【課題】 低屈折率層における耐エッチング性に優れ、透明導電層のパターン形状を安定的に不可視化することができ、かつ、透明導電層等との間の密着性に優れた透明導電層形成用積層体およびそれを用いた透明導電性フィルムを提供する。
【解決手段】 基材フィルムの少なくとも一方の表面に光学調整層を有する透明導電層形成用積層体等であって、光学調整層が、基材フィルム側から、屈折率が1.6以上の値である高屈折率層と、屈折率が1.45以下の値である低屈折率層と、を順に積層してなるとともに、低屈折率層がシリカ微粒子を含有し、かつ、低屈折率層の露出面側における、シリカ微粒子が存在しない空隙の割合を15%以上の値とする。
前記低屈折率層におけるマトリックス部分が活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の透明導電層形成用積層体。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、
図1(a)に示すように、基材フィルム4の少なくとも一方の表面に光学調整層2を有する透明導電層形成用積層体10であって、光学調整層2が、基材フィルム4の側から、屈折率が1.6以上の値である高屈折率層2bと、屈折率が1.45以下の値である低屈折率層2aと、を順に積層してなるとともに、低屈折率層2aがシリカ微粒子を含有し、かつ、
図2に示すように、低屈折率層2aの露出面側における、シリカ微粒子20が存在しない空隙22の割合(露出面の面積に対する空隙の割合)を15%以上の値とすることを特徴とする透明導電層形成用積層体10である。
なお、
図1(a)においては、基材フィルム4の両面にハードコート層3を有する態様の透明導電層形成用積層体10を一例として示しているが、ハードコート層3は省略することができる。
また、
図1(a)において、各層中の粒子は、シリカ微粒子や金属酸化物粒子を示す。
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を適宜参照して、具体的に説明する。
【0027】
1.基材フィルム
(1)種類
基材フィルムの種類としては、特に制限されるものではなく、光学用基材として公知の基材フィルムを用いることができる。
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルムを好ましく挙げることができる。
【0028】
また、これらの中でも、耐熱性の観点から、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルムであることがより好ましい。
また、透明性およびフィルム強度と柔軟性の両立の観点から、特にPETフィルムであることが好ましい。
【0029】
(2)膜厚
また、基材フィルムの膜厚を20〜200μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、基材フィルムの膜厚が20μm未満の値となると、基材フィルムの強度が低下することにより、光学調整層における透明導電層の存在部分と非存在部分とでのアニール処理時の歪みの発生を効果的に抑制することができなくなる場合があるためである。一方、基材フィルムの膜厚が200μmを超えた値となると、基材フィルムにおける透明性等の光学特性が悪化する場合があるためである。
したがって、基材フィルムの膜厚を30〜180μmの範囲内の値とすることがより好ましく、50〜150μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、「アニール処理」とは、透明導電性フィルムにおける透明導電層の電気伝導度を向上させるために、透明導電層形成用積層体上に積層された状態の透明導電層を加熱処理により結晶化する処理を意味する。
【0030】
2.ハードコート層
図1(a)に示すように、本発明の透明導電層形成用積層体10を構成するにあたり、基材フィルム4の両面もしくは片面にハードコート層3を設けることが好ましい。
この理由は、かかるハートコート層を設けることにより、透明導電層形成用積層体の製造工程において、基材フィルムに耐擦傷性を付与し、光学特性が低下することを防止することができるほか、基材フィルムをロール状に巻き取った場合に基材フィルム同士が貼りつく現象が発生することを抑制することができるためである(以下、かかる効果を「アンチブロッキング性」と称する場合がある)。
【0031】
(1)材料物質
また、ハードコート層が、材料物質としてシリカ微粒子および活性エネルギー線硬化性樹脂を含む組成物の硬化物からなることが好ましい。
この理由は、シリカ微粒子および活性エネルギー線硬化性樹脂を含むことにより、アンチブロッキング性を付与できるため、巻き取り性の向上が期待できるばかりか、ハードコート層の上層である高屈折率層との密着性についても向上させて、強固に積層させることができるためである。
【0032】
(1)−1 活性エネルギー線硬化性樹脂
また、ハードコート層の形成に用いられる活性エネルギー線硬化性樹脂とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線等を照射することにより、架橋、硬化する重合性化合物を意味し、例えば、光重合性プレポリマーや光重合性モノマーを挙げることができる。
【0033】
また、上述した光重合性プレポリマーには、ラジカル重合型とカチオン重合型があり、ラジカル重合型の光重合性プレポリマーとしては、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系等が挙げられる。
【0034】
また、ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得られる化合物が挙げられる。
また、エポキシアクリレート系プレポリマーとしては、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得られる化合物が挙げられる。
また、ウレタンアクリレート系プレポリマーとしては、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得られる化合物が挙げられる。
さらに、ポリオールアクリレート系プレポリマーとしては、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得られる化合物が挙げられる。
なお、これらの重合性プレポリマーは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
