【解決手段】温度180℃及び周波数1Hzの条件下で粘弾性測定により求められる複素粘度が3500〜7000Pa・sである発泡樹脂層を備える、ポリスチレン系樹脂発泡シート。該ポリスチレン系樹脂発泡シートを成形してなる果菜包装用容器10。果菜包装用容器10には、シートの一方の面10aに開口し、他方の面に半円球状に膨出する、複数の凹部12が形成されている。
温度180℃及び周波数1Hzの条件下で粘弾性測定により求められる複素粘度が3500〜7000Pa・sである発泡樹脂層を備える、ポリスチレン系樹脂発泡シート。
前記発泡樹脂層は、前記樹脂成分の総量(100質量%)に対して、ポリスチレン系樹脂45〜75質量%と、アイオノマー6〜30質量%と、水素添加ポリスチレン系エラストマー5〜20質量%と、ポリエチレン系樹脂0〜15質量%と、ゴム変性ポリスチレン系樹脂0〜30質量%と、を含有する、請求項3に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
前記原料組成物は、前記樹脂成分の総量(100質量%)に対して、ポリスチレン系樹脂45〜75質量%と、アイオノマー6〜30質量%と、水素添加ポリスチレン系エラストマー5〜20質量%と、ポリエチレン系樹脂0〜15質量%と、ゴム変性ポリスチレン系樹脂0〜30質量%と、を含有する、請求項5又は6に記載のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(ポリスチレン系樹脂発泡シート)
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シート(以下単に「発泡シート」ともいう。)は、ポリスチレン系樹脂を含有する発泡樹脂層を備えるものである。
かかる発泡シートは、発泡樹脂層のみからなる単層構造であってもよいし、発泡樹脂層の少なくとも一方の面に樹脂フィルム等が設けられた積層構造であってもよい。本発明の発泡シートにおいては、発泡樹脂層のみからなる単層構造であっても、発泡樹脂層が所定の複素粘度を有することから充分な強度が確保される。
【0018】
本発明において、複素粘度とは、温度180℃及び周波数1Hzの条件下で粘弾性測定により求められる。具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0019】
本発明における発泡樹脂層の複素粘度は、3500〜7000Pa・sであり、好ましくは4000〜6500Pa・sであり、より好ましくは4300〜6500Pa.sである。
発泡樹脂層の複素粘度が前記範囲の下限値以上であれば、発泡シートの柔軟性が高められる。発泡樹脂層の複素粘度が前記範囲の上限値以下であれば、充分な強度が確保されやすくなる。加えて、耐熱性が維持されやすくなり、成形不良も生じにくくなる。
発泡樹脂層の複素粘度は、例えば樹脂成分の組成を調整することにより制御される。
【0020】
本発明における発泡樹脂層の連続気泡率は、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましい。発泡樹脂層の連続気泡率が前記範囲の好ましい上限値を超えると、発泡シートの二次発泡性が悪くなり、成形性が低下するおそれがある。
本発明において、発泡樹脂層の連続気泡率は、ASTM D−2856に規定されたエアーピクノメータ(空気比較式比重計)法(1−1/2−1気圧法)に準拠した方法により測定できる。
【0021】
本発明における発泡樹脂層の見掛け密度は、軽量性の点から、0.03〜0.21g/cm
3が好ましく、0.05〜0.09g/cm
3がより好ましい。
発泡樹脂層の見掛け密度が前記範囲の好ましい下限値未満であると、発泡シートの強度が低下するおそれがある。発泡樹脂層の見掛け密度が前記範囲の好ましい上限値を超えると、発泡シートの柔軟性が低下するおそれがある。
本発明において、発泡樹脂層の見掛け密度は、JIS K 6767に準拠した方法により測定できる。
【0022】
本発明における発泡樹脂層の厚みは、0.5〜3.0mmが好ましく、0.5〜2.5mmがより好ましく、1.0〜2.5mmがさらに好ましい。発泡樹脂層の厚みが前記範囲内であれば、成形性がより良好となる。
本発明において、発泡樹脂層の厚みとは、発泡樹脂層の任意部分の厚さを少なくとも5箇所測定し、その5箇所の厚みの相加平均値をいう。
【0023】
本発明における発泡樹脂層の坪量は、75〜300g/m
2が好ましく、85〜200g/m
2がより好ましい。
