【解決手段】本発明の剥離フィルム10は、基材11と、基材11の上に設けられた樹脂層12と、樹脂層12の基材11と反対側の面に設けられた剥離剤層13とを備える剥離フィルムであって、樹脂層12が、炭素数4〜18のアルキル基を有するアルキル化メラミン樹脂(A)を主成分として含む硬化性材料を硬化してなるものであり、剥離剤層13の表面13Aには、平均山高さが0.5μm以上となる稜線が存在するように凹凸が設けられる。
前記剥離剤層表面は、算術平均粗さRaが0.1〜5μmであるとともに、粗さ曲線における最大山高さRpが0.3〜10μmである請求項1又は2に記載の剥離フィルム。
前記剥離剤層が、シリコーン樹脂系剥離剤、アルキド樹脂系剥離剤、オレフィン樹脂系剥離剤、アクリル系剥離剤、長鎖アルキル基含有化合物系剥離剤、及びゴム系剥離剤から選択される少なくとも1種の剥離剤から構成される請求項1〜8のいずれか1項に記載の剥離フィルム。
請求項1〜11のいずれか1項に記載の剥離フィルムと、前記剥離フィルムの剥離剤層の表面上に設けられた粘着剤層と、前記粘着剤層の上にさらに設けられた粘着シート基材とを備える粘着シート。
炭素数4〜18のアルキル基を有するアルキル化メラミン樹脂(A)を主成分として含む硬化性材料を基材に塗布して、その硬化性材料を硬化することで、凹凸が表面に設けられた樹脂層を形成し、さらに、前記樹脂層に剥離剤を塗布して平均山高さが0.5μm以上である稜線が存在するように凹凸が表面に設けられた剥離剤層を形成する剥離フィルムの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように、剥離ライナーの凹凸が特定の繰り返しパターンであると、粘着シートにもそのパターンが転写されるため、粘着シートで凹凸が目立ち、美観が損なわれることがある。粘着シートの美観を損なわないためには、例えば、剥離ライナーの凹凸を微細かつランダムにすることが考えられるが、特許文献1では、そのような凹凸面を形成する手法は開示されていない。
【0006】
本発明は、以上の問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、簡単な方法で、剥離フィルムの剥離面に、十分に粗面化されたランダムな凹凸面を形成し、それにより、例えば、凹凸面が転写される粘着シート等の美観を損なうことなく、リワーク性を良好にすることが可能な剥離フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、基材に特定のアルキル化メラミン樹脂を主成分として含む硬化性材料を塗布して硬化することで、その硬化膜表面に、粗面化効果が高く、かつランダムなパターンの凹凸が形成されることを見出した。そして、その凹凸がある硬化膜表面に剥離剤層を形成することで、上記課題が解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の(1)〜(13)を提供する。
(1)基材と、前記基材の上に設けられた樹脂層と、前記樹脂層の基材と反対側の面に設けられた剥離剤層とを備える剥離フィルムであって、
前記樹脂層が、炭素数4〜18のアルキル基を有するアルキル化メラミン樹脂(A)を主成分として含む硬化性材料を硬化してなるものであり、
前記剥離剤層の表面には、平均山高さが0.5μm以上となる稜線が存在するように凹凸が設けられる剥離フィルム。
(2)幅(W)に対する長さ(L)の比(L/W)が10以上の稜線が存在する上記(1)に記載の剥離フィルム。
(3)前記剥離剤層表面は、算術平均粗さRaが0.1〜5μmであるとともに、粗さ曲線における最大山高さRpが0.3〜10μmである上記(1)又は(2)に記載の剥離フィルム。
(4)前記稜線の平均幅が、5〜100μmである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の剥離フィルム。
(5)前記稜線の平均山高さが、25μm以下である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の剥離フィルム。
(6)前記硬化性材料は、さらに酸触媒(B)を含む上記(1)〜(5)のいずれかに記載の剥離フィルム。
(7)前記酸触媒(B)が、前記アルキル化メラミン樹脂(A)100質量部に対して、0.7〜7.0質量部配合される上記(6)に記載の剥離フィルム。
(8)前記樹脂層の厚みが、3〜30μmである上記(1)〜(7)のいずれかに記載の剥離フィルム。
(9)前記剥離剤層が、シリコーン樹脂系剥離剤、アルキド樹脂系剥離剤、オレフィン樹脂系剥離剤、アクリル系剥離剤、長鎖アルキル基含有化合物系剥離剤、及びゴム系剥離剤から選択される少なくとも1種の剥離剤から構成される上記(1)〜(8)のいずれかに記載の剥離フィルム。
(10)前記剥離剤層の厚みが、25〜1000nmである上記(1)〜(9)のいずれかに記載の剥離フィルム。