一方、カチオン重合型の光重合性プレポリマーとしては、通常、エポキシ系樹脂が使用される。
かかるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール樹脂やノボラック樹脂等の多価フェノール類にエピクロルヒドリン等でエポキシ化して得られる化合物、直鎖状オレフィン化合物や環状オレフィン化合物を過酸化物等で酸化して得られる化合物等が挙げられる。
【0036】
また、光重合性モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレートが挙げられる。
なお、これらの光重合性モノマーは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
(1)−2 光重合開始剤
また、活性エネルギー線硬化性樹脂を活性エネルギー線、特に紫外線によって効率的に硬化できることから、所望により光重合開始剤を併用することも好ましい。
かかる光重合開始剤としては、ラジカル重合型の光重合性プレポリマーや光重合性モノマーに対しては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステル等が挙げられる。
【0038】
また、カチオン重合型の光重合性プレポリマーに対する光重合開始剤としては、例えば、芳香族スルホニウムイオン、芳香族オキソスルホニウムイオン、芳香族ヨードニウムイオン等のオニウムと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート等の陰イオンからなる化合物等が挙げられる。
なお、これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、光重合開始剤の配合量としては、上述した活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、0.2〜10重量部の範囲内の値とすることが好ましく、1〜5重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0039】
(1)−3 シリカ微粒子
また、シリカ微粒子としては、重合性不飽和基含有有機化合物が結合したシリカ微粒子、あるいは、このような重合性不飽和基含有有機化合物を有さない通常のコロイダルシリカ微粒子を用いることができる。
また、重合性不飽和基含有有機化合物が結合したシリカ微粒子としては、体積平均粒子径(D50)が0.005〜1μm程度のシリカ微粒子の表面におけるシラノール基に、該シラノール基と反応し得る官能基を有する重合性不飽和基含有有機化合物を反応させることにより得られるものが挙げられる。
なお、上述した重合性不飽和基としては、例えば、ラジカル重合性のアクリロイル基やメタクリロイル基等が挙げられる。
また、重合性不飽和基含有有機化合物を有さない通常のコロイダルシリカ微粒子としては、体積平均粒子径が0.005〜1μm程度、好ましくは0.01〜0.2μm程度のシリカ微粒子が、アルコール系やセロソルブ系の有機溶剤中にコロイド状態で懸濁してなるコロイダルシリカを好適に用いることができる。
なお、シリカ微粒子の平均粒径は、例えば、ゼータ電位測定法により求めることができるほか、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて求めることもでき、さらに、SEM画像を基に求めることもできる。
また、シリカ微粒子の配合量としては、活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、5〜400重量部であることが好ましく、20〜150重量部であることがより好ましく、30〜100重量部であることがさらに好ましい。
【0040】
(2)ハードコート層形成用組成物
また、ハードコート層は、ハードコート層形成用組成物を予め調製し、後述の通り塗布・乾燥し、硬化することにより形成されることが好ましい。
当該組成物は、必要に応じ、適当な溶媒中に活性エネルギー線硬化性樹脂、光重合開始剤、シリカ微粒子、および所望により用いられる各種添加成分を、それぞれ所定の割合で加え、溶解または分散させることにより調製することができる。
なお、各種添加成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、(近)赤外線吸収剤、シラン系カップリング剤、光安定剤、レベリング剤、帯電防止剤、消泡剤等が挙げられる。
【0041】
また、用いる溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤等が挙げられる。
このようにして調製されたハードコート層形成用組成物の濃度、粘度としては、コーティング可能なものであればよく、特に限定されず、状況に応じて適宜選定することができる。
したがって、通常、得られるハードコート層形成用組成物の膜厚を所定の範囲に調節しやすい観点から、固形分濃度0.05〜10重量%となるように希釈することが好ましく、0.1〜8重量%となるように希釈することがより好ましい。
【0042】
(3)膜厚
また、ハードコート層の膜厚を1〜15μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、ハードコート層の膜厚が1μm未満の値となると、アニール処理による基材フィルムの熱収縮に対する保持機能が不十分になり、カールの発生を抑制できなくなる場合があるためである。一方、ハードコート層の膜厚が15μmを超えた値となると、アニール処理によりハードコート層からアウトガスが発生しやすくなる場合があるためである。
したがって、ハードコート層の膜厚を1.5〜10μmの範囲内の値とすることがより好ましく、2〜5μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0043】
3.光学調整層
(1)高屈折率層
(1)−1 屈折率
高屈折率層の屈折率を1.6以上の値とすることを特徴とする。
この理由は、高屈折率層の屈折率が1.6未満の値となると、低屈折率層との有意な屈折率差が得られなくなり、透明導電層のパターン形状が視認されやすくなる場合があるためである。一方、高屈折率層の屈折率が過度に大きな値になると、高屈折率層の膜が脆くなる場合があるためである。
したがって、高屈折率層の屈折率を1.61〜2の範囲内の値とすることがより好ましく、1.63〜1.8の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0044】
(1)−2 材料物質
