特開2016-189757(P2016-189757A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-189757(P2016-189757A)
(43)【公開日】2016年11月10日
(54)【発明の名称】除脂肪体重の増加剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/21 20160101AFI20161014BHJP
【FI】
   A23L1/308
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-72720(P2015-72720)
(22)【出願日】2015年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(74)【代理人】
【識別番号】100161698
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 知子
(72)【発明者】
【氏名】友澤 寛
(72)【発明者】
【氏名】鍔田 仁人
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【テーマコード(参考)】
4B018
【Fターム(参考)】
4B018MD33
4B018MD36
4B018MD37
4B018MD38
4B018MD39
4B018MD40
4B018ME01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】安全に経口摂取でき、且つ経口摂取することにより、食事制限をした場合にも除脂肪体重の低減を抑制でき、ダイエット後の体重のリバウンドを防止できる、除脂肪体重の増加に有効な剤の提供。
【解決手段】消化吸収機能の亢進、食物繊維の発酵、腸内細菌叢による資化作用、嵩まし効果、イオン交換反応、水分吸着作用、及び、糖や脂質などの吸収阻害作用等を有するといわれている水溶性食物繊維として、難消化性デキストリン及びポリデキストロースから選ばれる少なくとも1種である、除脂肪体重の増加剤。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性食物繊維を含有する、除脂肪体重の増加剤。
【請求項2】
水溶性食物繊維が難消化性デキストリン及びポリデキストロースから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の除脂肪体重の増加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性食物繊維を含有する除脂肪体重の増加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満は、現代において早急に対策を行うべき重大な社会問題として認識されている。ヒトが肥満になると、高血圧、異常脂質血症、2型糖尿病(非インスリン依存型糖尿病またはNIDDM)、冠動脈性心臓病、脳卒中、胆嚢疾患、変形性関節症、睡眠時無呼吸、および呼吸困難等の疾患を発症するリスクが高いとされている。肥満は、子宮内膜、乳房、前立腺および結腸の高い癌罹患率にも関連している。
【0003】
体脂肪の増加を防止して肥満となることを防ぐためには、消費カロリーを増加させるか、経口摂取するカロリーを低減するかして、消費カロリーが経口摂取するカロリーを上回るようにする必要がある。しかしながら忙しい現代人は、運動する時間がとれない場合が多いため、経口摂取するカロリーを低減する目的で、食事制限が多く行われている。ところが、食事制限による経口摂取カロリーの不足は、脂肪だけでなく筋肉量も低減させることが知られている。その理由として、身体には、今ある脂質貯蔵を維持しようと試みるフィードバック機構が存在することが挙げられる。このフィードバック機構では、経口摂取するカロリーが低下した際、貯蔵脂質が瞬時にエネルギー源として利用されるのではなく、ある一定の時間が掛かる。この間、経口摂取するカロリーが不足の状態で、かつ貯蔵脂質の利用も十分できない場合には、エネルギー源として体脂肪以外の体組織が消費されることになる。特に、筋肉からのアミノ酸からグルコースが生成され、好ましいエネルギー源として使用される。
以上の理由から、食事制限は、筋肉量を低減させることで基礎代謝量が低減し、体重がリバウンドしやすく、返って肥満となりやすい身体となってしまう。そこで効率的なダイエットのために、体脂肪は低減させるが、体脂肪以外の筋肉等の体組織の重量(除脂肪体重)は維持又は増加させ、基礎代謝を維持させることが望まれている。一方で、従来の筋肉増量剤は副作用が懸念され、継続的に経口摂取できるものは少ないため、従来の筋肉増量剤を用いて、ダイエット後の体重のリバウンドを防止しようとすることは、難しかった。
【0004】
従って、安全に経口摂取でき、且つ経口摂取することにより除脂肪体重を増加させることができる剤が存在すれば、食事制限をした場合にも除脂肪体重の低減を抑制でき、ダイエット後の体重のリバウンドを防止できる。
