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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-184520(P2016-184520A)
(43)【公開日】2016年10月20日
(54)【発明の名称】加速器、及び加速管の温度管理方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 9/00 20060101AFI20160926BHJP
【FI】
   H05H9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-64628(P2015-64628)
(22)【出願日】2015年3月26日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構健康安心イノベーションプログラム(がん細胞選択的な非侵襲治療機器の基盤技術開発(中性子捕捉療法用病院併設型小型直線加速器の研究開発))委託研究、産業技術力強化法第19条の適用をうける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工メカトロシステムズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504151365
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】柱野 竜臣
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩
【テーマコード(参考)】
2G085
【Fターム(参考)】
2G085AA03
2G085BA05
2G085BE01
2G085BE02
2G085CA02
2G085CA26
(57)【要約】
【課題】発熱量の増加した加速管を冷却流体の流量を増加させずに一定温度に維持可能とする加速器、及び加速管の温度管理方法を提供する。
【解決手段】本発明は、加速管の冷却路に流れる冷却流体によって加速管を一定温度に維持する加速器及び加速管の温度管理方法に関する。本発明の加速器及び温度管理方法では、加速管の入力電力に基づき冷却路の入口を通過する冷却流体の入口温度の設定値を定め、入口温度を測定し、入口温度の設定値と測定値とが異なる場合、入口温度の測定値を設定値と等しくするように、冷却路の入口及び出口間を連結する循環路の冷却流体の流量をバルブにより調節すること、及び循環路の冷却流体をヒータにより加熱することの少なくとも一方を実施し、入口温度を調節した冷却流体により冷却又は加熱される加速管の温度を測定し、加速管温度の目標値と測定値とが異なる場合、加速管温度の測定値を目標値と等しくするように入口温度の設定値を変更する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子を加速するように構成された加速管と、
前記加速管を一定温度に維持するように構成された冷却装置と
を備え、
前記冷却装置が、
前記加速管に配置されると共に前記加速管を一定温度に維持するために冷却流体を流すように構成された冷却路と、
前記冷却路の入口及び出口間を連結すると共に冷却流体を流すように構成された循環路と、
前記循環路に配置されると共に冷却流体の流量を調節するように構成されたバルブと、
前記循環路に配置されると共に冷却流体を加熱するように構成されたヒータと、
前記バルブ及び前記ヒータを制御可能とするように構成された制御部と
を有している、加速器であって、
前記冷却路の入口を通過する冷却流体の入口温度と前記冷却路の出口を通過する冷却流体の出口温度との温度差を許容しながら前記加速管への入力電力に基づいて前記入口温度の設定値が定められ、
前記制御部が、前記入口温度の設定値に基づいて、前記加速管を一定温度に維持するように前記バルブ及び前記ヒータの少なくとも一方を制御する構成となっている、加速器。
【請求項2】
前記冷却装置が、
前記入口温度を測定するように構成された入口温度検出部と、
前記加速管に取付けられると共に前記加速管の加速管温度を測定するように構成された加速管温度検出部と
をさらに有し、
