【解決手段】ガラス基板の製造方法は、成形工程と、徐冷工程と、切断工程と、検査工程とを備える。成形工程は、熔融ガラスからガラスリボンを成形する。徐冷工程は、ガラスリボンを下方に搬送しつつ、温度管理しながら冷却する。切断工程は、ガラスリボンを切断してガラス基板を得る。検査工程は、ガラス基板を検査する。検査工程は、搬送工程と、洗浄工程と、検出工程とを含む。搬送工程は、ガラス基板の主表面に平行な第1方向にガラス基板を搬送する。洗浄工程は、搬送工程においてガラス基板が搬送されている間に、主表面と直交する第2方向におけるガラス基板の動きを抑制しながら、ガラス基板を洗浄する。検出工程は、洗浄工程で洗浄されたガラス基板の内部異物を光学的に検出する。
前記第1気体供給工程において、前記第1気体は、前記第1ガイド部材に向かって噴出されることにより、前記第1ガイド部材の表面に沿って流れて前記第1隙間に導かれ、
前記第2気体供給工程において、前記第2気体は、前記第2ガイド部材に向かって噴出されることにより、前記第2ガイド部材の表面に沿って流れて前記第2隙間に導かれる、
請求項4に記載のガラス基板の製造方法。
前記切断工程は、前記成形工程において前記ガラスリボンの幅方向の両端部に形成され、前記ガラスリボンの幅方向の中央領域と比べて厚い端部領域を切断して除去する除去工程を含む、
請求項1から6のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
前記検査工程は、前記検出工程により得られた検出データから、前記ガラス基板の前記内部異物の種類およびサイズを判定し、前記ガラス基板の選別を行う判定工程を含む、
請求項1から7のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係るガラス基板製造装置100は、主として、ガラス基板10を搬送しながら洗浄するための搬送装置102、および、搬送装置102によって搬送されているガラス基板10を検査するための検査装置104を備えている。
【0020】
(1)ガラス基板の製造工程の概要
最初に、ガラス基板10の製造工程について説明する。ガラス基板10は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイおよび有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造に用いられる。ガラス基板10は、例えば、0.2mm〜0.8mmの厚みを有し、かつ、縦680mm〜2200mmおよび横880mm〜2500mmのサイズを有する。
【0021】
ガラス基板10の一例として、以下の(a)〜(j)の組成を有するガラスが挙げられる。
【0022】
(a)SiO
2:50質量%〜70質量%、
(b)Al
2O
3:10質量%〜25質量%、
(c)B
2O
3:1質量%〜18質量%、
(d)MgO:0質量%〜10質量%、
(e)CaO:0質量%〜20質量%、
(f)SrO:0質量%〜20質量%、
(g)BaO:0質量%〜10質量%、
(h)RO:5質量%〜20質量%(Rは、Mg、Ca、SrおよびBaから選択される少なくとも1種である。)、
(i)R’
2O:0質量%〜2.0質量%(R’は、Li、NaおよびKから選択される少なくとも1種である。)、
(j)SnO
2、Fe
2O
3およびCeO
2から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物。
【0023】
なお、上記の組成を有するガラスは、0.1質量%未満の範囲で、その他の微量成分の存在が許容される。
【0024】
図1は、ガラス基板10の製造工程を表すフローチャートの一例である。ガラス基板10の製造工程は、主として、成形工程(ステップS1)と、徐冷工程(ステップS2)と、切断工程(ステップS3)と、第1検査工程(ステップS4)と、粗面化工程(ステップS5)と、端面加工工程(ステップS6)と、最終洗浄工程(ステップS7)と、第2検査工程(ステップS8)と、梱包工程(ステップS9)とから構成される。
【0025】
成形工程S1では、ガラス原料を加熱して得られた熔融ガラスから、オーバーフローダウンドロー法によって、シート状のガラスリボンが連続的に成形される。
【0026】
徐冷工程S2では、成形工程S1で成形されたガラスリボンが、歪みおよび反りが発生しないように温度管理されながら、ガラス徐冷点以下まで徐冷される。徐冷工程S2では、ガラスリボンは、下方に搬送されながら冷却される。
【0027】
切断工程S3では、徐冷工程S2で徐冷されたガラスリボンが切断されて、製品サイズのガラス基板10が得られる。切断工程S3では、例えば、レーザやカッターホイールによりガラスリボンの表面にスクライブ線が形成され、スクライブ線に沿った折り割りによりガラスリボンが切断される。また、切断工程S3では、ガラスリボンの端部領域が切断されて除去される。端部領域は、ガラスリボンの幅方向の両端部に形成され、ガラスリボンの幅方向の中央領域と比べて厚い領域である。
【0028】
第1検査工程S4では、切断工程S3で得られたガラス基板10が、ガラス基板製造装置100によって検査される。第1検査工程S4では、主として、ガラス基板10の内部に存在する異物である内部異物が光学的に検出される。内部異物は、例えば、微小な泡である。また、第1検査工程S4では、ガラス基板10の表面の凹凸および脈理が検出されてもよい。第1検査工程S4では、検出された内部異物の種類およびサイズを判定し、ガラス基板10の選別を行う。第1検査工程S4における検査に合格したガラス基板10のみが、次の粗面化工程S5に送られる。
【0029】
粗面化工程S5では、第1検査工程S4で検査されたガラス基板10の主表面の表面粗さを増加させる粗面化処理が行われる。ガラス基板10の粗面化処理は、例えば、フッ化水素を含むエッチャントを用いるウエットエッチングである。
【0030】
端面加工工程S6では、粗面化工程S5で粗面化処理が行われたガラス基板10の端面の面取り加工が行われる。面取り加工された端面の一部は、R形状を有する。
【0031】
最終洗浄工程S7では、端面加工工程S6で端面の面取り加工が行われたガラス基板10が洗浄されて、ガラス基板10に付着している異物が除去される。異物は、切断工程S3でのガラスリボンの切断、および、端面加工工程S6でのガラス基板10の端面加工によって生じた微小なガラス片や、雰囲気中に存在する有機物等である。
【0032】
第2検査工程S8では、最終洗浄工程S7で洗浄されたガラス基板10が検査される。具体的には、ガラス基板10の主表面が光学的に測定されて、ガラス基板10の欠陥が検知される。ガラス基板10の欠陥は、例えば、ガラス基板10の主表面に形成される脈理、ガラス基板10の主表面に存在するキズおよびクラック、ガラス基板10の主表面に付着している異物、および、ガラス基板10の内部に存在している微小な泡等である。
【0033】
梱包工程S9では、第2検査工程S8における検査に合格したガラス基板10が、ガラス基板10を保護するための合紙と交互にパレット上に積層されて、梱包される。梱包されたガラス基板10は、FPDの製造業者等に出荷される。