発泡樹脂層の坪量が前記範囲の好ましい下限値以上であれば、発泡シートの強度が保たれやすい。発泡樹脂層の坪量が前記範囲の好ましい上限値以下であれば、発泡シートの柔軟性が維持されて緩衝性を有しやすい。
【0024】
本発明における発泡樹脂層の発泡倍率は、5〜30倍が好ましく、8〜26倍がより好ましく、12〜21倍がさらに好ましい。
発泡樹脂層の発泡倍率が前記範囲の好ましい下限値以上であれば、発泡シートの軽量化が容易になる。発泡樹脂層の発泡倍率が前記範囲の好ましい上限値以下であれば、発泡シートの強度がより高められる。
【0025】
発泡樹脂層における、経日5日目の残存発泡剤量(残ガス量)は、2〜6質量%が好ましく、2〜4質量%がより好ましい。
発泡樹脂層における、経日5日目の残ガス量が前記範囲の好ましい下限値以上であれば、熱成形時に充分な二次発泡性が得られ、穴あき、破れ等が発生せず、良好な成形品が得られやすくなる。経日5日目の残ガス量が前記範囲の好ましい上限値以下であれば、熱成形における二次発泡時の熱によるたるみ(ドロー)が発生しにくくなる。
本発明において、経日5日目の残存発泡剤量(残ガス量)とは、発泡シートの製造から5日間が経過した時点で、発泡樹脂層内に存在しているガス量をいう。このガス量は、オーブンに150℃×1時間の条件で発泡シート中の残ガスを逸散させ、試験前後の発泡シートの質量を測定することで求められる。具体的には、後述の実施例に記載の方法で求められる。
【0026】
<ポリスチレン系樹脂>
本発明の発泡シートを構成する発泡樹脂層は、ポリスチレン系樹脂を含有する。
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系単量体の重合体、又は、これらのスチレン系単量体と該スチレン系単量体以外の単量体との共重合体が挙げられる。
尚、ここでいうポリスチレン系樹脂は、単量体成分として共役ジエンを含まない。
【0027】
前記のスチレン系単量体の重合体は、スチレン系単量体が1種の単独重合体であってもよいし、スチレン系単量体が2種以上の共重合体であってもよい。
【0028】
前記のスチレン系単量体以外の単量体としては、スチレン系単量体と共重合可能なビニル単量体が挙げられ、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、セチルアクリレート、セチルメタクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸;アクリロニトリル、メタクリロニトリル;無水マレイン酸;ジメチルマレエート;ジメチルフマレート;ジエチルフマレート;エチルフマレート;アクリルアミド等が挙げられる。
尚、前記のアルキル(メタ)アクリレートは、アルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートを意味する。
【0029】
ポリスチレン系樹脂が共重合体である場合、該共重合体に用いられる単量体の総量(100質量%)に対する50質量%以上が、好ましくはスチレン系単量体である。
該共重合体に、スチレン系単量体と共重合可能なビニル単量体が用いられる場合、ビニル単量体の配合量は、発泡シートの用途等に応じて適宜決定され、例えば、該共重合体に用いられる単量体の総量(100質量%)に対して5質量%以下が好ましい。
【0030】
ポリスチレン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、0.5〜6.0g/10分が好ましく、0.7〜3.0g/10分がより好ましい。
ポリスチレン系樹脂のMFRが前記範囲の好ましい下限値未満であると、発泡樹脂層の厚みが不均一になることがある。ポリスチレン系樹脂のMFRが前記範囲の好ましい上限値を超えると、発泡樹脂層の発泡倍率が低下することがある。
【0031】
本発明において、樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、JIS K 7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」B法記載の方法に準拠し、試験温度200℃、試験荷重49.03N、予熱時間4分の条件で測定される値をいう。
【0032】
ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量は、20万以上45万以下が好ましく、30万以上40万以下がより好ましい。
ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量が前記範囲の好ましい下限値未満であると、発泡倍率が高く、且つ、連続気泡率の低い発泡樹脂層が得られにくくなる。ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量が前記範囲の好ましい上限値を超えると、溶融時の流動性が低下し、生産性が低下することがある。
【0033】
本発明において、樹脂の重量平均分子量は、樹脂30mgを、クロロホルム10ミリリットルに溶解して、非水系0.45μmのクロマトディスクで濾過し、その濾液を試料としてクロマトグラフィーにより測定される、ポリスチレン換算の値を意味する。
具体的には下記の条件で測定される。
【0034】
ガスクロマトグラフ:東ソー株式会社製の高速液体クロマトグラフィー(ポンプ:DP−8020、オートサンプル:AS8020、検出器:UV−8020、RI−8020)。
カラム:昭和電工株式会社製の商品名「Shodex GPC K−806L(φ8.0 ×300mm)」2本。
カラム温度:40℃。
キャリアーガス:クロロホルム。
キャリアーガス流量:1.2ミリリットル/分。
注入・ポンプ温度:室温。
検出:UV254nm。
注入量:50マイクロリットル。
検量線用標準ポリスチレン:昭和電工株式会社製の商品名「shodex」、重量平均分子量1030000;東ソー株式会社製の重量平均分子量5480000,3840000,355000,102000,37900,9100,2630,495。
【0035】
ポリスチレン系樹脂は、公知の製造方法で製造されたものを用いることができる。例えば、ポリスチレン系樹脂としては、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法などで製造されたものが挙げられる。
スチレン系単量体と、必要に応じて併用されるビニル単量体と、を重合する際、公知の重合開始剤を用いることができる。例えば、重合開始剤としては、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−t−ブチルパーオキシブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物などが挙げられる。重合開始剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0036】
また、ポリスチレン系樹脂を製造する際、重合時に架橋剤が用いられてもよい。この架橋剤としては、ジビニルベンゼン等が挙げられる。架橋剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
架橋剤の配合量は、ポリスチレン系樹脂に用いられる単量体の総量100質量部に対して、0質量部超1質量部以下が好ましい。
【0037】
ポリスチレン系樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0038】
<任意成分>
本発明の発泡シートを構成する発泡樹脂層は、複素粘度が3500〜7000Pa・sの範囲内にあるものであれば、ポリスチレン系樹脂以外にその他成分(任意成分)を含有していてもよい。
かかる任意成分としては、ポリスチレン系樹脂以外の樹脂成分、気泡調整剤、着色剤、収縮防止剤、難燃剤、滑剤、劣化防止剤などが挙げられる。
ポリスチレン系樹脂以外の樹脂成分としては、例えば、ゴム変性ポリスチレン系樹脂、水素添加ポリスチレン系エラストマー、ポリエチレン系樹脂、アイオノマー等が挙げられる。
【0039】
≪ゴム変性ポリスチレン系樹脂≫
本発明におけるゴム変性ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレン系樹脂に共役ジエン系重合体を混合してなる高分子アロイ、及び、ポリスチレン系樹脂に共役ジエン系重合体をグラフト共重合してなるグラフト共重合体をそれぞれ包含する。
ゴム変性ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレン系樹脂の連続相(海)中に、粒径が0.3〜10μmの共役ジエン系重合体からなる粒子(島)が分散している海島構造を有し、一般的にはハイインパクトポリスチレンと称される。
尚、ゴム変性ポリスチレン系樹脂では、共役ジエン系重合体部分(共役ジエンブロック)の二重結合に対する水素添加は行われていない。
【0040】