前記入口温度の設定値と、前記入口温度検出部により測定された前記入口温度の測定値とが異なる場合、前記制御部が、前記入口温度の測定値を前記設定値と等しくするように前記バルブ及び前記ヒータの少なくとも一方を制御する構成になっており、
予め定められた前記加速管温度の目標値と、前記加速管温度検出部によって測定された前記加速管温度の測定値とが異なる場合、前記制御部が、前記加速管温度の測定値を前記目標値と等しくするように前記入口温度の設定値を変更する構成になっている、請求項1に記載の加速器。
【請求項3】
前記冷却装置が、
2つの前記バルブと、
前記循環路に配置されると共に冷却流体を冷却するように構成された熱交換器と、
前記循環路に配置されると共に冷却流体を貯蔵するように構成されたタンクと、
前記循環路に配置されると共に冷却流体を前記加速管の冷却路に送るように構成されたポンプと
をさらに有し、
前記タンクが前記冷却路の出口の下流に位置し、
前記ポンプが前記タンクの下流に位置し、
前記ヒータが前記ポンプの下流に位置し、
前記循環路が前記冷却路の出口と前記タンクとの間に2つの分流路部を有し、
前記2つの分流路部の一方に、前記熱交換器及び前記2つのバルブの一方が位置し、
前記2つの分流路部の他方に、前記2つのバルブの他方が位置しており、
前記入口温度の設定値と前記入口温度の測定値とが異なる場合、前記入口温度の設定値と測定値との差異に基づいて前記入口温度の測定値が前記設定値と等しくなるように、前記制御部が前記熱交換器及び前記ポンプをさらに制御できるように構成されている、請求項1又は2に記載の加速器。
【請求項4】
荷電粒子を加速する加速管に配置された冷却路に流れる冷却流体によって、前記加速管を一定温度に維持する加速管の温度管理方法であって、
前記加速管への入力電力に基づいて前記冷却路の入口を通過する冷却流体の入口温度の設定値を定めるステップと、
前記冷却流体の入口温度を測定するステップと、
前記入口温度の設定値と前記入口温度の測定値とが異なる場合、前記入口温度の測定値を前記設定値と等しくするように、前記冷却路の入口及び出口間を連結する循環路に流れる冷却流体の流量をバルブにより調節すること、及び前記循環路に流れる冷却流体をヒータにより加熱することの少なくとも一方を実施するステップと、
前記流量調節及び加熱の少なくとも一方を実施された冷却流体によって冷却又は加熱される前記加速管の加速管温度を測定するステップと、
予め定められた前記加速管温度の目標値と前記加速管温度の測定値とが異なる場合、前記加速管温度の測定値を前記目標値と等しくするように、前記入口温度の設定値を変更するステップと
を含む加速管の温度管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子を加速するように構成された加速管と該加速管を一定温度に維持するように構成された冷却装置とを備える加速器に関する。また、本発明は、荷電粒子を加速するように構成された加速管の温度管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子核、素粒子等の研究、陽電子断層撮影(PET、Positron Emission Tomography)、癌放射線治療、人為的な遺伝子変異の発生、放射性廃棄物の無害化等のような様々な目的のために、荷電粒子を加速するための加速器が用いられている。加速器においては、その加速管に高周波電力を入力することによって加速管内に高周波の電磁場を生成し、生成された高周波の電磁場で荷電粒子を加速している。このような加速管の性能を維持するためには、加速管が高い寸法精度を有する必要がある。しかしながら、高周波電力を入力した際には、加速管を構成する周壁表面の電気抵抗によって加速管に熱が発生し、その結果、熱膨張によって加速管の寸法が変化し、加速管の性能が低下するおそれがある。そのため、加速器には、加速管を一定温度に維持するための冷却装置が設けられている。
【0003】
従来の冷却装置においては、例えば、特許文献1に開示されるように、冷却流体を通過可能とする流路が加速管の周壁に設けられ、この流路を流れる冷却流体によって加速管が一定温度に維持されており、流路の入口を通過する冷却流体の入口温度が一定となるように制御されている。このような加速管を確実に一定温度に維持するために、流路の入口を通過する冷却流体の入口温度と流路の出口を通過する冷却流体の出口温度との温度差を低く抑えることが要求されている。