(11)前記剥離剤層の表面上に粘着剤層を配置し、前記粘着剤層に前記剥離剤層の表面の凹凸を転写する上記(1)〜(10)のいずれかに記載の剥離フィルム。
(12)上記(1)〜(11)のいずれかに記載の剥離フィルムと、前記剥離フィルムの剥離剤層の表面上に設けられた粘着剤層と、前記粘着剤層の上にさらに設けられた粘着シート基材とを備える粘着シート。
(13)炭素数4〜18のアルキル基を有するアルキル化メラミン樹脂(A)を主成分として含む硬化性材料を基材に塗布して、その硬化性材料を硬化することで、凹凸が表面に設けられた樹脂層を形成し、さらに、前記樹脂層に剥離剤を塗布して平均山高さが0.5μm以上である稜線が存在するように凹凸が表面に設けられた剥離剤層を形成する剥離フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡単な方法で、粗面化効果が高く、かつランダムなパターンを有する凹凸を、剥離フィルムの剥離面に形成することが可能になる。そのため、その剥離フィルムの凹凸が転写される粘着シートは、美観が損なわれずに、リワーク性が良好になる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態を用いてさらに詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る剥離フィルム10は、基材11と、基材11の片面に設けられる樹脂層12と、樹脂層12の基材11と反対側の面(表面12A)に設けられる剥離剤層13とを備える。樹脂層12の表面12Aには、稜線が存在するように凹凸がランダムに形成される。
剥離剤層13は、樹脂層12の表面12Aの凹凸に沿って形成されたものであり、剥離剤層13の表面13Aは、表面12Aの凹凸形状に対応した凹凸を有する。そのため、剥離剤層の表面13Aの凹凸にも稜線15(
図2参照)が存在する。
なお、稜線とは、突起が細長に連なったものをいい、詳しくは後述するとおりである。
【0011】
以下、本発明の剥離フィルムの各部材をより詳細に説明する。
[基材]
基材11としては、汎用的に使用される基材を使用でき特に制限はないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリプロピレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、アクリル樹脂等の各種樹脂により構成される樹脂フィルムが使用できる。これらの中でも、加工のしやすさ、耐久性、耐熱性、コスト等の観点から、ポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。また、これらは単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上の多層であってもよい。
基材11の厚みは、特に限定されないが、通常、10〜300μm、好ましくは15〜200μm程度である。
【0012】
[樹脂層]
樹脂層12は、炭素数4〜18のアルキル基を有するアルキル化メラミン樹脂(以下、単にアルキル化メラミン樹脂(A)ともいう)を主成分として含む硬化性材料を硬化してなるものである。本発明では、炭素数が比較的大きいアルキル基を有するアルキル化メラミン樹脂(A)により樹脂層12を形成することで、樹脂層12の表面12Aは、稜線が存在するように、ランダムで粗面化効果の高い凹凸が設けられる。
【0013】
このように特定のアルキル化メラミン樹脂(A)を含む硬化性材料を硬化すると、樹脂層の表面12Aに、稜線が存在するようにランダムに凹凸が形成される原理は明らかではないが、以下のように推定される。すなわち、メラミン樹脂の架橋は、アルコールや水の脱離で進行するため、架橋の進み具合により高分子と低分子でのアルキル化比率が乖離する。そして、アルキル基の炭素数が大きいことと相俟って、先行して高分子量化した成分と、遅れて高分子量化した成分とで相溶性が低下し、それにより乾燥後の膜厚に差異が出るためと推定される。
【0014】
アルキル化メラミン樹脂(A)が含有するアルキル基の炭素数は、樹脂層表面に形成される凹凸形状に影響を及ぼし、具体的には、アルキル基の炭素数が大きくなることで、樹脂層表面の凹凸差を大きくすることができる。そのため、アルキル基の炭素数が4未満と小さくなると、樹脂層の表面に稜線が形成できず、また凹凸差が小さくなり、高い粗面化効果を発揮することが難しくなる。一方で、アルキル基の炭素数が18を超えると、アルキル化メラミン樹脂(A)自体が製造しにくくなり、さらには、アルキル化メラミン樹脂(A)が架橋しにくくなるという不具合も生じるおそれがある。
これら観点から、アルキル化メラミン樹脂(A)が有するアルキル基の炭素数は、4〜12が好ましく、6〜10がより好ましい。なお、アルキル基は、直鎖状でもよいし、分岐していてもよい。