また、高屈折率層が、材料物質としての金属酸化物微粒子および活性エネルギー線硬化性樹脂を含む組成物の硬化物からなることが好ましい。
この理由は、金属酸化物微粒子および活性エネルギー線硬化性樹脂を含むことにより、高屈折率層における屈折率の調整が容易になるためである。
【0045】
また、金属酸化物の種類は、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ハフニウム、酸化セリウム、酸化錫、酸化ニオブ、インジウム錫酸化物(ITO)、アンチモン錫酸化物(ATO)等が好ましく挙げられる。
また、透明性を低下させずに高屈折率化を実現する観点から、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選択される少なくとも1種類であることが特に好ましい。
なお、これらの金属酸化物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、金属酸化物微粒子の体積平均粒子径(D50)は、0.005μm〜1μmの範囲内の値とすることが好ましい。
なお、金属酸化物微粒子の体積平均粒子径(D50)は、例えば、ゼータ電位測定法を用いた測定法により求めることができるほか、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて求めることもでき、さらに、SEM画像を基に求めることもできる。
また、高屈折率層に使用される活性エネルギー線硬化性樹脂および光重合開始剤としては、ハードコート層の説明において挙げられたものを適宜使用することができる。
また、金属酸化物微粒子の配合量としては、活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、20〜2000重量部であることが好ましく、80〜1000重量部であることがより好ましく、150〜400重量部であることがさらに好ましい。
【0046】
(1)−3 高屈折率層形成用組成物
また、高屈折率層は、高屈折率層形成用の組成物を予め調製し、後述の通り塗布・乾燥し、硬化することにより形成されることが好ましい。
当該組成物は、必要に応じ、適当な溶媒中に活性エネルギー線硬化性樹脂、光重合開始剤、金属酸化物微粒子、および所望により用いられる各種添加成分を、それぞれ所定の割合で加え、溶解または分散させることにより調製することができる。
なお、各種添加成分、溶媒、高屈折率層形成用の組成物の濃度、粘度等については、ハードコート層の説明における内容と同様である。
【0047】
(1)−4 膜厚
また、高屈折率層の膜厚を20〜130nmとすることが好ましい。
この理由は、高屈折率層の膜厚が20nm未満の値となると、高屈折率層の膜が脆くなり、層の形状を維持できなくなる場合があるためである。一方、高屈折率層の膜厚130nmを超えた値となると、透明導電層のパターン形状が視認されやすくなる場合があるためである。
したがって、高屈折率層の膜厚を23〜120nmとすることがより好ましく、30〜110nmとすることがさらに好ましい。
【0048】
(2)低屈折率層
(2)−1 屈折率
低屈折率層の屈折率を1.45以下の値とすることを特徴とする。
この理由は、低屈折率層の屈折率が1.45を超えた値となると、高屈折率層との有意な屈折率差が得られなくなり、透明導電層のパターン形状が視認されやすくなる場合があるためである。一方、低屈折率層の屈折率が過度に小さな値となると、低屈折率層の膜が脆くなる場合があるためである。
したがって、低屈折率層の屈折率を1.3〜1.44の範囲内の値とすることがより好ましく、1.35〜1.43の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0049】
(2)−2 材料物質
また、本発明における低屈折率層は、材料物質として下記(A)〜(B)成分を含む低屈折率層形成用組成物を光硬化してなることが好ましい。
(A)活性エネルギー線硬化性樹脂 100重量部
(B)シリカ微粒子 2〜120重量部
この理由は、低屈折率層を形成する際に用いる低屈折率層形成用組成物が、活性エネルギー線硬化性樹脂に対し、シリカ微粒子を比較的少ない範囲で含むことにより、低屈折率層における空隙率を15%以上の値に調整することが容易になり、低屈折率層における耐エッチング性を効果的に向上させることができるためである。
また、活性エネルギー線硬化性樹脂は、硬化により低屈折率層におけるマトリックス部分を構成し、低屈折率層におけるシリカ微粒子をより効果的に保護し、さらに効果的に耐エッチング性を向上させることができる。
以下、成分ごとに説明する。
【0050】
(i)(A)成分:活性エネルギー線硬化性樹脂
(A)成分は、活性エネルギー線硬化性樹脂である。
かかる(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂としては、ハードコート層の説明において挙げられた光重合性プレポリマーや光重合性モノマーを適宜使用することができる。
【0051】
また、活性エネルギー線硬化性樹脂が、撥水性樹脂を含有することが好ましい。
この理由は、撥水性樹脂を含有することにより、低屈折率層におけるシリカ微粒子をさらに効果的に保護することができることから、より一段と効果的に耐エッチング性を向上させることができるためである。
また、撥水性樹脂であれば、主な活性エネルギー線硬化樹脂である(メタ)アクリル系紫外線硬化性樹脂と比較して屈折率が低いことから、低屈折率層の屈折率をより容易に所定の範囲にまで低下させることができるためである。
また、かかる撥水性樹脂としては、撥水性を有する樹脂であれば特に制限されるものではなく、従来公知の撥水性樹脂を用いることができる。
より具体的には、撥水性樹脂単体で形成した樹脂膜における表面自由エネルギーが10〜30mN/mの範囲内の値であれば、本発明における撥水性樹脂として好適に使用することができる。
【0052】
また、撥水性樹脂の具体例としては、例えば、シリコーン樹脂や、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ素系アクリル樹脂およびポリフルオロエチレン等のフッ素樹脂を挙げることができる。
また、中でも、フッ素樹脂を用いることが好ましく、特に反応性フッ素アクリル樹脂が好ましい。
この理由は、フッ素樹脂であれば、低屈折率層におけるシリカ微粒子をより効果的に保護することができることから、さらに効果的に耐エッチング性を向上させることができるためである。
【0053】
