【実施例】
【0034】
本実施例により、本発明の具体例を示す。本実施例は、本発明の理解を容易にすることを目的とするものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0035】
[試験例1]炭素数4又は5のアルコールに関する検討
甘味料及び炭素数4又は5のアルコールを含有する、非炭酸飲料を調製し、醸造酒感及び、飲料の化学薬品様の臭いについて、官能試験を行った。
【0036】
アセスルファムカリウム及びスクラロースを以下に示す濃度で配合し、アルコールの含有量が0(v/v)%かつ非炭酸の水溶液を調製した(表1)。
【0037】
【表1】
【0038】
上記のように調製した水溶液に、炭素数4又は5のアルコールを30ppm〜400ppmとなるように更に配合し、飲料を調製した。当該飲料を官能試験に供した。飲料の醸造酒感について、専門パネルが7段階で採点した。平均点を算出し、平均点が4(++)以上の場合に醸造酒感があると評価した(表2)。飲料の化学薬品様の臭いについても、専門のパネルが7段階で採点し、平均点を算出した。平均点3以下(+)の場合に化学薬品の臭い抑制されていると評価した(表2)。なお、アセスルファムカリウム及びスクラロースとも、後述する甘味度は共に1とし、飲料としては甘味度は2である。
【0039】
【表2】
【0040】
炭素数4又は5のアルコールの一例として、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、又は2−メチル−1−ブタノールを含有する飲料の結果を示す(表3〜5)。
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
表3の結果に関し、3−メチル−1−ブタノールを30ppm含有する飲料では、醸造酒らしい味が乏しく、醸造酒感は少ししか感じられなかった。3−メチル−1−ブタノールを50ppm含有する飲料では、30ppmを含有する飲料に比べると醸造酒らしい味の厚みが感じられるようになり、醸造酒感が改善した。3−メチル−1−ブタノールを80ppm〜260ppm含有する飲料では、醸造酒らしい味の深み、ふくらみ、余韻が感じられ、醸造酒感が好ましいと評価された。3−メチル−1−ブタノールを300ppm含有する飲料では、醸造酒らしい味わいはあるが、化学薬品様の臭いが感じられた。3−メチル−1−ブタノールを400ppm含有する飲料では、化学薬品様の臭いが強くなり、醸造酒感を感じることができないと評価された。
【0045】
表4の結果に関し、2−メチル−1−プロパノールを30ppm含有する飲料では、醸造酒らしい味に乏しく、醸造酒感は感じられなかった。2−メチル−1−プロパノールを50ppm〜200ppm含有する飲料では、30ppmを含有する飲料に比べ、醸造酒感が感じられるが、十分ではなかった。2−メチル−1−プロパノールを100ppm以上含有する飲料では、化学薬品様の臭いが目立つようになり、醸造酒感を感じることができないと評価された。
【0046】
表5の結果に関し、2−メチル−1−ブタノールを30ppm含有する飲料では、果肉を煮詰めたような甘い香りがあり、少しではあるが、醸造酒感が感じられた。2−メチル−1−ブタノールを50ppm〜100ppm含有する飲料では、30ppmを含有する飲料に比べ、醸造酒感が強いと感じられたが、不十分であった。2−メチル−1−ブタノールを100ppmより多く含有する飲料では、人工的又は化学薬品様の臭いが目立つようになり、醸造酒感を感じることができなかった。特に、2−メチル−1−ブタノールを200ppm以上含有する飲料では、シンナー様の香りが強くなり、醸造酒感を感じることができないと評価された。
【0047】
2−メチル−1−プロパノール及び2−メチル−1−ブタノールに関する結果(表4及び5)に示されるように、炭素数4又は5のアルコールを単独で、アセスルファムカリウム及びスクラロースを含有する飲料に配合することによって、化学薬品様の臭いを抑制しつつ、十分な醸造酒感を飲料に付与することは一般に困難であることが示唆された。これに対し、3−メチル−1−ブタノールを単独で、アセスルファムカリウム及びスクラロースを含有する飲料に配合した場合、化学薬品様の臭いの抑制と十分な醸造酒感の付与が両立した飲料が得られることが示された。アセスルファムカリウム及びスクラロースを含有する飲料において、3−メチル−1−ブタノールは、80ppm〜260ppmの含有量で効果を発揮するが、好ましくは100ppm〜200ppmの含有量でより高い効果を発揮することが示唆された。