【0004】
さらに近年では、加速器の利用が活発になり、加速器においては、荷電粒子の量を増加させることが要求されている。しかしながら、荷電粒子の量を増加させた場合、加速管に入力する高周波電力を増加させる必要があり、これによって、加速管の発熱量が増加することとなる。ここで、冷却流体により一定温度に維持される加速管の発熱量Pと、冷却流体の流量Qと、冷却流体の比熱Cと、冷却流体の温度変化ΔTとの関係は、下記(式1)のようになる。
【0005】
【数1】
【0006】
上記(式1)によれば、加速管の発熱量が増加した場合、冷却流体の流量を増加させる必要がある。例えば、従来のRFQ(Radio Frequency Quadrupole)型の加速器においては、加速管の温度変化を1℃以内に抑えるために、発熱量を16kWとする加速管に対して、流量を300l/minとするように冷却流体を流している。同様のRFQ型の加速器において加速管の発熱量を60kWとした場合、加速管の温度変化を1℃以内に抑えるためには、流量を1125l/minとするように冷却流体を流す必要がある。また、一般的には、冷却流体の流速は1m/sec〜3m/secとされていることに対して、上述のように冷却流体の流量を1125l/minとした場合、冷却流体の流速は約9m/secとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−221138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、発熱量を増加させた加速管において、冷却流体の入口温度と出口温度との温度差を低く抑えるように冷却流体の流量を増加させ、かつ冷却流体の流速を増加させた場合、冷却流体によって流路が浸食され易くなって、加速管を作製することが難しくなる。例えば、上述したRFQ型の加速管のように、冷却流体の流量を1125l/minに増加させ、かつ冷却流体の流速を約9m/secに増加させた場合、加速管の流路が著しく浸食される。そのため、上述のように発熱量を60kWとする加速管を作製することが困難となっている。また、冷却流体の流速を増加させずに冷却流体の流量を増加させる場合、加速管の流路の数を増加させること、及び加速管の流路の横断面積を増加させることが必要になり、加速管を冷却するための構造が複雑になって、加速管を作製することが難しくなる。さらに、冷却流体の流量を増加させるためには、大容量のポンプを用いること等が必要となり、その結果、加速器が大型化し、かつ加速器の製造コストが増加するという問題がある。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、発熱量の増加した加速管を、冷却流体の流量を増加させずに一定温度に維持可能とする加速器、及び加速管の温度管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するために、本発明の一態様に係る加速器は、荷電粒子を加速するように構成された加速管と、前記加速管を一定温度に維持するように構成された冷却装置とを備え、前記冷却装置が、前記加速管に配置されると共に前記加速管を一定温度に維持するために冷却流体を流すように構成された冷却路と、前記冷却路の入口及び出口間を連結すると共に冷却流体を流すように構成された循環路と、前記循環路に配置されると共に冷却流体の流量を調節するように構成されたバルブと、前記循環路に配置されると共に冷却流体を加熱するように構成されたヒータと、前記バルブ及び前記ヒータを制御可能とするように構成された制御部とを有している、加速器であって、前記冷却路の入口を通過する冷却流体の入口温度と前記冷却路の出口を通過する冷却流体の出口温度との温度差を許容しながら前記加速管への入力電力に基づいて前記入口温度の設定値が定められ、前記制御部が、前記入口温度の設定値に基づいて、前記加速管を一定温度に維持するように前記バルブ及び前記ヒータの少なくとも一方を制御する構成となっている。
【0011】
