(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-18865(P2016-18865A)
(43)【公開日】2016年2月1日
(54)【発明の名称】スターリングサイクルによる発熱部品冷却装置
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20160105BHJP
F25B 9/14 20060101ALI20160105BHJP
H01L 23/467 20060101ALI20160105BHJP
F21V 29/50 20150101ALI20160105BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20160105BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20160105BHJP
【FI】
H05K7/20 L
F25B9/14 520A
H01L23/46 C
F21V29/02 300
F21V29/02 510
F21S2/00 377
F21Y101:02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-140080(P2014-140080)
(22)【出願日】2014年7月7日
(71)【出願人】
【識別番号】307001382
【氏名又は名称】池戸 勇二
(72)【発明者】
【氏名】池戸 勇二
(72)【発明者】
【氏名】松本 修一
【テーマコード(参考)】
3K014
3K243
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
3K014AA01
3K014MA03
3K014MA05
3K014MA08
3K243AA01
3K243CC04
5E322AA11
5E322BA01
5E322BA03
5E322BB01
5E322BB02
5F136CA12
(57)【要約】
【課題】発熱部品の冷却を効果的に行うこと。同時に排熱を動力に変換して利用する面からもスターリングサイクル機器内の作動ガスへの熱の伝達を良好にすること。
【解決手段】発熱部品から熱を得てそれにより冷却ファンを回すのではなく、発熱部品をスターリングサイクル機器の作動空間内に封止し、スターリングサイクルの動作に伴う作動ガスの流動を利用し、作動ガスと発熱部品とのあいだで直接熱交換がなされるようにしたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品を冷却する手段であって、高温空間と低温空間よりなる作動空間と、高温空間と低温空間の容積比率を変化させる手段と、作動空間の圧力に応じて進退するピストン装置を備えたスターリングサイクル機器を備え、上記発熱部品は上記作動空間内に封止されている事を特徴とする発熱部品の冷却装置。
【請求項2】
発熱部品は発光素子もしくは受光素子であり、作動空間を形成するケースの少なくとも一部が透光性の材料で構成されている事を特徴とする請求項1の冷却装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスターリングサイクル機器に関し、発熱部品の冷却と同時に排熱を動力に変換して有効利用できる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スターリングサイクル機器は作動ガスを封止し、相互に連通する高温空間と低温空間より成る作動空間を備え、高温空間と低温空間の容積比と作動空間容積を所定の位相差で変化させるための駆動装置より成る。これにより熱から動力へ、あるいは逆スターリングサイクルとして動力から熱への相互の変換が行われることが広く知られている。
【0003】
また一方、非特許文献1に示されるよう発光効率が高く、排熱が少ないと言われるLEDにおいても光への変換効率は供給エネルギーの30%程度でしかないことに着目し、この排熱を運動エネルギーに変換する提案もなされている。また、その他にもCPUをはじめ太陽電池など電子部品の冷却は大きな課題となっている。
【0004】
これらの課題の解決方法の例として、特許文献1、あるいは従来例
図2に示されるよう発熱部品60、61にスターリングエンジンのケース20を密着させ、この温度と筐体100外部との温度差によりスターリングエンジンを駆動し、この動力によりファン110を回して冷却する提案もなされている。
【0005】
しかし実際には、発熱部品60の熱がスターリングエンジンの作動ガスに至るには、熱伝導率が低いガラスエポキシなどの回路基板61や、さらに熱伝導率の低い空気層を経由せざるを得ない。また、完全に密着させてもあらゆる方向に放射される熱の一方向のみを捉えているに過ぎない。
【0006】
従って、発熱部品60から見た冷却効果の面でも、また、スターリングエンジンから見た熱の流入の面からも熱伝達率を高めることが難しく実用に供するには困難な課題があった。
さらに、ファン110により発熱部品の熱が良好に排出された場合は熱がスターリングエンジンに入らないためファン110は回らないという矛盾もはらんでいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特許公開2001−127477
【非特許文献】
【0008】
第14回スターリングサイクルシンポジウム講演論文集「エネルギー変換に関する学校用教材の開発」2011年12月7日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発熱部品の冷却を効果的に行うこと。また、同時に排熱を動力に変換して利用する面からもスターリングサイクル機器内の作動ガスへの熱の伝達が良好に行われることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発熱部品から熱を得てそれにより冷却ファンを回すのではなく、発熱部品をスターリングサイクル機器の作動空間内に封止し、スターリングサイクルの動作に伴う作動ガスの流動を利用し、作動ガスと発熱部品とのあいだで直接熱交換がなされるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
