【実施例】
【0217】
実施例1
【0218】
合成の材料及び方法
【0219】
本発明のアゴニストは、例えばAdvanced Organic Chemistry.March,第4版,John Wiley and Sons,New York,NY,1992;Advanced Organic Chemistry,Carey and Sundberg,A巻及びB巻,第3版,Plenum Press,Inc.,New York,NY,1990;Protective groups in Organic Synthesis,Green and Wuts,第2版,John Wiley and Sons,New York,NY,1991;Comprehensive Organic Transformations,Larock,VCH Publishers,Inc.,New York,NY,1988、及びこれらの文献に引用されている参考文献に記載されるような当業者に公知の技術を用いて容易に合成できる。本発明に記載のアゴニストの出発材料は、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee,WI);Sigma Chemical Co.(St.Louis,MO);Lancaster Synthesis(Windham,N.H.);Ryan Scientific(Columbia,S.C.);Canbridge(Cornwall,UK);Matrix Scientific(Columbia,S.C.);Arcos,(Pittsburgh,PA)、及びTrans World Chemicals(Rockville,MD)等の市販供給源から容易に入手可能である化学的前駆体の標準的な合成変換を用いて調製することができる。
【0220】
試薬及び抗体。抗CD11bモノクローナル抗体(mAb)44a(IgG2a)[37]及びヘテロ二量体特異的抗CD18 mAb IB4(IgG2a)[38,39]は、ATCC製であった。mAb 24(IgG1)[40]は、Abcam製であり、アイソタイプ対照抗体MOPC−21(IgG1)及びMOPC−173(IgG2a)、FITCコンジュゲートmAb A85−1(ラット抗マウスIgG1)、R19−15(ラット抗マウスIgG2a)、及びFITCコンジュゲートヤギ抗マウス免疫グロブリンは、BD Pharmingen(San Diego,CA)製であった。ラット抗マウスGR1−FITC及びMac−1−PEは、BD Pharmingen(San Diego,CA)製であった。ヒトフィブリノーゲン(プラスミノーゲン、フォン・ヴィレブランド因子、及びフィブロネクチン除去型)は、EnzymeResearch Laboratories(SouthBend,IN)製であり、ウシ血清アルブミン(BSA)は、Sigma(St.Louis,MI)製であり、組換えヒトICAM1−Fcは、R&D Systems(Minneapolis,MN)製であり、iC3bは、Calbiochem(San Diego,CA)製であった。384ウェルプレートは、市販供給源からのもの(Nalgene(Rochester,NY)製のMaxiSorp、Corning(Corning,NY)製のHighbind)であった。無脂肪乳は、BioRad(Hercules,CA)から入手した。細胞定量試薬MTSは、Promega(Madison,WI)製であり、ATPLiteは、PerkinElmer(Boston,MA)製であった。PCR試薬、並びに制限酵素及び修飾酵素は、New England Biolabs Inc.(Beverly,MA)から入手した。グルタチオンビーズは、Sigma(St.Louis,MI)から購入した。細胞培養試薬は全て、Invitrogen Corp.(San Diego,CA)及びMediatech(Manassas,VA)製であった。胎仔ウシ血清は、Atlanta Biologicals,Inc(Lawrenceville,GA)から購入した。G418抗生物質は、Invivogen(San Diego,CA)から購入した。
【0221】
マウス。C57BL/6J(B6)野生型及びB6 CD11b−/−(Jax 3991)[41]マウスは、The Jackson Laboratory(Bar Harbour,ME)から購入した。野生型フィッシャー344ラットは、Harlan Laboratories(Indianapolis,IN)から購入した。動物の世話及び処置は、University of Miami Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によって承認され、施設のガイドラインに従って実施された。
【0222】
細胞株。野生型インテグリンCD11b/CD18を安定にトランスフェクトしたK562細胞(ATCC)(K562 CD11b/CD18)は、以前に記載されている[42,43]。突然変異体CD11bE320Aは、以前に記載されている[44]。突然変異体インテグリンCD11bE320A/CD18を安定にトランスフェクトしたK562細胞(K562 E320A)は、文献プロトコルに従って作製された[42,43]。細胞株は全て、10%非働化胎仔ウシ血清、50IU/mlのペニシリン及びストレプトマイシン、並びに0.5mg/mlのG418が補充されたイスコフの改変ダルベッコ培地(IMDM)中で維持された。
【0223】
K562細胞接着アッセイ。固相化リガンドを用いる細胞接着アッセイを以前に記載されている通りに実施した[42]。全て異なるK562細胞株(K562、K562 CD11b/CD18、及びK562 E320A)を用いるアッセイを同一のやり方で実施した。簡潔に述べると、384ウェルHighbindマイクロタイタープレートを、各1mMのCa
2+及びMg
2+イオンを含むリン酸緩衝生理食塩水、pH7.4(PBS++)中の30μLのリガンド溶液で、4℃で一晩コーティングした。リガンドFgを5〜15mg/mLの濃度で、iC3bを1〜5mg/mLの濃度でコーティングした。ヘテロ二量体特異的mAb IB4(腹水)を1:100希釈でコーティングした。その後、ウェルを1%ゼラチンを含むTBSでブロッキングする好中球アッセイを除き、ウェル中の非特異的部位を、Tris緩衝生理食塩水(TBS)、pH7.4中の1%無脂肪乳とともに室温で1時間インキュベートすることによってブロッキングした。次に、ウェルをTBSで3回洗浄した。K562細胞をアッセイバッファー(各1mMのCa
2+及びMg
2+イオンを含むTBS(TBS++))に懸濁し、リガンドをコーティングしたウェルに移した(30,000細胞/ウェル)。ロイカドヘリンファミリーの小分子アゴニストのストック溶液は、アゴニストを2〜10mMの濃度でDMSOに溶解させることによって調製した。アッセイ中のDMSOの最終濃度は、約1%であった。K562細胞を、増加濃度のロイカドヘリンの存在下、37℃で30分間インキュベートした。接着していない細胞を除去するために、アッセイプレートをゆっくりとひっくり返し、ひっくり返した位置に室温で30分間保った。接着し続けている細胞をホルムアルデヒドを用いて固定し、以前に記載されているように、イメージング顕微鏡法を用いて定量した[42]。ブロッキングアッセイのために、細胞をmAb 44a及びIB4とともにRTで30分間インキュベートし、その後、それらをアッセイウェルに添加した。3〜6個の複製ウェル中でアッセイを実施した。報告されたデータは、少なくとも3回の独立した実験のうちの1回からのものである。100,000を超える小分子のライブラリーを用いて新規アゴニストを同定するハイスループットスクリーニング(HTS)アッセイを以前に記載されているように実施した[42,45]。
【0224】
好中球接着アッセイ。8〜10週齢のWT及びCD11b−/−B6マウス由来の好中球を、文献プロトコルに従って、チオグリコレートで刺激した腹膜から単離した[46]。細胞を無血清培地(IMDM)に懸濁し、リガンドをコーティングしたウェルの中で、ロイカドヘリンとともに、37℃で10分間インキュベートした。次に、接着していない細胞を除去するために、アッセイプレートをゆっくりとひっくり返し、ひっくり返した位置に室温で30分間保った。接着し続けている細胞を、以前に記載されているように、イメージング顕微鏡法を用いて定量した[42,47]。アッセイを三連ウェルで実施した。報告されたデータは、少なくとも3回の独立した実験のうちの1回からのものである。
【0225】
