【解決手段】アミノ酸配列−Arg−Ser−Cit−Gly−Hof−Tyr−Leu−を含むマトリックスメタロプロテイナーゼ切断部位を含むペプチドYと結合した、パクリタキセルに類似した方式で安定な微小管の形成を促進する化合物を含む、腫瘍組織に特異的に標的化され、または腫瘍組織において選択的に活性化され、それによって活性薬物の全身レベルが低下し、治療係数が上昇するプロドラッグ。化合物Xがタキサン特にパクリタキセルであることが好ましい化合物。
アミノ酸配列−Arg−Ser−Cit−Gly−Hof−Tyr−Leu−を含むマトリックスメタロプロテイナーゼ切断部位を含むペプチドYと結合した、パクリタキセルに類似した方式で安定な微小管の形成を促進する化合物Xを含む、化合物又はその医薬として許容される塩。
パクリタキセルに類似した方式で安定な微小管の形成を促進する化合物XがペプチドYに直接的又は間接的に結合している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬として許容される塩。
MMPタンパク質切断部位がMMP−14及び/又はMMP−15タンパク質切断部位である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬として許容される塩。
キャップ形成基cが単糖、D−アミノ酸、プロリンイミノ酸、フルオレセイン、又はフルオレセインイソチオシアナート(FITC)のようなフルオレセイン誘導体から選択される、請求項9又は10に記載の化合物又はその医薬として許容される塩。
前記スペーサーがβ−アラニンのような単一アミノ酸、アミノ酸配列、又はスクシニル基から選択される、請求項12又は13に記載の化合物又はその医薬として許容される塩。
アミノ酸配列−Arg−Ser−Cit−Gly−Hof−Tyr−Leu−を含むMMPタンパク質切断部位を含むペプチドにリンカーを介して結合したパクリタキセルを含む、化合物又はその医薬として許容される塩。
請求項1〜16のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬として許容される塩と、少なくとも一つの医薬として許容される賦形剤、希釈液、又は担体を含有する医薬製剤。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、MMPタンパク質切断部位と結合している血管破壊剤(VDA)を含む化合物またはその医薬として許容される塩を提供する。本発明の文脈における「と結合している」という用語は、化学的架橋またはペプチド結合が含まれるがこれらに限定されない結合、一般に共有結合の直接的および間接的手段をすべて包含するよう意図されている。
【0007】
医薬として許容される塩としては、以下の酸:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸などから調製されたものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、医薬として許容される塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、またはカルシウム塩などのアルカリ金属塩またはアルカリ土類塩として調製することもできる。
【0008】
好ましい態様において、本発明は、式(I)の化合物
X−Y (I)
[式中、
Xは血管破壊剤(VDA)であり、
Yはマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)タンパク質切断部位である]
を提供する。
【0009】
本発明による化合物は、過剰発現したMMPによって腫瘍環境内において活性でかつ強力なVDAに変換されるプロドラッグを提供する。本発明のプロドラッグの腫瘍選択的活性化は、VDAおよび場合によっては追加の活性成分の腫瘍レベルを上昇させ、かつ全身レベルを低下させ、それによってそれらの治療係数および有効性が大幅に上昇する。
【0010】
VDAは、多環系、例えば縮合または非縮合した二環式または三環式環系を含む。したがって、Xは、腫瘍血管に結合し、破壊することができる任意の多環系のVDAを含む。
【0011】
VDAは、チューブリン、およびしたがって細胞内微小管と直接に相互作用し、細胞静止作用または細胞毒性作用をもたらす化合物である。VDAは、3つのクラスに分けることができる。
(i)チューブリン上のコルヒチン結合部位においてチューブリンと相互作用するそれらの化合物;
(ii)ニチニチソウ(Catharanthus)(ビンカ(Vinca))アルカロイドとチューブリン上の共通結合部位を共有するそれらの化合物;
(iii)パシフィックユー(Pacific yew)の樹皮から単離された新規タキサンジテルペノイドであるパクリタキセルに類似している方式で安定な微小管の形成を促進する化合物。
【0012】
したがって、本発明の好ましい態様において、VDAはチューブリン結合剤である。チューブリン結合剤は、i)コルヒチン結合部位においてチューブリンと相互作用するもの(コルヒチン(N−アセチルコルヒノール−O−ホスファート(ZD6126)およびABT−751などのコルヒチン類似体を含む)、コルヒチノイド、コンブレタスタチン、フェンスタチン、ポドフィロトキシン、ステガナシン、アンフェチニル、およびスチルベンが挙げられるが、これらに限定されるものではない)と、ii)チューブリンのビンカ(Vinca)結合部位と相互作用するもの(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンフルニン、マイタンシノイド、ホモプシンA(Phomopson A)、リゾキシン、アウリスタチン(その類似体を含む)、およびドラスタチンが挙げられるが、これらに限定されるものではない)とからなる群から選択することができる。
【0013】
本発明のさらに好ましい態様において、VDAは、チューブリン内においてコルヒチン結合部位と相互作用するチューブリン結合剤である。
【0014】
