特開2016-185732(P2016-185732A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-185732(P2016-185732A)
(43)【公開日】2016年10月27日
(54)【発明の名称】自動車の車体前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20160930BHJP
【FI】
   B62D25/20 D
   B62D25/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-66140(P2015-66140)
(22)【出願日】2015年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】島田 良輔
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BB08
3D203BB12
3D203BB16
3D203BB18
3D203BB22
3D203BB35
3D203BB54
3D203CA23
3D203CA24
3D203CA57
3D203CA62
3D203CA68
3D203CB04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】前輪から入力される荷重に起因するフロアパネルの変形を効果的に抑制しうる自動車の車体前部構造を提供すること。
【解決手段】水平面部13と傾斜面部14を有するフロアパネル12、サイドシル、フロントサイドフレーム、及び、両端部がフロントサイドフレームとサイドシルの前端とに連結される凹部74を有しこの凹部74の上縁が水平面部13の前端13a及び傾斜面部14にそれぞれ結合されることでフロアパネル12とともに閉断面構造部17(トルクボックス)を形成する補剛部材70を備える自動車の車体前部構造10である。車体前部構造10は、閉断面構造部17内に補剛部材70の前面壁71と水平面部13の前端13aとに架け渡されて前後方向に延在する板部材60を設える。これにより、前輪3から前面壁71に入力された荷重を板部材を介して傾斜面部14後方の水平面部13の前端13aへと伝達・分散させることができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の床部を形成する、略水平に延在する水平面部及び該水平面部の前端から前方に移行するにしたがって上方に立ち上がる傾斜面部を有するフロアパネルと、
該フロアパネルの車幅方向両側端で車体前後方向に延在して前端が前輪と対向するサイドシルと、
該サイドシルよりも車幅方向内方側で前記フロアパネル下面に沿って車体前後方向に延在するフロントサイドフレームと、
車幅方向に延在して両端部が前記フロントサイドフレームと前記サイドシルの前端とに連結される凹部を有し、該凹部の上縁が前記フロアパネルの水平面部の前端及び傾斜面部にそれぞれ結合されることで前記フロアパネルとともに閉断面構造部を形成する補剛部材と、を備える自動車の車体前部構造において、
前記閉断面構造部内に、前記補剛部材の前部と前記水平面部の前端とに架け渡されて前後方向に延在する板部材を設けたことを特徴とする自動車の車体前部構造。
【請求項2】
前記板部材は、前記水平面部の前端と前記補剛部材の前部とに略水平に架け渡されたことを特徴とする請求項1に記載の自動車の車体前部構造。
【請求項3】
前記水平面部の前端、前記凹部の上縁及び前記傾斜面部の後端が重ね合わせられて結合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車の車体前部構造。
【請求項4】
前記板部材は、車幅方向に延在して前記フロントサイドフレームと前記サイドシルの前部とに架け渡されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車の車体前部構造。
【請求項5】
前記板部材は、該板部材の後縁側から前方且つ車幅方向外方へと斜めに延在するビードを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車の車体前部構造。
【請求項6】
前記閉断面構造部よりも後方位置において前記水平面部に沿って車幅方向に延在して前記フロントサイドフレームと前記サイドシルとを連結するクロスメンバを有し、