走化性アッセイ及びタイムラプスビデオ顕微鏡観察。2D表面での好中球走化性を、記載されているように[48,49]、Zigmondチャンバー(Neuro Probe)を用いて、酸洗浄されたガラス又はFgコーティングされたガラスカバースリップ上で実施した。ロイカドヘリン(15mM)の非存在下又は存在下、10mMの細菌ペプチドホルミル−メチオニル−ロイシル−フェニルアラニン(fMLP、Sigma)の勾配中で細胞遊走を生じさせた。細胞遊走を、Nikon Eclipse 90i倒立顕微鏡を用いて、30秒毎の間隔で25分間記録した。PLAN APO 20X微分干渉コントラスト(DIC)顕微鏡対物レンズを用いてNikon DSカメラで画像を取得し、Nikon Imagingソフトウェアに取り込んだ。ImageJ用のIbidiの走化性及び遊走ツールプラグインを用いる手動の細胞トラッキングとともに、ImageJソフトウェア(NIH,USA)を用いて、10μmを超えて移動していた運動性集団について、好中球遊走の解析を行なった[48]。遊走速度及び全変位(起点からの距離)も解析した。少なくとも3回の独立した実験から1条件当たり少なくとも50個の細胞を用いて、定量を行なった。
【0226】
免疫蛍光。遊走好中球におけるインテグリンCD11b/CD18及びF−アクチンの局在を調べるために、細胞(10
4)を、ガラスカバースリップ上で、ロイカドヘリン(15mM)の非存在下又は存在下、無血清培地(RPMI 1640)中の10μMのfMLPで、37℃で15分間刺激した。細胞を固定し、0.1%のTriton X−100で透過処理し、抗マウスCD11b抗体(クローンM/170、BD Biosciences)、次いで、ヤギ抗ラットAlexa488(Invitrogen)及びローダミン標識ファロイジン(Invitrogen)で染色した。zシリーズの蛍光画像を、Leica TCS SP5共焦点顕微鏡及びHCX PL APO 63x/1.4 NA対物レンズで、並びにLeica LAS−AFソフトウェアを用いて記録した。z−シリーズをLeica LAS−AFソフトウェア一式で解析した。提示された画像は、基底細胞側から頂端細胞側への15枚の共焦点切片のz−スタック投影(スタックz−間隔、0.29μm)に由来するものである。提示された画像は、少なくとも2回の独立した実験からの条件1つ毎に解析された少なくとも20個の細胞を代表するものである。
【0227】
細胞表面でのCD11b/CD18のクラスタリングを調べるために、K562 CD11b/CD18細胞(10
4)を無血清培地(IMDM)に懸濁し、ロイカドヘリン(15mM)の非存在下又は存在下、記載されているように[50]、リガンドFg(100mg)あり又はなしで、37℃で3時間インキュベートした。細胞を懸濁液中で固定し、抗CD11b/CD18 mAb IB4、次いで、ヤギ抗マウスAlexa488(SIGMA)で染色した。蛍光画像を、LAS−AFソフトウェアにより駆動されるDCF360FXカメラを用いて、Leica DMI16000デコンボリューション顕微鏡及びHCX PL APO 63x/1.3 NA対物レンズで、Leica LAS−AFソフトウェアを用いて記録した。CD11b/CD18クラスターをImageJで解析し、蛍光強度の三次元表示もImageJで作成した。提示された画像は、少なくとも3回の独立した実験からの条件1つ毎に解析された少なくとも20個の細胞を代表するものである。
【0228】
組換えCD11b A−ドメイン(αA−ドメイン)の精製。組換えヒトαA−ドメインを公表されているプロトコルに従って構築し、精製した[51]。簡潔に述べると、残基Gly111からGly321に及ぶタンパク質断片(321WT)を、フォワードプライマー5’−ggttccgcgtggatccgagaacctgtactttcaaggaggatccaacctacggcag−3’(配列番号:1)及びリバースプライマー5’−gaattcccggggatccaccctcgatcgcaaagat−3’(配列番号:2)を用いて、かつ製造業者のプロトコルに従って、Infusionクローニングキット(Clontech,Mountain View,CA)を用いて、ベクターpGEX−2TのBamHI部位にクローニングし、発現させることによって、その不活性型立体構造のαA−ドメインを作製した。フォワードプライマー5’−ggttccgcgtggatccgagaacctgtactttcaaggaggttttcaggaatgt−3’(配列番号:3)及びリバースプライマー5’−atatccccgggattaaccctcgatcgcaaagcccttctc−3’(配列番号:4)を用いて、Ile316をGlyに置換する(I316G[52])ことによって、その活性型立体構造のαA−ドメインを作製した。挿入物をBamHI及びSmaIで消化し、BamHI及びSmaIで同様に消化したpGEX−2Tベクターに連結した。全てのコンストラクトを直接的なDNAシークエンシングで確認した。全ての組換えタンパク質をグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質として大腸菌(Escherichia coli)で発現させ、製造業者の指示に従って、親和性クロマトグラフィー(グルタチオン−ビーズ、Sigma)で精製した。精製タンパク質調製物を、20mm Tris−HCl、pH7.5、150mM NaCl(Tris緩衝生理食塩水)に対して透析し、その後、Amicon−10カラム(Millipore)を用いて濃縮し、−80℃で保存した。純度を1D SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動解析で確認した。
【0229】
αA−ドメインリガンド結合アッセイ。Maxisorp 96ウェルプレートを10mM PBS、pH7.4中のFg(1μg/ウェル)で一晩コーティングし、PBS中の1%ウシ血清アルブミンでブロッキングした。精製した、GSTタグ化αA−ドメイン(5mg/mL溶液の50mL/ウェル)の固相化Fgへの結合を、室温で1時間、TBSアッセイバッファー(0.1%BSA、1mM Mg
2+、1mM Ca
2+、及び0.05%Tween 20を含むTBS)中で行なった。未結合のαA−ドメインを、アッセイウェルをTBS++で2回洗浄することによって除去した。その後、結合したタンパク質の量を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(GE,Piscataway,NJ)(1:2000希釈)にコンジュゲートされた抗GST抗体とともに1時間インキュベートすることによって決定した。未結合の抗GST−HRPを、アッセイウェルをTBS++で2回洗浄することによって除去した。結合したタンパク質の検出を、製造業者のプロトコルに従って、TMB基質キット(Vector Labs,Burlingame,CA)を用いて行なった。吸光度を、Spectromax M5分光光度計(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を用いて読み取った。アッセイを三連ウェルで行なった。示したデータは、少なくとも3回の独立した実験のうちの1回からのものである。
【0230】
フローサイトメトリー。インテグリンCD11b/CD18の細胞表面発現についてのK562細胞のフローサイトメトリー解析を、公表されているプロトコルを用いて行なった[53,54]。簡潔に述べると、細胞をアッセイバッファー(各1mMのCa
2+及びMg
2+イオンを含むTBS(TBS++)、並びに0.1%BSA)に懸濁した。細胞(5×10
5)を、100ml TBS++中の15mMロイカドヘリンの非存在下又は存在下、一次mAb(1:100希釈のIB4又は44a腹水)とともに37℃で30分間インキュベートした。その後、細胞をアッセイバッファーで3回洗浄し、ヤギ抗マウス−APC(1mg/ml、Invitrogen)とともに4℃で20分間インキュベートした。細胞をアッセイバッファーで2回洗浄し、FACSCaliberフローサイトメーター(BD Biosciences,CA)を用いて解析し、少なくとも10,000事象をカウントした。CellQuestソフトウェア(BD Biosciences)を用いてデータを解析した。アッセイを三連で行なった。示したデータは、少なくとも3回の独立した実験のうちの1回からのものである。
【0231】
細胞生存率アッセイ。細胞生存率アッセイを記載されているように実施した。簡潔に述べると、K562 CD11b/CD18細胞(10,000/ウェル)を96ウェルプレート(Corning,Corning,NY)中、増加量の表示されたアゴニストとともに24時間インキュベートした。24時間後の生細胞の数を、製造業者のプロトコル(Promega,Madison,WI)に従ってMTS試薬を用い、かつアッセイプレートの読取りにSpectramax M5分光光度計(Molecular Devices)を用いることによって決定した。示したデータは、少なくとも2回の独立した実験を代表するものである。
【0232】