【0005】
一方、水溶性食物繊維は、消化吸収機能の亢進、食物繊維の発酵、腸内細菌叢による資化作用、嵩まし効果、イオン交換反応、水分吸着作用、及び、糖や脂質などの吸収阻害作用等を有するといわれている。水溶性食物繊維は、体脂肪量の蓄積を抑制すること(非特許文献1)、及び、脂質の体外への排出量を増大させること(非特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】吉岡真由美ら;ポリデキストロースがラットの体脂肪蓄積に及ぼす影響, Bull. Inst. Health & Sport Sciences, Univ. of Tsukuba, 16, 83-87(1993)
【非特許文献2】Kishimoto Yuka et al.;Effect of Resistant Maltodextrin on Digestion and Absorption of Lipids, Journal of Health Science, 55(5), 838-844(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、水溶性食物繊維に除脂肪体重を増加させる作用があることについては、これまで何ら知られていなかった。
したがって、本発明の課題は、安全性が高い、除脂肪体重の増加に有効な剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は水溶性食物繊維を含有する除脂肪体重の増加剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の除脂肪体重の増加剤は、安全性が高く、これを経口摂取することにより効果的に除脂肪体重を増加させることができる。従って、本発明の除脂肪体重の増加剤を用いることで、筋肉量を維持あるいは増加させて、食事制限による体重減少後のリバウンドを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例及び比較例における試験期間中の体重増加の推移を示すグラフである。
図2図2は、実施例及び比較例の試験後の体重を示すグラフである。
図3図3は、実施例及び比較例における試験後の除脂肪体重を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の除脂肪体重の増加剤は、水溶性食物繊維を含有するものである。
【0012】
本発明で用いる水溶性食物繊維としては、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、グアガム、サイリウム、アラビアガム、寒天、キサンタンガム、ジェランガム、難消化性デキストリン、ビートファイバー、ポリデキストロース、タンマリドシードガムなどが挙げられる。水溶性食物繊維は、合成または精製されたものであってもよいし、水溶性食物繊維を植物体から抽出した物であっても良い。
【0013】
本発明では、水溶性食物繊維として、「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」(平成11年4月26日衛新第13号、8食物繊維)に記載の食物繊維の分析方法である高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)で測定される食物繊維の含有量(難消化性成分と呼ばれることもある)が50質量%以上のものを用いることが好ましく、60質量%以上のものを用いることがより好ましく、70質量%以上のものを用いることが更に好ましく、75質量%以上のものを用いることが特に好ましい。食物繊維の含有量の測定は、具体的には以下のように行う。
【0014】
まず、サンプル500mgを精密に測り、0.08mol/lリン酸緩衝液(pH6.0±0.5)50mlを加える。これに熱安定性α-アミラーゼ(Sigma社:EC3.2.1.1 Bacillus licheniformis由来)溶液0.1mlを加え、沸騰水中に入れ、10分ごとに撹拌しながら30分間放置する。冷却後、0.275mol/l水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを7.5±0.1に調整する。プロテアーゼ(Sigma社:EC3.4.21.62 Bacillus licheniformis由来)溶液0.1mlを加えて、60±2℃の水浴中で振とうしながら30分間反応させる。冷却後、0.325mol/l塩酸を加え、pHを4.3±0.3に調整する。アミログルコシダーゼ(Sigma社:EC3.2.13 Aspergillus niger由来)溶液0.1mlを加え、60±2℃の水浴中で振とうしながら30分間反応させる。以上の酵素処理終了後、直ちに沸騰水浴中で10分間加熱した後、冷却し、50ml遠沈菅に分注し、10分間遠心分離した後、上清を回収する。残渣に純水10mlを加えよく攪拌し再度遠心分離して上清を回収し、これらを酵素処理液とする。酵素処理液全量をイオン交換樹脂(OH型:H型=1:1)50mlを充填したカラム(ガラス管20mm×300mm)に通液速度80ml/hrで通液し、さらに純水を通して流出液の全量を約250mlとする。この溶液をロータリー・エバポレーターで濃縮し、全量を純水で50mlとする。孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、検液とする。またグリセリンを純水で5mg/ml、10mg/ml、15mg/mlに調製し標準溶液とする。