前記補剛部材は、前記水平面部の前端に結合する前記凹部の上縁からさらに後方に延在して前記クロスメンバに結合されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車の車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体前部構造に関し、特に、車幅方向に延在してフロントサイドフレームとサイドシル前端を連結するとともにフロアパネルと閉断面部を形成する補剛部材を有する自動車の車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフルラップ前突やオフセット前突に対しては、車体最前部に位置するバンパが対向車等の衝突物を受け止め、バンパから入力された衝突のエネルギーを車体前後方向に延在するフロントサイドフレームが潰れ変形することで吸収し、車室を保護する。
【0003】
しかし、自動車の車幅方向外側端部のみに対する前突(以下、スモールオーバーラップ前突という)に対しては、バンパ及びフロントサイドフレームの潰れ変形による衝突エネルギー吸収機能が十分に得られず、衝突物に起因する大部分の荷重が前輪に入力される。この場合、後退移動する前輪はサイドシル及びフロントサイドフレーム間で車幅方向に延在してフロアパネル前部と閉断面(いわゆるトルクボックス)を形成する補剛部材に衝突することになる。
【0004】
従来、トルクボックスを形成する補剛部材としては、図7に示すように、フロアパネル101の傾斜面を構成するトーボード101aの屈曲部101aA近傍及び後端近傍にそれぞれ前端及び後端が結合してフロアパネル101と閉断面(トルクボックス)を形成する補剛部材102が知られる。補剛部材102は、さらに、前端103a及び後端103bが補剛部材102の前面壁102a及び後面壁102cにそれぞれ架け渡されて底面壁102bに積層される板部材103を有している。
【0005】
これによれば、前面壁102aに後退する前輪が衝突した場合、板部材103と底面壁102bとの積層構造によって剛性が確保され、トルクボックスの潰れ変形が抑制される。
【0006】
また、特許文献1には、トルクボックスを形成する補剛部材の他の態様が開示されている。具体的には、図8に示すように、補剛部材105は、前面壁105aの一部がビード状に後方に折曲する凹部105bを有しており、補剛部材105は、上端105cがトーボード106aの上部106aAに、凹部105bの底部がトーボード106aの上部106aAに、後端105dが傾斜したトーボード106aの後端近傍にそれぞれ結合することで、閉断面部108及び閉断面部109の2ボックス閉断面構造を形成している。これによれば、前面壁105aに前輪が衝突した場合、二つの閉断面構造によって剛性が確保され、トルクボックスの潰れ変形が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−154458
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年、大径タイヤを装着する自動車の開発が進み、車輪の重量が増大し、スモールオーバーラップ衝突が生じた際の大径化した前輪の車室への影響が増大しているという状況がある。
【0009】
すなわち、底面壁に板部材が積層された構成を有する補剛部材によれば、スモールオーバーラップ前突が発生して大径の前輪が図7に示す矢印500方向に後退した場合、2枚重ねの板材の積層構造によりトルクボックスの潰れ自体は抑制しうるとしても、2点鎖線に示すように補剛部材自体がフロアパネルとの接合部を軸に後方に回動し、かかる回動に続くフロアパネルの潰れ変形を抑制できない可能性がある。
【0010】
また、特許文献1に記載の補剛部材によれば、スモールオーバーラップ前突が発生して大径の前輪が矢印600方向に後退した場合、2個の閉断面部のうち下方の閉断面部の前面壁に集中する荷重を分散できずに下側の閉断面部が潰れ変形し、続いてフロアパネル前部の潰れ変形が生じる可能性がある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、前輪から入力される荷重に起因するフロアパネルの変形を効果的に抑制しうる自動車の車体前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、車室の床部を形成する、略水平に延在する水平面部及び該水平面部の前端から前方に移行するにしたがって上方に立ち上がる傾斜面部を有するフロアパネルと、該フロアパネルの車幅方向両側端で車体前後方向に延在して前端が前輪と対向するサイドシルと、該サイドシルよりも車幅方向内方側で前記フロアパネル下面に沿って車体前後方向に延在するフロントサイドフレームと、車幅方向に延在して両端部が前記フロントサイドフレームと前記サイドシルの前端とに連結される凹部を有し、該凹部の上縁が前記フロアパネルの水平面部の前端及び傾斜面部にそれぞれ結合されることで前記フロアパネルとともに閉断面構造部を形成する補剛部材と、を備える自動車の車体前部構造において、前記閉断面構造部内に、前記補剛部材の前部と前記水平面部の前端とに架け渡されて前後方向に延在する板部材を設けたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、前突等に起因して後退する前輪から補剛部材の前部に入力された荷重は、板部材を介して傾斜面部後方の水平面部の前端へと効率的に伝達・分散される。