【解決手段】表面層11と、中間層12と、発色層13とがこの順に積層し、前記中間層が(メタ)アクリル系共重合体を含み、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量%に対し、共重合体成分として6質量%以上14質量%以下のカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を用いたレーザーラベル1。
前記中間層が炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル系エステル単量体を重合して得られる(メタ)アクリル系共重合体である請求項1または請求項2に記載のレーザーラベル。
請求項1から3のいずれか1項に記載のレーザーラベルに、YAGレーザー、YVO4レーザーおよびFAYbレーザーのいずれかのレーザー光を照射するレーザーマーキング方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーラベルおよびそれを用いたレーザーマーキング方法に関する。
【0002】
各種製品の識別のために製造番号や製造日などの各種情報をマーキングする方法として、レーザー光を照射する方法が知られている。このようにレーザー光の照射で各種情報がマーキングされるラベルは、レーザーラベルと呼ばれる。また、レーザー光の照射による各種情報のマーキングは、レーザーマーキングと呼ばれる。
レーザーマーキングは、たとえば発色剤を含むラベルにレーザー光を照射し発色させてマーキングする方法が知られている。
【0003】
レーザーマーキングは、バーコードを用いて各種製品の製造現場で生産管理をするために広く使用されている。このようなバーコードは、一次元コードから、情報量が大きいQRコード(登録商標)などのニ次元コードへと置き換わりつつある。このような二次元コードのレーザーマーキングには、一次元コードと比べて情報の読み取り精度、つまり高い識別性が求められる。
【0004】
レーザーマーキングは、たとえばインクジェット印刷で各種情報をマーキングする方法と比べ、マーキングの耐油性や耐水性が優れるため広く用いられている。また、レーザーマーキングは、清浄度が要求される電子部品、衣料品、食料品の製造現場でも使用が求められつつある。
【0005】
従来のレーザーマーキングは、高エネルギーのレーザー光を照射すると、発色剤の発色時(レーザーマーキング時)に発塵する。この発塵は、レーザーマーキング環境の洗浄度を下げる原因となる。このような発塵を抑えるため、レーザーラベルの表面に保護層を設ける技術が知られている。
【0006】
特許文献1には、顔料等と、赤外波長領域に吸収を有するレーザー発色性インキ皮膜層と、表面保護層とを有し、耐摩耗性が優れるレーザーラベルが記載されている。また、レーザー発色性インキ皮膜層と表面保護層とを接着剤層を介して貼りあわせる技術が記載されている。さらに、特許文献1には、ガスの発生とそれに伴う膨れを防ぐために、ドライラミネーションすることが記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、レーザーラベルに粘着剤付きフィルムを設けることで、処理面からの粉塵の飛散を防止する方法が記載されている。
【0008】
特許文献1および特許文献2に記載の表面に保護層を設けたレーザーラベルは、レーザー光の照射時に発生する粉塵が抑えられる。しかしながら、高エネルギーであるレーザー光の照射時の熱により、ガスの発生や、保護層と保護層の下層に位置する発色層との層間に膨れが生じる不具合がある。
つまり、特許文献1および特許文献2に記載されているレーザーラベルでは、レーザー光の照射時に、照射の衝撃による保護層と発色層との層間剥離の抑制が不十分であり、発色層から発生するガスの発生とそれに伴う膨れの抑制にも改善の余地があった。
このようなレーザーラベルの剥離や膨れは、外観不良となるうえ、レーザーマーキング時の環境の洗浄度を下げる原因となる。
【0009】
さらに、特許文献3には、粘着剤層に(メタ)アクリル系ポリマーなどを含む、被加工物表面の汚染を抑制するためのレーザー加工用粘着シートが記載されている。
【0010】
特許文献3に記載されているレーザー加工用粘着シートは、被加工物をダイシングの際に用いる。この粘着シートを備えた被加工物にレーザーを照射してダイシング加工すると、照射により発生する分解物による被加工物表面の汚染を抑制できる。この粘着シートは、レーザー加工後に被加工物から剥離できるように設計されたものである。そのため、前記粘着シートに用いられる粘着剤は、接着力が弱く、数年にわたり接着力が要求されることもあるレーザーラベルへの粘着剤の適用が困難である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において(メタ)アクリル系共重合体とは、アクリル系単量体およびメタクリル系単量体の少なくとも一方を重合して得られる共重合体を意味する。また、(メタ)アクリル系樹脂とは、アクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂の少なくとも一方を意味する。
【0021】
以下、本発明のレーザーラベルとそれを用いたレーザーマーキング方法とを図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
<レーザーラベル>
本発明のレーザーラベルの第一の態様は、