【0015】
次に、検液および標準溶液20μlにつき、液体クロマトグラフィーを行い、検液の食物繊維画分および標準溶液のグリセリンのピーク面積値を測定する。
【0016】
液体クロマトグラフィーの分析条件は以下の通りである。
検出器:示差屈折計
カラム:ULTRON PS-80N(φ8.0×300 mm、島津ジーエルシー)
カラム温度:50℃
移動相:超純水
流速:0.5ml/min
【0017】
食物繊維の量は、標準溶液濃度および面積より検量線を作成し、その検量線からグリセロール当量を求め、以下の式から算出する。
食物繊維の量(%)=[グリセロール当量(mg/ml)/試料採取量(mg)]×f1×50(ml)×100
(上記式中、f1はグリセリンとブドウ糖のピーク面積の感度比(0.82)である。)
【0018】
水溶性食物繊維としては、水への溶解性が高いものが好ましく、20℃の水100mlに60g以上溶解するものが好ましく、70g以上溶解するものがより好ましく、80g以上溶解するものがより好ましい。
【0019】
本発明で用いる水溶性食物繊維としては、難消化性デキストリン及び/又はポリデキストロースを用いることが好ましい。
【0020】
難消化性デキストリンはとうもろこし、小麦、米、豆類、イモ類、タピオカなどの植物由来の澱粉を加酸および/または加熱して得た焙焼デキストリンを、必要に応じてαアミラーゼおよび/またはグルコアミラーゼで処理した後、必要に応じて脱塩、脱色した水溶性食物繊維であり、難消化性の特徴を持つものをいう。この難消化性デキストリンは、例えば、澱粉に微量の塩酸を加えて加熱し、酵素処理して得ることができる。難消化性デキストリンには、水素添加により製造されるその還元物も含まれる。難消化性デキストリンは分岐に富んだ構造をしており、α−1,4結合、1,6結合以外に1,2、1,3グルコシド結合を有するとともに、還元末端が分子内脱水したレボグルコサンも含有している。
【0021】
難消化性デキストリンの数平均分子量は通常1,500〜2,500の範囲である。難消化性デキストリンとしては、DE(Dextrose Equivalentの略であり、グルコースを100とした場合の糖液の持つ還元力を固形分当りにした値を意味する。)が8以上20以下の難消化性デキストリンを用いることができる。また、グルコシド結合の50%以上がグルコシド結合1→4である難消化性デキストリンを用いることができる。本発明では、さらに、コーンスターチ由来の難消化性デキストリンを用いることができる。
【0022】
本発明においては、上述したように水溶性食物繊維として難消化性デキストリン及び/又はポリデキストロースを用いることが好ましいが、特にポリデキストロースを用いることが、除脂肪体重の増加をより効果的に促進できるため好ましい。ポリデキストロースは、グルコースがα-又はβ-型の1-2、1-3、1-4、又は1-6結合で分岐状に多数重合した構造を有する、水溶性かつ難消化性の多糖類であり、その一部は食物繊維としてはたらく。ポリデキストロースは、例えば、グルコース、ソルビトール、クエン酸を凡そ89:10:1、またはグルコース、ソルビトール、リン酸を凡そ90:10:0.1の質量比で混合後、高温条件下で重合させることによって製造される。また、ポリデキストロース量は米国のFederal Chemicals Codexや平成18年7月21日食安発第0721001号の別紙記載の方法によって測定される。
【0023】
本発明においては、ポリデキストロースとして、ポリデキストロースとともにポリデキストロースの原料となる重合性単量体の1種又は2種以上を不純物として含むポリデキストロース混合物を用いてもよいし、不純物を除去した純度100%のポリデキストロースを用いてもよい。この重合性単量体としてはポリデキストロース製造の原料である前述のグルコースや、ソルビトールを挙げることができる。ポリデキストロース混合物は、純品のポリデキストロースと、グルコース及びソルビトールとからなるものであってもよい。
【0024】
ポリデキストロースがポリデキストロース混合物である場合、混合物中に不純物として含まれるグルコース及びソルビトールの合計量は、10質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがより好ましい。ポリデキストロース混合物中のグルコース及びソルビトールの合計量は少なければ少ないほどよいが、1質量%以上であると、ポリデキストロースの製造コストの観点から好ましい。グルコース及びソルビトールの含有量は、既知の各種定量法により測定できる。
