【解決手段】供給液が注入口23から水晶振動子4の一面側の流路57を介して廃液流路53へ流れ、供給液中に含まれる感知対象物が水晶振動子4に設けられた吸着膜38に吸着される。また供給液は注入口23に注入された供給液の液圧により廃液流路53を上昇した後、出口側毛細管部材56により吸収される。注入口側の供給液の量が少なくなると、液圧が低くなり、供給液が廃液流路53を上昇しにくくなり、出口側毛細管部材56に吸収されて引っ張られる供給液と、流路57側の供給液とが切り離された状態が形成される。そのため供給液として感知対象となる試料液に先立って緩衝液を感知センサーに供給する場合においても緩衝液の流れ込みによる試料液の希釈が抑えられ、測定感度の低下を抑制することができる。
【背景技術】
【0002】
臨床分野において、例えば血糖値の自己モニタリングに代表されるPOCT(Point of core TEST)と呼ばれる簡便な方法が普及している。この方法の例として特許文献1にはQCM(Quartz Crystal Microbalance)を利用した感知センサーが記載されており、配線基板上に水晶振動子を載置し、上側ケース及び下側ケースを互いに係合して上側ケースと水晶振動子との間に試料液の収容空間を形成する構造が開示されている。そしてQCMの高感度化技術として、差動計測を行うツインセンサーがある。この技術は一枚の水晶上に二つの電極を流路に対して対称に形成し、試料液が電極に対して同時にかつ同様に流れるように構成して周囲の外来ノイズをキャンセルする。
【0003】
この感知センサーの一例について
図14に示すと、配線基板9に形成された貫通孔90を塞ぐように水晶振動子91が設けられており、前記水晶振動子91の一面側には試料液の流路92が形成されている。カバー93に形成された液受け部931から供給された試料液は、入口側毛細管部材94から前記流路92を通り、出口側毛細管部材95を介して廃液領域96に向けて流通するように構成されている。97は前記貫通孔90を塞ぐように基板9の他面側に設けられたフィルムである。
【0004】
感知対象物の測定時には、先ず液受け部931から緩衝液を供給して、前記流路92を緩衝液にて満たし、周波数を安定させる。次いで試料液を液受け部931から供給するが、この試料液の供給により流路92内の緩衝液が出口側毛細管部材95から廃液領域96に移動し、流路92内に試料液が到達する。こうして試料液は流路92内を層流となって流れ、緩衝液は試料液により廃液貯留部96へ押し出されるように移動する。そして流路92内が試料液により満たされたところで周波数の検出を行い、このときの周波数の変化に基づいて、試料液中の感知対象物の検出や定量を行う。
【0005】
例えば液受け部931の試料液が全て入口側毛細管部材94に移動して当該液受け部931から試料液がなくなったところで、試料液が流路92内を満たし、出口側毛細管部材95を介して廃液領域96に至る量の試料液を供給する。こうして液受け部931の試料液が全て入口側毛細管部材94に移動した状態では、試料液は毛細管現象の保持力により静止している。しかしながら廃液領域96内には緩衝液が貯留されており、廃液領域96と出口側毛細管部材95とは互いに接触している。従って試料液が存在する流路92と緩衝液が存在する廃液領域96とは接続された状態にあるので、緩衝液が出口側毛細管部材95に向けて逆流し、徐々に流路92側へ移動するおそれがある。この現象が発生すると、流路92内にて次第に試料液に緩衝液が混ざり、試料液が緩衝液により希釈されて測定感度が低下する懸念がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、測定感度の低下を抑制して、感知対象物の検出又は定量を行うことができる感知センサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の感知センサーは、一面側に凹部が形成された配線基板と、
圧電片に、前記配線基板の導電路に電気的に接続された励振電極を設けて構成されると共に、一面側に試料液中の感知対象物を吸着する吸着膜が形成され、振動領域が前記凹部と対向するように前記凹部を塞いだ状態で前記配線基板に固定された圧電振動子と、