本発明の一態様に係る加速器では、前記冷却装置が、前記入口温度を測定するように構成された入口温度検出部と、前記加速管に取付けられると共に前記加速管の加速管温度を測定するように構成された加速管温度検出部とをさらに有し、前記入口温度の設定値と、前記入口温度検出部により測定された前記入口温度の測定値とが異なる場合、前記制御部が、前記入口温度の測定値を前記設定値と等しくするように前記バルブ及び前記ヒータの少なくとも一方を制御する構成になっており、予め定められた前記加速管温度の目標値と、前記加速管温度検出部によって測定された前記加速管温度の測定値とが異なる場合、前記制御部が、前記加速管温度の測定値を前記目標値と等しくするように前記入口温度の設定値を変更する構成になっている。
【0012】
本発明の一態様に係る加速器では、前記冷却装置が、2つの前記バルブと、前記循環路に配置されると共に冷却流体を冷却するように構成された熱交換器と、前記循環路に配置されると共に冷却流体を貯蔵するように構成されたタンクと、前記循環路に配置されると共に冷却流体を前記加速管の冷却路に送るように構成されたポンプとをさらに有し、前記タンクが前記冷却路の出口の下流に位置し、前記ポンプが前記タンクの下流に位置し、前記ヒータが前記ポンプの下流に位置し、前記循環路が前記冷却路の出口と前記タンクとの間に2つの分流路部を有し、前記2つの分流路部の一方に、前記熱交換器及び前記2つのバルブの一方が位置し、前記2つの分流路部の他方に、前記2つのバルブの他方が位置しており、前記入口温度の設定値と前記入口温度の測定値とが異なる場合、前記入口温度の設定値と測定値との差異に基づいて前記入口温度の測定値が前記設定値と等しくなるように、前記制御部が前記熱交換器及び前記ポンプをさらに制御できるように構成されている。
【0013】
本発明の一態様に係る加速管の温度管理方法は、荷電粒子を加速する加速管に配置された冷却路に流れる冷却流体によって、前記加速管を一定温度に維持する加速管の温度管理方法であって、前記加速管への入力電力に基づいて前記冷却路の入口を通過する冷却流体の入口温度の設定値を定めるステップと、前記冷却流体の入口温度を測定するステップと、前記入口温度の設定値と前記入口温度の測定値とが異なる場合、前記入口温度の測定値を前記設定値と等しくするように、前記冷却路の入口及び出口間を連結する循環路に流れる冷却流体の流量をバルブにより調節すること、及び前記循環路に流れる冷却流体をヒータにより加熱することの少なくとも一方を実施するステップと、前記流量調節及び加熱の少なくとも一方を実施された冷却流体によって冷却又は加熱される前記加速管の加速管温度を測定するステップと、予め定められた前記加速管温度の目標値と前記加速管温度の測定値とが異なる場合、前記加速管温度の測定値を前記目標値と等しくするように、前記入口温度の設定値を変更するステップとを含んでいる。
【0014】
そのため、冷却流体の入口温度と出口温度との温度差を従来の温度差と比較して大きくした状態においても、上述のように冷却流体の入口温度を管理することによって、加速管温度の測定値を加速管温度の目標値と等しくし、加速管を確実に一定温度に維持することができる。このような構成においては、冷却流体の入口温度と出口温度との温度差を抑えるために、冷却流体の流量を増加させる必要がない。よって、発熱量の増加した加速管を、冷却流体の流量を増加させずに一定温度に維持することができる。また、冷却流体の流量を増加させる必要がないことによって、加速管の流路の数を増加させる必要がなくなり、加速管の流路の横断面積を増加させる必要がなくなり、かつ大容量のポンプを用いる必要がなくなる。よって、付随的な効果として、加速器の大型化を防止でき、かつ加速器の製造コストの増加を防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様に係る加速器、及び加速管の温度管理方法によれば、発熱量の増加した加速管を、冷却流体の流量を増加させずに一定温度に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る加速器を示す模式図である。
図2】加速管を一定温度に維持しない状態における加速管の入力電力と加速管温度との関係を示す図である。
図3】本発明の実施形態において、加速管の入力電力に対する冷却水の入口温度の設定値及び加速管温度の目標値の関係を示す図である。