また、撥水性樹脂の含有量を、(A)成分全体を100重量%とした場合に、50〜90重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、撥水性樹脂の含有量が50重量%未満の値となると、低屈折率層におけるシリカ微粒子を効果的に保護することが困難になり、ひいては耐エッチング性を向上させることが困難になる場合があるためである。また、低屈折率層の屈折率を十分に低い値とすることが困難になる場合があるためである。一方、撥水性樹脂の含有量が90重量%を超えた値となると、低屈折率層の表面自由エネルギーが過度に低い値になってしまい、屈折率層に要求される透明導電層等に対する所定の密着性を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、撥水性樹脂の含有量を、(A)成分全体を100重量%とした場合に、60〜85重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、70〜80重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0054】
(ii)(B)成分:シリカ微粒子
(B)成分は、シリカ微粒子である。
かかるシリカ微粒子の種類としては、特に制限されるものではないが、中空シリカ微粒子を用いることが好ましい。
この理由は、中空シリカ微粒子であれば、内部の中空部分に空気を含むことから、シリカ微粒子全体としての屈折率がさらに低下することになり、少ない配合量であってもより効率的に低屈折率層の屈折率を所定の屈折率に調整することができるためである。
なお、「中空シリカ微粒子」とは、粒子の内部に空洞を有するシリカ微粒子を意味する。
【0055】
また、シリカ微粒子が反応性シリカ微粒子であることが好ましい。
この理由は、反応性シリカ微粒子であれば、低屈折率層に対してシリカ微粒子を強固に固定することができることから、より効果的に耐エッチング性を向上させることができるためである。
なお、「反応性シリカ微粒子」とは、重合性不飽和基含有有機化合物が結合したシリカ微粒子であり、シリカ微粒子の表面におけるシラノール基に、該シラノール基を反応し得る官能基を有する重合性不飽和基含有有機化合物を反応させることによって得ることができる。
また、上述した重合性不飽和基としては、例えば、ラジカル重合性のアクリロイル基やメタクリロイル基等が挙げられる。
【0056】
また、シリカ微粒子の体積平均粒子径(D50)を20〜70nmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、シリカ微粒子の体積平均粒子径(D50)をかかる範囲内の値とすることにより、低屈折率層における透明性を低下させることなく、所定の屈折率を得ることができるためである。
すなわち、シリカ微粒子の体積平均粒子径(D50)が20nm未満の値となると、特に中空シリカ微粒子の場合、その構造上、粒子内部の空洞部を十分に確保することが困難になり、低屈折率層の屈折率を低下させる効果が不十分になる場合があるためである。一方、シリカ微粒子の体積平均粒子径(D50)が70nmを超えた値となると、光の散乱が生じやすくなって、低屈折率層における透明性が低下しやすくなる場合があるためである。
したがって、シリカ微粒子の体積平均粒子径(D50)を30〜60nmの範囲内の値とすることがより好ましく、40〜50nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、シリカ微粒子の体積平均粒子径(D50)は、例えば、ゼータ電位測定法により求めることができるほか、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて求めることもでき、さらに、SEM画像を基に求めることもできる。
【0057】
また、シリカ微粒子の配合量を、(A)成分としての撥水性樹脂を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、2〜120重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、シリカ微粒子の配合量が2重量部未満の値となると、低屈折率層の屈折率を十分に低下させることが困難になったり、低屈折率層の表面に十分な表面凹凸を形成することが困難になり、透明導電層等に対する所定の密着性を得ることが困難になったりする場合があるためである。一方、シリカ微粒子の配合量が120重量部を超えた値となると、低屈折率層における空隙率を15%以上の値に調整することが困難になり、過酷なアルカリ処理を含むエッチング処理を行った場合に、低屈折率層におけるシリカ微粒子が溶けたり、脱落したりしやすくなったりする場合があるためである。
したがって、シリカ微粒子の配合量を、(A)成分としての撥水性樹脂を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、30〜110重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、50〜100重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0058】
(2)−3 低屈折率層形成用組成物
また、低屈折率層は、低屈折率層形成用組成物を予め調製し、後述の通り塗布・乾燥し、硬化させることにより形成される。
当該組成物は、必要に応じ、適当な溶媒中に上述した(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂、および(B)成分としてのシリカ微粒子、並びに、光重合開始剤その他の各種添加成分をそれぞれ所定の割合で加え、溶解または分散させることにより調製することができる。
なお、各種添加成分、溶媒、低屈折率層形成用組成物の濃度、粘度等については、ハードコート層の説明における内容と同様である。
【0059】
(2)−4 膜厚
また、低屈折率層の膜厚を20〜80nmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、低屈折率層の膜厚をかかる範囲内の値とすることにより、十分な耐エッチング性を得ることができ、これにより、透明導電層のパターン形状をより安定的に不可視化することができ、さらに、シリカ微粒子の配合量を調整することにより容易に空隙率や表面粗さを制御することができるためである。
