特開2016-184444(P2016-184444A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-184444(P2016-184444A)
(43)【公開日】2016年10月20日
(54)【発明の名称】電子ペン
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20160926BHJP
   G06F 3/046 20060101ALI20160926BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20160926BHJP
   G06F 3/03 20060101ALI20160926BHJP
   G06F 3/0354 20130101ALI20160926BHJP
【FI】
   G06F3/041 500
   G06F3/046 A
   G06F3/044 A
   G06F3/03 400D
   G06F3/03 400E
   G06F3/0354 440
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2016-145006(P2016-145006)
(22)【出願日】2016年7月25日
(62)【分割の表示】特願2016-517575(P2016-517575)の分割
【原出願日】2016年1月12日
(31)【優先権主張番号】特願2015-15345(P2015-15345)
(32)【優先日】2015年1月29日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】江口 徹
【テーマコード(参考)】
5B087
【Fターム(参考)】
5B087AA04
5B087BC03
5B087CC32
5B087DG02
(57)【要約】
【課題】付加情報のセキュリティーの確保や不必要な送信の回避の問題と、芯体の保護とを同時に解決することができるようにした電子ペンを提供する。
【解決手段】位置検出装置のセンサに対して信号を送信する電子ペンである。芯体と、この芯体を通じて、あるいは、この芯体の近傍から、センサへ信号を送信するようにする信号送信部と、少なくとも芯体の先端を、外部に露出させずに保護する状態と、少なくとも芯体の先端が外部に露出している状態とを現出させるようにする機構部とを備える。少なくとも芯体の先端が外部に露出している状態のときには、信号送信部から、位置検出用信号と、センサ上において位置指示操作がなされるときに位置検出装置に送信すべき付加情報を含んだ信号とを送信可能とし、少なくとも芯体の先端を、外部に露出させずに保護する状態のときには、付加情報を含んだ信号を送信不可とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置検出装置のセンサに対して信号を送信する電子ペンであって、
芯体と、
前記センサへ信号を送信するようにする信号送信部と、
少なくとも前記芯体の先端を、外部に露出させずに保護する状態と、少なくとも前記芯体の先端が外部に露出している状態とを現出させるようにする機構部と、
を備え、
少なくとも前記芯体の先端が外部に露出している状態のときには、前記信号送信部から、位置検出用信号と、前記センサ上において位置指示操作がなされるときに前記位置検出装置に送信すべき付加情報を含んだ信号とを送信可能とし、少なくとも前記芯体の先端を、外部に露出させずに保護する状態のときには、前記付加情報を含んだ信号を送信不可とするようにした
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項2】
少なくとも前記芯体の先端が外部に露出している状態のときには、前記信号送信部から、前記位置検出用信号と、前記付加情報を含んだ信号とを送信可能とし、少なくとも前記芯体の先端を、外部に露出させずに保護する状態のときには、前記付加情報を含んだ信号を送信不可とするように制御する制御回路を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項3】
少なくとも前記芯体の先端を、外部に露出させずに保護する状態のときには、位置検出用信号を送出するが、前記付加情報を含んだ信号は送信不可とするようにした
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項4】
前記芯体に加わる筆圧を検出する筆圧検出手段を備え、前記筆圧検出手段により前記筆圧が前記芯体に印加されていることを検出したときには、少なくとも前記芯体の先端が外部に露出している状態として検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項5】
筒状の第1の筐体に、前記芯体と前記信号送信部とが配設された電子ペン本体部を備えると共に、前記電子ペン本体部を収納する筒状の第2の筐体を備え、
前記電子ペン本体部は、前記第2の筐体に設けられている嵌合部に嵌合することで、前記第2の筐体に保持される
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項6】
前記機構部は、ノック機構を含み、
前記ノック機構により、前記電子ペン本体部に配設されている前記芯体の全体を前記第2の筐体の中空部内に収納することにより前記芯体の先端を、外部に露出させずに保護する状態と、少なくとも前記芯体の先端を前記第2の筐体から外部に露出している状態とに切り替える
ことを特徴とする請求項5に記載の電子ペン。
【請求項7】
前記ノック機構の動作に連動してオン・オフするスイッチを備える
ことを特徴とする請求項6に記載の電子ペン。
【請求項8】
前記機構部は、少なくとも前記芯体の先端を一方の開口から突出される状態で保持する筒状の筐体と、前記芯体の先端が突出されている側から前記筐体を覆うように、前記筐体と係合するキャップとを備え、
前記筐体に前記キャップを係合させることで前記保護する状態を現出し、前記筐体から前記キャップを外すことで前記少なくとも前記芯体の先端が外部に露出している状態を現出する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項9】
前記機構部は、前記芯体の先端を回転式に一方の開口から出没させる出没機構を具備する筒状の第1の部材を備えると共に、前記第1の部材に対して回転可能の状態で嵌合し、前記第1の部材に対する回転により前記芯体の先端の出没を実現する第2の部材とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項10】
前記付加情報には、電子ペンの識別情報を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項11】
前記芯体の近傍に磁性体コアに巻回されたコイルが設けられ、
前記コイルと並列にコンデンサが接続されて共振回路が構成され、
前記共振回路において、前記センサとの間で電磁誘導結合により信号の送受信を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項12】
前記位置検出用信号と前記付加情報とを発生可能であり、前記制御回路により、出力する信号が制御される信号発生回路を備えると共に、
前記芯体は導電性を有し、
前記信号送信部は、前記信号発生回路からの信号を、前記芯体を通じて静電結合により前記センサに送信する
ことを特徴とする請求項2に記載の電子ペン。
【請求項13】
前記芯体は導電性を有すると共に、前記芯体の周囲に周辺電極を備え、
前記芯体または前記周辺電極のいずれか一方を通じて、静電結合により前記センサからの信号を受信すると共に、前記芯体または前記周辺電極の他方から、前記受信した信号に基づいて生成した信号を、静電結合により前記センサに送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項14】
前記信号送信部は、前記付加情報の一部または全部を前記位置検出装置に無線通信路を通じて送信する無線通信回路を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、位置検出装置と共に使用されるペン型の位置指示器である電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
電子ペンは、使用者により把持されて、位置検出装置のセンサ上における位置指示のために用いられる。この電子ペンによるセンサ上の指示位置は、電子ペンとセンサとの間で、電磁誘導結合方式や、静電容量結合方式などの種々の結合方式によって位置検出用信号の授受が行われることによって、位置検出装置で検出される。
【0003】
最近は、電子ペンと位置検出装置との間では、位置検出用信号の他に、筆圧データや電子ペンの識別情報などの付加情報の授受がなされるようになっている(例えば特許文献1(特開2014‐67265号公報)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014‐67265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子ペンの付加情報としての識別情報等は、できれば秘匿すべき性質の情報であり、可能であればセキュリティー管理が要求されるものである。また、これらの付加情報は、使用者が電子ペンによりセンサ上において位置指示操作しているときに、位置検出装置に対して送出すべき情報であって、可能な限り、不必要に送信されるべきではない。しかし、従来は、位置検出用信号と共に、付加情報も同時に送出されるのが一般的であり、付加情報のセキュリティーの確保や必要時にのみ送信するようにすることについては考慮されていないという問題があった。
【0006】
また、最近の電子ペンは、位置検出装置が組み込まれている携帯電話端末などの小型の携帯機器に装着されて使用されることを考慮して、細型化になってきている。この電子ペンの細型化に伴い、電子ペンに組み込まれる、ペン先を構成する芯体も細型化が進んでいる。
【0007】
芯体は、通常、その先端が、電子ペンの筒状の筐体の一方の開口から突出する状態で取り付けられている。この細型化のため芯体が衝撃に弱くなっており、電子ペンを落としたりしたときに、芯体が折れてしまったり、歪んでしまったりする場合がある。さらに、最近は、芯体の素材がフェルトである場合もあるが、当該フェルトは繊維を束ねて接着をしているため、若干強度が弱く、落下による衝撃など、必要以上の力が芯体に加わると、束が、ばらばらになってしまう。特に、フェルトの芯体は、芯軸に対して垂直方向の大きな力には弱い。したがって、電子ペンの不使用時における芯体の保護が重要である。
【0008】
この発明は、以上の問題点に鑑み、付加情報のセキュリティーの確保や不必要な送信の回避の問題と、芯体の保護の保護とを同時に解決することができるようにした電子ペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、
位置検出装置のセンサに対して信号を送信する電子ペンであって、
芯体と、
前記センサへ信号を送信するようにする信号送信部と、
少なくとも前記芯体の先端を、外部に露出させずに保護する状態と、少なくとも前記芯体の先端が外部に露出している状態とを現出させるようにする機構部と、
を備え、
少なくとも前記芯体の先端が外部に露出している状態のときには、前記信号送信部から、位置検出用信号と、前記センサ上において位置指示操作がなされるときに前記位置検出装置に送信すべき付加情報を含んだ信号とを送信可能とし、少なくとも前記芯体の先端を、外部に露出させずに保護する状態のときには、前記付加情報を含んだ信号を送信不可とするようにした
ことを特徴とする電子ペンを提供する。
【0010】
上述の構成の請求項1の発明による電子ペンによれば、当該電子ペンの不使用時には芯体が外部に突出していない状態として保護することができるので、落下などの衝撃から芯体を保護することができる。そして、芯体の先端が保護されているときには、付加情報は送出不可とされるので、付加情報のセキュリティーを確保することができると共に、不必要な送信を回避することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明による電子ペンによれば、機構部によって芯体の先端が保護されているときには、付加情報の送信が不可とされ、機構部による芯体の先端の保護が解除されたときには、付加情報の送信が可能とされることにより、付加情報のセキュリティーの確保や不必要な送信の回避の問題と、芯体の保護の保護とを同時に解決することができるようにした電子ペンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明による電子ペンの第1の実施形態の構成例を示す図である。
