【実施例】
【0061】
実験方法
HPV 16、18番形態のsiRNA製作
下記表1−1〜1−4、2−1〜2−4のsiRNAは、(株)バイオニア(korea)に注文制作して収得した。下記表において、下線で表示したsiRNA配列は、塩基残基にメチル基を結合させた2’−O−Me変形ヌクレオチドで置換された塩基を示し、太イタリック体で示した配列は、塩基残基のヒドロキシ基をフルオロで置換した2’−F変形ヌクレオチドで置換された塩基を示す。
【0062】
【表1-1】
【0063】
【表1-2】
【0064】
【表1-3】
【0065】
【表1-4】
【0066】
【表2-1】
【0067】
【表2-2】
【0068】
【表2-3】
【0069】
【表2-4】
【0070】
siRNAの安定性確認
siRNAを10%牛血清又は10%ヒト血清に混ぜた後、37℃に入れて時間別にサンプルを取った後、急速冷却させて−70℃に保管した。集まったサンプルを12%ポリアクリルアミドゲルに50Vで1時間30分間電気泳動し、Et−Brで染色後、UVで測定した。
【0071】
細胞培養及びsiRNA形質導入
子宮頸癌細胞とHPV 18番形態のウイルスに感染されたHeLa子宮頸癌細胞株(HeLa; ATCC CCL−2)又はHPV 16番形態のウイルスに感染されたSiHa(SiHa; ATCC HTB−35)又はCaSki(ATCC CRL−1550)子宮頸癌細胞株を6−ウェルプレートに2×10
5又は1.5×10
5の細胞数で分株した後、37℃、二酸化炭素5%条件下で10%の牛血清の入ったRPMI1640又はDMEM培地でそれぞれ24時間培養した。24時間培地で培養して、細胞が培養容器表面に吸着されると、対照群として非変形siRNAと、実験群として上述の方法で変形させたsiRNAオリゴヌクレオチドをそれぞれ20nMずつDharmaFECT 1 (Dharmacon, USA)を使用して形質導入した後、24時間培養した。
【0072】
抗癌剤処理
上述の方法で6−ウェルプレートに2×10
5又は1.5×10
5細胞で分株し、1日間培養されたHeLa又はCaski細胞株にsiRNAを形質導入させた後、シスプラチン(CDDP)最終濃度それぞれ2.5μMで処理して培養した。
【0073】
細胞老化に係わるβガラクトシダーゼ(SA−β−gal)活性測定
上述の方法でHeLa又はCaski細胞株にsiRNAを単独で形質導入するか、あるいは抗癌剤と併用投与した後、一日間培養した。細胞老化測定キット(BioVision, USA)を利用してPBSで洗浄し、SA−β−gal染色溶液に37℃で12時間処理した。一般光学顕微鏡を利用し、100〜200倍の倍率で、青色に染色された細胞を観察した。
【0074】
フローサイトメトリーを利用した細胞死滅測定
上述の方法でHeLa又はCaski細胞株にsiRNAを単独で形質導入するか、あるいは抗癌剤と併用投与した後、一日間培養した。細胞死滅キット(BD, USA)を利用してAnnexin VとPI(propidium iodide)試薬で染色し、常温で30分間反応した後、フローサイトメトリーを利用して細胞の死滅を確認した。
【0075】
siRNAの治療影響調査
上述の方法でHeLa又はCaski細胞株にsiRNAを単独で形質導入するか、あるいは抗癌剤と併用投与した後、一日間培養した。タンパク質の変化を観察するために、 細胞をRIPA細胞溶解緩衝液RIPA lysis buffer : 150 mM NaCl, 10 mM Tris−HCl(pH 7.4), 5 mM EDTA, 0.1% SDS, 0.5% デオキシコレート及び1% NP−40]を添加して破砕し、一般的なウェスタンブロット方法によりタンパク質変化量を観察した。抗−TP53、抗−E7、抗−Actinマウス抗体は、Santa Cruz社(USA)で購入し、1:1000で希釈して使用した。ヤギ−抗−マウスIgG HRP接合抗体(Goat−anti−mouse IgG HRP conjugate antibody)は、Jackson Laboratories社(USA)から購入し、1:3000で希釈して使用した。
【0076】
また、mRNAの変化量を観察するために、細胞をトリゾール溶液(Trizol solution, Invitrogen, USA)を利用して破砕し、エタノール精製を通じてRNAを検出し、一般的なReal−time PCR(実時間重合酵素連鎖反応)方法によりmRNA変化量を観察した。
【0077】
siRNAのoff−target効果の影響調査