コルヒチン誘導体としては、アザデメチルコルヒチン、アザコルヒチン、N−メチルデスアセチルコルヒチン、デスアセチルコルヒチンを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
VDAとしては、コンブレタスタチン(例えば、コンブレタスタチンA−4 3−O−ホスファート)、アウリスタチン(その類似体を含む)、ドラスタチン;およびフラベノイド(例えば、腫瘍壊死因子αおよび5,6−ジメチルキサンテノン−4−酢酸(DMXAA)、フラボン酢酸(FAA))を含めて、チューブリン結合剤を挙げることができる。したがって、本発明の代替実施形態において、VDAはコンブレタスタチンである。
【0016】
本発明は、MMPファミリーのいずれかのメンバーを含む。MMPによるMMP切断部位におけるタンパク質切断によって、MMP切断部位と結合しているVDAおよび他の何らかの活性剤が活性型で放出される。
【0017】
MMPファミリーは、8つの構造群に分けられる。そのうち5群は分泌型MMPであり、3群は膜型MMP(MT−MMP)である。MT−MMPは細胞表面に局在している。本発明には、分泌型MMPおよび膜型MMPが含まれる。
【0018】
本発明の好ましい態様において、MMPは膜型(MT−MMP)である。MT−MMPは、
(i)I型の膜貫通型MT−MMP、例えばMMP−14(MT1−MMP)、MMP−15(MT2−MMP)、MMP−16(MT3−MMP)、およびMMP−24(MT5−MMP)と、
(ii)グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型構造群のMT−MMP、例えばMMP−17(MT4−MMP)およびMMP−25(MT6−MMP)と、
(iii)II型の膜貫通型クラス、例えばMMP−23と
からなる群から選択することができる。
【0019】
本発明は、その後にこれらのMT−MMPサブファミリーの1つに同定および分類されるいずれのMMPプロテアーゼも包含する。
【0020】
MMP切断部位は、MMPによって切断可能なアミド結合、典型的にはペプチド結合を有するいずれのペプチド配列を含んでもよい。好ましくは、Yは、2個〜20個のアミノ酸、例えば4個〜10個のアミノ酸(例えば、7個または8個のアミノ酸)を含むペプチド配列である。ペプチド配列のアミノ酸としては、任意の天然または合成のD−またはL−アミノ酸、好ましくはL−アミノ酸、またはD−アミノ酸とL−アミノ酸の組合せを挙げることができる。
【0021】
本発明は、例えば、アミド結合がオレフィン性結合で置換されているペプチド配列のペプチド類似体、例えばペプチド模倣物、Nα−およびCα−メチル化アミノ酸、非天然アミノ酸、ならびに当技術分野で知られている他のアプローチも含む。当技術分野では、このようなペプチド模倣物アプローチを使用して、切断の特異性を高め、それによって望ましくない酵素加水分解を減少させるように働く。
【0022】
本発明の好ましい実施形態において、MMPタンパク質切断部位は、一続きのアミノ酸(例えば、6個〜10個のアミノ酸)を含み、配列中の1種または複数のアミノ酸、すなわちセリン、トレオニン、および/またはチロシンをグリコシル化して、親水性、およびしたがって溶解性を高める。配列中の適当なアミノ酸、すなわちセリン、トレオニン、およびチロシンのO−グリコシル化によって、親水性、およびしたがって溶解性を高めることができる。好ましくは、MMPタンパク質切断部位は8個のアミノ酸を含む。
【0023】
MMPタンパク質切断部位は、配列
P4−P3−P2−P1−P1’−P2’−P3’−P4’
を含んでもよく、
式中、P1〜P4およびP1’〜P4’は同じでも異なっていてもよいが、アミノ酸残基であり、タンパク質切断はP1とP1’の残基間で起こる。好ましくは、P1とP1’は異なる。好ましくは、さらにP1〜P4は異なる。好ましくは、P1’〜P4’は異なる。
【0024】
一実施形態において、P1はGlyであり、および/またはP1’はHofである。
【0025】
MMPタンパク質切断部位は、アミノ酸配列(i)を含んでもよい。
−Cit−Gly−Hof−Tyr−Leu− (i)
【0026】
本発明の実施形態において、MMPタンパク質切断部位は、アミノ酸配列(ii)
−K−K−Cit−Gly−Hof−Tyr−Leu− (ii)
を含み、
式中、Kは、Cit、Gly、Glu、およびPro(ただし、これらに限定されない)からなる群から選択することができるアミノ酸を表す。
【0027】
本発明の実施形態において、MMPタンパク質切断部位は、アミノ酸配列(iii)を含む。
−Glu−Pro−Cit−Gly−Hof−Tyr−Leu− (iii)
【0028】
好ましい実施形態において、MMPタンパク質切断部位は、アミノ酸配列(iv)を含む。
−Arg−Ser−Cit−Gly−Hof−Tyr−Leu− (iv)
【0029】
本発明の実施形態は、式(I)の化合物を含み、式中、YはC末端部位およびN末端部位を含み、前記C末端部位は、Xに直接的または間接的に結合しており、前記N末端部位は、別の部分、例えば以下に記載するcまたはZに直接的または間接的に結合している。
【0030】
本発明の代替実施形態は、式(I)の化合物を含み、式中、YはC末端部位およびN末端部位を含み、前記N末端部位は、Xに直接的または間接的に結合しており、前記C末端部位は、別の部分、例えば以下に記載するcまたはZに直接的または間接的に結合している。
【0031】
本発明の好ましい一実施形態において、式(I)の化合物[式中、Xはコルヒチンまたはその類似体であり、Yは、アミノ酸配列−Arg−Ser−Cit−Gly−Hof−Tyr−Leu−を含むペプチドである]を提供する。
【0032】
好ましい態様において、本発明は、式(II)の化合物
X−Y−c (II)
[式中、XおよびYは本明細書に定義する通りであり、
cは末端基または「キャップ形成基」である]を提供する。例えば、MMP以外の酵素によるペプチドの非特異的分解を防止するために、キャップ形成基を使用して、医薬用途でペプチド鎖をキャップすることができる。cは、単糖、D−アミノ酸、プロリンイミノ酸、またはフルオレセイン誘導体(ただし、これらに限定されない)を含めて、ブロック基として働くN末端またはC末端上の任意の適切な部分を含むことができる。