アルキル化メラミン樹脂(A)は、メチロールメラミン樹脂中のメチロール基の一部又は全部を、アルキルモノアルコールによってエーテル化したものであり、具体的には、ノルマルブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、ノルマルオクチル化メラミン樹脂等が挙げられる。
【0015】
また、アルキル化メラミン樹脂(A)を主成分として含むとは、アルキル化メラミン樹脂(A)の架橋により樹脂層表面に所定の凹凸が形成できる程度に、硬化性材料がアルキル化メラミン樹脂(A)を含有することを意味するが、通常、硬化性材料におけるアルキル化メラミン樹脂(A)の含有量は、硬化性材料の不揮発成分の全量に対して50質量%以上となるものである。このアルキル化メラミン樹脂(A)の含有量は、不揮発成分の全量に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。なお、本明細書において、硬化性材料の不揮発成分の全量とは、硬化工程等の製造過程で揮発される溶媒等の揮発成分を、硬化性材料から除いた量をいう。
【0016】
硬化性材料は、上記アルキル化メラミン樹脂(A)に加えて、酸触媒(B)を含有することが好ましい。硬化性材料は、酸触媒(B)を含有することでアルキル化メラミン樹脂(A)の架橋を容易に進行させることが可能になる。また、酸触媒(B)の配合量を調整することで、樹脂層表面に形成される凹凸の高低差を調整することも可能である。
具体的には、硬化性材料において酸触媒(B)は、アルキル化メラミン樹脂(A)100質量部に対して、0.7〜7.0質量部配合されることが好ましい。
酸触媒の配合量を上記した下限値以上とすることで、硬化が適切に進行し、硬化不良等の不具合が防止される。一方で、配合量を上記した上限値以下とすることで、硬化速度が速くなることが防止され、架橋の進み具合に差が出る部分が生じて、凹凸形状が付与されやすくなる。凹凸の高低差を大きくして、粗面化効果を高める観点からは、上記酸触媒(B)の配合量は、0.8〜5.0質量部であることがより好ましく、0.8〜2.5質量部であることがさらに好ましい。
【0017】
酸触媒(B)の具体例としては、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、メタンスルホン酸等のスルホン酸、塩酸、硫酸に代表される鉱酸等の酸性物質が挙げられるが、これらの中ではスルホン酸が好ましく、パラトルエンスルホン酸がより好ましい。
また、酸触媒(B)は、予めアミンと混合したうえで硬化性材料に配合されてもよい。ここで、アミンとしては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどの3級アミン化合物が挙げられる。酸触媒(B)は、アミンと混合することで、アミン塩として硬化性材料に配合されることになるが、上記酸触媒(B)の配合量とは、アミン塩となる前の酸性物質そのものの量を意味する。また、酸触媒(B)は、アミン塩とすることで、硬化反応の速度が速くなり過ぎることが防止され、粗面化効果の高い凹凸形状を形成しやすくなる。
【0018】
また、硬化性材料は、本発明の目的を損なわない限り、上記(A)(B)成分以外の成分を含んでもよく、例えば(A)成分以外の樹脂成分を含んでもよい。また、硬化性材料は、各種の添加剤を含んでもよく、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、表面調整剤等を含んでもよい。
ただし、硬化性材料は、粒子状フィラーを実質的に含有しないことが好ましい。ここで、粒子状フィラーを実質的に含有しないとは、不純物程度に粒子状フィラーを含有してもよいことを示し、具体的には、硬化性材料の不揮発成分の全量の1質量%未満程度であれば含有していてもよい。ただし、硬化性材料は、異物混入をより防止するために、粒子状フィラーを含有しないほうがより好ましい。なお、粒子状フィラーとは、レーザー回折/散乱による測定法により測定された平均粒径が0.1μm以上のものをいう。
【0019】
また、樹脂層(すなわち、剥離剤層)の表面に形成される凹凸形状は、樹脂層の厚みを変更することでも調整することが可能であり、例えば、樹脂層の厚みを大きくすることで凹凸の高低差を大きくして粗面化効果を高めやすくなる。具体的には、樹脂層の厚みは、3〜30μmであることが好ましく、5〜28μmであることがより好ましい。なお、樹脂層の厚みは、接触式膜厚計により計測して求めたものである。樹脂層の厚みを下限値以上の大きさとすることで粗面化効果を十分に高めることができる。また、上限値以下とすることで、残留溶剤の増大や、塗膜内部の硬化性不良等が生じにくくなる。
なお、樹脂層の厚みは、後述する塗布液の不揮発成分の濃度を調整したり、塗布方法を適宜変更したりすることで調整することが可能である。