スターリングサイクル機器の動作に伴う作動ガスの流れにより発熱部品全体の表面に強制空冷効果を得て熱伝達率を高めるとともに、発熱部品の熱を直接スターリングサイクルの動作に供することができる。
また、さらに逆スターリングサイクルにより能動的冷却を行う場合も同様に熱伝達率向上の効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は本発明をLED照明装置に応用した場合の実施例。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明をLED照明装置に適用した場合について以下
図1に基づいて説明する。
実施例1では発熱部品の熱により動作する受動的な放熱構造の例を、また実施例2においては逆スターリングサイクルにより外部動力を用いて能動的に冷却する例を説明する。
【実施例1】
【0014】
ケース上10は、ケース下20とともに密閉された作動空間30を形成し、ディスプレーサ40により高温空間30bと低温空間30aとに区画し、かつディスプレーサ40の上下動作で両者の容積比率を変化させるよう構成している。
ここでケース下20は透光性を持ち、熱伝導率が比較的小さいプラスチックなどの材料で、ケース上10は逆に熱伝導率が高いアルミニウムなどの材料で作られるのが好ましい。
【0015】
パワ-ピストン50はこの容積比率の変化に伴う圧力変化で進退し、その動力がT字リンク80を駆動し、主軸70の偏心位置に設けられたクランクピン70aを介して主軸70に伝達される。
また、その動力はT字リンク80を介して所定の位相差を持ってディスプレーサ40を上下動させる。
【0016】
以上の構成によりスターリングサイクルが構成され、高温空間の熱が主軸70の動力に変換されることはスターリングサイクルとして広く知られ、また、T字リンク80の動作も一般にロスヨーク機構として広く知られるものである。
【0017】
発熱部品60である発光ダイオード(LED)は回路基板61上にマウントされ、これらはケース下20の内側、すなわち作動空間30内に封止され、図示しない端子で気密を維持しつつ外部と電気的に接続されている。
【0018】
次に以上のように構成されたLED照明装置の動作について簡単に説明する。
【0019】
外部より給電されたLEDはその電力の一部を光に変え、透光性のあるケース20の外部に放射され、照明としての機能を果たすが、同時にその電力の一部は熱として高温空間30bの作動ガスを加熱する。
【0020】
これにより作動空間30の圧力は上昇し、パワーピストン50を押し上げるが、この動きは所定の位相差を持ってディスプレーサ40を押し下げる動作につながり、高温空間30bの作動ガスを図の矢印反対方向で低温空間30aへ押し出し、ケース10によりその熱を放出する。
【0021】
図示しないフライホイールと上記ロスヨーク機構の作用により、次にディスプレーサ40が上昇に転ずると、冷却された作動ガスは低温空間30aから高温空間30bに図示矢印方向に移動し、発熱部品60と回路基板61全体を冷却する。
【0022】
この動作を繰り返す事により発熱部品60は効果的に冷却されるとともに、主軸70に動力が得られる。この動力で図示しないファンを回し、ケース上10の放熱を促進するとともに、そよ風を生む扇風機とすることも、あるいはこれにより動くオブジェを駆動して癒やしの効果を得ることも自在で、卓上のLED照明装置として好適な物とできる。
【実施例2】
【0023】
実施例1では発熱部品60の排熱でスターリングエンジンを駆動し、作動ガスの流動による強制空冷効果により放熱を促進する構造について説明したが、本発明はより高度な冷却を必要とする場合、実施例1とほぼ同等の構造で逆スターリングサイクルを利用した能動的冷却構造としても適用できる。
【0024】
前述の通りスターリングエンジンに動力を与えて駆動すると、逆スターリングサイクルとしてヒートポンプとなる事も広く知られている。実施例の
図1において、主軸70に図示しないモータを接続し、主軸70を回転駆動する場合について簡単に説明する。
【0025】
パワーピストンで圧縮された作動ガスは温度が上昇し、この熱をケース上10に排出する事ができる。次の行程で膨張した作動ガスは温度が低下し、この低温の作動ガスが実施例1と同様に流動して発熱部品60の全表面と熱交換を行う事でさらに強力な冷却装置を得る事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
発光ダイオード(LED)や、太陽電池は高温になると変換効率が低下するため、その冷却装置が課題となっている。これに限らずCPUを始め多くの電子部品は低消費電力化とともに如何に放熱冷却するかが課題となってきている。このため本発明は多くの産業上の応用展開が可能である。
【0027】
なお、発熱部品はLEDを例に挙げて説明したが、例えば照明装置であればLEDに付随する電流制限抵抗やさらにレギュレータなど発熱するすべての部品を作動空間内に封入する事がより効果を高めることは明らかである。
【0028】
また、実施例においてはディスプレーサで高、低温空間比率を変化させる構造で説明したが、これを一対のピストンで行ういわゆるアルファ型スターリングエンジンを用いても同様である。
【符号の説明】
【0029】
10 ケース上、 11 Oリング
20 ケース下
30 作動空間、 30a 高温空間、 30b 低温空間
40 ディスプレーサ
50 パワ-ピストン
60 発熱部品、 61 回路基板
70 主軸 70aクランクピン
80 T字リンク
90 I字リンク
100 筐体
110 ファン