ゴム変性ポリスチレン系樹脂におけるポリスチレン系樹脂には、上述したポリスチレン系樹脂と同様のものが用いられる。
共役ジエン系重合体としては、例えば、共役ジエンの重合体又は共重合体、共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体が挙げられる。共役ジエン系重合体が共役ジエンの共重合体、又は共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体である場合、共役ジエン系重合体は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体のいずれであってもよい。この共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどが挙げられ、ブタジエンが好ましい。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレンなどが挙げられ、スチレンが好ましい。
【0041】
ゴム変性ポリスチレン系樹脂中におけるスチレン系単量体単位の含有量は、該樹脂を構成する単量体単位の総量(100質量%)に対して、75〜99質量%が好ましく、80〜97質量%がより好ましい。
スチレン系単量体単位の含有量が前記範囲の好ましい下限値未満であると、発泡シートの成形性が低下するおそれがある。スチレン系単量体単位の含有量が前記範囲の好ましい上限値を超えると、発泡シート又はその成形体が充分な耐衝撃性を有していないおそれがある。
【0042】
ゴム変性ポリスチレン系樹脂のMFRは、1.5〜4.0g/10分が好ましく、2.0〜3.5g/10分がより好ましい。
ゴム変性ポリスチレン系樹脂のMFRが前記範囲の好ましい下限値未満であると、発泡樹脂層の厚みが不均一になることがある。ゴム変性ポリスチレン系樹脂のMFRが前記範囲の好ましい上限値を超えると、発泡樹脂層の発泡倍率が低下することがある。
【0043】
ゴム変性ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量は、15万以上35万以下が好ましく、20万以上30万以下がより好ましい。
ゴム変性ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量が前記範囲の好ましい下限値未満であると、発泡樹脂層の独立気泡率が低下して、発泡樹脂層の厚みが不足するおそれがある。ゴム変性ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量が前記範囲の好ましい上限値を超えると、溶融時の流動性が低下し、生産性が低下することがある。
【0044】
ゴム変性ポリスチレン系樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0045】
≪水素添加ポリスチレン系エラストマー≫
本発明における水素添加ポリスチレン系エラストマーは、スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物である。
ここでの共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられ、ブタジエンが好ましい。
【0046】
水素添加ポリスチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン−エチレン/ブタジエン−スチレン(SEBS)ブロック共重合体、スチレン−ブタジエン/ブチレン−スチレン(SBBS)ブロック共重合体が好ましく挙げられる。
【0047】
水素添加ポリスチレン系エラストマーにおける共役ジエンブロックの二重結合の水素添加率は、好ましくは60〜95モル%、より好ましくは65〜95モル%である。
かかる水素添加率が前記範囲内であれば、水素添加ポリスチレン系エラストマーを用いることにより、発泡シートの柔軟性が高められる。例えば、発泡シートを成形してなる果菜包装用容器の凹部に収容して果菜を輸送する際、該凹部に収容された果菜が輸送中に振動などの衝撃力を受けても、該果菜は、該凹部内で回転(玉回り)することがないため、該果菜に傷が付くのを防止できる。
【0048】
水素添加ポリスチレン系エラストマーにおける共役ジエンブロックの水素添加率は、以下に示す手順に従って測定することができる。
手順1)核磁気共鳴装置を用いて、測定対象となる樹脂についての
1H−NMRスペクトルを得る。
手順2)前記の