前記圧電振動子を含む配線基板の一面側の領域を覆うように設けられ、圧電振動子との間に圧電振動子の一面側において一端側から他端側へ向けて試料液を流通させる流路を形成する流路形成部材と、
前記流路の一端側に上方から試料液を注入するための注入口と、
前記流路の他端側に上方に向けて伸びるように接続され、前記注入口に注入された試料液の液圧により、試料液が上昇する廃液流路と、
前記廃液流路の下流側に設けられ、前記廃液流路を上昇した試料液を吸収する毛細管部材と、を備え、
廃液流路を上昇した試料液が、前記毛細管部材による試料液の吸収と、重力とにより上流側と下流側とに切り離されるように構成されたことを特徴とする。
【0009】
また本発明の感知センサーは、前記毛細管部材の下流側に設けられ、毛細管部材を流通する試料液を吸収するための吸収部材と、を備えていてもよく、前記注入口は、多孔質の部材の孔により構成されることを特徴としてもよい。
【0010】
本発明の感知装置は、上述の感知センサーと前記測定器とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の感知センサーは、試料液が注入口から圧電振動子の一面側の流路を介して廃液流路へ流れ、試料液中に含まれる感知対象物が圧電振動子に設けられた吸着膜に吸着される。また試料液は注入口から注入された供給液の液圧により廃液流路を上昇した後、毛細管部材により吸収される。注入口側の供給液の量が少なくなると、供給液を廃液流路を上昇させる液圧が低くなり、毛細管部材に毛細管部材に吸収されて引っ張られる試料液と、流路側の試料液とが切り離された状態が形成される。そのため試料液に先立って緩衝液を感知センサーに供給する場合においても緩衝液による試料液の希釈が抑えられ、測定感度の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施の形態に係る感知センサーを用いた感知装置について説明する。この感知装置は、マイクロ流体チップを利用し、例えば人間の鼻腔の拭い液から得られた試料液中のウイルスなどの抗原の有無を検出し、人間のウイルスの感染の有無を判定することができるように構成されている。
図1の外観斜視図に示すように、感知装置は本体部12と、感知センサー2と、を備えている。感知センサー2は、本体部12に形成された差込口17に着脱自在に接続されている。本体部12の上面には、例えば液晶表示画面により構成される表示部16が設けられており、表示部16は例えば本体部12内に設けられた後述する発振回路の出力周波数あるいは、周波数の変化分等の測定結果もしくは、ウイルスの検出の有無等を表示する。
【0014】
続いて感知センサー2について説明する。
図2は
図1に示した感知センサー2における上側カバー体21を外した状態の斜視図を示し、
図3及び
図4は夫々感知センサー2の各部材の表側(上面側)及び一部の部材の裏側(下面側)の斜視図を示し、
図5及び
図6は夫々感知センサー2の断面図及び上側カバー体21を外した状態の平面図を示す。
感知センサー2は、上側カバー体21と下側ケース22とで構成される容器20を備えている。下側ケース22の上方には、長さ方向に延伸された形状の配線基板3が設けられ、配線基板3における長さ方向の一端側には前述の本体部12の差込口17に差し込まれる差込部31が形成されている。以下明細書中では、感知センサー2の差込部31側を後方、他端側を前方とする。
【0015】
図3に示すように配線基板3の前方側の位置には、貫通孔32が形成されている。配線基板3は貫通孔32が下側ケース22の底面によって塞がれると共に、下側ケース22の外側に差込部31が突出するように配置される。配線基板3の表面側には、長さ方向に伸びる3本の配線34〜36が設けられており、各配線34〜36の一端側は、差込部31において、夫々端子部342、352、362が形成されている。また各配線34〜36の他端側は貫通孔32の外縁にて、夫々端子部341、351及び361が形成されている。更に配線基板3における貫通孔32の更に前方には、配線基板3の水平位置を決めるための孔部33が幅方向に2か所並べて形成されている。