【0034】
(2)ガラス基板製造装置の構成
ガラス基板製造装置100は、主として、搬送装置102と、検査装置104とを備える。第1検査工程S4において、ガラス基板製造装置100は、搬送装置102によってガラス基板10を搬送しながら洗浄し、検査装置104によってガラス基板10の欠陥を光学的に検査する。欠陥は、主として、ガラス基板10の内部に存在する、微小な泡等の異物である。
図2は、ガラス基板製造装置100の斜視図である。
図3は、
図2に示される矢印IIIの方向から見た、ガラス基板製造装置100の側面図である。
図4は、
図2に示される矢印IVの方向から見た、ガラス基板製造装置100の上面図である。ガラス基板製造装置100は、圧力が一定になるように制御されている空間に設置されている。
【0035】
(2−1)搬送装置の構成
搬送装置102は、吊り下げられて直立した状態のガラス基板10を水平方向に搬送する。搬送装置102によって搬送されるガラス基板10の主表面の法線は、水平方向に平行である。
図2〜
図4には、三次元空間の直交座標系を構成するX軸、Y軸およびZ軸が示されている。X軸は、ガラス基板10の搬送方向に平行である。Y軸は、ガラス基板10の主表面と直交する。Z軸は、鉛直方向に平行であり、かつ、ガラス基板10の主表面に平行である。
【0036】
X軸の向きは、ガラス基板10が搬送される方向である。以下、X軸の負方向を上流側と呼び、X軸の正方向を下流側と呼ぶ。ガラス基板10は、上流側から下流側に向かって搬送される。
図4に示されるように、上流側から下流側に向かって見た場合に、ガラス基板10の右側をY軸の負方向とし、ガラス基板10の左側をY軸の正方向とする。Z軸の向きは、鉛直方向上向きである。
【0037】
搬送装置102は、主として、上部ガイド機構110と、クランプ機構112と、下部ガイド機構114と、複数のエアナイフ116a,・・・と、複数のエアバー117a,・・・と、複数のガイド板118a,・・・と、空気循環機構130とを備える。以下、ガラス基板10の左側の主表面を左主表面10aと呼び、ガラス基板10の右側の主表面を右主表面10bと呼ぶ。
【0038】
(2−1−1)上部ガイド機構
上部ガイド機構110は、搬送されるガラス基板10の上方において、X軸方向に沿って延びるガイドレールである。上部ガイド機構110は、クランプ機構112が取り付けられている。上部ガイド機構110は、クランプ機構112をX軸方向に移動させるための駆動機構(図示せず)を備える。
【0039】
(2−1−2)クランプ機構
クランプ機構112は、ガラス基板10のZ軸正方向の端部である上端部を把持する。クランプ機構112は、主として、基部112aと、複数の把持部112bとを備える。基部112aは、X軸方向に沿って延びる部材である。基部112aは、上部ガイド機構110と摺動可能なように、上部ガイド機構110に取り付けられている。基部112aは、上部ガイド機構110と摺動することにより、X軸方向に移動することができる。基部112aの下側には、X軸方向に沿って複数の把持部112bが等間隔に取り付けられている。把持部112bは、ガラス基板10の上端部を把持して、ガラス基板10をクランプ機構112に固定する。なお、把持部112bの数、および、基部112aに対する把持部112bの取り付け位置は、ガラス基板10の寸法、および、ガラス基板10の搬送速度等に応じて適宜に設定されてもよい。
【0040】
クランプ機構112は、上部ガイド機構110によってX軸方向に搬送される。これにより、搬送装置102は、クランプ機構112に把持されたガラス基板10をX軸方向に搬送することができる。
【0041】
(2−1−3)下部ガイド機構
下部ガイド機構114は、X軸方向に沿って延びる部材である。下部ガイド機構114のZ軸正方向の端面には、X軸方向に沿ってスリット114aが形成されている。スリット114aは、搬送されるガラス基板10のZ軸負方向の端部である下端部が収容される空間である。ガラス基板10の下端は、スリット114aの底部と接触しない。下部ガイド機構114は、上部ガイド機構110によって搬送されるガラス基板10の下端部がY軸方向に移動することを抑制する。
【0042】
なお、下部ガイド機構114は、スリット114aの代わりに、X軸方向に沿って配置される複数のガイドローラーを有してもよい。ガイドローラーは、X軸方向に沿って搬送されるガラス基板10の下端部をY軸方向の両側から挟むローラーである。ガイドローラーは、上部ガイド機構110によって搬送されるガラス基板10の下端部がY軸方向に移動することを抑制する。
【0043】
(2−1−4)エアナイフ
エアナイフ116a,・・・は、ガラス基板10の主表面10a,10bに向かって空気の噴流を吹き付けるための装置である。エアナイフ116a,・・・は、ガラス基板10の左右両側に配置される。
【0044】
エアナイフ116a,・・・は、空気の噴流が吐出される吐出孔(図示せず)を有する。吐出孔は、エアナイフ116a,・・・の先端部に形成され、Z軸方向に延びる細長い孔である。エアナイフ116a,・・・は、吐出孔から吐出される空気の量を制御するためのレギュレータ(図示せず)を有する。レギュレータは、例えば、圧力調整弁である。エアナイフ116a,・・・は、吐出孔から吐出される空気のXY平面における向きを制御するための風向調整機構(図示せず)を有する。風向調整機構は、例えば、エアナイフ116a,・・・の姿勢を制御する機構である。エアナイフ116a,・・・は、後述するように、搬送されるガラス基板10のY軸方向の移動を抑制してガラス基板10の姿勢を安定化させる効果と、搬送されるガラス基板10の主表面10a,10bに付着している異物を空気で吹き飛ばして除去する効果とを有する。主表面10a,10bに付着している異物は、成形工程S1および徐冷工程S2で生じるダストおよびガラスパーティクル、切断工程S3でのガラスリボンの切断、および、端面加工工程S6でのガラス基板10の端面加工によって生じた微小なガラス片や、雰囲気中に存在する有機物等である。
【0045】
図4に示されるように、ガラス基板製造装置100は、4種類のエアナイフ116a,116b,116c,116dを備える。以下、必要に応じて、4種類のエアナイフ116a,116b,116c,116dを、それぞれ、第1左エアナイフ116a、第1右エアナイフ116b、第2左エアナイフ116cおよび第2右エアナイフ116dと呼ぶ。ガラス基板製造装置100は、3個の第1左エアナイフ116a、3個の第1右エアナイフ116b、3個の第2左エアナイフ116cおよび3個の第2右エアナイフ116dを備える。
【0046】
第1左エアナイフ116aおよび第2左エアナイフ116cは、ガラス基板10の左側に配置されている。第1右エアナイフ116bおよび第2右エアナイフ116dは、ガラス基板10の右側に配置されている。第1左エアナイフ116aおよび第1右エアナイフ116bは、それぞれ、第2左エアナイフ116cおよび第2右エアナイフ116dの上流側に配置されている。X軸方向およびZ軸方向において、第1左エアナイフ116aは、第1右エアナイフ116bと同じ位置に配置され、第2左エアナイフ116cは、第2右エアナイフ116dと同じ位置に配置されている。第1左エアナイフ116aと左主表面10aとの間の距離は、第1右エアナイフ116bと右主表面10bとの間の距離と同じである。第2左エアナイフ116cと左主表面10aとの間の距離は、第2右エアナイフ116dと右主表面10bとの間の距離と同じである。
