【解決手段】本開示は、ケイ素を含む基板上にナノ構造を提供する方法であって、(a)前記基板の表面上に遷移金属の層を堆積させるステップと、(b)前記遷移金属の層をアニールして、パターン化遷移金属層を形成させるステップと、(c)前記基板をエッチングして、前記基板表面上にナノ構造を形成させるステップとを含む方法に関する。
遷移金属が、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、及びAuからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、ケイ素を含む基板上にナノ構造を提供する方法であって、(a)前記基板の表面上に遷移金属の層を堆積させるステップと、(b)前記遷移金属の層をアニールして、パターン化遷移金属層を形成させるステップと、(c)前記基板をエッチングして、前記基板表面上にナノ構造を形成させるステップとを含む方法が提供される。
【0010】
有利には、本開示は、低い反射率を有するケイ素基板を製造するための単純で効果的な方法を提供し、パターン化ケイ素基板は、光起電デバイスの作製、アノードとしての使用に好適であり、さらに光電子デバイスの作製用の出発テンプレートとして機能する。具体的には、本方法は、広い放射線スペクトルにわたり低い反射率を示し(「ブラックシリコン」)、反射防止コーティングの1又は2以上の層の適用を必要としないケイ素基板を準備することができる。
【0011】
さらに有利には、本方法は、任意の表面方位(例えば、<100>、<111>、<010>、<001>、<110>、<011>、<101>)の、反射率が低減されたパターン化ケイ素基板の作製に効果的である。
【0012】
さらに有利には、驚くべきことに、上記方法に従い作製されたパターン化ケイ素基板は、表面欠陥(亀裂及びエッチピット等)の密度が大幅に低減された、窒化ガリウム(GaN)等のバンドギャップの広い半導体材料の層の成長に使用することができることが判明している。有利には、これによって、上記方法により製造された表面改質ケイ素基板は、光電子デバイス用の出発テンプレートとして機能することができる。
【0013】
別の態様において、上記方法により製造される露出表面上のナノ構造を含むパターン化ケイ素基板が提供される。
【0014】
別の態様において、窒化ガリウム(GaN)層の堆積及び成長のための、上で定義されるパターン化ケイ素基板の使用が提供される。
【0015】
さらに別の態様において、光起電(PV,photovoltaic)デバイスの製造のための、上で定義されるパターン化ケイ素基板の使用が提供される。
【0016】
さらに別の態様において、アノードとしての、上で定義されるパターン化ケイ素基板の使用が定義される。
【0017】
別の態様において、パターン化表面を有するケイ素基板上に窒化アルミニウム(AlN)層を堆積させるための方法であって、(a)上で定義されるパターン化ケイ素基板を準備するステップと、(b)前記パターン化表面上にトリメチルアルミニウム(TMA,trimethyl aluminum)を通過させて、表面上にAlの層を堆積させるステップと、(c)所定のV/III比及び温度で前記パターン化表面上にTMA及びアンモニア(NH
3)を通
過させて、パターン化表面上でのAlNの堆積をもたらすステップと、(d)ステップ(c)における温度及びV/III比を調節して、2次元AlN成長をもたらすステップとを
含む方法が提供される。
【0018】
一実施形態において、調節するステップは、ステップ(b)中の温度及びV/III比の
初期低下を含む。
【0019】
別の実施形態において、調節するステップは、ステップ(b)中、温度の初期低下の後に、V/III比を維持しながら温度を再び最初に定められた温度に上昇させるステップを
さらに含む。
【0020】
別の実施形態において、調節するステップは、V/III比を少なくとも50%低下させ
るステップをさらに含む。
【0021】
さらに別の実施形態において、ステップ(b)中の温度の初期低下は、150℃以上の低下である。
【0022】
有利には、上で定義されるようにステップ(b)中に温度及び/又はV/III比を調節
することにより、AlN緩衝層の効果的な2次元成長を達成することができる。上述の方法に従い成長させたAlN緩衝層は、GaN層を成長させるためのテンプレートとして機能することができる。有利には、AlN緩衝層を有する上述のパターン化ケイ素基板上に成長させたGaN層は、結晶格子内に生じる歪みが低減されることが判明している。歪みの低減は、成長させたGaN層の表面形態に見られるピット欠陥の密度がより低いことから証明され得る。
【0023】
したがって、さらに別の態様において、ケイ素基板上に窒化インジウムガリウム(InGaN)/GaN多重量子井戸(MQW,multiple quantum well)を提供するための方
法であって、(i)上で定義されるパターン化ケイ素基板を準備するステップと、(ii)上で定義される方法に従い前記パターン化ケイ素基板上にAlN層を堆積させるステップと、(iii)その上にGaN及びAlN層の交互層をさらに堆積させ、所望の厚さを達成
するステップとを含む方法が提供される。
すなわち、本発明は以下に関する。
1.ケイ素を含む基板上にナノ構造を提供する方法であって、
(a)前記基板の表面上に遷移金属の層を堆積させるステップと、
(b)前記遷移金属の層をアニールして、パターン化遷移金属層を形成させるステップと、
(c)前記基板をエッチングして、前記基板表面上にナノ構造を形成させるステップと
を含む方法。
