【実施例】
【0020】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
試験例1 熱ショックタンパク質産生促進
ヒト3次元培養表皮モデル(J−TEC製)をアッセイ培地にて、24穴(1穴2cm
2)のプレートを用いて、5%CO
2存在下、37℃で培養を開始した。翌日にヒト3次元培養表皮モデルの角層側から、試験物質を50μL添加し、15分間静置した後に試験物質を吸引除去し、再びCO
2インキュベータにアッセイプレートを戻した。試験物質は水酸化ナトリウム水溶液(pH10)、炭酸塩緩衝液(pH10)、タウリン3%水溶液(pH4.9)、タウリン3%水溶液(水酸化ナトリウムにてpH10に調製)、タウリン1%水溶液(水酸化ナトリウムにてpH7に調製)。6時間後に、CO
2インキュベータからアッセイプレートを取り出し、ヒト3次元培養表皮モデルをRNA Stabilization Reagentに浸漬し回収した。回収したヒト3次元培養表皮モデルからRNAを抽出し、リアルタイムPCRシステムを用いてHSP70ファミリーのひとつであるHSP70−1A(HSPA1A)のmRNAの測定を行なった。また、標的HSPA1Aの相対的な発現を決定するためのハウスキーピング遺伝子として働く、肝臓グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ1A(GAPDH)のmRNAを内部標準として測定した。用いたプライマー配列は以下の通りである。
【0021】
HSPA1A-F:5’-GGATAACGGCTAGCCTGAGGAG-3’(配列番号1)
HSPA1A-R:5’-CTGGGAAGCCTTGGGACAAC-3’(配列番号2)
GAPDH-F:5’-GCACCGTCAAGGCTGAGAAC-3’(配列番号3)
GAPDH-R:5’-TGGTGAAGACGCCAGTGGA-3’(配列番号4)
【0022】
その結果、対照群(試験物質非添加群)を100%発現に相当するように正規化すると、タウリン3%水溶液(pH10)では361%もしくは220%のHSPA1A発現促進作用が認められたが、水酸化ナトリウム水溶液(pH10)、炭酸塩緩衝液(pH10)、タウリン3%水溶液(pH4.9)、タウリン1%水溶液(pH7)においてはその発現促進作用は認められなかった(表1、2)。結果は3例の平均値±標準偏差を示す。
【0023】
以上の結果から、タウリンを含有し、pHを7より大きく調製した水溶液はヒト3次元培養表皮モデルに作用して熱ショックタンパク質の産生を促進する効果を有することが明らかとなった。また、タウリンを含有し、弱酸性〜中性付近のpHを示す水溶液では熱ショックタンパク質の産生を促進する効果が認められないことが明らかとなった。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
試験例2 熱ショックタンパク質産生促進
ヒト3次元培養表皮モデル(J−TEC製)をアッセイ培地にて、24穴(1穴2cm
2)のプレートを用いて、5%CO
2存在下、37℃で培養を開始した。翌日にヒト3次元培養表皮モデルの角層側から、試験物質を50μL添加し、15分間静置した後に試験物質を吸引除去し、再びCO
2インキュベータにアッセイプレートを戻した。試験物質はタウリン0.5%水溶液、タウリン1%水溶液、タウリン3%水溶液(水酸化ナトリウムにてpH7、8、9、10に調製)。6時間後に、CO
2インキュベータからアッセイプレートを取り出し、ヒト3次元培養表皮モデルをRNA Stabilization Reagentに浸漬し回収した。回収したヒト3次元培養表皮モデルからRNAを抽出し、リアルタイムPCRシステムを用いてHSP70ファミリーのひとつであるHSP70−1A(HSPA1A)のmRNAの測定を行なった。また、標的HSPA1Aの相対的な発現を決定するためのハウスキーピング遺伝子として働く、肝臓グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ1A(GAPDH)のmRNAを内部標準として測定した。用いたプライマー配列は以下の通りである。
