納部11に通じる取出口2を形成するために、正面基材Aの面内には切込線51,52が形成されている。この切込線51,52によって囲われた、袋本体1の面内の一部分(蓋部12に相当)が袋本体1から離反することによって取出口2及び被さり片部3が形成される。
1つの切込線51は、正面基材Aの表フィルム61の面内に形成され、もう1つの切込線52は、正面基材Aの裏フィルム62の面内に形成されている。以下、表フィルム61に形成された切込線51を「表側切込線51」といい、裏フィルム62に形成された切込線52を「裏側切込線52」という。
【0025】
表側切込線51の形状は、平面視非直線状であり、裏側切込線52の形状は、前記表側切込線51から位置ずれした平面視非直線状である。この表側切込線51と裏側切込線52の間の領域における表フィルム61と裏フィルム62の層間が、剥離可能に接着されている(この領域における層間が剥離部である)。
【0026】
前記剥離可能に接着されているとは、人力で容易に引き剥がすことができる程度の接着力にて接着されていることをいい、弱接着や擬似接着などが含まれる。例えば、前記表側切込線51と裏側切込線52の間の領域における表フィルム61と裏フィルム62の層間(剥離部)は、弱接着又は擬似接着されている。
前記弱接着とは、少しの力で層間剥離できる程度に弱く接着している状態であって、一度剥離した後(弱く接着している状態を解除した後)、再度接着可能なことをいい、擬似接着とは、少しの力で層間剥離できる程度に弱く接着している状態であって、一度剥離した後(弱く接着している状態を解除した後)、再度接着しないことをいう。
【0027】
本実施形態では、前記表側切込線51と裏側切込線52の間の領域における表フィルム61と裏フィルム62の層間が貼着層63とマスキング層64を介して弱接着され、一方、前記領域以外における表フィルム61と裏フィルム62の層間が貼着層63を介して強く接着されている。この貼着層63は、例えば、粘着剤から形成されている。
なお、貼着層及びマスキング層については、
図6ではそれらを省略しているので、
図3及び
図4を参照されたい。
【0028】
詳しくは、袋本体1を構成する基材A,Bは、柔軟性を有し、好ましくは、液体及び大気を実質的に通さない枚葉体からなる。なお、本明細書において、フィルムとは、一般にシートと呼ばれている枚葉体が含まれる。すなわち、フィルムとシートは、いずれも枚葉体であり、両者は同義である。
【0029】
表フィルム61の材質は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。表フィルム61としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの合成樹脂フィルム、不織布、発泡樹脂フィルム、紙などが挙げられる。表フィルム61は、任意に選ばれた2種以上のフィルムの積層体(例えば、2種以上の合成樹脂フィルムが一体的に積層された積層体、或いは、合成樹脂フィルムと紙が一体的に積層された積層体など)でもよい。また、表フィルム61は、前記のような様々なフィルム又は積層体に、ガスバリア層及び光バリア層又はガスバリア層若しくは光バリア層(以下、ガスバリア層及び/又は光バリア層」と記す)が一体的に積層された積層体でもよい。
加工性に優れ且つシート積層物9の品質を良好に保持できることから、表フィルム61は、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの合成樹脂フィルム、2種以上の合成樹脂フィルムの積層体、又は、これらにガスバリア層及び/又は光バリア層が積層された積層体を用いることが好ましい。なお、各断面図においては、便宜上、表フィルム61を1層構造で表しているが、表フィルム61は、1層構造に限定されるわけではない。
【0030】
なお、表フィルム61は、透明又は非透明の何れでもよい。さらに、表フィルム61には、必要に応じて、意匠印刷が施されていてもよい。意匠印刷が施される場合、その意匠印刷層(図示せず)は、その擦傷を防止するため、表フィルム61の裏面に設けられることが好ましい。もっとも、意匠印刷層は、表フィルム61の表面に設けられていてもよい。
表フィルム61の厚みは、特に限定されない。表フィルム61の厚みは、例えば、15μm〜120μmであり、好ましくは20μm〜50μmである。
【0031】
裏フィルム62の材質も、特に限定されず、上記表フィルム61で例示したようなフィルム又は積層体を用いることができる。なお、表フィルム61が、ガスバリア層及び/又は光バリア層を有さない場合には、裏フィルム62は、ガスバリア層及び/又は光バリア層を有するフィルムであることが好ましい。また、表フィルム61がガスバリア層及び/又は光バリア層を有する場合には、裏フィルム62は、これらの層を有さなくてもよいし、或いは、これらの層を有していてもよい。また、表フィルム61及び裏フィルム62の何れも、ガスバリア層及び/又は光バリア層を有さなくてもよい。なお、各断面図においては、便宜上、裏フィルム62を1層構造で表している。