すなわち、低屈折率層の膜厚が20nm未満の値となると、低屈折率層の膜が脆くなり、耐エッチング性が不十分になる場合があるためである。一方、低屈折率層の膜厚が80nmを超えた値となると、透明導電層のパターン形状が視認されやすくなると同時に、後述する空隙の定義上、空隙率の算出が行えなくなる場合があるためである。
したがって、低屈折率層の膜厚を25〜70nmの範囲内の値とすることがより好ましく、40〜60nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0060】
(2)−5 空隙率
本発明においては、
図2に示すように、低屈折率層2aの露出面側における、シリカ微粒子20が存在しない空隙22の割合(露出面の面積に対する空隙の割合)を15%以上の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかる空隙率を15%以上の値とすることにより、過酷なアルカリ処理を含むエッチング処理を行った場合であっても、その前後での低屈折率層における空隙変化率を効果的に小さくすることができるためである。
すなわち、エッチング処理によって、低屈折率層におけるシリカ微粒子が溶けたり、脱落したりすることを効果的に抑制することができる。
【0061】
より具体的には、
図1(a)に示すように、低屈折率層2aにおける空隙率の値が大きい場合、樹脂からなるマトリックス部分の存在割合が多くなるため、過酷なアルカリ処理を行った場合であっても、シリカ微粒子がマトリックス部分に効果的に保護され、溶けたり、脱落したりすることを効果的に抑制することができる。
一方、
図1(b)に示すように、低屈折率層2a´における空隙率の値が小さい場合、樹脂からなるマトリックス部分の存在割合が少なくなるため、過酷なアルカリ処理を行った場合には、シリカ微粒子がマトリックス部分によって十分に保護されず、溶けたり、脱落したりしやすくなる。
したがって、空隙率を実験により実証された値である15%以上の値とすることにより、過酷なアルカリ処理を含むエッチング処理を行った場合であっても、低屈折率層に要求される所定の屈折率を効果的に維持することができ、ひいては、透明導電層のパターン形状を安定的に不可視化することができる。
また、過酷なアルカリ処理を含むエッチング処理を行った場合であっても、その前後での低屈折率層における空隙変化率を効果的に小さくすることができることから、シリカ微粒子に起因した低屈折率層の表面における微細な凹凸も効果的に維持することができる。
したがって、低屈折率層の表面におけるぬれ張力を所定の範囲に維持して、低屈折率層に要求される透明導電層等に対する所定の密着力を得ることができる。
【0062】
一方、かかる空隙率が過度に大きな値になると、低屈折率層の屈折率を十分に低下させることが困難になったり、低屈折率層の表面に十分な表面凹凸を形成することが困難になり、透明導電層等に対する所定の密着性を得ることが困難になったりする場合がある。
したがって、低屈折率層の露出面側における、シリカ微粒子が存在しない空隙の割合、すなわち空隙率を20〜70%の範囲内の値とすることがより好ましく、22〜40%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0063】
また、上述した空隙率は、例えば、走査型電子顕微鏡を用いて低屈折率層の露出面側の反射電子像を得て、得られた反射電子像について、画像処理ソフトを用いて二値化し、シリカ微粒子が存在しない空隙の割合、すなわち空隙率を測定することが好ましい。
あるいは、走査型電子顕微鏡を用いて低屈折率層の露出面側の反射電子像を得て、得られた反射電子像を拡大コピーしてプリントアウトし、シリカ微粒子が存在する領域と、シリカ微粒子が存在しない空隙の領域と、をハサミで切り分け、切り分けた紙の重量から空隙率を測定することもできる。
なお、本発明における空隙の定義としては、「シリカ微粒子が存在しない領域であって、その領域に内接する最大の円を描いた場合に、その円の直径が0.2μm以上である領域」とする。
また、シリカ微粒子が存在しないか否かは、露出面におけるその平面位置の膜厚方向において、シリカ微粒子が1つも存在しないことを意味する。
したがって、例えば、膜厚方向における表面近くにはシリカ微粒子が存在しない場合であっても、膜厚方向における底面近くにシリカ微粒子が存在するのであれば、その平面位置において「シリカ微粒子が存在する」と判断される。
【0064】
また、透明導電層形成用積層体を、40℃に加温した5重量%の水酸化ナトリウム水溶液に5分間浸漬させてアルカリ処理した前後での低屈折率層における空隙率の増加率(%)、すなわち空隙増加率(%)を26%以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる空隙増加率を26%以下の値とすることにより、過酷なアルカリ処理を含むエッチング処理に対する耐エッチング性を、より確実に向上させることができるためである。
すなわち、かかる空隙増加率が26%を超えた値となると、エッチング処理によって、低屈折率層におけるシリカ微粒子が溶けたり、脱落したりすることを効果的に抑制することが困難になる場合があるためである。一方、かかる空隙増加率の下限値は0%であることが好ましい。しかし、小さな値になると、低屈折率層の屈折率を十分に低下させることが困難になったり、低屈折率層の表面に十分な表面凹凸を形成することが困難になり、透明導電層等に対する所定の密着性を得ることが困難になったりする場合がある。
したがって、透明導電層形成用積層体を、40℃に加温した5重量%の水酸化ナトリウム水溶液に5分間浸漬させてアルカリ処理した前後での低屈折率層における空隙率の増加率、すなわち空隙増加率を10〜25%の範囲内の値とすることがより好ましく、19〜24%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0065】
(2)−6 表面自由エネルギー
また、低屈折率層におけるJIS K 6768に準拠して23℃の条件下で測定される表面自由エネルギーを37mN/m以上の値とすることが好ましい。
この理由は、低屈折率層の露出面における表面自由エネルギーをかかる範囲内の値とすることにより、耐エッチング性を向上させつつも、低屈折率層に要求される透明導電層等に対する所定の密着性をより効果的に得ることができるためである。
すなわち、かかる表面自由エネルギーが37mN/m未満の値となると、透明導電層等に対する所定の密着性を得ることが困難になる場合があるためである。一方、かかる表面自由エネルギーが過度に大きな値になると、表面保護のために透明導電層形成用積層体に積層される保護フィルムとの密着性が過度に強くなって、保護フィルムの剥離工程において作業効率の低下を招く場合がある。
