【課題】曲げ加工後の板状物における曲げ部の端部の変形量を抑制して、曲げ部の端部の形状を整えることが可能な板状物の熱処理方法、板状物の曲げ方法、及び板状物を提供する。
【解決手段】板状物1の端部2bを含む少なくとも一部2を板厚方向Yの両側から加熱する板状物の熱処理方法であって、板状物1の端部2bに遮熱板20・30を配置することにより、該端部2bの加熱量を調節することを特徴とする。また、板状物1を板厚方向Yの両側から燃焼炎11a・12aと接触させて加熱し、遮熱板20・30は、主平板部20・31を備え、主平板部20.31の端面20a・31aと板状物1の端面2cとが対向するよう配置されることを特徴とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記「特許文献1」における技術によれば、ガラス板全体の温度をある程度の温度域に上げた後、遮熱板を用いて軟化変形させる部位のみを局部的に加熱して曲げ加工を施すことによって、製造されたガラス製品に対して、形状精度の向上化を図ることが可能である。
しかしながら、近年、曲げ半径の小さな屈曲形状のガラス板の需要が増加する中、前述した技術では、以下の理由によって形状精度の向上化を十分に図ることが困難であった。
【0005】
具体的には、例えば、ガラス板に曲げ加工を施す場合、当該ガラス板の曲げ予定箇所(実際に曲げ加工が施される部位)は、加熱により軟化される。
ここで、ガラス板の端部は、一方主面側から他方主面側への炎の回り込み等が発生するため熱源(炎)との接触量が多く、相対的に高温になり易い。これに対し、ガラス板の中央部は上記端部のような炎の回り込みが発生しないため、端部に比べて相対的に低温になり易い。
すなわち、ガラス板の曲げ予定箇所の近傍においては、端部の方が中央部に比べて加熱量が大きくなり、温度が高く、過加熱状態になりやすい。
その結果、ガラス板の曲げ予定箇所の端部が柔らかくなりすぎて、曲げ加工時に、曲げ部の端部がソリ上がる等して端部の変形量が大きくなるおそれがあった。
【0006】
本発明は、以上に示した現状の問題点を鑑みてなされたものであり、曲げ加工後の板状物における曲げ部の端部の変形量を抑制して、曲げ部の端部の形状を整えることが可能な板状物の熱処理方法、板状物の曲げ方法、及び板状物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上のごとくであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、板状物の熱処理方法は、板状物の端部を含む少なくとも一部を板厚方向の両側から加熱する板状物の熱処理方法であって、前記板状物の端部に遮熱板を配置することにより、該端部の加熱量を調節することを特徴とする。
【0009】
このような構成からなる本発明の板状物の熱処理方法によれば、遮熱板を板状物の端部に配置することで、板状物の端部の加熱量を抑えて、板状物の端部と中央部との温度差を小さくすることが可能となる。これにより、板状物の端部が過加熱状態になり、柔らかくなりすぎることを抑えることが可能となる。その結果、板状物を加熱箇所に沿って曲げた場合に、板状物の端部の変形量を抑制して、曲げ部の形状を整えることが可能となる。
【0010】
また、本発明の板状物の熱処理方法は、前記板状物を板厚方向の両側から燃焼炎と接触させて加熱し、前記遮熱板は、主平板部を備え、前記主平板部の端面と前記板状物の端面とが対向するよう配置されることを特徴とする。
【0011】
このような構成からなる本発明の板状物の熱処理方法によれば、主平板部を所定位置に配置することで、板状物の端部の加熱量を抑えて、板状物の端部と中央部との温度差を小さくすることが可能となる。これにより、板状物の端部が過加熱状態になり、柔らかくなりすぎることを抑えることが可能となる。その結果、板状物を加熱箇所に沿って曲げた場合に、板状物の端部の変形量を抑制して、曲げ部の形状を整えることが可能となる。
【0012】