また、剥離フィルムにおいて、樹脂層と基材の間には、他の層が設けられてもよい。例えば、樹脂層と基材の間の接着性を良好にするために、プライマー層が設けられてもよい。
【0020】
[剥離剤層]
剥離剤層13は、剥離剤から構成されるものである。剥離剤層13は、樹脂層12の表面12Aの凹凸形状に沿って形成されたものであり、剥離剤層13の表面13Aは、表面12Aの凹凸形状に対応した凹凸を有する。すなわち、剥離剤層13の表面13Aにも、樹脂層12の表面12Aと同様に、ランダムで粗面化効果の高い凹凸が設けられることとなり、その凹凸には、後述するように所定の平均高さを有する稜線15(
図2参照)が存在する。
【0021】
剥離剤層13を構成する剥離剤としては、例えば、シリコーン樹脂系剥離剤の他、アルキド樹脂系、オレフィン樹脂系、アクリル系、長鎖アルキル基含有化合物系、ゴム系等の非シリコーン樹脂系剥離剤が挙げられる。
【0022】
シリコーン樹脂系剥離剤としては、溶剤型および無溶剤型のものがある。溶剤型シリコーン樹脂は、溶剤希釈して塗工液とするため、高分子量(すなわち、高粘度)のポリマーから低粘度の低分子量ポリマー(オリゴマー)まで、幅広く使用することができる。そのため、無溶剤型と比較して、剥離性の制御が容易であり、要求される性能(品質)に合わせた設計がしやすい。また、シリコーン樹脂系剥離剤としては、付加反応型、縮合反応型、紫外線硬化型、電子線硬化型等のものがある。付加反応型シリコーン樹脂は、反応性が高く生産性に優れ、縮合反応型と比較すると、製造後の剥離力の変化が小さい、硬化収縮が無い等のメリットがあるため、剥離剤層13を構成する剥離剤に使用することが好ましい。
【0023】
付加反応型シリコーン樹脂としては、特に制限はなく、様々なものを用いることができる。例えば、従来の熱硬化付加反応型シリコーン樹脂剥離剤として慣用されているものを用いることができる。この付加反応型シリコーン樹脂としては、例えば、分子中に官能基として、ビニル基等のアルケニル基、ヒドロシリル基などの求電子性基を有するものが、熱硬化が容易な付加反応型シリコーン樹脂として挙げられ、このような官能基を有するポリジメチルシロキサンや、ポリジメチルシロキサンのメチル基の一部または全部をフェニル基等の芳香族官能基に置換したものなどを用いることができる。
シリコーン樹脂系剥離剤には、必要に応じて、シリカ、シリコーンレジン、帯電防止剤、染料、顔料その他の添加剤を添加してもよい。
【0024】
シリコーン樹脂剥離剤を塗工した後、塗膜を硬化するには、塗工機のオーブンで加熱処理して行ってもよいし、加熱処理した後に紫外線照射を併用してもよい。
なお、塗膜の硬化に紫外線照射を併用する場合は、剥離剤に光開始剤を添加することが望ましい。光開始剤としては特に制限は無く、紫外線や電子線の照射によりラジカルを発生するもので慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。この光開始剤としては、例えばベンゾイン類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、α−ジケトン、α−ジケトンジアルキルアセタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。
【0025】
オレフィン樹脂系剥離剤としては、結晶性オレフィン系樹脂が用いられる。この結晶性オレフィン系樹脂としては、ポリエチレンや結晶性ポリプロピレン系樹脂などが好適である。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどが挙げられる。結晶性ポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクチック構造又はシンジオタクチック構造を有するプロピレン単独重合体や、プロピレン−α−オレフィン共重合体などが挙げられる。これらの結晶性オレフィン系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
アクリル系剥離剤としては、一般に架橋構造を有するアクリル系樹脂が用いられる。アクリル系樹脂は、長鎖アルキル変性アクリル樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂等の変性物であってもよい。
【0027】
長鎖アルキル基含有化合物系剥離剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系重合体に炭素数8〜30の長鎖アルキルイソシアネートを反応させて得られたポリビニルカーバメートや、ポリエチレンイミンに炭素数8〜30の長鎖アルキルイソシアネートを反応させて得られたアルキル尿素誘導体などが用いられる。
【0028】