図1に示すように、表面層11と、中間層12と、発色層13とがこの順に積層した構成である。また、中間層12は、(メタ)アクリル系共重合体を含み、その組成は、(メタ)アクリル系共重合体100質量%に対し、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体の共重合体成分が6質量%以上14質量%以下である。
レーザーラベル1は、表面層11側からレーザー光を照射すると、レーザー光が表面層11と中間層12とを透過し、次いで発色層13に含まれる発色剤にレーザー光が作用し発色して、所望の情報がマーキングされる。
レーザーラベル1は、表面層11と発色層13との間に特定の組成である中間層12を有するため、レーザー光の照射直後および経時後に表面層11と発色層13との間に膨れや剥離が発生せず、外観が良好となる。
【0023】
まず表面層11について説明する。
表面層11は、樹脂組成物を含む。前記樹脂組成物は、レーザー光を十分透過できるものであれば特に制約はない。表面層11に用いられる樹脂組成物が含む樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。さらに、表面層11に用いられる樹脂組成物が含む樹脂は、たとえば(メタ)アクリル系樹脂、ビニルブチラール樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタンである。
これらの樹脂は単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
特に、レーザー光を十分透過でき、製膜性が優れ、レーザーラベルの取扱性が良好であり、耐候性が良好であるため、(メタ)アクリル系樹脂が好適である。
【0024】
表面層11の厚さは、たとえばレーザーラベルの貼り合わせ時に作業性が良好になるため、10μm以上200μm以下の範囲が好ましい。
【0025】
さらに表面層11は、本発明の優れた効果を損なわない範囲で、各種添加剤を含んでもよい。このような添加剤は、たとえば分散剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、タッキファイヤー、フィラー、着色剤である。
【0026】
次に中間層12について説明する。
中間層12は、カルボキシ基(−COOH基)を有する(メタ)アクリル系単量体を重合して得られる(メタ)アクリル系共重合体の組成物である。また、その組成は、(メタ)アクリル系共重合体100質量%に対し、共重合体成分としてカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を6質量%以上14質量%以下の範囲で含む。より好ましくは、前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を12質量%以下の範囲で含む。中間層12が光透過性の高い(メタ)アクリル系共重合体組成物であるため、レーザーラベル1に照射されたレーザー光は、中間層12を十分透過し、発色層13まで到達することでレーザーマーキング部の識別性が向上する。
なお、(メタ)アクリル系共重合体100質量%に対し、共重合体成分として6質量%以上14質量%以下のカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を用いた(メタ)アクリル系共重合体とは、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体6質量%以上14質量%以下と、他の単量体86質量%以上94質量%以下とを合計100質量%になるように共重合して得られた(メタ)アクリル系共重合体である。
【0027】
本発明者は、重合体成分としてカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体6質量%以上を含むため、レーザー光の照射時に発色層13から発生するガスが中間層12により吸収され、層間に膨れが発生せず、また、14質量%以下を含むため、層間の膨れや剥離を抑制できると考えている。
また、(メタ)アクリル系共重合体100質量%に対し、共重合体成分としてカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を6質量%以上14質量%以下の範囲で含むため、本発明のレーザーラベルは経時(たとえばラベルを基材に貼付後1年)での層間の剥離が起きず、耐候性が良好であると考えている。
なお、前記ガスは、レーザー光の照射時において、熱の作用により各層が含む樹脂組成物等の分解物、たとえば解重合により生じる単量体、などの揮発成分と推測される。
さらに本発明者は、中間層12が共重合体成分としてカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を前記した特定の範囲で含むため、レーザーラベル1のレーザーマーキングで生じる衝撃を緩和できると考えている。本発明のレーザーラベル1は、中間層12を有し、かつ中間層12の組成が共重合体成分としてカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を前記した特定の範囲で含むため、表面層11と中間層12、および後述する発色層13と中間層12との各層間で剥離が発生せず、好適に使用できる。
【0028】
中間層12が含む(メタ)アクリル系共重合体中のカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体由来の成分は、熱分解GC−MASS法、NMR法、赤外分光法により定量できる。
【0029】
