特開2016-183609(P2016-183609A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2016183609-ポンプシステム 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-183609(P2016-183609A)
(43)【公開日】2016年10月20日
(54)【発明の名称】ポンプシステム
(51)【国際特許分類】
   F04D 15/00 20060101AFI20160926BHJP
【FI】
   F04D15/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-64338(P2015-64338)
(22)【出願日】2015年3月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】上永 和弘
(72)【発明者】
【氏名】羽藤 誠
【テーマコード(参考)】
3H020
【Fターム(参考)】
3H020AA07
3H020BA26
3H020CA08
3H020DA04
3H020EA01
3H020EA07
3H020EA17
(57)【要約】
【課題】キャビテーションの発生を確実に検出するとともに、キャビテーションが発生する状態を解消することができるポンプシステムを提供すること。
【解決手段】ポンプシステム50は、ポンプ51と、ポンプ51に駆動力を伝達し、周波数によって回転数が調節される駆動モータ52と、駆動モータ52の電流を検出する電流センサ54と、駆動モータ52を所定の設定周波数で制御可能な制御部91と、を備える。制御部91は、設定周波数で制御される駆動モータ52の電流を測定した電流センサ54の測定値を監視し、キャビテーションが生じていない定常状態の電流値に基づいて設定される閾値を超えた電流の振れを検出すると、設定周波数よりも低い周波数で駆動モータ52の制御を行う。そして、下限周波数まで周波数が低下すると、制御部91は、キャビテーションの発生を表示部93によって報知する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプと、
前記ポンプに駆動力を伝達し、周波数によって回転数が調節される駆動モータと、
前記駆動モータの電流を検出する電流センサと、
前記駆動モータを所定の設定周波数で制御可能な制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記設定周波数で制御される前記駆動モータの電流を測定した前記電流センサの測定値を監視し、キャビテーションが生じていない定常状態の電流値に基づいて設定される閾値を超えた電流の振れを検出すると、前記設定周波数よりも低い周波数で前記駆動モータの制御を行うポンプシステム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記閾値を超える電流の振れを検出した場合は、予め設定される所定範囲に電流の振れが収束することを検出するまで、前記駆動モータの周波数を前記設定周波数から徐々に低下させていく制御を行う請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記閾値を超える電流の振れを検出した場合は、予め設定される下限周波数を下回ることがないように周波数を低下させる請求項1又は2に記載のポンプシステム。
【請求項4】
キャビテーション情報を報知する報知部を備え、
前記制御部は、
前記閾値を超える電流の振れを検出した場合において、予め設定される警告周波数まで周波数が低下すると前記報知部を作動させてキャビテーションの発生を報知する請求項1から3までの何れかに記載のポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数で制御される駆動モータによってポンプが駆動されるポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
