【解決手段】 粉末冶金ワークピースの製造方法であって、硬度が100HVを下回り、平均粒径が20μm以下となる、カルボニル鉄粉である第1の粉末を提供する段階と、第1の粉末と第2の粉末を成分が炭素とクロムと鉄とモリブデン、ニッケル、銅、ニオブ、バナジウム、タングステン、ケイ素、コバルトとマンガンからなる群から選ばれるものを含む混合粉末として混合する段階と、混合粉末にバインダーと水を添加する段階と、混合粉末に対して噴霧造粒工程を施すことで噴霧造粒粉末を形成する段階と、噴霧造粒粉末に対して乾式プレス成形工程を施して噴霧造粒粉末をグリーン体として形成させる段階と、グリーン体に対して脱脂工程を施すことで成形体を形成する段階と、該成形体を硬度が250HVを上回るワークピースとして焼結する段階とを、含む。
硬度が100HVを下回り、平均粒径が20μm以下となる、カルボニル鉄粉である第1の粉末を提供する段階であって、前記カルボニル鉄粉の炭素含有量が0.10wt%以下である段階と、
前記第1の粉末と第2の粉末を、前記カルボニル鉄粉の重量パーセントが最大割合を占め、前記混合粉末中の炭素の重量パーセントは0.07wt%以下、又は、0.81wt%以上の範囲で、クロムの重量パーセントが3.5〜18wt%の範囲で、モリブデンの重量パーセントが6wt%以下の範囲で、ニッケルの重量パーセントは5wt%以下の範囲で、銅の重量パーセントが5wt%以下の範囲で、ニオブの重量パーセントが4wt%以下の範囲で、バナジウムの重量パーセントが5.5wt%以下の範囲で、コバルトの重量パーセントが5.5wt%以下の範囲で、タングステンの重量パーセントが13wt%以下の範囲で、ケイ素の重量パーセントが0.1〜1wt%の範囲で、マンガンの重量パーセントが0.1〜1wt%の範囲である混合粉末として混合する段階であって、前記混合粉末中の前記クロムがプレアロイ粉末として供給される段階と、
前記混合粉末にバインダーと水を添加する段階と、
前記混合粉末に対して噴霧造粒工程を施すことで、噴霧造粒粉末を形成する段階と、
前記噴霧造粒粉末に乾式プレス成形工程を施し、前記噴霧造粒粉末をグリーン体として形成させる段階と、
前記グリーン体に対して脱脂工程を施すことで、前記バインダーを除去し、また、前記グリーン体を成形体として形成させる段階と、
前記成形体をその硬度は250HVを上回り、密度が7.4g/cm3を上回るワークピースとして焼結する段階と、を含み、
前記成形体を焼結する段階は、所定温度で温度保持して当該成形体を焼結するステップを1回のみ行うこと、
を特徴とする粉末冶金ワークピースの製造方法。
前記噴霧造粒粉末に潤滑剤を添加する段階を更に含み、前記噴霧造粒粉末に潤滑剤を添加する段階は前記乾式プレス成形工程の前に行うことを特徴とする請求項1に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法。
前記混合粉末内の炭素の重量パーセントは、0.07wt%以下の範囲で、クロムの重量パーセントが15〜18wt%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法。
前記噴霧造粒粉末に潤滑剤を添加する段階を更に含み、前記噴霧造粒粉末に潤滑剤を添加する段階は前記乾式プレス成形工程の前に行うことを特徴とする請求項8に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法。
前記混合粉末内の炭素の重量パーセントは、0.07wt%以下の範囲で、クロムの重量パーセントが15〜18wt%の範囲であることを特徴とする請求項8に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法。
【背景技術】
【0002】
乾式プレス成形は、粉末冶金工程の中で最もよく使用される方法で、この方法は粉末を金型内に充填してから一定の圧力を加え、緩い粉末を成形させて一定の強度のグリーン体にして、成形後のグリーン体を焼結することで完成品を得ることができる。この成形工程は自動化が可能で、そのコストは安価でかつ一括でネットシェイプ(net shape)のワークピースを製造できるため、機械製造業中、乾式プレス成形は不可欠な1つの工程である。
【0003】
一般的に言うと、乾式プレス成形工程において、ワークピースを優れた機械或いは物理的性質にするため、焼結後のワークピース密度が高ければ高いほどよい。これはグリーン体密度も高ければ高いほどよく、必要な焼結温度及び焼結時間を引き下げてコストを節約する。この外に、高いグリーン体密度のワークピースは焼結を経た後、その寸法の収縮量が比較的少ないため、高いグリーン体密度のワークピース寸法の安定性が好ましい。グリーン体密度に影響する一般的な重要な要因とは成形時の圧力及び粉末自体の特性にある。
【0004】
(1)成形圧力:乾式プレス成形工程において加えられた圧力が大きいほど、グリーン体密度も高くなる。しかしながら、金属粉末自体に加工硬化の特性があるため、圧力が増した時粉末自体の硬度もこれに伴ってアップするため、グリーン体密度の向上効率は圧力の増加に伴って徐々に鈍化する。この外に、成形圧力が増大した時、粉末と金型間の摩擦力も伴って増加するため、金型の寿命が短くなってしまう。
【0005】