ウェスタンブロット。K562 CD11b/CD18細胞を、無血清培地中、LA1、LA2、LA3(15mM)又はFG(200mg)とともに、37℃で1時間インキュベートした。細胞ライセートを10%SDS−PAGEゲル上で泳動し、確立されたプロトコルを用いて、PVDF膜(ThermoScientific,Waltham,MA)に転写した。膜を1:1000希釈の抗ホスホERK1/2抗体(Thr202/Tyr204、Cell Signaling,Danvers,MA)でプロービングし、再ブロット用の弱いストリッピング溶液(Millipore,Billerica,MA)でストリッピングし、まず、抗ERK1/2抗体(Cell Signal)で、次に、抗GAPDH抗体(Cell Signaling)で再プロービングし、製造業者のプロトコル(ThermoScientific,Waltham,MA)に従って発色させた。提示したデータは、少なくとも3回の独立した実験を代表するものである。
【0233】
血球数。様々なマウス由来の全末梢血白血球数を、標準的なアッセイを用いてマウス病理検査コアで定量した。
【0234】
インビボ腹膜炎モデル。チオグリコレート誘導性腹膜炎を、8〜10週齢のWTB6及びCD11b−/−B6マウスを用いて、以前に記載されているように実施した[46]。ロイカドヘリンアゴニストを腹腔内(i.p.)チオグリコレート(3%)注射の30分前に投与した。LA1及びLA2(200mLの20mM生理食塩水溶液)を静脈内(i.v.)投与した。LA3をi.p.投与した(1mLの20mM生理食塩水溶液)。腹膜への好中球動員を評価するために、チオグリコレート注射4時間後に、マウスに麻酔をかけ、腹腔洗浄液を回収し、記載されているように、GR−1及びMac−1染色について二重陽性の細胞を用いて、移入してきた好中球の数を定量した[55]。
【0235】
ラットにおけるバルーン誘導性動脈損傷。手術は全て、イソフルラン麻酔(Baxter,IL,USA)下で行なわれた。特注の血管造影キット(Boston Scientific,Scimed)に適合させた2F Fogartyカテーテル(Baxter Corp.,Irvine,CA,USA)を用いて、右腸骨動脈のバルーン損傷を負わせた[56]。腹部大動脈での大動脈切開を行なって、2F Fogarty塞栓除去カテーテルを右腸骨動脈のレベルにまで挿入した。バルーンを1.5〜1.6気圧まで膨張させ、動脈切開部位まで3回引き戻した。大動脈切除を8.0縫合糸で修復した。腹腔を結節縫合パターンを用いて平面で閉じた。損傷の3〜30日後に動脈標本を回収し、4%ホルマリン−PBS(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)中で5分間固定し、組織検査及び免疫染色によって解析した。
【0236】
組織検査及び免疫染色。エラスチカ・ワンギーソン染色を組織化学的解析に用いて、新生内膜形成を評価した。NIH ImageJを用いて盲検様式で形態学的解析を行なった。組織中のマクロファージの検出のための抗ラットCD68(1:50、AbD Serotec)による免疫染色である。
【0237】
ゼブラフィッシュ尾びれの損傷アッセイ。トランスジェニックTg(mpx::eGFP)[57]を標準的なプロトコルに従って維持した[58]。受精後(dpf)3日の幼生の尾びれ損傷を記載されているように行なった[57]。4.2%トリカイン(tricane)を含むE3への浸漬によって幼生に麻酔をかけ、承認されたプロトコルに従って滅菌顕微解剖用メスを用いて尾を完全に切断し、示された時点の間、回復させた。ゼブラフィッシュ幼生(3dpf)を記載されているようにアゴニストで処理した(Ref)。簡潔に述べると、幼生をアゴニストのE3溶液に浸漬させることによって、小分子アゴニストを投与した。DMSOの最終濃度は、1%未満で維持した。炎症応答の評価のために、損傷を受けた幼生を損傷4時間後に解析した。洗浄後アッセイのために、損傷を受けていない幼生をE3中のアゴニストとともに4〜8時間インキュベートし、洗浄してE3に入れ、損傷を与えた。Volocityを用いて、Leica DMI6000B顕微鏡及びHamamatsu Orca−3CCDカメラを用いて、幼生を解析した。488nmのレーザーを用いて励起を行ない、Volocityを用いて画像を解析した。炎症部位での蛍光好中球の数を盲検様式で目視によりカウントした。
【0238】
統計解析。2以上の群を比較する場合、事後解析を伴う一元ANOVAを用いて、データを比較した。0.05未満のp値を有意とみなした。
【0239】
コンピュータモデリング。αA−ドメインの活性型の、開いた立体構造へのロイカドヘリンの結合をモデリングするために、コンピュータによる一連の研究を以下のように行なった。まず、開いた(活性型の)立体構造のαA−ドメインのモデルを作成した。その閉じた(不活性型の)立体構造と開いた(活性型の、リガンド結合可能な)立体構造の両方のαAの高分解能三次元構造は、PDBから入手可能である[59,60]。しかし、αA中のα7ヘリックス(これは、CD11b中のイソロイシンの受入口として知られる疎水性ポケット(SILEN)[60]又はCD11a中のIDAS[61]の一部を生成させ、αA活性化によって最も大きい立体構造変化を示す[62〜64])は、閉じた形態のαAの三次元構造[59]と比較して、開いた形態の三次元構造[60]において3残基短い。αAアゴニストは、この領域11中で結合すると予測されているので、α7ヘリックスを、αA−ドメインの高分解能構造[60]において、閉じた(不活性型)形態のαA[59]のドメイン由来の3つの追加の残基だけ手作業で延長させた。このモデルを水素結合最適化及び制約付き最小化によって洗練した。
【0240】
考えられるリガンド結合様式を特定するために、Schrodingerソフトウェア一式に実装されている誘導適合ドッキング(IFD)手順を以前に記載されているように適用した[36]。MM GB/SAを用いて、αA孔に順位を付け;このアプローチを用いて、疎水性溶媒露出表面積条件に関して補強された一般化ボルン溶媒和モデル(GBSA)を用いて、アゴニストのαAに対する結合の自由エネルギーを推定した。その後、最適化されたαA構造を、標準電位を用いるアゴニスト再ドッキングに用いた[65]。数回のIFDの実行を行ない、それらにより、大部分のアゴニストについての高得点の形状が得られた[36]。その後、IFD後の最適化された受容体構造を用いて、Schrodinger Glide及びSP得点化関数を用いて、新規のアゴニストをドッキングさせた。次に、そのZ配置のアゴニストについての最も得点が高い形状を分子動態シミュレーションでさらに最適化した。分子動態シミュレーションは、分子動態実行の作成(production molecular dynamics run)前にいくつかの最小化及びシミュレーション工程がある多工程プロトコルとして行なわれる。300K及び325K(NPT ensemble)でDEShaw Research製の分子動態パッケージDesmond[66]を用いて、IBM E−サーバー1350クラスター(36ノードの8Xeon 2.3GHZコア及び12GBのメモリ)上でSPC水モデル(受容体周辺の10Åの立方体)を用いて、シミュレーションを行なった。最終的なシミュレーション時間は12nsであり、この間、報告された形状は安定なままであった。
図12A〜12Eは、LA1、LA2、及びLA3の形状を示す。
【0241】
結果
【0242】
インテグリンアゴニストは、アンタゴニストに優るいくつかの利点を有する。ここ数年にわたるアンタゴニストを用いた研究によって、それらが準最適であることが示されている。第一に、アンタゴニストで白血球動員を抑制することは、通常、高レベルのブロッキング抗体をインビボで必要とする、活性型インテグリン受容体の90%超の占有を必要とする[32]ことが示されている。第二に、細胞表面に発現されたCD11b/CD18の完全な遮断は、CD11b/CD18の大量の移動可能な細胞内プールの利用可能性のために、抗体を用いても難しい[30,31]。第三に、リガンド模倣性の好中球阻害因子(NIF)[67]及び組換えαA−ドメイン[68]等の、いくつかの他のアンタゴニストは、動物モデルで効果的であったが、そのサイズの大きさ及び免疫原性のために、治療剤としてのその使用は避けられる。組換えNIF(UK−279276)は、臨床試験で失敗に終わった。同様に、抗CD11b/CD18抗体又はCD11b/CD18リガンドのいずれかに由来するペプチドは、おそらくは、溶液中でのその不適切な立体構造又はCD11b/CD18上のリガンド結合領域と比べたその小さいサイズのために、インビトロでリガンド結合を遮断するのにそれほど有効ではない[69]。最後に、多くのアンタゴニスト性抗体(例えば、rhuMAb CD18、抗CD18 LeukArrest(Hu23F2G)、及び抗ICAM1 mAb Enlimomab(R6.5))は、いくつかの臨床試験で炎症性疾患/自己免疫疾患を治療するのに失敗し[28,29]、また、β2インテグリン遮断薬は予期しない副作用も示し、市場から回収されなければならなかった[33]。