設備に水を供給するためのポンプシステムにおいて、流量や圧力損失の変動等によってポンプの内部でキャビテーションが生じ、供給先への給水量が安定しなくなることがある。キャビテーションを原因とした給水不良を防止する方法を開示するものとして、例えば、特許文献1がある。特許文献1には、ボイラの内部圧力の変化に応じてポンプの吐出量を調整し、キャビテーションの発生を抑制するポンプシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−105880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ポンプの上流側に設けられるストレーナに目詰まりが生じてポンプの入口圧力が低下し、キャビテーションが発生する場合がある。この点、特許文献1に開示される方法では、給水先であるボイラの缶体の内部圧力の変化には対応できるものの、ポンプの上流側で生じる圧力損失の変動を原因としたキャビテーションの発生を防止することは困難であった。また、キャビテーションが発生した状態でポンプが駆動され続けると、ポンプの損傷にもつながることになり、キャビテーションが生じる状態を速やかに解消することが好ましい。
【0005】
本発明は、キャビテーションの発生を確実に検出するとともに、キャビテーションが発生する状態を解消することができるポンプシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポンプと、前記ポンプに駆動力を伝達し、周波数によって回転数が調節される駆動モータと、前記駆動モータの電流を検出する電流センサと、前記駆動モータを所定の設定周波数で制御可能な制御部と、を備え、前記制御部は、前記設定周波数で制御される前記駆動モータの電流を測定した前記電流センサの測定値を監視し、キャビテーションが生じていない定常状態の電流値に基づいて設定される閾値を超えた電流の振れを検出すると、前記設定周波数よりも低い周波数で前記駆動モータの制御を行うポンプシステムに関する。
【0007】
前記制御部は、前記閾値を超える電流の振れを検出した場合は、予め設定される所定範囲に電流の振れが収束することを検出するまで、前記駆動モータの周波数を前記設定周波数から徐々に低下させていく制御を行うことが好ましい。
【0008】
前記制御部は、前記閾値を超える電流の振れを検出した場合は、予め設定される下限周波数を下回ることがないように周波数を低下させることが好ましい。
【0009】
前記ポンプシステムは、キャビテーション情報を報知する報知部を更に備え、前記制御部は、前記閾値を超える電流の振れを検出した場合において、予め設定される警告周波数まで周波数が低下すると前記報知部を作動させてキャビテーションの発生を報知することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポンプシステムによれば、キャビテーションの発生を確実に検出するとともに、キャビテーションが発生する状態を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態のポンプシステムが適用されるボイラシステムの概略図である。
図2】キャビテーションの検出及び設定周波数を低下させる制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のポンプシステムの好ましい一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態のポンプシステム50は、ボイラシステム1に適用されるものであり、ボイラ10の給水に用いられる。なお、本明細書における「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。また、各ラインに配置され、経路の開閉を行うバルブ等の構成についても省略することがある。
【0013】
図1は、本実施形態のポンプシステム50が適用されるボイラシステム1の概略図である。本実施形態のボイラシステム1は、負荷機器100に蒸気を供給し、負荷機器100での蒸気の使用によって生じたドレンを大気に開放することなく回収してボイラ10に給水するクローズド方式である。まず、ボイラシステム1の全体構成について説明する。
【0014】
図1に示すように、ボイラシステム1は、複数のボイラ10と、蒸気ヘッダ11と、ドレンタンク12と、制御ユニット90と、ポンプシステム50と、を主要な構成として備える。また、ボイラシステム1は、ドレン供給ラインL10と、複数のボイラ蒸気ラインL11と、集合蒸気ラインL12と、第1蒸気供給ラインL13と、ドレン回収ラインL14と、第2蒸気供給ラインL15と、を主要なラインとして備える。
【0015】
ボイラシステム1の各構成と各ラインについて説明する。複数のボイラ10は、内部に供給された水を燃焼ガスにより加熱して蒸気を生成する。ボイラ10のそれぞれには、ボイラ蒸気ラインL11が接続されている。複数のボイラ蒸気ラインL11は、それぞれ集合蒸気ラインL12に接続される。
【0016】