図2】この発明による電子ペンの第1の実施形態で用いられる電子ペン用カートリッジの構成例を説明するための図である。
図3】この発明による電子ペンの第1の実施形態の電子回路の構成例を、位置検出装置の回路構成例と共に示す図である。
図4】この発明による電子ペンの第1の実施形態の要部の動作を説明するためのフローチャートを示す図である。
図5】この発明による電子ペンの第2の実施形態の構成例を示す図である。
図6】この発明による電子ペンの第2の実施形態の電子回路の構成例を、位置検出装置の回路構成例と共に示す図である。
図7】この発明による電子ペンの第2の実施形態の要部の動作を説明するためのフローチャートを示す図である。
図8】この発明による電子ペンの第3の実施形態の構成例を示す図である。
図9】この発明による電子ペンの第3の実施形態の構成例の一部を示す図である。
図10】この発明による電子ペンの第3の実施形態の電子回路の構成例を示す図である。
図11】この発明による電子ペンの第3の実施形態と共に使用される位置検出装置の構成例を示す図である。
図12】この発明による電子ペンの第3の実施形態から送出される信号を説明するための図である。
図13】この発明による電子ペンの第4の実施形態の構成例を説明するための図である。
図14】この発明による電子ペンの第5の実施形態の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明による電子ペンの幾つかの実施形態を、図を参照しながら説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、この発明による電子ペンの第1の実施形態の構成例を示す図である。この第1の実施形態の電子ペン1は、筒状の筐体2の中空部2a内に、電子ペン本体部を構成する電子ペン用カートリッジ3が収納され、ノックカム機構部4により、電子ペン用カートリッジ3のペン先が、筐体2の長手方向の一端の開口2b側から出し入れされるノック式の構成を備える。ノックカム機構部4は、この例では保護機構を構成する。
【0015】
図1(A)は、電子ペン用カートリッジ3のペン先側(後述する芯体部31のペン先部313の先端)を含め、電子ペン用カートリッジ3の全体が、筐体2の中空部2a内に収容されていて、保護機構によりペン先が保護されている状態を示している。図1(B)は、ノックカム機構部4により電子ペン用カートリッジ3のペン先の少なくとも先端が、筐体2の開口2bから突出して保護機構による保護が解除された状態を示している。なお、図1の例では、電子ペン1の筐体2が透明の合成樹脂で構成されていて、その内部が透けて見える状態として示している。
【0016】
この実施形態の電子ペン1は、市販のノック式ボールペンと互換性が取れる構成とされている。すなわち、筐体2及び当該筐体2内に設けられるノックカム機構部4は、周知の市販のノック式ボールペンと同一の構成とされると共に、寸法関係も同一に構成される。換言すれば、筐体2及びノックカム機構部4は、市販のノック式のボールペンの筐体及びノックカム機構部をそのまま用いることもできる。そして、電子ペン用カートリッジ3は、後述するように、ボールペンの替え芯6と互換性がとられて、ボールペンの替え芯6(図2(A)参照)の代わりに筐体2内に収納されてノックカム機構部4により、ノック式にペン先が出没可能の構成とされる。
【0017】
ノックカム機構部4は、図1に示すように、カム本体41と、ノック棒42と、回転子43とが組み合わされた周知の構成とされている。カム本体41は、筒状の筐体2の内壁面に形成されている。ノック棒42は、使用者のノック操作を受け付けることができるように、端部42aが、筐体2のペン先側とは反対側の開口2cから突出するようにされている。回転子43は、電子ペン用カートリッジ3のペン先側とは反対側の端部が嵌合される嵌合部43aを備える。
【0018】
図1(A)の状態において、ノック棒42の端部42aが押下されると、ノックカム機構部4により、電子ペン用カートリッジ3は、筐体2内において図1(B)の状態にロックされ、電子ペン用カートリッジ3のペン先側が、筐体2の開口2bから突出する状態になる。そして、この図1(B)の状態から、ノック棒42の端部42aが再度押下されると、ノックカム機構部4によりロック状態が解除され、復帰用バネ5により、電子ペン用カートリッジ3の筐体2内の位置は、図1(A)の状態に戻る。ノックカム機構部4の詳細な構成及びその動作は、周知であるので、ここでは、その説明を省略する。
【0019】
[電子ペン用カートリッジの実施形態]
図2は、電子ペン用カートリッジ3の構成例を、市販のノック式ボールペンの替え芯と比較して示す図である。すなわち、図2(A)は、市販のノック式ボールペンの替え芯6を示し、また、図2(B)は、この実施形態の電子ペン用カートリッジ3の構成例を示している。そして、図2(C)は、図2(B)に示すこの実施形態の電子ペン用カートリッジ3の要部の構成を説明するための図である。
【0020】
市販のノック式ボールペンの替え芯6は、図2(A)に示すように、ボールが先端に配設されているペン先部61と、インク収納部62とが、結合部63で結合されて一体化された周知の構成を備える。結合部63は、インク収納部62と同じ径を有する。
【0021】
一方、この実施形態の電子ペン用カートリッジ3は、図2(B)に示すように、芯体部31と、筒状体部32とが結合されて一体化された構成を有する。芯体部31は、図2(C)に示すように、磁性体コア、この例ではフェライトコア310に、部分的にコイル311が巻回されていると共に、そのコイル311が巻回されていない部分を保護材312で覆うようにしてペン先部313が形成された構成とされている。
【0022】
この例では、芯体部31においては、コイル311は、フェライトコア310の一方の端部近傍から、フェライトコア310の全長の約1/2長の部分に巻回されている。そして、この例では、フェライトコア310の、コイル311が巻回されていない残りの約1/2長の部分が、例えば樹脂からなる保護材312で覆われてペン先部313とされている。ペン先部313の保護材312としては、比較的硬質で弾性を有する樹脂材料、例えばPOM(Polyoxymethylene)が用いられる。
【0023】
この場合に、図2(A)及び図2(B)に示すように、電子ペン用カートリッジ3の芯体部31のペン先部313の径及び長さは、ボールペンの替え芯6のペン先部61の径R1及び長さL1とほぼ等しくなるように構成されている。また、電子ペン用カートリッジ3の芯体部31のコイル311が巻回された部分の径は、ボールペンの替え芯6のインク収納部62の径R2(R2>R1)とほぼ等しくなるように構成されている。
【0024】
また、筒状体部32は、電子回路部品が配設される第1の筒状体部321と、筆圧検出用部品が配設される第2の筒状体部322とで構成される。そして、図2(A)及び(B)に示すように、芯体部31と筒状体部32とを結合した状態の長さ(全長)は、ボールペンの替え芯6の全長L2と等しく選定されている。
【0025】
筒状体部32の第1の筒状体部321内には、図2(C)に示すように、プリント基板33が配設されると共に、そのプリント基板33上には、コイル311と共に共振回路を構成するコンデンサや、使用者が電子ペンによりセンサ上において位置指示操作しているときに、位置検出装置に対して送出すべき付加情報の一部を構成する識別情報(ID(Identification))を記憶するメモリや、IC等を含む電子回路34が設けられている。
【0026】
そして、芯体部31と、筒状体部32の第1の筒状体部321とは、例えば芯体部31のフェライトコア310の一部が、第1の筒状体部321内に挿入される状態で結合されて一体的に構成される。この場合に、芯体部31と、筒状体部32の第1の筒状体部321との結合に際しては、コイル311の巻き始め端311aと巻き終わり端311bとが、第1の筒状体部321内の電子回路34に設けられているコンデンサの一端と他端とに電気的に接続されるようにされる。
【0027】
第2の筒状体部322は、この例では、市販のボールペンの替え芯6のインク収納部62の径R2と等しい径の筒状体で構成されている。図2(B)の例では、この第2の筒状体部322は、長尺部322aと、短尺部322bとに2分されており、この例では、その結合部35の近傍に筆圧検出部材36が設けられている。
【0028】
すなわち、図2(C)に示すように、この例においては、長尺部322aと短尺部322bとは、結合部35において、連結棒部材351とコイルバネ352を介して結合されている。この場合に、長尺部322aと短尺部322bとは、コイルバネ352により、常に、軸心方向において、互いに離れるように弾性変位されるが、連結棒部材351により、所定位置で係止して、それ以上は軸芯方向に変位しないように構成されている。そして、その係止状態における電子ペン用カートリッジ3の全長が、前述したボールペンの替え芯6の全長L2と等しくなるように構成されている。
【0029】
そして、図2(C)に示すように、この実施形態では、長尺部322aには、筆圧検出部材36が設けられる。そして、連結棒部材351の一端351a側が、筆圧検出部材36の押圧部として働くように構成されている。
【0030】
この例の筆圧検出部材36は、例えば特許文献:特開2011−186803号公報に記載されている周知の構成の筆圧検出手段を使用した、筆圧に応じて静電容量が変化する可変容量コンデンサの構成とすることができる。なお、例えば、特開2013−161307号公報に開示されているような筆圧に応じて静電容量を可変とする半導体素子を用いた構成することもできる。
【0031】
この電子ペン用カートリッジ3が筐体2に収納されている状態で、芯体部31に圧力が加わると、電子ペン用カートリッジ3の長尺部322a側の全体が、コイルバネ352の弾性力に抗して、短尺部322b側に移動しようとする力が働き、筆圧検出部材36の静電容量が筆圧に応じたものとなる。
【0032】
以上のような構成の電子ペン用カートリッジ3を、その筒状体部32の短尺部322bをノックカム機構部4の回転子43の嵌合部43aに嵌合させることにより、筐体2内に収納する。この状態では、電子ペン用カートリッジ3の芯体部31を含めて、その全体が筐体2内に収納されて、電子ペン用カートリッジ3の芯体部31が保護される。
【0033】
そして、この実施形態の電子ペン1においては、使用者は、位置検出装置と共に使用するときには、ノック棒42の端部42aを押下することで、図1(B)に示すように、芯体部31のペン先部313の先端を筐体2の開口2bから突出させるようにする。これにより、電子ペン用カートリッジ3の芯体部31の保護が解除される。そして、電子ペン1の使用が終了したら、ノック棒42の端部42aを再押下することで、図1(A)に示すように、電子ペン用カートリッジ3の全体を筐体2の中空部2a内に収容するようにして、芯体部31を保護するようにする。
【0034】
[電子ペン1の回路構成及び電子ペン1と共に使用される位置検出装置の回路構成]
図3は、電子ペン1の電子回路34の回路構成例と、この電子ペン1と電磁誘導結合による信号授受を行う位置検出装置200の回路構成例を示すものである。
【0035】
電子ペン1は、この実施形態では、位置検出装置200のセンサの導体と電磁誘導結合することにより、位置検出用信号を授受すると共に、筆圧検出部材36を通じて検出される筆圧情報と、電子ペン1自身の識別情報(ID)や電子ペン用カートリッジ3の識別情報(ID)を、位置検出装置200に送信するように構成される。
【0036】
すなわち、電子ペン用カートリッジ3の電子回路34においては、コイル311に対して、コンデンサ401が並列に接続されて並列共振回路40Rが構成される。
【0037】
そして、電子回路34は、図3に示すように、付加情報の送信を制御する制御回路400を備える。この例では、この制御回路400はIC(Integrated Circuit;集積回路)として構成されている。この制御回路400を構成するICは、並列共振回路40Rにて位置検出装置200から電磁結合により受信した交流信号を、ダイオード402及びコンデンサ403からなる整流回路(電源供給回路)404にて整流して得られる電源Vccにより動作するように構成されている。