【0033】
本発明は、さらに「リンカー」を提供することができる。リンカーは、YのC末端および/またはN末端に設けられていてもよい。好ましくは、リンカーは、YのC末端に設けられている。好ましくは、リンカーは、Yのアミノ酸配列と連続している。リンカーは、Yと結合している任意の部分を含むことができ、化学的、酵素的に除去し、または同時に分解することができる。リンカーは、単一アミノ酸(例えば、チロシン)からなることができ、またはアミノ酸配列を含むことができる。リンカーが一続きのアミノ酸を含む場合、配列は、YにおけるMMPによる切断を容易にすることができる親水性領域を提供することができる。配列中の適当なアミノ酸、すなわちセリン、トレオニン、およびチロシンのO−グリコシル化によって、親水性、およびしたがって溶解性を高めることができる。
【0034】
したがって、本発明の好ましい態様において、式(III)の化合物
X−a−Y (III)
[式中、XおよびYは本明細書に定義する通りであり、
aはリンカーであり、リンカーは、Xと直接的または間接的に結合している]を提供する。
【0035】
実施形態において、本発明は、式(IV)の化合物
X−a−Y−c (IV)
[式中、X、a、Y、およびcは本明細書に定義する通りである]を提供する。
【0036】
本発明のさらに別の好ましい態様において、本明細書に記載するリンカーと同じでも異なっていてもよい「スペーサ」を提供する。スペーサは、YのC末端および/またはN末端に設けられてもよい。好ましくは、スペーサは、YのN末端に設けられ、合成時にcの望ましくない除去を防止するように働く。スペーサは、Yと直接的または間接的に結合してもよい。スペーサとしては、いずれの単一アミノ酸(例えば、β−アラニン)、アミノ酸配列、スクシニル基を挙げることができる。したがって、本発明は、好ましくは式(V)の化合物
X−Y−b−c (V)
[式中、X、Y、およびcは本明細書に定義する通りであり、
bは、本明細書に定義するスペーサである]を提供する。
【0037】
別の実施形態において、本発明は、式(VI)の化合物
X−a−Y−b−c (VI)
[式中、X、Y、a、b、およびcは本明細書に定義する通りである]を提供する。
【0038】
本発明の一実施形態において、式(VI)の化合物[式中、Xはコルヒチン(またはその類似体)であり、Yは、アミノ酸配列−Arg−Ser−Cit−Gly−Hof−Tyr−Leu−を含むペプチドであり、aはチロシンであり、bはアラニンであり、cはフルオレセインまたはその誘導体である]を提供する。
【0039】
本発明の第2の態様において、式(VII)の化合物、またはその医薬として許容される塩
X−Y−Z (VII)
[式中、XおよびYは本明細書に定義する通りであり、Zは抗癌剤である]を提供する。
【0040】
好ましくは、Zは、血管破壊剤(好ましくは、Xと異なる)、代謝拮抗物質(例えば、5−フルオロウラシル)、細胞毒性または抗増殖性剤(例えば、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン)、ビンカアルカロイド、タキサン、細胞毒性ヌクレオチド)、生体毒素・放射線治療・ホルモン剤、または細胞毒性、細胞静止、抗血管新生、もしくは血管破壊作用を誘導することが知られている任意の天然物もしくは物質からなる群から選択された抗癌剤である。
【0041】
本発明の好ましい態様において、式(VIII)の化合物
X−a−Y−Z (VIII)
[式中、X、a、Y、およびZは本明細書に定義する通りである]を提供する。
【0042】
本発明のさらに好ましい態様において、式(IX)の化合物
X−a−Y−b−Z (IX)
[式中、X、a、Y、b、およびZは本明細書に定義する通りである]を提供する。本発明のこの態様において、スペーサbの目的は、YのN末端アミンをカルボン酸に変換して、化合物Z(式中、Zは遊離アミンを有する(例えば、式中、Zはドキソルビシンである))の結合を可能にすることである。Zが遊離カルボン酸を有する場合、bは必要でない。
【0043】
本発明の好ましい一実施形態において、式(VII)の化合物[式中、Xはコルヒチン(またはその類似体)であり、Zはドキソルビシンである]を提供する。好ましくは、さらにYは、アミノ酸配列−Arg−Ser−Cit−Gly−Hof−Tyr−Leu−を含むペプチドである。
【0044】
保護範囲には、実際にこのような化合物を含有しているかどうかにかかわりなく、かつ任意のこのような化合物が治療上有効量で含まれているかどうかにかかわりなく、本発明の化合物を含有するまたは含有すると称している偽のまたは不正な製品が含まれる。
【0045】
保護範囲には、パッケージが本発明の種または医薬製剤、およびこのような製剤または種である、もしくはそれを含む、またはそれであるもしくはそれを含むと称する製品を含むということを示す説明書または指示書を含むパッケージが含まれる。このようなパッケージは、必ずしも偽または不正ではないが、偽または不正である可能性がある。
【0046】
本発明の別の態様は、本発明による化合物を調製する方法であって、
i)Xに結合している固体支持体を準備するステップと、
ii)場合によっては、リンカーaをXのC末端またはN末端に結合させるステップと、
iii)アミノ酸残基を段階的にXのC末端もしくはN末端、または(ii)でXに結合させたリンカーに結合させて、MMPタンパク質切断配列を含むペプチド配列Yをもたらすステップと、
iii)場合によってはキャップ形成基cをYのそれぞれのC末端またはN末端に結合させて、式(II)または(IV)の化合物をもたらすステップと
を含む方法を提供する。
【0047】
好ましい方法では、固体支持体は、任意のポリスチレン系またはPEG系樹脂などの任意のポリマー支持体、例えばトリチル系樹脂である。
【0048】