ゴム系剥離剤としては、例えば、天然ゴム系樹脂、およびブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、メチルメタクリレート−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等の合成ゴム系樹脂などが用いられる。
以上の各剥離剤には、さらに硬化剤、触媒等の成分が配合されていてもよい。
【0029】
剥離剤層13の厚みは、特に限定されないが、25〜1000nmであることが好ましく、40〜500nmであることがより好ましい。厚みを25nm以上とすることで、剥離面としての機能を十分に発揮させることができる。また、厚みを1000nm以下とすることで、樹脂層12の凹凸形状を殆ど維持した凹凸を、剥離剤層13の表面に形成することができる。なお、剥離剤層の厚みは、接触式膜厚計により計測して求めたものである。
【0030】
図2は、剥離剤層13の表面13Aをレーザー顕微鏡にて観測し、三次元画像処理を行い、その三次元画像処理により得られる画像を模式的に示した図である。
本発明では、剥離剤層13の表面13Aには、平均山高さが0.5μm以上となる稜線15が存在するように凹凸が設けられる。ここで、「稜線」とは、突起が細長に連なったものをいい、具体的には、観察画像1cm
2(1cm×1cm)における最大山高さの50%以上の山高さを有する突起が、同稜線の幅(W)(5点平均値の値)の3倍以上の長さ連続するものをいう。
また、稜線は、
図3に示すように、幅(W)に対する長さ(L)の比(L/W比)が10以上の稜線15が存在することが好ましい。なお、山高さ、幅(W)及びL/W比の測定方法は後述する。なお、
図2においては、高さ0.5μmの等高線を実線で描いたものであり、少なくとも、実線で囲まれた部分のうち細長の部分は、稜線15となる。
また、稜線15は、剥離剤層13の表面13Aを1cm
2観察したときに、1つ以上存在すればよいが、複数存在することが好ましく、さらにL/W比が10以上の稜線が複数存在することがより好ましい。L/W比が大きい稜線15が複数存在することで、剥離剤層の表面13Aに形成された模様がランダムで特異なものとなりやすくなる。このような構成によると、後述する粘着剤層等の被剥離部材には、細長の溝がランダムに形成されることになる。
【0031】
稜線15は、
図2に示すように、通常、剥離剤層の表面13Aにおいて、一部が2列以上に並行しつつ、一部が湾曲したり、さらには分岐したりするものである。このように、稜線15は、一部が並行しつつも、不規則に配列されるものであるため、剥離剤層の表面13Aはランダムな縞模様を示す。また、並行する稜線15の間には、谷16があり、剥離剤層の表面13Aは、稜線15及び谷16により特異な凹凸形状を示す。なお、剥離剤層の表面13Aには、通常、稜線15とならない凸部も存在する。
【0032】
剥離剤層の表面13Aに形成された稜線15は、上記したように平均山高さが0.5μm以上となるとともに、25μm以下となることが好ましい。平均山高さが0.5μm未満となると、剥離剤層の表面13Aにおける凹凸の高低差が小さくなり、粗面化効果を十分に得ることができない。また、25μm以下とすることで稜線15の形成が容易となる。
以上の観点から、稜線の平均山高さは、1〜20μmがより好ましく、2〜18μmがさらに好ましい。
【0033】
また、稜線15の平均幅は、5〜100μmであることが好ましく、10〜80μmがより好ましく、15〜70μmがさらに好ましい。稜線の平均幅がこのように所定の範囲となることで、粗面化効果を高めやすく、また、剥離剤層表面に特異な形状を形成しやすくなる。
【0034】
なお、本明細書において山高さ(H)とは、レーザー顕微鏡にて観察した3次元画像を処理し、
図4に示すように、任意の稜線15に対して垂直に断面を取り、その断面における山頂15Aの両隣りの谷底15B、15Bを結ぶ直線を描き、山頂15Aから垂直に下ろした垂線の長さであり、その山高さ(H)を5点測定して、その平均値を平均山高さとして算出する。
また、稜線の幅(W)とは、平均山高さの測定と同様に断面を取り、
図4に示すように、任意の稜線15の両隣りの谷底15B、15B間の間隔を測定したものであり、稜線の平均幅とは、稜線の幅(W)を5点測定し、その平均値を算出したものである。
【0035】
また、幅(W)に対する長さ(L)の比(L/W比)は、以下のように測定する。
まず、稜線の長さ(L)は、レーザー顕微鏡にて観察した1cm
2(1cm×1cm)の観察画像において、長めの稜線を任意に選択して、
図3に示すように同稜線における最大の山高さから70%となる山高さとなる位置を当該稜線の長さ方向の端部とし、端部からもう一方の端部までを稜線に沿って結んだ距離を測定したものである。また、L/W比は、測定された長さ(L)と、長さ(L)の測定対象であった稜線の幅(W)との比を求めたものである。なお、稜線の幅(W)は、同稜線上の5点平均値である。