【0038】
そして、この例では、並列共振回路40Rと電源供給回路404との間には、通常は開(ノーマルオープン)の状態とされるスイッチ回路405が設けられている。このスイッチ回路405は、例えば半導体スイッチ回路で構成され、開の状態では、高インピーダンスの状態となっている。
【0039】
このスイッチ回路405は、スイッチ制御回路406からのスイッチ制御信号によりオンとなるように制御される。スイッチ制御回路406は、並列共振回路40Rにて位置検出装置200から電磁結合により受信した交流信号からスイッチ制御信号を生成する。
【0040】
また、電子回路34においては、コイル311と、コンデンサ回路401とにより構成される並列共振回路40Rに並列に、スイッチ回路407が接続されている。このスイッチ回路407は、制御回路400によりオン・オフ制御されるように構成されている。なお、制御回路400には、位置検出装置200との間での電磁誘導信号の授受のための同期信号として、コンデンサ408を介して、位置検出装置200から送信された電磁誘導信号が供給される。
【0041】
この実施形態では、図3に示すように、制御回路400には、筆圧検出部材36で構成される可変容量コンデンサ36Cが接続される。この可変容量コンデンサ36Cには、抵抗Rが並列に接続されている。この例では、制御回路400は、可変容量コンデンサ36Cを充電した後、抵抗Rを通じて放電させ、可変容量コンデンサ36Cが接続されている端子の電圧(可変容量コンデンサ36Cの両端電圧に相当)が所定閾値になるまでの時間を計測することで、可変容量コンデンサ36Cの静電容量を測定する。
【0042】
そして、制御回路400は、その測定した可変容量コンデンサ36Cの静電容量の変化から筆圧の変化を検出し、電子ペン用カートリッジ3に筆圧が印加されたかどうかを検出すると共に、筆圧が印加されたことを検出したときには、その筆圧値を可変容量コンデンサ36Cの静電容量の値から算出するようにする。
【0043】
そして、この実施形態では、制御回路400は、算出した筆圧値の情報(筆圧データ)を、スイッチ回路407をオン・オフ制御することで、複数ビットのデジタル信号として位置検出装置200に送信する。この実施形態では、筆圧データは、付加情報の一部を構成する。
【0044】
また、制御回路400には、この例では、電子ペン1または電子ペン用カートリッジ3の製造者番号及び製品番号を含む識別情報(ID)を記憶するIDメモリ409が接続されている。そして、制御回路400は、このIDメモリ409に記憶されている識別情報を読み出して、スイッチ回路407をオン・オフ制御することで、複数ビットのデジタル信号として位置検出装置200に送信する。この実施形態では、この識別情報も、付加情報の一部を構成する。
【0045】
この実施形態では、制御回路400は、電子ペン用カートリッジ3の芯体部31のペン先部313の先端が保護されているか否かを検出し、保護されていない状態であるときにのみ、付加情報を送出するように制御する。この実施形態では、制御回路400は、電子ペン用カートリッジ3の芯体部31のペン先部313の先端が保護されているか否かは、筆圧検出部材36により筆圧が印加されたと検出されか否かにより検出するようにする。
【0046】
すなわち、電子ペン用カートリッジ3の全体が筐体2内に収納されている保護状態では、電子ペン用カートリッジ3の芯体部31のペン先部313の先端は外部に突出していないので、芯体部31には筆圧が印加されることはない。一方、ノックカム機構部4のノック棒が操作されて、電子ペン用カートリッジ3の芯体部31のペン先部313の先端が筐体2の開口2bから外部に突出されている保護状態が解除されている状態では、芯体部31に筆圧が印加されることが可能であり、実際に筆圧が印加される状態は、使用者により電子ペン1が使用される状態である。そして、この例では、制御回路400は、筆圧が印加されていない状態から、筆圧値が所定の閾値以上増加したとき、それを検出して筆圧の印加が開始されたと判断する。
【0047】
以上のように、制御回路400では、筆圧の印加が開始されたか否かを検出することで、電子ペン用カートリッジ3の芯体部31のペン先部313の先端が保護されているか否かを検出することができる。すなわち、この実施形態では、筆圧検出手段は、電子ペン用カートリッジ3の芯体部31のペン先部313の先端が保護されているか否かを検出するための検出手段としての機能も有する。
【0048】
この実施形態では、制御回路400は、筆圧の印加が開始されてはいないと検出したときには、スイッチ回路407は常にオフとして、並列共振回路40Rが常に働く状態にする。そして、制御回路400は、筆圧の印加が開始されたと検出したときには、コンデンサ408を通じて受信される位置検出装置からの同期信号に基づいたタイミングで、スイッチ回路407をオン・オフ制御することにより、筆圧データや識別情報を、後述するようにASK(Amplitude Shift Keying)変調信号として、位置検出装置200に送信するようにする。なお、ASK変調に代えてOOK(On Off Keying)信号に変調するようにしてもよい。
【0049】
位置検出装置200には、図3に示すように、X軸方向ループコイル群211Xと、Y軸方向ループコイル群212Yとが積層されて位置検出コイルが形成されている。各ループコイル群211X,212Yは、例えば、それぞれn,m本の矩形のループコイルからなっている。各ループコイル群211X,212Yを構成する各ループコイルは、等間隔に並んで順次重なり合うように配置されている。
【0050】
また、位置検出装置200には、X軸方向ループコイル群211X及びY軸方向ループコイル群212Yが接続される選択回路213が設けられている。この選択回路213は、2つのループコイル群211X,212Yのうちの一のループコイルを順次選択する。
【0051】
さらに、位置検出装置200には、発振器221と、電流ドライバ222と、切り替え接続回路223と、受信アンプ224と、検波器225と、ローパスフィルタ226と、サンプルホールド回路227と、A/D変換回路228と、処理制御部229とが設けられている。処理制御部229は、例えばマイクロコンピュータにより構成されている。
【0052】
発振器221は、周波数f0の交流信号を発生する。そして、発振器221で発生した交流信号は電流ドライバ222に供給される。電流ドライバ222は、発振器221から供給された交流信号を電流に変換して切り替え接続回路223へ送出する。切り替え接続回路223は、処理制御部229からの制御により、選択回路213によって選択されたループコイルが接続される接続先(送信側端子T、受信側端子R)を切り替える。この接続先のうち、送信側端子Tには電流ドライバ222が、受信側端子Rには受信アンプ224が、それぞれ接続されている。
【0053】
選択回路213により選択されたループコイルに発生する誘導電圧は、選択回路213及び切り替え接続回路223を介して受信アンプ224に送られる。受信アンプ224は、ループコイルから供給された誘導電圧を増幅し、検波器225へ送出する。
【0054】
検波器225は、ループコイルに発生した誘導電圧、すなわち受信信号を検波し、ローパスフィルタ226へ送出する。ローパスフィルタ226は、前述した周波数f0より充分低い遮断周波数を有しており、検波器225の出力信号を直流信号に変換してサンプルホールド回路227へ送出する。サンプルホールド回路227は、ローパスフィルタ226の出力信号の所定のタイミング、具体的には受信期間中の所定のタイミングにおける電圧値を保持し、A/D(Analog to Digital)変換回路228へ送出する。A/D変換回路228は、サンプルホールド回路227のアナログ出力をデジタル信号に変換し、処理制御部229に出力する。
【0055】
処理制御部229は、選択回路213におけるループコイルの選択、切り替え接続回路223の切り替え、サンプルホールド回路227のタイミングを制御する。処理制御部229は、A/D変換回路228からの入力信号に基づき、X軸方向ループコイル群211X及びY軸方向ループコイル群212Yから一定の送信継続時間をもって電磁誘導信号を送信させる。
【0056】
X軸方向ループコイル群211X及びY軸方向ループコイル群212Yの各ループコイルには、電子ペン1から送信される電磁誘導信号によって誘導電圧が発生する。処理制御部229は、この各ループコイルに発生した誘導電圧の電圧値のレベルに基づいて電子ペン1のX軸方向及びY軸方向の指示位置の座標値を算出する。
【0057】
また、処理制御部229は、電流ドライバ222に、送信信号を断続制御するための信号及び送信信号レベル制御のための信号を供給すると共に、電子ペン1からの筆圧データや識別情報などの付加情報の受信処理を行うようにする。処理制御部229は、後述するように、電子ペン1からのASK信号からなる断続信号を、複数ビットのデジタル信号として検出して、筆圧データや識別情報などの付加情報を検出するようにする。
【0058】
[電子ペン1の動作及び位置検出装置200の動作]
以下に、電子ペン1及び位置検出装置200間での位置検出動作及び付加情報の送受について説明する。
【0059】
位置検出装置200は、処理制御部229の処理制御に基づいて送信信号の交流信号を送出している。電子ペン1では、位置検出装置200からの交流信号を並列共振回路40Rで受信する状態にないときには、スイッチ回路405がオフで、電源供給回路404から電源電圧Vccが供給されていない。この状態では制御回路400は動作を停止しており、スイッチ回路407はオフとされている。
【0060】
したがって、電子ペン1は、並列共振回路40Rにおいて、位置検出装置200からの交流信号を受信可能の状態となっている。そして、使用者により電子ペン1が位置検出装置200のセンサ上の持ち来たらされると、電子ペン用カートリッジ3が保護状態であるか否かに関係なく、電子ペン1の並列共振回路40Rが位置検出装置200からの交流信号を電磁誘導結合により受けることが可能な状態になる。
【0061】
すると、電子ペン1の電子回路34のスイッチ制御回路406は、並列共振回路40Rが位置検出装置200のセンサから受信した交流信号から、スイッチ回路405をオンにするスイッチ制御信号を生成する。これにより、スイッチ回路405がオンになると、並列共振回路40Rが受信した交流信号を整流して生成された電源電圧Vccが、電源供給回路404から制御回路400に供給される。
【0062】
電源電圧Vccが供給されると制御回路400は動作を開始する。図4は、電子ペン1の電子回路34の制御回路400の処理動作を説明するためのフローチャートである。
【0063】
制御回路400は、先ず、筆圧検出部材36で構成される可変容量コンデンサ36Cの静電容量の変化を監視して、電子ペン用カートリッジ3の芯体部31のペン先部313を通じて筆圧が印加されたか否か判別する(ステップS101)。このステップS101で、筆圧が印加されていないと判別したときには、制御回路400は、付加情報の送信停止状態とし、スイッチ回路407は常時オフの状態のままとする(ステップS102)。このステップS102の後には、制御回路400は、処理をステップS101に戻し、このステップS101以降の処理を繰り返す。
【0064】
前述もしたように、電子ペン用カートリッジ3が筐体2内に全て収納されていて保護状態にあるときには筆圧が印加される状態にはならないので、ステップS102の状態は、当該保護状態にあるときを含む。
【0065】
使用者により、ノックカム機構部4のノック棒42の端部42aが押下されて、電子ペン用カートリッジ3の芯体部31のペン先部313の先端が、筐体2の開口2bから突出する保護状態の解除状態になると、筆圧の印加が可能になる。
【0066】
ステップS101で、筆圧が印加されたと判別したときには、制御回路400は、付加情報の送信を開始するようにする(ステップS103)。すなわち、制御回路400は、筆圧検出部材36で構成される可変容量コンデンサ36Cの静電容量の測定結果から筆圧値を算出して筆圧データを生成する。そして、制御回路400は、その生成した筆圧データに応じてスイッチ回路407をオン・オフ制御することで、付加情報の一部として、電子ペン1から筆圧データを位置検出装置200に送信する。
【0067】