【0243】
CD11b/CD18アゴニストの同定のためのアッセイ:現在、CD11b/CD18の小分子アゴニストは利用可能ではなく、その理由は、主に:a)必要量のCD11b/CD18を哺乳動物細胞から得ることが難しいため、及び吸着したタンパク質の大部分がプラスチック表面への吸着によってその天然の立体構造を保持しないために、マイクロタイタープレートに吸着した精製CD11b/CD18に依存する現在のスクリーニングアッセイがハイスループットスクリーニング(HTS)キャンペーンに耐えられないこと、並びにb)そのようなアッセイが、細胞表面に発現したCD11b/CD18のその生理的リガンドに対する低い結合親和性のせいで自動化するのが難しいために、CD11b/CD18についての最適化された細胞ベースのアッセイは、現在、文献が不足していることである。出願人は最近、CD11b/CD18に対する小分子のライブラリーをスクリーニングするための新規の細胞接着ベースのHTSアッセイを記載した[42]。このアッセイは、固相化フィブリノーゲン(Fg)を、哺乳動物K562細胞上に安定に発現されるCD11b/CD18のリガンドとして用いる。この考えをHTSでの使用に適合させる際に直面する主な問題は、接着していない細胞を除去するためにどれだけ穏やかにプレートのウェルを洗浄しても、自動洗浄工程では、接着細胞のウェルからの大幅かつ不均一な剥離が生じるという事実であった。これにより、アッセイの大きなばらつきが生じた。驚くことに、自動プレート洗浄機を用いるよりもむしろ、アッセイプレートを単にひっくり返して、接着していない細胞を重力で穏やかに除去することによって、ばらつきがなくなり、頑健でかつ再現性のあるスクリーニングアッセイになることが分かった。その後、DAPI染色した細胞核の自動イメージングを用いて、接着細胞を定量した。新たに開発された384ウェルプレートベースのアッセイは、迅速で、費用がかからず、HTSの許容されるZ’値(>0.5)を一貫して生じ、かつHTS環境で実行しやすい。
【0244】
新規のCD11b/CD18アゴニスト−ロイカドヘリンの発見。自家開発した細胞ベースのハイスループットスクリーニング(HTS)アッセイを用いて[42]、K562 CD11b/CD18細胞に対するアゴニストについて、100,000を超える分子の化学的ライブラリーをスクリーニングした。独特な戦略として、細胞接着を阻害するアゴニストではなく、細胞接着を増加させる(アゴニスト)アゴニストに的を絞った。K562 CD11b/CD18のその生理的リガンドのフィブリノーゲン(Fg)への接着を増加させる(アゴニスト)コアフラニルチアゾリジノンモチーフを含有する一連のアゴニストが同定された[42,45]。K562 CD11b/CD18細胞は、アッセイバッファー(各1mMの生理的イオンCa
2+及びMg
2+を含むTris緩衝生理食塩水(TBS++))だけの中でインキュベートしたとき、固相化フィブリノーゲン(Fg)への結合をほとんど示さなかった。驚くことに、ヒットの大きなサブセットは、中心の5員2,4−ジ−オキソ−チアゾリジン[42]及び2,4−ジ−オキソ−チアゾリジンモチーフ含有アゴニスト[45]をヒットとして含むことが分かった。2,4−ジ−オキソ−チアゾリジンモチーフ含有アゴニストによるαA−ドメインのターゲッティングは、精製組換えαA−ドメインを用いる結合アッセイを用いて確認され、その場合、これらのアゴニストは、αA−ドメインの固相化Fgへの結合を増加させた[70]。さらに、CD11b/CD18を発現していない細胞は、感知できるほどの結合を示さず、また、CD11b/CD18発現細胞の結合は、既知の遮断モノクローナル抗体(mAb)44a[37](抗CD11b)及びIB4[38,39](抗CD18)で遮断することができたので、結合は選択的であった。
【0245】
中心コアに対する様々な置換の構造−活性関係(SAR)を調べ[36]、ロイカドヘリンと命名されているいくつかのアゴニストを同定した。これには、ロイカドヘリン−1(LA1)、ロイカドヘリン−2(LA2)、及びロイカドヘリン−3(LA3)が含まれ、これらは、それぞれ、4μM、12μM、及び14μMのEC50(接着の50%増加を表す有効濃度)値で、Fgに対するCD11b/CD18依存的細胞接着を増加させた(
図1A〜1D)。いくつかの他のアゴニストは、同様のレベルの活性を提供した。構造的に関連する化合物のロイカドヘリン−対照(LA−C)も同定され、これは、CD11b/CD18依存的細胞接着に対していかなる影響も及ぼさなかった(
図1A及び1E)。CD11b/CD18を発現していない細胞は、有意な結合を示さなかった(
図1B〜1E)。基底状態ではLFA−1媒介性接着を増加させるが、活性化状態ではそれを阻害する、最近記載されたLFA−1のインバースアゴニストとは異なり(Yang,W.,C.V.Carman,M.Kim,A.Salas,M.Shimaoka,and T.A.Springer.2006.A small molecule agonist of an integlin,alpha L beta 2.J Biol Chem)、LA1〜3は、アゴニストMn
2+の存在下で細胞接着を阻害せず(
図7A〜7C)、それらが真のアゴニストであることを示した。既知のアゴニストMn
2+及びLA1〜3によって誘導されるCD11b/CD18発現細胞の接着の増加は、抗CD11b/CD18モノクローナル抗体(mAb)IB4及び44aによって阻止され(
図1F)、これらの化合物が、CD11b/CD18依存的細胞接着を媒介することがさらに確認された。好中球は、CD11b/CD18の大量の移動可能な細胞内プールを含み、これは、不活性型形態から活性型形態へのCD11b/CD18の立体構造スイッチに加えて、好中球が細胞外マトリックスに接着するのを助ける。LA1〜3による細胞接着の増加の理由としてCD11b/CD18表面発現の上方調節を除外するために、K562 CD11b/CD18細胞(
図5)及び好中球(
図6)でのその表面発現を測定し、LA1〜3による増加は見られなかった。LA1〜3は、CD11b/CD18リガンドiC3b(
図8A〜C)及びICAM−1(
図9)に対する細胞接着も増加させたので、LA1〜3によるCD11b/CD18依存的細胞接着の増加は、リガンドの種類に非依存的であった。ヒト単球THP−1細胞もロイカドヘリンによって誘導される同様の細胞接着の増加を示し、ロイカドヘリンの効果が細胞型に非依存的であることが示された(
図10A〜10C)。LA1〜3は野生型(WT)好中球の固相化Fgへの結合も増加させたが、CD11b
−/−好中球の固相化Fgへの結合を増加させず(3)(
図1G)、これらの化合物が、CD11b/CD18を標的とすることがさらに示された。ロイカドヘリンがCD11b/CD18媒介性貪食にも影響を及ぼすかどうかを明らかにするために、K562 CD11b/CD18細胞を、iC3bオプソニン化RBC(EiC3b)とともにインキュベートした。LA1〜3は、EiC3bの捕捉及びロゼッティングを有意に増加させることが分かり、これらのアゴニストは、CD11b/CD18媒介性貪食機能を上方調節することもできることが示された(
図11)。これにより、CD11b/CD18活性化が抗炎症性であるかどうか、及びインテグリンの小分子アゴニストが、インビボでインテグリンを活性化し、他のインテグリンの活性化突然変異体がノックインされた動物によって予測されるような結果をもたらすことができるかどうかについての試験が初めて可能になる。
【0246】
また、いくつかの類似体のコンピュータによる検討を行なった。その低親和性及びその高親和性の立体構造のαA−ドメインの高分解能三次元構造を用いたコンピュータによるドッキング研究[59,60,62]は、LA1〜3が、活性化感受性α7−ヘリックス領域付近で、αA−ドメインの開いた、高親和性立体構造に優先的に結合し、その高親和性立体構造のαA−ドメインをアロステリックに安定化することを示した[36](
図12A〜12E)。
【0247】
式(II)の特定のアゴニストについて、フラン環(R
3置換基)のC−5位での置換が、アゴニスト効力に対して最も大きい効果を有することが分かった(例えば、化合物1〜30)[36]。平面フラニル環とのパイ共役を破壊する非芳香族又は非共役置換基は、非常に不利であった。特定の配向では、平面芳香環が好ましく、非置換フェニル環も、フェニル環のオルト位又はパラ位の脂肪族基と比べて好ましかった。チアゾリジン環のN−3位の置換基については、(エチルからメチルへの)置換エステルの長さの短縮、及び脂肪族鎖長の短縮が極めて不利であった。同様に、脂肪族鎖とフェニル環との置換は不利であった。長鎖の嵩高い残基もN−3位では不利であった。しかし、メチレン置換された小さい芳香族環を含有する化合物は、LA3と同様のレベルまで結合した。逆に、R