HeLa又はCaski細胞株を6−ウェルプレートに分株した後、37℃、二酸化炭素5%条件下で、10%牛血清の入ったRPMI1640又はDMEM培地でそれぞれ24時間培養した。陽性対照群β−gal siRNAとsiRNAを形質導入して培養した後、培地を取って一般的なIL−6(BD, USA) ELISA方法を行った。
【0078】
6週齢のマウスに陽性対照群β−gal siRNAと陰性対照群siRNA, siRNAを静脈注射して、6時間反応した後、マウスの血液を採取して血清分離後、INF−gamma(BD, USA) ELISAを行った。
【0079】
siRNAの定量化のためのステム−ループ(Stem−loop) Real−time PCR
260〜300g程度の4週齢ラットに、siRNAを静脈内注射で投与して、時間別にラット血液を採取し、血漿を分離した。分離された血漿を0.25%triton X−100緩衝液に希釈させ、Taqman microRNA Reverse Transcription kit (Applied Biosystem, USA)でcDNAを合成した後、Real−time PCR方法で定量化し、siRNAを検出した。
【0080】
siRNAの動物実験
雌性ヌードマウスにHPV 18 typeのHeLa細胞株5×10
6を異種移植して、10日後に癌細胞が生成されたことを確認した後、使用されたsiRNAは、3mg/kgで2〜3日間隔で尻尾に静脈注射し、シスプラチン(2mg/kg)とパクリタキセル(4mg/kg)を3〜4日間隔で腹腔注射し、9回繰り返して注射して、2〜3日間隔で腫瘍の大きさを測定した。
【0081】
実験結果
siRNA処理濃度及び治療回数の変化
HPV 16、18番形態のウイルスに感染させたCaskiあるいはHeLa細胞株に、siRNAの形質導入と抗癌剤単独あるいは併用治療時、従来の技術では、長期間高濃度(100nM)で連続処理した場合にのみsiRNAの効能を確認することができたが、本発明の変形siRNAを利用する場合、短期間、低濃度(20nM以下)で1回処理しても優れた効能を奏した。
【0082】
残基置換されたsiRNA安定性評価
上述の方法で収得した組み合わせ51乃至組み合わせ54のsiRNAを10%ヒト血清と混ぜた後、37℃温度でそれぞれのsiRNAを時間別に取って、−70℃に保管した後、12%ポリアクリルアミドゲルに電気泳動し、Et−Brで染色後、UVで測定した。その結果、
図1aに示したように、塩基配列の残基置換のない組み合わせ51の場合、2時間以内にsiRNAがなくなるが、塩基配列の残基を置換させた組み合わせ52乃至54の場合、siRNAが4時間以上残存し、安定性が大きく増加されることを確認した。特に、組み合わせ54の場合、24時間が経っても残存する、最も優れた安定性を示した。
【0083】
残基置換されたsiRNAの分子水準での効果
上述の方法でHPV 18番形態のsiRNA組み合わせ44乃至組み合わせ50のsiRNAと対照群Mock、GFP siRNAをHeLa細胞株に形質導入して、TP53、E7タンパク質の変化量を確認し、アクチンをハウスキーピング遺伝子として使用した。
図1bに示したように、塩基配列の残基置換のない組み合わせ44と塩基配列の残基を置換させた組み合わせ45乃至組み合わせ50のTP53とE7のタンパク質変化量を比較した。この際、組み合わせ48において、TP53タンパク質発現の増加とE7タンパク質発現の減少は、他の配列に比べ、優れた効能を有することを確認した。
【0084】
また、HPV 16番形態のsiRNA 497の場合、上述の方法で組み合わせ12乃至組み合わせ15をCaski細胞株に形質導入した後、mRNAを抽出し、E6 mRNAとp21 mRNA発現量を確認した。その結果、
図1cにおいて、塩基配列の残基を置換させた組み合わせ13が対照群に比べE6 mRNAが60%以上減少し、p21 mRNAは、1100%以上増加することを確認した。塩基配列の残基置換のない組み合わせ12と比較しても、組み合わせ13が他の配列に比べ優れていることを確認した。
【0085】
残基置換されたsiRNAの細胞老化誘導効果
上述の方法で処理されたHeLa又はCaski細胞株のSA β−Gal活性を測定した。その結果、