1H−NMRスペクトルに基づいて、水素添加された共役ジエン量(水添共役ジエン量)と、水素添加されていない共役ジエン量(未水添共役ジエン量)とをそれぞれ算出する。
手順3)前記の添共役ジエン量と未水添共役ジエン量とから、下式より水素添加率を算出する。
水素添加率(モル%)
=100×(水添共役ジエン量)/{(水添共役ジエン量)+(未水添共役ジエン量)}
【0049】
前記手順1における核磁気共鳴装置による測定は、下記の条件で行われる。
核磁気共鳴装置:日本電子株式会社製の商品名「ECX−400P型」。
測定核:
1H。
観測範囲:8000(20ppm)。
パルス幅:45°(9.0μsec)。
パルス間隔:9sec。
測定回数:2400回。
設定温度:55℃。
測定溶媒:CDCl
3 。
測定濃度:50mgr/0.4mL。
内部基準物質:テトラメチルシラン(TMS)。
【0050】
水素添加ポリスチレン系エラストマーの反発弾性率は、10%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、3〜6%が特に好ましい。
かかる反発弾性率が前記範囲の好ましい上限値以下であれば、発泡シートの柔軟性が高められる。加えて、発泡シートの耐衝撃性も高められる。例えば、発泡シートを成形してなる果菜包装用容器の凹部に収容して果菜を輸送する際、該果菜に傷が付きにくくなる。
本発明において、水素添加ポリスチレン系エラストマーの反発弾性率は、JIS K 6255に準拠した方法により測定される値をいう。
【0051】
水素添加ポリスチレン系エラストマーのデュロメータタイプA硬度(HDA)は、90以下が好ましく、50〜90がより好ましい。
かかるデュロメータタイプA硬度(HDA)が前記範囲の好ましい上限値以下であれば、発泡シートの柔軟性がより高められる。例えば、発泡シートを成形してなる果菜包装用容器の凹部に収容された果菜は、該凹部との摩擦が生じにくく、果菜がより傷みにくい。
本発明において、水素添加ポリスチレン系エラストマーのデュロメータタイプA硬度(HDA)は、JIS K7215に準拠した方法により測定される値をいう。
【0052】
水素添加ポリスチレン系エラストマーのMFRは、2〜20g/10分が好ましく、3〜15g/10分がより好ましい。
水素添加ポリスチレン系エラストマーのMFRが前記範囲の好ましい下限値未満であると、発泡樹脂層の厚みが不均一になることがある。水素添加ポリスチレン系エラストマーのMFRが前記範囲の好ましい上限値を超えると、発泡樹脂層の発泡倍率が低下することがある。
【0053】
水素添加ポリスチレン系エラストマーの重量平均分子量は、10万以上35万以下が好ましく、15万以上25万以下がより好ましい。
水素添加ポリスチレン系エラストマーの重量平均分子量が前記範囲の好ましい下限値未満であると、発泡樹脂層の独立気泡率が低下して、発泡樹脂層の厚みが不足するおそれがある。水素添加ポリスチレン系エラストマーの重量平均分子量が前記範囲の好ましい上限値を超えると、溶融時の流動性が低下し、生産性が低下することがある。
【0054】
水素添加ポリスチレン系エラストマーは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0055】
≪ポリエチレン系樹脂≫
本発明の発泡シートにおいては、発泡樹脂層がポリエチレン系樹脂を含有することにより、発泡シートの柔軟性が高められ、例えば、発泡シートを成形してなる果菜包装用容器の凹部に収容された果菜に傷が付きにくくなる。
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、超低密度ポリエチレン系樹脂、低密度ポリエチレン系樹脂、中密度ポリエチレン系樹脂、高密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状中密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状高密度ポリエチレン系樹脂などが挙げられる。
【0056】
ポリエチレン系樹脂のMFRは、0.1〜5g/10分が好ましく、0.4〜4g/10分がより好ましい。
ポリエチレン系樹脂のMFRが前記範囲の好ましい下限値未満であると、溶融時の流動性が低下し、生産性が低下しやすくなるおそれがある。ポリエチレン系樹脂のMFRが前記範囲の好ましい上限値を超えると、発泡性もしくは成形性が低下する、又はポリスチレンとの相溶性が悪くなるおそれがある。
