【実施例】
【0039】
次に、具体的な実施例、比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の例における「部」及び「%」は特に断りのない限り質量基準である。
【0040】
<装置>
本実施例で使用した反応装置の模式的概略図を
図1に示した。マイクロナノバブル発生ユニット8には、株式会社OHR流体工学研究所のOHRラインミキサーを使用した。また、比較例で使用した装置の模式的概略図を
図2に示した。ここでは、実施例で使用したマイクロナノバブル発生ユニット8に替え、散気板9を使用し、従来のバブリング式で反応した場合との比較を行った。
【0041】
<反応率>
本実施例及び比較例における反応率は、液体クロマトグラフィーのクロマトグラムにおけるピーク面積から算出した。具体的には、エポキシ基を1分子中に2つ以上を持つ化合物において、1分子中の全エポキシが5員環環状カーボネートとなる目的生成物に対して中間の化合物が存在するが、これらも計算に入れたエポキシ基の5員環環状カーボネート基への反応率を計算し、算出した。
【0042】
<反応当量>
本実施例及び比較例における反応当量は、エポキシ基に二酸化炭素がすべて反応するときに必要な二酸化炭素の量を反応当量とした。具体的には、5員環環状カーボネート化合物の合成に使用したエポキシ化合物の量と、エポキシ当量および二酸化炭素の分子量から算出した。例えば、実施例1の場合には、エポキシ当量187のエポキシ化合物を150質量部使用しているので150÷187×44=35.3(質量部)が反応当量となる。
また、本実施例及び比較例における二酸化炭素の全供給量は、使用する炭酸ガスのボンベの反応前後の全体重量差から算出した。
【0043】
[実施例1:5員環環状カーボネート化合物(A−I)の合成−1]
エポキシ当量187のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エポトート YD−128、新日鉄住金化学株式会社)150部と、臭化ナトリウム(和光純薬株式会社製、下記の例でも同様のものを使用)2.1部と、N−メチル−2−ピロリドン150部とを、本実施例の反応装置である
図1に示すマイクロナノバブル発生ユニット8付き反応装置に仕込んだ。次いで、100℃まで昇温撹拌しながら二酸化炭素を1時間あたり16部供給し、100℃で2時間反応した。そして、二酸化炭素の供給量を1時間あたり5部、2部、1部と1時間おきに下げながら、合計5時間反応を行い、下記構造式(A−I)で示される5員環環状カーボネート化合物を得た。液体クロマトグラフィーによりエポキシ基の反応率を確認したところ、99.6%であった。また、このときの液化炭酸ガスボンベの減少量から算出した二酸化炭素の全供給量は、反応当量に対して1.1当量であった。
【0044】
【0045】
[実施例2:5員環環状カーボネート化合物(A−I)の合成−2]
実施例1で用いた触媒を、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(東京化成工業株式会社)10部に代えた以外は実施例1と同様に行い、5員環環状カーボネート化合物(A−I)を得た。実施例1と同様に、液体クロマトグラフィーによりエポキシ基の反応率を確認したところ、99.3%であった。また、このとき二酸化炭素の全供給量は、反応当量に対して1.1当量であった。
【0046】
[実施例3:5員環環状カーボネート化合物(A−I)の合成−3]
実施例1で用いた触媒を、予め水分を除去した強塩基性陰イオン交換樹脂(商品名:ダイヤイオン HPA25L、三菱化学株式会社)25部に代えた以外は実施例1と同様に行い、5員環環状カーボネート化合物(A−I)を得た。実施例1と同様に、液体クロマトグラフィーによりエポキシ基の反応率を確認したところ99.4%であった。また、このとき二酸化炭素の全供給量は、反応当量に対して1.1当量であった。
【0047】
[実施例4:5員環環状カーボネート化合物(A−II)の合成]
エポキシ当量152のフェノール型エポキシ化合物(商品名:デナコール EX−141 ナガセケムテックス株式会社)100部と、臭化ナトリウム1.7部と、N−メチル−2−ピロリドン150部とを、
図1に示したマイクロナノバブル発生ユニット付き反応装置に仕込んだ。次いで、100℃まで昇温撹拌しながら二酸化炭素を1時間あたり16部供給し、100℃で2時間反応した。そして、二酸化炭素の供給量を1時間あたり5部、2部、1部と1時間おきに下げながら、合計5時間反応を行い、下記構造式(A−II)で示される5員環環状カーボネート化合物を得た。液体クロマトグラフィーにより、エポキシ基の反応率を確認したところ、98.9%であった。また、このときの液化炭酸ガスボンベの減少量から算出した二酸化炭素の全供給量は反応当量に対して1.4当量であった。