(2)粉末特性:粉末自体の硬度は、グリーン体密度に影響する別の重要な要因である。硬度が高い粉末は変形しにくく、粉末が粉末の隙間に押し込まれにくく、よってグリーン体密度のアップが困難で、焼結後に高密度になるのが容易ではない。粉末自体の形状、大きさ及び内部構造が粉末成形能力に対しても直接的な影響がある。例えば、形状が不規則でかつ内部に空隙を有する粉末の圧縮性が比較的悪い。形状が規則的でかつ内部に空隙がない粉末の圧縮性は良好である。例えば球形粉は摩擦力が小さく、見掛け密度(apparent density)が高いため、比較的高いグリーン体密度を得ることができる。形状及び内部構造以外に、粉末の大きさもグリーン体密度に影響する要因である。小粒径の粉末は、その粉末粒子間の接触面積が比較的多く、摩擦力が比較的大きく、見掛け密度が低いため、より高い成形圧力に依存して必要なグリーン体密度に達することができる。小粒径の粉末の別の欠点は、流動しにくく、自動化方式で粉末を金型の空洞に充填できない。ただし、小粒径の粉末の最大の利点はその焼結の駆動力が高く、ワークピース焼結後の密度が高くなる。
【0006】
以上に述べるように、高焼結密度を達成しようとする場合、小粒径の粉末を使用すると共にグリーン体密度を高めなければならない。しかし小粒径の粉末は大きな圧力を使用することで高いグリーン体密度を得ることができる。大きな圧力の使用は、金型の損耗を早めてしまう。また、使用する粉末が高硬度の場合、工程の難易度が更にアップするため、現在乾式プレス成形業者が高密度及び高硬度を持つワークピースを製造することはあまりない。粉末自体の硬度が約320HV(32HRC)の合金粉を例とすると、加圧時に粉末が変形しにくく、粉末の圧縮性も悪く、グリーン体密度が低いため、一般の乾式プレス成形工程に使用する粉末の平均粒径が44μmを上回った時、一般的な常用成形圧力(例えば400〜800MPa)を使用しても乾式プレス成形後の密度は、大半が6.3g/cm
3以下或いは理論密度の80%以下で、グリーン体密度が低くかつ粉末の粒径が大きいため、焼結後の密度及び機械的性質もこれによって低くなりすぎる。よって、乾式プレス成形工程を通じて高硬度、高密度のワークピースを製造でき、かつ金型が製造工程中の加圧によって起きる損耗を減少できる新しい粉末冶金ワークピースの製造方法を提供する必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の上記目的と他の目的、特徴及び長所を更に明確に分かりやすくするため、具体的実施例を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
図1と
図2の本発明に係る粉末冶金ワークピースの製造方法を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る粉末冶金ワークピースの製造方法のフローチャートである。
図2は本発明に係る粉末冶金ワークピース製造の実施例方法の噴霧造粒粉末の写真である。
【0012】
本発明の実施例において、本発明に係る粉末冶金ワークピースの製造方法はクロムを含有した高強度、高硬度のステンレス鋼、高速度鋼及び工具鋼のワークピースの製造に用いられているが、本発明のワークピース種類はこれに限られるものではない。
図1に示すように、本発明に係る粉末冶金ワークピースの製造方法には以下の段階を含む。
【0013】
段階101:第1の粉末を提供する。
第1の粉末は、粉末の圧縮性を高めるため、硬度が低いものを選択し、また平均粒径が小さい粉末を選択し、ワークピースの焼結密度を高める。本発明の実施例において第1の粉末の硬度が実質的に250HVを下回り、平均粒径が実質的に20μm以下となる。第1の粉末は鉄粉、クロムを含有するフェライト系ステンレス鋼粉、クロムを含有するオーステナイト系ステンレス鋼粉、或いは他のクロムを含有するプレアロイ粉とすることができるが、本発明の第1の粉末はこれに限られるものではない。
【0014】
段階102:第1の粉末と第2の粉末を混合粉末として混合する。
本発明の実施例において、第2の粉末は本発明に要する合金元素に基き、適量の元素粉末、プレアロイ粉或いは母合金(master alloy)粉を混合してからなるが、本発明はこれに限られるものではない。第2の粉末は、平均粒径が小さい粉末を選択し、平均粒径が実質的に20μm以下で、ワークピースの焼結密度を高めさせるが、本発明はこれに限られるものではない。第1の粉末と第2の粉末を混合した混合粉末の中に第1の粉末の重量パーセントが最大割合を占め、かつ混合粉末中の炭素の重量パーセントは実質的に0.07wt%以下又は0.81wt%以上の範囲で、クロムの重量パーセントが実質的に3.5〜18wt%の範囲で、モリブデンの重量パーセントが実質的に6wt%以下の範囲で、ニッケルの重量パーセントは実質的に5wt%以下の範囲で、銅の重量パーセントが実質的に5wt%以下の範囲で、ニオブの重量パーセントが実質的に4wt%以下の範囲で、バナジウムの重量パーセントが実質的に5.5wt%以下の範囲で、コバルトの重量パーセントが実質的に5.5wt%以下の範囲で、タングステンの重量パーセントが実質的に13wt%以下の範囲で、ケイ素の重量パーセントが実質的に0.1〜1wt%の範囲で、マンガンの重量パーセントが0.1〜1wt%の範囲である。ただし本発明はこれに限られるものではない。
【0015】
段階103:混合粉末にバインダーと水を添加する。
本発明の実施例において、混合粉末に適量のバインダーと水を添加し、またスラリー状として均一に混練する。バインダーは、例えばポリビニルアルコール、アラビアガム、メチルセルロースとするが、バインダーの種類はこれに限られるものではない。
