【解決手段】筒状のコイルと、前記コイルの内部に当該コイルの軸線と平行に挿入された磁心と、を備え、前記コイルに電流を供給することによって前記磁心の一方側の端部から磁束を照射する磁束照射装置であって、前記コイルの内部に前記磁心が挿入された状態において、前記コイルに対する当該コイルの軸線方向の前記磁心の相対位置が所望量だけ調整可能となっていることを特徴とする磁束照射装置である。
前記コイルの内部に前記第1磁心が挿入された状態で、当該第1磁心の前記小断面積の柱状部は、当該コイルの前記一方側の端部より軸方向外側に突出されるようになっており、
前記コイルの内部に前記第2磁心が挿入された状態で、当該第2磁心の前記一方側の端部は、当該コイルの前記一方側の端部より軸方向内側に没入されるようになっている
ことを特徴とする請求項9に記載の磁束照射装置。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の第1の実施の形態による磁束照射装置を示す概略側面視断面図である。
図2は、
図1の磁束照射装置において、コイルに対する当該コイルの軸線方向の磁心の相対位置が所望量だけ調整された状態を示す概略側面視断面図である。
【0029】
図1に示すように、本実施の形態による磁束照射装置201は、筒状のコイル20と、コイル20の内部に当該コイル20の軸線と平行に挿入された磁心21と、を備えている。
【0030】
図1に示すように、コイル20は、円筒形状のソレノイドコイルであり、例えば、コイル20の直径は、70mmであり、コイル20の軸方向の長さは、120mmである。
【0031】
一方、本実施の形態の磁心21は、四角柱形状を有しており、例えば、磁心21の軸方向に対して直角な断面の一辺の長さは、20mmであり、軸方向の長さは、120mmである。磁心21の材質は、例えば、Mn−Znフェライト材である。
【0032】
コイル20には、不図示の電源が電気的に接続されている。電源からコイル20に所定の周波数(例えば、50kHz〜400kHz)で交流電流が供給されることにより、コイル20の内部に挿入された磁心21に軸方向と平行な交番磁束が形成され、当該交番磁束は、磁心21の一方側の端部21aから軸方向に放射されるようになっている。
【0033】
本実施の形態では、
図1及び
図2に示すように、コイル20の内部に磁心21が挿入された状態において、コイル20に対する当該コイル20の軸線方向の磁心21の相対位置が所望量だけ調整可能となっている。
【0034】
より詳細には、
図1及び
図2に示すように、コイル20は、内周側に空洞を有するコイル用ハウジング20h内に収容されており、磁心21は、前記空洞内に挿入された磁心用ハウジング21h内に収容されている。そして、コイル用ハウジング20hの内周面にはコイル側ネジ部20sが形成されており、磁心用ハウジング21hの外周面には、コイル側ネジ部20sに対応する磁心側ネジ部21sが形成されている。コイル用ハウジング20hと磁心用ハウジング21hとがコイル20の軸線回りに相対的に回転されることにより、ネジの作用により、コイル用ハウジング20h内に収容されたコイル20に対する磁心用ハウジング21h内に収容された磁心21の相対位置がコイル20の軸線方向に所望量だけ容易に調整されるようになっている。
【0035】
コイル20の一方側端部20aに対する磁心21の一方側端部21aの調整可能な突出量は、50mm以下であることが好ましい。突出量が50mmより大きい場合、磁心21の内部に形成される磁束は、突出部分の側面から外部に抜け出しやすくなり、一方側の端部21aから放射される磁束密度が減少する。
【0036】
次に、以上のような本実施の形態の作用について説明する。
【0037】
図3に示すように、凸面状を有する照射対象物30の内部に位置する被照射部31に磁束を照射する場合、磁心21の一方側の端部21aがコイル20の一方側の端部20aと同じ平面上に位置するように、当該コイル20に対する当該磁心21の相対位置が調整された状態で、当該磁心21の一方側の端部21aが被照射部31に十分に(例えば被照射部31から5mmの位置まで)近づけて位置決めされる。
【0038】
この状態で、不図示の電源からコイル20に所定の周波数(例えば100kHz)で交流電流が供給される。これにより、コイル20の内部に挿入された磁心21に軸方向と平行な交番磁束が形成され、当該交番磁束は磁心21の一方側の端部21aから被照射部31に向けて放射される。ここでは、磁心21の一方側の端部21aは被照射部31に十分に近づけて位置決めされており、被照射部31には、例えば20mTの磁束密度で磁束が効果的に照射される。これにより、被照射部31に予め設けられた微粒子の感磁発熱体が磁気加熱され、当該感磁発熱体が発熱することにより被照射部31が加熱される。
【0039】
次に、
図4に示すように、凹面状を有する照射対象物40の底部に位置する被照射部41に磁束を照射する場合、磁心21の一方側の端部21aがコイル20の一方側の端部10aより軸方向外側に所望量(例えば20mm)だけ突出するように、当該コイル20に対する当該磁心21の相対位置が調整された状態で、当該磁心21の一方側の端部21aが被照射部41に対向して配置される。
【0040】
図4に示すように、コイル20は被照射部41の周囲の構造体と物理的に干渉するため、コイル20の一方側の端部20aを被照射部41に十分に(例えば被照射部41から5mmの位置まで)近づけることはできない。しかしながら、磁心21の一方側の端部21aは、コイル20の一方側の端部20aより軸方向に所望量だけ突出しているため、被照射部41の周囲の構造体と物理的に干渉せずに、被照射部41に対して十分に(例えば被照射部31まで5mmの位置まで)近づけて位置決めされ得る。
【0041】
この状態で、不図示の電源からコイル20に所定の周波数(例えば100kHz)で交流電流が供給されることにより、コイル20の内部に挿入された磁心21に軸方向と平行な交番磁束が形成され、当該交番磁束は磁心21の一方側の端部21aから被照射部41に向けて照射される。
【0042】