【0025】
また本発明で用いるポリデキストロースはポリデキストロース混合物である場合、上記の(A)食物繊維と、(B)グルコース及びソルビトールの合計量の比(A)/(B)が、8.3以上、特に12.5以上であることが好ましい。
【0026】
ポリデキストロースは純品であっても上記ポリデキストロース混合物であっても、25℃における特定濃度の水溶液の粘度が特定値以上であるものを用いることが好ましい。具体的には、ポリデキストロースは、この温度における50質量/体積%水溶液の粘度が、15mPa・s以上であることが好ましい。
また、ポリデキストロースにおける50質量/体積%水溶液の粘度は、高ければ高いほど良いが、25mPa・s以下であるとポリデキストロースの製造コスト等の面からは好ましい。
ここで、ポリデキストロースの水溶液の濃度が「X質量/体積%」であるとは、該水溶液100ml中に含まれているポリデキストロースの質量がXgであることを意味する。
【0027】
前記の水溶液の粘度は、LVT RVT HAT HBTアナロク粘度計(ブルックフィールド社製)を用い、具体的には、以下の手順により、測定できる。
一例としては、No.1のスピンドルを本体に設置し、調製した80 mLの50質量/体積%のサンプルにスピンドルを一定の位置まで浸す。回転スピードを50rpmに設定し、指針が目盛の0mPa・sを指していることを確認し、モータースイッチを入れる。スピンドル回転開始から1分後の指針の指す数値から粘度を算出して記録する。
【0028】
前記の水溶液の粘度が前記特定範囲であるポリデキストロースを得るためには、用いるポリデキストロースの分子量や重合度を、分画や重合の条件により調整したり、既知の方法により精製したりすればよい。
【0029】
また、ポリデキストロースは純品であっても上記ポリデキストロース混合物であっても、25℃における特定濃度の水溶液のpHが特定値以上であるものを用いることが好ましい。具体的には、ポリデキストロースは、この温度における10質量/体積%水溶液のpHが、pHが2.0より高く、8.0より低いことが好ましく、2.1以上7.9以下であることがより好ましく、2.5以上7.5以下であることが更に好ましく、3.0以上7.0以下であることが最も好ましい。このようなポリデキストロースは、例えば、上述のグルコース及びソルビトールの重合物を既知の方法で精製すること等によって得ることができる。
【0030】
なお、ポリデキストロースとしては、上記の方法で製造されたポリデキストロースに加えて、該ポリデキストロースの誘導体も含めることができる。そのような誘導体としては、上記の方法で製造されたポリデキストロースを水素添加して得られる水素添加又は還元ポリデキストロースを挙げることができる。また、上記の方法で製造されたポリデキストロースを水酸化カリウム等の塩基で中和したものもポリデキストロースに含まれる。
【0031】
本発明の剤は、実質的に水溶性食物繊維のみからなるものであってもよい。実質的に水溶性食物繊維のみからなるとは、水溶性食物繊維の加工工程で不可避に混入する成分以外の成分を含有しない場合が挙げられ、例えば、本発明の剤における上記の食物繊維量が90質量%以上であり、且つ該食物繊維の98質量%以上が水溶性食物繊維由来であることを意味する。しかしながら本発明の剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、水溶性食物繊維以外に、後述する各種の他の成分を含有することが可能である。
【0032】
このような他の成分としては、種々の賦形剤、結合剤、光沢剤、滑沢剤、安定剤、希釈剤、増量剤、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、pH調整剤、着色料、香料、添加剤などを挙げることができる。その他の成分の含有量は、本発明の剤の形態等に応じて適宜選択することができる。
【0033】
本発明の剤は、必要に応じて、薬学的に許容される基材や担体を添加して、公知の製剤方法によって、各種の剤形に製剤可能であり、剤形としては、例えば、粉末状、粒状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、液状、ペースト状、ハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル状、カプレット状、タブレット状、ゲル状、チュアブル状、シロップ状、スティック状等の各形態が挙げられる。
【0034】
本発明の効果を更に高める観点から本発明の剤の固形分中における水溶性食物繊維の含有量は10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上が特に好ましく、30質量%以上が最も好ましい。また本発明の剤の固形分中における水溶性食物繊維の含有量は99質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下が特に好ましく、70質量%以下が最も好ましい。