【0016】
段階104:混合粉末に対して噴霧造粒工程を施すことで、噴霧造粒粉末を形成する。
バインダーと水を添加し、かつスラリーとして混練した混合粉末に対して噴霧造粒工程を施し、スラリー状の混合粉末を球状の噴霧造粒粉末10として形成させる(
図2)。噴霧造粒を経た後、混合粉末の間でバインダーと水により流動性が保たれ、粒径が増大した球状の噴霧造粒粉末10を結合することで、本来の混合粉末の流動性が悪く、圧縮性も悪くて、金型の空洞に充填しにくい等といった欠点を改善できる。
【0017】
段階105:噴霧造粒粉末に潤滑剤を添加する。
噴霧造粒粉末10に潤滑剤を添加して、噴霧造粒粉末10の流動性を改善すると共に粉末間及び粉末と金型間の摩擦力を減らし、噴霧造粒粉末10の成形を助ける。本発明において潤滑剤は例えばエチレンビスステアラミド(ethylene bis−stearamide)或いはステアリン酸亜鉛とする。ただし、本発明の潤滑剤はこれに限られるものではない。
【0018】
段階106:噴霧造粒粉末に乾式プレス成形工程を施し、噴霧造粒粉末をグリーン体として形成させる。
噴霧造粒粉末10を金型の中に充填してから所定圧力を加えて、緩い噴霧造粒粉末10を成形させると一定の強度を持つグリーン体となる。本発明において乾式プレス成形工程の温度は実質的に160℃を下回り、かつグリーン体の密度が実質的に6.3g/cm
3を上回るが、本発明はこれに限られるものではない。
【0019】
段階107:グリーン体に対して脱脂工程を施すことで、潤滑剤とバインダーを除去し、またグリーン体を成形体として形成させる。
グリーン体に対して脱脂工程を施すことで、潤滑剤とバインダーを除去し、潤滑剤とバインダーを除去した成形体に、その後の焼結工程を行わせることができる。
【0020】
段階108:成形体をワークピースとして焼結する。
成形体に対して焼結工程を施し、成形体をワークピースとして焼結させる。該成形体を焼結する環境は、真空又は水素を含有する環境であるが、本発明の焼結環境はこれに限られるものではない。焼結ワークピースの硬度は250HVを上回り、密度が実質的に7.4g/cm
3を上回る。ただし本発明のワークピースの硬度と密度はこれに限られるものではない。
【0021】
本発明は、上述の段階を介して噴霧造粒粉末10に良好な流動性、ソフトの平均硬度と圧縮性が高い性質を持たせることで高いグリーン体密度に達することができ、かつ金型で工程中に加えられた圧力による損耗を減らすことができる。よって、成形体が焼結を経た後、原始粉末粒径が小さいため、焼結後の成形体を収縮して高密度に達した場合、焼結したワークピースも高密度を有する。また焼結後に添加された合金元素は鉄基地中に固溶でき、かつ分布が均一に高硬度に達することができる。
【0022】
以下に、本発明の粉末冶金ワークピース製造の比較例及び実施例に基いて説明する。
【0023】
(第1の比較例)
第1の比較例において、プレアロイ粉末を準備し、その重量パーセントの組成は炭素が0.029wt%を占め、ケイ素が0.78wt%を占め,マンガンが0.31wt%を占め、クロムが15.6wt%を占め、モリブデンが0.69wt%を占め、ニッケルが4.20wt%を占め、銅が3.50wt%を占め、ニオブが0.15wt%で、残りが鉄となる。プレアロイ粉末の硬度は310HVで、プレアロイ粉末の平均粒径が12μmで、流動性がない。プレアロイ粉末に0.5wt%のエチレンビスステアラミド潤滑剤を添加し、室温で粉末冶金の従来の乾式プレス成形法により800MPaの圧力を加えてグリーン体を形成する。作成されるグリーン体密度は6.1g/cm
3となる。比較例のグリーン体を管式炉の中に入れ、アンモニア分解ガス雰囲気中で脱脂工程により300〜600℃で潤滑剤を除去した後、温度1350℃で2時間保持して焼結を行い、その焼結したワークピースの密度が7.32g/cm
3、相対密度が94%、硬度が285HVとなる。
【0024】
(第1の実施例)
第1の実施例において選択した第1の粉末は、Fe−17Cr(430Lステンレス鋼)で、その成分は約17wt%のクロムと少量のケイ素とマンガンと炭素とを含む。その炭素含有量は、約0.02wt%とする。Fe−17Crは、フェライト系ステンレス鋼粉末で、硬度が160HV〜180HVで、平均粒径が10.2μmとなる。第2の粉末の成分は、鉄とクロムとニッケルと銅とモリブデンと少量のケイ素とマンガンと炭素とニオブとを含む。第2の粉末の中にFe−17Cr−12Ni−2Mo(316Lステンレス鋼)粉と銅元素粉とニオブ元素粉とを有する。316Lステンレス鋼粉は約17wt%のクロム、12wt%のニッケル及2wt%のモリブデンと少量のケイ素とマンガンと炭素とを含有する。316Lステンレス鋼粉、銅元素粉及ニオブ元素粉の平均粒径はいずれも15μmを下回る。第1の粉末と第2の粉末を混合して形成した混合粉末の成分は、実質上第1の比較例のプレアロイ粉末に近似する。該混合粉末において混合粉末の重量パーセントの組成は、炭素が0.028wt%を占め、ケイ素が0.75wt%を占め、マンガンが0.28wt%を占め、クロムが15.6wt%を占め、モリブデンが0.68wt%を占め、ニッケルが4.10wt%を占め、銅が3.50wt%を占め、ニオブが0.15wt%で、残りが鉄となる。
【0025】