したがって、補剛部材の前部への荷重集中が回避され、補剛部材の変形及び補剛部材の変形に続くフロアパネルの傾斜面部の変形も回避される。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動車の車体前部構造において、前記板部材は、前記水平面部の前端と前記補剛部材の前部とに略水平に架け渡されたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、板部材が略水平に架け渡されていることで、補剛部材の前部に結合する板部材の前端から水平面部まで板材が前後方向に略水平に延在することとなる。したがって、前輪から補剛部材の前部に入力された荷重を一直線に効率的に後方の水平面部まで伝達・分散させることができ、補剛部材及び傾斜面部の潰れ変形をさらに効果的に抑制することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の自動車の車体前部構造において、前記水平面部の前端、前記凹部の上縁及び前記傾斜面部の後端が重ね合わせられて結合されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、板部材の後端が架け渡された水平面部の前端が、凹部の上縁及び前記傾斜面部の後端と積層されて結合されていることから、前輪から補剛部材の前部に入力された荷重を高剛性の積層結合部に入力することができ、当該結合部におけるフロアパネルの変形を抑制しつつ確実に水平面部の後方に荷重を伝達・分散させることができる。したがって、補剛部材及び傾斜面部の潰れ変形をさらに効果的に抑制することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の自動車の車体前部構造において、前記板部材は、車幅方向に延在して前記フロントサイドフレームと前記サイドシルの前部とに架け渡されたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、板部材は車幅方向に延在していることでより大きな入力荷重をフロアパネルに伝達可能であるだけでなく、フロントサイドフレームとサイドシルの前部とに架け渡されていることで、フロントサイドフレーム及びサイドシルにも伝達・分散させることができる。したがって、補剛部材及びフロアパネルの潰れ変形をさらに効果的に抑制することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車の車体前部構造において、前記板部材は、該板部材の後縁側から前方且つ車幅方向外方へと斜めに延在するビードを有することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、後退する前輪の入力荷重方向に対して略直交する断面の板部材の有効断面積をより大きくとることができるとともに、板部材の座屈変形が抑制されてより大きな入力荷重を水平面部に伝達・分散させることができる。したがって、補剛部材及びフロアパネルの潰れ変形をさらに効果的に抑制することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車の車体前部構造において、前記閉断面構造部よりも後方位置において前記水平面部に沿って車幅方向に延在して前記フロントサイドフレームと前記サイドシルとを連結するクロスメンバを有し、前記補剛部材は、前記水平面部の前端に結合する前記凹部の上縁からさらに後方に延在して前記クロスメンバに結合されることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、補剛部材の前部から水平面部の前端にまで伝達された荷重を水平面部及び補剛部材の2つの部材に分散させてさらに後方へと伝達可能になるとともに、クロスメンバによって車幅方向に分散させることが可能となる。したがって、補剛部材及びフロアパネルの潰れ変形をさらに効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、前突等に起因して後退する前輪から補剛部材の前部に入力された荷重は、板部材を介して傾斜面部後方の水平面部の前端へと伝達・分散される。したがって、補剛部材の前部への荷重集中が回避され、補剛部材の変形及び補剛部材の変形に続くフロアパネルの傾斜面部の変形も回避される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態に係る自動車の車体前部構造10の要部底面図である。