【0016】
続いて圧電振動子、例えば水晶振動子4について説明する。
図3及び
図4に示すように水晶振動子4は、例えばATカットの円板状の水晶片41を備えており、水晶片41の表面側には、例えばAu(金)により形成される帯状の励振電極42A、42Bが設けられ、水晶片41の裏面側には、励振電極42A、42Bに夫々対応するように励振電極43A、43Bが帯状に設けられている。表面側の励振電極42A、42Bは長さ方向一端側にて、互いに接続された後、配線44の一端に接続され、配線44の他端側は水晶振動子4の下面側周縁に引き回された後、電極45が形成されている。一方の励振電極42Aの表面には、例えば抗原である感知対象物を吸着するための抗体からなる吸着膜48が形成されている。また他方の励振電極42Bの表面は吸着膜48が形成されずに剥き出しの状態となっている。また水晶振動子4の下面側に設けられた励振電極43A及び43Bには、夫々水晶振動子4の周縁に伸びる配線46、47の一端が接続され、各配線46、47の他端側は水晶振動子4の下面側周縁において電極46A、47Aが形成されている。
水晶振動子4は、下面側の励振電極43A,43Bが配線基板3の貫通孔32に臨むように配置され、電極46A、47Aが夫々端子部341、361と導電性接着剤により接続され、電極45が端子部351と導電性接着剤により接続される。
【0017】
配線基板3の上面側には、流路形成部材5が設けられている。流路形成部材5は、例えばPDMS(ポリジメチルシロキサン)で構成された例えば厚さ2.0mmの板状の部材で構成される。流路形成部材5の前方寄りの位置には、流路形成部材5の位置合わせをするための孔部58が、配線基板3に形成された孔部33と対応する位置に、流路形成部材5を厚さ方向に貫通するように設けられている。
【0018】
流路形成部材5の下面側には、
図4に示すように水晶振動子4が収まるように概略円形の凹部54が形成されている。また流路形成部材5の下面側には、配線基板3に形成された各配線34〜36が収まり、凹部54に夫々連通した溝253、263、273が形成されている。凹部54には、流路形成部材5が配線基板3側に押圧されたときに水晶振動子4の表面との間に試料液の流路57を区画形成する囲み部51が設けられている。この囲み部51は、感知センサー2の前後方向にその長さ方向が向くように、その外縁が小判型に形成された環状の突出部により構成されている。囲み部51は、凹部54から300μmの厚さに突出するように設けられ、囲み部51の内側の領域は、凹部54と同じ高さの平面になっている。また囲み部51の内側の領域の幅は後方側から放射状に広がったのち、中流域で一定の幅となり、その後前方側に向けて徐々に狭くなるように構成されている。
【0019】
流路形成部材5には、囲み部51の内側の領域の後端に開口し、厚さ方向に貫通する直径1.5mmの貫通孔52が穿設されている。また流路形成部材5には、囲み部51の内側の領域の前端に開口し、厚さ方向に貫通する直径1.5mmの廃液流路53が穿設されている。流路形成部材5を孔部58が配線基板3に設けられた孔部33と揃うように配置すると、水晶振動子4の上面に囲み部51が配置され、水晶振動子4の励振電極が42A,42Bが囲み部51の内側の領域の中心に並んで収まり、囲み部51の内側の領域の下面側が水晶振動子4により塞がれる。この流路形成部材5と水晶振動子4とに挟まれ、囲み部51に囲まれた領域が流路57に相当する。
【0020】
上側カバー体21は、差込部31を除いた配線基板3、流路形成部材5を上方側から覆うように設けられる。上側カバー体21の上面側にはすり鉢状に傾斜した注入口23が形成されている。