なお、稜線が分岐している場合は、稜線距離が最大となるよう端部を選択して、稜線の長さを測定した。さらに、稜線の一方又は両方の端部が観察画像上にない場合には、その観察画像の4辺にある稜線の中途部分を稜線の端部と仮定して長さを測定し、その測定した長さに基づき、上記L/W比を算出する。
【0036】
また剥離剤層の表面13Aは、算術平均粗さRaが0.1〜5μmであるとともに、粗さ曲線における最大山高さRpが0.3〜10μmであることが好ましい。これらRa、Rpが以上の範囲となることで剥離剤層13の凹凸差が大きくなり、粗面化効果を高めやすくなる。また、算術平均粗さRaは、より好ましくは0.2〜4μm、さらに好ましくは0.5〜3.5μmであるとともに、粗さ曲線における最大山高さRpは、より好ましくは0.5〜9μmであるとともに、さらに好ましくは1〜8μmである。
なお、これら算術平均粗さRa及び最大山高さRpは、接触式表面粗さ計を用いてJISB0601−2001に準拠して測定したものである。
【0037】
[剥離フィルムの製造方法]
本発明の剥離フィルムは、まず、上記した硬化性材料を基材に塗布して、その硬化性材料を硬化させることで、表面に凹凸が設けられた樹脂層を形成し、その後、樹脂層に剥離剤を塗布して剥離剤層を形成することで製造されるものである。
ここで、硬化性材料は、溶剤により希釈されて基材に塗布されることが好ましい。使用される溶剤としては、硬化性材料を溶解又は分散することができればよく、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、セロソルブアセテート、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサノン等が使用される。これらは1種単独で使用してもよく,2種以上を併用してもよい。
【0038】
また、硬化性材料の塗布は、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、エアーナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ゲートロールコート法、ダイコート法などで行うことができる。
また、基材の上に塗布された硬化性材料は、加熱により硬化されるものであり、例えば、70〜170℃で、1〜10分程度加熱して乾燥及び硬化されることが好ましい。
【0039】
剥離剤層は、樹脂層表面に、剥離剤を必要に応じて希釈液で希釈した上で塗布した後、乾燥し、硬化させることにより形成することができる。なお、塗布方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法などが使用できる。
【0040】
本発明の剥離フィルム10は、その表面13Aに離型性が付与されたものであり、各種の用途に使用されるものであるが、従来の剥離フィルムと同様に使用されることが可能である。例えば、剥離フィルム10は、その剥離剤層の表面13A上に、各種の材料が、塗布、キャスト、積層、貼付等されるとともに、その塗布、キャスト、積層、貼付等された材料からなる部材(この部材を“被剥離部材”ともいう)から適宜剥離されるのが一般的である。被剥離部材の表面は、通常、剥離剤層の表面13Aの形状が転写され、凹凸面となる。
【0041】
剥離フィルムの表面13Aの凹凸形状は、ランダムに配列されたものであるため、被剥離部材表面にも、ランダムな凹凸が転写されることになる。剥離フィルムの表面13Aに形成され、又は被剥離部材に転写された凹凸は、視覚的に感知できない程度に微細な大きさである。さらに、そのような凹凸は、ランダムに配列されることで目立つことがなく、剥離フィルムや被剥離部材の美観が損なわれることが防止される。
なお、剥離剤層の表面13Aには、上記のように、稜線15が存在するが、このような稜線15は、被剥離部材に転写されるとランダムに配置された溝となる。
【0042】
[粘着シート]
本発明において、上記被剥離部材は、粘着剤層であることが好ましく、具体的には、本発明の剥離フィルム10は、
図5に示すような粘着シートに適用されることが好ましい。以下、本発明の剥離フィルムが適用された粘着シートについて説明する。
図5に示すように、粘着シート20は、剥離フィルム10と、剥離フィルム10の剥離剤層13の表面13A上に設けられた粘着剤層21と、粘着剤層21の上にさらに設けられた粘着シート基材22とを備える。そして、剥離剤層13の表面13Aに貼着される粘着剤層21の粘着面21Aは、剥離剤層13の凹凸形状が転写され、微細な凹凸が形成される。
【0043】