また、制御回路400は、ステップS103において、IDメモリ409から、電子ペン1または電子ペン用カートリッジ3の識別情報を読み出し、その読み出した識別情報に応じてスイッチ回路407をオン・オフ制御することで、付加情報の一部として、電子ペン1から識別情報を位置検出装置200に送信する。
【0068】
すなわち、スイッチ回路407がオフであるときには、並列共振回路40Rは、位置検出装置200から送信された交流信号に対して共振動作を行って、電磁誘導信号を位置検出装置200に返送することができる。位置検出装置200のループコイルは、電子ペン1の共振回路40Rからの電磁誘導信号を受信する。これに対して、スイッチ回路407がオンであるときには、並列共振回路40Rは、位置検出装置200からの交流信号に対する共振動作が禁止された状態になり、このために、並列共振回路40Rから位置検出装置200に電磁誘導信号は返送されず、位置検出装置200のループコイルは、電子ペン1からの信号を受信しない。
【0069】
この例では、位置検出装置200の処理制御部229は、電子ペン1からの受信信号の有無の検出を、付加情報のビット数分の回数だけ行うことにより、当該複数ビットのデジタル信号の付加情報を受信する。
【0070】
一方、電子ペン1の制御回路400は、送信する付加情報に対応した複数ビットのデジタル信号を生成し、その複数ビットのデジタル信号により、位置検出装置200との間の電磁誘導信号の送受信に同期してスイッチ回路407をオン・オフ制御する。例えば、付加情報のビットが「1」であるときには、スイッチ回路407はオンにされる。すると、前述したように、電子ペン1からは、電磁誘導信号が位置検出装置200に返送されない。一方、付加情報のビットが「0」であるときには、スイッチ回路407はオフにされる。すると、前述したように、電子ペン1からは、電磁誘導信号が位置検出装置200に返送される。
【0071】
したがって、位置検出装置200の処理制御部229は、電子ペン1からの受信信号の有無の検出を付加情報のビット数分の回数だけ行うことにより、デジタル信号である付加情報を受信することができる。
【0072】
次に、制御回路400は、筆圧検出部材36で構成される可変容量コンデンサ36Cの静電容量に基づく筆圧の変化を監視し、筆圧が印加されなくなって消失したか否か判別する(ステップS104)。このステップS104で、筆圧は印加されていて消失してはいないと判別したときには、制御回路400は、処理をステップS103に戻し、このステップS103以降の処理を繰り返す。
【0073】
また、ステップS104で筆圧が印加されなくなって消失したと判別したときには、制御回路400は、筆圧の消失状態が所定時間以上、例えば10秒以上、継続したか否か判別し(ステップS105)、所定時間以上経過してはいないと判別したときには、処理をステップS103に戻し、このステップS103以降の処理を繰り返す。ステップS105で、筆圧の消失状態が所定時間以上継続したと判別したときには、制御回路400は、付加情報の送信を停止し(ステップS106)、付加情報のセキュリティーの保護を図るようにする。このステップS106の次には、制御回路400は、処理をステップS101に戻し、このステップS101以降の処理を繰り返す。
【0074】
ステップS104で、筆圧が印加されなくなって消失したと判別したときに即座に付加情報の送出を停止しなかったのは、使用者が電子ペン1により位置検出装置200のセンサ面での入力を継続しているが、一時的に、電子ペン1をセンサ面から離間させる場合を考慮したものである。
【0075】
電子ペン1において、ノックカム機構部4のノック棒42の端部42aが再度押されて、電子ペン用カートリッジ3が筐体2内に収納されて保護される状態にされるときには、筆圧の消失状態が所定時間以上継続するので、電子ペン用カートリッジ3の保護状態では、確実に電子ペン1からの付加情報の送信は停止される。
【0076】
[第1の実施形態の効果]
以上説明したようにして、上述した第1の実施形態の電子ペン1では、ノックカム機構部により、電子ペン用カートリッジ3を筐体2内に収納しておき、必要に応じてノック棒を操作して、電子ペン用カートリッジ3の芯体部31のペン先部313の先端を、筐体2の開口から突出させるようにすることができる。
【0077】
したがって、電子ペン用カートリッジ3が筐体2内に収納される状態では、電子ペン用カートリッジ3の芯体部31のペン先部313の先端を筐体2内に収納することで、保護状態とすることができる。すなわち、この保護状態においては、芯体部31のペン先部313の先端は、外部に突出しないので、電子ペン1を誤って落としてしまっても、その衝撃を電子ペン用カートリッジ3の芯体部31が直接受けることはなく保護される。
【0078】
そして、この保護状態では、電子ペン1や電子ペン用カートリッジ3の識別情報などの付加情報は位置検出装置200には送信されず、付加情報のセキュリティーの確保をすることができる。電子ペン用カートリッジ3が保護されている状態は、使用者による電子ペン1の使用状態ではないので、この付加情報の送信停止状態は、無駄に信号を送出することを回避することができ、必要時にのみ、付加情報を位置検出装置に送信するようにすることができるという効果もある。
【0079】
そして、使用者によりノック棒が押されて、電子ペン用カートリッジ3の芯体部31のペン先部313の先端が、筐体2の開口から突出され、かつ、ペン先部313に筆圧が印加される電子ペン1の使用状態においては、付加情報が位置検出装置200に送出されるように制御される。したがって、この実施形態の電子ペン1によれば、使用者による実際的な使用状態においてのみ、必要な付加情報が位置検出装置200に送出されるので、セキュリティーの確保が必要な付加情報の送出を、必要最小限とすることができるという効果がある。
【0080】
以上のようにして、この第1の実施形態の電子ペンによれば、付加情報のセキュリティーの確保や不必要な送信の回避の問題と、芯体の保護の問題とを同時に解決することができる。
【0081】
また、上述した第1の実施形態の電子ペンにおいては、芯体部31に加えて、筒状体部32を細型にすることで、電子ペン用カートリッジ3の全体の細型化が可能となる。これにより、電子ペン1の細型化が実現できる。また、上述の実施形態のように、電子ペン用カートリッジ3を、市販のボールペンの替え芯と互換性を取れる構成とすることができるようになる。
【0082】
電子ペン用カートリッジ3を、市販のボールペンの替え芯と互換性を取れる構成とした場合には、電子ペン1の筐体2を、市販のボールペンの筐体を流用することができるというメリットがある。すなわち、ボールペンの替え芯の代わりに、この実施形態の電子ペン用カートリッジ3を、ボールペンの筐体に収納することで、電子ペン1を構成することが可能となる。
【0083】
[第1の実施形態の変形例]
なお、電子ペン1の電子回路34のスイッチ制御回路406がスイッチ回路405をオンにして、制御回路400に電源Vccを供給するようにする方法は、上述のような方法に限られるものではない。
【0084】
例えば、他の例としては、位置検出装置200から所定のデジタル信号を電子ペン1に送り、このデジタル信号を受け取ったスイッチ制御回路406にスイッチ回路405をオンにするスイッチ制御信号を生成させるように構成することもできる。
【0085】
また、上述の実施形態では、電子ペン用カートリッジには、筆圧検出部材を設けると共に、筆圧検出部材で検出される圧力に対して閾値を設け、筆圧検出部材で検出された圧力が閾値を超えたときに、ペン先部313の先端が保護されていると検出するようにした。しかし、筆圧検出部材の代わりに、電子ペン用カートリッジに印加される圧力に応じてオンとされるスイッチを設け、このスイッチがオンとされたときに、少なくとも芯体部31のペン先部313の先端が保護されていると検出するようにしてもよい。
【0086】
[第2の実施形態]
この第2の実施形態の電子ペンは、第1の実施形態の変形例である。上述した第1の実施形態では、電子ペン用カートリッジを筐体内に1本のみを収納するようにした。この第2の実施形態では、筐体内に複数本の電子ペン用カートリッジを収納させ、ノック機構により、その複数本の電子ペン用カートリッジの内の1本を選択して、その選択した電子ペン用カートリッジのペン先部の先端を、筐体のペン先側の開口から突出させて使用するようにする。
【0087】
上述したように、第1の実施形態の電子ペン1の電子ペン用カートリッジ3は、ボールペンの替え芯6と互換性を取れる構成を備えるようにされている。市販のボールペンとしては、インク色の異なる替え芯を装着した多色ボールペンが存在する。この第2の実施形態は、電子ペン用カートリッジ3を、この多色ボールペンの筐体と同様の構成の筐体に収納することで構成される電子ペンを提供するものである。
【0088】
図5(A)は、この第2の実施形態の電子ペン1Mの外観を示す構成図である。この図5(A)の例も、電子ペン1Mの筐体2Mが透明の合成樹脂で構成されていて、その内部が透けて見える状態として示している。
【0089】
電子ペン1Mの筐体2Mは、市販のノック式の多色ボールペンの筐体及びノック機構と同一の構成を備えている。市販のノック式の多色ボールペンの筐体及びノック機構をそのまま用いてもよい。この筐体2M内には、この例では、3本の電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eが収納されている。
【0090】
筐体2Mの軸心方向の一端側には開口2Maが形成されており、電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eのいずれかがノック機構により軸心方向にスライド移動させられたときに、その芯体部31のペン先部313の先端が、この開口2Maを通じて外部に突出するようにされる。
【0091】
電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eは、ノック機構により軸心方向にスライド移動させられてはいない状態では、図5(A)に示すように、それぞれの芯体部31のペン先部313の先端を含め全体が筐体2Mの中空部内に収納されており、保護されている状態となる。そして、前述したように、電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eの内、ノック機構により軸心方向にスライド移動させられた電子ペン用カートリッジの芯体部31のペン先部313の先端が、この開口2Maを通じて外部に突出するようにされる。したがって、ノック機構により、芯体部31のペン先部313の先端が開口2Maを通じて外部に突出するようにされた電子ペン用カートリッジは、前記保護が解除されることになる。
【0092】
この電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eは、多色ボールペンの替え芯と同寸法に構成されている点を除けば、外形的には、第1の実施形態の電子ペン用カートリッジ3と同様に構成される。ただし、この第2の実施形態の場合の電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eにおいては、後述するように第2の筒状体部322に、ノック機構による軸心方向の移動に応じてオン・オフするスイッチ部材が設けられる。
【0093】
この第2の実施形態の電子ペン1Mでは、後述するように、この電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eに設けられたスイッチの状態により、ノック機構により電子ペン1Mにおいて、それぞれの電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eが保護されている状態となっているかどうかを検出するようにする。電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eのその他の構成は、第1の実施形態の電子ペン用カートリッジ3と同様とされる。
【0094】
電子ペン1Mのノック機構は、電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eのそれぞれが嵌合される嵌合部42Ba,42Ra,42Eaを備えるノック棒42B,42R,42Eと、ばね受け部材7と、電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eのそれぞれの嵌合部42Ba,42Ra,42Eaとばね受け部材7との間に配設されるコイルばね8B,8R,8Eとからなる。