蒸気ヘッダ11には、各ボイラ10で生成された蒸気がボイラ蒸気ラインL11及び集合蒸気ラインL12を通じて集められる。蒸気ヘッダ11に集められた蒸気は、負荷機器100からの要求に応じて負荷機器100に供給される。
【0017】
負荷機器100は、ボイラ10で生成された蒸気を熱源として利用し、加熱対象物の直接加熱又は間接加熱を行う。ボイラ10により生成された蒸気が負荷機器100で利用されることで凝縮してドレン(凝縮水)が生じる。負荷機器100で生じたドレンは、ドレン回収ラインL14を通じてドレンタンク12に回収される。
【0018】
ドレンタンク12は、耐圧性を有し密閉可能な圧力容器により構成される。負荷機器100において熱交換に用いられた蒸気の一部が凝縮して生じるドレンは、大気に開放されることなく高温高圧の状態でドレンタンク12に回収される。
【0019】
また、ドレンタンク12は、第2蒸気供給ラインL15を通じて蒸気ヘッダ11に接続されている。この第2蒸気供給ラインL15には、圧力調整弁21が設けられる。第2蒸気供給ラインL15を通じて供給される蒸気によってドレンタンク12の内部の圧力が調整される。
【0020】
ドレンタンク12には、ドレン供給ラインL10の上流側の端部が接続される。ドレン供給ラインL10は、下流側の分岐部30でボイラ10の数に応じて分岐しており、各ボイラ10にそれぞれ接続される。また、本実施形態のボイラシステム1は、オープンタンク(図示省略)によって補給水をドレンタンク12に供給可能になっている。
【0021】
ドレン供給ラインL10には、Y型のストレーナ22が配置される。ストレーナ22は、ドレン供給ラインL10におけるポンプ51の一次側に配置される。ストレーナ22によって、ドレン中の不純物が取り除かれる。
【0022】
制御ユニット90は、ボイラシステム1の各種の制御を行うコンピュータである。本実施形態の制御ユニット90は、後述するポンプシステム50の制御を行う制御部91と、各種のプログラム及びデータを記憶する記憶部92と、報知部としての表示部93と、を備える。
【0023】
本実施形態のポンプシステム50は、ポンプ51と、駆動モータ52と、インバータ53と、電流センサ54と、制御部91と、記憶部92と、表示部93と、を主要な構成として、ボイラ10にドレンを供給する。以下、ポンプシステム50の各構成について説明する。
【0024】
ポンプ51は、内部に有するインペラ(図示省略)の回転によって圧力差を生み出し、流体を送り出す圧送手段である。本実施形態では、ポンプ51は、ドレン供給ラインL10におけるストレーナ22と分岐部30の間に配置される。
【0025】
駆動モータ52は、ポンプ51のインペラを回転駆動するための駆動手段である。駆動モータ52には、インバータ53が電気的に接続されている。
【0026】
インバータ53は、周波数制御によって駆動モータ52の回転数を調節する。これにより、ポンプ51の吐出量が調節される。インバータ53は、制御ユニット90に電気的に接続されており、制御ユニット90からの制御信号に基づいて駆動モータ52を制御する。
【0027】
電流センサ54は、駆動モータ52の駆動電流を測定する。電流センサ54は、制御ユニット90に電気的に接続されており、測定情報を制御ユニット90に送信する。定常状態において、電流センサ54によって検出される電流値は、設定周波数が固定されている状態では略一定の値になる。ここでいう定常状態とは、キャビテーションが発生していない状態である。
【0028】
制御部91は、ボイラ10からの給水要求に基づいて駆動モータ52を制御し、ドレンをボイラ10に供給する制御を行う。本実施形態では、ポンプ51の発停回数を少なくするため、予め設定される一定の周波数(通常時の設定周波数)で、ポンプ51の運転が所定時間継続される連続運転を行う。給水が不要な場合は、ポンプ51の二次側とドレンタンク12を接続する戻しライン(図示省略)によってドレンタンク12にドレンを戻すのである。また、ボイラ10への給水量の調整は、ボイラ側の流量調整弁(図示省略)で行う。
【0029】
本実施形態では、制御部91は、ポンプ51のキャビテーションの発生を検出し、そのキャビテーションを解消するための制御を行う。制御部91によるキャビテーションの検出について説明する。本実施形態のボイラシステム1の場合、ポンプ51の上流側に配置されるストレーナ22に目詰まりが生じることがある。ストレーナ22に目詰まりが生じると、ポンプ51の入口圧力が低下して沸点が下がる。これにより、高温のドレンが沸騰状態になってキャビテーションが発生する。
【0030】