混合粉末に適量のポリビニルアルコール及びポリエチレングリコールのバインダーと水を添加した後スラリーとして均一に混練し、また混合粉末に対して噴霧造粒工程を施すことで噴霧造粒粉末10を形成する。噴霧造粒粉末10の平均粒径は55μmで、その中のバインダーの量は約1.2wt%とする。噴霧造粒粉末10に0.1wt%のエチレンビスステアラミド潤滑剤を添加し、室温で粉末冶金の従来の乾式プレス成形法により800MPaの圧力を加えてグリーン体を形成する。そのグリーン体密度は6.47g/cm
3となる。グリーン体を管式炉の中に入れ、アンモニア分解ガス雰囲気中で脱脂工程により300〜600℃で潤滑剤及びバインダーを除去した後、温度1350℃で2時間保持してステンレス鋼のワークピースを焼結し、その焼結したワークピースの密度が7.55g/cm
3、相対密度が97%、硬度が305HVとなる。第1の実施例のワークピースの密度、相対密度と硬度はいずれも第1の比較例のワークピースより優れている。
【0026】
(第2の比較例)
第2の比較例において17−4PHステンレス鋼のプレアロイ粉末を使用し、その重量パーセントの組成は炭素が0.030wt%を占め、ケイ素が0.78wt%を占め,マンガンが0.10wt%を占め、クロムが16.0wt%を占め、ニッケルが4.00wt%を占め、銅が4.00wt%を占め、ニオブが0.30wt%で、残りが鉄となる。プレアロイ粉末の硬度は320HVで、プレアロイ粉末の平均粒径が50μmである。プレアロイ粉末に対して室温で粉末冶金の従来の乾式プレス成形法により800MPaの圧力を加えてグリーン体を形成する。作成されるグリーン体密度は6.2g/cm
3となる。グリーン体を管式炉の中に入れ、水素ガス雰囲気中にて温度1320℃で2時間保持して焼結を行い、その焼結したワークピースの密度が7.21g/cm
3、相対密度が92%、硬度が265HVとなる。
【0027】
(第2の実施例)
第2の実施例において選択した第1の粉末は、Fe−17Cr(430Lステンレス鋼)のプレアロイ粉末で、その成分は約17wt%のクロムを含み、かつ少量のケイ素、マンガンと炭素を含有する。その炭素含有量は、約0.025wt%とする。この第1の粉末は、フェライト系ステンレス鋼粉末で、硬度が180HVで、平均粒径が10.3μmとなる。第2の粉末の成分は、ニッケルと銅とニオブと鉄とを含む。ニッケル、銅は元素粉の形で添加し、鉄及びニオブがFe−60Nbプレアロイ粉の形で添加する。第1の粉末と第2の粉末を混合して形成した混合粉末の成分は、実質上第2の比較例のプレアロイ粉末に近似する。該混合粉末においてその重量パーセントの組成は、炭素が0.028wt%を占め、ケイ素が0.70wt%を占め、マンガンが0.10wt%を占め、クロムが16.0wt%を占め、ニッケルが4.00wt%を占め、銅が4.00wt%を占め、ニオブが0.30wt%で、残りが鉄となる。
【0028】
混合粉末に適量のポリビニルアルコールのバインダーと水を添加した後スラリーとして均一に混練し、また混合粉末に対して噴霧造粒工程を施すことで噴霧造粒粉末10を形成する。噴霧造粒粉末10の平均粒径は56μmである。噴霧造粒粉末10に対して室温で粉末冶金の従来の乾式プレス成形法により800MPaの圧力を加えてグリーン体を形成する。作成されるグリーン体密度は6.30g/cm
3となる。グリーン体を管式炉の中に入れ、水素ガス雰囲気中でバインダーを除去した後、温度1320℃で2時間保持して17−4PHステンレス鋼のワークピースを焼結し、そのワークピースの密度が7.50g/cm
3、相対密度が96%、硬度が295HVとなる。第2の実施例のワークピースの密度、相対密度と硬度はいずれも第2の比較例のワークピースより優れている。
【0029】
(第3の比較例)
第3の比較例において、SKD11工具鋼のプレアロイ粉末(日本JISの成分規格は炭素:1.4−1.6%、ケイ素:0.4%未満、マンガン:0.6%未満、ニッケル:0.5%未満、クロム:11〜13%、モリブデン:0.8〜1.2%、バナジウム:0.2〜0.5%、残りが鉄)を使用し、その重量パーセントの組成は炭素が1.52wt%を占め、ケイ素が0.30wt%を占め,マンガンが0.43wt%を占め、クロムが11.7wt%を占め、モリブデンが1.01wt%を占め、バナジウムが0.38wt%を占め、残りが鉄となる。プレアロイ粉末の硬度は380HVで、プレアロイ粉末の粒径が25μmである。プレアロイ粉末に0.1wt%のステアリン酸亜鉛潤滑剤を添加し、室温で粉末冶金の従来の乾式プレス成形法により800MPaの圧力を加えてグリーン体を形成する。作成されるグリーン体密度は5.9g/cm
3となる。グリーン体を真空炉の中に入れ、脱脂工程により潤滑剤を除去した後、温度1250℃で1.5時間保持してワークピースを焼結し、そのワークピースの密度が7.21g/cm
3、相対密度が93%、硬度が407HVとなる。
【0030】
(第3の実施例)
第3の実施例において選択した第1の粉末は、Fe−12Crのプレアロイ粉末で、その成分は約12wt%のクロムを含み、かつ少量のケイ素、マンガンと炭素を含有する。その炭素含有量は、約0.02wt%とする。この第1の粉末は、410Lステンレス鋼粉末で、硬度が160HVで、平均粒径が12.0μmとなる。第2の粉末の成分は、Fe−45Vプレアロイ粉と少量の黒鉛元素粉と少量のモリブデン元素粉とを含む。第1の粉末と第2の粉末を混合して形成した混合粉末の成分は、実質上第3の比較例のSKD11工具鋼粉末に近似する。該混合粉末においてその重量パーセントの組成は、炭素が1.52wt%を占め、ケイ素が0.26wt%を占め、マンガンが0.40wt%を占め、クロムが11.7wt%を占め、モリブデンが1.01wt%を占め、バナジウムが0.38wt%を占め、残りが鉄となる。