また、本発明の板状物の熱処理方法においては、前記主平板部は、前記板状物の板幅方向に所定寸法の隙間を有しつつ、前記遮熱板の端面と前記板状物の端面とが対向するように配置され、前記遮熱板は、副平板部をさらに備え、前記副平板部は、前記板状物の一方主面側において、前記板状物の端部および前記隙間をともに覆うようにして配置されることを特徴とする。
【0013】
このような構成からなる本発明の板状物の熱処理方法によれば、主平板部及び副平板部を所定位置に配置することで、板状物の端部の加熱量を抑えて、板状物の端部と中央部との温度差を小さくすることが可能となる。これにより、板状物の端部が過加熱状態になり、柔らかくなりすぎることを抑えることが可能となる。その結果、板状物を加熱箇所に沿って曲げた場合に、板状物の端部の変形量を抑制して、曲げ部の形状を整えることが可能となる。
また、隙間の寸法を、主平板部のみを用いる場合に比べて大きく設定することができるので、加熱時に、主平板部と、板状物の端部とが膨張等して変形した場合でも、主平板部の端面と、板状物の端面とが互いに接触することを回避することが可能となる。
【0014】
また、本発明の板状物の熱処理方法においては、前記主平板部の少なくとも一方主面が、前記板状物の一方主面と略同一平面上に位置するように配置されることを特徴とする。
【0015】
このような構成からなる本発明の板状物の熱処理方法によれば、板状物に向けて熱流を安定的に流すことが可能となり、板状物の加熱及び遮熱板による加熱量の調節を安定的に行うことが可能となる。
【0016】
また、本発明の板状物の熱処理方法においては、前記板状物の一部を予め予熱する予熱工程をさらに備え、前記予熱された前記板状物の端部に前記遮熱板を移動配置して該端部の加熱量を調節しつつ前記板状物の一部を加熱することを特徴とする。
【0017】
このような構成からなる本発明の板状物の熱処理方法によれば、板状物を効率的に加熱することが可能となる。
【0018】
また、本発明の板状物の曲げ方法においては、前記板状物の曲げ予定箇所を上記の何れかの熱処理方法を用いて加熱する加熱工程と、前記曲げ予定箇所に沿って前記板状物を70°以上曲げる曲げ工程と、を備えることを特徴とする。
【0019】
このような構成からなる本発明の板状物の曲げ方法においては、板状物を比較的大きな曲げ角度に曲げ加工することが可能となる。
【0020】
また、本発明の板状物の曲げ方法は、前記曲げ工程において、前記曲げ予定箇所に沿って曲げられた前記板状物の曲げ部のRが、10mm以下であることを特徴とする。
【0021】
このような構成からなる本発明の板状物の曲げ方法によれば、板状物を比較的小さなRで曲げ加工することが可能となる。
【0022】
また、本発明の板状物は、結晶性ガラスであり、該板状物は、上記の何れかの板状物の曲げ方法を用いて形成された屈曲部を有することを特徴とする。
【0023】
このような構成からなる板状物は、屈曲部のRが10mm以下になり、及び/又は、曲げ角度θが70°以上になる形状に形成されることが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、曲げ加工後の板状物における曲げ部の端部の変形量を抑制して、曲げ部の端部の形状を整えることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0027】
図1に示すように、板状物1は、平板形状からなる。
本実施形態における板状物1は、ガラス板である。板状物1は、例えば、ストーブのガラス窓に用いられ、曲げ加工されることによりストーブに取り付けるための取付部が形成される。
また、本実施形態における板状物1は、結晶性ガラスである。
従って、板状物1を加熱することにより、曲げ加工することが可能であるともに、結晶化させることも可能である。
【0028】
結晶性ガラスとしては、結晶化することにより、例えば、β―石英固溶体や、β―スポジュメン固溶体を主結晶とする結晶化ガラスになるガラスが挙げられる。
なお、板状物1は、本実施形態のような結晶性ガラスに限定されることはなく、熱処理によって曲げ加工可能な性質を有するものであれば、何れのものであってもよい。
【0029】
以下では、板状物1を曲げ加工するための手順について説明する。
【0030】
図1及び