図2】補剛部材70の記載を省略した図1のC部拡大図である。
図3】(a)図1のIII−III線断面図、及び(b)図3(a)のA部拡大図である。
図4】(b)図1のIV−IV線断面図、及び(b)図4(a)のB部拡大図である。
図5】スモールオーバーラップ前突時に自動車の車体前部構造10に作用する荷重を示す要部底面図である。
図6】スモールオーバーラップ前突時に自動車の車体前部構造10に作用する荷重を示す図3(a)に対応する断面図である。
図7】従来の補剛部材とフロアパネル前部とによる閉断面部(トルクボックス)の一例を示す自動車の車体前部の縦断面図である。
図8】従来のトルクボックスの他の例を示す自動車の車体前部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施の形態に係る自動車の車体前部構造10について、図1図6を参照して詳細に説明する。図1は本実施の形態に係る自動車の車体前部構造10の要部底面図、図2は補剛部材70の記載を省略した図1のC部拡大図、図3図1のIII−III線断面図、及び図4図1のIV−IV線断面図である。尚、各図において矢印Frは車体前方を示し、矢印OUTは車幅方向外方を示し、矢印Upは車体上方を示す。
【0027】
図1に示すように、自動車の底面にはフロアパネル12が車体の前後方向及び幅方向に延在し、車室2(図3(a)参照)の床部を形成している。フロアパネル12の車幅方向両側部には、車体前後方向にサイドシル18が延在しており、サイドシル18の前端18aは前輪3と対向している。
【0028】
サイドシル18の前端18a近傍からは図示しないフロントピラーが車体上方に延在している。
【0029】
サイドシル18よりも車幅方向内方側には、フロアパネル12の下面に沿って車体前後方向に延在する断面ハット状のフロントサイドフレーム25が設けられている。また、フロントサイドフレーム25の更に車幅方向内方、すなわち、車幅方向略中央位置には、フロアパネル12を車室2側に張り出して形成したフロアトンネル部16が車体前後方向に延在している。
【0030】
フロアパネル12は、図3(a)に示すように、車体前後方向に略水平に延在する水平面部13と、水平面部13の前端13aに後端14bが結合されて図示のように前方に移行するにしたがって上方に立ち上がる傾斜面部14(トーボード)と、を有する。
【0031】
傾斜面部14は、屈曲部14aを介してさらに上方に立ちあがり、前方に前輪3を収容するホイールハウスを兼ねる構成をとる。
【0032】
図3(a)及び図1に示すように、傾斜面部14は、屈曲部14aよりも上方位置に取り付けられたクロスメンバトーボードサイド30によって補剛されている(図1及び図3(a)参照)。すなわち、クロスメンバトーボードサイド30は、上部フランジ31、下部フランジ32及び中間部に設けられた凹部33をそれぞれ傾斜面部14に接合させることで2個の閉断面部34,35を形成して傾斜面部14を補剛する。クロスメンバトーボードサイド30は、図1に示すように、車幅方向両端部がそれぞれフロントサイドフレーム25の側面及びサイドシル18の前端18aに接合されている。
【0033】
また、図1に示すように、クロスメンバトーボードサイド30と略同じ高さ位置の車幅方向内方側には、車幅方向両端部が左右一対のフロントサイドフレーム25,25の内側面にそれぞれ接合されたクロスメンバトーボード40が、フロアパネル12の傾斜面部14に取り付けられ、クロスメンバトーボードサイド30と同様に傾斜面部14を補剛している。
【0034】
水平面部13の前端13aと傾斜面部14の後端14bとの接合部よりも後方位置には、図3(a)に示すように、前方フランジ41及び後方フランジ42によって水平面部13の上面に接合されて水平面部13の上面に沿って車幅方向に延在し、フロントサイドフレーム25とサイドシル18とを連結するクロスメンバ40が設けられている。尚、クロスメンバ40の一端はサイドシル18の内側面に接合され、他端はフロアトンネル部16の側壁16aに接合されている。また、クロスメンバ40には、図3(a)に示すように、上面43を下方に陥入させてなるビード43aがクロスメンバ40の延在方向に沿って形成されている。
【0035】
次に、本発明の特徴的構成というべき、フロアパネル12とともに閉断面構造部17(トルクボックス)を形成する補剛部材70及び閉断面構造部17内に設けられる板部材60について説明する。