図4】本発明の実施形態において、冷却水の入口温度の変化量と加速管温度の変化量との関係を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る加速管の温度管理方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る加速器、及び加速管の温度管理方法について以下に説明する。最初に、本実施形態に係る加速器について説明する。図1に示すように、加速器1は、荷電粒子を加速する加速管2を備えている。加速管2は、該加速管2に入力される電力(以下、「入力電力」という)Pを増加させることによって、荷電粒子の量を増加可能とするように構成されている。
【0018】
加速器1は、加速管2を一定温度に維持する冷却装置3を備えている。冷却装置3は、加速管2に配置された冷却路4を有しており、この冷却路4に冷却流体を流すことによって、加速管2が一定温度に維持されるようになっている。冷却装置3は、冷却流体を流入させる冷却路4の入口4aと冷却流体を流出させる冷却路4の出口4bとの間で冷却水を循環させるように、冷却路4の入口4aと冷却路4の出口4bとを連結する循環路5を有している。
【0019】
循環路5は、冷却路4の出口4bから分流する2つの分流路部5a,5bとして第1の分流路部5aと第2の分流路部5bとを有している。第1の分流路部5a及び第2の分流路部5bには、それぞれ第1のバルブ6及び第2のバルブ7が設けられており、第1のバルブ6及び第2のバルブ7は、それぞれ循環路5の第1の分流路部5a及び第2の分流路部5bに流れる冷却流体の流量を調節可能とするように構成されている。さらに、第1の分流路5bには熱交換器8が設けられ、熱交換器8は第1のバルブ6の下流に配置されている。第1の分流路部5a及び第2の分流路部5bの下流側端は、タンク9に接続されている。タンク9は、循環路5に流れる冷却流体を貯蔵可能とするように構成されており、タンク9に貯蔵された冷却流体は一定時間経過後には設定温度に維持されることとなる。
【0020】
循環路5は、加速管2の冷却路4の出口4bとタンク9とを連結する主流路部5cを有している。主流路部5cには、ヒータ10及びポンプ11が設けられており、ヒータ10は主流路部5cに流れる冷却流体を加熱するように構成され、ポンプ11は主流路部5cに流れる冷却流体を所定の圧力で加速管2の冷却路4に送るように構成されている。ポンプ11はタンク9の下流に位置しており、ヒータ10は当該ポンプ11の下流に位置している。
【0021】
加速管2の冷却路4の入口4aには入口温度検出部12が配置されており、入口温度検出部12は、冷却路4の入口4aを通過する冷却流体の温度(以下、「入口温度」という)T1を測定するように構成されている。加速管2には加速管温度検出部13が取付けられ、加速管温度検出部13は加速管2の温度(以下、「加速管温度」という)T2を測定するように構成されている。
【0022】
冷却装置3は、循環路5、第1のバルブ6、第2のバルブ7、熱交換器8、タンク9、ヒータ10、ポンプ11、入口温度検出部12、及び加速管温度検出部13に電気的に接続された制御部14を有している。制御部14は、加速管2の入力電力Pを認識可能とするように構成されている。制御部14は、予め定められた加速管温度T2の目標値を記憶可能に構成されている。制御部14は、予め定められた加速管温度T2の目標値を達成するように、加速管2の入力電力Pに基づいて入口温度T1の設定値を定める構成になっている。ここで、加速管2の入力電力Pと入口温度T1の設定値との関係について説明する。図2にて実線R1により示すように、加速管2を一定温度に維持しない状態では、縦軸の加速管温度T2は横軸の入力電力Pの増加に比例して増加する。このような関係に基づいて、図3にて破線B1により示すように、横軸の入力電力Pに対する縦軸の予め定められた加速管温度T2の目標値を達成すべく、図3にて実線R2により示すように、縦軸の入口温度T1の設定値は横軸の入力電力Pの増加に比例して低くなるように設定されている。
【0023】
さらに、制御部14は、入口温度検出部12により測定された冷却流体の入口温度T1を識別可能に構成されている。制御部14は、加速管温度検出部13により測定された加速管温度T2を識別可能に構成されている。
【0024】