図2aでは、既存発明に使用されたHPV 18E6/E7 siRNA群と450 siRNAの塩基配列残基置換のない組み合わせ51を形質導入した場合、対照群siRNAに比べ、10〜20倍程度増加されたSA β−Gal活性を示す反面、siRAN塩基配列を残基置換させた組み合わせ54では、50倍以上高いSA β−Gal活性を示している。これは、塩基配列を置換させた組み合わせ54が、塩基配列を置換させなかった組み合わせ51に比べ、細胞老化効果が著しく優れていることを示している。
【0086】
残基置換されたsiRNAの細胞死滅効果
上述の方法でフローサイトメトリーを使用して細胞死滅効果を測定した。HPV 18E6/E7, 18E6 siRNA群と塩基配列残基を置換させた組み合わせ48、組み合わせ54群を対照群と比較して細胞死滅効果を確認した結果、対照群に比べ、HPV 18E6/E7, 18E6 siRNA群は、15〜20%に過ぎない細胞死滅効果を示している反面、残基置換させたsiRNA群では、約60%以上の細胞死滅効果を示すことを確認した(
図2b)。これは、既存のsiRNAに比べ、塩基配列を置換させたsiRNA配列が、癌細胞死滅効果がさらに著しく増大されたことを示す。
【0087】
残基置換されたsiRNAとシスプラチンとの併用治療効果
上述の方法でHeLa細胞株にシスプラチンと塩基配列残基を置換させた組み合わせ48を処理して、SA β−Gal活性を測定した結果、
図3a及び
図3bに示されたように、シスプラチンと組み合わせ48をそれぞれ単独処理した細胞株においても細胞が青色に染色されてSA β−Galの活性を示すが、組み合わせ48とシスプラチンの併用処理群では、ほぼ全ての細胞が濃い青色に染色され、強いSA β−Galの活性を示している。このような結果は、siRNAとシスプラチンの単独治療群より併用治療群の細胞老化効果が著しく優れていることを示している。
【0088】
siRNA混合物の単独治療及び併用治療による細胞増殖抑制効果
上述の方法でHPV 16番Caski細胞株にHPV 16番形態の塩基配列を置換させたsiRNA組み合わせ2、組み合わせ9、及び組み合わせ13を単独群でそれぞれ20nMずつ処理し、組み合わせ2と組み合わせ9とを10nMずつ処理した混合群、組み合わせ2と組み合わせ13とを10nMずつ処理した混合群、組み合わせ9と組み合わせ13とを10nMずつ処理した混合群、組み合わせ9と組み合わせ13とを10nMずつ処理した混合群、そして組み合わせ2、組み合わせ9、組み合わせ13を7nMずつ処理した混合群を形質導入させた後、24時間後細胞数を測定した。その結果、
図4aに示されたように、塩基配列を置換させた各siRNA単独処理群とsiRNA混合物処理群において、類似した形態で細胞増殖が減少した。特に、siRNA三つの混合物処理群では、それぞれのsiRNAが7nMしか処理されていないにもかかわらず、効果は、単独でsiRNAを20nM処理した時と同じ効果を示している。
【0089】
本発明で使用されたsiRNA混合群の組み合わせは、下記の表3−1〜3−5に示し、これらの組み合わせのうち、特に高い細胞増殖抑制効果を有する組み合わせを2つ以上混合したsiRNA混合群(siRNA Pool)は、下記の表4に示した。
【0090】
【表3-1】
【0091】
【表3-2】
【0092】
【表3-3】
【0093】
【表3-4】
【0094】
【表3-5】
【0095】
【表4】
【0096】
上述の方法でHPV 18番HeLa細胞株にHPV 18番形態の塩基配列を置換させたsiRNA組み合わせ48番20nmと組み合わせ54番20nM処理と、siRNA組み合わせの混合群であるSP4(組み合わせ48(5nM)と組み合わせ54(5nM))を10nM処理した混合群を形質導入させた後、24時間後Annexin Vとプロピジウムイオダイドで染色させた後、フローサイトメトリーを使用して細胞の死滅効果を確認した。その結果、
図4bに示されたように、塩基配列が置換されたsiRNA単独処理群とsiRNA混合群(SP4)の両方とも細胞が80%以上死滅される効果を示した。この結果は、siRNA単独群を20nM処理した場合とsiRNA混合群で10nMずつ処理した場合、細胞死滅効果が類似であることから、siRNA混合群がさらに優れていることを確認することができる。
【0097】
siRNA混合物の単独治療及び併用治療による分子水準での効果
上述の方法でHPV 16番形態のCaski細胞株に塩基配列を置換させた組み合わせ2、9、13とシスプラチンの併用治療群、シスプラチン単独治療群、組み合わせ2と組み合わせ9の混合群とシスプラチンの併用治療群、組み合わせ2と組み合わせ13の混合群とシスプラチンの併用治療群、組み合わせ9と組み合わせ13の混合群とシスプラチンの併用治療群、混合群SP1(組み合わせ2、組み合わせ9及び組み合わせ13の混合群)とシスプラチンの併用治療群においてTP53タンパク質発現量を比較するために、ウェスタンブロット方法を使用した。その結果、
