特開2016-185140(P2016-185140A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-185140(P2016-185140A)
(43)【公開日】2016年10月27日
(54)【発明の名称】酒らしい味わいが増強された飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20160930BHJP
【FI】
   A23L2/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-67736(P2015-67736)
(22)【出願日】2015年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】西井 まゆ佳
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐美
(72)【発明者】
【氏名】梶 悟
【テーマコード(参考)】
4B017
4B117
【Fターム(参考)】
4B017LC02
4B017LG04
4B017LK06
4B017LK07
4B017LK12
4B017LL02
4B117LC02
4B117LC03
4B117LG05
4B117LK06
4B117LK07
4B117LK12
4B117LL02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】酒らしい味わい、特に醸造酒感が付与又は増強されながら、化学薬品様の臭いが抑制された、アルコール含有量が非常に低い又はアルコールを実質的に含まない新規な飲料の提供。
【解決手段】(A)3−メチル−1−ブタノール50〜280ppm、(B)アセスルファムカリウム12〜300ppm、及び/又は(C)スクラロース4〜100ppmを含有し、アルコールの含有量が3(v/v)%未満である、飲料。2−メチル−1−プロパノール及び/又は2−メチル−1−ブタノールを更に含有する飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)3−メチル−1−ブタノール 50ppm〜280ppm、
(B)アセスルファムカリウム 12ppm〜300ppm、及び/又は
(C)スクラロース 4ppm〜100ppm
を含有し、アルコールの含有量が3(v/v)%未満である、飲料。
【請求項2】
2−メチル−1−プロパノール及び/又は2−メチル−1−ブタノールをさらに含有する、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
(A)3−メチル−1−ブタノールと(B)アセスルファムカリウムの重量比[(A)/(B)]が0.7〜5.5、及び/又は
(A)3−メチル−1−ブタノールと(C)スクラロースの重量比[(A)/(C)]が2〜15
である、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項4】
果汁をさらに含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項5】
アルコールの含有量が0.00(v/v)%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項6】
プロピレングリコールをさらに含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項7】
ワインテイスト飲料又は日本酒テイスト飲料である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項8】
3−メチル−1−ブタノールを添加する工程、
アセスルファムカリウムを添加する工程、及び
スクラロースを添加する工程、
を含んでなる、アルコールの含有量が3(v/v)%未満である飲料の製造方法であって、該飲料が、
(A)3−メチル−1−ブタノール 50ppm〜280ppm、
(B)アセスルファムカリウム 12ppm〜300ppm、及び/又は
(C)スクラロース 4ppm〜100ppm
を含有し、アルコールの含有量が3(v/v)%未満である、前記製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連分野】
【0001】
本発明は、酒らしい味わい、特に、醸造酒感が増強された、アルコール含有量の低い飲料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者ニーズの多様化及び健康志向の高まり等により、ビールやカクテルなどの酒類を模した、アルコール含有量が非常に低い又はアルコールを実質的に含まない飲料が人気となっている。しかし、アルコール含有量が低いがゆえに、奥行が深く幅のある酒類の風味を再現することは容易なことではない。
【0003】
従来、アルコール含有量が非常に低い又はアルコールを実質的に含まない飲料にアルコール感を付与するために、フレーバーやエキス(例、ワインエキス)を配合することが一般的に行われてきた。
【0004】
また、特許文献1には、炭素数5の脂肪族アルデヒド(2−メチルブタナール、3−メチルブタナールの少なくとも一方)を0.05〜0.5ppm、及び酢酸エステル(酢酸イソブチル、酢酸エチルの少なくとも一方)を0.05〜0.5ppm配合することにより、非アルコール飲料のアルコール感、味の厚み、及び後味を改善することが開示されている。そして、特許文献2には、炭素数4又は5の脂肪族アルコール(例えば、2−メチル−1−プロパノールや3−メチル−1−ブタノール)を1〜100mg/Lで、収斂味付与物質と合わせて配合することにより、非アルコール飲料にアルコール感を付与しつつ、炭素数4又は5の脂肪族アルコールに起因する後切れの悪さを抑制することが開示されている。これらの技術は、アルコール含有量が非常に低い又はアルコールを実質的に含まない飲料にアルコール感を付与することを目的とするものであり、酒らしい味わい、特に醸造酒感を付与し、増強するとの効果を奏するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−068610