別の態様において、本発明は、VDAの部位特異的活性化におけるMMPタンパク質切断部位の使用を提供する。本明細書では「部位特異的活性化」という用語は、概括的にMMPタンパク質切断部位における部位特異的切断によるVDAの活性化を意味し、これに限定されない。タンパク質切断部位における部位特異的切断は、VDAの遊離、したがって活性化と同時に起こるものと予想される。
【0049】
医薬組成物および使用
他の態様において、本発明は、医薬品で使用するための本明細書に上述した化合物、またはその医薬として許容される塩を提供する。別の態様において、本明細書に上述した化合物を含む医薬製剤を提供する。製剤は、少なくとも1種の追加の医薬として許容される成分、例えば賦形剤、希釈液、または担体を含有することができる。好ましくは、製剤は、非経口投与用である。
【0050】
本発明は、本発明による化合物を含む医薬製剤を提供する。好ましい実施形態において、化合物は、式(VII)を有する。
【0051】
本発明の好ましい態様において、前記組成物は、医薬として許容される担体または希釈液を含む。
【0052】
本発明の組成物は、典型的には有効量で投与される。「有効量」は、単独でまたは別の用量と共に、所望の応答をもたらす組成物のその量である。投与するとき、本発明の医薬組成物は、医薬として許容される製剤として投与される。このような調製物は、医薬として許容される濃度の塩、緩衝剤、保存剤、相溶性担体、および場合によっては他の治療剤(例えば、シスプラチン;カルボプラチン;シクロホスファミド(cyclosphosphamide);メルファラン;カルムスチン(carmusline);メトトレキサート;5−フルオロウラシル;シタラビン;メルカプトプリン;ダウノルビシン;ドキソルビシン;エピルビシン;ビンブラスチン;ビンクリスチン;ダクチノマイシン;マイトマイシンC;タキソール;L−アスパラギナーゼ;G−CSF;エトポシド;コルヒチン;デルフェロキサミンメシル酸塩;およびカンプトテシン)をルーチンで含有することができる。
【0053】
本発明の組成物は、注射を含めて任意の通常経路、または経時的漸次注入で投与することができる。投与は、例えば経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、腔内、皮下、または経皮とすることができる。癌など特定の疾患を治療する場合は、所望の応答は、疾患の進行を抑制することである。これは、疾患の進行を永久に停止するものであることがより好ましいが、疾患の進行を一時的に遅らせるものでしかない場合がある。これは、当技術分野で知られているルーチンの方法で監視することができる。
【0054】
組成物を(例えば、試験目的または動物治療目的で)ヒト以外の哺乳類に投与することは、上述した条件と実質的に同じ条件下で実施される。対象は、本明細書では哺乳類、好ましくはヒトであり、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、またはげっ歯類が含まれる。
【0055】
投与するとき、本発明の医薬調製品は、医薬として許容される量で、医薬として許容される組成物で適用される。「医薬として許容される」という用語は、活性成分の生物活性の有効性に干渉しない非毒性材料を意味する。
【0056】
医薬組成物は、望むなら医薬として許容される担体と組み合わせてもよい。本明細書では「医薬として許容される担体」という用語は、ヒトへの投与に適している1種または複数の固体もしくは液体相溶性充填剤、希釈液、またはカプセル化物質を意味する。「担体」という用語は、活性成分と組み合わせて適用を容易にする天然または合成の有機または無機材料を意味する。
【0057】
医薬組成物は、塩形態の酢酸;塩形態のクエン酸;塩形態のホウ酸;および塩形態のリン酸を含めて、適当な緩衝剤を含有することができる。医薬組成物は、塩化ベンザルコニウム;クロロブタノール;パラベン、およびチメロサールなど適当な保存剤を場合によっては含有することもできる。経口投与に適した組成物は、カプセル剤、錠剤、ロゼンジ剤などそれぞれ所定量の活性化合物を含有する別個の単位として提供することができる。他の組成物としては、シロップ剤、エリキシル剤、または乳剤など水性液体または非水性液体中の懸濁液が挙げられる。
【0058】
好都合なことに、非経口投与に適した組成物は、好ましくはレシピエントの血液と等張である化合物の水性または非水性無菌調製物を含む。この調製物は、知られている方法に従って適当な分散化剤または湿潤剤、および懸濁化剤を使用して製剤することができる。注射可能な無菌調製物は、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液として、非経口的に許容できる非毒性希釈液または溶媒中の注射可能な無菌溶液または懸濁液とすることもできる。使用することができる許容できるビヒクルおよび溶媒の中で、水、リンゲル液、および等張食塩水が有用である。さらに、通常は無菌の不揮発性油が溶媒または懸濁化媒体として使用される。このために、合成モノまたはジグリセリドを含めて、任意の無刺激不揮発性油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を注射剤の調製で使用することができる。経口、皮下、静脈内、筋肉内投与などに適した担体製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PAで見ることができる。
【0059】
本発明の態様において、本発明による化合物を使用して、MMPを発現する組織に関連した疾患または病態、特に癌を治療することができる。
【0060】
本発明は、有効量の本発明による化合物を投与することを含む、対象における癌を治療する方法を提供する。本発明の好ましい方法では、前記対象はヒトである。
【0061】
本明細書では、「癌」という用語は、自律的増殖の能力を有する細胞、すなわち急速増殖性の細胞増殖を特徴とする異常状態または病態を指す。この用語は、病理組織学的タイプまたは侵襲性の段階にかかわりなく、すべてのタイプの癌性増殖もしくは腫瘍形成過程、転移性組織、または悪性形質転換細胞、組織もしくは臓器を包含するものである。「癌」という用語は、上皮、内皮、および間葉系由来の悪性腫瘍、特に癌および肉腫、具体的には呼吸器系(口、鼻、気管、肺)、胃腸管(舌、食道、胃、小腸、結腸、肝臓、膵臓、胆嚢、直腸)、内分泌系(甲状腺、下垂体、副腎)、生殖−尿路(膀胱、腎臓)、生殖系(乳房、卵巣、子宮、子宮頚部、前立腺、陰茎、陰嚢、精巣)、皮膚(メラノサイト、表皮、内皮)、神経系(脳、脊髄、グリア細胞、ニューロン)、およびリンパ系に影響を及ぼすものを包含する。