したがって、低屈折率層の露出面におけるJIS K 6768に準拠して測定される表面自由エネルギーを40〜65mN/mの範囲内の値とすることがより好ましく、45〜60mN/mの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0066】
4.透明導電層形成用積層体の製造方法
本発明の透明導電層形成用積層体は、例えば、下記工程(a)〜(b)を含む製造方法により得ることができる。
(a)基材フィルムの両面にハードコート層を形成する工程
(b)一方のハードコート層上に、光学調整層を形成する工程
以下、これまでの内容と重複する部分は省略し、異なる部分のみを詳述する。
なお、本発明の透明導電層形成用積層体は、ハードコート層を必須の構成要件としていないが、以下の説明においては、ハードコート層を形成した場合を例に挙げて説明する。
【0067】
(1)工程(a):ハードコート層を形成する工程
基材フィルムの両面に、上述したハードコート層形成用組成物を、従来公知の方法にて塗布し塗膜を形成した後、乾燥し、これに活性エネルギー線を照射して塗膜を硬化させることにより、ハードコート層が形成される。
また、ハードコート層形成用組成物の塗布方法としては、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0068】
また、乾燥条件としては、60〜150℃で10秒〜10分程度行うことが好ましい。
さらに、活性エネルギー線としては、例えば、紫外線や電子線等が挙げられる。
また、紫外線の光源としては、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が挙げられ、その照射量は、通常、100〜500mJ/cm
2とすることが好ましい。
一方、電子線の光源としては、電子線加速器等が挙げられ、その照射量は、通常、150〜350kVとすることが好ましい。
【0069】
(2)工程(b):光学調整層を形成する工程
次いで、形成されたハードコート層上に(ハードコート層を形成しない場合は、基材フィルム上に直接)、高屈折率層を形成する。
すなわち、高屈折率層は、基材フィルム上にハードコート層を形成するのと同様にして、上述した高屈折率層形成用組成物を塗布・乾燥するとともに、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより形成することができる。
次いで、形成された高屈折率層上に、さらに低屈折率層を形成する。
すなわち、低屈折率層は、基材フィルム上にハードコート層を形成するのと同様にして、上述した低屈折率層形成用組成物を塗布・乾燥するとともに、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより形成することができる。
【0070】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、
図3に示すように、基材フィルム4の少なくとも一方の表面に光学調整層2と、透明導電層1と、を順に積層してなる透明導電性フィルム100であって、光学調整層2が、基材フィルム4の側から、屈折率が1.6以上の値である高屈折率層2bと、屈折率が1.45以下の値である低屈折率層2aと、を順に積層してなるとともに、低屈折率層2aがシリカ微粒子を含有し、かつ、低屈折率層2aの露出面側における、シリカ微粒子が存在しない空隙の割合を15%以上の値とすることを特徴とする透明導電性フィルム100である。
以下、本発明の第2の実施形態を、これまでの内容と重複する部分は省略し、異なる部分のみを詳述する。
【0071】
1.透明導電層
(1)材料物質
本発明の透明導電性フィルムにおいて、透明導電層の材料物質としては、透明性と導電性とを併せ持つものであれば特に制限されるものではないが、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫、インジウム錫酸化物(ITO)、錫アンチモン酸化物、亜鉛アルミニウム酸化物、インジウム亜鉛酸化物等が挙げられる。
また、特に、材料物質としてITOを用いることが好ましい。
この理由は、ITOであれば、適当な造膜条件を採用することで、透明性および導電性に優れた透明導電層を形成することができるためである。
【0072】
(2)パターン形状
また、透明導電層が、エッチングによりライン状若しくは格子状のようなパターン形状に形成されてなることが好ましい。
また、上述したパターン形状は、透明導電層の存在する部分の線幅と、透明導電層が存在しない部分の線幅とが、略等しいことが好ましい。
さらに、当該線幅は、通常、0.1〜10mmであり、好ましくは、0.2〜5mmであり、特に好ましくは0.5〜2mmである。
なお、上述したライン状若しくは格子状における線幅は一定である場合に限られず、例えば、静電容量式のタッチパネルに要求される形状に連なるもの等を自由に選択することができる。
具体的には、ひし形部分と線部が繰り返し連なったパターン形状等が挙げられ、このようなパターン形状も「ライン状」の範疇に含まれる。
【0073】
(3)膜厚
また、透明導電層の厚さは、5〜500nmであることが好ましい。
この理由は、透明導電層の厚さが5nm未満の値となると、透明導電層が脆くなるばかりか、十分な導電性が得られなくなる場合があるためである。一方、透明導電層の厚さが500nmを超えた値となると、透明導電層に起因した色味が強くなり、パターン形状が認識されやすくなる場合があるためである。
したがって、透明導電層の厚さは、15〜250nmであることがより好ましく、20〜100nmであることがさらに好ましい。
【0074】
2.透明導電性フィルムの製造方法
上述した透明導電層形成用積層体の製造方法における工程(b)で得られた光学調整層に対し、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法、ゾル−ゲル法等の公知の方法により、透明導電層を形成することにより、透明導電性フィルムを得ることができる。
また、スパッタリング法としては、化合物を用いた通常のスパッタリング法、あるいは金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法等が挙げられる。
この際、反応性ガスとして酸素、窒素、水蒸気等を導入したり、オゾン添加やイオンアシスト等を併用したりすることも好ましい。
また、透明導電層は、上述したようにして製膜した後、フォトリソグラフィー法により所定のパターンのレジストマスクを形成した後、公知の方法によりエッチング処理を施すことで、ライン状のパターン等を形成することができる。