【特許文献2】特開2012−060975
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の事情に鑑み、本発明の発明者らは、アルコールの含有量が非常に少なくても酒らしい味わい、特に醸造酒感を付与又は増強するための研究に着手し、特許文献2の開示に倣って3−メチル−1−ブタノールと収斂味付与物質を配合した非アルコール飲料を調製し、官能試験を実施したところ、酒らしい味わい(特に醸造酒感)が依然として不足しており、改善の余地があることを見出した。更に、3−メチル−1−ブタノールの配合量が増えるにつれて、化学薬品様の臭いが強調されることが判明し、飲料として十分満足のできる品質になっていないという新しい課題も見出した。
【0007】
本発明の課題は、酒らしい味わい、特に醸造酒感が付与又は増強されながら、化学薬品様の臭いが抑制された、アルコール含有量が非常に低い又はアルコールを実質的に含まない新規な飲料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、アルコールの含有量が非常に低い又はアルコールを実質的に含まない飲料が、特定量の3−メチル−1−ブタノールと、特定量のアセスルファムカリウム及び/又はスクラロースを含有することにより、化学薬品様の臭いが抑制されつつ、醸造酒感が付与又は増強される効果があることを突き止め、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、これらに限定されないが、以下を提供する。
【0009】
(1)(A)3−メチル−1−ブタノール 50ppm〜280ppm、(B)アセスルファムカリウム 12ppm〜300ppm、及び/又は(C)スクラロース 4ppm〜100ppmを含有し、アルコールの含有量が3(v/v)%未満である、飲料。
【0010】
(2)2−メチル−1−プロパノール及び/又は2−メチル−1−ブタノールをさらに含有する、(1)に記載の飲料。
【0011】
(3)(A)3−メチル−1−ブタノールと(B)アセスルファムカリウムの重量比[(A)/(B)]が0.7〜5.5、及び/又は(A)3−メチル−1−ブタノールと(C)スクラロースの重量比[(A)/(C)]が2〜15である、(1)又は(2)に記載の飲料。
【0012】
(4)果汁をさらに含有する、(1)〜(3)のいずれかに記載の飲料。
【0013】
(5)アルコールの含有量が0.00(v/v)%である、(1)〜(4)のいずれかに記載の飲料。
【0014】
(6)プロピレングリコールをさらに含有する、(1)〜(5)のいずれかに記載の飲料。
【0015】
(7)ワインテイスト飲料又は日本酒テイスト飲料である、(1)〜(6)のいずれかに記載の飲料。
【0016】
(8)3−メチル−1−ブタノールを添加する工程、アセスルファムカリウムを添加する工程、及びスクラロースを添加する工程を含んでなる、アルコールの含有量が3(v/v)%未満である飲料の製造方法であって、該飲料が、(A)3−メチル−1−ブタノール 50ppm〜280ppm、(B)アセスルファムカリウム 12ppm〜300ppm、及び/又は(C)スクラロース 4ppm〜100ppmを含有し、アルコールの含有量が3(v/v)%未満である、前記製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明により提供される新規な飲料においては、アルコール含有量が非常に低い又はアルコールを実質的に含まないにもかかわらず、酒らしい味わい、特に醸造酒感が付与又は増強されながら、化学薬品様の臭いが抑制される。従来技術は、アルコール感の付与を課題とするものであって、本発明が奏する効果は達成されていないし予測することもできない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<飲料>
本発明は、アルコールの含有量が少ない飲料であって、3−メチル−1−ブタノールと、アセスルファムカリウム及び/又はスクラロースを含有し、酒らしい味わい、特に醸造酒感が付与又は増強されながら、化学薬品様の臭いが抑制された、飲料を提供する。本明細書においては、このような飲料を「本発明の飲料」ということもある。
【0019】
本発明は、飲料のアルコール含有量が非常に少ない場合に効果を奏し、醸造酒感や香味のバランスの観点から、3.0(v/v)%未満が好ましく、2.0(v/v)%以下がより好ましく、1.0(v/v)%以下がさらに好ましく、0.1(v/v)%以下及び0.00(v/v)%であれば極めて好ましい。なお、飲料のアルコール含有量が3.0(v/v)%以上の場合は、アルコール自体の香味が目立ち、本発明の効果の1つである、ふくらみのある醸造酒感が感じ難くなる。ここで、アルコールの含有量が1.00(v/v)%未満の飲料は、非アルコール飲料、ノンアルコール飲料、ソフトドリンク等と呼ばれることもある。本発明の飲料がアルコールを含有する場合、アルコールの供給源は特に限定されない。本明細書において、単に「アルコール」というときは、特に断りがない限り、エタノールを意味する。そして、アルコールの含有量とは、エタノールの含有量((v/v)%)を意味し、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)に記載される方法によってアルコールの含有量を測定することができる。また、アルコールの含有量が極めて微量の場合は、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて分析することができる。本明細書においては、別段の記載がなければ、ここに例示された方法によりアルコールの含有量を測定するものとする。