前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体は、たとえばアクリル酸、メタクリル酸である。
特に、前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体がアクリル酸であれば、レーザーマーキング時に生じる熱に対して安定であり、たとえば揮発成分の発生に伴う層間の剥離や膨れが抑制できるため好ましい。また、後述する発色層13が含む発色剤との作用が十分であり、レーザーマーキング時に発色が顕著となることでレーザーマーキング部の識別性がより向上するため好ましい。
【0030】
中間層12の(メタ)アクリル系共重合体における共重合体成分で前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体以外の共重合体成分は、前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体と共重合できるもので、かつ本発明の優れた効果を損なわなければ特に制約はない。このような共重合体成分は、たとえば水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体、アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体である。
前記水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体は、たとえばアクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸2-ヒドロキシエチルである。
前記アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタアクリル酸メチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸n-デシルである。
また、前記アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体が炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル系エステル単量体であれば、レーザーマーキング時に発色が顕著となる、たとえば発色剤の作用により樹脂組成物の炭化が起こりやすくなることで、レーザーマーキング部の識別性がより向上するため好ましい。
このような炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル系エステル単量体は、たとえばアクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸n-デシルである。
【0031】
さらに、中間層12は、本発明の優れた効果を損なわない範囲で、前記(メタ)アクリル系共重合体以外の樹脂組成物をさらに含んでもよい。このような樹脂組成物が含む樹脂は、たとえば前記共重合体成分としてカルボキシ基を有さない(メタ)アクリル系単量体を重合して得られる(メタ)アクリル系樹脂、ビニルブチラール樹脂、塩化ビニル樹脂である。
【0032】
なお、中間層12は、中間層12を100質量%として、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を用いた(メタ)アクリル系共重合体が50質量%以上であれば、経時での層間の剥離が起きず、耐候性が良好となるためより好ましい。
【0033】
中間層12は、架橋剤を含むことが好ましい。前記架橋剤はたとえばイソシアネート系架橋剤、アルミキレート系架橋剤、エポキシ系架橋剤である。中間層12が架橋剤を含む場合、前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体が架橋し、たとえばレーザーマーキング時の耐膨れ性がより優れるため好ましい。
【0034】
さらに中間層12は、本発明の優れた効果を損なわない範囲で、各種添加剤を含んでもよい。このような添加剤は、たとえば分散剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、タッキファイヤー、フィラー、着色剤である。
【0035】
中間層12の厚さは、たとえばレーザーラベルの貼り合わせ時に作業性が良好になるため、5μm以上80μm以下の範囲が好ましい。
【0036】
なお、表面層11および中間層12は、いずれもレーザーラベル1にレーザー光を照射しマーキングした後も除去されず、レーザーラベルの一部として使用される。
【0037】
次に発色層13について説明する。
発色層13は、樹脂組成物と発色剤とを含む。発色剤とは、レーザーマーキング時にレーザー光の作用で発色剤自身の酸化反応や還元反応により発色(変色)する物質および/または発色層が含む発色剤の周囲の樹脂組成物や中間層が含む樹脂組成物が炭化し発色(変色)させる物質である。
【0038】
発色層13が含む樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。さらに、発色層13に用いられる樹脂組成物が含む樹脂は、たとえば(メタ)アクリル系樹脂、ビニルブチラール樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタンである。
これらの樹脂は単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
特に、製膜性が優れ、レーザーラベルの取扱性や、耐候性が良好であるため、(メタ)アクリル系樹脂が好適である。