図4に示すように上側カバー体21の裏面側には、流路形成部材5を配線基板3に押圧するための押圧部80が設けられている。押圧部80は、例えば略箱形に構成され、上側カバー体21を下側ケース22に嵌合して互いに係止した時に、その下面にて流路形成部材5の上面全体を垂直下方に押圧する。押圧部80には、貫通孔52に対応する位置に注入口23に貫通する貫通孔81が設けられている。また廃液流路53に対応する位置から前方側に向かって、後述する出口側毛細管部材56の設置領域を確保するための切欠き82が形成されている。また押圧部80には、流路形成部材5及び配線基板3に夫々設けられた孔部58、33に挿入され、流路形成部材5及び配線基板3の位置決めをするための固定柱83が設けられている。
【0021】
図3、
図5に示すように貫通孔52を塞ぎ、その上端が貫通孔81を介して、注入口23に露出し、下端が流路57内に進入するように多孔質の部材で構成された入口側毛細管部材55が着脱自在に設けられている。入口側毛細管部材55は、例えば円柱状の部材であり、例えばポリビニルアルコール(PVA)などの化学繊維束により構成され、直径80μm程度の孔が多数形成された多孔質部材となっている。入口側毛細管部材55においては、前記化学繊維束の繊維間の空隙を毛細管現象により供給液が流通する。この実施の形態では、注入口23、貫通孔52、81、入口側毛細管部材55は、注入路に相当する。
【0022】
また廃液流路53には、出口側毛細管部材56が設けられる。出口側毛細管部材56は例えばポリビニルアルコール(PVA)などの化学繊維束により例えば直径80μm程度の孔が多数形成された多孔質に構成され、前後方向に壁状に伸びる水平部561と、この水平部561から下方側に0.5mm伸びる垂直部562と、を備えた略L字状に形成されている。
図6に示すように前記垂直部562を廃液流路53に挿入したときに垂直部562の左右の面と廃液流路53の内壁との間に隙間が形成される。また出口側毛細管部材56の幅は、出口側毛細管部材56が吸水して、膨張したときに廃液流路53の開口を塞がない幅に設定され、例えば幅0.5mmに設定される。
【0023】
出口側毛細管部材56の下流側には、例えばPVAなどで構成された矩形の吸収部材7が設けられ、出口側毛細管部材56の下流側端部は、吸収部材7に形成された切り込み72に挿入されている。また吸収部材7の外側には、吸収部材7からの液漏れを防ぐためのケース体73が設けられている。また下側ケース22における流路形成部材と、ケース体73と、の間には、出口側毛細管部材56を支持するための支持部材75が設けられており、出口側毛細管部材56は支持部材75に形成されたスリット74に挿入されて支持される。
【0024】
このように構成された感知センサー2は、配線基板3の差込部31を本体部12の差込口17に差し込んだときに、
図7に示すように水晶振動子4に設けられた励振電極42A及び43Aが第1の振動領域61となり、第1の発振回路63に接続されて発振する。また水晶振動子4の励振電極42B及び43Bに挟まれた領域が、第2の振動領域62となり、第2の発振回路64に接続されて発振する。本発明の感知装置では、スイッチ部65により、データ処理部66と第1の発振回路63とを接続するチャンネル1と、データ処理部66と第2の発振回路64とを接続するチャンネル2とを交互に切り替えた間欠発振を行い、チャンネル1及び2の発振周波数F1及びF2を測定する。感知センサー2の2つの振動領域61、62間の干渉を避け、安定した周波数信号を取得できるようにしている。そしてこれらの周波数信号は、例えば時分割されて、データ処理部66に取り込まれる。データ処理部66では、周波数信号を例えばディジタル値として算出し、算出されたディジタル値の時分割データに基づいて、演算処理を行い、例えば、抗原の有無などの演算結果を表示部16に表示する。
【0025】
この感知装置による、試料液中の感知対象物の有無を判定方法について
図8〜
図13を参照して説明する。なお明細書中においては、感知センサー2の注入口23から供給する液体を総称として「供給液」と示し、感知対象物を含む供給液を「試料液」、試料液の前に供給する感知対象物を含まない供給液を「緩衝液」とする。また
図8〜