粘着シート20は、粘着剤層21と粘着シート基材22の積層体を、剥離フィルム10から剥がして、粘着面21Aを介して被着体に貼付される。この際、粘着面21Aは、凹凸があることで接着面積が小さくなるため、リワーク性が良好になる。すなわち、粘着シート20は、一旦被着体に貼付された後でも貼り直し等が容易になる。
【0044】
粘着シート基材22としては、汎用的に使用される基材を使用でき特に制限はないが、各種の樹脂フィルムが使用できる。樹脂フィルムとしては、基材11に使用可能な樹脂フィルムとして列挙されたもののなかから適宜選択して使用可能である。また、粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に限定されないが、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤等を挙げることができるが、これらに限定されることはなく、任意のものの中から適宜選択して用いることができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって制限されるものではない。
【0046】
[樹脂層及び剥離剤層の厚み]
樹脂層及び剥離剤層の厚みは、接触式膜厚計((株)テックロック社製、製品名「定圧厚さ測定器 PG−02」)で計測した5点の測定箇所の平均値とした。
[表面粗さ]
剥離フィルムの剥離剤層表面の算術平均粗さRa及び粗さ曲線における最大山高さRpは、接触式表面粗さ計((株)ミツトヨ製、製品名「SV3000S4」)を用い、JIS B0601−2001に準拠して測定した。
【0047】
[凹凸形状の評価]
剥離フィルムの剥離剤層表面を、レーザー顕微鏡(形状測定レーザーマイクロスコープVK−9700、株式会社キーエンス製)を用いて、剥離剤層表面を1cm
2(1cm×1cm)観察し、明細書記載の方法に従って、稜線の平均山高さを測定し、稜線の平均山高さが0.5μm未満となるか否かを判定し、平均山高さが0.5μm未満となる場合には、“平滑面”と評価した。
また、平均山高さが0.5μm以上となるような凹凸があるものの、剥離剤層表面を1cm
2観察した際に稜線が存在しないものは、“稜線なし”と評価した。一方で、平均山高さが0.5μm以上で、稜線があるものについては、“稜線あり”と評価した。
なお、剥離フィルムの剥離剤層表面に稜線がない場合には、断面を稜線に垂直な位置で取る代わりに任意の位置で取った点を除いて、平均山高さ、及び平均幅を明細書記載の方法に従って測定した。
さらに、明細書記載の方法に従って、1cm
2の観察画像内にL/W比が10以上となる稜線があるか否かも判定するとともに、平均山高さが0.5μm以上である場合には、平均山高さに加え平均幅も測定した。その測定結果を表1に示す。
[密着性評価]
剥離フィルムの剥離剤層表面とCPPフィルムを摩擦堅牢試験機((株)大栄化学精機製作所社製、製品名「RT−200」)を用いて摩擦させ(荷重1Kg、30往復)、フィラーまたはコーティング層の脱落の有無を目視にて評価した。
【0048】
[リワーク性]
実施例、比較例で得た粘着シートの25mm幅のサンプルを作製し、ソーダガラスに5kgゴムローラーにて、1往復して貼付し、貼付直後と24時間後の粘着力を測定した。なお、粘着力は株式会社島津製作所製「精密万能試験機 オートグラフAG−IS」と同社製20Nロードセル「SLBL−20N」により測定した。
貼付直後の粘着力が15N/25mm以下、且つ、24時間後の粘着力が20N/25mm以上をリワーク性に優れている評価(評価A)とし、それ以外の範囲の粘着力をリワーク性に劣る評価(評価B)とした。
[外観試験]
実施例、比較例で得た粘着シートから50mm×50mmサイズのサンプルを用意し、ガラス板に5kgゴムローラーにて、1往復して貼付し、粘着シートの基材表面を肉眼で観察した。基材表面に粘着剤層の凹凸が認識できない場合をA、認識できる場合をBとした。
【0049】
[実施例1]
(剥離フィルムの作製)
オクチル化メラミン樹脂(株式会社三羽研究所製、商品名「ATOM BOND RP−30」、不揮発成分濃度:30質量%、溶媒:トルエン/キシレン/メチルエチルケトン/セロソルプアセテート/n−ブタノール=25/15/5/10/15(質量比)の混合溶媒)100質量部(不揮発成分基準)に、酸触媒希釈液(株式会社三羽研究所製、商品名「ATOM BOND CP 触媒」;パラトルエンスルホン酸(酸触媒)55質量部に、トリエチルアミン15質量部及びメタノール30質量部を混合したもの;不揮発成分量55質量%)を、酸触媒の配合量が0.9質量部となるように混合し、さらに、溶剤(トルエン/メチルエチルケトン=6/4(質量比)の混合溶媒)で希釈して、不揮発成分濃度30質量%の硬化性材料の塗工液を作製した。作製した塗工液をマイヤーバーで、乾燥後の膜厚が7μmになるように厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名「ダイアホイルT−100」)の一方の面上に塗工し、150℃で5分間乾燥し、表面が粗面化され凹凸を有する樹脂層を形成した。