図4cに示されたように、siRNA混合群とシスプラチンとの併用治療群のうち、7nMの低い濃度で処理した混合群SP1においてTP53タンパク質発現量が最も多く増加した。
【0098】
これは、天然に存在するsiRNA混合群の特徴を模倣しながら有能で効率的なsiRNAのみを選択的に混合物として構成したため、既存の処理濃度より低い濃度で混合して使用することができ、off−target効果も減らすことができることを示す。
【0099】
siRNAのoff−target効果
上述の方法でHPV 18番形態のHeLa細胞株に陽性対照群β−gal siRNAと残基置換のない組み合わせ44と塩基配列残基を置換させた組み合わせ48を形質導入し、IL−6の免疫反応実験を行った。その結果、
図5aに示したように、陽性対照群と組み合わせ44では、IL−6の免疫反応が増加されたが、塩基配列の残基が置換された組み合わせ48では、IL−6免疫反応が陽性対照群の1/2水準に減少した。
【0100】
また、6週齢のマウスに免疫反応を誘発させるβ−gal siRNAとHPV 18番形態のsiRNA組み合わせ44と48を静脈注射して6時間反応した後、INF−gammaの免疫反応実験を行った(
図5b)。陽性対照群β−gal siRNAと組み合わせ44では、INF−gammaの水準が増加されて免疫反応が観察されたが、組み合わせ48では、INF−gammaが陰性対照群水準に増加されず、免疫反応が観察されなかった。
【0101】
これにより、残基を置換させたsiRNAの処理群が、残基を置換させなかったsiRNAに比べ、免疫反応が減少されることが分かった。
【0102】
残基置換されたsiRNAの薬物動態学実験
上述の方法でラットにHPV 18番形態のsiRNA組み合わせ44と組み合わせ48を静脈内注射で投与し、時間別に血液を採取して、血漿を分離し、stem−loop Real−time PCR方法でsiRNAを定量化した。その結果、
図6aに示したように、組み合わせ48が組み合わせ44より半減期が2倍以上長くあらわれて、これにより、体内で塩基配列の残基置換された組み合わせ48がさらに安定的であることが分かった。
【0103】
多様な形態のLiposomeにおけるsiRNA効果
上述の方法でHPV 18番形態のHeLa細胞株に商業的に販売されているDharmacon社のDharmafect、Invitrgen社のOligofectamineとLipofectamine 2000薬物伝達システムと本発明者らが製造した陽イオン性リポソームを使用し、siRNAを形質導入させて、24時間後細胞数を測定し、増殖抑制効果を確認した。その結果、
図7aに示したように、多様な薬物伝達システムで効果的にHPVに感染された細胞株にsiRNAを伝達させることができることを確認した。
【0104】
siRNA混合群と抗癌剤の併用治療効果
上述の方法でマウスに癌細胞を異種移植して、10日後に癌細胞が生成されたことを確認した後、siRNAと抗癌剤を9回繰り返して注射し、2〜3日間隔で腫瘍の大きさを測定した。その結果、
図8aに示したように、SP4(組み合わせ48と54混合群)と抗癌剤の併用治療群が、有意に組み合わせ44と51混合群と抗癌剤の併用治療群より優れた治療効果を示している。これは、塩基配列の残基が置換されたSP4が、塩基配列の残基置換のないsiRNA組み合わせ44と51の混合群より効能効果が優れていることを示す。また、
図8bのように、17日目シスプラチンとパクリタキセル抗癌剤投与群と、抗癌剤とSP4混合併用投与群のマウス腫瘍を比較してみると、その大きさと状態に非常に差があることを確認することができた。そして、
図8cに示したように、薬物投与後9日目と28日目にマウス重量の変化量を観察した結果、毒性による重量減少が現れなかった。これにより、siRNAの毒性による副作用がないことを確認することができた。
【0105】
以上、本発明の望ましい具現例を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述はただ望ましい具現例に過ぎなく、これに本発明の範囲が限定されないことは明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物により定義されると言える。