2.堆積させるステップ(a)が、基板表面上に遷移金属の層をスパッタするステップを含む、上記1に記載の方法。
3.遷移金属が、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、及びAuからなる群から選択される、上記1又は2に記載の方法。
4.遷移金属が、Auである、上記3に記載の方法。
5.遷移金属層が、2〜20nmである、上記1〜4のいずれかに記載の方法。
6.遷移金属が、3、6、9、12、15、又は18nmの厚さを有する、上記5に記載の方法。
7.アニールするステップが、400〜750℃の温度で行われる、上記1〜6のいずれかに記載の方法。
8.アニールするステップが、30〜90秒間行われる、上記1〜7のいずれかに記載の方法。
9.パターン化遷移金属層が、ナノドットを含む、上記1〜8のいずれかに記載の方法。
10.ナノドットが、球、長円又は楕円の形状である、上記9に記載の方法。
11.ナノ構造が、離散構造又は相互接続構造であってもよい、上記1〜10のいずれかに記載の方法。
12.離散構造が、円筒構造、柱状構造、ピラミッド構造、円錐構造、ドーム状構造、針状構造、テーパ構造又はこれらの混合体を含む、上記10に記載の方法。
13.基板が、SiO
2層をさらに含む、上記1〜12のいずれかに記載の方法。
14.上記1〜13のいずれかに記載の方法により製造されるナノ構造を含む、パターン化ケイ素基板。
15.窒化ガリウム(GaN)層の堆積及び成長のための、上記14に記載のパターン化ケイ素基板の使用。
16.光起電(PV)デバイスの製造のための、上記14に記載のパターン化ケイ素基板の使用。
17.アノードとしての、上記14に記載のパターン化ケイ素基板の使用。
18.パターン化表面を有するケイ素基板上に窒化アルミニウム(AlN)層を堆積させるための方法であって、
(a)上記14に記載のパターン化ケイ素基板を準備するステップと、
(b)前記パターン化表面上にトリメチルアルミニウム(TMA)を通過させて、前記表面上にAlの層を堆積させるステップと、
(c)所定のV/III比及び温度で前記パターン化表面上にTMA及びアンモニア(NH
3)を通過させて、前記パターン化表面上でのAlNの堆積をもたらすステップと、
(d)ステップ(c)における温度及びV/III比を調節して、2次元AlN成長をもたらすステップと
を含む方法。
19.調節するステップ(d)が、V/III比を50%超低下させるステップを含む、上記18に記載の方法。
20.調節するステップ(d)が、ステップ(c)の温度を低下させるステップをさらに含む、上記19に記載の方法。
21.ステップcのV/III比が、100〜1500である、上記18〜20のいずれかに記載の方法。
22.ステップ(c)が、1000〜1100℃で行われる、上記18〜21のいずれかに記載の方法。
23.ケイ素基板上にInGaN/GaN多重量子井戸(MQW)を提供するための方法であって、
(i)上記14に記載のパターン化ケイ素基板を準備するステップと、
(ii)上記18〜22のいずれかに従い前記パターン化ケイ素基板上にAlN層を堆積させるステップと、
(iii)その上にGaN及びAlN層の交互層をさらに堆積させ、所望の厚さを達成する
ステップと
を含む方法。
【0024】
添付の図面は、開示される実施形態を例示し、開示される実施形態の原理を説明する役割を果たす。しかしながら、図面は、例示のみを目的として作成され、本発明の限界を定義するものとして作成されたものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ケイ素を含む基板上にナノ構造を生成するためのステップを示す概略図である。
【
図2】ケイ素及び酸化ケイ素を含む基板上にナノ構造を生成するためのステップを示す概略図である。
【
図3a】急速アニールステップにより形成されたナノドットの原子間力顕微鏡(AFM,atomic force microscope)画像である。
【
図3b】
図3a中のナノドットを形成するためのアニールの温度プロファイルを示すグラフである。
【
図3c】形成されたナノドットのAFM画像の平面図である。
【
図3d】ナノドットのサイズ分布が幅約40〜80nm及び高さ20〜30nmであることを示す、
図3c中に示される線幅にわたる断面解析プロットである。
【
図4a】エッチング後に基板表面上に形成されたナノ構造の走査型電子顕微鏡(SEM,scanning electron microscope)画像であり、遷移金属(Au)の堆積層の厚さは3nmであった。
【
図4b】エッチング後に基板表面上に形成されたナノ構造のSEM画像であり、遷移金属(Au)の堆積層の厚さは6nmであった。
【
図4c】エッチング後に基板表面上に形成されたナノ構造のSEM画像であり、遷移金属(Au)の堆積層の厚さは9nmであった。
【
図4d】エッチング後に基板表面上に形成されたナノ構造のSEM画像であり、遷移金属(Au)の堆積層の厚さは12nmであった。
【
図5a】緩衝酸化物エッチング(BOE,Buffered Oxide Etch)溶液による清浄化後の
図4aの基板を示すSEM画像である。
【
図5b】BOE溶液による清浄化後の
図4bの基板を示すSEM画像である。
【
図5c】BOE溶液による清浄化後の
図4cの基板を示すSEM画像である。
【
図5d】BOE溶液による清浄化後の
図4dの基板を示すSEM画像である。
【
図6】
図5a〜5d中の各基板試料に対する3次元AFM画像及びラインスキャンのプロファイルである。
【
図7】Siナノピラー(左)及び従来のケイ素(111)ウェハ(右)に対して行った接触角測定結果である。
【