【0020】
本発明の飲料は、アセスルファムカリウム及び/又はスクラロースを含有する。アセスルファムカリウムとスクラロースは、食品添加物としての使用が認められている甘味料であり、アセスルファムカリウム(分子式:CKNOS、化学名:3,4−ジヒドロ−6−メチル−3−ポタシオ−4−オキソ−1,2,3−オキサチアジン2,2−ジオキシド)はショ糖の約200倍の甘味を有する人工甘味料として知られ、そして、スクラロースはショ糖の約600倍の甘味を有する人工甘味料として知られている。甘味料に分類される成分は極めて多数存在することが知られているが、とりわけ、アセスルファムカリウム及び/又はスクラロースが3−メチル−1−ブタノールに由来する風味を増強して、酒らしい味わい、特に醸造酒感を付与するとともに、更に化学薬品様の臭いを抑制することが、本発明の発明者により初めて見出された。アセスルファムカリウム及び/又はスクラロースがこのような効果を有することは、知られておらず、かつ予想外のことであった。
【0021】
本発明の飲料において、アセスルファムカリウムの含有量は、12ppm〜300ppmが好ましく、15ppm〜250ppmがより好ましく、20ppm〜200ppmがさらに好ましい。本発明の飲料において、スクラロースの含有量は4ppm〜100ppmが好ましく、5ppm〜80ppmがより好ましく、7ppm〜50ppmがさらに好ましい。アセスルファムカリウム及びスクラロースの含有量は、下記の条件で分析及び定量することができる:
<アセスルファムカリウムの測定条件>
・カラム: Cadenza CD−C−18
・移動相: ACN/10mMギ酸アンモニウム(13/87)
・流速: 1.0ml/min
・温度: 37℃
・検出器: UV検出器(210nm)
・ 注入量: 1μL
<スクラロースの測定条件>
・カラム: Zorbax eclipse plus C18
・移動相: 5mM酢酸アンモニウム水溶液/5mM酢酸アンモニウムのアセトニトリル
(ACN)溶液の混合液(両者の比率を5/95から40/60へ15分間で変化させる)
・流速: 0.2ml/min
・温度: 40℃
・検出器: 質量検出器(タンデムマス:MS/MS、ESI(−)、m/z 395→359)
・注入量: 1μL
これらのうち、とりわけ、3−メチル−1−ブタノールが、アセスルファムカリウム及び/又はスクラロースとの組合せにおいて、化学薬品様の臭いを抑制しつつ、酒らしい味わい、特に醸造酒感を付与又は増強することは、これまでに知られていないし、予想外の事項である。本明細書において、飲料について「醸造酒感」という場合、エタノールが持つシャープな香味とは異なり、飲料時にふくらみのある味わいを感じさせることを意味する。ここで、「醸造酒」とは、原料をアルコール発酵させることにより得られる、蒸留されていない酒一般を意味する。醸造酒を例示するならば、果実を発酵させることにより得られる果実酒(ワイン、シードル等)、麦を発酵させることにより得られるビール、又は米を発酵させることにより得られる日本酒等が挙げられるが、これに限定されない。
【0022】
特許文献2に教示されるように、非アルコール飲料における3−メチル−1−ブタノールの含有量は、単独で使用する場合は5mg/L(5ppmに相当)が上限であり、収斂味付与物質(酸味付与物質:酒石酸、乳酸、酢酸、リン酸;苦味付与物質:クワシン、ナリンジン、カフェイン、イソα酸)と組合せて使用する場合においてさえ、100mg/L(100ppmに相当)が上限であることが知られている。これに関連して、植物加工食品一般に対しては、3−メチル−1−ブタノールの含有量は、10ppmが上限であることが知られている(特開2008−289430)。このように、従来の技術水準の下では、非アルコール飲料を含めた食品一般において、香味を損なうことなく使用できる3−メチル−1−ブタノールの含有量には限界があり、5ppm又は100ppm(収斂味付与物質との組合せにおいて)が上限であることが認識されていた。これに対し、本発明の飲料においては、3−メチル−1−ブタノールの含有量が50ppmを超えても化学薬品様の臭いが抑制される。即ち、本発明によれば、50ppmを超えて3−メチル−1−ブタノールを含有する場合でも、化学薬品様の臭いが抑えられ、かつ醸造酒感が増強された飲料が提供される。当該事項は、従来技術によっては達成されていなかったし、予測も困難である。よって、本発明の飲料においては、3−メチル−1−ブタノールの含有量は、50ppm〜280ppmが好ましく、80ppm〜230ppmがより好ましく、90ppm〜180ppmがさらに好ましい。
【0023】
3−メチル−1−ブタノールは、公知となっているいずれの方法によって測定することができる。例えば、3−メチル−1−ブタノールは、GC/MSを利用し、下記の条件で分析及び定量することができる。
<3−メチル−1−ブタノールの測定条件>
・カラム: IC-for amine(30m×0.32mmi.d.)
・オーブン: 40℃(5min)〜10℃/min〜110℃(0min)〜20℃/min〜280℃(9.5min)
・カラム流量: 2.5ml/min (コンスタントフロー)
・スプリット比: 1:10:00
・注入口温度: 200℃
・トランスファーライン温度 280℃
・イオン源温度 230℃
・m/z=70
本明細書において、別段の記載がなければ、当該方法により3−メチル−1−ブタノールの含有量を測定する。
【0024】