【0057】
ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量は、5万以上30万以下が好ましく、10万以上20万以下がより好ましい。
ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量が前記範囲の好ましい下限値未満であると、連続気泡率の低い発泡樹脂層が得られにくくなるおそれがある。ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量が前記範囲の好ましい上限値を超えると、溶融時の流動性が低下し、生産性が低下することがある。
【0058】
ポリエチレン系樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0059】
≪アイオノマー≫
本発明におけるアイオノマーは、金属イオンによる凝集力を利用して高分子を凝集体とした樹脂である。
本発明の発泡シートにおいては、発泡樹脂層がアイオノマーを含有することにより、発泡シートの柔軟性が高められる。
アイオノマーにおける金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、亜鉛イオン等が挙げられる。
アイオノマーにおける高分子としては、例えば、エチレンと酸性基含有モノマーとの共重合体が挙げられる。酸性基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
アイオノマーとしては、アクリル酸又はメタクリル酸と、エチレンとの共重合体をナトリウムイオンによる凝集力を利用して凝集体とした樹脂;アクリル酸又はメタクリル酸と、エチレンとの共重合体を亜鉛イオンによる凝集力を利用して凝集体とした樹脂などが挙げられる。
【0060】
アイオノマーのMFRは、0.8〜5.0g/10分が好ましく、0.8〜2.0g/10分がより好ましい。
アイオノマーのMFRが前記範囲の好ましい下限値以上であれば、発泡シートの生産安定性がより良くなる。アイオノマーのMFRが前記範囲の好ましい上限値以下であれば、発泡性が維持されやすくなる。
【0061】
アイオノマーは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0062】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートにおいて、かかる発泡樹脂層は、柔軟性付与の点から、スチレン系単量体単位とエチレン系単量体単位とを有する樹脂成分を含有することが好ましい。
かかる発泡樹脂層の吸光度比(D698/D2850)は、発泡シートの柔軟性、強度、耐熱性及び成形性のバランスの点から、7.0〜15.0であることが好ましく、より好ましくは7.0〜12.0であり、さらに好ましくは7.0〜10.0である。
前記吸光度比(D698/D2850)が前記範囲の好ましい下限値以上であれば、発泡シートの強度、耐熱性が維持されやすくなり、成形性もより向上する。前記吸光度比(D698/D2850)が前記範囲の好ましい上限値以下であれば、発泡シートの柔軟性がより高められる。
本発明において、発泡樹脂層の吸光度比(D698/D2850)は、赤外分光法(IR)により測定される。吸光度比(D698/D2850)は、スチレン系単量体単位由来の698cm
−1の吸光度(D698)と、エチレン系単量体単位由来の2850cm
−1の吸光度(D2850)と、の比を意味する。具体的には、後述の実施例に記載の方法で求められる。
【0063】
かかる発泡樹脂層は、柔軟性がより高められることから、ポリスチレン系樹脂に加えて、アイオノマーを含む樹脂成分を含有することが好ましい。
また、かかる発泡樹脂層は、発泡シートの柔軟性、強度、耐熱性及び成形性のバランスの点から、前記樹脂成分の総量(100質量%)に対して、ポリスチレン系樹脂45〜75質量%と、アイオノマー6〜30質量%と、水素添加ポリスチレン系エラストマー5〜20質量%と、ポリエチレン系樹脂0〜15質量%と、ゴム変性ポリスチレン系樹脂0〜30質量%と、を含有することが好ましい。
【0064】
かかる発泡樹脂層においては、樹脂成分に加えて、さらに、気泡調整剤を含有していることが好ましい。気泡調整剤を含有していることにより、連続気泡率が低く、成形性の良好な発泡シートが得られやすくなる。
気泡調整剤としては、例えば、タルク、雲母、マイカ、モンモリロナイトなどの無機フィラーが挙げられる。
