特開2016-185740(P2016-185740A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2016-185740航空機の推力偏向装置及び航空機の推力偏向方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-185740(P2016-185740A)
(43)【公開日】2016年10月27日
(54)【発明の名称】航空機の推力偏向装置及び航空機の推力偏向方法
(51)【国際特許分類】
   B64D 33/00 20060101AFI20160930BHJP
   B64D 29/06 20060101ALI20160930BHJP
   F02K 1/78 20060101ALI20160930BHJP
【FI】
   B64D33/00 Z
   B64D29/06
   F02K1/78 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-66287(P2015-66287)
(22)【出願日】2015年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136504
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】山根 章弘
(72)【発明者】
【氏名】村田 巌
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一成
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より簡易な構成でエンジンの推力偏向を行うことができるようにすることである。
【解決手段】航空機の推力偏向装置1は、ダクト3と調節機構4とを備える。ダクトは、航空機のエンジン2を内部に収納する。調節機構は、前記ダクトと前記エンジンとの間に形成される隙間の量を調節することによってコアンダ効果による推力を発生させる。また、航空機の推力偏向方法は、航空機のエンジンを内部に収納するダクトと前記エンジンとの間に形成される隙間の量を調節することによってコアンダ効果による推力を発生させるものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機のエンジンを内部に収納するダクトと、
前記ダクトと前記エンジンとの間に形成される隙間の量を調節することによってコアンダ効果による推力を発生させる調節機構と、
を備える航空機の推力偏向装置。
【請求項2】
前記調節機構は、前記ダクトと前記エンジンとの間に形成される鉛直方向における隙間の量を調節することによって上向き又は下向きの推力を発生させるように構成される請求項1記載の航空機の推力偏向装置。
【請求項3】
航空機のエンジンを内部に収納するダクトと前記エンジンとの間に形成される隙間の量を調節することによってコアンダ効果による推力を発生させる航空機の推力偏向方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、航空機の推力偏向装置及び航空機の推力偏向方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の離着陸時には、隙間を有する高揚力装置から発生する騒音を低減させることが課題となる。高揚力装置は、フラップ等の航空機の揚力を増加させる装置である。高揚力装置から発生する騒音を低減させる手法としては、エンジンの推力偏向(TV:thrust vectoring)によって騒音を低減させる方法が知られている(例えば特許文献1参照)。スラスト・ベクタリングは、エンジンの噴流の向きをノズルで変えることによって推力の向きを偏向させる技術である。
【0003】
スラスト・ベクタリングによってエンジンの推力を上下方向に偏向させると、推力の鉛直成分を発生させることができる。このため、スラスト・ベクタリングによって揚力を増大させることことができる。その結果、高揚力装置に要求される揚力を必要最小限に留めることが可能となり、高揚力装置の構成を簡易にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−357158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スラスト・ベクタリングを行うためには、エンジンの後方にスイベルノズルやパドル等の機能部品を設置する必要がある。これらのスラスト・ベクタリングを行うための機能部品の構造は複雑であり、重量の増加に繋がる。しかも、スラスト・ベクタリングを行うための機能部品には、ジェット排気の高温に耐え得る耐久性が要求される。
【0006】
そこで、本発明は、より簡易な構成でエンジンの推力偏向を行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る航空機の推力偏向装置は、ダクトと調節機構とを備える。ダクトは、航空機のエンジンを内部に収納する。調節機構は、前記ダクトと前記エンジンとの間に形成される隙間の量を調節することによってコアンダ効果による推力を発生させる。
また、本発明の実施形態に係る航空機の推力偏向方法は、航空機のエンジンを内部に収納するダクトと前記エンジンとの間に形成される隙間の量を調節することによってコアンダ効果による推力を発生させるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る航空機の推力偏向装置の構成図。
図2図1に示す推力偏向装置の作用を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る航空機の推力偏向装置及び航空機の推力偏向方法について添付図面を参照して説明する。
【0010】
(構成及び機能)
図1は本発明の実施形態に係る航空機の推力偏向装置の構成図である。
【0011】
航空機の推力偏向装置1は、航空機のエンジン2によって得られる推力を偏向させる装置である。推力偏向装置1は、航空機のエンジン2を内部に収納するダクト3、調節機構4及び制御装置5によって構成することができる。
【0012】
ダクト3は、円筒状の構造を有し、ターボファンエンジン等のエンジンを覆うカバー(エンジンナセル又はエンジンカウルとも呼ばれるダクト)の外側に配置される。エンジン2は、パイロン6と呼ばれる支柱によって航空機の主翼に取付けられる。このため、ダクト3の側面には、パイロン6を通すための貫通孔が設けられ、ダクト3の側面に設けられた貫通孔から突出するパイロン6が、航空機の翼に固定される。