【0047】
第1左エアナイフ116aおよび第2左エアナイフ116cは、左主表面10aに向かって空気を吹き付ける。第1右エアナイフ116bおよび第2右エアナイフ116dは、右主表面10bに向かって空気を吹き付ける。
【0048】
(2−1−5)エアバー
エアバー117a,・・・は、ガラス基板10の主表面10a,10bに向かって空気の噴流を吹き付けるための装置である。エアバー117a,・・・は、ガラス基板10の左右両側に配置される。
【0049】
エアバー117a,・・・は、ガラス基板10の主表面10a,10bと対向し、多数の空気噴出孔(図示せず)が形成された表面を有する。エアバー117a,・・・の空気噴出孔から噴出された空気は、主表面10a,10bと衝突して、空気の噴出方向にガラス基板10を押す力をガラス基板10に付与する。エアバー117a,・・・は、空気噴出孔から噴出される空気の量を制御するためのレギュレータ(図示せず)を有する。レギュレータは、例えば、圧力調整弁である。エアバー117a,・・・は、後述するように、搬送されるガラス基板10のY軸方向の移動を抑制してガラス基板10の姿勢を安定化させる効果を有する。
【0050】
図4に示されるように、ガラス基板製造装置100は、4種類のエアバー117a,117b,117c,117dを備える。以下、必要に応じて、4種類のエアバー117a,117b,117c,117dを、それぞれ、第1左エアバー117a、第1右エアバー117b、第2左エアバー117cおよび第2右エアバー117dと呼ぶ。ガラス基板製造装置100は、3個の第1左エアバー117a、3個の第1右エアバー117b、3個の第2左エアバー117cおよび3個の第2右エアバー117dを備える。
【0051】
第1左エアバー117aおよび第2左エアバー117cは、ガラス基板10の左側に配置されている。第1右エアバー117bおよび第2右エアバー117dは、ガラス基板10の右側に配置されている。第1左エアバー117aおよび第1右エアバー117bは、それぞれ、第2左エアバー117cおよび第2右エアバー117dの上流側に配置されている。X軸方向およびZ軸方向において、第1左エアバー117aは、第1右エアバー117bと同じ位置に配置され、第2左エアバー117cは、第2右エアバー117dと同じ位置に配置されている。第1左エアバー117aと左主表面10aとの間の距離は、第1右エアバー117bと右主表面10bとの間の距離と同じである。第2左エアバー117cと左主表面10aとの間の距離は、第2右エアバー117dと右主表面10bとの間の距離と同じである。
図4に示されるように、第2右エアバー117dと右主表面10bとの間の距離は、第1右エアバー117bと右主表面10bとの間の距離より短い。同様に、第2左エアバー117cと左主表面10aとの間の距離は、第1左エアバー117aと左主表面10aとの間の距離より短い。
【0052】
また、第2左エアバー117cおよび第2右エアバー117dは、X軸方向において検査装置104に最も近いエアバーである。第2左エアバー117cおよび第2右エアバー117dの下流側の端部は、検査装置104の近傍まで延びている。
【0053】
また、
図2〜4に示されるように、後述する第2右ガイド板118dの下流側には、第3右エアバー117fが配置されている。第3右エアバー117fは、Z軸方向において第2右エアバー117dと隣り合っている。同様に、後述する第2左ガイド板118cの下流側には、第3左エアバー117eが配置されている。第3左エアバー117eは、Z軸方向において第2左エアバー117cと隣り合っている。
【0054】
第1左エアバー117aおよび第2左エアバー117cは、左主表面10aに向かって空気を吹き付ける。第1右エアバー117bおよび第2右エアバー117dは、右主表面10bに向かって空気を吹き付ける。
【0055】
(2−1−6)ガイド板
ガイド板118a,・・・は、ガラス基板10の主表面10a,10bに対向して配置される部材である。ガイド板118a,・・・は、ガラス基板10の左右両側に配置される。ガイド板118a,・・・の数は、エアナイフ116a,・・・の数と同じである。
【0056】
ガイド板118a,・・・は、Y軸方向の位置を調整するための位置調整機構(図示せず)、および、XY平面における向きを制御するための角度調整機構(図示せず)を有する。ガイド板118a,・・・は、後述するように、エアナイフ116a,・・・から吐出された空気を、ガイド板118a,・・・とガラス基板10との間の空間に導くための部材である。
【0057】
図4に示されるように、ガラス基板製造装置100は、4種類のガイド板118a,118b,118c,118dを備える。以下、必要に応じて、4種類のガイド板118a,118b,118c,118dを、それぞれ、第1左ガイド板118a、第1右ガイド板118b、第2左ガイド板118cおよび第2右ガイド板118dと呼ぶ。ガラス基板製造装置100は、3個の第1左ガイド板118a、3個の第1右ガイド板118b、3個の第2左ガイド板118cおよび3個の第2右ガイド板118dを備える。
【0058】
第1左ガイド板118aおよび第2左ガイド板118cは、ガラス基板10の左側に配置されている。第1右ガイド板118bおよび第2右ガイド板118dは、ガラス基板10の右側に配置されている。第1左ガイド板118aおよび第1右ガイド板118bは、それぞれ、第2左ガイド板118cおよび第2右ガイド板118dの上流側に配置されている。X軸方向およびZ軸方向において、第1左ガイド板118aは、第1右ガイド板118bと同じ位置に配置され、第2左ガイド板118cは、第2右ガイド板118dと同じ位置に配置されている。
【0059】
また、エアバー117a,・・・およびガイド板118a,・・・は、Z軸方向において交互に配置されている。例えば、
図2および
図3に示されるように、第1右エアバー117bおよび第1右ガイド板118bは、Z軸方向において交互に配置されている。
【0060】
また、エアバー117a,・・・およびガイド板118a,・・・は、X軸方向において交互に配置されている。例えば、
図2および
図3に示されるように、第1右エアバー117bの下流側には、第2右ガイド板118dがZ軸方向において同じ位置に配置され、第1右ガイド板118bの下流側には、第2右エアバー117dがZ軸方向において同じ位置に配置されている。
【0061】
また、エアバー117a,・・・は、Z軸方向において隣り合うガイド板118a,・・・よりも下流側に配置されている。例えば、
図2および
図3に示されるように、第1右エアバー117bの上流側の端部は、第1右ガイド板118bの上流側の端部より下流側に配置され、かつ、第1右エアバー117bの下流側の端部は、第1右ガイド板118bの下流側の端部より下流側に配置されている。