【0031】
混合粉末に適量のポリビニルアルコール及びポリエチレングリコールのバインダーと水を添加した後スラリーとして均一に混練し、また混合粉末に対して噴霧造粒工程を施すことで噴霧造粒粉末10を形成する。噴霧造粒粉末10の平均粒径は58μmである。噴霧造粒粉末10に0.1wt%のエチレンビスステアラミド潤滑剤を添加し、室温で粉末冶金の従来の乾式プレス成形法により800MPaの圧力を加えてグリーン体を形成する。そのグリーン体密度は6.42g/cm
3となる。グリーン体を真空炉の中に入れ、脱脂工程により潤滑剤及びバインダーを除去した後、温度1250℃で1.5時間保持してSKD11工具鋼のワークピースを焼結し、そのワークピースの密度が7.65g/cm
3、相対密度が99%、硬度が468HVとなる。第3の実施例のワークピースの密度、相対密度と硬度はいずれも第3の比較例のワークピースより優れている。
【0032】
(第4の比較例)
第4の比較例において、M2高速度鋼(米国鉄鋼協会AISIの成分規格は炭素:0.78〜1.05%、ケイ素:0.20〜0.45%、マンガン:0.15〜0.40%、クロム:3.75〜4.50%、モリブデン:4.5〜5.5%、バナジウム:1.75〜2.20%、タングステン:5.50〜6.75%、残りが鉄)のプレアロイ粉末を使用し、その重量パーセントの組成は炭素が0.95wt%を占め、ケイ素が0.25wt%を占め,マンガンが0.18wt%を占め、クロムが4.3wt%を占め、モリブデンが5.01wt%を占め、バナジウムが1.82wt%を占め、タングステンが6.21wt%を占め、残りが鉄となる。プレアロイ粉末の硬度は410HVで、プレアロイ粉末の粒径が45μmである。プレアロイ粉末に0.5wt%のエチレンビスステアラミド潤滑剤を添加し、室温で粉末冶金の従来の乾式プレス成形法により800MPaの圧力を加えてグリーン体を形成する。そのグリーン体密度は5.6g/cm
3となる。グリーン体を真空炉の中に入れ、脱脂工程により潤滑剤を除去した後、温度1250℃で1.5時間保持してワークピースを焼結し、そのワークピースの密度が7.64g/cm
3、相対密度が96%、ワークピースの収縮率が9.8%、硬度が549HVとなる。
【0033】
(第4の実施例)
第4の実施例において選択した第1の粉末の成分は、硬度が比較的軟らかいカルボニル鉄粉を含む。その炭素含有量は、約0.04wt%で、硬度が100HVより低く、平均粒径が5μmとなる。第2の粉末の成分は、少量のケイ素、マンガン、炭素を含有するFe−13Crのステンレス鋼粉と黒鉛とモリブデンとタングステン元素粉とFe−45Vプレアロイ粉とを含む。Fe−13Crのステンレス鋼粉は、410Lステンレス鋼粉末で、硬度が約160HVで、平均粒径が12.0μmとなる。第1の粉末と第2の粉末を混合して形成した混合粉末の成分は、実質上第4の比較例のM2高速度鋼のプレアロイ粉末に近似する。該混合粉末においてその重量パーセントの組成は、炭素が0.95wt%を占め、ケイ素が0.21wt%を占め、マンガンが0.16wt%を占め、クロムが4.3wt%を占め、モリブデンが5.01wt%を占め、バナジウムが1.82wt%を占め、タングステンが6.21wt%を占め、残りが鉄となる。
【0034】
混合粉末に適量のポリビニルアルコール及びポリエチレングリコールのバインダーと水を添加した後スラリーとして均一に混練し、また混合粉末に対して噴霧造粒工程を施すことで噴霧造粒粉末10を形成する。噴霧造粒粉末10の平均粒径は50μmである。噴霧造粒粉末10にエチレンビスステアラミド潤滑剤を添加し、室温で粉末冶金の従来の乾式プレス成形法により800MPaの圧力を加えてグリーン体を形成する。そのグリーン体密度は6.5g/cm
3となる。グリーン体を真空炉の中に入れ、脱脂工程により潤滑剤及びバインダーを除去した後、温度1250℃で1.5時間保持してM2高速度鋼のワークピースを焼結し、そのワークピースの密度が7.92g/cm
3、相対密度が99%、ワークピースの収縮率が6.8%、硬度が590HVとなる。第4の実施例のワークピースの硬度、密度と相対密度はいずれも第4の比較例のワークピースより優れている。かつグリーン体密度が高いため、焼結後ワークピースの収縮率が第4の比較例の9.8%より低く、寸法の安定性もこれによって好ましくなる。
【0035】
(第5の実施例)
第5の実施例において選択した第1の粉末の成分は、硬度が比較的軟らかいカルボニル鉄粉を含む。その炭素含有量は、約0.05wt%で、硬度が100HVより低く、平均粒径が5μmとなる。第2の粉末の成分は、合金元素の由来とするため、組成がFe−51.6Cr−13.4Ni−12.6Cu−1.4Mn−1.2Si−0.7Nbとする母合金粉を含む。その粉末粒径が約10μmである。第1の粉末と第2の粉末を混合して形成した混合粉末の成分は、17−4PHステンレス鋼の成分に適合する。その重量パーセントの組成は、炭素が0.05wt%を占め、ケイ素が0.40wt%を占め、マンガンが0.47wt%を占め、クロムが17.2wt%を占め、ニッケルが4.47wt%を占め、銅が4.20wt%を占め、ニオブが0.23wt%を占め、残りが鉄となる。