図2に示すように、まず、板状物1の一部である曲げ予定箇所2が、板状物1の板厚方向Yの両側から加熱される(予熱工程)。
【0031】
板状物1は、水平に配置された状態で、曲げ予定箇所2が加熱される。
本実施形態では、板厚方向Yは、上下方向である。従って、板状物1の曲げ予定箇所2は、上下から加熱される。
【0032】
板状物1の曲げ予定箇所2は、板厚方向Yに垂直な板幅方向Xに延びており、板状物1を直線状に横切るように設定される。
【0033】
板状物1の曲げ予定箇所2に対して板厚方向Yの一側には、第一の加熱部である上加熱部11が配置されており、板厚方向Yの他側には、第二の加熱部である下加熱部12が配置されている。上加熱部11は、曲げ予定箇所2に上方から対向しつつ、板幅方向Xに設けられている。下加熱部12は、曲げ予定箇所2に下方から対向しつつ、板幅方向Xに設けられている。本実施形態の加熱部11・12は複数のバーナーで構成される。加熱部11・12を構成するバーナーは、板幅方向Xに直線状に配列されている。このため前記バーナーに対して、酸素やガスを均一に供給することが可能となる。よって、前記バーナー間の火力のばらつきを小さくすることが可能となる。従って、加熱部11・12により曲げ予定箇所2を板厚方向Yの両側から均質に加熱することが可能となる。
上加熱部11は下方に燃焼炎11aを放出し、下加熱部12は上方に燃焼炎12aを放出する。曲げ予定箇所2は、板厚方向Yの両側から燃焼炎11a・12aを接触させられて加熱される。
【0034】
前記予熱工程は、曲げ予定箇所2の温度が、第一所定温度に到達するまで継続される。前記第一所定温度は、曲げ予定箇所2の外面のクラックが修復される程度にまで曲げ予定箇所2が軟化する温度である。
【0035】
前記予熱工程の終了後、すなわち、曲げ予定箇所2の温度が、前記第一所定温度に到達した後、本加熱工程に移行する。
【0036】
図3〜
図6に示すように、前記本加熱工程においては、まず、遮熱板20・30を板状物1の端部2bに移動配置する。そして、遮熱板20・30を板状物1の端部に配置することにより、該端部の加熱量を調節する。本実施形態では、遮熱板20・30を板状物1の曲げ予定箇所2の端部に配置する。これにより、曲げ予定箇所2の端部2bの加熱量を調節しつつ、曲げ予定箇所2全体を加熱する。
【0037】
前記本加熱工程においては、板厚方向Yの両側より曲げ予定箇所2を加熱している状態を保持しつつ、遮熱板20・30を所定位置に配置することにより、曲げ予定箇所2の端部2bの加熱量(単位時間当たりに供給される熱量)を調節する。前記本加熱工程において、遮熱板20・30は、曲げ予定箇所2における板幅方向Xの両側の端部2bのそれぞれに対して設置される(
図3及び
図5参照)。これにより、曲げ予定箇所2における板幅方向Xの両側の端部2bの加熱量が調節される。
遮熱板20・30が設置されることで、曲げ予定箇所2の端部2bの加熱量が抑えられる。これにより、曲げ予定箇所2における端部2bと中央部2aとの加熱量の差が小さくなる。その結果、板状物1を均質に加熱することが可能となり、曲げ予定箇所2の端部2bと中央部2aとの温度差を小さくすることが可能となる。
【0038】
前記本加熱工程は、曲げ予定箇所2の温度が、第二所定温度に到達するまで継続される。前記第二所定温度は、ガラス転移点〜ガラス転移点よりも100℃高い温度程度の曲げ加工可能温度である。
【0039】
前記本加熱工程の終了後、すなわち、曲げ予定箇所2の温度が、前記第二所定温度に到達した後、曲げ工程に移行する。
【0040】
前記曲げ工程において、板状物1は曲げ予定箇所2に沿って二つ折りに曲げられる(
図1及び
図8参照)。これにより、曲げ予定箇所2が屈曲して、曲げ部3aを形成する。このとき、板状物1は、例えば、成形型に載置されることにより、成形型の成形面に沿って自重で曲げ加工される。なお、板状物1に外力を加えることにより、板状物1を曲げ加工するように構成してもよい。曲げ加工後の板状物3は、曲げ部3aにおいて屈曲する屈曲部を有する。
【0041】
なお、曲げ加工後の板状物3を熱処理することにより結晶化させてもよい。
【0042】