ここで、磁心21の内部に形成される磁束は、磁心21の一方側の端部21aがコイル20の一方側の端部20aに対して突出している分だけ長い距離を、軸方向と平行な状態で維持された後、磁心21の一方側の端部21aから軸方向に放射される。そのため、コイル20の一方側の端部20aを被照射部41に十分に近づけることはできなくても、磁心21の一方側の端部21aは被照射部41に十分に近づけて位置決めされ得るから、被照射部41には、例えば10mTの磁束密度で磁束が効果的に照射され得る。これにより、被照射部41に予め設けらえた微粒子の感磁発熱体が磁気加熱され、当該感磁発熱体が発熱することにより被照射部41が加熱される。
【0043】
以上のような本実施の形態によれば、コイル20の内部に磁心21が挿入された状態において、コイル20に対する当該コイル20の軸線方向の磁心21の相対位置が所望量だけ調整されることにより、磁心21の一方側の端部21aから照射される磁束の拡散開始位置がコイル20の軸線方向に所望量だけ調整され得る。これにより、被照射部31又は41に対する磁束照射装置20の相対位置に応じて、磁束の照射パターンを容易に変更することができる。
【0044】
なお、本実施の形態では、磁心21は、四角柱形状を有していたが、これに限定されず、円柱形状、または、N角柱形状(Nは3または5以上の自然数)を有していてもよい。
【0045】
また、本実施の形態では、コイル用ハウジング20hの内周面及び磁心用ハウジング21hの外周面に互いに対応するネジ部20s、21hが設けられており、ネジの作用により、コイル20に対する磁心21の相対位置が軸方向に調整可能となっていたが、これに限定されず、例えば、コイル用ハウジング20hの内周面及び磁心用ハウジング21hの外周面に互いに対応するラック・ピニオン構造が設けられており、ラック・ピニオンの作用により、コイル20に対する磁心21の相対位置が軸方向に調整可能となっていてもよい。
【0046】
次に、
図5(a)、
図5(b)及び
図6を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図5(a)は、第2の実施の形態による磁束照射装置を示す概略側面視断面図であり、
図5(b)は、同概略内部平面図である。
図6は、
図5(a)の磁束照射装置において、コイル20に対する当該コイル20の軸線方向の磁心21の相対位置が所望量だけ調整された状態を示す概略側面視断面図である。
【0047】
図5(a)及び
図5(b)に示すように、第2の実施の形態による磁束照射装置202は、第1の実施の形態による磁束照射装置201に加えて、コイル20の内部であって磁心21の外部に当該コイル20の軸線と平行に挿入された補助磁心22を更に備えている。
【0048】
本実施の形態では、
図5(b)に示すように、補助磁心22は、コイル20の周方向に均等に配置された6個の柱状の補助磁心要素22eを有している。例えば、各補助磁心要素22eは、直径15mm、軸方向の長さ120mmの円柱形状を有している。各補助磁心要素22eの材質は、例えば、Mn−Znフェライト材である。図示された例において、周方向に隣り合う補助磁心要素22eは、互いに離間して配置されているが、これに限定されず、互いに当接して配置されていてもよい。ただし、磁心要素数が増えて磁心断面積が大きくなることにより、磁束密度の分散(低下)につながるため、離間配置がより好ましい。
【0049】
図5(a)に示すように、補助磁心22がコイル20の内部であって磁心21の外部に当該コイル20の軸線と平行に挿入された状態で、補助磁心22の一方側の端部22aは、コイル20の一方側の端部20aと同じ平面上に位置するようになっている。
【0050】
本実施の形態では、
図5(a)及び
図6に示すように、補助磁心22は、内周側に空洞を有する補助磁心用ハウジング22h内に収容されており、磁心21は、前記空洞内に挿入された磁心用ハウジング21h内に収容されている。磁心用ハウジング21hは、磁性材料を含有する樹脂(例えば、フェライトが混入されたポリエチレン樹脂)からなり、補助磁心用ハウジング22hの内周面を含む領域も、磁性材料を含有する樹脂(例えば、フェライトが混入されたポリエチレン樹脂)からなる。これにより、補助磁心22と磁心21との間の磁気的なカップリングが向上されている。
【0051】
図5(a)及び
図6に示すように、補助磁心用ハウジング22hの内周面には補助磁心側ネジ部22sが形成されており、磁心用ハウジング21hの外周面には、補助磁心側ネジ部22sに対応する磁心側ネジ部21s’が形成されている。補助磁心用ハウジング22hと磁心用ハウジング21hとがコイル20の軸線回りに相対的に回転されることにより、ネジの作用により、補助磁心用ハウジング22h内に収容された補助磁心22に対する磁心用ハウジング21h内に収容された磁心21の相対位置がコイル20の軸線方向に所望量だけ容易に調整されるようになっている。
【0052】
本実施の形態では、補助磁心用ハウジング22hはコイル用ハウジング20hの空洞内に挿入された状態で当該コイル用ハウジング20hに対して固定されており、補助磁心用ハウジング22h内に収容された補助磁心22は、コイル用ハウジング20h内に収容されたコイル20に対して静止されている。そのため、補助磁心22に対する磁心21の相対位置がコイル20の軸線方向に所望量だけ調整されることにより、コイル20に対する磁心21の相対位置もコイル20の軸線方向に所望量だけ調整され得る。
【0053】
その他の構成は
図1及び
図2に示す第1の実施の形態と略同様である。
図5(a)、
図5(b)及び
図6において、
図1及び
図2に示す第1の実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0054】
以上のような第2の実施の形態による磁束照射装置201では、不図示の電源からコイル20に所定の周波数で交流電流が供給されることにより、コイル20の内部に挿入された磁心21及び補助磁心22にそれぞれ軸方向と平行な交番磁束が形成される。
【0055】