【0036】
混合粉末に適量のポリビニルアルコール及びポリエチレングリコールのバインダーと水を添加した後スラリーとして均一に混練し、また混合粉末に対して噴霧造粒工程を施すことで噴霧造粒粉末10を形成する。噴霧造粒粉末10の平均粒径は50μmである。噴霧造粒粉末10にエチレンビスステアラミド潤滑剤を添加し、室温で粉末冶金の従来の乾式プレス成形法により800MPaの圧力を加えてグリーン体を形成する。そのグリーン体密度は6.5g/cm
3となる。グリーン体を真空炉の中に入れ、脱脂工程により潤滑剤及びバインダーを除去した後、温度1320℃で2時間保持して17−4PHステンレス鋼のワークピースを焼結し、そのワークピースの密度が7.56g/cm
3、相対密度が97%、硬度が310HVとなる。
【0037】
(第6の実施例)
第6の実施例において選択した第1の粉末は、Fe−17Cr (430Lステンレス鋼)のプレアロイ粉末で、その成分は約17wt%のクロムを含み、かつ少量のケイ素、マンガンと炭素を含有する。その炭素含有量は、約0.03wt%とする。この第1の粉末は、フェライト系ステンレス鋼粉末で、硬度が180HVで、平均粒径が10.3μmとなる。第2の粉末の成分は、黒鉛とモリブデンの元素粉とを含む。第1の粉末と第2の粉末を混合して混合粉末を形成する。該混合粉末においてその重量パーセントの組成は、炭素が1.01wt%を占め、ケイ素が0.84wt%を占め、マンガンが0.83wt%を占め、クロムが16.9wt%を占め、モリブデンが0.35wt%を占め、ニオブが3.2wt%を占め、残りが鉄となる。
【0038】
混合粉末に適量のポリビニルアルコール及びポリエチレングリコールのバインダーと水を添加した後スラリーとして均一に混練し、また混合粉末に対して噴霧造粒工程を施すことで噴霧造粒粉末10を形成する。噴霧造粒粉末10の平均粒径は54μmである。噴霧造粒粉末10にステアリン酸亜鉛潤滑剤を添加し、室温で粉末冶金の従来の乾式プレス成形法により800MPaの圧力を加えてグリーン体を形成する。そのグリーン体密度は6.30g/cm
3となる。グリーン体を真空炉の中に入れ、脱脂工程により潤滑剤及びバインダーを除去した後、温度1280℃で1.5時間保持してマルテンサイト系440Cステンレス鋼のワークピースを焼結し、そのワークピースの密度が7.60g/cm
3、相対密度が99%、硬度が310HVとなる。
【0039】
(第7の実施例)
第4の実施例において選択した第1の粉末の成分は、硬度が比較的軟らかいカルボニル鉄粉を含む。その炭素含有量は、約0.02wt%で、硬度が100HVより低く、平均粒径が5μmとなる。第2の粉末の成分は、少量のケイ素、マンガン、炭素を含有するFe−13Crのステンレス鋼粉と黒鉛とモリブデンとタングステン元素粉とFe−45Vプレアロイ粉とを含む。Fe−13Crのステンレス鋼粉は、410Lステンレス鋼粉末で、硬度が約160HVで、平均粒径が12.0μmとなる。第1の粉末と第2の粉末を混合して形成した混合粉末の成分は、T15高速度鋼の成分(米国鉄鋼協会AISIの成分規格は炭素:1.5〜1.6%、ケイ素:0.15〜0.40%、マンガン:0.15〜0.40%、クロム:3.75〜5.00%、モリブデン:1.0%未満、コバルト:4.75〜5.25%、バナジウム:4.50〜5.25%、タングステン:11.75〜13.0%、残りが鉄)に適合する。該混合粉末においてその重量パーセントの組成は、炭素が1.55wt%を占め、ケイ素が0.30wt%を占め、マンガンが0.30wt%を占め、クロムが3.8wt%を占め、モリブデンが0.35wt%を占め、バナジウムが5.0wt%を占め、タングステンが12.0wt%を占め、コバルトが5.0wt%を占め、残りが鉄となる。
【0040】
混合粉末に適量のポリビニルアルコール及びポリエチレングリコールのバインダーと水を添加した後スラリーとして均一に混練し、また混合粉末に対して噴霧造粒工程を施すことで噴霧造粒粉末10を形成する。噴霧造粒粉末10の平均粒径は50μmである。噴霧造粒粉末10にエチレンビスステアラミド潤滑剤を添加し、室温で粉末冶金の従来の乾式プレス成形法により800MPaの圧力を加えてグリーン体を形成する。そのグリーン体密度は6.6g/cm
3となる。グリーン体を真空炉の中に入れ、脱脂工程により潤滑剤及びバインダーを除去した後、温度1260℃で1.5時間保持してT15工具鋼のワークピースを焼結し、そのワークピースの密度が8.15g/cm
3、相対密度が99%、硬度が485HVとなる。
【0041】
(第8の実施例)
第8の実施例と第1の実施例の相違点は、第8の実施例において噴霧造粒粉末10の平均粒径が53μmで、第1の実施例の噴霧造粒粉末10の平均粒径(55μm)よりやや小さく、かつ噴霧造粒粉末10を120℃まで加熱し、加熱した後の噴霧造粒粉末の流動性が室温の時と同じで、やはりスムーズに120℃の金型の空洞内に充填してから乾式プレス成形法でグリーン体を形成できることにある。この条件によって形成されたグリーン体の密度は6.55g/cm
3で、焼結後形成したワークピースの密度が7.65g/cm
3、相対密度が98%、ワークピースの収縮率が5.4%、硬度が320HVとなる。加熱処理を経た第8の実施例のワークピースの密度、相対密度と硬度は、いずれも第1の比較例のワークピースより優れ、かつ第1の実施例のワークピースより優れている。
【0042】
以下、