なお、発色層13が含む樹脂組成物は、表面層11が含む樹脂組成物と同一であってもよい。
【0039】
発色層13が含む前記発色剤は、たとえば銅化合物、モリブデン化合物、鉄化合物、ニッケル化合物、クロム化合物、ジルコニウム化合物、ネオジム化合物、マイカ、アンチモン化合物およびチタン化合物である。
これらの化合物は、単独でも、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
前記発色剤は、たとえば東罐マテリアル・テクノロジー株式会社製 商品名トマテック42−920A(ネオジム-ビスマス化合物)、商品名42−903A(銅‐モリブデン化合物)が市販されている。
【0041】
発色層13が含む前記発色剤の量は、発色層13が含む樹脂組成物100質量%に対して、0.2質量%以上4.0質量%以下の範囲が好ましい。0.2質量%以上であれば発色剤の量が十分であり、レーザーマーキング時に適切に発色し、レーザーマーキング部の識別性が良好となるため好ましい。また、4.0質量%以下であれば、レーザーマーキング時の発塵が抑えられ、発色剤由来の望ましくない着色を抑制でき、レーザーマーキング部の識別性がより向上するため好ましい。
【0042】
さらに発色層13は、本発明の優れた効果を損なわない範囲で、各種添加剤を含んでもよい。このような添加剤は、分散剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、タッキファイヤー、フィラー、着色剤である。
【0043】
発色層13の厚さは、レーザーマーキング部の識別性がより良好になるため、5μm以上100μm以下が好ましい。
【0044】
本発明のレーザーラベルの第二の態様は、第一の態様に加えさらに粘着剤層を有する。
前記第二の態様のレーザーラベル2は、
図2に示すように表面層21と、中間層22と、発色層23と、粘着剤層24とがこの順に積層した構成である。
【0045】
粘着剤層24に用いる粘着剤は、樹脂板、金属板、ガラス板などの各種基材と十分に固着できれば特に制限はない。
粘着剤層24に用いる樹脂組成物は、たとえば(メタ)アクリル系粘着剤、が挙げられる。
なお、粘着剤層24に用いる樹脂組成物は、中間層22の(メタ)アクリル系共重合体組成物と同一であってもよい。
【0046】
粘着剤層24の厚さは、特に制約はないが、レーザーラベルの貼り合わせ時に作業性が良好になるため5μm以上100μm以下の範囲が好ましい。
【0047】
本発明のレーザーラベルは、本発明の優れた効果を損なわない範囲で、表面層、中間層、発色層、粘着剤層以外の層を設けてもよい。たとえば、表面層上、つまり表面層のレーザー光を照射する面側や、表面層と中間層との間に、スクリーン印刷やグラビア印刷による印刷層を設けてもよい。
【0048】
本発明のレーザーラベルの製法は、特に制約はなく、たとえばキャスト法、カレンダー法、押し出し法が挙げられる。特に、厚さが均一となりやすいため、キャスト法が好ましい。
【0049】
<レーザーマーキング方法>
さらに、本発明の別の態様は、前記第一の態様または第二の態様のレーザーラベルを用いたレーザーマーキング方法である。
本発明のレーザーマーキング方法は、前述したレーザーラベルに、たとえばYAGレーザー、YVO4レーザーおよびFAYbレーザーのいずれかを照射するレーザーマーキング方法である。
【0050】
本発明のレーザーマーキング方法に用いるレーザー光の波長は、表面層及び中間層が透過する波長であり、FAYbレーザーでは波長1064nmを例示できる。
【0051】
本発明のレーザーマーキング方法におけるレーザー光の出力は、0.07W以上0.2W以下の範囲であることが好ましい。
従来のレーザーラベルでは、レーザー光の出力を0.1W以上にすると表面層と発色層の間に膨れや剥離が発生しやすいという不具合があった。
本発明のレーザーラベルは、中間層12が特定の組成であり、レーザー光の出力をたとえば0.1W以上にしてもレーザーマーキング後に表面層と発色層との間に膨れや剥離が発生せず、外観が良好であり、たとえば二次元コードをレーザーマーキングした際の情報の読み取り、つまりレーザーマーキング部の識別が可能である。
【0052】
以上のように、本発明のレーザーラベルおよびそれを用いたレーザーマーキング方法は、レーザーマーキングでの層間の膨れや剥離を抑制できるため、たとえば電子部品、衣料品、食料品の製造現場でも好適に用いられる。さらに発塵も抑えられるため、従来使用が難しかったクリーンルーム内や食料品の製造現場等の清浄度が要求される環境でもレーザーマーキングを行える。
【実施例】
【0053】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0054】
レーザーマーキング後の外観、レーザーマーキング部の識別性のそれぞれの評価は以下の方法で確認した。
【0055】
(1)耐膨れ性
耐膨れ性は、下記の手順で作製した後述する各実施例および比較例の試験片それぞれ10個にレーザー光を照射し、レーザーマーキングでの層間の膨れや剥離の有無を目視で判定した。次の基準により判定した。○を合格とした。
○:すべての試験片の層間に膨れも剥離も認められない。
×:層間に膨れまたは剥離が認められる試験片がある。
【0056】
(2)識別性
レーザーマーキング部の識別性は、下記の手順で作製した後述する各実施例および比較例の試験片にレーザー光を照射後、判定した。
各試験片の識別性は、20mmの正方形内に、JIS X0510:2004の