【0036】
図2に示すように、板部材60は、フロアパネル12への取付け状態で内側縁部61a、後縁部61b、外側縁部61c及び前縁部61dによって区画される本体部61を有し、本体部61には、後縁部61b側から前縁部61d及び車幅方向外方側へと斜めに延在するビード部61e,61f,61gがそれぞれ車幅方向に並べて配置されている。内側縁部61aにはさらに車幅方向内方に延在するフランジ62が設けられており、後縁部61bにはさらに後方に延出する舌片63a,63b,63cが車幅方向に間隔をおいて設けられている。
【0037】
外側縁部61cには、車体下方に折曲延在されてなるフランジ64が設けられており、前縁部61dには、車体上方に折曲延在されてなるフランジ65が設けられている。
【0038】
補剛部材70は、図3(a)に示すように、略垂直に上方に延在する前面壁71、前面壁71の下端71aから後方に折曲延設されて略水平に延在する底面壁72、底面壁72の後端72aから折曲延設されて後方且つ上方に斜めに延在する後面壁73により形成された断面視略コ字状であって上方に開放する凹部74を有する。補剛部材70は、後面壁73の上端73aから折曲延設されてさらに後方に略水平に延在する後方延在部75を有する。
【0039】
次に、板部材60及び補剛部材70のフロアパネル12への取付けについて説明する。図2に示すように、板部材60は、フランジ62をフロントサイドフレーム25のフランジ26に重ね合わせてスポット溶接等により接合され、フランジ64をサイドシル18の内側壁に重ね合わせて接合される。したがって、板部材60は、車幅方向に延在してフロントサイドフレーム25とサイドシル18の前部とに架け渡されている。
【0040】
また、舌片63bは、図3(a)及び(b)に示すように、フロアパネル12の水平面部13の前端13aと傾斜面部14(トーボード)の後端14bが重複する部位上にさらに重ね合わせて配置される。尚、舌片63a及び舌片63cについても同様である。板部材60のさらに下方から、補剛部材70がフロアパネル12に取り付けられる。
【0041】
補剛部材70は、図3(a)に示すように、凹部74の前縁となる前面壁71の上端71bを傾斜面部14及びクロスメンバトーボードサイド30の下部フランジ32の積層部に重ね合わせられてスポット溶接等により傾斜面14に接合される。
【0042】
また、図4(a)及び(b)に示すように、凹部74の後縁となる後方延在部75の前端75aを傾斜面部14の後端14a及び水平面部13の前端13aの接合部に重ね合わせて計3枚の板材でスポット溶接等によりフロアパネル12に接合する。
【0043】
さらに、同図に示すように、後方延在部75の後端75bを、クロスメンバ40の前方フランジ41及び水平面部13の接合部に重ね合わせて計3枚の板材でスポット溶接等によりクロスメンバ40に接合する。
【0044】
なお、補剛部材70の凹部74は、図1に示すように、車幅方向に延在して車幅方向内方側端部に設けられたフランジ76がフロントサイドフレーム25の側面及び底面25aに接合されるとともに、車幅方向外方側端部に設けられたフランジ77がサイドシル18の下方フランジ18cに接合されている。
【0045】
次に、補剛部材70と板部材60との接合について説明する。説明の順序は前後するが、補剛部材70と板部材60は、フロアパネル12に取り付けられる前に予め接合されている。具体的には、図3(a)及び(b)に示すように、板部材60の舌片63bが後方延在部75の前端75aと重ね合わせられて計2枚の板材でスポット溶接等により接合される。尚、舌片63a,63cについても同様に後方延在部75の前端75aに接合される。また、板部材60のフランジ65が補剛部材70の前面壁71に重ね合わせられて接合される。
【0046】
以上の構成からなる車体前部構造10を有する自動車に対してスモールオーバーラップ前突が生じた場合の効果を、図5及び図6に基づいて説明する。図5はスモールオーバーラップ前突時に自動車の車体前部構造10に作用する荷重を示す要部底面図であり、図6はスモールオーバーラップ前突時に自動車の車体前部構造10に作用する荷重を示す断面図(図1のIII−III線断面図に対応)である。
【0047】
図5に示すように、スモールオーバーラップ前突が生じた場合、バンパ及びフロントサイドフレーム25の潰れ変形による衝撃エネルギー吸収機能が十分に得られず、衝突物に起因する大部分の荷重は前輪3に入力される。前輪3は、後退移動しつつ操行の軸線に沿って回動する挙動を示し、車室2のある車幅方向内方(矢印100方向)へと侵入してサイドシル18の前端18a及び補剛部材70の前面壁71に衝突する(図5及び図6参照)。