【0035】
また、本発明の効果を更に高める観点から本発明の剤の一日の摂取量は、水溶性食物繊維量として、一日に12g以上24g以下とすることが好ましく、17g以上19g以下とすることがより好ましい。本発明の剤は、食事前、食事後、食事中のいずれの時点に摂取してもよい。
【0036】
本発明の剤は、安全に経口摂取できるのみならず、後述する実施例の記載から明らかな通り、水溶性食物繊維を含有することにより、除脂肪体重の増加作用を得ることができる。除脂肪体重とは、体重から体脂肪の量を引いたものである。除脂肪体重は一般に脳、骨、筋肉及び内臓からなる体重とされ、通常成人後は脳、骨、筋肉及び内臓の質量に大きな変化はみられないため、除脂肪体重の増減は、主に筋肉量の変化を示す。なお皮下脂肪は運動でも食事でも変わらないという知見があることから(青木ら、岐阜市立女子短大研究紀要第56、31−34頁、平成19年を参照)、後述する実施例のように除脂肪体重として、体重から内臓脂肪を引いたものを用いることが可能である。
【0037】
本発明の剤は、これを経口摂取することにより、除脂肪体重を増加させることができ、筋肉量を増加させることができる。このような本発明の剤は、筋肉増加剤として使用することが可能である。従って、本発明の剤は、食事制限中における筋肉量の低減を防止して、食事制限によるリバウンドを防止することが可能である。また本発明の剤は、高脂肪食下において除脂肪体重を増加させる、又は筋肉を増加させる剤として使用できる。
【0038】
本発明の剤は、動物を対象とするものであり、特に哺乳類を対象とすることが好ましく、とりわけヒトを対象にすることが好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。しかし本発明の範囲はかかる実施例に限定されない。以下、特に断らない場合「%」は質量%、「部」は質量部を表す。
【0040】
〔実施例1〕
被験物質としてポリデキストロース(ポリデキストロース混合物、食物繊維量75%以上、 (B)グルコース及びソルビトールの合計量が3%以下、10質量/体積%水溶液の25℃でのpHが4.0〜6.5)を用いた。
【0041】
〔実施例2〕
被験物質として難消化性デキストリン(食物繊維量75%以上、数平均分子量約2000、DE13〜18)を用いた。
【0042】
雄性4週齢のICRマウス18匹を5日間以上馴化させた後、AIN−93Gに基づく下記表Aの組成の高脂肪食(HF;セルロース含量1%)を7日間、自由摂取させた(馴化期間)。その後、マウスを体重に基づき3群に群分けし、同じ高脂肪食を22日間自由摂取させた(試験期間)。被験物質は水溶液を自由摂水させることにより摂取させた。被験物質の投与量は、摂水させる水溶液中の被験物質の濃度を調整することにより、1日の食事量中の5%の量とした。調整した被験物質を飲水に溶かす濃度は、試験期間0日目から2日目までは馴化期間に測定する飲水量及び摂餌量に基づき決定し、それ以降は試験期間(被験物質摂取期間)に定期的に(3〜4日に1回)測定する飲水量及び摂餌量に基づき決定した。馴化期間中、W220 ×L320 ×H135mmの平底ケージに1ケージ2〜3匹を収容し、試験期間中はそれよりも狭いW182 ×L260 ×H128mmの平底ケージに1ケージ1匹収容した。照明時間は12時間(8:00〜20:00)/日とした。試験期間中、3〜4日に1回体重を測定し、試験開始0日からの体重増加量を測定した。図1に体重増加量の平均値の推移を示し、図2に試験22日目の体重の平均値を示す。図1においてエラーバーは標準偏差(S.D.)を示す。
【0043】
【表A】
【0044】
試験期間終了時点つまり試験開始から22日後に体重を測定するとともに、ジエチルエーテル麻酔下で開腹して解剖し、腸間膜脂肪組織、精巣周囲脂肪組織、後腹膜脂肪組織及び腎周囲脂肪組織をそれぞれ採取し、それらの質量を測定した。次いで、各脂肪組織の合計質量を求め、内臓脂肪合計質量とした。得られた内臓脂肪合計質量を体重の質量から引いた値を除脂肪体重として求めた。得られた除脂肪体重の平均値を図3に示す。
また、上記の解剖時に、各実施例及び比較例の各群のうちそれぞれ一匹ずつ肝臓を摘出しその質量を求めたところ、比較例1では1.451g、実施例1では1.540g、実施例2では1.734gであり、水溶性食物繊維を投与することで、肝臓の質量が増える傾向があることが判った。
【0045】
図1に示すように、体重増加量は、各実施例群と、比較例1(コントロール)群とで差は見られなかった。また図2に示すように、試験期間(被験物質の摂食期間)後の体重は、水溶性食物繊維を投与した実施例1及び2でコントロールである比較例1に対して低かった。一方、図3に示すように、試験期間後の除脂肪体重は、水溶性食物繊維を投与した実施例1及び2が、コントロールである比較例1を大きく上回った。以上のことから、水溶性食物繊維を含有する本発明の剤が、除脂肪体重の増加に有効であることは明らかである。
図1
図2
図3