気泡調整剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
発泡樹脂層中の気泡調整剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して0.5〜5質量部が好ましく、0.5〜3質量部がより好ましい。
【0065】
以上説明した、本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートは、温度180℃及び周波数1Hzの条件下で粘弾性測定により求められる複素粘度が3500〜7000Pa・sである発泡樹脂層を備えることで、柔軟性が高められ、充分な強度を有し、耐熱性及び成形性も良好なものである。
また、本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートは、ガス保持性も良好である。
【0066】
(ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法)
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法は、上述した本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法であって、ポリスチレン系樹脂を含む樹脂成分を含有する原料組成物と、発泡剤と、を溶融混練し、押し出して発泡させる方法である。
かかるポリスチレン系樹脂発泡シートの好適な製造方法としては、公知の発泡シートの製造方法を採用することができ、例えば、以下に示す製造方法(A)、製造方法(B)が挙げられる。これらの中でも、かかるポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法としては、押出発泡性、熱成形性の点から、製造方法(A)がより好ましい。
【0067】
製造方法(A):
ポリスチレン系樹脂及びこれ以外の樹脂を含む樹脂成分並びにその他成分を含有する原料組成物と、物理発泡剤と、を押出機に供給して溶融混練した後、前記押出機の先端に取り付けたサーキュラーダイから押出発泡して円筒状の発泡体を得、次いで、この円筒状の発泡体を、拡径させた上でマンドレルに供給して冷却した後、円筒状の発泡体をその内外周面間に亘って押出方向に連続的に切断して展開することにより、ポリスチレン系樹脂発泡シートを製造する方法。
【0068】
製造方法(B):
前記原料組成物と化学発泡剤とを押出機内で溶融混練した後、前記押出機の先端に取り付けたTダイから押出して発泡性シートを作製し、この発泡性シートを加熱して発泡させることにより、ポリスチレン系樹脂発泡シートを製造する方法。
【0069】
製造方法(A)において、物理発泡剤としては、特に制限されず、例えば、プロパン、ブタン、ペンタンなどの炭化水素;窒素、二酸化炭素などの不活性ガスなどが挙げられる。
物理発泡剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
物理発泡剤の配合量は、原料組成物100質量部に対して2〜7質量部が好ましく、2〜6質量部がより好ましい。
【0070】
製造方法(B)において、化学発泡剤としては、特に制限されず、例えば、アゾジカルボンアミドなどが挙げられる。
化学発泡剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
化学発泡剤の配合量は、原料組成物100質量部に対して2〜7質量部が好ましく、2〜6質量部がより好ましい。
【0071】
ポリスチレン系樹脂の配合量は、樹脂成分の総量(100質量%)に対して、45〜75質量%が好ましく、50〜70質量%がより好ましい。
ポリスチレン系樹脂の配合量が前記範囲の好ましい下限値以上であれば、発泡シートの強度、耐熱性が高められ、成形性もより向上する。ポリスチレン系樹脂の配合量が前記範囲の好ましい上限値以下であれば、発泡シートの柔軟性が維持されやすくなる。
【0072】
ポリスチレン系樹脂以外の樹脂成分としてゴム変性ポリスチレン系樹脂を用いる場合、ゴム変性ポリスチレン系樹脂の配合量は、樹脂成分の総量(100質量%)に対して、0〜30質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、10〜25質量%がさらに好ましい。