【0032】
熱シールによって袋本体1を形成できることから、裏フィルム62は、シーラント層を有することが好ましい。例えば、裏フィルム62は、シーラント層の単層、又は、シーラント層と他の層(この他の層は、例えば、シーラント層とは異なる合成樹脂フィルム)が一体的に積層され且つこのシーラント層が最裏面に一体的に積層された積層体を用いることが好ましい。
シーラント層は、加熱することにより溶融して互いに接着し得る層である。シーラント層としては、汎用的なポリエチレン層又はポリプロピレン層などが挙げられる。
裏フィルム62は、透明又は非透明の何れでもよい。
裏フィルム62の厚みは、特に限定されない。裏フィルム62としてシーラント層の単層が用いられる場合には、その裏フィルム62の厚みは、一般に、15μm〜70μmであり、裏フィルム62としてシーラント層を有する積層体が用いられる場合には、その裏フィルム62の厚みは、例えば、30μm〜100μmである。
表フィルム61と裏フィルム62は、剥離部を除いて、貼着層63にて積層一体化されている。
【0033】
表側切込線51は、正面基材Aの表フィルム61の面内に形成されている。
表側切込線51の形状は、両端部を有する有端の非直線状である。例えば、表側切込線51は、両端部を有し、この両端部を結んだ仮想直線から袋本体1の縦方向第1側(正面基材A及び背面基材Bの第1側部側)に膨らんだ平面視非直線状に形成されている。なお、表側切込線51の先端部辺りに、蓋部12の摘み部13が形成される。
一方、裏側切込線52は、正面基材Aの裏フィルム62の面内に形成されている。
裏側切込線52の形状は、両端部を有する有端の非直線状、又は、無端の非直線状の何れかである。なお、無端の非直線状の切込線とは、その内側に閉鎖領域を形成するような形状の切込線(すなわち、平面視環状の切込線)である。
裏側切込線52は、裏側切込線52は、上記表側切込線51と同様に、袋本体1の縦方向第1側に膨らんだ平面視非直線状に形成された部分を有する。
裏側切込線52で囲われた範囲が取出口2となる。
【0034】
裏側切込線52の形成箇所と表側切込線51の形成箇所は一致しておらず、裏側切込線52は、表側切込線51と位置ずれして形成されている。すなわち、裏側切込線52は、前記表側切込線51を基準にして、表側切込線51から内側に離れて形成されている。裏側切込線52を表側切込線51よりも内側に形成することにより、蓋部を捲った際に被さり片部3が形成される。形成される被さり片部3の縁部3aは、
図5などに示すように、裏フィルム62の縁から構成されている(被さり片部3の全部又は一部は、裏フィルム62から構成される)。
表側切込線51と裏側切込線52の間隔(つまり、剥離部の間隔)は、特に限定されず、適宜設定できる。もっとも、前記間隔が余りに狭いと、表側切込線51と裏側切込線52が連通し、袋本体1の密封性を保持できなくなるおそれがある。かかる点を考慮すると、前記間隔は、5mm以上が好ましく、さらに、7mm以上がより好ましい。また、前記間隔が広くても本発明の効果は変わらないが、前記間隔が余りに広いと相対的に裏側切込線52で囲われる部分(取出口2)が狭くなる。かかる点を考慮すると、前記間隔は、20mm以下が好ましい。
ただし、被さり片部3が形成される箇所における、表側切込線51と裏側切込線52の間隔は、前記範囲よりも大きくなっていてもよい。
【0035】
また、表フィルム61の裏面のうち、前記表側切込線51と裏側切込線52の間の領域には、マスキング層64が設けられている。マスキング層64は、貼着層63の接着力を弱める機能を有する。
マスキング層64は、マスキング層64形成材料を塗工し、これを固化することにより形成できる。マスキング層64形成材料は、貼着層63の接着力を隠蔽できるものであれば特に限定されず、例えば、合成樹脂を主成分として含む溶剤型又はエマルジョン型の樹脂溶液、電離放射線硬化型樹脂溶液、紫外線硬化型インキなどのインキなどを用いることができる。中でも、各種印刷法にて塗工でき且つ固化も容易であることから、マスキング層64形成材料としては、溶剤型インキ又は紫外線硬化型インキを用いることが好ましく、着色剤を含まない溶剤型インキ又は紫外線硬化型インキなどのインキ(いわゆるメジウムインキ)を用いることがより好ましい。
マスキング層64は、前記表側切込線51と裏側切込線52の間の領域の全体にベタ状に設けられている。もっとも、マスキング層64は、ベタ状に設けられる場合に限られず、前記領域にストライプ状、無数の点状などに設けられていてもよい。マスキング層64は、貼着層63の接着力を弱めることができればよいので、前記のようにストライプ状などに形成されていてもよい。また、摘み部13に対応する領域においてマスキング層を部分的に設けないことによって、摘み部13が不用意に袋本体1から捲れないようにしてもよい。