以上のように、前記本加熱工程において、遮熱板20・30を所定位置に配置することにより、曲げ予定箇所2の端部2bの加熱量を調節しつつ、曲げ予定箇所2を加熱する(
図4及び
図6参照)。これにより、曲げ予定箇所2の端部2bの加熱量を抑えて、曲げ予定箇所2の端部2bと中央部2aとの加熱量の差を小さくすることが可能となる。これにより、曲げ予定箇所2の端部2bが過加熱状態になり、柔らかくなりすぎることを抑えることが可能となる。その結果、曲げ加工後の板状物3における曲げ部3aの端部の変形量を抑制して、曲げ部3aの端部の形状を整えることが可能となる(
図8参照)。
【0043】
以下では、本発明の遮熱板の一実施形態である遮熱板20について説明する。
【0044】
図3に示すように、主平板部である遮熱板20は、曲げ予定箇所2における板幅方向Xの両側の端部2bにそれぞれに対して設置される。遮熱板20においては、曲げ予定箇所2の一側の端部2bに対して設置されるものも、他側の端部2bに対して設置されるものも、その構造及び機能は同じである。従って、一側の端部2bに対して設置される遮熱板20についてのみ説明し、他側の端部2bに対して設置される遮熱板20の説明は省略する。
【0045】
図4に示すように、遮熱板20は、板幅方向Xに延びる平板状の部材である。遮熱板20は、前記本加熱工程において、遮熱板20は、曲げ予定箇所2の端部2bに対して板幅方向Xに所定寸法L1の隙間C1を有しつつ、遮熱板20の端面20aと板状物1の曲げ予定箇所2の端面2cとが対向するように配置される。隙間C1の寸法が小さくなるのにしたがって、隙間C1を通過する加熱部11・12の燃焼炎11a・12aの量が制限され、曲げ予定箇所2の端部2bの加熱量が小さくなる。よって、隙間C1の寸法を調整することで、曲げ予定箇所2の端部2bの加熱量を調節することが可能となる。
本実施形態では、隙間C1の寸法が寸法L1になるように構成される。寸法L1の大きさは、設計事項であり、寸法L1と端部2bの加熱量の大きさとの関係等を考慮して予め決定されている。寸法L1は、例えば、0.2mmに設定される。
【0046】
以下では、本発明の遮熱板の一実施形態である遮熱板30について説明する。
【0047】
図5に示すように、遮熱板30は、曲げ予定箇所2における板幅方向Xの両側の端部2bのそれぞれに対して設置される。遮熱板30においては、曲げ予定箇所2の一側の端部2bに対して設置されるものも、他側の端部2bに対して設置されるものも、その構造及び機能は同じである。従って、一側の端部2bに対して設置される遮熱板30についてのみ説明し、他側の端部2bに対して設置される遮熱板30の説明は省略する。なお、一側の端部2bに対して設置される遮熱板30と、他側の端部2bに対して設置される遮熱板30とは、左右対称な形状を有する。
【0048】
図6に示すように、遮熱板30は、主平板部31と、副平板部32と、連結板部33と、を備える。
主平板部31は、板幅方向Xに延びる平板状の部材である。主平板部31は、前記本加熱工程において、板状物1の曲げ予定箇所2の端部2bに対して板幅方向Xに所定寸法L2の隙間C2を有しつつ、主平板部31の端面31aと板状物1の曲げ予定箇所2の端面2cとが対向するように配置される。(
図7参照)。
主平板部31においては、遮熱板20のときと同様に、隙間C2の寸法を調整することで、曲げ予定箇所2の端部2bの加熱量を調節することが可能となる。
【0049】
図5〜
図7に示すように、副平板部32は、板幅方向Xに延びる平板状の部材である。副平板部32は、前記本加熱工程において、板状物1の曲げ予定箇所2の端部2bと、隙間C2と、に板厚方向Yの一側から対向するように配置される。副平板部32は、板状物1の一方主面側(本実施形態では、板状物1の下面1b側)において、板状物1の曲げ予定箇所2の端部2bおよび間隙C2をともに覆うようにして、曲げ予定箇所2の端部2bと所定間隔Z2を有しつつ平行に配置される副平板部32は、板厚方向Yの一側から板状物1に向かう熱流(燃焼炎12a)の経路上に配置される。これにより、曲げ予定箇所2の端部2bと、隙間C2と、が板厚方向Yの一側(下面1b側)から加熱されることが抑制される。