図1と同一のパターンである二次元バーコードをFAYbレーザー(パナソニック デバイスSUNX社製 製品名レーザーマーカーLP−Z130)を用いて波長1064nmにてレーザーマーキングし、その読み取り性能にて識別性を判定した。
各試験片マーキング部に二次元バーコードリーダー(キーエンス社製 製品名SR−600)を用いてマーキング部を10回読み取りし、次の基準により判定した。○を合格とした。
○:10回とも読み取れる。
×:1回でも読み取れない。
【0057】
(製造例1)
製造例1のレーザーラベルの中間層に用いる(メタ)アクリル系共重合体組成物は以下の手順で作製した。
攪拌装置、滴下装置および温度計を備えた反応容器を用意した。次いでこの反応容器に、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体であるアクリル酸14質量部と、アクリル酸ブチル86質量部と、重合触媒であるアゾビスイソブチロニトリル0.4質量部と、溶媒である酢酸エチル100質量部との混合物を、まず混合物全体の1/4を入れて内温80〜85℃還流、攪拌下で重合を行った。次いで残り3/4の混合物を逐次反応容器内に滴下し、さらに重合を行った。溶媒である酢酸エチルを加えて希釈することで、(メタ)アクリル系共重合体100質量%に対し共重合体成分として14質量%のカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体を用いた(メタ)アクリル系共重合体である製造例1の樹脂組成物を得た。
【0058】
(実施例1)
実施例1のレーザーラベルは以下の手順で作製した。
まず表面層は以下の手順で作製した。
アクリル系樹脂 商品名KP1876E(日本カーバイド工業社製)50質量部、アクリル系樹脂 商品名Hi−SSP 2100U7V4(日本カーバイド工業社製)50質量部、セルロース系樹脂 商品名CAB381−0.1(イーストマンケミカル社製)4質量部、メラミン系架橋剤 商品名ニカラック MS−11(三和ケミカル社製)18質量部、リン酸エステル系硬化触媒 商品名CT−198(トクシキ社製)0.3質量部、を混合し樹脂組成物を得た。この樹脂組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム 商品名エンブレットS−75(ユニチカ社製)に塗工後、加熱乾燥することで、厚みが60μmの表面層を得た。
得られた表面層は無色透明であった。
【0059】
次に製造例1で得た樹脂組成物100質量部にヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤であるコロネートHX(東ソー社製)0.1質量部を加えて攪拌した。次いで、塗工乾燥後に厚さが20μmとなるように塗料アプリケーターで剥離紙に塗工し、次いで上記の表面層と積層後加圧圧着し、表面層側のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離して表面層と中間層との積層品を得た。
【0060】
次に発色層を以下の手順で作製した。
アクリル系樹脂 商品名KP1876E(ニッセツ社製)50質量部、アクリル系樹脂 商品名Hi−SSP 2100U7V4(日本カーバイド工業社製)50質量部、セルロース系樹脂 商品名CAB381−0.1(イーストマンケミカル社製)4質量部、白色顔料 商品名FPGS−5010W(大日精化工業社製)25質量部、ネオジム-ビスマス系の発色剤 商品名トマテック42−920A(東罐マテリアル・テクノロジー社製)1質量部、アジピン酸ポリエステル系可塑剤 商品名D663(ジェイ・プラス社製)1質量部、メラミン系架橋剤 商品名MS−11(三和ケミカル社製)18質量部、リン酸エステル系硬化触媒 商品名CT−198(トクシキ社製)0.3質量部、を混合し樹脂組成物を得た。この樹脂組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム 商品名エンブレットS−75(ユニチカ社製)に塗工後、加熱乾燥することで、厚みが60μmの発色層を得た。
得られた発色層は白色であった。
【0061】
次いで、上記の表面層と中間層との積層品に、上記の発色層を積層、加圧圧着して実施例1のレーザーラベルを得た。
【0062】
(実施例2〜4、比較例1〜4)
各実施例および各比較例のレーザーラベルは、中間層を表1に示した組成にした以外は実施例1と同様の手順で作製した。
なお、比較例4は、中間層を有さず、発色層に表面層の樹脂組成物をスクリーン印刷法で積層して作製した。
【0063】
(試験片の作製)
上記で得られた各実施例および各比較例を5センチ角に切断し、膨れ、剥離、識別性の評価の各試験片とした。
【0064】
各実施例および各比較例のレーザーラベルについて、中間層の組成と評価結果とを表1に示した。
表1によれば、中間層に用いた樹脂組成物が共重合体成分として(メタ)アクリル系単量体を特定の範囲で含む各実施例の試験片は、膨れ、剥離、識別性のいずれも良好であった。一方、各比較例の試験片は、層間に膨れが認められ、また、識別性も劣った。
【0065】
【表1】
【0066】
さらに、各実施例および比較例1〜3の試験片は、いずれもレーザーマーキング時の発塵がなかった。
一方、中間層を有さない比較例4は、レーザーマーキング時に著しく発塵し、かつレーザーマーキング部の識別性が不良であった。
【0067】
以上の結果より、本発明によれば、レーザーマーキング時の層間の膨れや剥離を抑制し、外観が良好なレーザーラベルとそれを用いたレーザーマーキング方法とを提供できる。