【0027】
HSPA1A-F:5’-GGATAACGGCTAGCCTGAGGAG-3’(配列番号1)
HSPA1A-R:5’-CTGGGAAGCCTTGGGACAAC-3’(配列番号2)
GAPDH-F:5’-GCACCGTCAAGGCTGAGAAC-3’(配列番号3)
GAPDH-R:5’-TGGTGAAGACGCCAGTGGA-3’(配列番号4)
【0028】
その結果、タウリン0.5%水溶液(pH7)を100%発現に相当するように正規化すると、タウリン0.5%水溶液(pH8)では123%、タウリン0.5%水溶液(pH9)では135%、タウリン0.5%水溶液(pH10)では137%のHSPA1A発現促進作用が認められた(表3)。タウリン1%水溶液(pH7)を100%発現に相当するように正規化すると、タウリン1%水溶液(pH8)では147%、タウリン1%水溶液(pH9)では132%、タウリン1%水溶液(pH10)では122%のHSPA1A発現促進作用が認められた(表4)。また、タウリン3%水溶液(pH7)を100%発現に相当するように正規化すると、タウリン3%水溶液(pH9)では124%、タウリン3%水溶液(pH10)では148%のHSPA1A発現促進作用が認められた(表5)。結果は3例の平均値±標準偏差を示す。
【0029】
以上の結果から、タウリンを含有し、pHを7より大きくに調製した水溶液はヒト3次元培養表皮モデルに作用して熱ショックタンパク質の産生を促進する効果を有することが明らかとなった。
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】
【表5】
【0033】
試験例3 セラミド産生促進
ヒト3次元培養表皮モデル(J−TEC製)をアッセイ培地にて、24穴(1穴2cm
2)のプレートを用いて、5%CO
2存在下、37℃で培養を開始した。翌日にヒト3次元培養表皮モデルの角層側から、試験物質を50μL添加し、15分間静置した後に試験物質を吸引除去し、再びCO
2インキュベータにアッセイプレートを戻した。試験物質はタウリン3%水溶液(pH4.9)、タウリン3%水溶液(水酸化ナトリウムにてpH10に調製)、タウリン0.5%水溶液(水酸化ナトリウムにてpH7、8、9、10に調製)。1時間後に、CO
2インキュベータからアッセイプレートを取り出し、ヒト3次元培養表皮モデルをRNA Stabilization Reagentに浸漬し回収した。回収した3次元培養表皮モデルからRNAを抽出し、リアルタイムPCRシステムを用いてGBA2のmRNAの測定を行なった。また、標的GBA2の相対的な発現を決定するためのハウスキーピング遺伝子として働く、肝臓グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ1A(GAPDH)のmRNAを内部標準として測定した。用いたプライマー配列は以下の通りである。
【0034】
GBA2-F:5’-GTCCCTGATAAATCCAGTGTGCAGT-3’(配列番号5)
GBA2-R:5’-TGGAAGCCCTCCCAAGTCAG-3’(配列番号6)
GAPDH-F:5’- GCACCGTCAAGGCTGAGAAC-3’(配列番号3)
GAPDH-R:5’- TGGTGAAGACGCCAGTGGA-3’(配列番号4)
【0035】
その結果、タウリン3%水溶液(pH4.9)を100%発現に相当するように正規化すると、タウリン3%水溶液(pH10)ではGBA2 130%(表6)の発現促進作用が認められた。また、タウリン0.5%水溶液(pH7)を100%発現に相当するように正規化すると、タウリン0.5%水溶液(pH8)では142%、タウリン0.5%水溶液(pH9)では122%、タウリン0.5%水溶液(pH10)では107%のGBA2発現促進作用が認められた(表7)。表6の結果は2例の平均値を示す。表7の結果は3例の平均値±標準偏差を示す。
【0036】
以上の結果から、タウリンを含有し、pHを7より大きく調製した水溶液はヒト3次元培養表皮モデルに作用してセラミドの産生を促進する効果を有することが明らかとなった。
【0037】
【表6】
【0038】
【表7】