図5(a)に示すように、磁心21の一方側端部が補助磁心22の一方側端部と同一の平面上に位置するように、コイル20に対する磁心21の相対位置が調整された状態では、磁心21に形成される交番磁束は、当該磁心21の一方側端部21aから軸方向外側に放射されると共に、補助磁心22に形成される交番磁束は、当該補助磁心22の一方側端部22aから軸方向外側に放射される。
【0056】
一方、
図6に示すように、磁心21の一方側端部21aが補助磁心22の一方側端部22aより軸方向外側に突出するように、コイル20に対する磁心21の相対位置が調整された状態では、補助磁心22に形成される交番磁束は、磁心21の突出部分により集束された後で、当該磁心21に形成される交番磁束と一緒に、当該磁心21の一方側端部21aから軸方向外側に放射される。
【0057】
以上のように第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の作用効果が得られる他、磁心21の一方側端部21aが補助磁心22の一方側端部22aより軸方向外側に突出している場合、補助磁心22に形成される磁束は磁心21の突出部分により集束された後で放出されることになり、第1の実施の形態に比べて磁束密度が一層高められ得る。
【0058】
また、本実施の形によれば、磁心用ハウジング21hは、磁性材料を含有する樹脂からなり、前記補助磁心用ハウジングの内周面を含む領域も、磁性材料を含有する樹脂からなるため、補助磁心22と磁心21との間の磁気的なカップリングが向上され、補助磁心22から磁心21への磁束の集束効果が一層高められ得る。
【0059】
なお、本実施の形態では、補助磁心要素22eは、6個であったが、これに限定されず、2個〜5個であってもよく、7個以上であってもよい。
【0060】
また、本実施の形態では、各補助磁心要素22eは、それぞれ、円柱形状を有していたが、これに限定されず、それぞれ、角柱形状を有していてもよい。
【0061】
また、本実施の形態では、補助磁心22は、コイル20の周方向に均等に配置された複数の補助磁心要素22eを有していたが、これに限定されず、コイル20の内部において磁心21の周囲を取り囲むような円筒形状を有していてもよい。
【0062】
また、本実施の形態では、補助磁心用ハウジング22hの内周面及び磁心用ハウジング21hの外周面に互いに対応するネジ部22s、21hが設けられており、ネジの作用により、補助磁心22に対する磁心21の相対位置が軸方向に調整可能となっていたが、これに限定されず、例えば、補助磁心用ハウジング22hの内周面及び磁心用ハウジング21hの外周面に互いに対応するラック・ピニオン構造が設けられており、ラック・ピニオンの作用により、補助磁心22に対する磁心21の相対位置が軸方向に調整可能となっていてもよい。
【0063】
次に、
図7乃至
図9を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図7は、本発明の第3の実施の形態による磁束照射装置を示す概略側面視断面図である。
図8は、
図7の磁束照射装置における第1磁心から磁束が照射される態様を説明するための図である。
図9は、
図7の磁束照射装置における第2磁心から磁束が照射される態様を説明するための図である。
【0064】
図7に示すように、本実施の形態による磁束照射装置101は、筒状のコイル10と、コイル10の内部に当該コイル10の軸線と平行に挿脱可能に挿入された第1磁心11と、を備えている。
【0065】
図7に示すように、コイル10は、円筒形状のソレノイドコイルであり、例えば、コイル10の直径は、70mmであり、コイル10の軸方向の長さは、120mmである。
【0066】
本実施の形態では、
図7に示すように、第1磁心11は、一方側の端部11aを規定する小断面積の柱状部11bと、当該小断面積の柱状部11bの軸方向に同軸に隣接する大断面積の柱状部11cと、を有している。例えば、小断面積の柱状部11bは、直径20mm、軸方向の長さ20mmの円柱形状を有している。また、例えば、大断面積の柱状部11cは、直径50mm、軸方向の長さ100mmの円柱形状を有している。第1磁心11の材質は、例えば、Mn−Znフェライト材である。
【0067】
本実施の形態では、第1磁心11の一方側の端部11aは、コイル10の一方側の端部10aと同じ平面上に位置するようになっている。本明細書において「コイル10の一方側の端部10aと同じ平面」には、コイル10の一方側の端部10aから軸方向内側に1mm以内に位置する平面が含まれる。
【0068】
コイル10には、不図示の電源が電気的に接続されている。電源からコイル10に所定の周波数(例えば、50kHz〜400kHz)で交流電流が供給されることにより、コイル10の内部に挿入された第1磁心11に軸方向と平行な交番磁束が形成され、当該交番磁束は小断面積の筒状部11bにおいて集束された後、第1磁心11の一方側の端部11aから軸方向に第1のパターンで放射されるようになっている。
【0069】
本実施の形態では、コイル10の内部に第1磁心11が挿入された状態で、当該第1磁心11は当該コイル10に対して樹脂製のネジ19を用いて固定されるようになっている。
【0070】
より詳細には、
図7に示すように、コイル10は、内周側に空洞を有するコイル用ハウジング10h内に同軸に収容されており、第1磁心11は、前記空洞内に挿入され得る第1磁心用ハウジング11h内に同軸に収容されている。第1磁心用ハウジング11hの他方側の端部には、コイル用ハウジング10hの空洞よりも径方向外側に延伸するフランジ部分が設けられており、当該フランジ部分がコイル用ハウジング10hの他方側端部に密着された状態で、当該フランジ部分を貫通する樹脂製のネジ19が、コイル用ハウジング10hに設けられたネジ穴に挿嵌されている。これにより、コイル10の内部に第1磁心11が挿入された状態で、コイル10に対する第1磁心11の相対位置が所定位置に維持されるようになっている。また、樹脂製のネジ19を用いているため、コイル10が形成する交番磁場によりネジ19が誘導加熱されることが防止されている。
【0071】