【0062】
次に、第1左ガイド板118aの構成について、図面を参照しながら説明する。以下の説明は、他のガイド板118b,118c,118dにも適用可能である。
図5は、第1左エアナイフ116aから吐出され、第1左ガイド板118aによって導かれる空気の流れを説明する図である。
図5は、
図4と同様の上面図である。
図5には、空気の流れが白抜きの矢印F1〜F4で示されている。
【0063】
第1左ガイド板118aは、
図5に示されるように、1個のインレット部材128aと、2個のアウトレット部材138aとから構成される。インレット部材128aおよびアウトレット部材138aは、Z軸方向において同じ高さ位置に配置される板状部材である。インレット部材128aは、左主表面10aと対向する第1左ガイド表面119aを有する。アウトレット部材138aは、インレット部材128aの下流側において、インレット部材128aと離して配置されている。アウトレット部材138aの数が2以上である場合、個々のアウトレット部材138aは、互いに離して配置されている。以下において、インレット部材128aとアウトレット部材138aとの間の空間、および、2個のアウトレット部材138aの間の空間を、アウトレット流路148aと呼ぶ。また、第1左ガイド板118aのインレット部材128aの第1左ガイド表面119aを、必要に応じて、第1左ガイド板118aの第1左ガイド表面119aと呼ぶ。なお、第1左エアバー117aの上流側の端部は、第1左ガイド板118aのインレット部材128aの上流側の端部とX軸方向において同じ位置にあることが好ましい。
【0064】
第1左ガイド板118aと同様に、第1右ガイド板118bのインレット部材は、右主表面10bと対向する第1右ガイド表面119bを有する。第2左ガイド板118cのインレット部材は、左主表面10aと対向する第2左ガイド表面119cを有する。第2右ガイド板118dのインレット部材は、右主表面10bと対向する第2右ガイド表面119dを有する。X軸方向において、第1左ガイド表面119aと左主表面10aとの間の距離は、第1右ガイド表面119bと右主表面10bとの間の距離と同じである。X軸方向において、第2左ガイド表面119cと左主表面10aとの間の距離は、第2右ガイド表面119dと右主表面10bとの間の距離と同じである。
【0065】
次に、第1左ガイド板118aの作用効果について、図面を参照しながら説明する。以下の説明は、他のガイド板118b,118c,118dにも適用可能である。
【0066】
第1左ガイド板118aは、第1左エアナイフ116aから吐出された空気を第1左ガイド表面119aに沿って流すことで、第1左ガイド表面119aと左主表面10aとの間の空間に空気を導く。
図5に示されるように、第1左ガイド板118aのインレット部材128aの第1左ガイド表面119aは、上流ガイド湾曲面119a1と、ガイド平面119a2と、下流ガイド湾曲面119a3とを有する。上流ガイド湾曲面119a1は、上流側から下流側に向かって左主表面10aに徐々に近付く面である。ガイド平面119a2は、上流ガイド湾曲面119a1の下流側に位置し、左主表面10aに平行な面である。下流ガイド湾曲面119a3は、ガイド平面119a2の下流側に位置し、上流側から下流側に向かって左主表面10aから徐々に遠ざかる面である。上流ガイド湾曲面119a1および下流ガイド湾曲面119a3は、ガイド平面119a2と滑らかに接続されている。すなわち、上流側から下流側に向かって、第1左ガイド表面119aは、左主表面10aに徐々に近付き、その後、左主表面10aに平行となり、その後、左主表面10aから徐々に遠ざかる。ガイド平面119a2と左主表面10aとの間の距離は、第1左ガイド表面119aと左主表面10aとの間の距離の最小値である。
【0067】
第1左ガイド板118aの2つのアウトレット部材138aは、一対の湾曲面を有する板状部材である。
図5に示されるように、アウトレット部材138aは、左主表面10aと対向する第1湾曲面138a1と、その反対側の第2湾曲面138a2とを有する。
図5において、2つのアウトレット部材138aのうち、X軸方向においてインレット部材128aに近い方のアウトレット部材138aを、上流側のアウトレット部材138aと呼び、他方のアウトレット部材138aを、下流側のアウトレット部材138aと呼ぶ。アウトレット流路148aは、インレット部材128aの下流ガイド湾曲面119a3と、上流側のアウトレット部材138aの第2湾曲面138a2との間の空間、および、上流側のアウトレット部材138aの第1湾曲面138a1と、下流側のアウトレット部材138aの第2湾曲面138a2との間の空間に相当する。
【0068】
図5を参照しながら、第1左エアナイフ116aから吐出された空気の流れについて説明する。最初に、空気の噴流は、第1左エアナイフ116aの吐出孔から、第1左ガイド板118aの上流ガイド湾曲面119a1に向かって吐出される(矢印F1)。このとき、コアンダ効果によって、吐出された空気の噴流は、第1左ガイド板118aに引き寄せられる。その結果、空気は、上流ガイド湾曲面119a1に沿って流れる(矢印F2)。この時、噴流が周りの流体を引き込む性質によって、上流ガイド湾曲面119a1に沿って流れる空気は、周囲の空気を引き込む(矢印F3)。そして、周囲の空気を引き込んだ空気は、ガイド平面119a2と左主表面10aとの間の空間においてX軸方向に沿って流れる(矢印F4)。
【0069】
次に、ガイド平面119a2と左主表面10aとの間の空間を通過した空気の一部は、コアンダ効果によって、下流ガイド湾曲面119a3に沿って流れる(矢印F5)。この時、下流ガイド湾曲面119a3に沿って流れる空気は、周囲の空気を引き込む(矢印F6)。下流ガイド湾曲面119a3に沿って流れる空気、および、それに引き込まれた空気は、アウトレット流路148aを、左主表面10aから遠ざかる方向に流れる(矢印F7)。
【0070】
このように、第1左エアナイフ116aから吐出された空気は、第1左ガイド板118aによって、第1左ガイド表面119aのガイド平面119a2とガラス基板10の左主表面10aとの間の空間をX軸方向に沿って流れ、その後、アウトレット流路148aを流れる。後述するように、アウトレット流路148aを通過した空気は回収される。
【0071】
(2−1−7)空気循環機構
空気循環機構130は、エアナイフ116a,・・・から噴出されガイド板118a,・・・によって導かれた空気を回収して再利用する機能を有する。
図6は、空気循環機構130の構成図である。
図6には、第1左エアナイフ116a、第1左ガイド板118aおよびガラス基板10と、第1左エアナイフ116aから噴出された空気の流れ(
図5の矢印F1〜F7)とが示されている。
【0072】
次に、第1左エアナイフ116aから噴出され第1左ガイド板118aによって導かれる空気を回収して再利用する空気循環機構130について説明する。しかし、以下の説明は、他のエアナイフ116b,116c,116dから噴出され他のガイド板118b,118c,118dによって導かれる空気を回収して再利用する空気循環機構130にも適用可能である。