マスキング層64の厚みは、その全体において略均一であってもよいし、或いは、不均一であってもよい。好ましくは、マスキング層64の厚みは、その全体において略均一である。マスキング層64の厚みは、特に限定されないが、余りに小さいと貼着層63の接着力を十分に弱めることができないおそれがある。このような観点から、前記マスキング層64の厚みは、0.5μm〜10μmであり、好ましくは、1μm〜5μmである。
【0036】
裏フィルム62の表面全体には、貼着層63がベタ状に設けられている。もっとも、貼着層63は、ベタ状に設けられる場合に限られず、前記裏フィルム62の表面全体にストライプ状、無数の点状などに設けられていてもよい。
貼着層63は、例えば、感圧型粘着剤や感熱型粘着剤などを裏フィルム62に塗布することによって形成できる。
裏フィルム62の貼着層63上に表フィルム61を重ねることにより、表フィルム61と裏フィルム62は、一体化されているが、マスキング層64が設けられている領域においては、マスキング層64と貼着層63は、弱接着又は擬似接着されている。なお、本実施形態では、剥離部は、弱接着されている。
弱接着と擬似接着の調整は、マスキング層64の材質、厚み及び平面視形状などを適宜設定することによって行える。例えば、比較的厚みの小さいマスキング層64をベタ状に設ける、或いは、マスキング層64をストライプ状やドット状に設けることによって、弱接着とすることができる。また、例えば、比較的厚みの大きいマスキング層64をベタ状に設けることによって、擬似接着とすることができる。
【0037】
なお、上記では、裏面の一部分にマスキング層64が設けられた表フィルム61と表面全体に貼着層63が設けられた裏フィルム62とを重ね合わせている場合を例示したが、これに限定されず、(1)裏面全体に貼着層63が設けられた表フィルム61と表面の一部分にマスキング層64が設けられた裏フィルム62とを重ね合わせる、或いは、(2)裏面全体に貼着層63が設けられ且つその貼着層63の裏面の一部にマスキング層64が設けられた表フィルム61と裏フィルム62とを重ね合わせる、或いは、表フィルム61と表面全体に貼着層63が設けられ且つその貼着層63の表面の一部にマスキング層64が設けられた裏フィルム62とを重ね合わせる、という方法でも上記と同様な袋本体1を得ることができる。
【0038】
貼着層63にて接着された表フィルム61と裏フィルム62の接着強度は、両フィルムを容易に剥離できない程度であれば特に限定されず、例えば、10N/15mm以上が好ましい。その接着強度の上限は、特に制限はないが、一般的には、30N/15mm以下である。
前記接着強度は、JIS Z 0237の180度剥離に準じた方法で測定された値をいう。具体的には、前記接着強度は、貼着層63を介して表フィルム61と裏フィルム62が接着されたものを100mm×15mmに切り出し、温度23±2℃、湿度50±5%RH、300mm/分の速度で剥離したときの最大強度をいう。
【0039】
剥離部における接着強度は、特に限定されないが、余りに小さいと表フィルム61と裏フィルム62を弱接着できず、袋本体1の密封性を担保できないおそれがある。かかる観点から、剥離部の接着強度は、0.2N/15mm以上が好ましく、1N/15mm以上がより好ましい。一方、剥離部の接着強度が余りに大きいと、取出口2を形成するために表フィルム61の一部分(表側切込線51で囲われた領域)を捲ったときに、剥離部が剥離しないおそれがある。かかる観点から、剥離部の接着強度は、3N/15mm以下が好ましい。
なお、剥離部の接着強度は、上記表フィルム61と裏フィルム62の接着強度の測定法と同様にして測定できる。
【0040】
上記包装袋10は、従来から行われている方法に準じて製造できる。簡単に説明すると、裏面の一部分にマスキング層が設けられた表フィルムと表面全体に貼着層が設けられた裏フィルムとを重ね合わせて基材を作製する。その基材の表フィルムの所望箇所にその表面側からカッター刃を用いて表側切込線を刻設し且つ裏フィルムの所望箇所にその裏面側からカッター刃を用いて裏側切込線を刻設する。そして、シート積層物を包むように基材を折り曲げ、その3方の端部を重ね合わせて熱シールすることによって、本発明の包装袋10を製造できる。
【0041】
上記包装袋10においては、袋本体1を形成する表フィルム61と裏フィルム62にそれぞれ表側切込線51及び裏側切込線52が形成されているが、表側切込線51と裏側切込線52の間の領域における表フィルム61と裏フィルム62の層間は弱接着又は擬似接着されているので、袋本体1の密封性は保持されている。
この包装袋10は、
図5及び