図7に示すように、本実施の形態による磁束照射装置101は、コイル10の内部から第1磁心11が脱出された後、当該コイル10の内部に当該コイル10の軸線と平行に挿脱可能に挿入され得る第2磁心12を更に備えている。
【0072】
本実施の形態では、
図7に示すように、第2磁心12は、一方側の端部12aを規定する小断面積の柱状部12bと、当該小断面積の柱状部12bの軸方向に同軸に隣接する大断面積の柱状部12cと、を有している。例えば、小断面積の柱状部12bは、直径20mm、軸方向の長さ70mmの円柱形状を有している。また、例えば、大断面積の柱状部12cは、直径50mm、軸方向の長さ100mmの円柱形状を有してる。第2磁心12の材質は、例えば、Mn−Znフェライト材である。
【0073】
本実施の形態では、
図7に示すように、第2磁心12がコイル10の内部に当該コイル10の軸線と平行に挿入された状態で、第2磁心12の小断面積の柱状部12bはコイル10の一方側の端部10aより軸方向外側に突出されるようになっている。コイル10の一方側の端部10aに対する第2磁心12の小断面積の柱状部12bの突出量は、例えば20mmである。
【0074】
コイル10の内部に第2磁心12が挿入された状態で、電源からコイル10に所定の周波数で交流電流が供給されることにより、コイル10の内部に挿入された第2磁心12に軸方向と平行な交番磁束が形成され、当該交番磁束は小断面積の柱状部12bにおいて集束された後、第2磁心の一方側の端部12aから軸方向に第2のパターンで放射されるようになっている。
【0075】
ここで、第2磁心12の内部に形成される磁束は、第2磁心12の小断面積の柱状部12bがコイル10の一方側の端部10aに対して突出している分だけ長い距離を、軸方向と平行な状態で維持された後、第2磁心12の一方側の端部12aから軸方向に放射され得る。そのため、コイル10の内部に第2磁心12が挿入される場合、コイル10の内部に第1磁心11が挿入される場合と比べて、磁心の一方側の端部から照射される磁束の拡散開始位置が延伸され得る。
【0076】
コイル10の一方側の端部10aに対する第2磁心12の小断面積の柱状部12bの突出量は、50mm以下であることが好ましい。突出量が50mmより大きい場合、第2磁心12の内部に形成される磁束は、小断面積の柱状部12bの側面から外部に抜け出しやすくなり、一方側の端部12aから放射される磁束密度が減少する。
【0077】
本実施の形態では、コイル10の内部に第2磁心12が挿入された状態で、当該第2磁心12は当該コイル10に対して樹脂製のネジ19を用いて固定されるようになっている。
【0078】
より詳細には、
図7に示すように、第2磁心12は、コイル用ハウジング10hの空洞内に挿入され得る第2磁心用ハウジング12h内に同軸に収容されている。第2磁心用ハウジング12hの他方側の端部には、コイル用ハウジング10hの空洞よりも径方向外側に延伸するフランジ部分が設けられており、当該フランジ部分がコイル用ハウジング10hの他方側端部に密着された状態で、当該フランジ部分を貫通する樹脂製のネジ19が、コイル用ハウジング10hに設けられたネジ穴に挿嵌されている。これにより、コイル10の内部に第2磁心12が挿入された状態で、コイル10に対する第2磁心12の相対位置が所定位置に維持されるようになっている。
【0079】
次に、以上のような本実施の形態の作用について説明する。
【0080】
図8に示すように、凸面状を有する照射対象物30の内部に位置する被照射部31に磁束を照射する場合、第1磁心11がコイル10の内部に当該コイル10の軸線と平行に挿入された状態で、第1磁心11の一方側の端部11aが被照射部31に対向して配置される。第1磁心11の一方側の端部11aは、被照射部31に十分に(例えば被照射部31から5mmの位置まで)近づけて位置決めされる。
【0081】
この状態で、不図示の電源からコイル10に所定の周波数(例えば100kHz)で交流電流が供給される。これにより、コイル10の内部に挿入された第1磁心11に軸方向と平行な交番磁束が形成され、当該交番磁束は小径の筒状部11bにおいて集束された後、第1磁心11の一方側の端部11aから被照射部31に第1のパターンで照射される。ここでは、第1磁心11の一方側の端部11aは被照射部31に十分に近づけて位置決めされており、被照射部31には、例えば20mTの磁束密度で磁束が効果的に照射される。これにより、被照射部31に予め設けられた微粒子の感磁発熱体が磁気加熱され、当該感磁発熱体が発熱することにより被照射部31が加熱される。
【0082】
次に、
図9に示すように、凹面状を有する照射対象物40の底部に位置する被照射部41に磁束を照射する場合、第1磁心用ハウジング11h及びコイル用ハウジング10hから樹脂製のネジ19が外されて、コイル10の内部から第1磁心11が脱出された後、当該コイル10の内部に当該コイル10の軸線と平行に第2磁心12が挿入され、第2磁心用ハウジング12hがコイル用ハウジング10hに対して樹脂製のネジ19を用いて固定される。
【0083】
そして、コイル10の内部に挿入された第2磁心12の一方側の端部12aが、被照射部41に対向して配置される。
図9に示すように、コイル10は被照射部41の周囲の構造体と物理的に干渉するため、コイル10の一方側の端部10aを被照射部41に十分に(例えば被照射部41から5mmの位置まで)近づけることはできない。しかしながら、第2磁心12の小断面積の柱状部12bは、コイル10の一方側の端部10aより小径であって、当該端部10aより軸方向に突出しているため、被照射部41の周囲の構造体と物理的に干渉せずに、被照射部41に対して十分に(例えば被照射部31まで5mmの位置まで)近づけて位置決めされ得る。
【0084】
この状態で、不図示の電源からコイル10に所定の周波数(例えば100kHz)で交流電流が供給されることにより、コイル10の内部に挿入された第2磁心12に軸方向と平行な交番磁束が形成され、交番磁束は小断面積の柱状部12bにおいて集束された後、第2磁心12の一方側の端部12aから被照射部41に第2のパターンで照射される。
【0085】