本発明の飲料は、2−メチル−1−プロパノールをさらに含有してもよい。本発明者らの検討により、2−メチル−1−プロパノールを更に含有する飲料は、醸造酒感がより強くなることが示唆されたのは予想外であった。2−メチル−1−プロパノールが、3−メチル−1−ブタノールによる醸造酒感の付与効果を増強していることが示唆される。本発明の飲料においては、発明の効果が奏される限りにおいて、2−メチル−1−プロパノールはいずれの含有量であってもよい。例えば、本発明の飲料における2−メチル−1−プロパノールの含有量は、0.1ppm〜300ppmが好ましく、10ppm〜150ppmがより好ましく、30ppm〜100ppmがさらに好ましい。2−メチル−1−プロパノールは、3−メチル−1−ブタノールと同様の分析条件で、m/z=43を指標として測定することができる。
【0025】
本発明の飲料は、2−メチル−1−ブタノールをさらに含有してもよい。本発明者らの検討により、2−メチル−1−ブタノールを更に含有する飲料は、醸造酒感がより強くなることが示唆されたのは予想外であった。2−メチル−1−ブタノールが、3−メチル−1−ブタノールによる醸造酒感の付与効果を増強していることが示唆される。本発明の飲料においては、発明の効果が奏される限りにおいて、2−メチル−1−ブタノールはいずれの含有量であってもよい。例えば、本発明の飲料における2−メチル−1−ブタノールの含有量は、0.1ppm〜300ppmが好ましく、10ppm〜150ppmがより好ましく、30ppm〜100ppmがさらに好ましい。2−メチル−1−ブタノールは、3−メチル−1−ブタノールと同様の分析条件で、m/z=70を指標として測定することができる。
【0026】
また、本発明の飲料は、2−メチル−1−プロパノールと2−メチル−1−ブタノールを共に含有してもよい。この場合にも、飲料の醸造酒感がより強くなることが、本発明者らの検討により示唆されたのは予想外である。2−メチル−1−プロパノールと2−メチル−1−ブタノールが、3−メチル−1−ブタノールによる醸造酒感の付与効果を増強していることが示唆される。本発明の飲料においては、発明の効果が奏される限りにおいて、2−メチル−1−プロパノールと2−メチル−1−ブタノールはいずれの含有量であってよく、上記したそれぞれを単独で使用する場合の含有量を参考にして設定することができる。
【0027】
また、本発明の飲料は、(A)3−メチル−1−ブタノールと(B)アセスルファムカリウムの重量比[(A)/(B)]は、0.7〜5.5が好ましく、1.8〜4.5がより好ましく、及び/又は、(A)3−メチル−1−ブタノールと(C)スクラロースの重量比[(A)/(C)]は、2〜15が好ましく、5〜13がより好ましい。
【0028】
本発明の飲料は、プロピレングリコールをさらに含有してもよい。本発明の飲料においては、発明の効果が奏される限りにおいて、プロピレングリコールの含有量をいずれの範囲に設定してもよい。例えば、本発明の飲料におけるプロピレングリコールの含有量は、0.001ppm〜1000ppmが好ましく、0.01ppm〜900ppmがより好ましく、0.1ppm〜800ppmさらに好ましい。プロピレングリコールは、公知のいずれの方法によっても測定することができる。例えば、キャピラリーカラムを用いたFID−GCや、GC/MSを利用することができる。
【0029】
本発明の飲料は、果汁をさらに含有してもよい。ここで、果汁は、本発明が効果を奏する限りにおいて、いずれの果汁であってもよい。例えば、限定されないが、レモン果汁、桃果汁、ライム果汁、洋梨果汁、ブドウ果汁、マンゴー果汁、梅果汁、ラズベリー果汁、カシス果汁、グレープフルーツ果汁等が挙げられる。一態様として、赤ブドウ果汁、黒ブドウ果汁、白ブドウ果汁のようなブドウ果汁及び/又はレモン果汁を本発明の飲料に含有している場合、その飲料は醸造酒感だけでなく、ワインらしい味わいを想起させることができる。本発明の飲料における果汁の含有量は、果汁率で規定することができる。果汁率とは、飲料中の果汁の割合をストレート果汁に換算した値をいう。例えば、果汁率200%の濃縮果汁を飲料中に10w/w%用いた場合には、果汁の果汁率は20%となる。本発明の飲料は、果汁率0.1%〜50%、0.5%〜30%、0.5%〜20%とすることができる。一態様として、飲料中のレモン果汁の果汁率は0.1%〜10%、1%〜5%とすることができる。別の態様として、飲料中の桃果汁の果汁率は0.1%〜10%、0.5%〜5%とすることができる。別の態様として、飲料中のライム果汁の果汁率は0.1%〜20%、1%〜10%とすることができる。別の態様として、飲料中の洋梨果汁の果汁率は0.1%〜10%、0.5%〜5%とすることができる。別の態様として、飲料中のブドウ果汁の果汁率は0.1%〜30%、5%〜20%とすることができる。別の態様として、飲料中のマンゴー果汁の果汁率は0.1%〜10%、0.5%〜5%とすることができる。別の態様として、飲料中の梅果汁の果汁率は0.1%〜20%、1%〜10%とすることができる。
【0030】
本発明の飲料は、炭酸飲料でなくても良いが、炭酸飲料とすることもできる。炭酸飲料とする場合、飲料中の炭酸ガスの圧力を調節することにより、炭酸飲料とすることができる。飲料の炭酸ガスの圧力は、限定されないが、例えば、0.3kgf/cm〜3.5kgf/cmが好ましく、0.8kgf/cm〜2.5kgf/cmがより好ましく、1.0kgf/cm〜2.4kgf/cmがより好ましい。炭酸ガスは、公知の方法により測定することができるが、例えば、京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA−500Aを用いて測定することができる。より具体的には、試料温度を20℃にし、当該ガスボリューム測定装置において容器内空気中のガス抜き(スニフト)、振とう後、炭酸ガス圧を測定する。本明細書において、別段の記載がない限り、試料温度を20℃とし、当該方法により炭酸ガス圧を測定する。
【0031】