キャビテーションが発生すると、ポンプ51の内部に気泡が生じ、駆動モータ52の駆動トルクが変動する。ポンプ51の内部でのインペラが空回りするような状態となる。このとき、定常状態は略一定の電流値が、上下に振れる挙動を示す。本実施形態では、この電流値の振れを検出することによってキャビテーションの発生を検出する。
【0031】
制御部91は、キャビテーションの検出後は、インバータ53の設定周波数を低くする制御を行う。周波数と回転数は比例関係にあるので、回転数の減少によってポンプ51の流量が小さくなる。同じ配管系において流量が下がれば圧力損失が下がり、流体の圧力、蒸気圧、流量等によって決まるシステム系の有効NPSH(Net Positive Suction Head)を上げることができる。一般的に、キャビテーションは、システム系の有効NPSHが、ポンプ51の設計等によって決まる要求NPSHを下回るときに生じることが知られている(有効NPSH<要求NPSH)。本実施形態では、制御部91の周波数制御によって圧力損失を下げることで、有効NPSHを要求NPSHよりも高くしてキャビテーションを解消しているのである(有効NPSH>要求NPSH)。なお、本実施形態では、アイドリング制御中は、キャビテーションを検出する制御を行わないように設定されているが、アイドリング制御中でも、キャビテーションの検出を行うようにしてもよい。
【0032】
記憶部92は、各種のプログラム及びデータを記憶する。記憶部92には、ポンプ51のキャビテーションの影響を抑制するための上述の制御を実行するための各種の情報が記憶される。本実施形態の記憶部92には、キャビテーションの検出及びその影響を抑制する情報として、判定閾値(閾値)、検出範囲(所定範囲)、下限周波数、警告周波数等が記憶される。
【0033】
判定閾値は、ポンプ51でキャビテーションが発生したか否かを判定するための情報である。判定閾値は、ある設定周波数(例えば、60Hzや50Hz)で制御されている状態であって、ポンプ51にキャビテーションが発生していない状態の電流値に基づいて設定される範囲である。電流値の振れは、ポンプの機種によって異なるため、機種ごとに判定閾値の範囲(振幅)を設定することが好ましい。
【0034】
制御部91は、電流値の振れが判定閾値を超えた場合に、キャビテーションが発生していると判定する。判定閾値を超えたか否かの判定は、ポンプシステム50が適用される設備に応じてその条件を適宜変更できる。例えば、電流センサ54の測定値が、所定時間内に、判定閾値を超えた上下の振れが所定回数に達した場合に、キャビテーションが発生したと判定するように、判定条件を設定することができる。また、電流センサ54の測定値が、所定時間内に判定閾値を複数回超えた場合に、キャビテーションが発生していると判定するようにしてもよいし、判定閾値を1回でも超えた場合にキャビテーションが発生していると判定してもよい。このように、キャビテーションが発生したと判定する条件は、電流センサ54の振れを検出する観点に基づいて、事情に応じて適宜設定することができる。
【0035】
検出範囲は、キャビテーション検出後において、周波数が低く変更された設定周波数に基づいて設定される電流値の範囲である。検出範囲は、電流センサ54の測定値が検出範囲に収束したか否かを監視することで、キャビテーションが解消されたか否かを判定するための情報であり、記憶部92に記憶される。従って、検出範囲は、周波数が低く設定変更された後の判定閾値ということもできる。検出範囲の判定条件についても、判定閾値と同様に、ポンプシステム50が適用される設備に応じてその条件を適宜設定できる。例えば、電流センサ54の測定値が、所定時間内に、判定閾値を超えた上下の振れが所定回数に達した場合は、キャビテーションが解消していないと判定するように条件を設定できる。あるいは、電流センサ54の測定値が、所定時間内に検出範囲を複数回超えた場合に、キャビテーションが解消していないと判定するようにしてもよいし、検出範囲を1回でも超えた場合にキャビテーションが解消していないと判定するように設定することもできる。
【0036】
下限周波数は、ボイラ10にドレンを送り込むために最低限必要な周波数である。制御部91は、この下限周波数を下回らないように、上述の設定周波数を徐々に低くする制御を行う。下限周波数は、ボイラシステム1の装置構成に基づいて設定される。下限周波数は、使用するポンプの機種・容量等に基づいて適宜設定される。例えば、通常時の設定周波数が60Hzに設定されている場合、下限周波数が50Hzに設定される。なお、この例では、下限周波数を50Hzに設定しているが、下限周波数の値を50Hzよりも更に低くすることもできる。このように、設定周波数と下限周波数の間の周波数の調整範囲は、ポンプ51が使用される状況等に応じて、その範囲を狭く設定したり、広く設定したりすることができる。即ち、設定周波数及び下限周波数は、適宜変更可能である。