図8】露出ケイ素対
図5a〜5dのエッチング後の基板の反射率プロットである。
【
図9a】ケイ素ナノピラーの断面SEM画像である。
【
図9b】Siナノ構造表面テンプレート上の低温窒化アルミニウム(LT−AlN,low temperature Aluminum nitride)中間層を用いた窒化ガリウム(GaN)の成長を示す断面SEM画像であり、挿入図は、高温AlNナノ構造を成長させたSi(111)の界面を示す。
【
図10a】従来のSi(111)上に成長させたGaNにおいて観察される欠陥を示すSEM画像である。
【
図10b】異なる温度及びV/III比でSiナノピラー上に成長させた複数のAlN緩衝層を用いたGaNを示す図である
【
図10c】異なる温度及びV/III比で従来のSi(111)上に成長させた複数のAlN緩衝層を用いたGaNを示す図である。
【
図11a】従来のSi(111)上の窒化インジウムガリウム(InGaN)/GaN多重量子井戸(MQW)に対して行った、様々な温度での光ルミネッセンス(PL,photoluminescence)測定結果を示すグラフプロットである。
【
図11b】Siナノピラー上の窒化インジウムガリウム(InGaN)/GaN多重量子井戸(MQW)に対して行った、様々な温度での光ルミネッセンス(PL)測定結果を示すグラフプロットである。
【
図12】従来のSi(111)[左]及びSiナノピラー[右]上のInGaN/GaN試料の形態を示すSEM画像である。
【
図13a】光起電(PV)用途における使用に好適な、約20nmの直径及び1μmを超える長さを有するSiナノニードルのSEM画像である。
【
図13b】Siウェハ上のGaNの異なる領域でのPLスペクトルである。
【
図14a】従来の明るいSiウェハ(右)対ナノピラーを有するブラックSiウェハ(左)の比較を示す写真である。
【
図14b】貫通転位(明るい歪み線)の低減及び二重スタックAlN緩衝層を示す透過型電子顕微鏡(TEM,transmission electron microscope)画像である。
【
図15a】HT−AlN緩衝層の成長を示すSEM画像である。
【
図15b】Siナノピラー上の二重/複数スタックAlN緩衝層の成長(様々な温度及びV/III比での成長)を示すSEM画像である。
【
図15c】
図15aの従来のAlN層上に成長させたGaN層のSEM画像である。
【
図15d】
図15bの従来のAlN層上に成長させたGaN層のSEM画像である。
【
図16】温度及びV/III比を調節してSiナノピラー上に二重/複数スタックAlN緩衝層を成長させるステップを示す概略図である。
【
図17】Siナノピラー上に単一のHT−AlN層を成長させるためのステップを示す概略図である。
【
図18】Auナノドットパターン化GaNアノードの表面形態のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
本明細書において使用される以下の単語及び用語は、以下に示される意味を有するものとする。
【0027】
本明細書に関連して、「V/III比」という用語は、ウェハ表面上に微結晶構造(例え
ば、AlN、GaN、AlGaN等)を成長させるためにウェハ表面にわたり通過させる第V族元素(例えばN)及び第III族元素(例えばAl、Ga等)のモル比を指すように
解釈されるものとする。V/III比は、特定の温度及び圧力におけるモル前駆体比に依存
する。V/III比は、反応のためにウェハ表面にわたり通過させるモル前駆体(例えば、
TMA、NH
3)の流量を変化させることにより変更/調節され得る。
【0028】
「ナノサイズ構造」又は「ナノ構造」という用語は、本明細書において使用される場合、10nm〜1,500nmの幅及び/又は高さ寸法を有する構造を指すように解釈されるものとする。
【0029】
「実質的に」という用語は、「完全に」を除外せず、例えば、Yを「実質的に含有しない」組成物は、Yを完全に含有しなくてもよい。必要に応じて、「実質的に」という単語は、本発明の定義から除外され得る。
【0030】
別段に指定されない限り、「含んでいる」及び「含む」、並びにそれらの文法的変化形は、「非制限的」又は「包含的」言語を表すことを意図し、それらは、列挙された要素を包含するが、列挙されていない追加的な要素の包含も許容する。
【0031】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は、配合物の成分の濃度に関連して、典型的には示された値の+/−5%、より典型的には示された値の+/−4%、より典型的には示された値の+/−3%、より典型的には示された値の+/−2%、さらにより典型的には示された値の+/−1%、さらにより典型的には示された値の+/−0.5%を意味する。
【0032】
本開示全体にわたり、ある特定の実施形態は範囲形式で開示され得る。範囲形式での説明は、単に便宜上及び簡潔性のためのものであり、開示される範囲の領域に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、全ての可能な部分範囲及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、1〜6等の範囲の説明は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6等の部分範囲、及びその範囲内の個々の数字、例えば1、2、3、4、5、及び6等を具体的に開示したものとみなされるべきである。これは、範囲の幅とは無関係に適用される。
【0033】
任意選択的な実施形態の開示