【0050】
図7に示すように、副平板部32が、曲げ予定箇所2の端部2bと対向配置されるときに、その対向幅Dが大きくなるのにしたがって、副平板部32が端部2bを覆う範囲が広くなる。これにより、端部2bにおいて、加熱量を調節される領域が広くなる。
【0051】
寸法L2、寸法D及び間隔Z2の大きさは、設計事項であり、寸法L2、寸法D及び間隔Z2の大きさと、端部2bの加熱量の大きさと、の関係等を考慮して予め決定されている。
【0052】
連結板部33は、板厚方向Yに延びる平板状の部材である。連結板部33の一端は主平板部31に連結されており、連結板部33の他端は副平板部32に連結されている。連結板部33により主平板部31と副平板部32が一体化されている。これにより、前記本加熱工程において、遮熱板30を配置するときに、主平板部31を配置する作業と、副平板部32を配置する作業とを別々に行う必要がなく、一括して行える。これにより、遮熱板30の配置を効率的に行える。
【0053】
前記本加熱工程において、主平板部31が配置されたとき、主平板部31における板厚方向Yの他側の面と、板状物1における板厚方向Yの他側の面と、の板厚方向Yの位置が略等しくなる(面同一)。すなわち、遮熱板30は、主平板部31における板厚方向Yの他側の面が、板状物1における板厚方向Yの他側の面と略同一平面上に位置するように配置される。
本実施形態では、主平板部31が配置されたとき、主平板部31の上面31aと、板状物1の上面1aとの高さが等しくなる(
図5参照)。これにより、主平板部31の上面31aと、板状物1の上面1aとの間に高低差がある場合に比べて、燃焼炎11aを板状物1に向けて安定的に流すことが可能となり、板状物1の加熱及び遮熱板30による加熱量の調節を安定的に行うことが可能となる。
【0054】
なお、遮熱板30において、本実施形態では、副平板部32を、端部2bと隙間C2とに下方から対向配置させたが、本発明はこれに限定されず、副平板部32を、端部2bと隙間C2とに上方から対向配置させてもよい(
図9参照)。
【0055】
なお、遮熱板20は、遮熱板20によってのみ、曲げ予定箇所2の端部2bの加熱量を抑える(
図4参照)。
これに対し、遮熱板30は、主平板部31と、副平板部32とによって、曲げ予定箇所2の端部2bの加熱量を抑える(
図6及び
図9参照)。
これにより、遮熱板30は、副平板部32が用いられるので、隙間C2の寸法L2を、遮熱板20の隙間C1の寸法L1よりも大きく設定しても、端部2bの加熱量を十分に抑えることができる(L2>L1)。
よって、遮熱板30は、隙間C2の寸法L2を大きく設定することができるので、前記本加熱工程において、主平板部31と、曲げ予定箇所2の端部2bとが膨張等して変形した場合でも、主平板部31と、曲げ予定箇所2の端部2bとが互いに接触することを回避することが可能となる。
【0056】
図8に示すように、本実施形態では、曲げ加工後の板状物3は、曲げ部3aのRが10mm以下である。
【0057】
また、本実施形態では、曲げ加工後の板状物3は、曲げ角度θが70°以上である。
【0058】
曲げ部(屈曲部)3aのRを10mm以下にする場合、及び/又は、曲げ角度θを70°以上にする場合、板状物1に急な曲げを生じさせるので、曲げ予定箇所2にかかる応力が大きくなる。このときに、曲げ予定箇所2の端部2bが過加熱状態であり、柔らかくなりすぎていた場合は、端部2bの変形量がさらに大きくなる。
本発明は、上記のように板状物1に急な曲げを生じさせる場合に、特に有用である。
【0059】
以下では、
図7を参照して、遮熱板30の詳細な構成について説明する。
【0060】
板状物1を曲げ加工して、曲げ部3aのRが10mm以下(例えば、8mm)、かつ、曲げ角度θが70°以上(例えば、90°)の板状物3を形成する場合には、板状物1の幅は6.3mm以下になる。それ以上板状物1を軟化させた場合、曲げ部3aの形状が製品として許容できない位に大きく変形してしまうおそれがあるからである。
【0061】
結晶性ガラスである板状物1を曲げ加工して、曲げ部3aのRが10mm以下の製品を形成する場合は、板状物1の加熱を急峻に行わないと、製品が失透してしまう。
