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特開2016-187102移動端末試験装置とその干渉状態擬似方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-187102(P2016-187102A)
(43)【公開日】2016年10月27日
(54)【発明の名称】移動端末試験装置とその干渉状態擬似方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/391 20150101AFI20160930BHJP
   H04W 16/22 20090101ALI20160930BHJP
   G01R 29/08 20060101ALI20160930BHJP
   H04W 24/06 20090101ALI20160930BHJP
【FI】
   H04B17/391
   H04W16/22
   G01R29/08 Z
   H04W24/06
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-66372(P2015-66372)
(22)【出願日】2015年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】若狭 聡史
(72)【発明者】
【氏名】小口 貴之
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA03
(57)【要約】
【課題】移動端末試験装置を複数用いることなく、複数の移動体通信端末の電波が干渉した状態を擬似することができる移動端末試験装置を提供すること。
【解決手段】試験シナリオに従って試験の各手順を実行するために装置各部を制御するシナリオ処理部14と、シナリオ処理部14の指示により干渉されるセルのパラメータ及び干渉するセルのパラメータにより干渉されるセル及び干渉するセルを初期化するセル初期化処理部51と、シナリオ処理部14の指示により干渉されるセル及び干渉するセルの信号の出力レベルを調整してセルの合成を行なって干渉状態を擬似させるセル合成処理部52と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体通信の基地局を擬似して移動体通信端末(2)を試験する移動端末試験装置(1)であって、
予め設定された干渉されるセルのパラメータ及び干渉するセルのパラメータにより前記干渉されるセル及び前記干渉するセルを初期化するセル初期化処理部(51)と、
前記干渉されるセル及び前記干渉するセルの信号の出力レベルを調整してセルの合成を行なって干渉状態を擬似させるセル合成処理部(52)と、を備える移動端末試験装置。
【請求項2】
前記セル初期化処理部は、指定された干渉方法に基づき前記干渉されるセルのパラメータから前記干渉するセルのパラメータを作成する請求項1に記載の移動端末試験装置。
【請求項3】
前記セル合成処理部は、前記移動体通信端末のプライマリアンテナへの出力で前記干渉されるセルを擬似し、セカンダリアンテナへの出力で前記干渉するセルを擬似する請求項1または2に記載の移動端末試験装置。
【請求項4】
前記セル合成処理部は、前記干渉されるセルの前記セカンダリアンテナへのセル個別部分の出力を停止し、前記干渉するセルの前記プライマリアンテナへの出力及び前記セカンダリアンテナへのセル共通部分の出力を停止してセルの合成を行なう請求項3に記載の移動端末試験装置。
【請求項5】
移動体通信の基地局を擬似して移動体通信端末を試験する移動端末試験装置の干渉状態擬似方法であって、
予め設定された干渉されるセルのパラメータ及び干渉するセルのパラメータにより前記干渉されるセル及び前記干渉するセルを初期化するステップと、
前記干渉されるセル及び前記干渉するセルの信号の出力レベルを調整してセルの合成を行なって干渉状態を擬似させるステップと、を備える干渉状態擬似方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信端末の試験を行なうため、移動体通信端末との間で通信を行なう移動端末試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やデータ通信端末等の移動体通信端末の開発にあたり、移動体通信端末が通信規格に従って正常に通信できるか否かを試験するための移動端末試験装置が用いられる。移動端末試験装置は、移動端末試験装置と移動体通信端末との間の無線信号の設定や、移動体通信端末との送受信信号が設定された通信シーケンスが試験シナリオとして予め作成されて記憶され、この試験シナリオに従って1つ以上の擬似基地局として動作して試験対象の移動体通信端末と通信し試験を行なう。