3におけるN−3位のベンジルと、電子求引性が高くかつ嵩高いパラ−置換芳香族化合物との共置換は、極めて不利であった。特定の化合物は、固相化Fgへの結合[70]及びCD11a/CD18と比べたインテグリンCD11b/CD18に対する高い選択性を増加させることによって、精製組換えαA−ドメインに対する選択的結合も示した。
【0248】
さらにこれらの化合物を評価するために、Schrodinger QikPropプログラムを用いて、様々な物理化学的記述子を計算した。そのシリーズ(化合物1〜14)中で最も望ましい化合物は、予測された良好なCaco−2細胞透過性及びヒト経口吸収を有する。それらの中で、LA1〜3は、わずかにより良好なclogP及び予測されたより良好な溶解性を有し、かつそれらの中で最も高いリガンド効率(BEI=14)を有する[71]。
【0249】
次に、αA−ドメイン中のこの小分子サブセットの潜在的結合ポケットについての洞察を得るために、コンピュータによるドッキング実験を行なった。その閉じた(不活性型の)立体構造と開いた(活性型の、リガンド結合可能な)立体構造の両方のCD11b A−ドメインの高分解能三次元構造がPDBから入手可能である[59,60,62]。しかし、αA中のα7ヘリックス(これは、CD11b中のイソロイシンの受入口として知られる疎水性ポケット(SILEN)[60]又はCD11a中のIDAS[61]の一部を生成させ、かつαA活性化によって最も大きい立体構造変化を示す[62〜64])は、閉じた形態のαAの三次元構造[59,62]と比較して、開いた形態の三次元構造[59,60]において3残基短い。新たに発見されたアゴニストは、この領域中で結合し、αAのこの立体構造を安定化すると予測されているので、α7ヘリックスを、CD11b A−ドメインの高分解能構造[59,60]において、閉じた形態の構造由来の3つの追加の残基だけ手作業で延長させ、次いで、Maestroタンパク質調製設備(Schrodinger Inc,Portland)に実装されているような水素結合最適化及び制約付き(Impref)最小化を行なうことによって、CD11b A−ドメインの開いた(活性型の、リガンド結合可能な)立体構造のモデルを構築した。
【0250】
アゴニスト結合によって安定化されるように見える、活性化によるα7ヘリックスの立体構造の再ポジショニングは、アゴニストが、ヘリックスα7とヘリックスα1と中心βシートの間の領域中で結合することを示している[11,62]。これは、以前の報告によっても示されている[11]。それゆえ、αA−ドメインの上記の最適化された構造を、開いた立体構造において利用し、化合物ドッキングを引き起こした。アポ構造では、この活性化感受性α7ヘリックス領域には、ポケットを裏打ちする多くの疎水性残基が空間的に密集していた。Schrodingerソフトウェア一式に実装されている誘導適合ドッキング手順を適用した。この手順では、あり得る孔の組合せを生成させる軟化ポテンシャルによる初期ドッキングに続いて、受容体最適化及びリガンド再ドッキングが行なわれる[65]。このプロトコルによって、2,4−ジ−オキソ−チアゾリジンコア及びその類似体のカルボニル酸素がSer133及びThr169によって固定されている、例えば、LA3の疎水性2,4−ジクロロフェニル部分が疎水性ポケット中で相互作用している、LA1〜3の高得点の形状(Z配置)が得られた。高温での安定な6ns全原子の明示的溶媒分子動態シミュレーション(DEShaw Research製のDesmondを用いる)[66]では、α7ヘリックスは、ごくわずかにしか適応しない。誘導適合ドッキング受容体を用いて、Schrodinger Glide Program[72]を用いて、さらなる構造をドッキングさせた。その後、受容体の柔軟性によって相対的な結合自由エネルギーのより正確な推定が得られるのを可能にするMM−GB/SA法[73]を用いて、得られた孔を再得点化した。最良の化合物に関する結果として得られた結合仮説を
図12A〜12E及び
図24に示す。予想されたように、疎水性フェニルフラニル部分(チアゾリジン環上のC5−置換基)は、残基L312、I308、L305(α7ヘリックス)、L164、V160、F156(α1ヘリックス)、及びY267、I269、I236、V238、I236、I135(中心βシート)によって裏打ちされた疎水性ポケットに埋没している。この構造モデルによって、(LA1〜3と構造的に関連する)化合物LA−Cが不活性である理由も説明される。というのは、この結合様式では、LA−Cの中心チアゾリジン環のN−3位にあるエチルカルボキシレート部分のαC炭素が、Ser133、Thr169、及びAsp132と近接し(2.5Å未満)、これにより、密接な嵌合が生じ、いくつかの化合物中に存在するが、LA1〜3には存在しない、αCのより大きなメチル基が許容されないからである。一般に、最も類似した化合物について、立体的により要求の多い化合物のより低い活性は、(少なくとも部分的には)受容体及び/又はリガンドの歪みの増加に起因し得ることが分かった。
【0251】
SAR及び結合仮説は、1つの疎水性相互作用が重要であることを示している。2つの極性末端を有する化合物は一般に、不活性であることが分かっている。疎水性ポケットにおける相互作用は、立体的要求及び全体的な分子サイズに対して極めて感受性が高いように思われる。例えば、より小さい酢酸エチルN−3置換基の場合、より大きいフェニルフラニル置換基及びより小さいフェニルフラニル置換基が許容されるが(とはいえ、最も小さいものが最も活性がある)、より大きいN−3置換基を有する構造の場合、非置換フェニルフラニルにしか活性がない。したがって、コンピュータによるドッキング研究は、インテグリンCD11b/CD18のこれらの新規のアロステリックアゴニストの結合についての妥当な仮説を示している。さらに、様々な誘導適合ドッキング研究において、他の形状が得られた。例えば、1つのモデルは、化合物が、その長い、縦軸に沿って「素速く動く」ことを示した。しかし、全ての場合において、疎水性部分は、
図12A〜12Eに記載及び図示されている同じ領域中で相互作用する。
【0252】
次に、極めて相同なインテグリンCD11a/CD18(LFA−1としても知られる)と比べた、インテグリンCD11b/CD18に対する化合物の選択性を明らかにした。野生型インテグリンCD11a/CD18を安定にトランスフェクトしたK562細胞(K562 CD11a/CD18)を作製した。次に、固相化された、インテグリンCD11a/CD18の生理的リガンドのICAM−1に対する細胞接着を増加させるLA3の能力を測定した。それは、CD11a/CD18と比べて、インテグリンCD11b/CD18に対する2倍高い選択性を示し、K562 CD11b/CD18細胞について13.6±5μMのEC50値であった。これは、これらのアッセイにおいて両方のインテグリンに対する等しい結合を示した、以前に記載された化合物と対照的である[35]。
【0253】
CD11b/CD18中のリガンド結合αA(又はαI)ドメイン[35,36,42]に結合すると予測されるLA1〜3の結合部位を同定するために、突然変異体インテグリンCD11bE320A/CD18を安定に発現するK562細胞(K562 E320A)を作製した。CD11b A−ドメイン(αA−ドメイン)中の活性化感受性α7−ヘリックスの後ろのリンカー中の高度に保存された残基E320は、CD18 vWFA−ドメイン(βA−又はI−ドメイン)の内在性リガンドとして働く[44]。E320A突然変異は、CD11b/CD18によるアゴニストMn
2+−イオン媒介性リガンド結合の増加を消失させる。しかし、さらなる活性化突然変異による高親和性立体構造のαAの安定化は、この欠点を克服し、E320A突然変異体でのリガンド結合を誘導する[63]。(Mn2+ではなく)LA1、LA2、及びLA3は、K562 E320AのFgへの結合を選択的に増加させ(
図1H)、これらの化合物も高親和性立体構造のαA−ドメインに結合し、それを安定化することを示している。確認するために、精製組換えαA[70]を用い、予想されたように[35,42]、LA1及びLA2が、構成的活性化突然変異(I316G)を含む突然変異体αA−ドメインの場合に認められる結合レベル[52]まで、WT αAの固相化リガンドへの結合を増加させることが分かった(
図1I)。これは、ロイカドヘリン結合が、その開いた、高親和性立体構造のαAを安定化することを示している。
【0254】
フローサイトメトリー解析は、LA1の存在下での、活性化感受性mAb24のK562 CD11b/CD18細胞への結合の増加を示し、LA1が生細胞で発現された全長インテグリンを活性化することを裏付けた(
図13)。Bjorklundらは、CD11b/CD18 aAも標的とするCD11b/CD18アゴニスト(IMB−10)を記載した。本発明者らは、本発明者らの細胞ベースの接着アッセイを用いて、LA1及びIMB−10のCD11b/CD18に対する相対的親和性を比較し、LA1が、おそらくは、そのより回転が制約されたフラニル−チアゾリジノン中心スキャフォールドのために、より高い親和性を示すことを見出した(