ここで、第2磁心12の内部に形成される磁束は、第2磁心12の小断面積の柱状部12bがコイル10の一方側の端部10aに対して突出している分だけ長い距離を、軸方向と平行な状態で維持された後、第2磁心12の一方側の端部12aから軸方向に放射される。そのため、コイル10の一方側の端部10aを被照射部41に十分に近づけることはできなくても、第2磁心12の一方側の端部12aは被照射部41に十分に近づけて位置決めされ得るから、被照射部41には、例えば10mTの磁束密度で磁束が効果的に照射され得る。これにより、被照射部41に予め設けられた微粒子の感磁発熱体が磁気加熱され、当該感磁発熱体が発熱することにより被照射部41が加熱される。
【0086】
以上のような本実施の形態によれば、コイル10の内部から第1磁心11が脱出された後に当該コイル10の内部に第2磁心12が挿入されることにより、被照射部31又は41に対する磁束照射装置101の相対位置に応じて、磁束の照射パターンを第1のパターンから第2のパターンへと容易に変更することができる。
【0087】
また、本実施の形態によれば、コイル10の内部に第2磁心12が挿入される場合、第2磁心12の内部に形成される磁束は、第2磁心12の小断面積の柱状部12bが当該コイル10の一方側の端部10aに対して突出している分だけ長い距離を、軸方向と平行な状態で維持された後、第2磁心12の一方側の端部12aから軸方向に放射され得る。そのため、コイル10の内部に第1磁心11の代わりに第2磁心12が挿入されることにより、磁心の一方側の端部から照射される磁束の拡散開始位置が延伸され得て、第1磁心11の一方側の端部11aを十分に近づけることができない被照射部41に対しても磁束を効果的に照射することができる。
【0088】
なお、本実施の形態では、第1磁心11における小断面積の柱状部11bと大断面積の柱状部11cとは、それぞれ、円柱形状を有していたが、これに限定されず、それぞれ、角柱形状を有していてもよい。また、第2磁心12における小断面積の柱状部12bと大断面積の柱状部12cとは、それぞれ、円柱形状を有していたが、これに限定されず、それぞれ、角柱形状を有していてもよい。
【0089】
次に、
図10及び
図11を参照して、本発明の第4の実施の形態について説明する。
図10は、第4の実施の形態による磁束照射装置を示す概略側面視断面図である。
図11は、
図10の磁束照射装置における第3磁心から磁束が照射される態様を説明するための図である。
【0090】
図10に示すように、第4の実施の形態による磁束照射装置102は、第3の実施の形態による磁束照射装置101の第2磁心12の代わりに、第3磁心13(特許請求の範囲の請求項11及び12における第2磁心)を備えている。
【0091】
本実施の形態では、
図10に示すように、第3磁心13は、一方側の端部13aを規定する小断面積の柱状部13bと、当該小断面積の柱状部13bの軸方向に同軸に隣接する大断面積の柱状部13cと、を有している。例えば、小断面積の柱状部13bは、直径20mm、軸方向の長さ20mmの円柱形状を有している。また、例えば、大断面積の柱状部13cは、直径50mm、軸方向の長さ90mmの円柱形状を有している。第3磁心13の材質は、例えば、Mn−Znフェライト材である。
【0092】
本実施の形態では、
図10に示すように、第3磁心13がコイル10の内部に当該コイル10の軸線と平行に挿入された状態で、第3磁心13の一方側の端部13aはコイル10の一方側の端部10aより内側に没入されるようになっている。コイル10の一方側の端部10aに対する第3磁心13の一方側の端部13aの没入量は、例えば1mm〜10mmである。
【0093】
コイル10の内部に第3磁心13が挿入された状態で、電源からコイル10に所定の周波数で交流電流が供給されることにより、コイル10の内部に挿入された第3磁心13に軸方向と平行な交番磁束が形成され、当該交番磁束は小径の筒状部13bにおいて集束された後、第3磁心13の一方側の端部13aから軸方向に第3のパターンで照射されるようになっている。
【0094】
本実施の形態では、コイル10の内部に第3磁心13が挿入された状態で、当該第3磁心13は当該コイル10に対して樹脂製のネジ19を用いて固定されるようになっている。
【0095】
より詳細には、
図10に示すように、第3磁心13は、コイル用ハウジング10hの空洞内に挿入され得る第3磁心用ハウジング13h内に同軸に収容されている。第3磁心用ハウジング13hの他方側の端部には、コイル用ハウジング10hの空洞よりも径方向外側に延伸するフランジ部分が設けられており、当該フランジ部分がコイル用ハウジング10hの他方側端部に密着された状態で、当該フランジ部分を貫通する樹脂製のネジ19が、コイル用ハウジング10hに設けられたネジ穴に挿嵌されている。これにより、コイル10の内部に第3磁心13が挿入された状態で、コイル10に対する第3磁心13の相対位置が所定位置に維持されるようになっている。
【0096】
その他の構成は
図7乃至
図9に示す第3の実施の形態と略同様である。
図10及び
図11において、
図7乃至
図9に示す第3の実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0097】
次に、以上のような本実施の形態の作用について説明する。
【0098】
図8に示すように、凸面状を有する照射対象物30の内部に位置する被照射部31に磁束を照射する場合については、第1の実施の形態の場合と同様である。
【0099】
一方、
図11に示すように、凸面状を有する照射対象物50の表面から突出する被照射部51に磁束を照射する場合、第1磁心用ハウジング11h及びコイル用ハウジング10hから樹脂製のネジ19が外されて、コイル10の内部から第1磁心11が脱出された後、当該コイル10の内部に当該コイル10の軸線と平行に第3磁心13が挿入され、第3磁心用ハウジング13hがコイル用ハウジング10hに対して樹脂製のネジ19を用いて固定される。第3磁心13の一方側の端部13aはコイル10の一方側の端部10aより軸方向内側に没入されているため、コイル10の内部において第3磁心13の一方側の端部13aと対向する位置に中空の空間が形成される。