【0003】
近年、LTE−A(Long Term Evolution-Advanced)などの移動体通信規格では、通信レート向上のため、基地局と移動体通信端末との双方で複数のアンテナを持ち、複数のアンテナから同一周波数帯域(以下、「セル」という)で同時に信号を送信し、これを複数のアンテナで受信して分離するMIMO(Multi-Input Multi-Output)方式が提案されている。
【0004】
特許文献1には、複数の信号にフェージング処理を施し、MIMOの無線信号を擬似してMIMOの試験を行なうことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−195895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さらに、MIMOの技術を発展させ、基地局と複数の移動体通信端末との間で、複数のアンテナにより同一周波数で通信を行なうMU−MIMO(Multi-User-MIMO)が提案されている。
【0007】
このようなMU−MIMOをサポートする移動体通信端末の試験を行なうに当たり、複数の移動体通信端末の電波による干渉の試験が求められている。
【0008】
しかしながら、このような複数の移動体通信端末の電波が干渉した状態を擬似するには、セルの共通部分は同一で、移動体通信端末に個別な部分は移動体通信端末ごとに設定可能にしなければない。これを実現するには、信号の共通部分を同期させて移動端末試験装置を複数接続することが考えられるが、コストが増大してしまう。
【0009】
そこで、本発明は、移動端末試験装置を複数用いることなく、複数の移動体通信端末の電波が干渉した状態を擬似することができる移動端末試験装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の移動端末試験装置は、移動体通信の基地局を擬似して移動体通信端末を試験する移動端末試験装置であって、予め設定された干渉されるセルのパラメータ及び干渉するセルのパラメータにより干渉されるセル及び干渉するセルを初期化するセル初期化処理部と、干渉されるセル及び干渉するセルの信号の出力レベルを調整してセルの合成を行なって干渉状態を擬似させるセル合成処理部と、を備えるものである。
【0011】
この構成により、移動端末試験装置の複数のセルが合成されて干渉状態が擬似される。このため、移動端末試験装置を複数用いることなく、複数の移動体通信端末の電波が干渉した状態を擬似することができる。
【0012】
また、本発明の移動端末試験装置において、セル初期化処理部は、指定された干渉方法に基づき干渉されるセルのパラメータから干渉するセルのパラメータを作成するものである。
【0013】
この構成により、干渉方法を指定することで干渉するセルのパラメータが作成される。このため、容易に複数の移動体通信端末の電波が干渉した状態を擬似することができる。
【0014】
また、本発明の移動端末試験装置において、セル合成処理部は、移動体通信端末のプライマリアンテナへの出力で干渉されるセルを擬似し、セカンダリアンテナへの出力で干渉するセルを擬似するものである。
【0015】
この構成により、プライマリアンテナへの出力で干渉されるセルが調整され、セカンダリアンテナへの出力で干渉するセルが調整され、セルの合成が行なわれる。このため、容易に干渉されるセル及び干渉するセルの調整を行なうことができ、容易に複数の移動体通信端末の電波が干渉した状態を擬似することができる。
【0016】
また、本発明の移動端末試験装置において、セル合成処理部は、干渉されるセルのセカンダリアンテナへのセル個別部分の出力を停止し、干渉するセルのプライマリアンテナへの出力及びセカンダリアンテナへのセル共通部分の出力を停止してセルの合成を行なうものである。
【0017】
この構成により、プライマリアンテナへの出力で干渉されるセルが擬似され、セカンダリアンテナへの出力で干渉されるセルのセル共通部分と干渉するセルのセル個別部分が合成される。このため、容易に複数の移動体通信端末の電波が干渉した状態を擬似することができる。
【0018】
また、本発明の干渉状態擬似方法は、移動体通信の基地局を擬似して移動体通信端末を試験する移動端末試験装置の干渉状態擬似方法であって、予め設定された干渉されるセルのパラメータ及び干渉するセルのパラメータにより干渉されるセル及び干渉するセルを初期化するステップと、干渉されるセル及び干渉するセルの信号の出力レベルを調整してセルの合成を行なって干渉状態を擬似させるステップと、を備えるものである。
【0019】