【0073】
空気循環機構130は、主として、補充空気ブロワー131と、補充フィルター132と、回収空気ブロワー133と、回収フィルター134と、を備える。空気循環機構130の各構成要素は、配管によって接続されている。
図6において、配管は矢印によって示され、矢印の向きは配管内の空気の流れ方向である。
【0074】
補充空気ブロワー131は、補充空気吸引口131aと補充空気吐出口131bとを有する。補充空気ブロワー131は、補充空気吸引口131aから取り入れた空気を圧縮して、補充空気吐出口131bから吐出する。補充空気吸引口131aは、ガラス基板製造装置100が設置されている空間、または、圧縮空気が貯留されている空間等に接続されている。補充空気吐出口131bは、配管を介して第1左エアナイフ116aに接続されている。補充空気吐出口131bから吐出された空気は、配管を流れて第1左エアナイフ116aに供給され、第1左エアナイフ116aから噴出される。
【0075】
補充フィルター132は、第1左エアナイフ116aに供給される空気が流れる配管内に取り付けられる。補充フィルター132は、補充空気ブロワー131および回収空気ブロワー133から吐出された空気に含まれる異物を捕らえて取り除く。
【0076】
回収空気ブロワー133は、回収空気吸引口133aと回収空気吐出口133bとを有する。回収空気ブロワー133は、回収空気吸引口133aから取り入れた空気を圧縮して、回収空気吐出口133bから吐出する。回収空気吸引口133aは、配管を介して、アウトレット流路148aの出口近傍の空間に接続している。回収空気吐出口133bは、配管を介して第1左エアナイフ116aに接続されている。補充空気ブロワー131から吐出された空気と、回収空気ブロワー133から吐出された空気とは、
図6に示されるように補充フィルター132を通過する前に合流する。回収空気ブロワー133は、アウトレット流路148aを通過した空気の少なくとも一部を吸引して回収し、第1左エアナイフ116aから噴出するための空気として再利用する。
【0077】
回収フィルター134は、回収空気ブロワー133によって吸引された空気が流れる配管内に取り付けられる。回収フィルター134は、回収空気ブロワー133によってアウトレット流路148aから吸引された空気に含まれる異物を捕らえて取り除く。
【0078】
空気循環機構130において、第1左エアナイフ116aから吐出された空気の一部は、アウトレット流路148aを通過して回収空気ブロワー133に吸引される。しかし、第1左エアナイフ116aから吐出された空気の一部は、回収空気ブロワー133に吸引されずに、周囲の空間に流れ込む。すなわち、回収空気ブロワー133は、第1左エアナイフ116aから吐出された空気を全て回収することができない。補充空気ブロワー131は、回収空気ブロワー133が回収できなかった空気による圧力損失分を補填するために、第1左エアナイフ116aに新しい空気を供給するために用いられる。
【0079】
(2−2)検査装置の構成
検査装置104は、ガラス基板10の内部に存在する異物を光学的手法により検知する。検査装置104は、エアナイフ116a,・・・およびガイド板118a,・・・の下流側に設置されている。
【0080】
検査装置104は、主として、光源120と、ラインセンサー122とから構成される。光源120は、ガラス基板10の左側に設置されている。ラインセンサー122は、光源120と対向するように、ガラス基板10の右側に設置されている。光源120は、Z軸方向に延びるライン光を、Y軸の負方向に向かって照射する。ラインセンサー122は、Z軸方向に配置された複数のカメラ122aを有している。ラインセンサー122は、光源120から照射されてガラス基板10を通過したライン光をカメラ122aで受光する。ラインセンサー122は、受光したライン光の強さの変化に基づいて、ガラス基板10の歪みを検出して、ガラス基板10の内部に存在する異物を検知する。ラインセンサー122のカメラ122aのフォーカスエリアは、±5mm以下である。
【0081】
(3)ガラス基板製造装置の具体例
ガラス基板製造装置100の構成の一例について説明する。
図7および
図8は、第1左エアナイフ116aおよび第1左ガイド板118aの寸法および位置を説明するための図である。
図7は、
図3と同様の側面図である。
図8は、
図4と同様の上面図の一部であり、
図7に示される矢印VIIIの方向から見た図である。
図7には、ガラス基板10、第1左エアナイフ116a、第2左エアナイフ116c、第1左エアバー117a、第2左エアバー117c、第1左ガイド板118aおよび第2左ガイド板118cのみが示されている。
図8には、ガラス基板10、第1左エアバー117a、第2左エアナイフ116cおよび第2左ガイド板118cのみが示されている。以下の説明は、全てのエアナイフ116a,116b,116c,116d、全てのエアバー117a,117b,117c,117d、および、全てのガイド板118a,118b,118c,118dに適用可能である。
【0082】
ガラス基板10のX軸方向の寸法L1は、2400mmである。ガラス基板10のZ軸方向の寸法L2は、1550mmである。搬送装置102によってX軸方向に搬送されるガラス基板10の搬送速度は、1200mm/sである。
【0083】
図7において、第1左エアナイフ116aのZ軸方向の寸法L3は、209mmである。第1左ガイド板118aのZ軸方向の寸法L4は、220mmである。第1左エアナイフ116aのZ軸方向の中心位置は、第1左ガイド板118aのZ軸方向の中心位置と同じである。ガラス基板10の上端と、最も上方に位置する第1左エアバー117aの上端との間の距離L5は、130mmである。ガラス基板10の下端と、最も下方に位置する第1左ガイド板118aの下端との間の距離L6は、100mmである。第1左エアバー117aのZ軸方向の寸法L7は、220mmである。
【0084】
図8において、第1左エアバー117aのX軸方向の寸法L8は、845mmである。第1左エアバー117aと左主表面10aとの間の距離L9は、20mmである。第2左ガイド板118c全体のX軸方向の寸法L10は、845mmである。第2左ガイド板118cのインレット部材128cのX軸方向の寸法L11は、550mmである。インレット部材128cのガイド平面119c2のX軸方向の寸法L12は、200mmである。インレット部材128cの上流ガイド湾曲面119c1は、XY平面においてR形状を有し、その径L13は、300mmである。ガイド平面119c2と左主表面10aとの間の距離L14は、10mmである。第2左エアナイフ116cは、上流側から下流側に向かって左主表面10aに近付くように配置される。第2左エアナイフ116cと左主表面10aとの間の距離の最小値L15は、320mmである。第2左エアナイフ116cと左主表面10aとの間の角度θは、30度である。角度θは、XY平面において、第2左エアナイフ116cから噴出される空気の流れ方向と、X軸方向との間の角度である。第2左ガイド板118cのガイド平面119c2と左主表面10aとの間の空間を流れる空気の速さの最大値は、1.0m/s〜2.0m/sである。ガイド平面119c2と左主表面10aとの間の空間を流れる空気の速さは、ガラス基板10の搬送速度に応じて調整され、ガラス基板10の搬送速度よりも大きいことが好ましい。