【0048】
また、(A)3−メチル−1−ブタノールと(B)アセスルファムカリウムの重量比と効果の関係についてみると、(A)/(B)が0.7〜5.5で効果を発揮し、好ましくは1.8〜4.5でより高い効果を発揮することが示唆された。そして、(A)3−メチル−1−ブタノールと(C)スクラロースの重量比と効果の関係についてみると、(A)/(C)が2〜15で効果を発揮し、好ましくは5〜13でより高い効果を発揮することが示唆された。
【0049】
3−メチル−1−ブタノールの含有量の上限が、単独使用では5ppm、収斂味付与物質との組合せにおいてさえも100ppmであった従来技術に鑑みれば、本発明による上記のような効果は、全くの予想外であった。
[試験例2]甘味料に関する検討
飲料の化学薬品様の臭い及び醸造酒感について、3−メチル−1−ブタノールとの組合せにおける、甘味料の効果について検討した。
【0050】
3−メチル−1−ブタノールの含有量が200ppmとなるように香料を配合し、アルコールの含有量が0(v/v)%の非炭酸の水溶液を調製した(表6)。
【0051】
【表6】
【0052】
上記のように調製した水溶液に、甘味料を添加し、飲料を調製した。飲料の甘味度がショ糖換算で約4になるように、甘味料を添加した。当該飲料の醸造酒感を官能試験に供した。官能試験は、試験例1に記載した方法に従った。甘味料に関して行った数多くの試験の一例として、
・砂糖(ショ糖)
・液糖
・アセスルファムカリウム
・スクラロース
・スクラロースとアセスルファムカリウムの組合せ、
・アスパルテーム、及び
・ネオテーム
を配合した飲料についての結果を示す(表7)。なお、各甘味料の飲料100g当たりの添加量を表中の括弧内に示した。
【0053】
【表7】
【0054】
甘味料を配合しない飲料では、化学薬品様の臭いが目立ち、醸造酒感は感じられなかった。砂糖(ショ糖)を含有する飲料では、化学薬品様の臭いがすることに加え、甘さが強調され醸造酒感は感じられなかった。更に、甘味と雑味を一体的に感じることができなかった。液糖を含有する飲料においても、砂糖を配合した場合と同様の評価となった。アスパルテームを含有する飲料では、化学薬品様の臭いがすることに加え、甘味と3−メチル−1−ブタノールの味わいが分離して感じられ、醸造酒感を感じることはできなかった。ネオテームを含有する飲料では、化学薬品様の臭いがすることに加え、味わいが平坦になり、醸造酒で感じられる味のふくらみが感じられないと評価された。
【0055】
一方、アセスルファムカリウム、スクラロース、及びこれらの組合せによって、飲料の化学薬品様の臭いが顕著に抑制され、かつ醸造酒感が顕著に増強されることが示唆された。より詳細にみると、アセスルファムカリウムを配合した飲料では、全体的に良好な醸造酒感が感じられた。当該甘味料に起因する苦味や特有の甘みにより、化学薬品様の臭いや味わいがマスキングされ、良好な醸造酒感が得られることが示唆される。そして、スクラロースを含有する飲料では、醸造酒で感じられる複雑な味わいが感じられると評価された。更に、アセスルファムカリウムとスクラロースを含有する飲料では、人工的な味わいがなくなり、自然な味わいになることが示唆された。
【0056】
以上より、甘味料と3−メチル−1−ブタノールを組合せたとしても、一般に、化学薬品様の臭いを抑制しつつ、十分な醸造酒感を飲料に付与することはできないことが示唆されるが、特定の甘味料:アセスルファムカリウム及び/又はスクラロースを含有することにより、化学薬品様の臭いの顕著な抑制と十分な醸造酒感の付与が両立された飲料が得られることが示された。また、アセスルファムカリウムとスクラロースを組合せて飲料に配合することによって、自然な味わいが感じられるようになり、醸造酒感が更に好ましくなることが示された。このような特定の甘味料と3−メチル−1−ブタノールの組合せによる効果は、全くの予想外であった。
【0057】
[試験例3]アセスルファムカリウム及びスクラロースの含有量の検討