ここで、ケイ素を含む基板上にナノ構造を提供するための方法の例示的な限定されない実施形態を開示する。
【0034】
基板は、結晶Siを本質的に含み得る。基板は、酸化Siの1又は2以上の層をさらに含んでもよい。一実施形態において、基板は、実質的に純粋なSiであるように選択される。Si基板は、<100>、<111>、<010>、<001>、<110>、<011>、<101>からなる群から選択される任意の表面方位を有し得る。一実施形態において、Si基板は、表面方位<111>を有する。
【0035】
別の実施形態において、Si基板は、その表面上に、遷移金属の堆積層を受容するためのSiO
2の追加的な層を含む。
【0036】
開示される方法の堆積させるステップ(a)は、物理気相堆積(PVD,physical vapor deposition)ステップを含んでもよい。PVDは、スパッタ堆積、蒸着、陰極アーク
堆積、電子ビーム(eビーム)物理気相堆積、パルスレーザ堆積及びこれらの組合せからなる群から選択され得る。一実施形態において、堆積ステップ(a)は、基板表面上に前記遷移金属の層をスパッタするステップを含む。さらに別の実施形態において、基板上に遷移金属の層を堆積させるために、eビームPVD工程が使用される。
【0037】
基板上に堆積させる遷移金属は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、及びAuからなる群から選択され得る。一実施形態において、遷移金属は、Auであるように選択される。
【0038】
遷移金属層は、2〜20nm、2〜4nm、2〜6nm、2〜8nm、2〜10nm、2〜12nm、2〜14nm、2〜16m又は2〜18nmの厚さで堆積され得る。具体的実施形態において、遷移金属層は、約3nm、約6nm、約9nm、約12nm、約15nm、及び約18mmの厚さで堆積される。
【0039】
アニールするステップ(b)は、1000℃未満の温度で行われてもよい。一実施形態において、アニールするステップ(b)は、800℃未満の温度で行われる。さらに別の実施形態において、アニール温度は、約400℃〜約750℃である。さらに別の実施形態において、アニール温度は、約400℃〜約500℃である。さらに、アニールするステップは、10秒〜120秒の期間行われてもよい。アニールの期間は、アニールするステップが行われる温度に依存し得る。別の実施形態において、アニールするステップは、30〜90秒の期間行われてもよく、アニール温度は400℃〜500℃である。
【0040】
アニールするステップの後、Si基板上にパターン化遷移金属層が形成し得る。パターン化遷移金属層は、離散した遷移金属ナノ粒子を含んでもよい。
【0041】
一実施形態において、アニール後、パターン化遷移金属層は、実質的に基板の全表面積にわたり分散した、複数の離散したボール状ナノ粒子又はナノドットの構成を有してもよい。ナノドットは、球、長円、又は楕円形状であってもよい。
【0042】
エッチングするステップ(c)は、少なくとも1種のハロゲンガス及び不活性ガスを含むガスエッチャントを用いて行われてもよい。ハロゲンガスは、基板層を等方性エッチングするように選択される反応種であってもよい。ハロゲンガスは、Cl
2、Br
2、又はF
2から選択され得る。一実施形態において、ハロゲンガスは、Cl
2である。不活性ガス種は、Si−Si結合を破壊するための物理的衝撃を提供するように選択される任意の好適な非活性種であってもよい。一実施形態において、不活性ガスは、アルゴンである。エッチャント中の不活性ガスに対するハロゲンガスのガス流量比は、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1及び3:1からなる群から選択され得る。一実施形態において、エッチャントは、6:1の不活性ガスに対するハロゲンの流量比を有してもよい。有利には、不活性ガスに対するハロゲンガスの比は、エッチング速度に影響するように好適に制御され得る。
【0043】
一実施形態において、エッチングするステップ(c)は、誘導結合プラズマ(ICP,Inductive Coupled Plasma)エッチングを含む。別の実施形態において、エッチングするステップ(c)は、反応性イオンエッチング(RIE,Reactive-Ion Etching)を含んでもよい。エッチングするステップは、約5秒〜約60秒、約5秒〜120秒、約5秒〜約180秒、約5秒〜約240秒、又は約5秒〜約300秒行われてもよい。一実施形態において、エッチングするステップは、5秒〜60秒の期間行われてもよい。
【0044】
初期エッチング段階中、例えば10〜30秒のエッチング中、エッチャントは、基板を異方性エッチングしてもよく、すなわち、遷移金属層/ナノドットにより被覆されていない基板の領域のみでエッチングしてもよい。エッチングするステップが進行するに従い、エッチャントはまた、遷移金属ナノドットを部分的にエッチングして、ナノドットのサイズを減少させてもよい。
【0045】
エッチングするステップの後、基板は、パターン化表面を示し得る。パターン化基板層は、離散した、又は相互接続した島状ナノ構造を含んでもよい。離散ナノ構造は、円筒構造、柱状構造(「ナノピラー」)、ピラミッド構造、円錐構造(「ナノコーン」)、ドーム状構造(「ナノドーム」)、針状構造(「ナノニードル」)、テーパ構造又はこれらの混合体を含んでもよい。浅いICPエッチングは、ナノピラー、ナノコーン、ナノドーム、及び相互接続された島状ナノ構造の形成をもたらし得ることが判明している。或いは、深いRIEエッチングによりナノニードル構造を得ることができる。
【0046】