【0095】
ばね受け部材7は、筐体2Mの中空部内の軸心方向の所定位置に固定されて取り付けられている。このばね受け部材7には、電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eの第2の筒状体部322B,322R,322Eが挿通される貫通孔7B,7R,7Eが形成されている。電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eのそれぞれは、このばね受け部材7の貫通孔7B,7R,7Eのそれぞれ、及びコイルばね8B,8R,8Eのそれぞれを挿通して、ノック棒42B,42R,42Eの嵌合部42Ba,42Ra,42Eaに嵌合されることにより、電子ペン1Mに取り付けられる。
【0096】
筐体2Mの、ノック棒42B,42R,42Eが収納される部分には、ノック棒42B,42R,42Eの一部が外部に露出されると共に、ノック棒42B,42R,42Eのそれぞれが、軸心方向に移動することが可能なようにされた透孔スリット(図5(A)では図示を省略)が設けられている。
【0097】
電子ペン1Mは、周知の多色ボールペンと同様に、ノック棒42B,42R,42Eのいずれかが開口2Ma側にスライドさせられて、そのノック棒に嵌合している電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eのいずれかの芯体部31のペン先部313の先端が開口2Maから外部に突出する状態になったときに、ノック棒42B,42R,42Eの係止部(図示は省略)が、筐体2Mの中空部内に形成されている係合部に係合して、その状態で係止するロック状態となる。
【0098】
そして、そのロック状態で、他のノック棒が、開口2Ma側にスライド移動させられると、ロック状態にあるノック棒のロックが解除されて、コイルばね8B,8R,8Eのいずれかにより、そのノック棒が図5(A)に示す元の状態に戻る。そして、後からスライド移動させられたノック棒は、そのノック棒に嵌合している電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eのいずれかの芯体部31のペン先部313の先端が開口2Maから外部に突出する状態で、ロック状態となることができる。
【0099】
以下、同様に、ノック棒をスライド移動させることにより、開口2Maから先端を突出させる電子ペン用カートリッジを変えることができる。ノック棒42B,42R,42Eのいずれかのスライド移動を、ロック状態になる途中で停止したときには、ロック中の他のノック棒のロック解除を行うと共に、そのノック棒は、コイルばね8B,8R,8Eのいずれかにより、図5(A)の保護状態に復帰する。
【0100】
図5(B)及び(C)は、電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eに設けられるスイッチについて説明するための図である。この図5(B),(C)は、電子ペン用カートリッジ3Bに設けられるスイッチについて示したもので、他の電子ペン用カートリッジ3R,3Eについても同様に構成されるものである。
【0101】
すなわち、電子ペン用カートリッジ3Bが、非ロック状態であるノック棒42Bの嵌合部42Baに嵌合されたときに、丁度、ばね受け部材7の貫通孔7Bに収納される第2の筒状体部322Bの部位の周面に貫通孔322Baが設けられると共に、第2の筒状体部322B内に、この貫通孔322Baから一部が露呈するように、スイッチ部材9Bが設けられる。
【0102】
このスイッチ部材9Bは、弾性を有すると共に導電性を有する材料、例えば弾性を有する導電性金属で構成される。このスイッチ部材9Bは、図5(B)及び(C)に示すように、第2の筒状体部322Bの貫通孔322Baの近傍の内壁面に固定される固定端子片91と、当該固定端子片91と弾性的に接触可能な可動端子片92とからなる。可動端子片92は、固定端子片91と弾性的に接触する状態と、非接触の状態とを取り得るように構成された折り曲げ部92aを備え、この折り曲げ部92aの一部が貫通孔322Baから突出することが可能ように、第2の筒状体部322B内に取り付けられている。
【0103】
電子ペン用カートリッジ3Bが、非ロック状態であるノック棒42Bの嵌合部42Baに嵌合されて、電子ペン用カートリッジ3Bの全てが筐体2Mの中空部に存在する保護状態であるときには、図5(B)に示すように、スイッチ部材9Bは、丁度、ばね受け部材7の貫通孔7B内に位置する。このため、可動端子片92の折り曲げ部92aは、貫通孔7Bの内壁により第2の筒状体部322B内側に弾性的に変位し、固定端子片91と可動端子片92とは接触せずに離間する状態となる。すなわち、スイッチ部材9Bは、オフの状態となる。
【0104】
ノック棒42Bがロック状態までスライド移動されて、電子ペン用カートリッジ3Bの芯体部31のペン先部313の先端が筐体2Mの開口2Maから突出している非保護状態になると、図5(C)に示すように、スイッチ部材9Bは、ばね受け部材7の貫通孔7Bから脱する状態になる。すると、可動端子片92の折り曲げ部92aの一部が貫通孔322Baから突出するように弾性変位し、これにより、可動端子片92と固定端子片91とが接触する状態となる。すなわち、スイッチ部材9Bは、オンの状態となる。
【0105】
このスイッチ部材9Bの固定端子片9aと、可動端子片9bとは、図6に示すように、第1の筒状体部321Bに収納されている電子回路34Bの制御回路400Bに電気的に接続されている。制御回路400は、このスイッチ部材9Bのオン・オフ状態を監視することで、電子ペン用カートリッジ3Bの全てが筐体2Mの中空部に存在する保護状態であるか、あるいはノック棒42Bにより電子ペン用カートリッジ3Bの芯体部31のペン先部313の先端が筐体2Mの開口2Maから突出している非保護状態であるかを検出するようにする。
【0106】
電子ペン用カートリッジ3R及び電子ペン用カートリッジ3Eにおいても、同様にして、第2の筒状体部322R内にスイッチ部材9R,9E(図示は省略)が設けられており、第1の筒状体部321R,321Eに収納されている電子回路34R,34E(図示は省略)の制御回路400R,400E(図示は省略)に接続されている。
【0107】
なお、図6は、電子ペン1Mの内の電子ペン用カートリッジ3Bと、位置検出装置200との関係を示したものであるが、電子ペン1Mの電子ペン用カートリッジ3R及び3Eと、位置検出装置200との関係も同様であることは言うまでもない。
【0108】
そして、この実施形態の場合、電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eと共に使用される位置検出装置は、電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eのそれぞれから送信されてくる識別情報を受信して、判別する機能を備える。すなわち、この実施形態の場合の位置検出装置は、電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eの違いを判別して、電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eのそれぞれに割り当てられた機能を実現するようにする。
【0109】
例えば、電子ペン用カートリッジ3Bは、その指示位置に応じて表示する軌跡(文字や図形)を黒色で表す機能を割り当てられ、電子ペン用カートリッジ3Rは、その指示位置に応じて表示する軌跡を赤色で表す機能を割り当てられ、電子ペン用カートリッジ3Eは、その指示位置に応じて、先に指示入力された軌跡を消去する機能を割り当てられる。IDメモリ409には、この実施形態においては、電子ペン1Mや電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eの識別情報の他、これら文字色を通知する情報や、消去機能を通知する情報が記憶される。
【0110】
電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eから送出される付加情報には、電子ペン1Mや電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eの識別情報の他、これら文字色を通知する情報や、消去機能を通知する情報が含まれる。
【0111】
なお、電子ペン用カートリッジに割り当てられる機能は、この例のような指示位置に応じた軌跡の表示色のみではなく、軌跡の太さや、実線、点線、一点鎖線などの表示する線の種別などであってもよい。
【0112】
[電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eの動作]
以下に、電子ペン1Mの電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eにおける付加情報の送出動作について説明する。ただし、電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eは、同様の動作をするので、ここでは、電子ペン用カートリッジ3Bの場合を例にとって説明する。なお、電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eのそれぞれと、位置検出装置200との間のやり取りは、第1の実施形態の場合と同様であるので、ここではその説明は省略する。
【0113】
図7は、電子ペン用カートリッジ3Bの電子回路34Bの制御回路400Bにおける付加情報の送出制御の処理動作を説明するためのフローチャートである。
【0114】
制御回路400Bは、使用者によるノック棒42Bのノック操作(スライド移動操作)により、スイッチ部材9Bがオンにされたか否か判別する(ステップS201)。このステップS201で、スイッチ部材9Bがオンではなくオフであると判別したときには、制御回路400Bは、電子ペン用カートリッジ3Bが筐体2M内に全て収納されていて保護状態にあるとして、付加情報の送信停止状態とし、スイッチ回路407は常時オフの状態のままとする(ステップS202)。このステップS202の後には、制御回路400Bは、処理をステップS201に戻し、このステップS201以降の処理を繰り返す。
【0115】
ステップS201で、スイッチ部材9Bがオンであると判別したときには、制御回路400Bは、使用者により、ノック棒42Bがノック操作(スライド移動操作)されて、電子ペン用カートリッジ3Bの芯体部31のペン先部313の先端が、筐体2の開口2bから突出する非保護状態にあると判断して、付加情報の送信を開始するようにする(ステップS203)。
【0116】
すなわち、制御回路400Bは、付加情報として、筆圧データを位置検出装置200に送信する。また、制御回路400Bは、IDメモリ409から、電子ペン1または電子ペン用カートリッジ3の識別情報及び文字色を通知する情報を読み出し、その読み出した識別情報及び文字色を通知する情報を、付加情報として位置検出装置200に送信する。なお、電子ペン用カートリッジ3Eの場合には、文字色の通知に代えて、消去機能を通知する。
【0117】
次に、制御回路400Bは、スイッチ部材9Bがオフとなったか否か判別し(ステップS204)、オフとなっていないと判別したときには、制御回路400Bは、処理をステップS203に戻し、このステップS203以降の処理を繰り返す。
【0118】
また、ステップS204でスイッチ部材9Bがオフとなったと判別したときには、制御回路400Bは、他の電子ペン用カートリッジ3Rまたは3Bのノック棒42Rまたは42Eがノック操作されたことにより、電子ペン用カートリッジ3Bの全てが筐体2Mの中空部内に収納される保護状態に戻ったと判断して、付加情報の送信を停止し(ステップS205)、付加情報のセキュリティーの保護を図るようにする。このステップS205の次には、制御回路400Bは、処理をステップS201に戻し、このステップS201以降の処理を繰り返す。
【0119】
以上のようにして、この第2の実施形態の電子ペン1Mによれば、一つの筐体2Mに複数本の電子ペン用カートリッジが収納されている状態においても、付加情報のセキュリティーの確保の問題と、芯体の保護の問題とを同時に解決することができる。
【0120】
なお、上述の第2の実施形態においては、ノック機構による電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eの軸心方向のスライド移動に応じた保護状態と、非保護状態とを検出する検出手段としては、スイッチ部材9B,9R,9Eを用いたが、これに限られるものではない。