【0085】
なお、上記の数値L3〜L15およびθは一例であり、ガラス基板10の寸法L1,L2、および、ガラス基板10の搬送速度等に応じて適宜に設定される。
【0086】
(4)特徴
ガラス基板製造装置100は、第1検査工程S4において、搬送装置102によってガラス基板10をX軸方向に搬送しながら、検査装置104によって、ガラス基板10の内部に存在する異物を光学的手法により検知する。
【0087】
搬送装置102によって搬送されるガラス基板10の主表面10a,10bには、エアナイフ116a,・・・から吐出される空気が吹き付けられる。空気は、ガイド板118a,・・・によって導かれて、ガイド板118a,・・・とガラス基板10との間の空間をX軸方向に沿って流れる。
【0088】
第1左エアナイフ116aから吐出され第1左ガイド板118aによって導かれる空気の作用について、
図5を参照しながら説明する。
図5に示されるように、第1左エアナイフ116aから吐出された空気は、周囲の空気を引き込みながらガイド湾曲面119a1に沿って流れ、ガイド平面119a2と左主表面10aとの間の空間を流れる。第1左ガイド板118aとガラス基板10との間の空間は、第1左エアナイフ116aから吐出された空気の流路であり、上流側から下流側に向かって徐々に狭くなる。そのため、第1左ガイド板118aとガラス基板10との間の空間において、空気の流速は、上流側から下流側に向かって徐々に大きくなる。特に、ガイド平面119a2と左主表面10aとの間の空間において、空気の流速は最大となる。ベルヌーイの定理により、空気の流速が増加するほど空気の圧力は低下するので、ガイド平面119a2と左主表面10aとの間の空間は、周囲の空間に対して負圧となる。その結果、ガラス基板10は、第1左ガイド板118aに向かうY軸方向の力を受ける。同様に、第1右エアナイフ116bから吐出され第1右ガイド板118bによって導かれる空気によって、ガラス基板10は、第1右ガイド板118bに向かうY軸方向の力を受ける。同様に、ガラス基板10は、第2左ガイド板118cに向かうY軸方向の力、および、第2右ガイド板118dに向かうY軸方向の力を受ける。このように、ガラス基板10は、Y軸の正方向の力、および、Y軸の負方向の力を受けながら、X軸方向に搬送される。
【0089】
ガラス基板10のZ軸方向における中央領域は、ガラス基板10を把持するクランプ機構112、および、ガラス基板10のY軸方向の移動を抑制する下部ガイド機構114から、Z軸方向において最も離れたポイントを含む。そのため、搬送されているガラス基板10のZ軸方向における中央領域は、Y軸方向に何ら力が付与されていない場合には、ガラス基板10の周囲の圧力の微小な変化によってY軸方向に振動しやすい。
【0090】
しかし、本実施形態において、搬送装置102によって搬送されるガラス基板10のZ軸方向における中央領域は、Y軸の正方向および負方向の力が付与される。Y軸の正方向の力の大きさが、Y軸の負方向の力の大きさと同じである場合、ガラス基板10に作用するY軸方向の力は釣り合っている。これにより、搬送されているガラス基板10は、Z軸方向における中央領域においてY軸方向の力の変化を受けにくくなる。従って、ガラス基板10のY軸方向の振動が低減される。
【0091】
また、搬送されているガラス基板10に付与されるY軸方向の力は、エアナイフ116a,・・・から吐出される空気の流量および向き、もしくは、ガイド板118a,・・・の位置および角度を調整することにより、高い精度で制御することができる。そのため、ガラス基板製造装置100は、搬送されているガラス基板10のY軸方向の振動を容易に低減することができる。
【0092】
また、搬送装置102によって搬送されているガラス基板10がY軸方向に振動すると、検査装置104のラインセンサー122のカメラ122aの焦点位置がずれるので、ガラス基板10の内部に存在する異物の検出精度が低下する。また、ラインセンサー122のカメラ122aのフォーカスエリアが±3mm以下と短い場合、カメラ122aの焦点位置に高い精度が要求されるので、ガラス基板10の内部に存在する異物の検出精度が低下する。従って、ガラス基板製造装置100は、搬送されているガラス基板10の振動を低減し、ガラス基板10のY軸方向の振動の振幅を1mm以下に抑えることができるので、ガラス基板10の内部に存在する異物の検出精度の低下を抑制することができる。
【0093】
さらに、ガラス基板製造装置100の搬送装置102は、搬送されるガラス基板10を洗浄する機能を有する。例えば、
図5に示されるように、第1左エアナイフ116aから吐出され第1左ガイド板118aによって導かれる空気は、第1左ガイド板118aのガイド平面119a2と左主表面10aとの間の空間を流れる。ガイド平面119a2と左主表面10aとの間の空間では、空気はX軸方向に沿って流れ、空気の層流が形成される。左主表面10aに沿って空気の層流が流れている場合、左主表面10aに付着している異物が層流によって吹き飛ばされやすい。同様に、第1右エアナイフ116bから吐出され第1右ガイド板118bによって導かれる空気により、右主表面10bに沿って空気の層流が流れる。また、第2左エアナイフ116cから吐出され第2左ガイド板118cによって導かれる空気により、左主表面10aに沿って空気の層流が流れる。また、第2右エアナイフ116dから吐出され第2右ガイド板118dによって導かれる空気により、右主表面10bに沿って空気の層流が流れる。このように、エアナイフ116a,・・・およびガイド板118a,・・・によって主表面10a,10bに沿って空気の層流が形成され、主表面10a,10bに付着している異物が層流によって吹き飛ばされることにより、主表面10a,10bに付着している異物が除去される。従って、搬送装置102は、搬送されるガラス基板10の主表面10a,10bに付着している異物を除去して、ガラス基板10を洗浄することができる。
【0094】
なお、
図3に示されるように、エアバー117a,・・・およびガイド板118a,・・・は、X軸方向およびZ軸方向において交互に配置されている。そのため、Z軸方向においてガラス基板10の主表面10a,10bのほとんどの領域は、ガラス基板10の搬送中に、ガイド板118a,・・・と対向する。言い換えると、主表面10a,10bのほとんどの領域に沿って、空気の層流が形成される。従って、搬送装置102は、主表面10a,10bのほとんどの領域を洗浄することができる。
【0095】