【0100】
そして、コイル10の内部に挿入された第3磁心13の一方側の端部13aが、被照射部51に対向して配置される。コイル10の内部において第3磁心13の一方側の端部13aと対向する位置に中空の空間が形成されているため、被照射部51は、当該中空の空間内に挿入されて位置決めされ得る。
【0101】
この状態で、不図示の電源からコイル10に所定の周波数(例えば100kHz)で交流電流が供給されることにより、コイル10の内部に挿入された第3磁心13に軸方向と平行な交番磁束が形成され、当該交番磁束は小断面積の柱状部13bにおいて集束された後、第3磁心13の一方側の端部13aから被照射部51に第3のパターンで照射される。
【0102】
ここで、被照射部51が挿入された前記中空の空間には、第3磁心13の一方側の端部13aから放射される磁束に加えて、コイル10によって強力な磁束が形成されている。そのため、当該中空の空間において大きな磁束密度が実現され得て、当該中空の空間内に挿入された被照射部51には、例えば30mTの磁束密度で磁束が効果的に照射され得る。これにより、被照射部51に予め設けられた微粒子の感磁発熱体が磁気加熱され、当該感磁発熱体が発熱することにより被照射部51が加熱される。
【0103】
以上のような第4の実施の形態によれば、コイル10の内部から第1磁心11が脱出された後に当該コイル10の内部に第3磁心13が挿入されることにより、被照射部31又は51に対する磁束照射装置102の相対位置に応じて、磁束の照射パターンを第1のパターンから第3のパターンへと容易に変更することができる。
【0104】
また、本実施の形態によれば、コイル10の内部に第3磁心13が挿入される場合、コイル10の内部において第3磁心13の一方側の端部13aと対向する位置に中空の空間が形成され、当該中空の空間には、第3磁心13の一方側の端部13aから放射される磁束に加えて、コイル10によって強力な磁束が形成され得る。そのため、コイル10の内部に第1磁心11の代わりに第3磁心13が挿入されることにより、前記中空の空間において大きな磁束密度が実現され得て、当該中空の空間内に挿入され得る被照射部51に対して磁束を一層効果的に照射することができる。
【0105】
なお、本実施の形態では、第3磁心13における小断面積の柱状部13bと大断面積の柱状部13cとは、それぞれ、円柱形状を有していたが、これに限定されず、それぞれ、角柱形状を有していてもよい。
【0106】
次に、
図12を参照して、本発明の第5の実施の形態について説明する。
図12は、第5の実施の形態による磁束照射装置を示す概略側面視断面図である。
【0107】
図12に示すように、第5の実施の形態による磁束照射装置103は、第4の実施の形態による磁束照射装置102の第1磁心11の代わりに、第2磁心12(特許請求の範囲の請求項12における第1磁心)を備えている。第2磁心12の構成は、
図7乃至
図9に示す第3の実施の形態における第2磁心12と同様である。
【0108】
その他の構成は
図10及び
図11に示す第4の実施の形態と略同様である。
図12において、
図10及び
図11に示す第4の実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0109】
以上のような第5の実施の形態によれば、コイル10の内部から第2磁心12が脱出された後に当該コイル10の内部に第3磁心13が挿入されることにより、被照射部41又は51に対する磁束照射装置103の相対位置に応じて、磁束の照射パターンが第2のパターンから第3のパターンへと容易に変更され得る。
【0110】
また、本実施の形態によれば、
図11に示すように、コイル10の内部に第3磁心13が挿入される場合、コイル10の内部において第3磁心13の一方側の端部13aと対向する位置に中空の空間が形成され、当該中空の空間には、第3磁心13の一方側の端部13aから放射される磁束に加えて、コイル10によって強力な磁束が形成され得る。そのため、コイル10の内部に第2磁心12の代わりに第3磁心13が挿入されることにより、前記中空の空間において大きな磁束密度が実現され得て、中空の空間内に挿入され得る被照射部51に対して磁束を一層効果的に照射することができる。また、本実施の形態によれば、
図9に示すように、コイル10の内部に第2磁心12が挿入される場合、第2磁心12の内部に形成される磁束は、第2磁心12の小径の筒状部12bが当該コイル10の一方側の端部10aに対して突出している分だけ長い距離を、軸方向と平行な状態で維持された後、第2磁心12の一方側の端部12aから軸方向に放射され得る。そのため、コイル10の内部に第3磁心13の代わりに第2磁心12が挿入されることにより、磁心の一方側の端部から照射される磁束の拡散開始位置が延伸され得て、第3磁心13の一方側の端部13aを十分に近づけることができない被照射部41に対しても磁束を効果的に照射することができる。
【0111】
次に、
図13乃至
図16を参照して、本発明の第6の実施の形態について説明する。
図13は、第6の実施の形態による磁束照射装置を示す概略側面視断面図である。
図14は、
図13の磁束照射装置における第4磁心を示す概略内部平面図である。
図15は、
図13の磁束照射装置において第1磁心及び第4磁心から照射される磁束密度を説明するためのグラフである。
図16は、
図13の磁束照射装置における第4磁心から磁束が照射される態様を説明するための図である。
【0112】
図13に示すように、第4の実施の形態による磁束照射装置104は、第1の実施の形態による磁束照射装置101の第2磁心12の代わりに、第4磁心14(特許請求の範囲の請求項13及び14における第2磁心)を備えている。
【0113】
本実施の形態では、