この構成により、移動端末試験装置の複数のセルが合成されて干渉状態が擬似される。このため、移動端末試験装置を複数用いることなく、複数の移動体通信端末の電波が干渉した状態を擬似することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、移動端末試験装置を複数用いることなく、複数の移動体通信端末の電波が干渉した状態を擬似することができる移動端末試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る移動端末試験装置のブロック図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る移動端末試験装置の干渉状態擬似処理手順を説明するフローチャートである。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る移動端末試験装置の干渉状態擬似処理によるアンテナへの出力パワーを示す図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る移動端末試験装置の干渉状態のイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1において、本発明の一実施形態に係る移動端末試験装置1は、擬似基地局として同軸ケーブル等を介して有線で移動体通信端末2と無線信号を送受信するようになっている。なお、移動端末試験装置1は、アンテナを介して無線で移動体通信端末2と信号を送受信するようにしてもよい。
【0023】
移動端末試験装置1は、LTE−Aの規格に対応しており、MU−MIMO技術により移動体通信端末2との間で通信できるようになっている。MIMOの試験を実施する場合、移動端末試験装置1は、移動体通信端末2のアンテナ構成に合わせ、移動体通信端末2のそれぞれのアンテナ端子と対応する入出力端子とを有線で接続し、それぞれの入出力端子から対応するアンテナへの無線信号を出力するようになっている。
【0024】
移動端末試験装置1は、結合器11と、複数の送受信部12−1〜nと、レイヤ処理部13と、シナリオ処理部14と、干渉処理部15とを含んで構成されている。
【0025】
結合器(カプラ)11は、試験対象の移動体通信端末2と送受信部12−1〜nとを接続する回路素子である。結合器11は、送受信部12−1〜nの送信する無線信号を結合して移動体通信端末2に送信する。また、結合器11は、移動体通信端末2から受信した信号を送受信部12−1〜nそれぞれに送信する。結合器11は、移動体通信端末2と接続する入出力端子を複数備えている。移動端末試験装置1は、ユーザが擬似する基地局のアンテナごとに対応する入出力端子を設定できるようになっている。結合器11は、ユーザの設定に基づいて送受信部12−1〜nの出力と入出力端子とを対応付けて出力の結合を行ない、入出力端子と送受信部12−1〜nへの入力とを対応付けて入力の分配を行なう。
【0026】
送受信部12−1〜nは、レイヤ処理部13の出力信号からベースバンド帯域の送信信号を生成し、RF(Radio Frequency)帯域へ周波数変換し、電力増幅して結合器11を介して移動体通信端末2へ送信する。送受信部12−1〜nは、MIMOの試験を実施する場合、移動体通信端末2の複数のアンテナそれぞれへの出力信号を生成するようになっている。また、送受信部12−1〜nは、移動体通信端末2から送信され結合器11を介して受信したRF帯域の信号を、ベースバンド帯域へ周波数変換して受信信号として取得し、レイヤ処理部13へ出力する。
【0027】
レイヤ処理部13は、所定の通信プロトコルに基づく信号処理を行なうもので、複数の階層(レイヤ)を持つレイヤ構成の通信プロトコルのそれぞれのレイヤの処理を実行する。レイヤ処理部13は、複数のセル処理部31−1〜nを有している。
【0028】
セル処理部31−1〜nは、送受信部12−1〜nを介して移動体通信端末2との間で無線信号を送受信して、1つのセルとして呼制御を行なう。セル処理部31−1〜nは、対応する送受信部12−1〜nのパラメータを設定するようになっている。また、セル処理部31−1〜nは、対応する送受信部12−1〜nの出力信号の出力レベルを調整できるようになっている。
【0029】
シナリオ処理部14は、移動端末試験装置1の設定及び試験手順が記述された試験シナリオを保持し、試験シナリオに従って試験の各手順を実行するために装置各部を制御する。
【0030】
干渉処理部15は、シナリオ処理部14からの指示により、指定された干渉方法に基づき、レイヤ処理部13にセルのパラメータを設定し、複数のセルの合成を行なって複数の移動体通信端末2の電波による干渉状態を擬似する。干渉処理部15は、セル初期化処理部51と、セル合成処理部52とを備えている。