また、主表面10a,10bに付着している異物が層流によって吹き飛ばされると、主表面10a,10bから異物が除去されるが、ガイド板118a,・・・と主表面10a,10bとの間を流れる空気に、除去された異物が混入する。ガラス基板製造装置100では、異物が混入した空気を吸引して、異物を取り除き、再利用することができる。例えば、上述したように、第1左エアナイフ116aから吐出され第1左ガイド板118aによって導かれる空気は、ガイド平面119a2と左主表面10aとの間の空間を層流となって流れ、左主表面10aに付着している異物を吹き飛ばす。ガイド平面119a2と左主表面10aとの間の空間を通過した空気は、上述したように、アウトレット流路148aを通過した後、空気循環機構130の回収空気ブロワー133によって吸引される。吸引された空気に混入している異物は、回収フィルター134によって取り除かれる。その後、異物が除去された空気は、補充空気ブロワー131によって供給された空気と合流して、補充フィルター132によって異物が取り除かれ、第1左エアナイフ116aに送られる。このように、ガラス基板製造装置100は、ガイド板118a,・・・と主表面10a,10bとの間を流れる空気の少なくとも一部を回収し、回収した空気から異物を除去した後に、異物が除去された空気の少なくとも一部をエアナイフ116a,・・・に送る。ガラス基板製造装置100は、主表面10a,10bに付着していた異物が混入された空気を回収するので、主表面10a,10bから除去された異物が再び主表面10a,10bに付着することが抑制される。また、ガイド板118a,・・・の下流側にある検査装置104の検査精度が、主表面10a,10bに沿って流れる空気、および、主表面10a,10bから除去された異物によって低下することが抑制される。従って、ガラス基板製造装置100は、ガラス基板10の主表面10a,10bを効果的に洗浄できると共に、ガラス基板10の内部に存在する異物の検出精度の低下を抑制することができる。
【0096】
また、ガラス基板製造装置100は、エアバー117a,・・・を備える。エアバー117a,・・・は、主表面10a,10bに向かって空気を噴出して、Y軸方向に沿ってガラス基板10を両側から押す力をガラス基板10に付与する。これにより、以下に説明するように、搬送されているガラス基板10のY軸方向の振動が低減される。
【0097】
上述したように、ガイド板118a,・・・と主表面10a,10bとの間を通過した空気は、アウトレット流路148aを通過して、空気循環機構130によって回収される。そのため、アウトレット流路148aの入口近傍の空間は、周囲の空間から空気を吸引して圧力が一定になりにくいので、不安定な負圧の状態になりやすい。エアバー117a,・・・は、不安定な負圧の状態になりやすい空間に空気を供給することで、負圧を抑制する。仮に、アウトレット流路148aの入口近傍の空間が不安定な負圧の状態になると、主表面10a,10bは負圧の空間に引き寄せられ、主表面10a,10bには、主にY軸方向の不安定な力が作用する。この力によりガラス基板10が振動すると、ガラス基板10がガイド板118a,・・・等に接触して破損するおそれがある。また、エアバー117a,・・・によって、ガラス基板10の両方の主表面10a,10bにY軸方向の力が作用するので、ガラス基板10のY軸方向の移動が抑制されて、ガラス基板10の姿勢が安定化する。
【0098】
また、搬送されるガラス基板10の姿勢を安定化する力、すなわち、搬送されるガラス基板10に付与されるY軸方向の力は、エアバー117a,・・・の空気噴出孔から噴出される空気の流量、および、エアバー117a,・・・の位置および角度を調整することにより、高い精度で制御することができる。そのため、ガラス基板製造装置100は、搬送されるガラス基板10のY軸方向の振動を容易に低減することができる。
【0099】
また、
図2〜4に示されるように、第2右ガイド板118dの下流側には、第3右エアバー117fが配置されている。第3右エアバー117fは、X軸方向において、検査装置104の上流側近傍に配置されている。第3右エアバー117fは、Z軸方向において第2右エアバー117dと隣り合っているので、検査装置104の上流側近傍では、2種類のエアバー117d,117fが、Z軸方向に沿って配置されている。そのため、第2右エアバー117dおよび第3右エアバー117fによって、検査装置104によって検査される直前のガラス基板10のY軸方向の振動が効果的に低減される。
【0100】
また、第3右エアバー117fは、その上流側に位置する第2右ガイド板118dによって導かれる気流が検査装置104まで到達することを防止する。検査装置104の光源120とラインセンサー122との間に気流が生じると、ガラス基板10の振動等によって、検査装置104の検査精度が低下するおそれがある。そのため、第2右ガイド板118dの下流側に第3右エアバー117fを配置することで、検査装置104の検査精度の低下が抑制される。第3右エアバー117fの作用効果に関する上記の説明は、第3左エアバー117eにも適用可能である。
【0101】
(5)変形例
以上、本発明に係るガラス基板製造装置の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良および変更が施されてもよい。
【0102】
(5−1)変形例A
実施形態のガラス基板製造装置100は、4種類のエアナイフ116a,116b,116c,116d、4種類のエアバー117a,117b,117c,117d、および、4種類のガイド板118a,118b,118c,118dを備えている。しかし、ガラス基板製造装置100が備えるエアナイフ116a,・・・の種類および数、エアバー117a,・・・の種類および数、および、ガイド板118a,・・・の種類および数は、ガラス基板10の寸法L1,L2、および、ガラス基板10の搬送速度に応じて適宜に設定されてもよい。ここで、エアナイフ116a,・・・の種類とは、Z軸方向の位置のみが異なる複数のエアナイフから構成されるグループを意味する。エアバー117a,・・・の種類、および、ガイド板118a,・・・の種類に関しても同様である。
【0103】
また、ガラス基板製造装置100に備えられるエアナイフ116a,・・・、エアバー117a,・・・およびガイド板118a,・・・の数が大きいほど、ガラス基板10の主表面10,10bに作用するY軸方向の力の発生源が増えるため、搬送されるガラス基板10のY軸方向の振動がより抑えられる。そのため、ガラス基板製造装置100が設置される空間においてY軸方向の気流が発生しても、ガラス基板10のY軸方向の振動が十分に抑えられ、ガラス基板10の内部に存在する異物の検出精度の低下が抑制される。
【0104】
(5−2)変形例B
実施形態のガラス基板製造装置100では、エアナイフ116a,・・・、エアバー117a,・・・およびガイド板118a,・・・は、検査装置104の上流側に配置されている。しかし、エアナイフ116a,・・・、エアバー117a,・・・およびガイド板118a,・・・は、検査装置の下流側にも配置されてもよい。
【0105】
検査装置104によるガラス基板10の内部に存在する異物の検出精度の低下を抑制するためには、検査装置104の上流側においてガラス基板10の振動を低減することが重要である。しかし、検査装置104の上流側だけではなく検査装置104の下流側においてもガラス基板10の振動を低減することにより、検査装置104の上流側におけるガラス基板10の振動がさらに低減される。そのため、本変形例は、検査装置104によるガラス基板10の内部に存在する異物の検出精度の低下をより効果的に抑制することができる。