【0062】
加熱域を6mm程度にする場合は、加熱部(バーナー)11・12で板状物1を加熱するときに、ガスに対して酸素比を大きくすることで、燃焼炎11a・12aを広がらせ過ぎずに、焼き幅を狭くして放出させる必要がある。これは、板状物1を急峻に加熱するためである。このような焼き幅の狭い燃焼炎11a・12aは、焼き幅の広い燃焼炎11a・12aに比べて放出距離が短くなる。
また、加熱部11・12と板状物1との上下間隔Za・Zbが大きすぎて、燃焼炎11a・12aが板状物1に届かないような場合は、板状物1を急峻に加熱することができなくなる。
また、上加熱部11は、下向きの燃焼炎11aを放出するが、燃焼炎11aは自然な状態では上向きに燃える性質を有するので、下向きの燃焼炎11aは放出距離が短くなる。従って、焼き幅の狭い燃焼炎11aを放出して、板状物1の加熱を急峻に行うためには、上加熱部11と板状物1との上下間隔Zaを小さくしなければならず、この上下間隔Zaは15mm程度が限界である。
これに対し、下加熱部12は、上向きの燃焼炎11bを放出するので、燃焼炎11bの放出距離を長くすることができる。従って、下加熱部12と板状物1との上下間隔ZbをZaに比べて大きくすることができ、30mm程度に設定できる(Zb>Za)。
【0063】
遮熱板30は少なくとも5mm程度の板厚Z1が必要になる。これは、遮熱板30の板厚Z1が5mmよりも小さい場合、前記本加熱工程での加熱により、遮熱板30が変形したり、溶けてしまったりするおそれがあるからである。
また、板厚が5mmの板状物1を用いる場合、板状物1と副平板部32との上下間隔Z2が20mm程度はないと、遮熱板30による加熱量の調節が非常に難しくなる。これは、上下間隔Z2が20mmよりも小さい場合、板状物1の温度が過度に下がってしまうからである。
また、加熱部11・12と副平板部32との上下間隔Z3は、最低5mm必要になる。これは、上下間隔Z3が5mmよりも小さい場合、遮熱板30の副平板部32の有る場所と、無い場所とで燃焼炎11a・11bが変わってしまう。これにより、安定した燃焼炎11a・11bを得ることが困難となり、加熱条件を設定することが困難となるからである。
【0064】
よって、遮熱板30により加熱量を調節できるようにするためには、遮熱板30の板厚Z1は、少なくとも5mm必要であり、板状物1と副平板部32との上下間隔Z2は、少なくとも20mm必要であり、加熱部11・12と副平板部32との上下間隔Z3は、少なくとも5mm必要になる。従って、副平板部32を配置するためには、Z1とZ2とZ3の和である加熱部11・12と板状物1との上下間隔Za・Zbは、少なくとも30mm必要になる。
【0065】
しかし、上記のように、上加熱部11と板状物1との上下間隔Zaは、15mm程度が限界である。よって、曲げ部3aのRが10mm以下、かつ、曲げ角度θが70°以上の板状物3を形成する場合には、
図9に示すような、曲げ予定箇所2の上方に、遮熱板30の副平板部32を配置する構成は採用することはできない。
【0066】
これに対し、上記のように、下加熱部12と板状物1との上下間隔Zbは、30mm程度に設定することができる。
これにより、曲げ部3aのRが10mm以下、かつ、曲げ角度θが70°以上の板状物3を形成する場合には、
図7に示すような、曲げ予定箇所2の下方に、遮熱板30の副平板部32を配置する構成は採用することができる。
【0067】
本実施形態では、
図7に示すような、曲げ予定箇所2の下方に、遮熱板30の副平板部32を配置する構成が採用される。
また、本実施形態の遮熱板30においては、所定寸法L2は1mmであり、副平板部32の対向幅Dは24mmであり、板厚Z1は5mmであり、板状物1と副平板部32との上下間隔Z2は20mmであり、加熱部11・12と副平板部32との上下間隔Z3は5mmである。
【0068】
なお、本実施形態では、板状物1を、予熱工程、本加熱工程、曲げ工程の順に加工したが、これに限定されることはなく、例えば予熱工程を行わずに、本加熱工程、曲げ工程の順に加工するように構成してもよい。