飲料の醸造酒感について、3−メチル−1−ブタノールとの組合せにおける、アセスルファムカリウム及びスクラロースの含有量について検討した。
【0058】
3−メチル−1−ブタノールの含有量が200ppmになるように香料を配合し、更にアセスルファムカリウムとスクラロースを配合し、アルコールの含有量が0(v/v)%の非炭酸の水溶液を調製した(表8)。
【0059】
【表8】
【0060】
アセスルファムカリウムとスクラロースは、1:1の甘味度比で添加し、飲料の甘味度をショ糖換算で0.4〜20に調整した。当該飲料の醸造酒感を官能試験に供した。官能試験は、試験例1に記載した方法に従った(表9)。
【0061】
【表9】
【0062】
アセスルファムカリウム及びスクラロースにより甘味度(ショ糖換算)を0.4に調整した飲料では、甘味が少なく、醸造酒感を感じにくいだけでなく、人工的な味わいが感じられると評価された。そして、甘味度を0.5〜10に調整した飲料では、自然な醸造酒感が感じられ好ましいと評価された。また、甘味度を15以上に調整した飲料では、甘さが目立つようになり、醸造酒感が低下すると評価された。
【0063】
以上より、アセスルファムカリウム及びスクラロースは、甘味度(ショ糖換算)0.5〜10、更には甘味度1〜4で飲料に配合することにより、3−メチル−1−ブタノールとの組合せにおいて、優れた効果を奏することが示唆される。この結果及び試験例2の結果より、アセスルファムカリウムとスクラロースをそれぞれ単独で3−メチル−1−ブタノールと組合せた場合においても、同様の甘味度に調整するのが好ましいことが更に示唆される。
【0064】
[試験例4]プロピレングリコールに関する検討
飲料の醸造酒感について、プロピレングリコールの効果について検討した。
【0065】
3−メチル−1−ブタノールが以下の含有量となるように香料を配合し、更にアセスルファムカリウムとスクラロースを配合し、アルコールの含有量が0(v/v)%の非炭酸の水溶液を調製した(表10)。アセスルファムカリウムとスクラロースは、1:1の甘味度比で添加し、飲料の甘味度をショ糖換算で4.0に調整した。
【0066】
【表10】
【0067】
上記のように調製した水溶液に、プロピレングリコールを0ppm〜5000ppmで添加し、飲料を調製した。当該飲料の醸造酒感を官能試験に供した。官能試験は、試験例1に記載した方法に従った(表11)。
【0068】
【表11】
【0069】
3−メチル−1−ブタノール、アセスルファムカリウム、スクラロースに加えて、プロピレングリコールを更に含有することにより、飲料に厚みが付与され、より醸造酒らしい舌触りになると評価された。プロピレングリコールによるこのような効果は、全くの予想外であった。そして、このような効果は、概ね、試験したいずれのプロピレングリコールの含有量によっても発揮されたが、5000ppmを含有する飲料では、えぐみが強くなり、醸造酒感が感じられなくなったが、含有量が1000ppm以下であれば、飲料に十分な醸造酒感を付与することが可能であり、含有量が500ppm以下であればより好ましいことが示唆された。
【0070】
[試験例5]アルコール含有量に関する検討
飲料の醸造酒感について、アルコールの含有量による効果について検討した。
【0071】
3−メチル−1−ブタノールが以下の含有量となるように香料を配合し、更にアセスルファムカリウムとスクラロースを配合し、アルコール含有量0(v/v)%の非炭酸の水溶液を調製した(表12)。
【0072】
アセスルファムカリウム及びスクラロースの含有量は、飲料の甘味度に基づいて設定することができる。例えば、本発明の飲料におけるショ糖換算の甘味度が好ましくは0.5〜12、より好ましくは0.7〜8、さらに好ましくは1〜5となるように、アセスルファムカリウム及びスクラロースの含有量を設定することができる。ここで、アセスルファムカリウム及びスクラロースはそれぞれ飲料の甘味度に寄与するため、もう一方の含有量を考慮して設定してもよい。一態様として、アセスルファムカリムにより飲料のショ糖換算の甘味度を4.0にする場合、飲料100mLあたり、アセスルファムカリウムをおよそ0.02g配合する。すなわち、200ppmとなる。同様に、スクラロースにより飲料のショ糖換算の甘味度を4.0にする場合、飲料100mLあたり、スクラロースをおよそ0.0067g配合する。すなわち、70ppmとなる。表12の水溶液については、アセスルファムカリウムとスクラロースを1:1の甘味度比で添加し、甘味度をショ糖換算で4.0に調整した。