【0031】
セル初期化処理部51は、シナリオ処理部14から指定される干渉方法と干渉されるセルのパラメータに基づき、干渉するセルのパラメータを作成し、レイヤ処理部13にセルの初期化とセルの処理の開始を指示する。なお、干渉するセルのパラメータを設定させるようにしてもよい。
【0032】
セル合成処理部52は、シナリオ処理部14から指定された干渉方法に基づき、干渉されるセルと干渉するセルの設定を変えて干渉状態を擬似させる。
【0033】
ここで、移動端末試験装置1は、移動体通信端末2と通信を行なうための通信モジュールが設けられた図示しないコンピュータ装置によって構成される。このコンピュータ装置は、それぞれ図示しないCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、ハードディスク装置と、入出力ポートと、タッチパネルとを有する。
【0034】
このコンピュータ装置のROM及びハードディスク装置には、コンピュータ装置を移動端末試験装置1として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータ装置は、移動端末試験装置1として機能する。
【0035】
このように、本実施形態において、シナリオ処理部14は、CPUによって構成され、送受信部12−1〜n、レイヤ処理部13及び干渉処理部15は、通信モジュールによって構成される。
【0036】
このような構成の移動端末試験装置1において、移動体通信端末2の試験を行なう場合、まず、ユーザにより試験に使用する試験シナリオの作成が行なわれる。試験シナリオの作成は、他の装置によって行なわれてもよいし、ユーザによるタッチパネルの操作により、例えば、タッチパネルに試験シナリオ作成画面を表示させて、セル処理部31−1〜nで擬似するセルの情報や実行させたいシーケンスなどを設定させる。
【0037】
ユーザは、目的の試験に合わせて各種情報を基地局ごとに設定する。ここで、ユーザは、MU−MIMOの干渉の試験を実施したい場合、例えば、干渉されるセルのパラメータの設定と干渉方法を設定する。
【0038】
シナリオ処理部14は、設定された情報に基づいて、報知情報やシーケンス情報などを生成し、擬似基地局の試験シナリオとして識別情報と関連付けてハードディスク装置などの記憶装置に記憶させる。
【0039】
また、ユーザは、複数の基地局を使った試験を行なう場合、基地局のセルの配置を設定する。シナリオ処理部14は、設定されたセル配置の情報に基づいて、使用すると設定された擬似基地局の試験シナリオの報知情報の隣接セルの情報などを自動的に生成し、セル配置の試験シナリオとして使用する擬似基地局の試験シナリオと識別情報とを関連付けてハードディスク装置などの記憶装置に記憶させる。
【0040】
なお、他の装置で作成された試験シナリオは、外部記憶媒体を介して移動端末試験装置1のハードディスク装置などの記憶装置に識別情報と関連付けて記憶される。
【0041】
このような試験シナリオの作成をした後、ユーザは、移動端末試験装置1と移動体通信端末2とを有線で接続し、識別情報に基づいて使用する擬似基地局の試験シナリオまたはセル配置の試験シナリオを選択する。
【0042】
シナリオ処理部14は、選択された擬似基地局の試験シナリオまたはセル配置の試験シナリオの識別情報に関連付けられた試験シナリオを記憶装置から読み出し、読み出した試験シナリオに基づいてレイヤ処理部13に報知情報の内容や位置登録処理における送信情報などを通知し、擬似基地局としての動作を開始させる。
【0043】
使用する擬似基地局の試験シナリオを選択した後、ユーザは、移動体通信端末2の電源を入れるなどして位置登録を行なわせ、移動端末試験装置1側で位置登録が正常に行なわれたかを確認する。
【0044】
シナリオ処理部14は、位置登録が行なわれた状態で、ユーザによるタッチパネル等の操作により擬似基地局の試験シナリオに設定されたシーケンスの実行の操作が行なわれると、指定されたシーケンスの情報に基づいてレイヤ処理部13から無線信号を送信させたり、移動体通信端末2から受信した無線信号に対する無線信号をレイヤ処理部13から送信させたりする。
【0045】
このような移動端末試験装置1において、干渉処理部15は、シナリオ処理部14からの指示により、指定された干渉方法に基づき、レイヤ処理部13にセルのパラメータを設定し、複数のセルの合成を行なって複数の移動体通信端末2の電波による干渉状態を擬似させる。
【0046】
干渉処理部15は、シナリオ処理部14の指示する干渉されるセルのパラメータと、干渉方法に基づき、干渉するセルのパラメータを作成し、使用していないセルにそのパラメータを設定する。
【0047】