本発明の飲料は、発明の効果が奏される限り、上記に記載した以外の成分をさらに含有してもよい。そのような成分とは、飲料に一般的に配合される各種添加剤を包含する。当該添加剤として、例えば、果汁、甘味料、酸味料、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定剤等を挙げることができる。
【0032】
本発明の飲料は、必要に応じて、殺菌、容器詰め等の工程を経て容器詰め飲料としてもよい。例えば、未殺菌の飲料を容器に充填した後、レトルト殺菌等の加熱殺菌を行ってもよく、飲料を殺菌した後、容器に充填してもよい。より具体的には、ペットボトル、紙パック、ガラス瓶、パウチを容器として用いる場合には、例えば、90℃〜130℃で1〜60秒保持するFP又はUHT殺菌を行うことができる。或いは、缶等の金属製の容器を用いる場合には、所定量の飲料を充填し、殺菌(例えば、64℃で10分)を行うことができる。本発明の飲料を容器詰め飲料とする場合は、ホットパック充填法又は無菌充填法のいずれを用いてもよい。また、本発明の飲料が炭酸飲料である場合、例えば液温が10℃以下となる低温充填でもよい。本発明の飲料を容器詰めにする場合、当該容器の外面、当該容器の包装資材、又は当該容器の運搬資材等に、内容物が醸造酒感を有する飲料であることを認識又は想起させるような表示を付してもよい。また、本発明の飲料を充填する容器やその他の資材を適宜選択することによっても、内容物が醸造酒感を有する飲料であることを認識又は想起させることができる。例えば、ブドウ果汁や赤色色素を含有すること等により、液色が赤色や赤紫色に近い液色を有する飲料を透明のガラス瓶に充填すれば、より赤ワインを想起させることができる。
【0033】
<飲料の製造方法>
本発明は、上記に記載した飲料の製造方法を更に提供する。該製造方法は、3−メチル−1−ブタノールを添加する工程、アセスルファムカリウムを添加する工程、及びスクラロースを添加する工程を含んでなり、更に、アルコールを添加する工程を含んでいてもよい。該方法によって製造される飲料は、(A)3−メチル−1−ブタノールを50ppm〜280ppm、(B)アセスルファムカリウムを12ppm〜300ppm、及び/又は(C)スクラロースを4ppm〜100ppm含有し、アルコールを3(v/v)%未満で含有する。
【実施例】
【0034】
本実施例により、本発明の具体例を示す。本実施例は、本発明の理解を容易にすることを目的とするものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0035】
[試験例1]炭素数4又は5のアルコールに関する検討
甘味料及び炭素数4又は5のアルコールを含有する、非炭酸飲料を調製し、醸造酒感及び、飲料の化学薬品様の臭いについて、官能試験を行った。
【0036】
アセスルファムカリウム及びスクラロースを以下に示す濃度で配合し、アルコールの含有量が0(v/v)%かつ非炭酸の水溶液を調製した(表1)。
【0037】
【表1】
【0038】
上記のように調製した水溶液に、炭素数4又は5のアルコールを30ppm〜400ppmとなるように更に配合し、飲料を調製した。当該飲料を官能試験に供した。飲料の醸造酒感について、専門パネルが7段階で採点した。平均点を算出し、平均点が4(++)以上の場合に醸造酒感があると評価した(表2)。飲料の化学薬品様の臭いについても、専門のパネルが7段階で採点し、平均点を算出した。平均点3以下(+)の場合に化学薬品の臭い抑制されていると評価した(表2)。なお、アセスルファムカリウム及びスクラロースとも、後述する甘味度は共に1とし、飲料としては甘味度は2である。
【0039】
【表2】
【0040】
炭素数4又は5のアルコールの一例として、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、又は2−メチル−1−ブタノールを含有する飲料の結果を示す(表3〜5)。
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
表3の結果に関し、3−メチル−1−ブタノールを30ppm含有する飲料では、醸造酒らしい味が乏しく、醸造酒感は少ししか感じられなかった。3−メチル−1−ブタノールを50ppm含有する飲料では、30ppmを含有する飲料に比べると醸造酒らしい味の厚みが感じられるようになり、醸造酒感が改善した。3−メチル−1−ブタノールを80ppm〜260ppm含有する飲料では、醸造酒らしい味の深み、ふくらみ、余韻が感じられ、醸造酒感が好ましいと評価された。3−メチル−1−ブタノールを300ppm含有する飲料では、醸造酒らしい味わいはあるが、化学薬品様の臭いが感じられた。3−メチル−1−ブタノールを400ppm含有する飲料では、化学薬品様の臭いが強くなり、醸造酒感を感じることができないと評価された。
【0045】
表4の結果に関し、2−メチル−1−プロパノールを30ppm含有する飲料では、醸造酒らしい味に乏しく、醸造酒感は感じられなかった。2−メチル−1−プロパノールを50ppm〜200ppm含有する飲料では、30ppmを含有する飲料に比べ、醸造酒感が感じられるが、十分ではなかった。2−メチル−1−プロパノールを100ppm以上含有する飲料では、化学薬品様の臭いが目立つようになり、醸造酒感を感じることができないと評価された。
【0046】
表5の結果に関し、2−メチル−1−ブタノールを30ppm含有する飲料では、果肉を煮詰めたような甘い香りがあり、少しではあるが、醸造酒感が感じられた。2−メチル−1−ブタノールを50ppm〜100ppm含有する飲料では、30ppmを含有する飲料に比べ、醸造酒感が強いと感じられたが、不十分であった。2−メチル−1−ブタノールを100ppmより多く含有する飲料では、人工的又は化学薬品様の臭いが目立つようになり、醸造酒感を感じることができなかった。特に、2−メチル−1−ブタノールを200ppm以上含有する飲料では、シンナー様の香りが強くなり、醸造酒感を感じることができないと評価された。