図14)。
【0255】
2D表面での白血球走化性は、インテグリン媒介性の連続的な接着及び脱接着工程を伴う[74]。構成的活性型インテグリン突然変異体を発現する細胞は、インテグリンをリガンド結合状態に留めることによって、接着の増加及び走化性勾配における細胞遊走の劇的な低下を示した[75,76]。ロイカドヘリンによる細胞接着の増加が細胞遊走に影響を及ぼすかどうかを検討するために、ケモカインペプチドホルミル−Met−Leu−Phe(fMLP)[49]の勾配に応答して化学遊走するマウス好中球を用いた。生細胞イメージングは、生理的バッファー中での好中球の円滑な遊走を示した(
図2A)。しかし、LA1、LA2、又はLA3による処理は、これらの細胞の側方遊走及び遊走速度の有意な減少をもたらす(
図2A〜2C)。LA1〜3で処理した細胞は、ケモカイン方向への若干の移動を示したが、それらは、方向持続の低下(
図2D)及び平均二乗変位の低下(MSD、
図2E)を示し、対照(DMSO)細胞のより方向性のある運動性と比較して、制約された運動性を示した。ロイカドヘリンの非存在下で化学遊走する好中球とは異なり(この場合、好中球は、典型的な扁平な先端及び短くて細い尾を示す)、LA1〜3の存在下で遊走する細胞は、伸張した尾肢を示し、活性化インテグリン突然変異で見られるような、細胞遊走の減少の背後にある重要なメカニズムとしての、細胞脱接着の欠損を示した[55,77]。検討するために、共焦点顕微鏡法を用い、それにより、LA1〜3で処理した細胞の伸張した尾肢におけるクラスター化したCD11b/CD18が示され(
図2F)、尾肢におけるインテグリン−基質相互作用の解除の失敗が、欠陥のある遊走の一因であることが示された。ロイカドヘリン処理は、3Dコラーゲンゲル中での好中球遊走の変化を示さず(
図15A〜15E)、3Dでの白血球遊走がインテグリン非依存的であるという最近の知見を裏付けた。しかし、ロイカドヘリンは、HUVEC層への細胞接着を増加させることによって、インビトロでのTHP−1細胞によるTNFa活性化HUVEC層を介した経内皮遊走(TEM)の効率を低下させた(
図2G〜I)。まとめると、これらのデータは、ロイカドヘリンが細胞接着力を増加させ、その側方運動性を低下させ、それによりTEMに影響を及ぼすことを示している。
【0256】
インテグリン活性化及びリガンド結合は、細胞表面でのインテグリンのクラスタリングを生じさせ、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ/細胞外シグナル調節キナーゼ(MAPK/ERK1/2)経路の活性化を含む、外側から内側へのシグナル伝達を引き起こし[17,22]、それにより、大部分の細胞でのアンカレッジ依存的な生存促進性シグナルを模倣する[50]。LA1〜3は、CD11b/CD18に結合し、それを活性化するので、そのような結合だけで、インテグリン媒介性の外側から内側へのシグナル伝達が誘発され、それにより、細胞にとってリガンドがインテグリンに結合した状態とよく似た状況が生じ、これが、白血球の寿命及び機能に対して深刻な結果をもたらし得ると考えられる。検討するために、共焦点顕微鏡法を用いて、細胞表面でのCD11b/CD18クラスタリングをイメージングした[17]。細胞は、リガンドの非存在下で、検出可能なCD11b/CD18マクロクラスタリングを示さなかったが(
図18A、DMSO)、外部からFgを添加したときに、高度のクラスタリングを示した(
図18B、DMSO)。同様に、LA1〜3による処理は、外部からFgを添加したときにのみインテグリンマクロクラスタリングを示し(
図18A〜18B)、これは、LA1〜3がインテグリンリガンド模倣体でないことを示唆している。さらに、既知のCD11b/CD18アゴニストMn
2+[78]並びに活性化mAb[79]及びそのリガンド[17]は、ERK1/2リン酸化を誘導するので、ERK1/2リン酸化を細胞で検討し、LA1〜3処理が、リガンドFg(
図19)又はホルボールエステルPMA(図示せず)とのインキュベーションとは対照的に、ERK1/2リン酸化(pERK、
図19)を誘導しないことが分かった。したがって、ロイカドヘリンが、リガンドを模倣せず、また、細胞において外側から内側へのシグナル伝達を誘導しないという結論を下すことができる。
【0257】
驚くことに、LA1〜3処理は、DMSOのみによる処理と比較したとき、リガンドFgの場合と同様の、強力なAktリン酸化を引き起こした(図示せず)。pAktは、炎症促進性サイトカインの炎症シグナル(例えば、LPS)依存的な発現を抑制することが知られているので、これは、ロイカドヘリンが白血球における炎症促進性サイトカイン発現を抑制することもできることを示している。
【0258】
ロイカドヘリンは、好中球及びマクロファージによる可溶性因子の分泌を減少させる。白血球による炎症促進性サイトカインの分泌に対するロイカドヘリン処理の効果を検討するための実験において、WTマウスのマクロファージ及び好中球を、2つの異なる濃度のアゴニストLA1の非存在下又は存在下、LPSで刺激し、細胞上清中の炎症促進性サイトカインのレベルを測定した。LPS処理は、刺激していない細胞と比較して、両方の細胞型でサイトカイン分泌を有意に増加させ(図示せず)、また、LA1の添加は、上清中のそれを有意に減少させ、これにより、ロイカドヘリンによるCD11b/CD18活性化が抗炎症効果を有し得ることが示された
【0259】
インビボでの炎症応答に対するLA1〜3の効果を明らかにするために、マウスでの急性チオグリコレート誘導性腹膜炎による好中球動員に対するその効果をモニタリングした[41]。LA1〜3は、50μMもの濃度で、K562細胞(
図16A〜16D)に対しても、マウス好中球に対してもインビトロでの細胞傷害性を示さなかった(
図17A〜17C)。チオグリコレートの腹腔内注射は、生理食塩水のみと比較して、腹膜への好中球の有意な蓄積をもたらした(p<0.01)(
図3A)。ビヒクルのみの投与と比較して、チオグリコレート注射30分前のLA1の投与は、好中球蓄積を有意に低下させ(40%、p<0.05)、LA2はそれを65%低下させ(p<0.0001)、LA3はそれを55%低下させた(p<0.05)。ロイカドヘリンで処置したマウスの循環中での白血球の測定は、ビヒクル処置動物と比較して、その細胞数の低下を示さなかった(表1)。
【表1】
【0260】
これは、ロイカドヘリンが、インビボで白血球細胞傷害性を引き起こさないことを示し、それゆえ、白血球細胞傷害性は、ロイカドヘリン処置動物で遊走好中球の低下が観察された理由から除外される。LA1〜3投与が、以前に公表されたように[41]、WTと比較して好中球蓄積の増加を示す、CD11b−/−マウスの腹膜内の動員された好中球の数を有意に低下させるものではないことも分かった(
図3B)。これはさらに、LA1〜3が、インビボでインテグリンCD11b/CD18を選択的に標的とすることを示している。
【0261】
TGC誘導性腹膜炎では、腹膜好中球の数が、ビヒクル処置動物で4時間後に増加し、12時間後にピークに達し、その後、減少することが分かった(
図3C)。LA1処置動物では、好中球蓄積は、4時間で有意に低下し、12時間後に低下した状態のままであった。同程度の数の腹膜好中球が両方の動物群で24時間後に観察され、ロイカドヘリンが好中球動員を有意に遅延させることが示された。
【0262】
ロイカドヘリン処置が、任意の特定の器官における好中球の隔離を引き起こすかどうかを明らかにするために、TGC誘導性腹膜炎動物由来の組織の組織学検査を用いた。好中球の隔離はロイカドヘリン処置動物で見出されず(
図3D)、ロイカドヘリンが、マウスの任意の特定の器官における好中球の隔離を引き起こさないこと、並びにロイカドヘリンの効果が、実際、その炎症部位付近での好中球接着力の増加及び好中球運動性の減少によって部分的に媒介されることが確認された。
【0263】
白血球動員は、経皮的冠動脈形成術(PTCA)後の新生内膜肥厚及び再狭窄よりも前に起こる[3]。機械的血管損傷部位での内皮細胞内層の露出は、フィブリン及び血小板の沈着を引き起こし、その場合、血小板細胞表面受容体GP Ibαと白血球の表面に発現したインテグリンCD11b/CD18の間の選択的結合によって、白血球の動員が媒介される[80]。実際、機械的血管損傷の実験モデルでは、抗体によって媒介されるCD11b/CD18遮断又はCD11b/CD18の不在(CD11b−/−)は、血管形成術又はステント移植後の内膜肥厚を減少させる[25]。この損傷に対するインビボでの薬理学的活性化CD11b/CD18の効果を調べるために、アゴニストをラットの動脈バルーン障害モデルで試験した[56]。ロイカドヘリンLA1、LA3、又はビヒクル(DMSO)を損傷の30分前にフィッシャー系の雄ラットに投与し、1日おきに3週間、注射し続けた。LA2は、おそらくは、ラットαAとヒトαAの結合ポケットの違い(わずか約70%の相同性[68])のために、効果を示さなかった。LA1処置動物及びLA3処置動物の損傷動脈は、ビヒクル処置動物(0.23±0.01の比)と比較して、有意に低下した新生内膜肥厚(それぞれ、0.16±0.02及び0.14±0.01の新生内膜対中膜比、p<0.05)を生じさせた(