ナノ構造は、約55nm〜約250nmの幅寸法、約50nm〜約1200nmの高さ寸法を含んでもよい。微小間隔により1つのナノ構造が隣接ナノ構造から隔てられてもよい。間隔は、約25nm〜約100nmであってもよい。
【0047】
有利には、開示される方法は、多様なナノ構造を提供することができるという点で柔軟である。さらに、遷移金属層に、より微小なナノドットを形成させるために、アニール期間を増加させることができ、及び/又はアニール温度を上昇させることができ、これによって、より微小なナノ構造の形成が可能となる。
【0048】
さらに、エッチングするステップにより遷移金属ナノドットの部分エッチングがもたらされた場合、ピラミッド状又は円錐状ナノ構造がパターン化基板上に形成することが判明している。
【0049】
別の実施形態において、パターン化基板は、離散したドーム状ナノ構造を含んでもよい。さらに別の実施形態において、パターン化基板は、1又は2以上の隣接ナノ構造と重複して相互接続された島状の特徴のネットワークを形成するドーム状ナノ構造を含んでもよい。
【0050】
開示される方法の別の実施形態において、Si基板にSiO
2層が提供されてもよい。遷移金属層は、直接基板層上ではなく、SiO
2層上に堆積され得る。金属層とSiO
2層との間の接着性を改善するために、1又は2以上の遷移金属層が連続的に提供されてもよい。一実施形態において、Au層の堆積の前にCr又はNi層がSiO
2層上に堆積されてもよい。一実施形態において、SiO
2層は、存在する場合、約10nm〜約400nmの厚さで提供されてもよい。
【0051】
有利には、金属に勝るSiO
2の高い選択性が異方性エッチングを可能とし、それにより、SiO
2層が提供されていない場合のテーパ型の側壁(例えば円錐又はピラミッド構造)とは対照的に、実質的に垂直な側壁を有するパターン化Si基板が得られる。
【0052】
ここで、パターン化表面を有するケイ素基板上にAlN層を堆積させるための方法の例示的な限定されない実施形態を開示する。
【0053】
一実施形態において、パターン化表面を有するケイ素基板上にAlN層を堆積させるための方法であって、(a)上述の方法により製造されるパターン化ケイ素基板を準備するステップと、(b)前記パターン化表面上にトリメチルアルミニウム(TMA)を通過させて、表面上にAlの層を堆積させるステップと、(c)所定のV/III比及び温度で前
記パターン化表面上にTMA及びアンモニア(NH
3)を通過させて、パターン化表面上でのAlNの堆積をもたらすステップと、(d)ステップ(c)における温度及びV/III比を調節して、2次元AlN成長をもたらすステップとを含む方法が提供される。
【0054】
有利には、パターン化Si基板上にまずAlの層を堆積させることにより、AlN微結晶が形成されるステップ(c)中にNH
3とSiとの間の望ましくない反応が生じることが防止されることが判明している。具体的には、Alの保護層を有することにより、SiN
x結晶の形成が防止される。
【0055】
通過させるステップ(c)は、1000℃〜約1100℃の温度で行われてもよい。通過させるステップ(c)はまた、チャンバ設計により決定される100〜1500のV/III比で行われてもよい。V/III比は、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、及び1500からなる群から選択され得る。一実施形態において、通過させるステップ(C)は、1050℃の温度、及び411という高いV/III比で行われてもよい。このステップ中、AlN微結晶はナノ構造の溝に形
成し得る。
【0056】
調節するステップ(d)中、V/III比は、40%、50%、60%又は70%低下さ
れ得る。一実施形態において、調節するステップ(d)は、V/III比の少なくとも50
%以上の低下を含む。一実施形態において、V/III比は、NH
3に対するTMAの流量
を増加させることにより低下され得る。調節するステップ(d)は、温度を150℃以上低下させるステップをさらに含んでもよい。有利には、温度及びV/III比の低下は、よ
り多くのAl原子の注入をもたらし、Al吸着原子の拡散確率を低下させる。これにより、ナノ構造の側壁及び先端上にAlN微結晶が核生成及び形成する。
【0057】
調節するステップ(d)は、再び温度をステップ(c)の温度に上昇させるステップ(d2)をさらに含んでもよい。一実施形態において、調節するステップ(d)は、V/III比を維持しながら温度を1050℃に上昇させるステップを含んでもよい。有利には、
これは、AlN微結晶の高エネルギーAl吸着原子との合体を促進し、AlN層の効果的な2D成長をもたらす。また、平坦化された多孔質AlNの形成をもたらす条件下で、平坦化AlN層上に細孔が形成され得る。
【0058】
パターン化ケイ素基板上にAlN層を堆積させるための方法の代替の実施形態において、調節するステップは任意に削除されてもよい。この実施形態において、一定の高温及びV/III比でAlN微結晶を成長させる。そうすることにより、より低い温度及びV/III比で成長させたAlN微結晶に比べ、より大きいAlN微結晶及び微小板が形成され得る。この実施形態において、AlN層は、3D結晶成長する。工程中、AlN微結晶内にいくつかの空隙が形成され得るが、これはメルトバック効果をもたらし得る。
【0059】
上記の方法は、Si基板のナノ構造上に堆積された高温AlN(HT−AlN,high temperature-AlN)緩衝層を含むパターン化Si基板層の形成をもたらす。有利には、HT−AlN緩衝層を有するこのSi基板は、続いてその上にGaN層を成長させるために使用することができる。