図13においては、緩衝液を密度の低いドットで示し、試料液を密度の高いドットで示す。先ず感知センサー2を本体部12に接続し、例えばユーザがスポイトを用いて、注入口23に例えば生理食塩水からなり、感知対象物を含まない緩衝液を滴下する。緩衝液は入口側毛細管部材55に吸収され、毛細管現象により当該入口側毛細管部材55内を流通し、流路57に流れ込んで水晶振動子4の後方側の表面に供給される。
【0026】
水晶振動子4を構成する水晶片41の表面は親水性であるため、流路57に供給された緩衝液は、流路57内を濡れ拡がる。流路57に広がった緩衝液に続いて入口側毛細管部材55に吸収されている緩衝液は、
図8に示すように表面張力により水晶片41の表面へ引きだされ、注入口23から流路57へ連続して緩衝液が流れていく。励振電極42A、42Bは、流路57の中流部付近に並べて配置されているため、緩衝液は励振電極42A、42Bの表面を一定の速度で、同時に流れることになる。流路57を流れる緩衝液が、励振電極42A、42Bの表面に供給されると、これら励振電極42A、42Bは流路57の入り口側から出口側に向かってみて対称に形成されているため、等しく水圧の影響を受ける。これによって第1の振動領域61、第2の振動領域62の発振周波数が共に等しく低下する。
【0027】
そして緩衝液は、流路57を満たした後、
図9に示すように注入口23に供給された緩衝液の液圧によるサイホンの原理により、廃液流路53を上昇する。緩衝液が廃液流路53を上昇し、緩衝液と出口側毛細管部材56とが接すると、緩衝液は出口側毛細管部材56に一気に吸収されるため、加速される。この結果出口側毛細管部材56に吸収される緩衝液の流速と、廃液流路53を上昇する緩衝液の流速との差により、
図10に示すように流路57側の緩衝液と、出口側毛細管部材56に吸収された緩衝液とが、切り離される。
【0028】
この時注入口23に緩衝液が残っている場合には、緩衝液が注入口23から入口側毛細管部材55に流れ込む力により、流路57側の緩衝液が押し流され、廃液流路53を上昇し、出口側毛細管部材56に接するまで上昇する。緩衝液が出口側毛細管部材56に接すると、再び出口側毛細管部材56に緩衝液が一気に吸収されて、流路57側の緩衝液と出口側毛細管部材56に吸収された緩衝液とが切り離される。この出口側毛細管部材56に緩衝液が吸収されて、流路57側の緩衝液と出口側毛細管部材56に吸収された緩衝液とが切り離される動作と、流路57の緩衝液が廃液流路53を上昇する動作とが注入口23の緩衝液がすべて入口側毛細管部材55に流れ込むまで繰り返される。そして注入口23の緩衝液がすべて入口側毛細管部材55に流れ込むと、入口側毛細管部材55が、緩衝液を保持しようとするため、入口側毛細管部材55から流路57への緩衝液の流れ出しが止まり、緩衝液の流れが止まる。そのため
図11に示すように流路57側の緩衝液と、出口側毛細管部材56に吸収された緩衝液とが、切り離された状態にて、流路57内の緩衝液が停止する。
【0029】
更に出口側毛細管部材56に吸収された緩衝液について説明する。緩衝液は、廃液流路53を上昇して、出口側毛細管部材56に接するごとに徐々に吸収され、出口側毛細管部材56の上流側から下流側に向かって徐々に満たして行く。そして吸収された供給液が出口側毛細管部材56の下流側の端部まで達すると、出口側毛細管部材56の下流に接続された吸収部材7により、吸収される。供給液が出口側毛細管部材56から吸収部材7に吸収されると、出口側毛細管部材56の内部の供給液に出口側毛細管部材56内を上流側から下流側に流れる力が働く。これにより出口側毛細管部材56に吸収された供給液が吸収部材7に連続して流れ込む。
【0030】
続いて例えば緩衝液と同量の試料液を注入口23に供給する。注入された試料液が入口側毛細管部材55に流れ込むことにより、
図12に示すように緩衝液が流路57を下流側に向けて流される。更に重量によって試料液が入口側毛細管部材55に流れ込もうとするため、当該緩衝液は廃液流路53内を上昇し、出口側毛細管部材56に接触し吸収される。これにより、出口側毛細管部材56に緩衝液が吸収され、出口側毛細管部材56の緩衝液と、流路57側の緩衝液及び試料液と、が切り離される。