【0062】
「癌」という用語は、当技術分野で認識されており、呼吸器系癌、胃腸系癌、内分泌系癌、生殖−尿路癌、皮膚癌、および生殖系癌を含めて、上皮由来の悪性腫瘍を指す。「癌」という用語は、腺組織に由来する癌を指す「腺癌」、扁平上皮由来の癌を指す「扁平上皮癌」、ならびに癌性および肉腫性組織から構成された腫瘍を指す「癌肉腫」も包含する。例示的な癌としては、子宮頚部、前立腺、乳房、鼻、頭頚部、口腔、食道、胃、肝臓、膵臓、結腸、卵巣、膀胱、および肺の上皮から形成するもの、特に非小肺癌が挙げられる。
【0063】
「肉腫」という用語は、当技術分野で認識されており、骨、軟骨、脂肪組織、平滑筋、骨格筋、神経鞘、血管、中皮、および胃腸間質を含めて、軟部組織または結合もしくは支持組織の悪性腫瘍を指す。別のタイプの癌としては、白血球に由来する腫瘍を指す「白血病」およびリンパ系の腫瘍を指す「悪性リンパ腫」が挙げられる。
【0064】
本発明による化合物を含む医薬製剤は、代謝拮抗物質(例えば、5−フルオロウラシル)、細胞毒性または抗増殖性剤(例えば、アントラサイクリン、ビンカアルカロイド、タキサン、細胞毒性ヌクレオチド)、生体毒素、放射線治療薬、ホルモン剤、または細胞毒性、細胞静止、抗血管新生、もしくは血管破壊作用を誘導することが知られている任意の天然物または物質が含まれるがこれらに限定されない抗癌剤として、組み合わせて、順次に、または実質的に同様な時間に投与することができる。
【0065】
本明細書では、「治療」は、治療される個体または細胞の自然経過を変更しようとする臨床的介入を指し、予防のため、または臨床病理の過程において行うことができる。
【0066】
別の態様において、本発明は、癌を治療するための医薬品の製造において本発明による化合物の使用を提供する。
【0067】
本発明の一態様において、本発明の化合物または組成物を使用して、炎症性障害および/または炎症応答を治療することができる。したがって、本発明の別の態様によれば、有効量の本発明による化合物を投与することを含む、対象における炎症性障害を治療する方法を提供する。
【0068】
炎症性障害は、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、骨関節炎、痛風、紅斑性狼瘡、強皮症、シェーグレン症候群、多発性筋炎および皮膚筋炎、血管炎、腱炎、滑膜炎、細菌性心内膜炎、歯周炎、骨髄炎、乾癬、肺炎、線維化性肺胞炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺気腫、珪肺症、塵肺症、結核、潰瘍性大腸炎、クローン病、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群および重症筋無力症、乳腺炎、蹄葉炎、喉頭炎、慢性胆嚢炎、橋本甲状腺炎、および炎症性乳房疾患からなる群から選択することができる。一実施形態において、炎症性障害は、移植後の組織または器官拒絶反応の結果とすることができる。特定の実施形態において、炎症性障害は、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、骨関節炎、敗血症、および多発性関節炎からなる群から選択される。
【0069】
本発明の化合物を使用して、心不全を治療することができる。また、心不全を治療するための医薬品を製造するための本明細書に記載された化合物の使用も提供される。
【0070】
本発明の一実施形態において、本発明の化合物は、創傷(例えば、潰瘍、皮膚切傷または熱傷を含めて病変)を治療するのに有用である場合がある。したがって、本発明は、有効量の本発明による化合物を投与することを含む、対象における創傷を治療する方法を提供する。本発明の好ましい方法では、前記対象はヒトである。
【0071】
本発明の化合物を使用して、月経を伴う病態および障害を治療することもできる。
【0072】
さらに、
(1)本明細書に記載する化合物または組成物と、
(2)化合物を本明細書に記載する方法または使用において使用するための指示書と
を共に含む、パーツのパッケージまたはキットを提供する。
【0073】
本明細書で定義するパッケージは、反復投与を行うために1つより多い投与単位を含んでもよい。1つより多い投与単位が存在する場合、このような単位は、化合物組成物の用量および/または物理的形態の点から同じでも異なっていてもよい。
【0074】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」および「含む(contain)」という言葉、ならびにその言葉の変形、例えば「含んでいる(comprising)」および「含む(comprises)」は、「〜を含むが、これらに限定されるものではない」を意味し、他の部分、添加剤、成分、整数、またはステップを排除するものではない(かつ排除しない)。
【0075】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、単数には、文脈上からそうでないことが必要でない限り、複数が含まれる。特に、不定冠詞が使用される場合、本明細書は、文脈上からそうでないことが必要でない限り、複数および単数が考慮されていると理解されたい。
【0076】
本発明の特定の態様、実施形態、または実施例に関連して記載する特徴、整数、特性、化合物、化学部分または基は、本明細書に記載する他のいかなる態様、実施形態、または実施例と不適合でない限り、それらに適用可能であると理解されたい。
【0077】
次に、以下の図を参照して、本発明を単に例として説明する。
【実施例】
【0079】
材料および方法
固定化コルヒチン誘導体の合成
【化1】
【0080】
1の合成:
アンモニア溶液(35%、15mL)をコルヒチン(750mg、1.88mmol、1.00当量)に添加し、反応混合物を室温で終夜撹拌した。粗生成物をKHSO
4(1M、水溶液)で洗浄し、MgSO
4で乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。続いて、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離:CH
2Cl
2/メタノール 95:5→10:1)で精製して、黄色固体の1(427mg、1.11mmol、59%)を得た。
δ
H (600 MHz, CDCl
3), 7.99 (1 H, broad s, NH), 7.56 (1 H, d, J 2.1, C8-H), 7.32 (1H, d, J 10.7, C11-H), 6.88 (1 H, d, J 11.0, C10-H), 6.52 (1 H, s, C4-H), 6.03 (2 H, broad s, NH
2), 4.68 (1 H, ddd, J 12.6, 6.5 and 6.5, C7-H), 3.93 (3 H, s, OCH
3), 3.88 (3 H, s, OCH
3), 3.60 (3 H, s, OCH
3), 2.47 (1 H, dd, J 13.4 and 6.2, C5-CH
2), 2.35 (1 H, ddd, J 13.4, 12.7 and 6.9, C5-CH
2), 2.29-2.23 (1 H, m, C6-CH
2), 1.98 (3 H, s, CH
3), 1.90-1.88 (1 H, m, C6-CH
2); ES m/z (%) 385 [M
++ H] (100)
【0081】
2の合成:
HCTU(642mg、1.55mmol、1.50当量)およびジイソプロピルエチルアミン(DiPEA、516μL、404mg、3.11mmol、3.00当量)を、Fmoc−tyr(tBu)−OH(714mg、1.55mmol、1.50当量)のDMF(10mL)溶液に添加した。室温で5分間撹拌した後、1(398mg、1.04mmol、1.00当量)を溶液に添加した。反応混合物を50℃で22時間撹拌した。DMFを真空で除去し、得られた油をCH
2Cl
2(20mL)に溶解した。有機相をKHSO
4(水溶液、2回×20mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離:CH
2Cl
2/メタノール 100:0→99:1→98:2)で精製して、黄色固体の2(530mg、642μmol、67%)を得た。
δ
H (600 MHz, CDCl
3), 10.42 (1 H, broad s, NH), 9.02 (1 H, d J 10.7, C11-H), 7.75 (2 H, d, J 7.2, C23-H, C24-H), 7.54 (2 H, d, J 7.2, C20-H, C27-H), 7.45 (1 H, d, J 11.0, C10-H), 7.39 (2 H, dd, J 7.2 and 7.2, C22-H, C25-H), 7.29 (2 H, dd, J 6.6 and 6.6, C21-H, C26-H), 7.19 ( 1 H, broad s, C8-H), 7.03 (2 H, d, J 7.9, C14-H, C17-H), 6.81 (2 H, d, J 7.9, C15-H, C16-H), 6.50 (1 H, s, C4-H), 5.88 (1 H, broad s, NH), 5.25 (1 H, broad s, C12-H), 4.73-4.67 (1 H, m, C7-H), 4.43 (1 H, dd, J 10.0 and 7.6, C18-CH
2), 4.28 (1 H, dd, J 10.0 and 7.2, C18-CH
2), 4.16 (1 H, dd, J 7.2 and 6.19, C19-H), 3.93 (3 H, s, OCH
3), 3.88 (3 H, s, OCH
3), 3.62 (3 H, s, OCH
3), 3.21 (1 H, dd, J 13.1 and 4.8, C13-CH
2), 3.11 (1 H, dd, J 13.1 and 5.5, C13-CH
2), 2.53 (1 H, dd, J 13.4 and 6.2, C5-CH
2), 2.40 (1 H, ddd, J 13.4, 12.7 and 6.9, C5-CH
2), 2.22-2.15 (1 H, m, C6-CH
2), 1.88 (3 H, s, CH
3), 1.80 (1 H, ddd, J 11.5, 11.3 and 6.9, C6-CH
2), 1.22 (9 H, s, C(CH
3)
3); ES m/z (%) 826 [ M
+] (100)
【0082】
3の合成:
2の溶液(486mg、589μmol、1.00当量)にTFA(2mL)を添加し、反応混合物を20分間撹拌した。TLCは、生成物への定量的変換を示した。生成物をトルエンと同時蒸発させ、減圧濃縮して、定量的収率で3を得た。
δ
H (600 MHz, CDCl
3), 10.08 (1 H, broad s, NH), 8.99 (1 H, d J 10.7, C11-H), 7.71 (2 H, d, J 6.2, C23-H, C24-H), 7.55 ( 1 H, s, C8-H), 7.49 (2 H, dd, J 6.5 and 6.5, C20-H, C27-H), 7.41 (1 H, d, J 10.2, C10-H), 7.33 (2 H, dd, J 6.2 and 6.2, C22-H, C25-H), 7.26-7.21 (2 H, m, C21-H, C26-H), 6.91 (2 H, d, J 8.3, C14-H, C17-H), 6.56 (2 H, d, J 7.2, C15-H, C16-H), 6.45 (1 H, s, C4-H), 5.93 (1 H, broad s, NH), 5.28 (1 H, s, NH), 4.95-4.90 (1 H, m, C12-H), 4.60 (1 H, ddd, J 11.7, 5.8 and 6.9, C7-H), 4.39 (1 H, dd, J 8.9 and 8.6, C18-CH