【0060】
したがって、本開示の別の態様は、パターン化ケイ素基板上にInGaN/GaN多重量子井戸(MQW)を提供するための方法であって、(i)上で定義されるパターン化ケイ素基板を準備するステップと、(ii)上述の方法に従い前記パターン化ケイ素基板上にHT−AlN層を堆積させるステップと、(iii)その上にGaN及びAlN層の交互層
をさらに堆積させ、所望の厚さを達成するステップとを含む方法に関する。
【0061】
一実施形態において、Si基板上にHT−AlN緩衝層を形成させた後、基板上にトリメチルガリウム(Ga(CH
3)
3)すなわち「TMGa」,trimethyl gallium)及び
TMAを流すことにより、HT−AlN層上にAlGaN緩衝層を成長させる。TMAに対するTMGaの流量は、約1:7、1:7.5、又は1:8の比であってもよい。AlGaN層は、1025℃の温度で成長させてもよい。AlGaN層は、約200nmの厚さを有してもよい。
【0062】
AlGaN層を成長させた後、メルトバックを防止するためにNH
3の流量を低く維持しながら、同じ温度及び圧力でGaNの層を成長させる。一実施形態において、TMGaの流量は、約15〜30sccm(立方センチメートル毎分)であってもよい。TMAの流量は、約80〜150sccmであってもよく、NH
3の流量は、約5〜20slm(リットル毎分)である。成長させたGaN層は、約250nmの厚さを有してもよい。
【0063】
その後、GaN層の上に、約600〜700℃の低温でAlN中間層(LT−AlN)を成長させてもよい。LT−AlN中間層は、2〜3nm以下の厚さを有してもよい。有利には、AlN中間層は、結晶構造内の応力及び歪みを低減するように機能し、Si基板上のn−GaN層を改善する。
【0064】
LT−AlN中間層の上に追加的なGaN層を成長させ、続いてもう1つのLT−AlN中間層及びもう1つのGaN層を成長させてもよい。この工程は、所望のGaNの厚さが得られるまで繰り返されてもよい。
【0065】
パターン化Si基板上に成長させた得られるGaNテンプレートは、InGaN/GaN多重量子井戸及びpGaNの成長に使用して、発光ダイオードを形成させることができる。
【0066】
[実施例]
特定の実施例を参照することにより、さらに本発明の限定されない例をより詳細に説明するが、実施例は決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0067】
パターン化Si基板の製造
まず、4:1の体積比の硫酸H
2SO
4及び過酸化水素(H
2O
2)からなる混合物であるピラニア溶液中で、Si(111)ウェハ基板を清浄化する。この清浄化ステップの目的は、ウェハ表面から有機汚染物質を除去することである。
【0068】
次いで、Si基板を、フッ化アンモニア(NH4F)及び脱イオン(DI)水で希釈したフッ化水素酸(HF)中で清浄化する(緩衝酸化物エッチング、「BOE」としても知られる)。BOEは、Si基板の表面を均一に濡らし、HF成分は基板表面上に存在するいかなるSiO
2も除去する。純粋なSi表面をブロー乾燥し、速やかに次のステップに使用する。
【0069】
金(Au)ターゲット源を使用してAuプラズマが生成されるスパッタステップにより、Si基板層上にAuの薄層を堆積させる。
【0070】
Si表面上にAu層がスパッタされた後、急速熱アニールシステムにより、30秒〜90秒の期間、400〜500℃で、N
2の存在下でSi基板をアニールする。
【0071】
N
2の存在下、表面張力効果により、Au粒子は凝集してボール状構造又はナノドット構造を形成する。また、Au粒子のいくつかは、アニール工程中、Si基板内に拡散する。部分拡散により、自己集合Auナノドット(後にエッチングマスクとして機能する)は、特に硝酸銀(AgNO
3)/HF又はHF/硝酸(HNO
3)/アセチル酸(H−Ac)エッチャントを用いた湿式化学エッチングが行われる場合、エッチングステップ中容易に除去されないことが確実となる。いくつかの場合において、金属ナノドットと酸化物層との間の接着性を改善するために、金属ナノドットの堆積前にSiO
2が犠牲層として使用される。
【0072】
後続のエッチングは、塩素(Cl
2)ガス及びアルゴン(Ar)雰囲気中での誘導結合プラズマエッチング(ICP)を使用して、6:1の流量比で行う。典型的なCl
2ガス流量は、約18〜50sccmであってもよい。Cl
2ガスが等方性エッチングを可能とする一方で、中性ガスであるArが物理的衝撃を与えてSi原子間の結合を破壊する。
【0073】
図1を参照すると、概略図は、パターン化基板を準備するための開示される方法の一実施形態を説明している。BOEで清浄化して残留表面酸化物を除去することにより、純粋なSi基板2を提供する。その後、スパッタ工程によりAu層4をSi基板2上に堆積させる。次いでAu層4の急速熱アニールを行い、これによりSi基板2の表面上に分散したAuナノドット6が形成される。次いで、ICP又はRIEエッチングを行う。
【0074】
10秒〜30秒の初期エッチング段階中、マスクとして機能するAuナノドットを有さないSi基板の領域で異方性エッチングが進行し、トレンチ8が形成される。この時、マスクされた基板領域10はエッチングされない。
【0075】
しかしながら、エッチングが進行するに従い、ArガスエッチャントはAu原子も徐々にエッチングし、経時的にAuナノドットのサイズを減少させる。部分的にエッチングされたAuナノドット14によって、マスキングの効果がより低くなり、エッチングされたSi表面は、ナノピラミッド又はナノ円錐構造12を示すようになる。