【0073】
【表12】
【0074】
上記のように調製した水溶液に、エタノールを添加し、アルコールの含有量が0〜3%の飲料を調製した。当該飲料の醸造酒感を官能試験に供した。官能試験は、試験例1に記載した方法に従った(表13)。
【0075】
【表13】
【0076】
これまでの試験結果と一致して、エタノールを含有しない飲料においては、自然な醸造酒感が十分に感じられると評価された。エタノールを1(v/v)%で含有する飲料においては、後半に余韻のある味わいがしっかりと感じられると評価された。エタノールを2(v/v)%含有する飲料においては、エタノールに起因する香味が目立つようになり、醸造酒感が若干低下するが、十分な醸造酒感があると評価された。そして、エタノールを3(v/v)%含有する飲料では、エタノールに起因する香味がさらに強調され、醸造酒感が大きく低下すると評価された。
【0077】
以上より、エタノールの含有量が3(v/v)%未満である場合は、飲料は十分な醸造酒感を有するが、エタノールの含有量が3(v/v)%以上である場合は、醸造酒感が得られないことが示唆された。本発明は、アルコールの含有量が0(v/v)%の飲料だけでなく、アルコールの含有量が低い飲料に対して、醸造酒感を付与又は増強することに有効であることが示唆される。少なくとも、アルコール含有量が3%未満の飲料に対して有効である。
【0078】
[試験例6]果汁に関する検討
飲料の醸造酒感について、果汁の効果について検討した。
【0079】
3−メチル−1−ブタノールが以下の含有量になるように香料を配合し、更にアセスルファムカリウムとスクラロースを配合し、アルコールの含有量が0(v/v)%の非炭酸の水溶液を調製した(表14)。アセスルファムカリウムとスクラロースは、1:1の甘味度比で添加し、飲料の甘味度をショ糖換算で4.0に調整した。
【0080】
【表14】
【0081】
上記のように調製した水溶液に、果汁を添加し、果汁を含有する飲料を調製した。当該飲料の醸造酒感を官能試験に供した。官能試験は、試験例1に記載した方法に従った(表15)。
【0082】
【表15】
【0083】
試験に用いたいずれの果汁を含有する飲料においても、醸造酒感が十分に付与されつつ、各果汁に特徴的な香味を有していると評価された。以上の結果より、本発明は、果汁一般を含有する飲料に対して、醸造酒感を十分に付与することに有効であることが示唆される。
【0084】
また、醸造酒感について更に詳しく検討したところ、赤ブドウ果汁を含有する飲料は、ワインらしい味わいが特徴であり、ワインテイスト飲料を再現していた。そして、レモン果汁又は桃果汁を含有する飲料は、日本酒らしい味わいが特徴であることが示された。洋ナシ果汁、白ブドウ果汁、又はマンゴー果汁を含有する飲料は、ワインらしい味わいと日本酒らしい味わいを同程度に有することが示された。
【0085】
[試験例7]3−メチル−1−ブタノールとその他の炭素数4又は5のアルコールの組合せに関する検討
飲料の醸造酒感について、炭素数4又は5のアルコールの組合せの効果について検討した。
【0086】
アセスルファムカリウム、スクラロース、及び2−メチル−1−プロパノールを以下に示すように配合し、アルコールの含有量が0(v/v)%の非炭酸の水溶液を調製した(表16)。
【0087】
【表16】
【0088】
上記のように調製した水溶液に、3−メチル−1−ブタノールを30ppm〜400ppmとなるように配合し、飲料を調製した。当該飲料の醸造酒感を官能試験に供した。官能試験は、試験例1に記載した方法に従った(表17)。
【0089】
【表17】
【0090】
2−メチル−1−プロパノールを、3−メチル−1−ブタノール30ppmと組合せることにより、醸造酒らしいふくらみのある味わいが感じられる飲料となった。3−メチル−1−ブタノールの含有量を50ppm以上にした場合、醸造酒感はより強く感じられるようになるが、260ppm以上になると人工的な味わいが目立つようになり、醸造酒感が得られない傾向にあることが示唆された。2−メチル−1−プロパノールとの組合せにおいては、3−メチル−1−ブタノールの含有量は、30ppm〜300ppm、50ppm〜300ppm未満、50ppm〜260ppm、50ppm〜200ppmとするのが適切であることが示唆された。