【0047】
2−メチル−1−プロパノール及び2−メチル−1−ブタノールに関する結果(表4及び5)に示されるように、炭素数4又は5のアルコールを単独で、アセスルファムカリウム及びスクラロースを含有する飲料に配合することによって、化学薬品様の臭いを抑制しつつ、十分な醸造酒感を飲料に付与することは一般に困難であることが示唆された。これに対し、3−メチル−1−ブタノールを単独で、アセスルファムカリウム及びスクラロースを含有する飲料に配合した場合、化学薬品様の臭いの抑制と十分な醸造酒感の付与が両立した飲料が得られることが示された。アセスルファムカリウム及びスクラロースを含有する飲料において、3−メチル−1−ブタノールは、80ppm〜260ppmの含有量で効果を発揮するが、好ましくは100ppm〜200ppmの含有量でより高い効果を発揮することが示唆された。
【0048】
また、(A)3−メチル−1−ブタノールと(B)アセスルファムカリウムの重量比と効果の関係についてみると、(A)/(B)が0.7〜5.5で効果を発揮し、好ましくは1.8〜4.5でより高い効果を発揮することが示唆された。そして、(A)3−メチル−1−ブタノールと(C)スクラロースの重量比と効果の関係についてみると、(A)/(C)が2〜15で効果を発揮し、好ましくは5〜13でより高い効果を発揮することが示唆された。
【0049】
3−メチル−1−ブタノールの含有量の上限が、単独使用では5ppm、収斂味付与物質との組合せにおいてさえも100ppmであった従来技術に鑑みれば、本発明による上記のような効果は、全くの予想外であった。
[試験例2]甘味料に関する検討
飲料の化学薬品様の臭い及び醸造酒感について、3−メチル−1−ブタノールとの組合せにおける、甘味料の効果について検討した。
【0050】
3−メチル−1−ブタノールの含有量が200ppmとなるように香料を配合し、アルコールの含有量が0(v/v)%の非炭酸の水溶液を調製した(表6)。
【0051】
【表6】
【0052】
上記のように調製した水溶液に、甘味料を添加し、飲料を調製した。飲料の甘味度がショ糖換算で約4になるように、甘味料を添加した。当該飲料の醸造酒感を官能試験に供した。官能試験は、試験例1に記載した方法に従った。甘味料に関して行った数多くの試験の一例として、
・砂糖(ショ糖)
・液糖
・アセスルファムカリウム
・スクラロース
・スクラロースとアセスルファムカリウムの組合せ、
・アスパルテーム、及び
・ネオテーム
を配合した飲料についての結果を示す(表7)。なお、各甘味料の飲料100g当たりの添加量を表中の括弧内に示した。
【0053】
【表7】
【0054】
甘味料を配合しない飲料では、化学薬品様の臭いが目立ち、醸造酒感は感じられなかった。砂糖(ショ糖)を含有する飲料では、化学薬品様の臭いがすることに加え、甘さが強調され醸造酒感は感じられなかった。更に、甘味と雑味を一体的に感じることができなかった。液糖を含有する飲料においても、砂糖を配合した場合と同様の評価となった。アスパルテームを含有する飲料では、化学薬品様の臭いがすることに加え、甘味と3−メチル−1−ブタノールの味わいが分離して感じられ、醸造酒感を感じることはできなかった。ネオテームを含有する飲料では、化学薬品様の臭いがすることに加え、味わいが平坦になり、醸造酒で感じられる味のふくらみが感じられないと評価された。
【0055】
一方、アセスルファムカリウム、スクラロース、及びこれらの組合せによって、飲料の化学薬品様の臭いが顕著に抑制され、かつ醸造酒感が顕著に増強されることが示唆された。より詳細にみると、アセスルファムカリウムを配合した飲料では、全体的に良好な醸造酒感が感じられた。当該甘味料に起因する苦味や特有の甘みにより、化学薬品様の臭いや味わいがマスキングされ、良好な醸造酒感が得られることが示唆される。そして、スクラロースを含有する飲料では、醸造酒で感じられる複雑な味わいが感じられると評価された。更に、アセスルファムカリウムとスクラロースを含有する飲料では、人工的な味わいがなくなり、自然な味わいになることが示唆された。
【0056】
以上より、甘味料と3−メチル−1−ブタノールを組合せたとしても、一般に、化学薬品様の臭いを抑制しつつ、十分な醸造酒感を飲料に付与することはできないことが示唆されるが、特定の甘味料:アセスルファムカリウム及び/又はスクラロースを含有することにより、化学薬品様の臭いの顕著な抑制と十分な醸造酒感の付与が両立された飲料が得られることが示された。また、アセスルファムカリウムとスクラロースを組合せて飲料に配合することによって、自然な味わいが感じられるようになり、醸造酒感が更に好ましくなることが示された。このような特定の甘味料と3−メチル−1−ブタノールの組合せによる効果は、全くの予想外であった。
【0057】
[試験例3]アセスルファムカリウム及びスクラロースの含有量の検討
飲料の醸造酒感について、3−メチル−1−ブタノールとの組合せにおける、アセスルファムカリウム及びスクラロースの含有量について検討した。
【0058】
3−メチル−1−ブタノールの含有量が200ppmになるように香料を配合し、更にアセスルファムカリウムとスクラロースを配合し、アルコールの含有量が0(v/v)%の非炭酸の水溶液を調製した(表8)。
【0059】
【表8】
【0060】
アセスルファムカリウムとスクラロースは、1:1の甘味度比で添加し、飲料の甘味度をショ糖換算で0.4〜20に調整した。当該飲料の醸造酒感を官能試験に供した。官能試験は、試験例1に記載した方法に従った(表9)。
【0061】
【表9】
【0062】
アセスルファムカリウム及びスクラロースにより甘味度(ショ糖換算)を0.4に調整した飲料では、甘味が少なく、醸造酒感を感じにくいだけでなく、人工的な味わいが感じられると評価された。そして、甘味度を0.5〜10に調整した飲料では、自然な醸造酒感が感じられ好ましいと評価された。また、甘味度を15以上に調整した飲料では、甘さが目立つようになり、醸造酒感が低下すると評価された。