2), 4.29-4.24 (1 H, m, C18-CH
2), 4.12 (1 H, dd, J 6.9 and 6.9, C19-H), 3.90 (3 H, s, OCH
3), 3.84 (3 H, s, OCH
3), 3.54 (3 H, s, OCH
3), 3.08 (2 H, d, J 5.2, C13-CH
2), 2.44 (1 H, dd, J 13.4 and 6.2, C5-CH
2), 2.33-2.26 (1 H, m, C5-CH
2), 2.15-2.09 (1 H, m, C6-CH
2), 1.82 (3 H, s, CH
3), 1.75-1.69 (1 H, m, C6-CH
2); ES m/z (%) 770 [M
+] (100)
【0083】
4の調製:
2−クロロトリチルクロリド樹脂(Novabiochem、100〜200メッシュ、置換1.4mmolg
−1、589mg、0.765mmol、1.00当量)を、3(589mg、0.765mmol、1.00当量)、ジメチルアミノピリジン(10mg、76.5μmol、0.01当量)、DiPEA(247mg、1.913mmol、333μL、2.50当量)、およびピリジン(241mg、3.061mmol、248μL、4.00当量)のTHF(10mL)溶液に懸濁し、50℃で6時間撹拌した。続いて、樹脂を濾過し、THFで完全に洗浄した。次いで、樹脂をメタノール(CH
2Cl
2:MeOH:DiPEA 17:2:1、100mL)で十分洗浄することによって、樹脂をキャップした。樹脂4をP
2O
5で終夜乾燥した。乾燥樹脂重量:593mg(負荷率56%)。
【0084】
エンドペプチダーゼ活性化プロドラッグの合成の一般手順
【化2】
【0085】
例として、Fmoc系ストラテジーを用いて、固定化コルヒチン誘導体4から、通常の固相ペプチド合成法を使用してペプチドコンジュゲート5を合成した。
【0086】
2−クロロトリチル誘導体化樹脂4を使用して、ペプチド酸のN
α−Fmocストラテジー合成を手動で実現した。樹脂を、DMF中で完全に膨潤させ、続いてDMF中20%(v/v)ピペリジン(3回×3分)で処理することによって、N−Fmoc保護基を除去した。N
α−Fmocで保護された2.5倍モル過剰のアミノ酸(適切な側鎖保護基を有する)を使用して、すべてのカップリングをDMF中で行い、HCTU/HOBt/DiPEAを使用して活性化した。DMF中20%ピペリジン(3回×3分)を使用して、N
α−Fmoc脱保護を行った。ニンヒドリンをベースにしたカイザー試験を使用して、カップリングおよび脱保護の成功を監視した。不成功のカップリングを繰り返した。最終のN
α−Fmoc脱保護を行った後、ペプチド鎖をフルオレセインイソチオシアナート(2.50当量、DiPEAの存在下で1.50当量)でエンドキャップした。この反応の成功もカイザー試験で監視した。
【0087】
追加のβ−アラニン残基を配列に組み込んで、チオ尿素結合と酸性の切断条件との非適合性を克服した(チオ尿素は転位することができ、直前のアミド結合のカルボニル炭素はこうして形成されたスルフヒドリル様官能基による求核攻撃を受ける可能性がある。これによって、アミド結合が切断され、同時に環状チアゾリノンが形成される。チアゾリノンは、酸水溶液の存在下で転位を受けて、チオヒダントインを形成することができる)。
【0088】
配列が完了すると、樹脂を洗浄し(DMF、CH
2Cl
2、CH
2Cl
2/MeOH)、KOHで恒量になるまで真空乾燥した。TFA−H
2O−トリイソプロピルシラン(95:2.5:2.5)を室温で2時間使用した穏やかな酸分解で、ペプチドを樹脂から切断し、同時に側鎖を脱保護した。切断した後、TFAを減圧下で除去した。粗生成物を95%酢酸水溶液に抽出し、凍結乾燥した。続いて、逆相HPLCを使用して、粗ペプチドを分析し、分取HPLCを使用して、精製した(純度>97%)。純粋な分画を合わせ、凍結乾燥した。質量分析で同定確認した。
【0089】
B環を介した親コルヒチンのペプチド配列への潜在的結合
ペプチドN末端を介したコルヒチン部分の結合を可能にするために、次のストラテジーを使用する。公表されている方法を使用して、B環アミンを破蔽することができる。アスパラギン酸を用いたアシル化によって、カルボン酸が(アミノ酸側鎖から)分子に導入され、それによってペプチドN末端における遊離アミンへの結合が可能になる(下記を参照のこと)。
【0090】
【化3】
【0091】
MMP活性化、その後のエキソペプチダーゼ分解の後に親コルヒチンが遊離されたかどうかを評価するために、アミド結合のアセチル化を試験する。
【0092】
【化4】
【0093】
ドキソルビシンのペプチド配列への結合のストラテジー
(上記の固定化コルヒチン誘導体化樹脂を使用したペプチド合成に続いて)ペプチドN末端を介したドキソルビシンの結合を可能にするために、まずカルボン酸を導入するように改変しなければならない。例には、無水コハク酸を用いた反応(下記のストラテジー1)が含まれる。しかし、下記(ストラテジー2)に示すように、アスパラギン酸の側鎖(両方とも天然アミノ酸)を利用することによって、(異質な化学単位とは対照的に)天然アミノ酸が代謝で遊離する。
【0094】
ストラテジー1:(スクシニルスペーサ)
【0095】
【化5】
【0096】
C末端ドキソルビシン結合
ドキソルビシンのアミン基のDde(ペプチド化学において、かつ我々のグループによってよく使用される保護基)による保護によって、トリチル系(またはその他の)樹脂へのその物質の固定化が可能になるはずである。その後にDde基を除去することによって、アミンが破蔽され、ペプチド配列がこの地点から(すなわち、C末端を介して)構築することが可能になるはずである。標準的Fmoc系固相合成によって、ペプチド配列が生じるはずである。次いで、適切に誘導体化されたVDAは、N末端を介して結合することができるであろう。樹脂切断および精製は、上記の通りであるはずである。