図3の本発明に係る粉末冶金ワークピースの製造方法で得られた粉末冶金ワークピースの試験データ図を参照しながら説明する。
図3は、本発明に係る粉末冶金ワークピース製造の試験データ図である。
【0043】
図3に示すように、第1の比較例、第1の実施例及び第八実施例のワークピースは、実質的に同一の重量パーセント組成の粉末を焼結することにより製造される。第2の比較例と第2の実施例のワークピースは、実質的に同一の重量パーセント組成の粉末を焼結することにより製造される。第3の比較例と第3の実施例のワークピースは、実質的に同一の重量パーセント組成の粉末を焼結することにより製造される。第4の比較例と第4の実施例は、実質的に同一の重量パーセント組成の粉末を焼結することにより製造される。
【0044】
図3から分かるように、本発明の方法を通じて第1の実施例、第2の実施例、第3の実施例、第4の実施例及び第8の実施例において、焼結したワークピースの密度、相対密度及び硬度は、いずれも対応する各比較例のワークピースより優れている。また、第1の実施例と第8の実施例の比較から加熱・プレス成形処理を経た第8の実施例のワークピースの密度、相対密度及び硬度は、より一層優れていることが分かる。第2の実施例乃至第7の実施例からも分かるように、本発明の方法は種類が異なるステンレス鋼、高速度鋼或いは工具鋼のワークピースの製造に用いることができ、かつこれらワークピースはいずれも良好な密度、相対密度及び硬度を有する。
【0045】
上記の比較例と実施例の比較から本発明の方法を通じて粉末冶金の乾式プレス成形工程を運用して高密度、高硬度、寸法安定性が良好なステンレス鋼、高速度鋼或いは工具鋼を製造できることが分かる。
【0046】
上記をまとめると、本発明は、目的、手段及び効果を問わず、いずれも従来技術の特徴とは異なり、審査官は、何卒ご審理の上、速やかに特許査定賜りますようお願いする次第であります。ただし、上記の多くの実施例は、説明の便宜のためだけに挙げた例であり、本発明が主張する権利範囲は、上記実施例に限定されることなく、当然特許請求の範囲で記載されるものを基準とする。
(付記)
付記1の粉末冶金ワークピースの製造方法は、硬度が実質的に250HVを下回り、平均粒径が実質的に20μm以下となり、鉄の元素粉である第1の粉末を提供する段階と、前記第1の粉末と第2の粉末を、前記鉄の元素粉の重量パーセントが最大割合を占め、前記混合粉末中の炭素の重量パーセントは実質的に0.07wt%以下、又は、0.81wt%以上の範囲で、クロムの重量パーセントが実質的に3.5〜18wt%の範囲で、モリブデンの重量パーセントが実質的に6wt%以下の範囲で、ニッケルの重量パーセントは実質的に5wt%以下の範囲で、銅の重量パーセントが実質的に5wt%以下の範囲で、ニオブの重量パーセントが実質的に4wt%以下の範囲で、バナジウムの重量パーセントが実質的に5.5wt%以下の範囲で、コバルトの重量パーセントが実質的に5.5wt%以下の範囲で、タングステンの重量パーセントが実質的に13wt%以下の範囲で、ケイ素の重量パーセントが実質的に0.1〜1wt%の範囲で、マンガンの重量パーセントが0.1〜1wt%の範囲である混合粉末として混合する段階と、前記混合粉末にバインダーと水を添加する段階と、前記混合粉末に対して噴霧造粒工程を施すことで、噴霧造粒粉末を形成する段階と、前記噴霧造粒粉末に乾式プレス成形工程を施し、前記噴霧造粒粉末をグリーン体として形成させる段階と、前記グリーン体に対して脱脂工程を施すことで、前記バインダーを除去し、また、前記グリーン体を成形体として形成させる段階と、前記成形体をその硬度は250HVを上回り、密度が実質的に7.4g/cm
3を上回るワークピースとして焼結する段階と、を含むことを特徴とする。
付記2の粉末冶金ワークピースの製造方法は、付記1に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法において、前記噴霧造粒粉末に潤滑剤を添加する段階を更に含み、前記噴霧造粒粉末に潤滑剤を添加する段階は前記乾式プレス成形工程の前に行うことを特徴とする。
付記3の粉末冶金ワークピースの製造方法は、付記2に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法において、前記潤滑剤を除去するため、前記グリーン体に対して脱脂工程を施す段階は、前記噴霧造粒粉末に潤滑剤を添加する段階、及び、前記乾式プレス成形工程の後に行うことを特徴とする。
付記4の粉末冶金ワークピースの製造方法は、付記3に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法において、前記脱脂工程を経た後の前記成形体を焼結する環境は、真空、或いは、水素を含有する環境であることを特徴とする。
付記5の粉末冶金ワークピースの製造方法は、付記1に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法において、前記第1の粉末の硬度は、実質的に100HVを下回ることを特徴とする。
付記6の粉末冶金ワークピースの製造方法は、付記1に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法において、前記乾式プレス成形工程の温度は、実質的に160℃を下回ることを特徴とする。