【0031】
その後残りの緩衝液が廃液流路53を上昇して出口側毛細管部材56に接する動作と、出口側毛細管部材56に緩衝液が吸収され、出口側毛細管部材56の緩衝液と流路57側の供給液とが切り離される動作が繰り返され、流路57に残っていた緩衝液が出口側毛細管部材56に吸収されていく。また流路57においては、徐々に緩衝液が下流側に押し流され、流路57を満たす液相が緩衝液から試料液に置換される。
【0032】
更に流路57内の液相が試料液に置換された後、注入口23に残る試料液が入口側毛細管部材55に流れ込もうとするため、流路57内の試料液が廃液流路53を上昇し、出口側毛細管部材56に接する動作と、廃液流路53を上昇した試料液が出口側毛細管部材56に吸収され、流路57側の試料液と、出口側毛細管部材56に吸収された試料液とが切り離される動作と、が注入口23に供給された試料液がすべて入口側毛細管部材55に流れ込むまで繰り返される。その後、注入口23に試料液がなくなり、入口側毛細管部材55から流路57への試料液の流れだしが止まり、廃液流路53側にて試料液が上昇しにくくなると、
図13に示すように出口側毛細管部材56に吸収された試料液と、流路57側の試料液とが切り離された状態で停止する。
【0033】
流路57内の液相が試料液に置換されると、試料液中に感知対象物が含まれる場合には、励振電極42A上の吸着膜48に当該感知対象物が吸着される。一方励振電極42B上には、感知対象物が吸着されない。このため吸着膜48への感知対象物の吸着量に応じて第1の発振回路から出力される周波数F1が下降するためF1−F2が変化する。このようにF1−F2の変化に基づいて感知対象物の有無を判定することができる。また発振周波数の差分F1−F2の変化量と試料液中の感知対象物の濃度との関係式を予め取得しておき、当該関係式と測定により得られた発振周波数の差分との変化量とから、試料液中の感知対象物の濃度を求めてもよい。
【0034】
上述の実施の形態においては、感知センサー2に注入された供給液(緩衝液及び試料液)は、流路57を流れた後、廃液流路53を上昇し出口側毛細管部材56に吸収され、その後吸収部材7に流れ込む。この時出口側毛細管部材56の吸収により流路57側の供給液と出口側毛細管部材56側の供給液とが切り離される。そのため感知対象物の測定を行う際に、流路57側の供給液と、出口側毛細管部材56内の供給液とが混合されず、流路57側の供給液が出口側毛細管部材56内の供給液により希釈されるおそれがない。また供給液が廃液流路53を上昇して、出口側毛細管部材56に到達すると、廃液流路53内の上昇速度よりも大きい速度で出口側毛細管部材56側に吸収されることから、廃液流路53よりも出口側毛細管部材56の方に流れやすく、出口側毛細管部材56から廃液流路53には流れにくい。このことから出口側毛細管部材56から廃液流路53へ向けて供給液が逆流しにくく、この点からも供給液が希釈されることが抑えられる。従って常に測定感度が高い状態で、試料液中の感知対象物の検出測定を行うことができる。
【0035】
また入口側毛細管部材55を設けない場合においても、供給液が注入口23から流路57に重力を利用して流れ込み、廃液流路53を上昇させることができ、供給液の液量が少なくなると、供給液が廃液流路53を上昇しなくなるため、同様に出口側毛細管部材56に吸収された供給液と、流路側の供給液と、を切り離した状態を形成することができるため同様の効果が得られる。
【0036】
また吸収部材7を設けなくてもよい。例えば注入口23から供給液を供給して試料の測定を行うにあたって、廃液流路53を上昇した供給液を出口側毛細管部材56に吸収させて保持させてもよい。
さらに上述の実施の形態においては、吸収部材7と、流路形成部材5と、の間に出口側毛細管部材56を支持する支持部材75を設けているが、吸収部材7の切り込み72により支持するようにしてもよい。あるいは、出口側毛細管部材56を上側カバー体21側から支持するようにしてもよく、例えば切欠き82により出口側毛細管部材56を挟み込んで支持すればよい。