【0097】
【化6】
【0098】
(物理化学的諸特性を改善するための)グリコシル化アミノ酸の組込み
適切な側鎖官能基を有するアミノ酸(例えば、セリン、チロシン、トレオニン)を(単糖、二糖、または三糖で)グリコシル化して、改善された水溶性を有するペプチドを生成することができる。このような炭水化物誘導体化部分を、例えばセリンの代わりに使用することができるであろう(下記のスキームを参照のこと)。
【0099】
【化7】
【0100】
結果
1)MMP活性化プロドラッグ(化合物i)
−全MMP標的化
構造:
【化8】
【0101】
a)生体外で正常マウス血漿、正常マウス肝臓ホモジネート、およびヒト腫瘍実験モデルホモジネート(HT1080異種移植片;MMPの大部分を発現することが知られている)を使用して、プロドラッグ−1をスクリーニングした。LC/MS/MSを使用して、プロドラッグ切断および代謝を検出した。
a.プロドラッグ−1は、血漿および肝臓において安定であり、これらの治療薬の全身安定性を裏付けた(
図1)。
b.プロドラッグ−1は、腫瘍ホモジネートにおいて代謝され、MMPを発現する腫瘍におけるこれらの治療薬の活性化を裏付けた(
図1)。
b)プロドラッグ−1は、少なくとも組換えMMP−2、MMP−9、MMP−10、およびMMP−14によってグリシン−ホモフェニルアラニン(Gly−Hot)において急速に切断される。LC/MS/MSおよび質量分析によって示す(データ示さず)。
c)皮下HT1080腫瘍モデルを有するマウスに、プロドラッグ−1を腹腔内経路で生体内投与した(MMPの大部分の発現)。投与後に、血漿、組織、および腫瘍を一定の間隔で回収した。プロドラッグおよびVDA2のレベルを、LC/MS/MSによって評価した。
a.プロドラッグ−1は蓄積し、分析した組織のすべてにおいて検出された(
図2)。
b.腫瘍において、最高のプロドラッグ−1レベルが観察された(
図2)。
c.投与してから24時間後に検出可能でないプロドラッグ−1(
図2)。
d.プロドラッグ−1の投与後に、VDA2は、正常組織において低レベルで検出可能であった(
図3)。
e.プロドラッグ−1の投与後に、VDA2レベルは、腫瘍組織において高レベルで検出された(
図3)。
f.プロドラッグ−1を投与してから24時間後に、VDA2は、腫瘍においてやはり高レベルで検出可能であり、正常組織においては検出不可能であった(
図3)。
【0102】
2)MMP活性化プロドラッグ(化合物i)
−膜型MMP(MT−MMP)に標的化
構造:
【化9】
【0103】
d)化合物1を、化合物のMMP標的化が全MMPから選択MT−MMPに変更するように改変した(プロドラッグ−2)。
a.アルギニンを、P4位においてグルタミン酸の代わりに組み込んだ。
b.プロリンを除去し、P3位においてセリンで置換した。
e)生体外で正常マウス血漿、正常マウス肝臓ホモジネート、ならびに高MT1−MMP(MMP−14)発現および活性(HT1080)と低MT1−MMP発現および活性(MCF−7)を示すヒト腫瘍実験モデルホモジネートを使用して、プロドラッグ−2をスクリーニングした。LC/MS/MSを使用して、プロドラッグ−2切断および代謝を検出した。
a.プロドラッグ−2は、血漿において未変化のままであり、この治療薬の全身安定性を裏付けた。
b.プロドラッグ−2は、マウス肝臓ホモジネートにおいて安定なままであった。
c.プロドラッグ−2は、低MT−MMPレベルを発現する腫瘍ホモジネート(MCF7)に比べて、高MT−MMPレベルを発現する腫瘍ホモジネート(HT1080)において急速に代謝された(
図4)。
d.これらのデータは、このプロドラッグの全身安定性およびMT−MMPによる活性化の選択性を裏付ける。
f)LC/MS/MSおよび質量分析によって示されるように、プロドラッグ−2は、MMPによって切断が異なる(データ示さず)。:
a.グリシン−ホモフェニルアラニン(Gly−Hof)において、組換えMMP−14によって急速に切断。
b.ホモフェニルアラニン−チロシン(Hof−Tyr)において、組換えMMP−2によってゆっくりと切断。プロドラッグ−1で観察されたものと異なる切断を示す。
c.プロドラッグ−2は、プロドラッグ−1とは対照的に、組換えMMP−9によって切断されない。
d.これらのデータは、プロドラッグ−2のMMP選択的切断を裏付ける。
【0104】
g)皮下HT1080腫瘍モデルを有するマウスに、プロドラッグ−2を腹腔内経路で生体内投与した(MT1−MMP陽性)。投与後に、血漿、組織、および腫瘍を一定の間隔で回収した。プロドラッグ−2およびVDA2のレベルを、LC/MS/MSによって評価した。
a.プロドラッグ−2は蓄積し、分析した組織のすべてにおいて検出された(
図5)。
b.腫瘍において、最高のプロドラッグ−2レベルが観察された(
図2)。
c.肝臓は、分析した正常組織のすべての代表であった(
図5)。
d.プロドラッグ−2の投与後に、VDA2は、血漿において検出不可能であった(
図6)。
e.プロドラッグ−2の投与後に、高濃度のVDA2が腫瘍において検出された(
図6)。
f.プロドラッグ−2の投与後に、腫瘍におけるVDA2のレベルは、正常組織に検出されたものより10倍高い(
図6)。
g.投与して48時間後に、高レベルのプロドラッグ−2およびVDA2が、やはり腫瘍において検出可能であった。
パクリタキセルに類似した方式で安定な微小管の形成を促進する化合物XがペプチドYに直接的又は間接的に結合している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬として許容される塩。
MMPタンパク質切断部位がMMP−14及び/又はMMP−15タンパク質切断部位である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬として許容される塩。
アミノ酸配列−Arg−Ser−Cit−Gly−Hof−Tyr−Leu−を含むMMPタンパク質切断部位を含むペプチドにリンカーを介して結合したパクリタキセルを含む、化合物又はその医薬として許容される塩。