【0106】
(5−3)変形例C
実施形態のガラス基板製造装置100は、エアナイフ116a,・・・から吐出されガイド板118a,・・・によって導かれる空気によって形成される、ガラス基板10の主表面10a,10bに沿って形成される空気の層流によって、主表面10a,10bに付着している異物を除去することができる。しかし、ガラスの微小なパーティクル等、100μm未満の微小異物は、主表面10a,10bに沿って形成される空気の層流によって十分に除去されないことがある。そこで、空気の層流による主表面10a,10bの洗浄工程の後に、主表面10a,10bに向かって圧縮空気を吹き付けて、主表面10a,10bに残存している微小異物を除去する予備洗浄工程がさらに行われてもよい。
【0107】
図9は、予備洗浄工程について説明するための図である。
図9は、
図6と同様の空気循環機構130の構成図である。
図9と
図6との相違点は、ガラス基板10の主表面10aに対する空気の噴出機構のみであるので、空気循環機構130の構成に関する説明は省略する。
図9では、空気の流れが白抜きの矢印で示されている。本変形例では、
図9に示されるように、2個のエアノズル216aおよび1個のバキュームノズル217aが、左主表面10aと対向するように配置されている。なお、
図9には図示されていないが、右主表面10bの側においても、2個のエアノズル216aおよび1個のバキュームノズル217aは、右主表面10bと対向するように配置されている。
【0108】
エアノズル216aは、左主表面10aに向かって高圧の圧縮空気を噴出する。バキュームノズル217aは、X軸方向において2個のエアノズル216aの間に配置される。バキュームノズル217aは、回収空気ブロワー133の回収空気吸引口133aに接続されている。エアノズル216aから噴出された圧縮空気は、左主表面10aに衝突し、バキュームノズル217aに吸引される。バキュームノズル217aに吸引された空気は、回収空気ブロワー133に回収される。補充空気ブロワー131および回収空気ブロワー133は、補充フィルター132および回収フィルター134を通過して微小異物が除去された空気をエアノズル216aに送る。
【0109】
本変形例では、エアノズル216aは、左主表面10aに向かって圧縮空気を集中的に噴出するので、主表面10a,10bに残存している微小異物が効果的に除去される。また、エアノズル216aから噴出されて左主表面10aに衝突した圧縮空気は、すぐにバキュームノズル217aに吸引される。そのため、主表面10a,10bから除去された微小異物が、主表面10a,10bに再び付着することが抑制される。
【0110】
(5−4)変形例D
実施形態のガラス基板製造装置100は、第1検査工程S4において、切断工程S3で得られたガラス基板10の欠陥を検知する。しかし、ガラス基板製造装置100は、第2検査工程S8において、最終洗浄工程S7で洗浄されたガラス基板10の欠陥を検知してもよい。この場合、ガラス基板製造装置100は、ガラス基板10の内部に存在する異物を検知する代わりに、ガラス基板10の主表面に形成される脈理、ガラス基板10の主表面に存在するキズおよびクラック、および、ガラス基板10の主表面に付着している異物等を検知してもよい。また、ガラス基板製造装置100は、ガラス基板10の内部に存在する異物を検知すると共に、ガラス基板10の主表面に形成される脈理、ガラス基板10の主表面に存在するキズおよびクラック、および、ガラス基板10の主表面に付着している異物等をさらに検知してもよい。
【0111】
(5−5)変形例E
実施形態のガラス基板製造装置100では、第1左ガイド板118aは、
図5に示されるように、1個のインレット部材128aと、2個のアウトレット部材138aとから構成される。しかし、第1左ガイド板118aのアウトレット部材138aの数は、
図5に示される空気の流れF1〜F7を実現できるのであれば、任意であってもよい。なお、他のガイド板118b,・・・のアウトレット部材の数も、同様に任意であってもよい。
【0112】
(5−6)変形例F
実施形態のガラス基板製造装置100は、ガラス基板10の左右両側に配置されるエアバー117a,・・・を備えている。エアバー117a,・・・は、ガラス基板10の主表面10a,10bに向かって空気の噴流を吹き付ける。しかし、ガラス基板製造装置100は、エアバー117a,・・・の代わりに、エアベアリングを備えてもよい。
【0113】
エアベアリングは、搬送されるガラス基板10の主表面10a,10bと対向し、多数の空気噴出孔および多数の空気吸引孔が形成された表面を有する。空気噴出孔は、Y軸方向に空気を噴出する。空気吸引孔は、その開口部の近傍の空間から空気を吸引する。エアベアリングの空気噴出孔から噴出された空気は、主表面10a,10bと衝突して、空気の噴出方向(Y軸方向)にガラス基板10を押す力をガラス基板10に付与する。エアベアリングの空気吸引孔は、エアベアリングと主表面10a,10bとの間の空間から空気を吸引する。これにより、空気吸引孔は、空気噴出孔が空気を噴出する方向の反対方向(Y軸方向)にガラス基板10を引く力をガラス基板10に付与する。エアベアリングは、Y軸方向の位置、空気噴出孔から吐出される空気の流量、および、空気吸引孔に吸引される空気の流量等を調整することで、エアベアリングとガラス基板10との間の距離を高い精度で制御することができる。
【0114】
なお、ガラス基板製造装置100は、下流側のエアバー117a,・・・のみをエアベアリングで置き換えた構成を有してもよい。具体的には、ガラス基板製造装置100の第2左エアバー117cおよび第2右エアバー117dのみが、エアベアリングに置き換えられてもよい。
【0115】
(5−7)変形例G
実施形態のガラス基板製造装置100は、ガラス基板10を把持するクランプ機構112を備えている。クランプ機構112は、ガラス基板10に超音波振動を与えるための超音波振動子を有してもよい。超音波振動子によりガラス基板10が超音波で振動することで、ガラス基板10に付着している異物が除去されやすくなる。また、ガラス基板10に与えられる超音波振動の周波数を適切に設定することで、ガラス基板10からカレットが除去されやすくなり、ガラス基板10に異物が固着または融着することが抑制される。
【0116】
(5−8)変形例H
実施形態のガラス基板製造装置100では、エアナイフ116a,・・・から吐出されガイド板118a,・・・によって導かれる空気によって、ガラス基板10の主表面10a,10bに沿って空気の層流が形成される。しかし、ガラス基板10の主表面10a,10bに沿って空気が流れると、静電気が発生して主表面10a,10bが帯電するおそれがある。主表面10a,10bの帯電は、雰囲気中の異物が主表面10a,10bに付着する原因となる。
【0117】
そこで、主表面10a,10bの帯電による異物の付着を抑制するために、ガラス基板製造装置100は、イオナイザー等の除電機構をさらに備えてもよい。除電機構は、静電気の発生を防止して、主表面10a,10bの帯電を抑制することができる。