【0037】
警告周波数は、キャビテーションを解消するための制御において、キャビテーションが発生していることをボイラシステム1の使用者に報知するトリガとなる周波数である。制御部91は、上述の設定周波数を徐々に低くする制御において、警告周波数を下回った場合、後述する表示部93によって、キャビテーションが発生したことを使用者に報知する。なお、本実施形態では、警告周波数は、下限周波数と同じ値に設定されており、下限周波数になった時点でキャビテーションの発生を使用者に報知するようになっている。
【0038】
また、警告周波数は、その数値を適宜変更可能であり、下限周波数よりも高い周波数に設定し、キャビテーション発生と同時に使用者に報知する設定とすることもできる。また、キャビテーション検出前の当初の設定周波数と下限周波数との中間に警告周波数を設定し、ある程度周波数が下がった段階でキャビテーションの発生を報知する設定とすることもできる。
【0039】
表示部93について説明する。表示部93は、ボイラ10の稼動状況等を画像表示する表示パネル等によって構成される。本実施形態の表示部93は、ポンプ51で生じるキャビテーションに関する情報を使用者に伝達する報知部として機能する。表示部93によるキャビテーションの発生の報知は、画像表示、スピーカ機能による音声、画像表示及び音声の組合せ等、適宜の方式を採用できる。
【0040】
ボイラシステム1の主要な構成は、以上の通りである。次に、キャビテーションの検出後、設定周波数を変更する制御の流れについて説明する。図2は、キャビテーションの検出及び設定周波数を低下させる制御の流れを示すフローチャートである。
【0041】
ボイラ10の要求に応じて給水制御が開始されると、キャビテーションの検出処理が開始される。図2に示すように、制御部91は、電流センサ54の測定値をリアルタイム(又は所定の間隔)で取得し、判定閾値の範囲内にあるか否かを判定する(S101)。このS101の処理では、上述の通り、判定閾値を上下に超える電流値の振れを検出した場合や、判定閾値を複数回超えた場合等、予め設定された条件に基づいて判定閾値を超えたか否かが判定される。
【0042】
S101の処理で判定閾値の範囲外と判定された場合、制御部91は、設定周波数を現状よりも低い周波数に変更する(S102)。本実施形態では、所定の割合で周波数を低下させる。次に、制御部91は、S102の処理で低い周波数に変更された設定周波数が、下限周波数を下回ったか否かを判定する(S103)。
【0043】
S103の処理で設定周波数が下限周波数を下回っていなかった場合、制御部91は、設定周波数が低い周波数に変更された(S102)状態で、電流センサ54の測定値が検出範囲(所定範囲)に収束しているか否かを判定する(S104)。上述の通り、検出範囲は、キャビテーションが解消されたか否かを判断する基準である。電流センサ54の測定値が検出範囲に収まったと判定されると、周波数を低くする制御を終了する。S104の処理において、電流センサ54の測定値が検出範囲にないと判断された場合、設定周波数を更に低くするため、S102の処理に戻る。なお、S104の処理において、電流センサ54の検出値が検出範囲にある否かの判定は、上述のように、予め設定された条件に基づいて行われる。
【0044】
S103の処理で設定周波数が下限周波数を下回ると判定された場合、制御部91は、設定周波数を下限周波数に変更する(S105)。本実施形態では、下限周波数と警告周波数が同じ値に設定されているので、下限周波数への変更とともに、キャビテーションの発生を表示部93によって報知する(S106)。
【0045】
本実施形態のポンプシステム50は、電流センサ54の電流値を監視し、電流値の振れが検出されなくなるまで又は下限周波数になるまで設定周波数を徐々に下げる制御を行う。これによって、ストレーナ22の目詰まり等を原因とするポンプ51のキャビテーションを確実に検出するとともに、当該キャビテーションが発生する状態が自動的に解消される。このように、本実施形態のポンプシステム50をボイラシステム1に適用することによって、キャビテーションによってポンプ51が故障したり、給水不良が生じたりする事態を確実に防止でき、ボイラ10の安定的な稼動及び故障防止によるメンテナンスコストの低下を実現できるのである。
【0046】