図3E〜3J及び
図21A〜21D)。対照化合物LA−Cは、効果を示さなかった(
図20A〜20B)。ロイカドヘリン処置が、血管リモデリングよりも前に起こる白血球蓄積の低下をもたらすかどうかを明らかにするために、マクロファージ特異的抗CD68抗体を用いて、損傷3日後の動脈の免疫組織化学的解析を行なった。ビヒクル対照(42.2±6.7)と比べて、LA1処置動物及びLA3処置動物の動脈の中膜マクロファージの数の有意な低下(それぞれ、17.7±3.1及び6.9±1.3、p<0.01)が観察された(
図3E〜3J及び
図21A〜21D)。まとめると、これらの結果は、ロイカドヘリン処置が、血管損傷部位での白血球の蓄積の低下、及びその後の新生内膜肥厚の減少をもたらすことを示している。
【0264】
驚くことに、以下の実験を用いて、インテグリンアゴニスト(ロイカドヘリン)が、炎症性損傷の治療において、インテグリンアンタゴニストに優る治療的利益を有することが分かった。腎疾患の確立されたマウスモデルである、抗糸球体基底膜(抗GBM)腎炎を用いて、十分に特徴付けられているCD11b/CD18アンタゴニスト(抗CD11b抗体M1/70)とLA1の直接の比較を行なった。このモデルは、アルブミンを含む、尿タンパク質の損失を媒介する好中球浸潤を特徴とする。この疾患におけるCD11bの重要な役割と一致して、CD11b
−/−マウス及び抗CD11b mAb処置ラットは、白血球浸潤の減少及びタンパク尿からの保護を示した。この場合、マウスにおける疾患の誘導は、3日目での好中球の最大流入及び最大タンパク尿をもたらした(
図3K〜3L)。M1/70は、好中球流入を有意に減少させ、かつタンパク尿を低下させた。しかし、LA1は、処置マウスにおける浸潤好中球の数とタンパク尿の両方の有意なかつ最大限の減少をもたらし、アンタゴニストに優るアゴニストの明白な治療的利益を示した。
【0265】
生きた動物における白血球蓄積に対するロイカドヘリン処置の効果を可視化するために、骨髄特異的ペルオキシダーゼ遺伝子(mpx)プロモーター下でGFPを発現するトランスジェニックTg(mpx::eGFP)ゼブラフィッシュを用いて、白血球動員のライブイメージング用に好中球を特異的に蛍光タグ化した[57]。受精後(dpf)3日のゼブラフィッシュ幼生の尾びれ切断は、組織損傷部位への迅速かつ強力な好中球動員(
図4A〜4C及び
図22A〜22D)を引き起こす[57]。損傷を受けていない幼生へのLA1及びLA2の投与は、観察可能な効果を示さなかった(
図4B及び22B)。しかし、LA1とLA2は両方とも、ビヒクルのみによる処理(34.6±4.5)と比較して、損傷4時間後のゼブラフィッシュ尾びれでの好中球蓄積を有意に低下させた(それぞれ、15.6±1.7及び13.3±2.1、p<0.0001)。損傷を受けた全ゼブラフィッシュ幼生の蛍光イメージングは、ロイカドヘリン処置動物及び未処置動物における好中球の総数に差がないことを示し(
図23)、これは、ロイカドヘリンによって媒介される損傷部位での好中球蓄積の低下が、好中球細胞数の全体的な減少によるものではないことを示し、ロイカドヘリンがインビボで細胞傷害性を引き起こさないことを示すマウスでの実験結果をさらに裏付けた(表1)。最後に、ロイカドヘリン処置のインビボ効果が可逆的であるかどうかを明らかにするために、LA1及びLA2を、損傷を受けていないゼブラフィッシュに4〜8時間投与し、ゼブラフィッシュをすすぎ、尾びれ損傷を誘導し、洗浄4時間後に、好中球蓄積を定量した。化合物の除去は、処置を受けていないゼブラフィッシュ幼生で見られるのと同様のレベルの、損傷を受けた尾びれでの好中球蓄積を引き起こすことが分かった。まとめると、これらのデータは、ロイカドヘリンが組織損傷部位での好中球蓄積を下方調節すること、及びそのインビボ効果が、これらの化合物の除去によって覆され得ることを示している。
【0266】
さらに、ロイカドヘリン処置は、混合リンパ球反応(MLR)におけるT細胞増殖の低下をもたらし、様々な炎症性疾患及び自己免疫疾患の治療におけるさらなる用途を示した。
【0267】
ロイカドヘリンは、インビトロで好中球接着を増加させ、2D走化性を減少させる。ロイカドヘリンが、インビボで好中球に対する同様の効果を有するかどうかを明らかにするために、マウス精巣挙筋に対して生体顕微鏡検査を用い、ロイカドヘリンが、後毛細血管細静脈における好中球接着を増加させ、そのローリング速度を低下させることが分かり(図示せず)、これらのアゴニストがインビボでも同様に作用することが示された。より重要なことに、遮断抗CD11b mAb M1/70が、ロイカドヘリンの効果を覆すことが分かり、ロイカドヘリンの効果が、CD11b/CD18のその受容体活性化作用(agonism)を介するものであることが裏付けられた。
【0268】
インテグリン活性化は、15年以上前に初めて、炎症白血球による組織浸潤を調節するための潜在的な治療戦略として提案された[81]。ここでは、CD11b/CD18アゴニストが、白血球動員及び炎症性損傷を調節することができることが示されている。ロイカドヘリンによって活性化されたCD11b/CD18は、白血球接着を増加させ、それにより、白血球のクローリング及び経内皮遊走が減少し、その結果、炎症/損傷を起こした組織への動員が低下する[82]。ここに提示したデータは、インテグリン特異的小分子によって媒介される血管系での白血球接着の増加が、白血球浸潤及び炎症を低下させ、種々の炎症性疾患及び自己免疫疾患を治療するための薬理学的にターゲッティング可能な有効な方法となり得ることを示している。
【0269】
実施例2
【0270】
第一に、腎損傷時の初期の非免疫性損傷は、炎症及び組織損傷を引き起こす自然免疫応答を引き起こす(43)。損傷した組織から放出される内在性リガンドは、Toll様受容体(TLR)、例えば、Toll様受容体4(TLR4)を利用するため、腎臓細胞及び白血球に対するTLR4活性化によって、腎損傷がさらに悪化する。CD11b/CD18は、細胞接着の増加及び遊走の調節に加えて、白血球におけるTLR4媒介性の炎症促進性シグナル伝達を調節し(44〜46)、これは、CD11b/CD18が白血球活性化及び炎症の調節において多くの役割を有することを示している。第二に、CD11b/CD18活性化は、活性酸素種(ROS)の産生を含む、いくつかの細胞内シグナル伝達事象、並びに骨髄細胞におけるいくつかの炎症促進性遺伝子及び抗炎症性遺伝子の調節も媒介する(47〜52)。CD11b/CD18活性化及びリガンド結合は、PI3−K/Akt及びMAPK/ERK1/2経路の活性化を含む、外側から内側へのシグナル伝達を引き起こし(48,53)、それにより、アンカレッジ依存的な生存促進性シグナルを模倣する。CD11b/CD18のライゲーション及びクラスタリングはまた、炎症促進性サイトカイン(例えば;IL1b、IL6、TNF−α)及び他の因子(例えば;マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP))のNF−kB依存的発現を相乗的に促進する。しかし、CD11b/CD18欠損は、TLR4によって誘発される炎症促進性サイトカインの産生を増強し、これは、CD11b/CD18活性化が保護的であることができ、また、白血球の炎症促進性経路を負に調節することができることを示している(54〜56)。ロイカドヘリンは、インビボでCD11b/CD18を活性化し、白血球動員を低下させる新規の化合物である。ここでは、ロイカドヘリンによって媒介されるCD11b/CD18の活性化がTLR4及びTNFRによって媒介される白血球活性化及び炎症促進性分子の生成を低下させるという仮説が立てられ、CD11b/CD18活性化が白血球の炎症促進性経路を負に調節することができることが証明されている。CD11b/CD18の活性化が、細胞内アダプターMyD88の分解を増加させ、NF−kB経路を抑制し、それにより、白血球によって生成される炎症促進性サイトカイン、ケモカイン、ROS、及びMMPのレベルを低下させることによって、白血球の炎症促進性応答を制限するという仮説も立てられている。第三に、白血球は、FSGSと関連する因子である循環suPARの供給源であるので、白血球が、非炎症性糸球体症において役割を果たしており、また、そのような白血球活性化は、ロイカドヘリンで低下させることもできるという仮説が立てられている。
【0271】
データ
【0272】