【0076】
いくつかの実施形態において、遷移金属の堆積前にSiO
2(厚さ10〜400nm)の層が提供される。
図2を参照すると、パターン化Si基板を準備するための本発明による例示的方法の概略図が示されており、ナノ構造は、実質的に垂直な側壁を有する(「ナノピラー」)。
【0077】
図2において、同様の数字は
図1に従う同様の特徴を示す。H
2SO
4/H
2O
2溶液で清浄化することにより、純粋なSi基板2’が得られる。次いで、SiO
2層16をSi基板2’上に堆積させる。続いて、1又は2以上の金属(Cr、Ni、Au)をSiO
2層16上にスパッタし、金属層4’を形成させることができる。次いで、急速熱アニールを行い、基板2’表面上に分散した複数の金属ナノドット6’を形成させる。次いで、ICP/RIEエッチングを行うと、SiO
2層16にトレンチ8’が形成される。これに関して、選択性の違いにより、SiO
2層16が金属ナノドット6’よりも優先的にエッチングされることに留意されたい。
【0078】
次いで、金属ナノドット6’は、超音波照射によりSiO
2層16から除去される。図から分かるように、エッチングされたSiO
2層は、ここでSi基板2’のマスクとして機能する。さらにICP/RIEエッチングを行うと、Si基板2’にトレンチ18が形成される。最後に、BOE溶液中での清浄化により残留SiO2層を除去し、実質的に垂直な側壁を有するナノ構造を有するパターン化Si基板20を形成させる。
【実施例2】
【0079】
様々な厚さのAu層を有するパターン化Si基板の作製
上記プロトコルに基づき、様々な厚さのAuを有する4つのパターン化Si基板(試料A〜D)、すなわち試料A(3.0nm)、試料B(6.0nm)、試料C(9.0nm)及び試料D(12.0nm)を作製した。実施例1において説明したプロトコルを使用して、これらの試料を作製した。エッチングステップは、約20℃で行った。
【0080】
図4a〜4d(試料A〜Dに対応する)は、エッチングステップ後のパターン化Si基板のSEM画像を示す。SEM画像から分かるように、試料Aは、ナノピラー構造を含む。Au層がより厚くなると、(
図4bにおいて観察されるように)ドーム状ナノ構造が形成し始める。Au層がさらにより厚いと、(
図4c及び4dにおいて観察されるように)ドーム状ナノ構造(ナノドーム)は最終的に融合し、相互接続された島状構造を形成した。
【0081】
次いで、試料を60℃で5分間BOE中で清浄化し、エッチング工程中に形成した可能性のある任意の残留酸化物を除去した。それぞれ試料A〜Dに対応する
図5(a)〜5(d)から分かるように、清浄化ステップ後、ナノ構造はより明確となる。
【実施例3】
【0082】
Si基板上のナノ構造の特性決定
原子間力顕微鏡
試料A〜Dのそれぞれに形成された(実施例2からの)ナノ構造を、原子間力顕微鏡(AFM)下で調査し、その特性決定結果(ナノ構造の寸法、表面粗度)を以下及び
図6に示す。
【0083】
図6から、同じエッチング条件であるがAuナノドットがより大きい場合、形成されるSiナノ構造のサイズがより大きいだけでなく、エッチングの深さもまた増加することが分かる。さらに、Auナノドットマスクがより大きい場合、試料の表面粗度もまた増加する。これは恐らく、エッチング工程中のナノパターン化Auドットへのプラズマラジカルの拡散速度における違いに起因すると考えられる。
【0084】
AFMラインスキャンから、Siナノ構造の側壁がテーパ型であり、垂直ではないことが分かる。これは、ArガスによるAuナノドットの物理的エッチングに起因すると考えられる。したがって、上記から、開示される方法は、Si基板表面上に、ナノピラー、ナノドーム、及び/又は相互接続された島を包含するがこれらに限定されない異なる種類のナノ構造を生成することができることが示され得る。
【0085】
接触角測定
同じ配向(111)の従来の露出Siウェハと比較して、試料AのSi基板に対し接触角測定を行った。この測定の結果を
図7に示す。具体的には、試料Aのナノピラーの接触角は約101°であり、一方、平滑な露出Si基板の接触角は約79°である。
【0086】
この結果から、ナノピラーを有するパターン化Si基板は、従来のSiウェハよりも疎水性であることが示され得る。重要なことに、ウェハ表面の性質は、その上に成長させることができる堆積材料の後続層に影響し得ることに留意されたい。例えば、Si上のGaN成長の場合、ウェハ表面の疎水性は、AlNの島の3次元成長及び核生成を促進し、これにより良質のAlN緩衝層の生成が容易化され得る。
【0087】
試料の反射率
試料A〜Dのそれぞれの反射率を調査し、露出Siと比較した。結果を
図8に示す。
【0088】
図8から分かるように、Auナノドットエッチング試料の反射率は、可視波長(400〜650nm)に対し、露出Siの40%と比較して10%に近い。この結果は、Si(111)基板の表面が、試料表面から光を反射しないことを示唆している。上述のプロトコルに従い生成されたブラックSiの写真もまた、
図14(a)及び(b)に示す。
【0089】
断面解析
Si(111)の断面SEMは、
図9(a)に示す通りである。鋭いSi(111)ナノピラーは、異なるか、又は光を異なる方向に散乱し、Siの反射率を低下させ、その太陽電池への利用可能性を高めている。ナノ構造はまた、空気と比較した高い屈折率η
GaN=2.33に起因するGaN(発光ダイオード)LEDからの発光の内部反射の確率を最小限化する。これにより、LEDからわずか約4%の光が抽出されることになる。