図14に示すように、第4磁心14は、コイル10の周方向に均等に配置され得る4個の柱状の第4磁心要素14e(特許請求の範囲の請求項13及び14における第2磁心要素)を有している。例えば、各第4磁心要素14eは、直径15mm、軸方向の長さ120mmの円柱形状を有している。各第4磁心要素14eの材質は、例えば、Mn−Znフェライト材である。図示された例において、周方向に隣り合う第4磁心要素14eは、互いに離間して配置されているが、これに限定されず、互いに当接して配置されていてもよい。ただし、磁心要素数が増えて磁心断面積が大きくなることにより、磁束密度の分散(低下)につながるため、離間配置がより好ましい。
【0114】
図13に示すように、第4磁心14がコイル10の内部に当該コイル10の軸線と平行に挿入された状態で、第4磁心14の一方側の端部14a(すなわち、各第4磁心要素14eの一方側の端部)は、コイル10の一方側の端部10aと同じ平面上に位置するようになっている。
【0115】
コイル10の内部に第4磁心14が挿入された状態で、電源からコイル10に所定の周波数で交流電流が供給されることにより、コイル10の内部に挿入された第4磁心14の各第4磁心要素14eに軸方向と平行な交番磁束が形成され、当該交番磁束は第4磁心14の一方側の端部14aから軸方向に第4のパターンで照射されるようになっている。
【0116】
図15は、本実施の形態による磁束照射装置104において第1磁心11及び第4磁心14から照射される磁束密度を説明するためのグラフである。
図15において、横軸はコイル10の一方側の端部10aを始点とする軸方向の距離を示し、符号L1は、第1磁心11の一方側の端部11aから照射される磁束密度を示し、符号L4は、第4磁心14の一方側の端部14aから照射される磁束密度を示している。
【0117】
本件発明者の実際の検証によれば、
図15に示すように、第4磁心14の一方側の端部14aから照射される磁束密度は、第1磁心11の一方側の端部11aから照射される磁束密度と比べて、減衰しにくい(磁束が拡散しにくい)ことが確認された。そのため、コイル10の内部に第1磁心11の代わりに第4磁心14が挿入されることにより、磁心の一方側の端部から照射される磁束の拡散が抑制され得る。
【0118】
本実施の形態では、コイル10の内部に第4磁心14が挿入された状態で、当該第4磁心14は当該コイル10に対して樹脂製のネジ19を用いて固定されるようになっている。
【0119】
より詳細には、
図13に示すように、第4磁心14は、コイル用ハウジング10hの空洞内に挿入され得る第4磁心用ハウジング14h内に同軸に収容されている。第4磁心用ハウジング14hの他方側の端部には、コイル用ハウジング10hの空洞よりも径方向外側に延伸するフランジ部分が設けられており、当該フランジ部分がコイル用ハウジング10hの他方側端部に密着された状態で、当該フランジ部分を貫通する樹脂製のネジ19が、コイル用ハウジング10hに設けられたネジ穴に挿嵌されている。これにより、コイル10の内部に第4磁心14が挿入された状態で、コイル10に対する第4磁心14の相対位置が所定位置に維持されるようになっている。
【0120】
その他の構成は
図7乃至
図10に示す第3の実施の形態と略同様である。
図13及び
図14において、
図7乃至
図10に示す第3の実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0121】
次に、以上のような本実施の形態の作用について説明する。
【0122】
図8(a)に示すように、凸面状を有する照射対象物30の内部に位置する被照射部31に磁束を照射する場合については、第3の実施の形態の場合と同様である。
【0123】
一方、
図16に示すように、凹面状を有する照射対象物60の底部に位置する被照射部61(特に、周囲の構造体が上方を遮るように突出している被照射部61)に磁束を照射する場合、第1磁心用ハウジング11h及びコイル用ハウジング10hから樹脂製のネジ19が外されて、コイル10の内部から第1磁心11が脱出された後、当該コイル10の内部に当該コイル10の軸線と平行に第4磁心14が挿入され、第4磁心用ハウジング14hがコイル用ハウジング10hに対して樹脂製のネジ19を用いて固定される。
【0124】
そして、コイル10の内部に挿入された第4磁心14の一方側の端部14aが被照射部61に対向して配置される。コイル10は被照射部61の周囲の構造体と物理的に干渉するため、第4磁心14の一方側の端部14aを被照射部61に十分に(例えば被照射部61から5mmの位置まで)近づけることはできず、被照射部61に対して、例えば30mm離されて位置決めされる。
【0125】
この状態で、不図示の電源からコイル10に所定の周波数(例えば100kHz)で交流電流が供給されることにより、コイル10の内部に挿入された第4磁心14の各第4磁心要素14eに軸方向と平行な交番磁束が形成され、当該交番磁束は第4磁心14の一方側の端部14aから被照射部61に第4のパターンで照射される。
【0126】
ここで、
図15に示すように、第4磁心14の一方側の端部14aから照射される磁束は拡散しにくい(磁束密度が減衰しにくい)。そのため、第4磁心14の一方側の端部14aは被照射部61から30mm離れた位置に位置決めされていても、被照射部61には、例えば10mTの磁束密度で磁束が効果的に照射され得る。これにより、被照射部61に予め設けられた微粒子の感磁発熱体が磁気加熱され、当該感磁発熱体が発熱することにより被照射部61が加熱される。
【0127】
以上のような第6の実施の形態によれば、コイル10の内部から第1磁心11が脱出された後に当該コイル10の内部に第4磁心14が挿入されることにより、被照射部31又は61に対する磁束照射装置104の相対位置に応じて、磁束の照射パターンを第1のパターンから第4のパターンへと容易に変更することができる。
【0128】
また、本実施の形態によれば、コイル10の内部に第4磁心14が挿入される場合、第4磁心14の一方側の端部14aから放射される磁束は拡散しにくい(磁束密度が減衰しにくい)。そのため、コイル10の内部に第1磁心11の代わりに第4磁心14が挿入されることにより、磁心の一方側の端部から照射される磁束の拡散が抑制され得て、第1磁心11の一方側の端部11aを十分に近づけることができない被照射部61に対しても磁束を効果的に照射することができる。