以上説明した本実施形態のポンプシステム50によれば、以下のような効果を奏する。
本実施形態のポンプシステム50は、ポンプ51と、ポンプ51に駆動力を伝達し、周波数によって回転数が調節される駆動モータ52と、駆動モータ52の電流を検出する電流センサ54と、駆動モータ52を所定の設定周波数で制御可能な制御部91と、を備える。制御部91は、設定周波数で制御される駆動モータ52の電流を測定した電流センサ54の測定値を監視し、キャビテーションが生じていない定常状態の電流値に基づいて設定される閾値を超えた電流の振れを検出すると、設定周波数よりも低い周波数で駆動モータ52の制御を行う。
【0047】
これにより、キャビテーション発生時の電流値の振れを利用してキャビテーションの発生を正確に検出することができる。また、キャビテーションの検出後は、制御部91の周波数制御によって圧力損失を低下させてキャビテーションが解消される。従って、キャビテーションの発生を原因とするポンプ51の駆動不良を確実に防止することができる。
【0048】
制御部91は、判定閾値を超える電流の振れを検出した場合は、予め設定される検出範囲(所定範囲)に電流の振れが収束することを検出するまで、駆動モータ52の周波数を設定周波数から徐々に低下させていく制御を行う。
【0049】
これにより、キャビテーションが解消するまで周波数を低下させていくことになるので、キャビテーションが発生する状態を確実に解消することができる。
【0050】
制御部91は、判定閾値を超える電流の振れを検出した場合は、予め設定される下限周波数を下回ることがないように周波数を低下させる。
【0051】
これにより、ポンプシステム50が適用される設備(ボイラシステム1)の稼動が担保される周波数として下限周波数を設定しておくことによって、制御部91による設定周波数を低下させる制御によって給水不良等の不具合が生じる事態を確実に防止できる。
【0052】
ポンプシステム50は、キャビテーション情報を報知する表示部93を更に備える。制御部91は、判定閾値を超える電流の振れを検出した場合において、予め設定される警告周波数まで周波数が低下すると表示部93を作動させてキャビテーションの発生を報知する。
【0053】
これにより、キャビテーションの発生が報知されるので、使用者はキャビテーションが発生した原因を早期に解決することができる。例えば、本実施形態のボイラシステム1において、キャビテーションの発生を知ったユーザが、ストレーナ22の異物を取り除くことによって、キャビテーションの原因が取り除かれ、ボイラシステム1の安定的な稼動が実現される。
【0054】
以上、本発明のポンプシステムの好ましい一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。上記実施形態では、判定閾値と検出範囲は、別の情報として記憶部92に記憶される構成であるが、この構成に限定されない。例えば、判定閾値と検出範囲を同じデータとして取扱うこともできる。より具体的には、キャビテーション検出後に設定周波数が変更されるたびに、データテーブルを参照(又は所定の数式によって算出)し、現在設定されている周波数に基づく判定閾値を検出範囲として用いることもできる。
【0055】
上記実施形態では、キャビテーション検出後、設定周波数を徐々に低下させるように制御されているが、この構成に限定されない。キャビテーションを検出すると設定周波数を下限周波数まで一気に下げる構成としてもよい。
【0056】
上記実施形態では、表示パネル等により構成される表示部によってキャビテーションに関する情報が報知される構成であるが、ブザー等によってキャビテーションに関する情報を報知する構成としてもよい。また、使用者にキャビテーションを報知するタイミングは、設定周波数が下回る直前に行ってもよい。このように、キャビテーション情報を使用者に通知する構成やタイミングは、事情に応じて適宜変更することができる。
【0057】
上記実施形態では、本発明のポンプシステムが適用される例として、クローズド方式のボイラシステム1について説明したが、この構成に限定されるわけではない。また、上記実施形態では、複数台のボイラを備えるボイラシステムに本発明を適用する例を説明したが、ボイラの台数が1台のボイラシステムにも本発明を適用することができる。流体を送る必要のある種々のシステムに本発明のポンプシステムを適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
50 ポンプシステム
51 駆動モータ
54 電流センサ
91 制御部
93 表示部(報知部)
図1
図2