【0063】
以上より、アセスルファムカリウム及びスクラロースは、甘味度(ショ糖換算)0.5〜10、更には甘味度1〜4で飲料に配合することにより、3−メチル−1−ブタノールとの組合せにおいて、優れた効果を奏することが示唆される。この結果及び試験例2の結果より、アセスルファムカリウムとスクラロースをそれぞれ単独で3−メチル−1−ブタノールと組合せた場合においても、同様の甘味度に調整するのが好ましいことが更に示唆される。
【0064】
[試験例4]プロピレングリコールに関する検討
飲料の醸造酒感について、プロピレングリコールの効果について検討した。
【0065】
3−メチル−1−ブタノールが以下の含有量となるように香料を配合し、更にアセスルファムカリウムとスクラロースを配合し、アルコールの含有量が0(v/v)%の非炭酸の水溶液を調製した(表10)。アセスルファムカリウムとスクラロースは、1:1の甘味度比で添加し、飲料の甘味度をショ糖換算で4.0に調整した。
【0066】
【表10】
【0067】
上記のように調製した水溶液に、プロピレングリコールを0ppm〜5000ppmで添加し、飲料を調製した。当該飲料の醸造酒感を官能試験に供した。官能試験は、試験例1に記載した方法に従った(表11)。
【0068】
【表11】
【0069】
3−メチル−1−ブタノール、アセスルファムカリウム、スクラロースに加えて、プロピレングリコールを更に含有することにより、飲料に厚みが付与され、より醸造酒らしい舌触りになると評価された。プロピレングリコールによるこのような効果は、全くの予想外であった。そして、このような効果は、概ね、試験したいずれのプロピレングリコールの含有量によっても発揮されたが、5000ppmを含有する飲料では、えぐみが強くなり、醸造酒感が感じられなくなったが、含有量が1000ppm以下であれば、飲料に十分な醸造酒感を付与することが可能であり、含有量が500ppm以下であればより好ましいことが示唆された。
【0070】
[試験例5]アルコール含有量に関する検討
飲料の醸造酒感について、アルコールの含有量による効果について検討した。
【0071】
3−メチル−1−ブタノールが以下の含有量となるように香料を配合し、更にアセスルファムカリウムとスクラロースを配合し、アルコール含有量0(v/v)%の非炭酸の水溶液を調製した(表12)。
【0072】
アセスルファムカリウム及びスクラロースの含有量は、飲料の甘味度に基づいて設定することができる。例えば、本発明の飲料におけるショ糖換算の甘味度が好ましくは0.5〜12、より好ましくは0.7〜8、さらに好ましくは1〜5となるように、アセスルファムカリウム及びスクラロースの含有量を設定することができる。ここで、アセスルファムカリウム及びスクラロースはそれぞれ飲料の甘味度に寄与するため、もう一方の含有量を考慮して設定してもよい。一態様として、アセスルファムカリムにより飲料のショ糖換算の甘味度を4.0にする場合、飲料100mLあたり、アセスルファムカリウムをおよそ0.02g配合する。すなわち、200ppmとなる。同様に、スクラロースにより飲料のショ糖換算の甘味度を4.0にする場合、飲料100mLあたり、スクラロースをおよそ0.0067g配合する。すなわち、70ppmとなる。表12の水溶液については、アセスルファムカリウムとスクラロースを1:1の甘味度比で添加し、甘味度をショ糖換算で4.0に調整した。
【0073】
【表12】
【0074】
上記のように調製した水溶液に、エタノールを添加し、アルコールの含有量が0〜3%の飲料を調製した。当該飲料の醸造酒感を官能試験に供した。官能試験は、試験例1に記載した方法に従った(表13)。
【0075】
【表13】
【0076】
これまでの試験結果と一致して、エタノールを含有しない飲料においては、自然な醸造酒感が十分に感じられると評価された。エタノールを1(v/v)%で含有する飲料においては、後半に余韻のある味わいがしっかりと感じられると評価された。エタノールを2(v/v)%含有する飲料においては、エタノールに起因する香味が目立つようになり、醸造酒感が若干低下するが、十分な醸造酒感があると評価された。そして、エタノールを3(v/v)%含有する飲料では、エタノールに起因する香味がさらに強調され、醸造酒感が大きく低下すると評価された。
【0077】
以上より、エタノールの含有量が3(v/v)%未満である場合は、飲料は十分な醸造酒感を有するが、エタノールの含有量が3(v/v)%以上である場合は、醸造酒感が得られないことが示唆された。本発明は、アルコールの含有量が0(v/v)%の飲料だけでなく、アルコールの含有量が低い飲料に対して、醸造酒感を付与又は増強することに有効であることが示唆される。少なくとも、アルコール含有量が3%未満の飲料に対して有効である。
【0078】
[試験例6]果汁に関する検討
飲料の醸造酒感について、果汁の効果について検討した。
【0079】
3−メチル−1−ブタノールが以下の含有量になるように香料を配合し、更にアセスルファムカリウムとスクラロースを配合し、アルコールの含有量が0(v/v)%の非炭酸の水溶液を調製した(表14)。アセスルファムカリウムとスクラロースは、1:1の甘味度比で添加し、飲料の甘味度をショ糖換算で4.0に調整した。
【0080】
【表14】
【0081】
上記のように調製した水溶液に、果汁を添加し、果汁を含有する飲料を調製した。当該飲料の醸造酒感を官能試験に供した。官能試験は、試験例1に記載した方法に従った(表15)。
【0082】
【表15】
【0083】
試験に用いたいずれの果汁を含有する飲料においても、醸造酒感が十分に付与されつつ、各果汁に特徴的な香味を有していると評価された。以上の結果より、本発明は、果汁一般を含有する飲料に対して、醸造酒感を十分に付与することに有効であることが示唆される。