【0048】
補剛部材70の閉断面構造部17の内部には、図6に示すように、車体前後方向に略水平に延在するフロアパネル12の水平面部13の前端13a及び補剛部材70の前面壁71に後端(舌片63a,63b,63c)及び前端(フランジ65)とがそれぞれ架け渡された板部材60が略水平に延在しているので、補剛部材70の前部に結合する板部材60の前端(フランジ65)から水平面部13まで2枚の板材(板部材60及びフロアパネル12の水平面部13)が前後方向に略水平に延在することとなる。したがって、前輪3から補剛部材70の前面壁71に入力された荷重を一直線に後方の水平面部13まで効果的に伝達・分散させることができ、補剛部材70及び傾斜面部14の潰れ変形を効果的に抑制することができる。
【0049】
また、フロアパネル12の傾斜面部14と水平面部13の接合部は屈曲部となっていることから応力集中が生じやすい部位であるところ、図4(a)及び(b)に示すように、板部材60の後端(舌片63a,63b,63c)が架け渡された水平面部13の前端13aが、凹部74の上縁(後方延在部75の前端75a)及び傾斜面部14の後端14aと積層されて結合されていることから、前輪3から補剛部材70の前面壁71に入力された荷重を高剛性の積層結合部に入力することができ、当該結合部におけるフロアパネルの変形を抑制しつつ確実に水平面部の後方に荷重を伝達・分散させることができる。
【0050】
さらに、板部材60は、車幅方向に延在してフロントサイドフレーム25とサイドシル18の前部とに架け渡されているので、板部材60は車幅方向に延在することでより大きな荷重を水平面部13に伝達可能であるだけでなく、サイドフレーム25とサイドシル18の前部とにも伝達・分散させることができる。
【0051】
そのうえ、板部材60は、後縁部61bから前方且つ車幅方向外方に斜めに延在するビード部61e,61f,61gを有するので、後退する前輪3の入力方向(図5の矢印100方向)に対して略直交する断面における板部材60の有効断面積をビード部が無いものよりも大きくとることができるとともに、板部材60の座屈変形が抑制されてより大きな荷重を水平面部13に伝達・分散させることができる。
【0052】
また、補剛部材70の後方延在部75の後端75bがクロスメンバ40の前方フランジ41と接合されているので、補剛部材70の前面壁71から水平面部13の前端13aにまで伝達された荷重を水平面部13及び後方延在部75の2つの部材に分散させて後方へ伝達可能になるとともに、クロスメンバ40によって車幅方向に、すなわち、フロントサイドフレーム25及びサイドシル18に分散伝達させることができる。したがって、補剛部材70及びフロアパネル12の潰れ変形をさらに効果的に抑制することができる。
【0053】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本実施の形態においては、板部材60をフロアパネル12の水平面部13の前端13aと補剛部材70の前面壁71とに略水平に架け渡したものとしたが、略水平に架け渡されることが必須というわけではない。
【0054】
例えば、前面壁71に板部材の前端が接合され、板部材の後端が水平面部13の前端13aに架け渡される構成であれば、前輪3から前面壁71に入力された荷重を板部材を介して傾斜面部14後方の水平面部13の前端13aへと伝達・分散させることができ、フロアパネル12の水平面部13へと伝達・分散させることができ、補剛部材70の前面壁71への荷重集中が回避され、補剛部材70の変形及び補剛部材70の変形に続くフロアパネル12の傾斜面部14の変形も回避される。
【0055】
また、本実施の形態においては、補剛部材70は後方延在部75を有しているが、後方延在部75に代えて、板部材60をクロスメンバ40の前方フランジ41の位置まで延在させ、前方フランジ41と接合させるものとしてもよい。
【0056】
また、本実施の形態から、クロスメンバ40が無い構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0057】
2 車室
3 前輪
10 自動車の車体前部構造
12 フロアパネル(床部)
13 水平面部
14 傾斜面部
17 閉断面構造部
18 サイドシル
25 フロントサイドフレーム
40 クロスメンバ
60 板部材
61e,61f,61g ビード部(ビード)
70 補剛部材
74 凹部
71b 上端(凹部74の上縁(前縁))
75a 前端(凹部74の上縁(後縁))
S スポット溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8