【0121】
例えば、スイッチ部材の代わりに、第2の筒状体部の対応する位置に光センサを設けるようにしてもよい。その場合には、電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eが保護状態にあるときには、光センサは、ばね受け部材7の貫通孔7B,7R,7E内に位置して、光を受光しない状態となる。一方、電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eが非保護状態になると、光センサは、ばね受け部材7の貫通孔7B,7R,7E外に位置して、透明の筐体2Mを通じて光を受光可能の状態になる。したがって、制御回路400B,400R,400Eのそれぞれは、光センサの光受光出力のレベルを監視することで、電子ペン用カートリッジ3B,3R,3Eが保護状態にあるか、非保護状態にあるかを検出することができる。
【0122】
[第3の実施形態]
上述した第1の実施形態及び第2の実施形態の電子ペン1,1Mは、位置検出装置200と電磁誘導結合により位置検出用信号や付加情報の授受を行うようにした電磁誘導結合方式の場合であった。しかし、この発明の電子ペンは、電磁誘導結合方式の電子ペンに限られるものではなく、位置検出装置との間で、静電結合により信号の授受を行う静電結合方式のものでもよい。第3の実施形態は、この静電結合方式の電子ペンの例であって、発信型の電子ペンの例である。
【0123】
図8は、この第3の実施形態の電子ペン1Cの機械的な構成の概要を示すものである。この例の電子ペン1Cは、電子ペン本体1Caと、この電子ペン本体1Caのペン先となる芯体506側を覆うように、当該電子ペン本体と係合するキャップ1Cbとからなる。図8では、電子ペン本体1Ca及びキャップ1Cbの一部を破断して、その内部を示したものとしている。そして、図8では破断していない電子ペン本体1Caのペン先側の部分の内部構成を説明するための拡大断面図を、図9に示す。また、図10は、電子ペン1Cの内部回路構成例を示す図である。
【0124】
電子ペン本体1Caは、軸心方向に細長の円筒状形状とされている筐体を構成するケース501を備える。ケース501は、導電性材料からなるケース本体502と、このケース本体502と結合される導電性材料からなるペン先スリーブ503及び非導電性材料からなる蓋部504とにより構成されている。
【0125】
ペン先スリーブ503のペン先側の端部には、絶縁性材料からなるペン先ガード部材505が嵌合されて設けられる。芯体506は、導電性材料、この例では金属粉が混入された樹脂で構成され、図9に示すように、ペン先ガード部材505の貫通孔505a内に、自由に軸心方向に移動可能となる状態で、開口501aから挿入される。
【0126】
ケース本体50の中空部内には、図8及び図9に示すように、基板ホルダー507と電池508と芯体ホルダー509が収納される。
【0127】
基板ホルダー507は、絶縁性の樹脂、例えば液晶ポリマーにより構成され、圧力検知手段の例としての筆圧検出モジュール70の保持部(以下、感圧用部品保持部という)507aと、プリント基板載置台部507bとを備える。基板ホルダー507は、ケース本体502内の軸心方向の芯体506側に移動しないように位置規制されている。
【0128】
プリント基板載置台部507bの蓋部504側の端部には、電池508のプラス側端子508aと電気的に衝合する端子導体510が設けられている。この端子導体510は、プリント基板511の電源ラインの銅箔パターンと電気的に接続されている。また、蓋部504のケース本体502への圧入嵌合部には、図8に示すように、電池508のマイナス側端子508bと電気的に接続すると共に、プリント基板511のアース導体と接続されている導電性金属からなるコイルバネ端子512が設けられている。なお、プリント基板511のアース導体は、ケース本体502やペン先スリーブ503とは接続されていない。
【0129】
この実施形態では、プリント基板511上には、図10に示すように、電子ペン1Cの芯体506から送出する信号を発生する発信回路102、当該発信回路102の起動制御及び発信動作状態の制御する制御回路101、電源回路103などや、その周辺回路部品が設けられている。
【0130】
芯体ホルダー509は、導電性材料からなり、例えば導電性ゴムからなる導電性弾性部材513を収納嵌合する収納嵌合部509aと、筆圧検出モジュール70に嵌合する棒状部509bとが一体に形成された形状を備える。芯体506は、導電性弾性部材513を介して芯体ホルダー509に嵌合保持されるが、所定の力で引っ張ることで、芯体ホルダー509から引き抜くことができるように構成されている。芯体ホルダー509の棒状部509bは、基板ホルダー507の感圧用部品保持部507a内の筆圧検出モジュール70の後述する保持部材73に嵌合される。
【0131】
芯体ホルダー509の棒状部509bには、導電性金属などの導電性材料からなるコイルばね515が装着されており、芯体ホルダー509は、このコイルばね515により、基板ホルダー507に対して常に芯体506側に付勢されるように構成されている。
【0132】
そして、この実施形態では、基板ホルダー507に対して、感圧用部品保持部507aを跨ぐように設けられた導体端子部材516と、導電性材料からなるコイルばね515とにより電気的接続用部材を構成し、この電気的接続用部材により、プリント基板511の発信回路102からの信号供給のための電気的接続を実現している(図9参照)。導体端子部材516は、図9に示すように、コイルばね515の一端が当接する当接板部516aと、当該当接板部516aとプリント基板載置台部507bの発信回路102の信号供給端に接続されている銅箔部分とを基板ホルダー507の感圧用部品保持部507aの部分を跨いで接続するための延伸部516bとからなる。発信回路102からの信号は、導体端子部材516、コイルばね515、芯体ホルダー509及び導電性弾性部材513を介して、導電性弾性部材513に挿入嵌合される芯体506に供給される。
【0133】
この例の筆圧検出モジュール70は、芯体506に印加される筆圧に応じて静電容量が変化する可変容量コンデンサの構成とされている。この実施形態における筆圧検出モジュール70は、例えば特開2011‐186803号公報に記載されている周知の可変容量コンデンサを用いて構成される。
【0134】
この例の筆圧検出モジュール70を構成する感圧用部品は、図9に示すように、誘電体71と、端子部材72と、保持部材73と、導電部材74と、弾性部材75との複数個の部品からなる。これら筆圧検出モジュール70を構成する感圧用部品は、基板ホルダー507の感圧用部品保持部507aの筒状体517の中空部内において軸心方向に並べられて収納されている。
【0135】
この例の筆圧検出モジュール70として構成される可変容量コンデンサは、その一方の電極を構成する端子部材72と、他方の電極を構成する導電部材74との間に、誘電体71が挟まれて構成される。端子部材72と導電部材74は、壁部を跨いでプリント基板511の銅箔パターンに接続される。
【0136】
そして、導電部材74を保持する保持部材73が、筒状体517内を軸心方向に移動可能となるように構成されている。そして、導電性材料からなるコイルばねで構成される弾性部材75により、保持部材73が常時、芯体側に付勢される。導電部材74と弾性部材75とは電気的に接続されており、弾性部材75を構成するコイルばねの一端75aが可変容量コンデンサの他方の電極として、プリント基板511の銅箔パターンに接続される。
【0137】
保持部材73には、図9に示すように、その軸心方向の芯体506側となる側に、凹穴73aが設けられており、芯体ホルダー509の棒状部509bが、この部材73の凹穴73aに圧入嵌合され、芯体506側には抜け落ちないように係合される。
【0138】
芯体506の先端部に圧力が印加されると、その圧力に応じて、芯体506及び芯体ホルダー509は、軸心方向に蓋部504側に変位し、この変位により、感圧用部品保持部507a内の保持部材73が弾性部材75の弾性偏倚力に抗して誘電体71側に変位する。その結果、保持部材73に嵌合されている導電部材74が、誘電体71側に変位し、導電部材74と誘電体71との間の距離、さらには、導電部材74と誘電体71との接触面積が、芯体506に印加される圧力に応じて変化する。これにより、筆圧検出モジュール70を構成する可変容量コンデンサの静電容量が、芯体506に印加される圧力に応じて変化し、その静電容量の変化が制御回路101で検出されて筆圧が検出される。
【0139】
そして、この第3の実施形態の電子ペン1Cにおいては、電子ペン本体1Caの芯体506側に、キャップ1Cbが被せられることで、電子ペン本体1Caのケース501の開口501aから突出する芯体506の先端が保護される。すなわち、この第3の実施形態では、キャップ1Cbが、電子ペン本体1Caの開口501aから突出する芯体506の保護機構の働きをする。
【0140】
そして、この第3の実施形態では、キャップ1Cbは、電子ペン本体1Caのケース501と螺合することで、ケース501に係止する状態となる。このため、キャップ1Cbの中空部520の内壁面には、図8に示すように、ネジ部521が設けられている。一方、電子ペン本体1Caのケース本体502には、このキャップ1Cbのネジ部521と螺合するネジ部518が形成されている。
【0141】
そして、キャップ1Cbと、ケース本体502とには、キャップ1Cbがケース本体502に螺合したときに対向する状態となる互いの位置に、永久磁石522と、磁気センサ519とがそれぞれ設けられる。永久磁石522からの磁束を検出する磁気センサ519は、電子ペン1Cの芯体の先端が保護されているか否かの検出手段を構成する。
【0142】
したがって、キャップ1Cbが、ケース本体502に螺合して結合された状態においては、ケース本体502に設けられている磁気センサにより、キャップ1Cbに設けられている永久磁石522からの磁束が検出されて、芯体506が保護されている状態であることが検出される。また、キャップ1Cbがケース本体502との結合が解除されて、芯体506が外部に露呈する状態のときには、磁気センサ519では、キャップ1Cbの永久磁石522からの磁束を検出することができないので、その時の磁気センサ519の出力により、芯体506が保護されていない状態であることを検出することができる。
【0143】
図8に示すように、磁気センサ519は、プリント基板511の導電パターンに電気的に接続されている。すなわち、図10に示すように、磁気センサ519は、プリント基板511に設けられている制御回路101に接続されている。
【0144】
[第3の実施形態の電子ペン1Cの動作制御]
図10は、上述した制御回路101及び発信回路102を中心とした、この第3の実施形態の電子ペン1Cの要部の電子回路の構成を示すブロック図である。この図10に示すように、電池508は電源回路103に接続されており、この電源回路103において、この実施形態の発信型の電子ペン1Cの電源電圧が生成され、制御回路101及び発信回路102に供給される。この例では、制御回路101は、IC(Integrate Circuit)として構成されている。
【0145】
発信回路102は、この例では発振器(図示は省略)を内蔵しており、この発振器からの発振信号に基づく発信信号を生成して出力する。この例では、発信回路102からの発信信号は、導電体である芯体506に供給されており、当該発信信号が、芯体506を通じて位置検出装置200Cに対して送信される。
【0146】
制御回路101は、この例ではマイクロコンピュータで構成されており、発信回路102の発信動作の起動を制御すると共に、その発信動作状態を制御する。この発信動作状態の制御には、発信回路102が備える発振器からの発振信号の振幅制御や、発振信号の断続の制御などを含む。
【0147】
また、制御回路101は、筆圧検出モジュール70からなる可変容量コンデンサ70Cの容量Cvを監視して、前述の実施形態と同様にして、可変容量コンデンサ70Cの容量Cvから芯体506に印加される筆圧値を検出するようにする。
【0148】
そして、制御回路101には、電子ペン1Cの識別情報(ID)を記憶するIDメモリ104が接続されると共に、前述したように、磁気センサ519が接続される。制御回路101は、磁気センサ519のセンサ出力を監視して、キャップ1Cbにより芯体506が保護されている状態であるか否かを判別するようにする。