【0084】
また、醸造酒感について更に詳しく検討したところ、赤ブドウ果汁を含有する飲料は、ワインらしい味わいが特徴であり、ワインテイスト飲料を再現していた。そして、レモン果汁又は桃果汁を含有する飲料は、日本酒らしい味わいが特徴であることが示された。洋ナシ果汁、白ブドウ果汁、又はマンゴー果汁を含有する飲料は、ワインらしい味わいと日本酒らしい味わいを同程度に有することが示された。
【0085】
[試験例7]3−メチル−1−ブタノールとその他の炭素数4又は5のアルコールの組合せに関する検討
飲料の醸造酒感について、炭素数4又は5のアルコールの組合せの効果について検討した。
【0086】
アセスルファムカリウム、スクラロース、及び2−メチル−1−プロパノールを以下に示すように配合し、アルコールの含有量が0(v/v)%の非炭酸の水溶液を調製した(表16)。
【0087】
【表16】
【0088】
上記のように調製した水溶液に、3−メチル−1−ブタノールを30ppm〜400ppmとなるように配合し、飲料を調製した。当該飲料の醸造酒感を官能試験に供した。官能試験は、試験例1に記載した方法に従った(表17)。
【0089】
【表17】
【0090】
2−メチル−1−プロパノールを、3−メチル−1−ブタノール30ppmと組合せることにより、醸造酒らしいふくらみのある味わいが感じられる飲料となった。3−メチル−1−ブタノールの含有量を50ppm以上にした場合、醸造酒感はより強く感じられるようになるが、260ppm以上になると人工的な味わいが目立つようになり、醸造酒感が得られない傾向にあることが示唆された。2−メチル−1−プロパノールとの組合せにおいては、3−メチル−1−ブタノールの含有量は、30ppm〜300ppm、50ppm〜300ppm未満、50ppm〜260ppm、50ppm〜200ppmとするのが適切であることが示唆された。
【0091】
本試験の結果を試験例1の結果(特に表3及び4)と比較すると、3−メチル−1−ブタノールと2−メチル−1−プロパノールを組合せを含有する飲料は、3−メチル−1−ブタノールを単独で含有する飲料に比べて、醸造酒感が強く感じられることが示唆される。2−メチル−1−プロパノールを単独で含有する場合、醸造酒感の付与に有効でない(表4)ことを鑑みれば、当該組合せによる効果は予測外であった。更に、3−メチル−1−ブタノール50ppm〜200ppmと2−メチル−1−プロパノールの組合せにより、飲料の醸造酒感が顕著に高くなった。3−メチル−1−ブタノールと2−メチル−1−プロパノールの組合せにより奏される顕著な効果は、驚くべきものであった。
【0092】
[試験例8]3−メチル−1−ブタノールとその他の炭素数4又は5のアルコールの組合せに関する検討
飲料の醸造酒感に対する、炭素数4又は5のアルコールの組合せの効果について検討した。
【0093】
アセスルファムカリウム、スクラロース、及び2−メチル−1−ブタノールを以下に示すように配合し、アルコール含有量が0(v/v)%の非炭酸の水溶液を調製した(表18)。
【0094】
【表18】
【0095】
上記のように調製した水溶液に、3−メチル−1−ブタノールエタノールを30ppm〜400ppmとなるように配合し、飲料を調製した。当該飲料の醸造酒感を官能試験に供した。官能試験は、試験例1に記載した方法に従った(表19)。
【0096】
【表19】
【0097】
2−メチル−1−ブタノールを、3−メチル−1−ブタノール30ppmと組合せることにより、醸造酒らしいふくらみのある味わいが感じられる飲料となった。3−メチル−1−ブタノールの含有量を50ppm以上にした場合、醸造酒感はより強く感じられるようになるが、260ppm以上になると人工的な味わいが目立つようになり、醸造酒感が低下する傾向にあることが示唆された。2−メチル−1−ブタノールとの組合せにおいては、3−メチル−1−ブタノールの含有量は、50ppm〜260ppm、50ppm〜200ppmとするのが適切であることが示唆された。
【0098】
本試験の結果を試験例1の結果(特に表3及び5)と比較すると、3−メチル−1−ブタノールと2−メチル−1−ブタノールを組合せを含有する飲料は、3−メチル−1−ブタノールを単独で含有する飲料に比べて、醸造酒感が強く感じられることが示唆される。2−メチル−1−ブタノールを単独で含有する場合、醸造酒感の付与に有効でない(表5)ことを鑑みれば、当該組合せによる効果は予測外であった。更に、3−メチル−1−ブタノール50ppm〜200ppmと2−メチル−1−ブタノールの組合せにより、飲料の醸造酒感が顕著に高くなった。3−メチル−1−ブタノールと2−メチル−1−ブタノールの組合せにより奏される顕著な効果は、驚くべきものであった。
【0099】
[試験例9]3−メチル−1−ブタノールとその他の炭素数4又は5のアルコールの組合せに関する検討
アセスルファムカリム、スクラロース、及び3−メチル−1−ブタノールに加え、果汁を含有する、アルコール含有量が0(v/v)%の炭酸飲料を製造した。ここで、果汁として、赤ブドウ果汁、白ブドウ果汁、及びグレープフルーツ果汁を用いた。当該飲料の醸造酒感を官能試験に供した。官能試験は、試験例1に記載した方法に従った(表20)。
【0100】
【表20】
【0101】
【表21】
【0102】
試験したいずれの飲料においても、醸造酒感が十分に付与されつつ、各果汁に特徴的な香味を有していると評価された(表21)。以上より、本件発明は、炭酸飲料に対しても醸造酒感を付与又は増強できることが示された。また、醸造酒感について更に詳しく検討したところ、赤ブドウ果汁又は白ブドウ果汁を含有する飲料は、ワインらしい味わいが特徴であり、ワインテイスト飲料を再現していた。そして、グレープフルーツ果汁を含有する飲料は、日本酒らしい味わいが特徴であることが示された。