制御部14は、第1の分流路部5a及び第2の分流路部5bに流れる冷却流体の流量を調節するように、第1のバルブ6及び第2のバルブ7を制御する構成になっている。制御部14は、第1の分流路部5aに流れる冷却流体を冷却する温度を調節するように、熱交換器8を制御する構成になっている。制御部14は、主流路部5cに流れる冷却流体を加熱する温度を調節するように、ヒータ10を制御する構成になっている。制御部14は、主流路部5cに流れる冷却流体を加速管2の冷却路4に送る圧力を調節するように、ポンプ11を制御する構成になっている。
【0025】
制御部14は、入口温度T1の設定値と測定値とが異なる場合、入口温度T1の設定値と測定値との差異に基づいて入口温度T1の測定値が設定値と等しくなるように、第1のバルブ6、第2のバルブ7、熱交換器8、ヒータ10、及びポンプ11の少なくとも1つを制御する構成になっている。例えば、入口温度T1の測定値が入口温度T1の設定値より大きい場合、第1のバルブ6を開き、かつ第2のバルブ7を閉じた状態で、熱交換器8によって冷却流体を冷却する温度を低くしてもよく、また、第1のバルブ6により冷却流体の流量を増加させてもよい。第1のバルブ6を閉じ、かつ第2のバルブ7を開いた状態で、第2のバルブ7により冷却流体の流量を増加させてもよい。ヒータ10によって冷却流体を加熱する温度を低くしてもよい。ポンプ11によって冷却流体を送る圧力を増加させて、冷却流体の流量を増加させてもよい。
【0026】
その一方で、例えば、入口温度T1の測定値が入口温度T1の設定値より小さい場合、第1のバルブ6を開き、かつ第2のバルブ7を閉じた状態で、熱交換器8によって冷却流体を冷却する温度を高くしてもよく、または、第1のバルブ6により冷却流体の流量を減少させてもよい。第1のバルブ6を開き、かつ第2のバルブ7を閉じた状態から、第1のバルブ6を閉じ、かつ第2のバルブ7を開いた状態に変更することによって、熱交換器8によって冷却流体を冷却せずに、冷却流体を第2の分流路部5bのみに通過させてもよい。第1のバルブ6を閉じ、かつ第2のバルブ7を開いた状態で、第2のバルブ7により冷却流体の流量を減少させてもよい。ヒータ10によって冷却流体を加熱する温度を高くしてもよい。ポンプ11によって冷却流体を送る圧力を低下させて、冷却流体の流量を減少させてもよい。
【0027】
制御部14は、加速管温度T2の目標値と測定値とが異なる場合、加速管温度T2の目標値と測定値との差異に基づいて加速管温度T2の測定値が目標値と等しくなるように、入口温度T1の設定値が変更される構成になっている。ここで、入口温度T1の変化量(以下、「入口温度変化量」という)ΔT1と加速管温度T2の変化量(以下、「加速管温度変化量」という)ΔT2との関係については、図4にて実線R3により示すように、縦軸の加速管温度変化量ΔT2は横軸の入口温度変化量ΔT1に比例するようになっている。このような関係を用いて、上述のように入口温度T1の設定値が変更されることとなる。
【0028】
本実施形態に係る加速管2の温度管理方法について、図5のフローチャートを参照して説明する。作業開始(START)の後に、加速管温度T2の目標値を予め設定する(ステップ1、S1)。加速管2への入力電力Pを認識する(ステップ2、S2)。図3に示した入力電力Pと入口温度T1の設定値との関係を用いて、予め定められた加速管温度T2の目標値を達成するように、入力電力Pに基づいて入口温度T1の設定値を定める(ステップ3、S3)。入口温度検出部12によって冷却流体の入口温度T1を測定する(ステップ4、S4)。
【0029】
次に、入口温度T1の設定値と測定値とが等しいか否かを判定する(ステップ5、S5)。入口温度T1の設定値と測定値とが異なる場合(NO)、入口温度T1の設定値と測定値との差異に基づいて入口温度T1の測定値が設定値に調節されるように、第1のバルブ6、第2のバルブ7、熱交換器8、ヒータ10、及びポンプ11の少なくとも1つを制御する(ステップ6、S6)。その後、冷却流体の入口温度T1を測定するステップ(S4)に戻る。入口温度T1の設定値と測定値とが等しい場合(YES)、加速管温度検出部13によって加速管温度T2を測定する(ステップ7、S7)。
【0030】