1.1 ロイカドヘリンは、pAKTを増加させるが、インテグリンリガンドを模倣しない。インテグリン活性化が、インテグリンのライゲーション及びクラスタリングと比べて、TLR及びサイトカイン受容体シグナル伝達と示差的に相乗作用するかどうかは明らかでない。活性化型(Mn2+イオンによるかもしくは活性化mAbを用いて活性化されたもの)又はリガンド結合型(48)のCD11b/CD18は、好中球表面にクラスターとして存在することが示されている(48)。ロイカドヘリンによる活性化が結合力の増加をもたらすかどうかは依然として不明である。さらに、CD11b/CD18アゴニストMn
2+イオン及び活性化mAbは、CD11b/CD18リガンドFgがそうであるように(48)、pERK1/2及びpAktを誘導し(57,58)、それにより、生存促進性及び炎症促進性シグナル伝達を誘導することが知られている。同様に、活性化mAbのCD11b/CD18への結合は、外側から内側へのシグナル伝達を誘導し、リガンド結合状態を模倣するのに十分であり(57,58)、外因性薬剤による活性型インテグリン立体構造の安定化が、有害な免疫学的効果を有し得ることを示している(58)。新たに発見されたCD11b/CD18アゴニストがどのようにして細胞内事象を調節するのかは不明であった。
【0273】
したがって、そのような細胞内シグナル伝達事象に対するロイカドヘリンによるインテグリン活性化の効果を調べた。LA1〜3で処理したCD11b/CD18+細胞は、DMSOで処理した細胞と同様に、pERK1/2を示さないことが分かった(
図25A)。しかし、リガンドFgとのインキュベーションは、ホルボールエステルPMAによる処理で示されるような(図示せず)、これらの細胞内での予想された明確なpERKの増加を示した。驚くことに、LA1〜3処理は、DMSOのみによる処理と比較して、強力なAktリン酸化を生じさせた(
図25B)。pAktは、炎症促進性サイトカインの炎症シグナル(例えば、LPS)依存的な発現を抑制することが知られているので、これは、ロイカドヘリンが白血球での炎症促進性サイトカイン発現も抑制し得ることを示している。アゴニスト媒介性のインテグリン活性化が結合力も変化させるかどうかを検討するために、免疫蛍光顕微鏡法をイメージングに用い、細胞表面でのインテグリンクラスタリングを解析した(48)。リガンドの非存在下では、細胞は、LA1、LA2、及びLA3の非存在下(DMSO)又はLA1、LA2、及びLA3の存在下(32)での、CD11b/CD18の検出可能なマクロクラスタリングを示さず、これにより、アゴニスト結合だけでは、インテグリンクラスタリングが誘導されないことが示された。予想された通り、外部からのリガンドFgの添加は、両方の条件での顕著なクラスタリングを生じさせた。
【0274】
1.2 ロイカドヘリンは炎症促進性因子の分泌を減少させる。白血球による炎症促進性因子の分泌に対するロイカドヘリン処置の効果を検討する概念実証実験において、WTマウスの好中球又はマクロファージを、アゴニストLA1の非存在下又は存在下、LPSで刺激し、様々な因子のレベルを細胞培養上清中で測定した。
図26A〜26Dは、LPS処置が、刺激していない細胞と比較して、IL−6、TNF−α、及びMCP−1のレベルを有意に増加させたこと、並びにLA1の添加が、上清中の3つ全ての因子のレベルを有意に減少させたことを示している。同様に、LA1は、TNF−α活性化ヒト好中球における活性酸素種(ROS)のレベルを減少させた(
図27)。これらのデータは、ロイカドヘリンによるCD11b/CD18活性化が、白血球における炎症促進性シグナル伝達を抑制し、抗炎症効果を有することができることを示している。
【0275】
1.3 ロイカドヘリンはMyD88分解を加速する。TLR4媒介性シグナル伝達は、アダプタータンパク質MyD88の関与を必要とし(43)、MyD88−/−マウスは、IRI後の腎損傷から保護される。TLR4活性化は、アダプタータンパク質MyD88の結合及び安定化をもたらし、これにより、下流のキナーゼが動員され、Nf−kB媒介性の炎症促進性シグナル伝達を引き起こす。その後、TLR4シグナル伝達が、CD11b/CD18の内在性の活性化によるネガティブフィードバックループを誘導し、これにより、Sykが活性化されて、MyD88をリン酸化し、それにユビキチン媒介性分解のためのタグを付ける。これは、CD11b/CD18アゴニストが、MyD88の分解の加速をもたらし、それにより、TLR4媒介性の炎症促進性シグナル伝達経路のより速い鈍化を誘導することを示している。予備実験を行ない、ヒト単球THP−1細胞におけるMyD88のレベルを測定することによって、この仮説を検証した。TLR4アゴニストのLPSが、少なくとも4時間は安定である強力なMyD88シグナルを産生することが分かった(
図28)。しかし、LA1による細胞の同時処理は、はるかにより早いMyD88の分解を生じさせる。実際、(LPSの非存在下の)LA1のみとの細胞のインキュベーションは、2時間未満のうちにMyD88の完全分解を生じさせ、CD11b/CD18の活性化が、白血球におけるMyD88依存的な細胞内シグナル伝達を下方調節することができることを示した。
【0276】
1.4 ロイカドヘリンは、マウスを敗血症から保護する。敗血症は、感染に対する重度の炎症応答と特徴とし、その合併症は、急性腎損傷を含む多臓器不全を引き起こし、致死的であることもある(59)。ロイカドヘリンを介するCD11b/CD18活性化が、TLR4媒介性の細胞内シグナル伝達を劇的に低下させることを考慮して、これらの化合物が、MyD88−/−動物で観察されるように、WTマウスでTLR4誘導性敗血症も低下させるのかどうかということが疑問に思われた。盲腸結紮及び穿刺(CLP)による敗血症の誘導(59)の後、未処置マウスの20%は24時間以内に死亡し(
図29)、また、それらの全てが、72時間以内に死亡したのに対し、LA1処置マウスの80%は36時間生存し、また、それらの40%が最終的に生き残り、これにより、CD11b/CD18アゴニストが、TLR4媒介性炎症をインビボで低下させることができることが強く示された。これらの動物のより完全な解析は現在進行中である。
【0277】
1.5 白血球を標的とする新規の小分子による血清中の循環suPARレベルの減少。白血球は、細胞内プールに大量のuPARを保持し、活性化によって、uPARの表面発現を増加させるだけでなく、suPARを循環中に放出する(22)。suPARの産生におけるその中心的な役割を考慮すると、白血球は、血清中のsuPARレベルを低下させるための有望な標的細胞である。ロイカドヘリン処置は、抗GBM腎炎のマウスモデルにおいて、循環suPARレベルを有意に低下させ、腎機能を保持することが分かり(
図30)、これらの化合物が、白血球依存的な循環疾患因子を緩和するための薬剤として治療的に意義があり得ることが示された。
【0278】
1.6 ロイカドヘリンは、24時間で腎臓IRIを低下させた。IRIによって誘導されるWTマウスの腎機能の変化におけるロイカドヘリンの使用を評価するために、概念実証実験を行なった。B6雄マウス(8〜12週齢)に麻酔をかけ、加温パッドの上で保持し、それらを一定の37℃の温度に保持した。次に、腹部を切開し、腎茎を、非外傷性血管クランプで30分間、両側性に閉塞させ、その後、クランプを取り除き、外科的切開を閉じた。同一ではあるが、クランプを適用しない手順でシャム手術を行なった。血清クレアチニンレベルを測定することによって、腎臓IR損傷を虚血24時間後に評価した(
図31)。尾切開からのマウス血清を、手製のキット(Stanbio Laboratory)を用いるsCr(及びBUNレベル(図示せず))の解析に用いた。IR損傷の30分前のロイカドヘリンLA1及びLA2の投与は、ビヒクルDMSOで処置した動物と比較して、sCrレベルの有意な低下を示し、これらの化合物に腎臓保護効果があることを示した。
【0279】
本明細書の全体を通じて、米国特許を含む、様々な刊行物が、著者及び年号及び特許番号によって参照されている。これらの刊行物の完全な引用が以下に列挙されている。これらの刊行物及び特許のその全体としての開示は、本発明が関連する技術の水準をより完全に記載するために、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0280】
本発明は、例示的な形で記載されているが、使用されている術語は、限定ではなく説明の言葉の性質を帯びていることが意図されることが理解されるべきである。
【0281】
上記の教示に照らして、本発明の多数の修正及び変形が可能であることが明白である。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲内で、具体的に記載されている以外のものを実施することができることが理解されるべきである。
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