そして、干渉処理部15は、双方のセルの初期化、処理開始後、双方のセルの出力の調整をしてセルの合成を行なわせ、複数の移動体通信端末2の電波による干渉状態を擬似させる。
【0048】
干渉処理部15は、干渉されるセルの信号と干渉するセルの信号を別々の擬似基地局の信号として出力させる。干渉処理部15は、それぞれの擬似基地局の移動体通信端末2の複数のアンテナへの出力を調整してセルの合成を行なわせる。
【0049】
具体的には、セル初期化処理部51は、干渉されるセルのセル共通部分、例えば、LTEでは、PDCCH(Physical Downlink Control Channel)に関するパラメータについては、干渉されるセルのパラメータをそのまま干渉するセルのパラメータとする。
【0050】
また、セル初期化処理部51は、指定された干渉方法に基づいて、干渉されるセルのセル個別部分、例えば、LTEでは、PDSCH(Physical Downlink Shared Channel)に関するパラメータから干渉するセルのパラメータを作成する。
【0051】
セル初期化処理部51は、シナリオ処理部14のセル初期化指示により、干渉されるセル及び干渉するセルの初期化をそれぞれのパラメータによりレイヤ処理部13に指示する。そして、セル初期化処理部51は、シナリオ処理部14のセル処理開始指示により、干渉されるセル及び干渉するセルの処理の開始をレイヤ処理部13に指示する。
【0052】
その後、シナリオ処理部14のセル合成指示により、セル合成処理部52は、干渉されるセルの移動体通信端末2のプライマリアンテナへの出力はそのままに、移動体通信端末2のセカンダリアンテナへの出力のセル個別部分の出力を停止させる。同時に、セル合成処理部52は、干渉するセルの移動体通信端末2のプライマリアンテナへの出力を停止させるとともに、移動体通信端末2のセカンダリアンテナへのセル共通部分の出力を停止させセル個別部分のみ出力させる。
【0053】
このようにすることで、干渉されるセルのプライマリアンテナへの出力が1つのセルとして動作し、干渉されるセルのセカンダリアンテナへの出力のセル共通部分と干渉するセルのセカンダリアンテナへの出力のセル個別部分とで干渉するセルが形成される。
【0054】
以上のように構成された本実施形態に係る移動端末試験装置1による干渉状態擬似処理について、図2を参照して説明する。なお、以下に説明する干渉状態擬似処理は、干渉処理部15がシナリオ処理部14からの指示を受けるたびに実行される。
【0055】
まず、干渉処理部15は、シナリオ処理部14からの指示がセル初期化か否かを判定する(ステップS1)。シナリオ処理部14からの指示がセル初期化であると判定した場合、干渉処理部15は、セル初期化処理部51により干渉されるセルの初期化を予め設定されたパラメータで行なわせ(ステップS2)、セル初期化処理部51により干渉されるセルのパラメータの変更が必要なパラメータの更新を行なわせて干渉するセルの初期化パラメータを生成させ(ステップS3)、セル初期化処理部51により干渉するセルの初期化を生成したパラメータで行なわせる(ステップS4)。
【0056】
一方、ステップS1において、シナリオ処理部14からの指示がセル初期化ではないと判定した場合、干渉処理部15は、シナリオ処理部14からの指示がセル処理開始か否かを判定する(ステップS5)。シナリオ処理部14からの指示がセル処理開始であると判定した場合、干渉処理部15は、 セル初期化処理部51により干渉されるセルの処理を予め設定されたパラメータで開始させ(ステップS6)、セル初期化処理部51により干渉されるセルのパラメータの変更が必要なパラメータの更新を行なって干渉するセルの処理開始パラメータを生成させ(ステップS7)、セル初期化処理部51により干渉するセルの処理を生成したパラメータで開始させる(ステップS8)。
【0057】
一方、ステップS5において、シナリオ処理部14からの指示がセル処理開始ではないと判定した場合、干渉処理部15は、シナリオ処理部14からの指示がセル合成か否かを判定する(ステップS9)。シナリオ処理部14からの指示がセル合成であると判定した場合、干渉処理部15は、 セル合成処理部52により干渉されるセルのセカンダリアンテナへのセル個別部分の出力を低下させて干渉されるセルの合成処理を行なわせ(ステップS10)、セル合成処理部52により干渉するセルのプライマリアンテナへの出力とセカンダリアンテナへのセル共通部分の出力を低下させて干渉するセルの合成処理を行なわせる(ステップS11)。
【0058】
一方、ステップS9において、シナリオ処理部14からの指示がセル合成ではないと判定した場合、干渉処理部15は、処理を終了する。
前述の通り、以上の干渉状態擬似処理は、干渉処理部15がシナリオ処理部14からの指示を受けるたびに実行されるので、擬似される干渉状態は時間と共に変化する事となる。