さらに、加速管温度T2の測定値が安定しているか否かを判定する(ステップ8、S8)。加速管温度T2の測定値が不安定である場合(NO)、冷却流体の入口温度T1を測定するステップ(S4)に戻る。加速管温度T2の測定値が安定している場合(YES)、加速管温度T2の目標値と測定値とが等しいか否かを判定する(ステップ9、S9)。加速管温度T2の目標値と測定値とが異なる場合(NO)、加速管温度T2の目標値と測定値との差異に基づいて加速管温度T2の測定値が目標値に調節されるように、入口温度T1の設定値を変更する(ステップ10、S10)。その後、冷却流体の入口温度T1を測定するステップ(S4)に戻る。加速管温度T2の目標値と測定値とが等しい場合(YES)、加速器1の稼働状況に基づいて上述の制御を継続するか否かを判断する(ステップ11、S11)。制御を継続する場合(YES)、加速管2への入力電力Pを認識するステップ(S2)に戻る。制御を継続しない場合(NO)、作業を終了する(END)。
【0031】
制御を継続するか否かの判断基準は、一例として、加速器1の起動直後の状況、加速器1が連続的に稼働し続けている状況等の場合には、制御を継続すると判断し、その一方で、加速器1が停止している状況では、制御を継続しないと判断するとよい。
【0032】
なお、一例として、本実施形態に係る加速器1、及び加速管2の温度管理方法においては、加速管2を確実に一定に維持することを考慮すると、冷却流体の入口温度T1と、加速管2の冷却路4の出口4bを通過する冷却流体の出口温度T3との温度差(=T3−T1)を10℃以下の範囲にすると好ましい。
【0033】
以上、本実施形態によれば、冷却流体の入口温度T1と出口温度T3との温度差を従来の温度差と比較して大きくした状態においても、上述のように冷却流体の入口温度T1を管理することによって、加速管温度T2の測定値を加速管温度T2の目標値と等しくし、加速管2を確実に一定に維持することができる。このような構成においては、冷却流体の入口温度T1と出口温度T3との温度差を抑えるために、冷却流体の流量を増加させる必要がない。よって、本実施形態によれば、発熱量の増加した加速管2を、冷却流体の流量を増加させずに一定に維持することができる。また、冷却流体の流量を増加させる必要がないことによって、加速管2の冷却路4の数を増加させる必要がなくなり、加速管2の冷却路4の横断面積を増加させる必要がなくなり、かつ大容量のポンプを用いる必要がなくなる。よって、付随的な効果として、加速器1の大型化を防止でき、かつ加速器1の製造コストの増加を防止できる。
【0034】
ここまで本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0035】
例えば、本発明の第1変形例として、第1のバルブ6及び熱交換器8を含む第1の分流路部5a、並びに第2のバルブ7を含む第2の分流路部5bのうち第1の分流路5aのみが設けられていてもよい。
【0036】
本発明の第2変形例として、第1のバルブ6及び熱交換器8を含む第1の分流路部5a、並びに第2のバルブ7を含む第2の分流路部5bのうち第2の分流路部5bのみが設けられていてもよい。この場合、熱交換器8は、主流路部5cにおけるタンク9とヒータ10との間に設けられていてもよい。
【0037】
[実施例]
本発明の実施例について説明する。本実施例においては、本実施形態に係る加速管2の温度管理方法を用いて、本実施形態に係る加速器1に設けられた加速管2を一定に維持する。加速管2の発熱量は60kWとなっている。このような本実施例においては、冷却流体の入口温度T1と出口温度T3との温度差(=T3−T1)を10℃とした状態で、冷却流体の流量を90l/minとすることによって、加速管温度T2の変化を1℃以内に抑えることができる。よって、本実施例において、冷却流体の流量を従来の流量と比較して増加させずに発熱量の増加した加速管2を一定に維持できる。
【符号の説明】
【0038】
1 加速器
2 加速管
3 冷却装置
4 冷却路
4a 入口
4b 出口
5 循環路
5a 第1の分流路部
5b 第2の分流路部
5c 主流路部
6 第1のバルブ
7 第2のバルブ
8 熱交換器
9 タンク
10 ヒータ
11 ポンプ
12 入口温度検出部
13 加速管温度検出部
14 制御部
P 入力電力
T1 入口温度
T2 加速管温度
ΔT1 入口温度変化量
ΔT2 加速管温度変化量
R1,R2,R3 実線
B1 破線
S1〜S11 ステップ1〜ステップ11
図1
図2
図3
図4
図5