図6に示すように、表フィルム61の摘み部13を指で摘んで引き出すことにより、剥離部において表フィルム61と裏フィルム62が剥離して、蓋部12(表フィルム61のうち表側切込線51で囲われた領域)が袋本体1から捲れ上がり、裏側切込線52で囲われる範囲内に、袋本体1の収納空間に通じる取出口2が形成される。
そして、
図8に示すように、指入れ口4に指を入れ、シート積層物9のうち1枚目の枚葉シート91の第1辺部91aを摘んで引き出すと、枚葉シート91(シート積層物9)の両角部に被さり片部3が被さっているので、1枚目の枚葉シート91の第1辺部91aの中央部が2枚目の枚葉シート91から離反する。さらに、1枚目の枚葉シート91を引き出すと、
図9に示すように、1枚目の枚葉シート91の両角部が被さり片部3の内面をスライドしながら被さり片部3から離れるが、2枚目以降の枚葉シート91は、被さり片部3に押さえられた状態となり、取出口2から出ることがない。従って、袋本体1内に収納されたシート積層物9から、枚葉シート91を1枚ずつ簡単に取り出すことができる。
なお、前記剥離部が弱接着されている場合には、蓋部12を捲った後、この蓋部12を元に戻して取出口2を再封することができる。
また、上記のように、被さり片部3の縁部3aは、裏フィルム62の縁から構成されているので、(表フィルムと裏フィルムの積層部から構成されている場合に比して)剛性が低く、枚葉シートをより取り出しやすいという利点がある。
【0042】
なお、本発明の包装袋は、上記実施形態に限られず、本発明の意図する範囲で、適宜変更することができる。以下、本発明の他の実施形態を説明する。ただし、以下の他の実施形態の説明においては、上記実施形態と異なる事項について主として説明し、上記実施形態と同様の構成及び効果については、その説明を省略し且つ用語及び符号を援用する場合がある。
【0043】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、1つの被さり片部3が枚葉シート91の第1辺部91aと第2辺部91bの交点を含む角部に被さり、もう1つの被さり片部3が第1辺部91aと第3辺部91cの交点を含む角部に被さっているが、例えば、2つの被さり片部3がそれぞれ独立してその交点を含まない角部に被さっていてもよい。
【0044】
[第3実施形態]
また、上記第1実施形態では、取出口2の第1縁部2aと枚葉シート91の第1辺部91aの間に指入れ口4が形成され且つ指入れ口4の両側における取出口2の第1縁部2aに被さり片部3がそれぞれ延設されているが、さらに、他の箇所にも指入れ口4及び被さり片部3が設けられていてもよい。つまり、取出口2の第1縁部2aと枚葉シート91の第1辺部91aの間に指入れ口4及び被さり片部3を設け、さらに、取出口2の第2縁部2bと枚葉シート91の第2辺部91bの間、取出口2の第3縁部2cと枚葉シート91の第3辺部91cの間、及び、取出口2の第4縁部2dと枚葉シート91の第4辺部91dの間から選ばれる少なくとも1つに指入れ口4及びその指入れ口4の両側にそれぞれの被さり片部3が設けられていてもよい。
図10に示す例は、取出口2の第1縁部2aと枚葉シート91の第1辺部91aの間、取出口2の第2縁部2bと枚葉シート91の第2辺部91bの間、取出口2の第3縁部2cと枚葉シート91の第3辺部91cの間、及び、取出口2の第4縁部2dと枚葉シート91の第4辺部91dの間の全てに、それぞれ指入れ口4及びそれらの指入れ口4の両側にそれぞれの被さり片部3が設けられている包装袋10を示している。
第3実施形態の包装袋10は、枚葉シート91の取り出し箇所が第1実施形態よりも増えるので、取り扱い易くなる。
【0045】
[第4実施形態]
上記各実施形態では、蓋部12が、平面視略長方形状に形成された袋本体1の長手方向に捲られるように構成されているが、
図11に示すように、蓋部12が短手方向に捲られるように構成されていてもよい。
【0046】
[第5実施形態]
また、上記各実施形態において、剥離部が擬似接着された包装袋10でもよい。剥離部が擬似接着されている場合には、蓋部12を捲った後、この蓋部12を元通りに接着できず又は接着困難である。このように蓋部12を剥がすと一度開封したことが簡単に判別できるので、悪戯などの不正開封の発見が容易に行える。
もっとも、剥離部を擬似接着した場合には、一旦蓋部12を捲った後、その蓋部12を再び袋本体1に貼り付けることが困難であるため、例えば、
図12に示すように、蓋部12の外面と袋本体1の外面に跨がって粘着ラベルCを貼付しておくことが好ましい。この粘着ラベルは、感圧型粘着剤を有するラベルである。粘着ラベルCにて蓋部12が封緘された包装袋10は、粘着ラベルCを袋本体1から剥離して、粘着ラベルと共に蓋部12を捲った後、その粘着ラベルCを再び袋本体1に貼り付けることにより、蓋部12を封緘できる。