なお、エッチング液としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の酸の水溶液等が好ましく挙げられる。
また、エッチング処理の最終工程である残留したフォトレジストを除去するためのアルカリ処理に用いられる液としては、エッチング処理の迅速化の観点から、液温10〜50℃、濃度1〜10重量%、pH13.4〜14.4の強塩基水溶液を用いることが好ましい。
また、好適な強塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化ユウロピウム(II)、水酸化タリウム(I)、グアニジン等が挙げられる。
【0075】
また、透明導電層の結晶性を高めて、抵抗率を低下させるために、アニール工程を設けて所定のアニール処理を行うことが好ましい。
すなわち、得られた透明導電性フィルムを130〜180℃の温度条件下に0.5〜2時間曝すことが好ましい。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を参照して、本発明の透明導電層形成用積層体等をさらに詳細に説明する。
【0077】
[実施例1]
1.ハードコート層形成用組成物の調製
容器内に、アモルファスシリカ含有紫外線硬化性樹脂(昭和電工(株)製、ビニロール FC−1000)を60重量部(希釈溶剤を除いた純分を表す。以下同じ。)と、アモルファスシリカ分散液のシリカを45重量部と、架橋アクリル系共重合樹脂(積水化成品工業(株)製、テクポリマー XX−27LA)を0.03重量部と、シリコーン系レベリング剤(ビックケミー・ジャパン(株)製、BKY−3550)を0.03重量部と、を収容した後、溶剤を加えて均一に混合し、固形分濃度22重量%のハードコート層形成用組成物を調製した。
【0078】
2.高屈折率層形成用組成物の調製
容器内に、紫外線硬化性樹脂(大日精化工業(株)製、セイカビーム EXF−01L(NS))を100重量部と、酸化ジルコニウム分散液(CIKナノテック(株)製、ZRMIBK15WT%−F85)を200重量部と、アクリル系レベリング剤(ビックケミー・ジャパン(株)製、BYK−355)を0.05重量部と、光重合開始剤(BASFジャパン(株)製、イルガキュア 907)を3重量部と、を収容した後、溶剤を加えて均一に混合し、固形分濃度1重量%の高屈折率層形成用組成物を調製した。
【0079】
3.低屈折率層形成用組成物の調製
容器内に、(A)成分としての撥水性樹脂を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂と、(B)成分としてのシリカ微粒子と、(C)成分としてのレベリング剤と、(D)成分としての光重合開始剤と、を下記組成にて収容した後、溶剤を加えて均一に混合し、固形分濃度1重量%の低屈折率層形成用組成物を調製した。
なお、下記組成および表1に示す組成における配合量は、希釈溶剤を除いた純分を表す。
(A)成分:フッ素樹脂を含有する紫外線硬化性アクリル樹脂
100重量部
(フッ素樹脂の種類:反応性フッ素アクリル樹脂、フッ素樹脂の含有量:80重量%、フッ素樹脂単体の硬化樹脂塗膜の表面自由エネルギー:25mN/m)
(B)成分:反応性中空シリカ微粒子 100重量部
(体積平均粒子径(D50)45nm)
(C)成分:シリコーン系レベリング剤 0.03重量部
(ビックケミー・ジャパン(株)製、BYK−3550)
(D)成分:光重合開始剤 10重量部
(BASFジャパン(株)製、イルガキュア 184)
なお、上述した(B)成分の体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置にて測定した。
また、以下において、上述した(D)成分としての光重合開始剤を「イルガキュア 184」と称する場合がある。
【0080】
4.ハードコート層の形成
基材フィルムとして、膜厚125μmの易接着層付きポリエステルフィルム(帝人デュポン(株)製、PET125KEL86W)を用意した。
次いで、用意した基材フィルムの表面に、ハードコート層形成用組成物をワイヤーバー#8にて塗工した。
次いで、70℃で1分間乾燥させた後、窒素雰囲気下において紫外線照射装置(ジーエスユアサコーポレーション(株)製)を用いて下記条件にて紫外線を照射し、基材フィルムの表面に膜厚2μmのハードコート層を形成した。
また、基材フィルムの反対側の面にも、同様にしてハードコート層を形成した。
光源:高圧水銀灯
照度:150mW/cm
2
光量:150mJ/cm
2
【0081】
5.高屈折率層の形成
次いで、形成した一方のハードコート層上に、高屈折率形成用組成物をワイヤーバー#4にて塗工した。
次いで、50℃で1分間乾燥させた後、窒素雰囲気下において紫外線照射装置(ジーエスユアサコーポレーション(株)製)を用いてハードコート層と同じ照射条件にて紫外線を照射し、ハードコート層上に膜厚35nm、屈折率n
D=1.65の高屈折率層を形成した。
【0082】
6.低屈折率層の形成
次いで、形成した高屈折率層上に、低屈折率層形成用の組成物をワイヤーバー#4にて塗工した。
次いで、50℃で1分間乾燥させた後、窒素雰囲気下において紫外線照射装置(ジーエスユアサコーポレーション(株)製)を用いてハードコート層と同じ照射条件にて紫外線を照射し、高屈折率層上に膜厚50nm、屈折率n
D=1.37の低屈折率層を形成し、
図1(a)に示すような透明導電層形成用積層体を得た。
【0083】
7.空隙率の測定
得られた透明導電層形成用積層体の低屈折率層の露出面側における、シリカ微粒子が存在しない空隙の割合、すなわち空隙率(%)を測定した。
すなわち、電解放出型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)(日立ハイテクノロジーズ(株)製、S−4700)を用いて、加速電圧10kV、測定倍率5000倍の条件にて、得られた透明導電層形成用積層体における低屈折率層の露出面側の反射電子像(観察範囲:450×575μm
2)を得た。
次いで、得られた反射電子像について、画像処理ソフト(Cybernetic(株)製、Image Pro−plus)を用いて二値化し、シリカ微粒子が存在しない空隙の割合、すなわち空隙率(%)を測定したところ、空隙率は24.1%であった。
なお、得られた反射電子像を
図4(a)に示す。
【0084】
8.評価
(1)耐エッチング性の評価1