【0149】
制御回路101は、この実施形態においては、磁気センサ519のセンサ出力から、芯体506がキャップ1Cbにより保護されている状態であると判別したときには、筆圧データ及びIDメモリ104の識別情報からなる付加情報は、位置検出装置200Cには送出しないように制御する。
【0150】
そして、制御回路101は、磁気センサ519のセンサ出力から、芯体506がキャップ1Cbにより保護されておらず、露呈されている状態、つまり、電子ペン1Cの使用状態であると判別したときには、筆圧データを算出し、また、IDメモリ104から識別情報を読み出して、それらからなる付加情報を、位置検出装置200Cに送出するように制御する。
【0151】
上述の制御回路101による付加情報の送出制御の流れは、図7に示した第2の実施形態の電子ペンの制御回路400B,400R,400Eによる付加情報の送出制御と同様となる。ただし、制御回路101は、ステップS201及びステップS204に対応するステップでは、スイッチ部材9B,9R,9Eのオンまたはオフを検出する代わりに、磁気センサ519のセンサ出力から、芯体506がキャップ1Cbにより保護されている状態であるか否かを判別するものとなる。
【0152】
なお、この第3の実施形態の電子ペン1Cの場合においては、制御回路101は、ステップS202及びステップS205に対応するステップで、芯体506が保護状態にあると判別したときには、付加情報の送信を停止するのみではなく、発信回路102からの発信信号の発信を停止状態にして、電池508の電池の消耗ができるだけ軽減されるようにしている。
【0153】
[電子ペン1Cと位置検出装置200Cとの間の信号の授受]
この第3の実施形態の電子ペン1Cからの信号を受信する位置検出装置200Cは、図11に示すように、センサ230と、このセンサ230に接続されるペン指示検出回路240とで構成されている。
【0154】
この例の位置検出装置200Cのセンサ23は、第1の導体の群と第2の導体の群を交差させて形成したセンサパターンを用いて、発信型の電子ペン1Cから送出される信号を受信して、電子ペン1Cが指示する位置を検出すると共に、付加情報を受信する構成を備えている。
【0155】
第1の導体の群は、例えば、横方向(X軸方向)に延在した複数の第1の導体231Y、231Y、…、231Y(mは1以上の整数)を互いに所定間隔離して並列に、Y軸方向に配置したものである。
【0156】
また、第2の導体の群は、第1の導体231Y、231Y、…、231Yの延在方向に対して交差する方向、この例では直交する縦方向(Y軸方向)に延在した複数の第2の導体232X、232X、…、232X(nは1以上の整数)を互いに所定間隔離して並列に、X軸方向に配置したものである。
【0157】
なお、以下の説明において、第1の導体231Y、231Y、…、231Yについて、それぞれの導体を区別する必要がないときには、その導体を、第1の導体231Yと称する。同様に、第2の導体232X、232X、…、232Xについて、それぞれの導体を区別する必要がないときには、その導体を、第2の導体232Xと称することとする。
【0158】
ペン指示検出回路240は、センサ230との入出力インターフェースとされる選択回路241と、増幅回路242と、バンドパスフィルタ243と、検波回路244と、サンプルホールド回路245と、AD(Analog to Digital)変換回路246と、制御回路247とからなる。
【0159】
選択回路241は、制御回路247からの制御信号に基づいて、第1の導体の群および第2の導体の群の中からそれぞれ1本の導体を選択する。選択回路241により選択された導体は増幅回路242に接続され、電子ペン1Cからの信号が、選択された導体により検出されて増幅回路242により増幅される。この増幅回路242の出力はバンドパスフィルタ243に供給されて、電子ペン1Cから送信される信号の周波数の成分のみが抽出される。
【0160】
バンドパスフィルタ243の出力信号は検波回路244によって検波される。この検波回路244の出力信号はサンプルホールド回路245に供給されて、制御回路247からのサンプリング信号により、所定のタイミングでサンプルホールドされた後、AD変換回路246によってデジタル値に変換される。AD変換回路246からのデジタルデータは制御回路247によって読み取られ、処理される。
【0161】
制御回路247は、内部のROMに格納されたプログラムによって、サンプルホールド回路245、AD変換回路246、および選択回路241に、それぞれ制御信号を送出するように動作する。また、制御回路247は、AD変換回路246からのデジタルデータから、電子ペン1Cによって指示されたセンサ230上の位置座標を算出する。また、AD変換回路246からのデジタルデータから、電子ペン1Cから送られてきた付加情報を復調するようにする。
【0162】
図12は、この位置検出装置200Cのセンサ230で受信される、この実施形態の発信型の電子ペン1Cからの所定のパターンの信号を説明するためのタイミングチャートである。この実施形態の電子ペン1Cにおいては、図10に示したように、制御回路101は、磁気センサ519のセンサ出力に基づいて、芯体506がキャップ1Cbにより保護されている状態か否かを判別し、保護されていない状態であると判別したときに、発信回路102から、位置検出用信号及び付加情報とからなる所定のパターンの信号を繰り返し出力するようにする。
【0163】
付加情報は、筆圧検出モジュール70で構成される可変容量コンデンサ70Cの静電容量から算出される筆圧データと、IDメモリ104から読み出される電子ペン1Cの識別情報とからなる。
【0164】
図12(A)は、制御回路101からの制御信号の例を示すもので、ハイレベルを維持する一定期間は、図12(B)に示すように、発信回路102からの発信信号をバースト信号として連続送信する(図12(C)の連続送信期間)。
【0165】
この連続送信期間の長さは、位置検出装置200Cのペン指示検出回路240において、電子ペン1Cによるセンサ230上の指示位置を検出することが可能な時間長とされ、例えば第1の導体231Y及び第2の導体232Xの全てを1回以上、好ましくは複数回以上スキャンすることができる時間長とされる。
【0166】
この連続送信期間中に、制御回路101は、芯体506に印加される筆圧の値を、第1の実施形態で説明したのと同様の方法で、筆圧検出モジュール70で構成される可変容量コンデンサ70Cの静電容量に応じた値として検出し、その筆圧値を複数ビット例えば10ビットの値(2進コード)として求める。
【0167】
そして、制御回路101は、図12(A)に示すように、連続送信期間が終了すると、制御信号を所定の周期(Td)でハイレベルまたはローレベルに制御することにより発信回路102からの発信信号をASK変調する。このとき、所定の周期(Td)の初回は必ずハイレベルとし、それを図12(C)のスタート信号とする。このスタート信号は、以降のデータ送出タイミングを位置検出装置200C側で正確に判定することができるようにするためのタイミング信号である。なお、このスタート信号に代えて、連続送信期間のバースト信号をタイミング信号として利用することもできる。
【0168】
制御回路101は、スタート信号に続いて、複数ビットの筆圧データを順次送信するように発信回路102を制御する。この場合に、制御回路101は、図12(A)に示すように、送信データ(2進コード)が「0」のときは制御信号をローレベルとして発信信号の送出はせず、送信データ(2進コード)が「1」のときは制御信号をハイレベルとして発信信号の送出するように制御する。
【0169】
そして、制御回路101は、筆圧データに引き続いて、IDメモリ104から読み出した電子ペン1C自身の識別情報を、上述と同様にしてASK信号やOOK(On Off Keying)信号として送出するように発信回路102を制御する。
【0170】
制御回路101は、以上のような連続送信期間と送信データ期間とからなるパターンの信号を、制御回路101からの制御に基づいた周期で繰り返し送信するようにする。
【0171】
位置検出装置200Cのペン指示検出回路240においては、制御回路247は、例えばまず第2の導体232X〜232Xを順次に選択する選択信号を選択回路241に供給し、第2の導体232X〜232Xのそれぞれの選択時に、AD変換回路246から出力されるデータを信号レベルとして読み取る。そして、第2の導体232X〜232Xの全ての信号レベルが所定値に達していなければ、制御回路247は、電子ペン1Cはセンサ230上に無いものと判断し、第2の導体232X〜232Xを順次に選択する制御を繰り返す。
【0172】
第2の導体232X〜232Xのいずれかから所定値以上のレベルの信号が検出された場合には、制御回路247は、最も高い信号レベルが検出された第2の導体232Xの番号とその周辺の複数個の第2の導体232Xを記憶する。そして、制御回路247は、選択回路241を制御して、第1の導体231Y〜231Yを順次選択して、AD変換回路246からの信号レベルを読み取る。このとき制御回路247は、最も大きい信号レベルが検出された第1の導体231Yとその周辺の複数個の第1の導体231Yの番号を記憶する。
【0173】
そして、制御回路247は、以上のようにして記憶した、最も大きい信号レベルが検出された第2の導体232Xの番号及び第1の導体231Yの番号とその周辺の複数個の複数個の第2の導体232X及び第1の導体231Yから、電子ペン1Cにより指示されたセンサ230上の位置を検出する。
【0174】
制御回路247は、選択回路241で最後の第1の導体231Yを選択して信号レベルの検出を終了したら、電子ペン1Cからの連続送信期間の終了を待ち、連続送信期間の終了後のスタート信号を検出したら、筆圧データ及び識別情報のデータを読み取る動作を行い、読み取った筆圧データや識別情報のデータを、位置検出装置200Cが接続されるホストコンピュータなどに送出するようにする。そして、制御回路247は、以上の動作を繰り返すようにする。
【0175】
以上のようにして、この第3の実施形態の電子ペン1Cによれば、静電容量方式の発信型の電子ペンにおいても、付加情報のセキュリティーの確保の問題と、芯体の保護の問題とを同時に解決することができる。
【0176】
[第3の実施形態の電子ペンの変形例]
なお、芯体の先端が保護されている状態であるか否かの検出は、磁気センサ519を用いる構成に限られるものではない。例えば磁気センサ519に代わりに、光センサを、ケース本体502にキャップ1Cbが係合したときに当該キャップ1Cbにより隠されるケース本体502の位置に、外部からの光を受光可能に設けておき、この光センサの光検出出力を制御回路101が監視することで、芯体506が保護されているか否かを判別するようにしてもよい。
【0177】
また、磁気センサ519に代わりに、ケース本体502にキャップ1Cbが係合したときにオンまたはオフとなるスイッチ部材を、ケース本体502を設けておき、そのスイッチ部材のオン・オフの状態を制御回路101が監視することで、芯体506が保護されているか否かを判別するようにしてもよい。
【0178】
さらに、そのスイッチ部材を、ケース本体502にキャップ1Cbが係合したときにオフ、キャップ1Cbをケース本体502から外して芯体506を露呈した状態としたときにオンとなるように構成すると共に、当該スイッチ部材を電池508と電源回路103との間に設けて電源スイッチとするようにしてもよい。その場合には、キャップ1Cbが外されて芯体506が露呈された状態になった時にのみ、スイッチ部材がオンとなって電池508の電圧が電源回路103に供給され、制御回路101及び発信回路102に電源電圧が供給される。そして、制御回路101は、発信回路102を制御して、位置検出用信号及び付加情報の送信を開始するようにする。すなわち、その場合には、制御回路101は、スイッチ部材のオン・オフの監視をする必要はなく、スイッチ部材のオン・オフによる電源供給の有無を、保護機構による芯体506の保護状態の検出結果として判断し、それに基づいて、付加情報の送出の制御を行うことになる。
【0179】