【0013】
従って、ダクト3を、主翼にエンジン2を懸吊するためのパイロン6によって保持することができる。その場合、ダクト3は、調節機構4を介して可動な状態でパイロン6に取付けられる。或いは、ダクト3を、主翼に懸吊するようにしてもよい。その場合においても、ダクト3は、調節機構4を介してパイロン6をスライドさせることが可能な状態でパイロン6と連結される。
【0014】
調節機構4は、ダクト3とエンジン2の間に形成される隙間の量を調節するための装置である。すなわち、調節機構4により、エンジン2に対するダクト3の相対位置を変えることができる。調節機構4は、エンジン2及びダクト3の少なくとも一方をパイロン6の長手方向に沿ってスライドさせることが可能な任意の機構によって構成することができる。
【0015】
具体例として、調節機構4は、モータとラック・アンド・ピニオンによって構成することができる。ラックは、歯切りをした直線状の棒であり、ピニオンはラックと噛み合う小口径の円形歯車である。
【0016】
ダクト3側をスライドさせる調節機構4としてラック・アンド・ピニオンを用いる場合には、ラックがパイロン6に固定され、ラックと噛み合うピニオンがダクト3に固定される。更に、ダクト3側にモータが設けられ、モータの出力軸が、ベルト等によってピニオンと連結される。これにより、モータを回転させるとピニオンが回転し、ラックの直線的な移動によってダクト3をパイロン6の長手方向に沿って概ね鉛直方向に相対移動させることが可能となる。
【0017】
一方、エンジン2側をスライドさせる調節機構4としてラック・アンド・ピニオンを用いる場合には、ラックをパイロン6に固定し、ラックと噛み合うピニオン及びピニオンを回転させるモータを主翼側に取付ければよい。その場合には、調節機構4によって、パイロン6が主翼に対して可動する構造となる。
【0018】
制御装置5は、調節機構4に制御信号を出力して制御する装置である。調節機構4の制御方法としては、電気信号による電子制御、油圧制御及び空気圧制御のいずれを用いてもよい。制御装置5を操作するための装置は、操縦室に設けられる。このため、パイロットによる調節機構4の手動操作が可能である。また、エンジン2によって発生させるべき推力の指示情報に基づいて制御装置5が調節機構4を自動制御するようにしてもよい。
【0019】
(動作及び作用)
次に推力偏向装置1の動作及び作用について説明する。
【0020】
図2は、図1に示す推力偏向装置1の作用を説明する図である。
【0021】
調節機構4によってダクト3とエンジン2との間に形成される隙間の量を調整すると、コアンダ効果による推力を発生させることができる。コアンダ効果は、粘性流体の噴流(ジェット)が近くの壁に引き寄せられる効果である。
【0022】
より具体的には、ダクト3とエンジン2との間に形成される鉛直方向における隙間の量を調節すると、コアンダ効果によって上向き又は下向きの推力を発生させることができる。
【0023】
例えば図2(A)に示すように、ダクト3を上方に移動させると、ダクト3とエンジン2との間に形成される下側の空隙が狭くなる。すなわち、ダクト3の下側の内壁がエンジン2のナセルの下側の外壁に接近する。その結果、ダクト3とエンジン2のナセルとの間の隙間に流入する空気の流量は、コアンダ効果によってナセルの下方よりもナセルの上方の方が大きくなる。
【0024】
従って、エンジン2から排気される噴流はナセルの上方を流れる空気の圧力によって斜め下方に曲げられる。その結果、ダクト3からは噴流が斜め下方に向かって排気される。これにより、上向きの推力成分を発生させることができる。つまり、エンジン2による推力を下方に偏向することができる。
【0025】
逆に、図2(B)に示すように、ダクト3を下方に移動させると、ダクト3とエンジン2との間に形成される上側の空隙が狭くなる。すなわち、ダクト3の上側の内壁がエンジン2のナセルの上側の外壁に接近する。その結果、ダクト3とエンジン2のナセルとの間の隙間に流入する空気の流量は、コアンダ効果によってナセルの上方よりもナセルの下方の方が大きくなる。
【0026】
従って、エンジン2から排気される噴流はナセルの下方を流れる空気の圧力によって斜め上方に曲げられる。その結果、ダクト3からは噴流が斜め上方に向かって排気される。これにより、下向きの推力成分を発生させることができる。つまり、エンジン2による推力を上方に偏向することができる。
【0027】
このように、ダクト3とエンジン2のナセルとの間における隙間を流れる空気の流量を調整することによって、エンジン2から排気される噴流を上下方向に曲げることができる。
【0028】
つまり以上のような航空機の推力偏向装置1及び航空機の推力偏向方法は、エンジン2のナセルの外側にダクト3を配置して2重ダクトを構成し、2重ダクト間の隙間を調節することによりエンジン2の推力を偏向するようにしたものである。
【0029】
(効果)
このため、航空機の推力偏向装置1及び航空機の推力偏向方法によれば、コアンダ効果を利用して軽量かつ簡易な機構でエンジン2による推力の偏向を行うことができる。すなわち、エンジン2により発生した推力を上下方向に偏向することができる。
【0030】
このため、航空機の離着陸時において、高揚力装置の働きを補助することができる。その結果、高揚力装置の構造を簡素化し、高揚力装置に設けられる隙間等による騒音を抑制することができる。
【0031】
加えて、航空機の離着陸時における高揚力装置の補助のみならず、機体の操縦の補助として推力偏向装置1を用いることも可能である。例えば、航空機に作用する空気力及びエンジン2の推力を釣り合せて操縦力をゼロにするトリム調整の補助として推力偏向装置1を用いることができる。
【0032】
従って、調節機構4によってダクト3とエンジン2との間に形成される鉛直方向における隙間の量に加えて、水平方向における隙間の量を調節できるようにしてもよい。その場合には、エンジン2及びダクト3の少なくとも一方を2軸方向にスライドさせることが可能な複数のギアの組合せ等の任意の機構によって調節機構4を構成することができる。これにより、コアンダ効果によって、上向き又は下向きの推力のみならず、航空機の進行方向に向かって左向き及び右向きの推力を発生させることも可能となる。
【0033】
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【符号の説明】
【0034】
1 推力偏向装置
2 エンジン
3 ダクト
4 調節機構
5 制御装置
6 パイロン
図1
図2