得られた透明導電層形成用積層体における耐エッチング性を、低屈折率層における空隙率(%)の増加率(%)(以下、「空隙増加率」と称する場合がある)により評価した。
すなわち、透明導電層形成用積層体を、40℃に加温した5重量%の水酸化ナトリウム水溶液に5分間浸漬させてアルカリ処理した後、上述した条件と同条件にて低屈折率層における空隙率(%)を測定した。得られた反射電子像を
図4(b)に示す。
次いで、アルカリ処理後の空隙率(%)をアルカリ処理前の空隙率(%)で割って空隙増加率(%)を算出した。得られた結果を表1に示す。
なお、空隙増加率が26%以下の値であれば、実用上、優れた耐エッチング性を有すると判断できる。
【0085】
(2)耐エッチング性の評価2
得られた透明導電層形成用積層体における耐エッチング性を、透明導電層形成用積層体の反射率(%)の変化量(%)(以下、「反射率変化量」と称する場合がある)により評価した。
すなわち、得られた透明導電層形成用積層体の反射率(%)(低屈折率層側)を紫外可視近赤外(UV−vis−NIR)分光光度計(島津製作所(株)製、UV−3600)を用いて、反射角度:8°、サンプリングピッチ:1nm、測定モード:シングルの条件にて測定した。
次いで、透明導電層形成用積層体を、40℃に加温した5重量%の水酸化ナトリウム水溶液に5分間浸漬させてアルカリ処理した後、上述した条件と同条件にて反射率(%)を測定した。
次いで、アルカリ処理前の反射率(%)からアルカリ処理後の反射率(%)を引いて反射率変化量(%)を算出した。得られた結果を表1に示す。
なお、反射率変化量が0.5%以下の値であれば、実用上、優れた耐エッチング性を有すると判断できる。
また、反射率変化量(%)により耐エッチング性を評価できる理由は、エッチング処理により低屈折率層の膜厚または屈折率もしくは両方が変化すると、低屈折率層の反射率が変化するためである。
【0086】
(3)耐エッチング性の評価3
得られた透明導電層形成用積層体における耐エッチング性を、低屈折率層の露出面における算術平均表面粗さRa(nm)の変化量(nm)(以下、「Ra変化量」と称する場合がある)により評価した。
すなわち、を光干渉式表面粗さ計(Veeco(株)製、WYKO NT−1100)を用いて、Measurement Type:PSI(Infinite Scan)、Objective:10.0X、FOV:1.0Xの条件にて、得られた透明導電層形成用積層体における低屈折率層の露出面における算術平均粗さRa(nm)を測定した。
次いで、Terms Removal:Tilt Only(Plane Fit)、Window Filtering:Noneにてデータ解析を行い、算術平均表面粗さRa(nm)を測定した。
次いで、得られた透明導電層形成用積層体を、40℃に加温した5重量%の水酸化ナトリウム水溶液に5分間浸漬させてアルカリ処理した後、上述した条件と同条件にて算術平均表面粗さRa(nm)を測定した。
次いで、アルカリ処理前の算術平均表面粗さRa(nm)からアルカリ処理後の算術平均表面粗さRa(nm)を引いてRa変化量(nm)を算出した。得られた結果を表1に示す。
なお、算術平均表面粗さ変化量が10nm未満の値であれば、実用上、優れた耐エッチング性を有すると判断できる。
【0087】
(4)パターン視認性の評価
得られた透明導電層形成用積層体の低屈折率層の表面に対し、パターン化された透明導電層を形成し、その視認性を評価した。
すなわち、得られた透明導電層形成用積層体を縦90mm×横90mmにカットした後、ITOターゲット(酸化錫10重量%、酸化インジウム90重量%)を用いてスパッタリングを行い、低屈折率層上の中央部に縦60mm×横60mmの正方形状、膜厚30nmの透明導電層を形成した。
次いで、得られた透明導電層の表面上に格子状にパターン化されたフォトレジスト膜を形成した。
次いで、室温下にて、10重量%の塩酸に1分間浸漬することによりエッチング処理を行い、透明導電層を格子状にパターン化した。
次いで、40℃に加温した5重量%の水酸化ナトリウム水溶液に5分間浸漬させてアルカリ処理を行い、透明導電層上のフォトレジスト膜を除去し、パターン化された透明導電層を有する透明導電性フィルムを得た。
当該透明導電性フィルムは、線幅2mmのITOからなる線部により1辺が2mmの正方形の空隙が格子状に区画化されたパターン形状を有する30nmの透明導電層を有するものであった。
次いで、得られた透明導電性フィルムを、白色蛍光灯から1mの位置に設置し、透明導電性フィルムに白色蛍光灯を映りこませた状態で、白色蛍光灯が設置されているのと同じ側における透明導電性フィルムから30cmの位置より、目視にて透明導電層のパターン形状を観察し、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:透明導電層のパターン形状が視認されない
○:透明導電層のパターン形状がわずかに視認される
×:透明導電層のパターン形状が視認される
【0088】
(5)表面自由エネルギーの評価
得られた透明導電層形成用積層体におけるJIS K 6768に準拠して23℃の条件下で測定される表面自由エネルギー(mN/m)の評価をした。
すなわち、得られた透明導電層形成用積層体に最表層である低屈折率層の上面に、綿棒を用いて所定表面張力のぬれ張力試験液を、幅10mm、長さ60mmになるように塗布した。
そして、ぬれ張力試験液の塗膜がそのまま2秒間途切れなければ、その表面自由エネルギーにおいて合格と判断し、順次、より表面張力の高いぬれ張力試験液を用いて同じ作業を続け、ぬれ張力試験液の塗膜が2秒以内に途切れるまで繰り返し、合格した最も高い表面自由エネルギーを、測定結果とした。得られた結果を表1に示す。
なお、熱力学上、ぬれ張力と表面自由エネルギーは同義であることから、本発明においてはぬれ張力を表面自由エネルギーと記載する。
【0089】
[実施例2および比較例1〜2]
実施例2および比較例1〜2では、低屈折率層形成用組成物を調製する際に、反応性中空シリカ微粒子(体積平均粒子径(D50)45nm)の配合量を、表1に記載の通り変更することにより、得られる透明導電層形成用積層体の低屈折率層の空隙率を表1に記載の通りに変更したほかは、実施例1と同様に透明導電層形成用積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、
図5(a)は、比較例1におけるアルカリ処理前の透明導電層形成用積層体における低屈折率層の露出面の反射電子像であり、
図5(b)は、比較例1におけるアルカリ処理後の透明導電層形成用積層体における低屈折率層の露出面の反射電子像である。
【0090】
【表1】