【0091】
本試験の結果を試験例1の結果(特に表3及び4)と比較すると、3−メチル−1−ブタノールと2−メチル−1−プロパノールを組合せを含有する飲料は、3−メチル−1−ブタノールを単独で含有する飲料に比べて、醸造酒感が強く感じられることが示唆される。2−メチル−1−プロパノールを単独で含有する場合、醸造酒感の付与に有効でない(表4)ことを鑑みれば、当該組合せによる効果は予測外であった。更に、3−メチル−1−ブタノール50ppm〜200ppmと2−メチル−1−プロパノールの組合せにより、飲料の醸造酒感が顕著に高くなった。3−メチル−1−ブタノールと2−メチル−1−プロパノールの組合せにより奏される顕著な効果は、驚くべきものであった。
【0092】
[試験例8]3−メチル−1−ブタノールとその他の炭素数4又は5のアルコールの組合せに関する検討
飲料の醸造酒感に対する、炭素数4又は5のアルコールの組合せの効果について検討した。
【0093】
アセスルファムカリウム、スクラロース、及び2−メチル−1−ブタノールを以下に示すように配合し、アルコール含有量が0(v/v)%の非炭酸の水溶液を調製した(表18)。
【0094】
【表18】
【0095】
上記のように調製した水溶液に、3−メチル−1−ブタノールエタノールを30ppm〜400ppmとなるように配合し、飲料を調製した。当該飲料の醸造酒感を官能試験に供した。官能試験は、試験例1に記載した方法に従った(表19)。
【0096】
【表19】
【0097】
2−メチル−1−ブタノールを、3−メチル−1−ブタノール30ppmと組合せることにより、醸造酒らしいふくらみのある味わいが感じられる飲料となった。3−メチル−1−ブタノールの含有量を50ppm以上にした場合、醸造酒感はより強く感じられるようになるが、260ppm以上になると人工的な味わいが目立つようになり、醸造酒感が低下する傾向にあることが示唆された。2−メチル−1−ブタノールとの組合せにおいては、3−メチル−1−ブタノールの含有量は、50ppm〜260ppm、50ppm〜200ppmとするのが適切であることが示唆された。
【0098】
本試験の結果を試験例1の結果(特に表3及び5)と比較すると、3−メチル−1−ブタノールと2−メチル−1−ブタノールを組合せを含有する飲料は、3−メチル−1−ブタノールを単独で含有する飲料に比べて、醸造酒感が強く感じられることが示唆される。2−メチル−1−ブタノールを単独で含有する場合、醸造酒感の付与に有効でない(表5)ことを鑑みれば、当該組合せによる効果は予測外であった。更に、3−メチル−1−ブタノール50ppm〜200ppmと2−メチル−1−ブタノールの組合せにより、飲料の醸造酒感が顕著に高くなった。3−メチル−1−ブタノールと2−メチル−1−ブタノールの組合せにより奏される顕著な効果は、驚くべきものであった。
【0099】
[試験例9]3−メチル−1−ブタノールとその他の炭素数4又は5のアルコールの組合せに関する検討
アセスルファムカリム、スクラロース、及び3−メチル−1−ブタノールに加え、果汁を含有する、アルコール含有量が0(v/v)%の炭酸飲料を製造した。ここで、果汁として、赤ブドウ果汁、白ブドウ果汁、及びグレープフルーツ果汁を用いた。当該飲料の醸造酒感を官能試験に供した。官能試験は、試験例1に記載した方法に従った(表20)。
【0100】
【表20】
【0101】
【表21】
【0102】
試験したいずれの飲料においても、醸造酒感が十分に付与されつつ、各果汁に特徴的な香味を有していると評価された(表21)。以上より、本件発明は、炭酸飲料に対しても醸造酒感を付与又は増強できることが示された。また、醸造酒感について更に詳しく検討したところ、赤ブドウ果汁又は白ブドウ果汁を含有する飲料は、ワインらしい味わいが特徴であり、ワインテイスト飲料を再現していた。そして、グレープフルーツ果汁を含有する飲料は、日本酒らしい味わいが特徴であることが示された。