また、ペン先端は、芯体506に一体に形成されている必要はなく、芯体本体の先端に被着されていたり、接合されていたり、2色成形されていたりしてもよい。その場合には、導電性のペン先端は、例えば芯体本体を介して、信号生成回路に電気的に接続される。あるいは、芯体本体も導電性材料で構成されている場合には、芯体本体を信号生成回路に電気的に接続すればよい。また、芯体本体が樹脂などの絶縁体で構成されている場合には、樹脂表面に導体膜を被着したり、樹脂内部を貫通する貫通導電体を設けたりして、それら導電膜や貫通導電体を信号生成回路に電気的に接続することで、ペン先端と、信号生成回路とを電気的に接続することができる。
【0180】
[第4の実施形態]
この第4の実施形態は、第3の実施形態の静電結合方式の電子ペンの変形例である。上述の第3の実施形態の電子ペン1Cは、信号発生回路(発振回路)を備えていて、芯体506から信号を送出する構成であった。これに対して、この第4の実施形態の静電結合方式の電子ペン1Dにおいては、位置検出装置のセンサからの信号を受信し、その受信した信号を増幅するなど信号増強した信号を、位置検出装置のセンサに帰還させるようにする。この電子ペン1Dのセンサとの信号の授受に関する技術については、例えば特開2012−221304号公報に詳しい。
【0181】
この第4の実施形態の電子ペン1Dは、芯体に印加される筆圧のデータや、電子ペンの識別情報などの付加情報は、位置検出用信号とは別経路で、無線通信回路を通じて位置検出装置に無線通信するようにする。無線通信回路は、例えばブルートゥース(登録商標)規格などの近距離無線通信規格の無線通信回路で構成する。
【0182】
そして、電子ペン本体に対して、キャップが係合される構成は、上述した第3の実施形態と同様である。そして、キャップにより芯体が保護される状態と、キャップが外された芯体が保護されていない状態との検出は、この実施形態でも、第3の実施形態と同様に、キャップの着脱を検出するための磁気センサにより行うようにする。
【0183】
図13(A)は、この第4の実施形態において、キャップと係合される電子ペン本体側の電子回路構成を説明するための図である。図13(B)は、図13(A)のA−A断面図であって、この第4の実施形態の電子ペン1Dの電子ペン本体1Daのペン先部の断面図である。
【0184】
この第4の実施形態の電子ペン1Dにおいては、ケース501Dの開口部から先端が突出するように、導電性の芯体531を配設すると共に、この芯体531の周囲を囲むようにした周辺電極532を配設する。この周辺電極532は、ケース501Dの外周側面に配設してもよいし、ケース501Dの内壁面に配設するようにしてもよい。ただし、芯体531と、周辺電極532とは、互いに絶縁される構成とされる。
【0185】
この第4の実施形態の電子ペン1Dにおいては、位置検出装置のセンサ230Dから送出される交流信号を静電結合により周辺電極532で受信し、その受信した信号を送信信号生成回路601及び電源回路602に供給する。電源回路602は、センサ230Dから受信した交流信号を開始トリガーとして電池603からの電圧から、電源電圧を生成するようにする。
【0186】
そして、電源回路602は、生成した電源電圧を送信信号生成回路601及び制御回路604、更には、無線通信回路605に供給する。
【0187】
送信信号生成回路601は、周辺電極532で受信されたセンサ230Dからの交流信号を、増幅するなどして増強した後、その増強後の信号を、芯体531を通じて、静電結合により、センサ230Dに帰還させるようにする。
【0188】
そして、制御回路604は、電子ペン本体1Daに対するキャップの着脱に応じたセンサ出力を送出する磁気センサ607のセンサ出力を監視し、キャップにより芯体531が保護されている状態であると判別したときには、無線通信回路605からの付加情報の送信は停止するように制御する。
【0189】
そして、制御回路604は、磁気センサ607のセンサ出力から、キャップにより芯体531が保護されていない状態であると判別したときには、IDメモリ606から電子ペン1Dの識別情報を読み出して、付加情報として無線通信回路605を通じて位置検出装置200Dに送信するようにする。また、制御回路604は、芯体531に印加される筆圧を検出する筆圧検出モジュール70で構成される可変容量コンデンサ70Cの静電容量の値から、芯体531に印加されている筆圧値のデータを算出して、その筆圧データを付加情報として、無線通信回路605を通じて位置検出装置200Dに送信するようにする。
【0190】
この第4の実施形態の電子ペン1Dにおいても、芯体531がキャップにより保護されている状態のときには、無線通信による付加情報の送信は停止されて、セキュリティーの確保がなされる。
【0191】
[第5の実施形態]
上述の第1の実施形態及び第2の実施形態の電子ペン1,1Mは、ノック式に電子ペン用カートリッジの芯体部の先端を出没させる方式であったが、回転式に電子ペン用カートリッジの芯体部の先端を出没させるようにする方式であってもよい。
【0192】
図14(A),(B)は、第5の実施形態の回転式の電子ペン1Sの構成例を説明するための図である。この実施形態の電子ペン1Sは、電子ペン本体部2Saと、この電子ペン本体部2Saに対して回転可能に嵌合されるキャップ部2Sbとからなる。電子ペン本体部2Saは第1の部材を構成し、キャップ部2Sbは第2の部材を構成する。
【0193】
電子ペン本体部2Saは、電子ペン用カートリッジ3Sのペン先の先端3Saを回転式に出没させる出没機構701を備える。電子ペン用カートリッジ3Sは、出没機構701に挿入されて、この出没機構701に対して保持される。キャップ部2Sbは、電子ペン本体部2Saに対しては、回転可能となるが、出没機構701とは嵌合して、当該出没機構に対して回転を加える構成を有する。
【0194】
なお、この第5の実施形態の電子ペン1Sの電子ペン用カートリッジ3Sは、前述した電子ペン用カートリッジ3、3B,3R,3Eとは異なる形態を有するものであり、出没機構701に挿入されて当該出没機構に固定されるようにされる嵌合部を備える。
【0195】
そして、この第5の実施形態の電子ペン1Sにおいては、図14(A),(B)に示すように、電子ペン本体部2Saには磁気センサ702を、キャップ部2Sbには永久磁石703を、互いにキャップ部2Sbの回転により近接する状態となるような位置に、それぞれ設ける。そして、磁気センサ702を、第3の実施形態と同様に、電子ペン本体部2Sa内の電子回路に設けられている、付加情報の送出の制御を行う制御回路に接続する。
【0196】
そして、この第5の実施形態の電子ペン1Sにおいては、図14(A)に示すように、電子ペン用カートリッジ3Sの全体が、電子ペン本体部2Sa内に収納されて、先端3Saが保護される状態においては、永久磁石703と磁気センサ702とは比較的遠く離れた状態となる。したがって、磁気センサ702では、永久磁石703からの磁束を検出せず、そのセンサ出力は、低レベルとなる。
【0197】
この状態から、キャップ部2Sbが回転されて、電子ペン用カートリッジ3Sの先端3Saが電子ペン本体部2Saから突出して保護されていない状態になると、永久磁石703と磁気センサ702とは近接した状態となる。したがって、磁気センサ702では、永久磁石703からの磁束を検出し、そのセンサ出力は、高レベルとなる。
【0198】
電子ペン本体部2Sa内の電子回路に設けられている制御回路は、磁気センサ702のセンサ出力を監視して、センサ出力が低レベルであるときには、電子ペン用カートリッジ3Sの先端3Saは保護されている状態であると判別し、付加情報の送出を停止するように制御する。また、制御回路は、センサ出力が高レベルであるときには、電子ペン用カートリッジ3Sの先端3Saは保護されていないと判別し、付加情報を送出するように制御する。
【0199】
この第5の実施形態においても、上述の実施形態と同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0200】
なお、電子ペン用カートリッジの先端が保護されている状態であるか否かの検出は、磁気センサ702を用いる構成に限られるものではない。例えば、磁気センサ519に代わりに、図14(A)の状態から、図14(B)の状態に、キャップ部2Sbが回転したときに、オンまたはオフとなるスイッチ部材を、電子ペン本体部2Saを設けておき、そのスイッチ部材のオン・オフの状態を制御回路が監視することで、電子ペン用カートリッジの先端が保護されているか否かを判別するようにしてもよい。
【0201】
[その他の変形例]
なお、第1実施形態及び第2の実施形態では、付加情報は、芯体の近傍に設けられた共振回路を通じて、位置検出用信号と共に、位置検出装置のセンサに対して送信するようにした。しかし、第1実施形態及び第2の実施形態においても、付加情報は、第4の実施形態と同様に、位置検出用信号とは別個に、無線通信回路を通じて、位置検出装置に送信するようにしてもよい。また、第3の実施形態においても、位置検出用信号は導電性の芯体を通じて位置検出装置に送信し、付加情報は、無線通信回路を通じて位置検出装置に送信するようにしてもよい。
【0202】
また、無線通信回路を用いて付加情報を位置検出装置に送信する場合には、全ての付加情報を無線通信回路を通じて送信するようにしてもよいし、付加情報の内、例えば電子ペンや電子ペン用カートリッジの識別情報は無線通信回路を送信し、筆圧データは、位置検出用信号と共に位置検出装置に送信するようにしてもよい。
【0203】
また、上述の実施形態では、保護機構により少なくとも芯体の先端が保護されている状態にあるか否かを検出する検出手段の検出結果を制御回路に供給し、制御回路が付加情報の送信を可能とするか、不可とするかを制御するようにしたが、制御回路を経由せずに、検出手段の検出結果に基づいて、付加情報の送信を可能とするか、不可とするかを制御することもできる。例えば、付加情報を無線通信回路を通じて送信する場合には、検出手段の検出出力により、無線通信回路の動作・非動作を制御するように構成することで、付加情報の送信を可能とするか、不可とするかを制御することができる。
【0204】
また、上述の第2の実施形態〜第5の実施形態においても、芯体の少なくとも先端が保護されているか否かの判別は、芯体に印加される筆圧を検出する筆圧検出手段の出力に基づくようにしてもよい。
【0205】
また、この発明の電子ペンは、保護機構により少なくとも芯体の先端が保護されている状態にあるか否かを検出する検出手段の検出結果に基づいて付加情報の送信を可能とするか、不可とするかを制御する制御回路自体が無い構成であってもよい。例えば、電子ペン本体部を構成する電子ペン用カートリッジには、コイルとコンデンサとからなる共振回路に並列に、筆圧検出部材として構成される可変容量コンデンサが接続される回路が設けられる構成としてもよい。
【0206】
この場合には、位置検出装置では、電子ペンからの信号の周波数の変化(位相変化でもよい)により、筆圧を検出するようにする。したがって、電子ペンが、保護機構により芯体の先端が保護されている状態では、ペン先に加わる筆圧は検出されず、付加情報の例としての筆圧の情報は、位置検出装置には、送信されない。そして、電子ペンが、保護機構により芯体の先端が保護されない状態になると芯体の先端に筆圧が印加可能の状態となり、実際に筆圧が印加されると、筆圧に応じて共振回路の周波数が変化し、その変化した周波数として、位置検出装置に、付加情報としての筆圧の情報が送信されるものである。
【0207】
なお、上述の実施形態では、筆圧検出手段は、筆圧に応じて機械的な可動部により静電容量を可変する可変容量コンデンサを用いるようにしたが、可変容量コンデンサを半導体デバイスからなるMEMS(Micro Electro Mechanical System)チップとして構成したものを用いるようにしてもよい。また、筆圧検出手段は、静電容量の変化を検出するものではなく、インダクタンス値や抵抗値を可変するものであってもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0208】
1,1M,1C,1D,1S…電子ペン、1Ca…電子ペン本体、1Cb…キャップ、2…筐体、3,3B,3R,3E,3S…電子ペン用カートリッジ、4…ノック機構、7…ばね受け部材、9B…スイッチ部材、31…芯体、36…筆圧検出部材、40R…共振回路、101…制御回路、102…発信回路、104…IDメモリ、200…位置検出装置、310…フェライトコア、311…コイル、34…電子回路、400…制御回路、409…IDメモリ、519…磁気センサ、522…永久磁石
図1
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