次に、ポリジメチルシロキサン樹脂(信越化学株式会社製、商品名「KS-847H」、不揮発成分濃度:30質量%、溶剤:トルエン)100質量部に、白金触媒(信越化学株式会社製、商品名「CAT-PL−50T」、不揮発成分2質量%、溶剤:トルエン)を触媒の配合量が0.07質量部となるように混合し、さらに溶剤(トルエン/メチルエチルケトン=6/4(質量比)の混合溶媒)で希釈して、不揮発成分濃度1.5質量%の剥離剤の塗工液を作製した。作製した塗工液をマイヤーバーで、乾燥後の膜厚が100nmとなるように、粗面化した樹脂層の上に塗工し、150℃で1分間乾燥して剥離剤層を形成し、剥離フィルムを得た。
剥離フィルムの剥離剤層表面をレーザー顕微鏡にて観測し、三次元画像処理を行い、処理画像を得た。なお、得られた画像を
図6に示すが、淡い部分が凸部となる部分である。
【0050】
(粘着シートの作製)
得られた剥離フィルムの剥離剤層表面に、アクリル系粘着剤(トーヨーケム株式会社製、商品名「BPS−5127」、不揮発成分濃度:40質量%、溶媒:酢酸エチル/トルエン=55/5)を塗布量25g/m
2となるように塗工し、100℃で2分間乾燥して粘着剤層を形成した。その後、粘着剤層に粘着シート基材としての厚み38μmの空洞含有ポリエステルフィルム(白色)(東洋紡株式会社製「クリスパーG1211」)のコロナ処理面と貼り合せ、粘着シートを作製した。
【0051】
[実施例2]
樹脂層の厚みが25μmとなるように塗工液を塗工した点を除いて実施例1と同様に実施した。
【0052】
[比較例1]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂エステル80質量部とメラミン樹脂20質量部との混合物(日立化成株式会社製、商品名「TA31−059D」、固形分濃度50%、溶媒:キシレン/トルエン/イソブタノール=18/16/16(質量比)の混合溶媒)の固形分100質量部に対して、酸触媒として、p−トルエンスルホン酸の溶液(固形分濃度:50質量%、溶媒:メタノール/イソプロピルアルコール=41.2/9.4(質量比)の混合溶媒)2.5質量部(固形分比)を添加して、樹脂組成物の溶液を調製した。そして、当該樹脂組成物の溶液に、多孔質不定形シリカ粒子(東ソー・シリカ株式会社製、商品名「ニップシールSS−50B」、平均粒径1.7μm)を10質量%加え、トルエン/メチルエチルケトン=30/70(質量比)の混合溶媒で希釈して、剥離剤層形成用溶液を調製した。作製した塗工液をマイヤーバーで厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名「ダイアホイルT−100」)の一方の面上に塗工し、150℃で5分間乾燥して、基材の上に剥離剤層が形成されてなる剥離フィルムを得た。その後、実施例1と同様に、粘着シートを作製した。
【0053】
[比較例2]
110g/cm
2の上質紙に厚さ30μmのポリエチレンをラミネートし、前記ポリエチレン側にエンボスロールを用いて所定の形状の凸条部を形成し、さらにシリコーン樹脂を厚さ0.1μm塗布することによって、形状転写面を有する剥離シートを形成した。凸条部は、断面が高さ20μm、幅60μmのテーパーのかかった逆U字形で、ピッチ570μmで直交する格子状を形成していた。
実施例1の剥離フィルムに換えて、上記の剥離シートを用いた以外は実施例1と同様にして粘着シートを作成した。
【0054】
【表1】
【0055】
以上の実施例1、2のように、炭素数4〜18のアルキル基を有するアルキル化メラミン樹脂(A)を主成分として含む硬化性材料により樹脂層を形成し、かつその上に剥離剤層を形成すると、稜線が剥離剤層の全面にわたって形成され、稜線の平均高さ、平均幅が比較的大きくなり、粗面化効果の高い、特異なランダムな凹凸形状を有する剥離フィルムを得ることができた。また、その剥離フィルムを用いた粘着シートでは、24時間後の粘着力が適度に高い一方貼付直後の粘着力が低くなり、それにより、リワーク性が良好になった。また、剥離フィルムから粘着剤層表面に転写された凹凸は、微細でランダムな形状であったため、肉眼で視認できず、美観を損なうものではなかった。
【0056】
一方で、比較例1のように、フィラーを樹脂層に配合すると、炭素数4〜18のアルキル基を有するアルキル化メラミン樹脂(A)を使用しなくても、樹脂層及び剥離剤層の表面を粗面とすることができるが、フィラーの脱落が見られる不具合が生じた。また、細長の稜線が見られず、凹凸面を特異な形状にすることはできなかった。また、比較例2のように、凸条部が繰り返しパターンで形成された剥離シートを使用した粘着シートでは、基材表面の凹凸が肉眼で視認できたため、意匠性を要求される用途には不向きであった。