【実施例4】
【0090】
高温(HT)−AlN及び低温(LT)−AlN中間層を有するSi(111)ナノ構造上のGaNテンプレートの成長
この実施例において、出願人は、ナノ構造(ナノピラー)を有するパターン化Si基板をGaNの成長に使用し、従来のSi基板上に成長させたGaN層と比較する。比較結果を
図10に示す。
【0091】
具体的には、本実施例は、本発明によるパターン化Si基板をテンプレートとして使用して、LT−AlN中間層を適用した亀裂のないGaN層を生成することができることを実証する。
【0092】
従来のSi上のGaN表面の顕微鏡画像を
図10aに示すが、亀裂線及びエッチピットが明確に観察され得る。一方、それと比較して、(
図10bに示されるように)パターン化Si基板上に成長させたGaNは、実質的に欠陥を含有しない。
【0093】
AlN中間層の成長に関して、本発明者らは、二重/複数AlN層成長をもたらす条件を選択した。
図16を参照して方法をより明確に説明する。まず、複数のナノ構造26を有するパターン化Si基板22上に、保護層としてAl層24を堆積させる。Al層24の目的は、SiとNH
3ガス(後に通過される)との相互作用を防止することである。これにより、GaNの成長に有害なSiNxの形成が防止される。
【0094】
Siナノ構造26は非平面であるため、確実に表面全体がAlシード層24でコーティングされるように、シード層24の形成中、より長期間のTMA流を使用する。このシードAl層を堆積させるための温度は、1000〜1035℃である。
【0095】
次いで、Si基板22の表面にわたりTMA及びNH
3を流し、AlN微結晶28を形成させる。この時点の温度は1050℃に設定し、高いV/III比を使用する。所望のV
/IIIを達成するための例示的流量を以下に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
続いて、さらなるAlN成長のため、追加のAlN微結晶32がナノ構造26の垂直/テーパ型の側壁上に堆積し得るように、温度を800〜900℃に低下させてAl吸着原子の拡散を低減する。この時点で、NH
3流量に対するTMA流量を増加させることにより、V/III比を増加させることができる。
【0098】
この低下された温度及び低下されたV/III比での成長は、その運動エネルギーを低下
させることにより、吸着原子の拡散距離を短縮し、したがってAlNを形成する衝突NH
3との反応を促進する。これにより、AlN微結晶32は、ナノ構造26の側壁及び先端から核生成することができる。
【0099】
次いで、V/III比を維持しながら、複数のステップで温度を段階的に再び1050℃
に上昇させ、AlN微結晶28及び32の合体を促進し、良好な2次元成長を達成する。この条件において、平坦化AlN層上に細孔が形成され得る。
【0100】
AlN緩衝層の成長の別の実施形態を、
図17に示す。同様の数字(ただし「’」符号により区別される)は、
図16に従う同様の特徴を示す。
【0101】
図17の方法は、温度がより長期間1050℃という高温で一定に維持される点で、
図16において説明された方法と異なり、これにより、AlN微結晶28’は、融合してより大きな微結晶構造32’を形成する。微結晶32’の融合は、AlN層の3次元成長をもたらし、ナノ構造26’の先端上に形成されたAlN微結晶は、ナノ構造26’の側壁上に形成されたAlN微結晶と融合して、より大きな3D AlN結晶34を形成し得る。工程中、いくつかの空隙36が形成され得るが、これはメルトバック効果をもたらし得る。
【実施例5】
【0102】
従来のSi上に成長させたInGaN/GaN MQWに対するパターン化Si基板上に成長させたInGaN/GaN MQWの特性評価
上述のように、GaN層を成長させるためにパターン化Si基板及びHT−AlNテンプレートを使用し、続いてInGaN/GaN MQWの成長に使用することができる。これに関して、
図11は、従来のSiテンプレート上に成長させたMQWからのPL発光(左のグラフ)が、Siのフレネル反射効果に起因する複数の衛星ピークを示し、一方でパターン化Si基板上に成長させたInGan/GaN MQWからのPL発光(右のグラフ)は、フレネル反射の排除により広いピーク発光の総和を示すことを表す特性評価結果を示している。さらに、パターン化Si基板上に成長させたMQWからのPL発光の強度も、従来のSi上のMQWより(約2倍)強い。これは、埋め込まれたエアホール内側層を形成するナノピラーパターン化基板からの発光の増加した散乱に起因し得る。複数スタックAlN緩衝層により、内部フレネル反射は、脱出円錐内に制限され得る。
【0103】
図12は、両方の種類のGaNテンプレート(パターン化Si基板上に成長させたGaNテンプレート及び従来のSi基板上に成長させたGaNテンプレート)上に成長させたMQWに対して撮影したSEM画像を示す。連結して鎖を形成し得る20nmのサイズの細孔又はピットが、両方の試料上で観察された。より小さいピットは、恐らく、AlN緩衝層からのGaNの島の合体中に生成される。別の種類のピット、すなわち約100nmのサイズのより大きい六角形Vピットは、従来のSi上に成長させたGaN(左の画像)にのみ顕著に現れている。これらのピットは、歪みのあるGaN層上にInGaN/GaN MQWを成長させた場合に生成される。パターン化Si基板上に成長させたMQW試料(右の画像)における六角形Vピットの数の低減は、パターン化Si基板上に成長させたGaNが、従来のSi上に成長させたGaNと比較してより緩和している(応力及び歪みが少ない)ことを示唆している。