【0129】
なお、
図16に示すように被照射部61の周囲の構造体が当該被照射部61の上方を遮るように突出している場合、前述の第3の実施の形態及び第5の実施の形態における第2磁心12は、第2磁心12の一方側の端部12aを被照射部61に十分に近づけることができないため、有効に作用し得ないが、第6の実施の形態における第4磁心14は、第4磁心14の一方側の端部14aを被照射部61に十分に近づけることができなくても、有効に作用し得る。
【0130】
また、被照射部がコイル10の一方側の端部10aから20mm以上離れている場合、前述の第3の実施の形態及び第5の実施の形態における第2磁心12は、磁束の拡散抑制効果を20mm以上維持することが難しいため、有効に作用し得ないが、第6の実施の形態における第4磁心14は、磁束の拡散抑制効果を20mm以上維持することが可能であり、有効に作用し得る。
【0131】
なお、本実施の形態では、第4磁心要素14eの数は、4個であったが、これに限定されず、2個または3個であってもよく、5個以上であってもよい。
【0132】
また、本実施の形態では、各第4補助磁心要素14eは、それぞれ、円柱形状を有していたが、これに限定されず、それぞれ、角柱形状を有していてもよい。
【0133】
また、本実施の形態では、一方側の端部を規定する小断面積の柱状部と当該小断面積の柱状部に隣接する大断面積の柱状部とを有する磁心として、第1磁心11が採用されていたが、これに限定されず、前述の第2磁心12または第3磁心13が採用されていてもよい。
【0134】
次に、
図17及び
図18を参照して、本発明の第7の実施の形態について説明する。
図17は、第7の実施の形態による磁束照射装置を示す概略側面視断面図である。
図18は、
図17の磁束照射装置を示す概略内部平面図である。
【0135】
図17及び
図18に示すように、第7の実施の形態による磁束照射装置105は、第6の実施の形態による磁束照射装置104の第1磁心11の代わりに、第5磁心15(特許請求の範囲の請求項14における第1磁心)を備えている。
【0136】
本実施の形態では、
図18に示すように、第5磁心15は、コイル10の周方向に均等に配置され得る6個の筒状の第5磁心要素15e(特許請求の範囲の請求項14における第1磁心要素)を有している。例えば、各第5磁心要素15eは、直径10mm、軸方向の長さ120mmの円柱形状を有している。各第5磁心要素15eの材質は、例えば、Mn−Znフェライト材である。図示された例において、周方向に隣り合う第5磁心要素15eは、互いに離間して配置されているが、これに限定されず、互いに当接して配置されていてもよい。ただし、磁心要素数が増えて磁心断面積が大きくなることにより、磁束密度の分散(低下)につながるため、離間配置がより好ましい。
【0137】
図17に示すように、第5磁心15の一方側の端部15a(すなわち、各第5磁心要素15eの一方側の端部)は、コイル10の一方側の端部10aと同じ平面上に位置するようになっている。
【0138】
コイル10の内部に第5磁心15が挿入された状態で、電源からコイル10に所定の周波数で交流電流が供給されることにより、コイル10の内部に挿入された第5磁心15の各第5磁心要素15eに軸方向と平行な交番磁束が形成され、当該交番磁束は第5磁心15の一方側の端部15aから軸方向に第5のパターンで照射されるようになっている。
【0139】
本実施の形態では、コイル10の内部に第5磁心15が挿入された状態で、当該第5磁心15は当該コイル10に対して樹脂製のネジ19を用いて固定されるようになっている。
【0140】
より詳細には、
図17に示すように、第5磁心15は、コイル用ハウジング10hの空洞内に挿入され得る第5磁心用ハウジング15h内に同軸に収容されている。第5磁心用ハウジング15hの他方側の端部には、コイル用ハウジング10hの空洞よりも径方向外側に延伸するフランジ部分が設けられており、当該フランジ部分がコイル用ハウジング10hの他方側端部に密着された状態で、当該フランジ部分を貫通する樹脂製のネジ19が、コイル用ハウジング10hに設けられたネジ穴に挿嵌されている。これにより、コイル10の内部に第5磁心15が挿入された状態で、コイル10に対する第5磁心15の相対位置が所定位置に維持されるようになっている。
【0141】
その他の構成は
図13乃至
図16に示す第6の実施の形態と略同様である。
図17及び
図18において、
図13乃至
図16に示す第6の実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0142】
以上のような第7の実施の形態によれば、コイル10の内部から第5磁心15が脱出された後に当該コイル10の内部に第4磁心14が挿入されることにより、被照射部に対する磁束照射装置105の相対位置に応じて、磁束の照射パターンが第5のパターンから第4のパターンへと容易に変更され得る。
【0143】
また、本実施の形態によれば、第4磁心要素14eの数が第5磁心要素15eの数とは異なっているため、コイル10の内部に第5磁心15の代わりに第4磁心14が挿入されることにより、磁心の一方側の端部から照射される磁束の照射距離が容易に変更され得る。
【0144】
なお、本実施の形態では、第4磁心要素14eの数は4個であり、第5磁心要素15eの数は6個であったが、第4磁心要素14eの数と第5磁心要素15eの数とが互いに異なる限りでは、これらの数の組み合わせに限定されない。
【0145】
また、本実施の形態では、各第5補助磁心要素15eは、それぞれ、円柱形状を有していたが、これに限定されず、それぞれ、角柱形状を有していてもよい。
【0146】
前述の第3〜第7の実施の形態では、1個のコイル10に対して当該コイル10の内部に挿脱可能に挿入され得る磁心が、2個設けられていたが、これに限定されず、3個以上設けられていてもよい。コイル10の内部に挿脱可能に挿入され得る複数の磁心の組み合わせとしては、前述の第1〜第5磁心11〜15から任意の組み合わせが選択され得る。