付記7の粉末冶金ワークピースの製造方法は、付記1に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法において、前記グリーン体の密度は、実質的に6.3g/cm
3を上回ることを特徴とする。
付記8の粉末冶金ワークピースの製造方法は、付記1に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法において、カルボニル鉄粉で、前記カルボニル鉄粉の炭素含有量が0.10wt%以下であることを特徴とする。
付記9の粉末冶金ワークピースの製造方法は、付記1に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法において、前記混合粉末内の炭素の重量パーセントは、実質的に0.07wt%以下の範囲で、クロムの重量パーセントが実質的に15〜18wt%の範囲であることを特徴とする。
付記10の粉末冶金ワークピースの製造方法は、硬度が実質的に250HVを下回り、平均粒径が実質的に20μm以下となり、クロムを含有するプレアロイ粉末である第1の粉末を提供する段階と、前記第1の粉末と第2の粉末を、前記クロムを含有するプレアロイ粉末の重量パーセントが最大割合を占め、前記混合粉末中の炭素の重量パーセントは実質的に0.07wt%以下、又は、0.81wt%以上の範囲で、クロムの重量パーセントが実質的に3.5〜18wt%の範囲で、モリブデンの重量パーセントが実質的に6wt%以下の範囲で、ニッケルの重量パーセントは実質的に5wt%以下の範囲で、銅の重量パーセントが実質的に5wt%以下の範囲で、ニオブの重量パーセントが実質的に4wt%以下の範囲で、バナジウムの重量パーセントが実質的に5.5wt%以下の範囲で、コバルトの重量パーセントが実質的に5.5wt%以下の範囲で、タングステンの重量パーセントが実質的に13wt%以下の範囲で、ケイ素の重量パーセントが実質的に0.1〜1wt%の範囲で、マンガンの重量パーセントが0.1〜1wt%の範囲である混合粉末として混合する段階と、前記混合粉末にバインダーと水を添加する段階と、前記混合粉末に対して噴霧造粒工程を施すことで、噴霧造粒粉末を形成する段階と、前記噴霧造粒粉末に乾式プレス成形工程を施し、前記噴霧造粒粉末をグリーン体として形成させる段階と、前記グリーン体に対して脱脂工程を施すことで、前記バインダーを除去し、また、前記グリーン体を成形体として形成させる段階と、前記成形体をその硬度は250HVを上回り、密度が実質的に7.4g/cm
3を上回るワークピースとして焼結する段階と、を含むことを特徴とする。
付記11の粉末冶金ワークピースの製造方法は、付記10に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法において、前記噴霧造粒粉末に潤滑剤を添加する段階を更に含み、前記噴霧造粒粉末に潤滑剤を添加する段階は前記乾式プレス成形工程の前に行うことを特徴とする。
付記12の粉末冶金ワークピースの製造方法は、付記11に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法において、前記潤滑剤を除去するため、前記グリーン体に対して脱脂工程を施す段階は、前記噴霧造粒粉末に潤滑剤を添加する段階、及び、前記乾式プレス成形工程の後に行うことを特徴とする。
付記13の粉末冶金ワークピースの製造方法は、付記12に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法において、前記脱脂工程を経た後の前記成形体を焼結する環境は、真空、或いは、水素を含有する環境であることを特徴とする。
付記14の粉末冶金ワークピースの製造方法は、付記10に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法において、前記第1の粉末の硬度は、実質的に200HVを下回ることを特徴とする。
付記15の粉末冶金ワークピースの製造方法は、付記10に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法において、前記乾式プレス成形工程の温度は、実質的に160℃を下回ることを特徴とする。
付記16の粉末冶金ワークピースの製造方法は、付記10に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法において、前記グリーン体の密度は、実質的に6.3g/cm
3を上回ることを特徴とする。
付記17の粉末冶金ワークピースの製造方法は、付記10に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法において、前記クロムを含有するプレアロイ粉末の炭素含有量が0.05wt%以下であることを特徴とする。
付記18の粉末冶金ワークピースの製造方法は、付記10に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法において、前記混合粉末内の炭素の重量パーセントは、実質的に0.07wt%以下の範囲で、クロムの重量パーセントが実質的に15〜18wt%の範囲であることを特徴とする。
付記19のワークピースは、請求項1に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法で製造するものであることを特徴とする。
付記20のワークピースは、請求項10に記載の粉末冶金ワークピースの製造方法で製造するものであることを特徴とする。