【0048】
【0049】
[実施例5:5員環環状カーボネート化合物(A−III)の合成]
エポキシ当量145のテレフタレート型エポキシ樹脂(商品名:デナコール EX−711 ナガセケムテックス株式会社)100部と、臭化ナトリウム1.8部と、N−メチル−2−ピロリドン150部とを、
図1に示すマイクロナノバブル発生ユニット付き反応装置に仕込んだ。次いで、100℃まで昇温撹拌しながら二酸化炭素を1時間あたり16部供給し、100℃で2時間反応した。そして、二酸化炭素の供給量を1時間あたり5部、2部、1部と1時間おきに下げながら、合計5時間反応を行い、下記構造式(A−III)で示される5員環環状カーボネート化合物を得た。液体クロマトグラフィーにより、エポキシ基の反応率を確認したところ、99.1%であった。また、このときの液化炭酸ガスボンベの減少量から算出した二酸化炭素の全供給量は反応当量に対して1.3当量であった。
【0050】
【0051】
[実施例6:5員環環状カーボネート化合物(A−IV)の合成]
エポキシ当量98の多官能型エポキシ樹脂(商品名:TETRAD−X 三菱瓦斯化学株式会社)100部と、臭化リチウム2.6部と、N−メチル−2−ピロリドン150部とを、
図1に示すマイクロナノバブル発生ユニット付き反応装置に仕込んだ。次いで、100℃まで昇温撹拌しながら二酸化炭素を1時間あたり20部供給し、100℃で2時間反応した。そして、二酸化炭素の供給量を1時間あたり5部、2部、1部と1時間おきに下げながら、合計5時間反応を行い、下記構造式(A−IV)で示される5員環環状カーボネート化合物を得た。液体クロマトグラフィーにより、エポキシ基の反応率を確認したところ、99.9%であった。また、このときの液化炭酸ガスボンベの減少量から算出した二酸化炭素の全供給量は反応当量に対して1.1当量であった。
【0052】
【0053】
[実施例7:5員環環状カーボネート化合物(A−V)の合成]
エポキシ当量100のイソシアヌレート型エポキシ樹脂(商品名:TEPIC−S 日産化学社製)100部と、臭化リチウム2.6部と、N−メチル−2−ピロリドン350部とを、
図1に示すマイクロナノバブル発生ユニット付き反応装置に仕込んだ。次いで、100℃まで昇温撹拌しながら二酸化炭素を1時間あたり20部供給し、100℃で2時間反応した。そして、二酸化炭素の供給量を1時間あたり5部、2部、1部と1時間おきに下げながら、合計5時間反応を行い、下記構造式(A−V)で示される5員環環状カーボネート化合物を得た。液体クロマトグラフィーにより、エポキシ基の反応率を確認したところ、99.0%であった。また、このときの液化炭酸ガスボンベの減少量から算出した二酸化炭素の全供給量は反応当量に対して1.1当量であった。
【0054】
【0055】
[比較例1:5員環環状カーボネート化合物(A−I)の合成−4]
エポキシ当量187のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エポトート YD−128、新日鉄住金化学株式会社)150部と、臭化ナトリウム2.1部と、N−メチル−2−ピロリドン150部とを、比較例の装置である
図2に示した散気板を使用したバブリング式の反応装置に仕込んだ。次いで、100℃まで昇温撹拌しながら二酸化炭素を1時間あたり16部供給し、100℃で5時間反応した。この時点で、液体クロマトグラフィーによりエポキシ基の反応率を確認したところ、57.5%であった。二酸化炭素の供給量を変えず反応時間を11時間まで延長したところでエポキシ基の反応率は99.0%となり、5員環環状カーボネート化合物(A−1)を得た。このときの液化炭酸ガスボンベの減少量から算出した二酸化炭素の全供給量は反応当量に対して5.0当量であった。
【0056】
[比較例2:5員環環状カーボネート化合物(A−I)の合成−5]
触媒を予め水分を除去した強塩基性陰イオン交換樹脂(商品名:ダイヤイオン HPA25L、三菱化学株式会社)25部に代えた以外は比較例1と同様に行った。反応時間5時間におけるエポキシ基の反応率を確認したところ28.1%であったが反応は延長しなかった。この時点で、二酸化炭素の全供給量は反応当量に対して8.1当量であった。
【0057】
上記、実施例および比較例でエポキシ化合物の種類、触媒の種類、使用した装置の種類がエポキシ化合物の反応率や二酸化炭素の反応当量に対する全供給量に与えた影響を表1にまとめて示した。
【0058】