【0059】
このような干渉状態擬似処理による動作について図3及び図4を参照して説明する。図3は、各擬似基地局が各アンテナに出力する信号の出力パワーを示している。なお、表中の値で、「-99.9」となっているのは出力が停止していることを示している。
【0060】
シナリオ処理部14からのセル処理開始の指示により干渉処理部15がセルの処理を開始させると、図3(a)に示すように、擬似基地局BTS#1とBTS#2のそれぞれから「Frequency[MHz]」の行に表示された周波数2110.0MHzの周波数で、「Cell-specific RS[dBm/15kHz]」の行に表示されたセル共通部分の出力パワーも、「UE-specific RS(with Cell-specific RS)[dBm/15kHz]」及び「UE-specific RS(without Cell-specific RS)[dBm/15kHz]」の行に表示されたセル個別部分の出力パワーも上がっていて、擬似基地局BTS#1とBTS#2が別々に動作している。
【0061】
シナリオ処理部14からのセル合成の指示により干渉処理部15がセルの合成を行なうと、図3(b)に示すように、擬似基地局BTS#1とBTS#2のそれぞれから「Frequency[MHz]」の行に表示された周波数2110.0MHzの周波数で、擬似基地局BTS#1の「UE-specific RS(with Cell-specific RS)[dBm/15kHz]」及び「UE-specific RS(without Cell-specific RS)[dBm/15kHz]」のセカンダリアンテナ(Ant#2,#3,#4)への出力が停止(値が-99.9)され、擬似基地局BTS#2のプライマリアンテナ(Ant#1)への出力が停止され、セカンダリアンテナ(Ant#2,#3,#4)への「Cell-specific RS[dBm/15kHz]」のセル共通部分の出力も停止されていて、擬似基地局BTS#1のメインアンテナへの出力が1つのセルとして動作し、擬似基地局BTS#1のセカンダリアンテナへの出力のセル共通部分と擬似基地局BTS#2のセカンダリアンテナへの出力のセル個別部分とで干渉するセルとして動作している。
【0062】
ある時間におけるセル個別部分の周波数の割り当てを見ると、図4に示すように干渉されるセルと干渉するセルで一部の領域が干渉している。
【0063】
このように、上述の実施形態では、干渉されるセルのパラメータ及び干渉するセルのパラメータにより干渉されるセル及び干渉するセルを初期化するセル初期化処理部51と、干渉されるセル及び干渉するセルの信号の出力レベルを調整してセルの合成を行なって干渉状態を擬似させるセル合成処理部52と、を備える。
【0064】
これにより、移動端末試験装置1の複数のセルが合成されて干渉状態が擬似される。このため、移動端末試験装置1を複数用いることなく、複数の移動体通信端末2の電波が干渉した状態を擬似することができる。
【0065】
また、セル初期化処理部51は、指定された干渉方法に基づき前記干渉されるセルのパラメータから前記干渉するセルのパラメータを作成する。
【0066】
これにより、干渉方法を指定することで干渉するセルのパラメータが作成され、容易に複数の移動体通信端末2の電波が干渉した状態を擬似することができる。
【0067】
また、セル合成処理部52は、移動体通信端末2のプライマリアンテナへの出力で干渉されるセルを擬似し、セカンダリアンテナへの出力で干渉するセルを擬似する。
【0068】
これにより、 プライマリアンテナへの出力で干渉されるセルが調整され、セカンダリアンテナへの出力で干渉するセルが調整され、容易に干渉されるセル及び干渉するセルの調整を行なうことができる。
【0069】
また、 セル合成処理部52は、干渉されるセルのセカンダリアンテナへのセル個別部分の出力を停止し、干渉するセルのプライマリアンテナへの出力及びセカンダリアンテナへのセル共通部分の出力を停止してセルの合成を行なう。
【0070】
これにより、プライマリアンテナへの出力で干渉されるセルが擬似され、セカンダリアンテナへの出力で干渉されるセルのセル共通部分と干渉するセルのセル個別部分が合成され、容易に干渉するセルを合成することができる。
【0071】
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0072】
1 移動端末試験装置
2 移動体通信端末
11 結合器
12−1〜n 送受信部
13 レイヤ処理部
14 シナリオ処理部
15 干渉処理部
31−1〜n セル処理部
51 セル初期化処理部
52 セル合成処理部
図1
図2
図3
図4