ゴム変性ポリスチレン系樹脂の配合量が前記範囲の好ましい下限値以上であると、発泡シートに加えられる振動などの衝撃力が吸収されやすくなる。ゴム変性ポリスチレン系樹脂の配合量が前記範囲の好ましい上限値以下であると、ゴム変性ポリスチレン系樹脂がより凝集しにくくなり、発泡シートの外観がより良好になる。
【0073】
ポリスチレン系樹脂(PS系)とゴム変性ポリスチレン系樹脂(ゴム変性)との配合比率は、ポリスチレン系樹脂/ゴム変性ポリスチレン系樹脂で表される質量比(以下「PS系/ゴム変性」とも表す。)で1.5〜14.0が好ましく、1.5〜7.0がより好ましい。
PS系/ゴム変性が前記範囲の好ましい下限値以上であれば、発泡シートの柔軟性が維持されやすくなる。PS系/ゴム変性が前記範囲の好ましい上限値以下であれば、発泡シートの強度、耐熱性が維持されやすくなり、成形性もより向上する。
【0074】
ポリスチレン系樹脂以外の樹脂成分として水素添加ポリスチレン系エラストマーを用いる場合、水素添加ポリスチレン系エラストマーの配合量は、樹脂成分の総量(100質量%)に対して、5〜20質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましい。
水素添加ポリスチレン系エラストマーの配合量が前記範囲の好ましい下限値以上であると、発泡シートの柔軟性が維持されやすくなり、例えば、発泡シートを成形してなる果菜包装用容器の凹部に収容された果菜が傷みにくくなる。水素添加ポリスチレン系エラストマーの配合量が前記範囲の好ましい上限値以下であると、発泡シートの強度、耐熱性が維持されやすくなり、成形性もより向上する。
【0075】
ポリスチレン系樹脂(PS系)と水素添加ポリスチレン系エラストマー(水素添加)との配合比率は、ポリスチレン系樹脂/水素添加ポリスチレン系エラストマーで表される質量比(以下「PS系/水素添加」とも表す。)で2.0〜5.0が好ましく、2.5〜4.0がより好ましい。
PS系/水素添加が前記範囲の好ましい下限値以上であれば、発泡シートの耐熱性が維持されやすくなり、柔軟性もより向上する。PS系/水素添加が前記範囲の好ましい上限値以下であれば、ポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との相溶性がより高められ、発泡性、熱成形性がより良くなる。
【0076】
ポリスチレン系樹脂以外の樹脂成分としてポリエチレン系樹脂を用いる場合、ポリエチレン系樹脂の配合量は、樹脂成分の総量(100質量%)に対して、0〜15質量%が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。
ポリエチレン系樹脂の配合量が前記範囲の好ましい下限値以上であると、発泡シートの柔軟性が維持されやすくなり、例えば、発泡シートを成形してなる果菜包装用容器の凹部に収容された果菜が傷みにくくなる。ポリエチレン系樹脂の配合量が前記範囲の好ましい上限値以下であると、発泡シートの強度、耐熱性が維持されやすくなり、成形性もより向上する。
【0077】
ポリスチレン系樹脂(PS系)とポリエチレン系樹脂(PE系)との配合比率は、ポリスチレン系樹脂/ポリエチレン系樹脂で表される質量比(以下「PS系/PE系」とも表す。)で4.0〜7.0が好ましく、4.0〜5.5がより好ましい。
PS系/PE系が前記範囲の好ましい下限値以上であれば、発泡シートの強度、成形性が維持されやすくなる。PS系/PE系が前記範囲の好ましい上限値以下であれば、発泡シートの柔軟性が維持されやすくなる。
【0078】
前記原料組成物は、ポリスチレン系樹脂に加えて、さらにアイオノマーを含む樹脂成分を含有することが好ましい。前記アイオノマーとしては、そのメルトフローレイトが0.8〜5.0g/10分であるものを用いることが好ましい。
アイオノマーは、三井・デュポンポリケミカル株式会社製の商品名「ハイミラン1601」(金属イオン:ナトリウムイオン、高分子:アクリル酸又はメタクリル酸と、エチレンとの共重合体)、商品名「ハイミラン1855」(金属イオン:亜鉛イオン、高分子:アクリル酸又はメタクリル酸と、エチレンとの共重合体)等の市販品を用いて配合することができる。
【0079】
樹脂成分としてアイオノマーを用いる場合、アイオノマーの配合量は、樹脂成分の総量(100質量%)に対して、6〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましい。
アイオノマーの配合量が前記範囲の好ましい下限値以上であれば、発泡シートの柔軟性がより高められる。アイオノマーの配合量が前記範囲の好ましい上限値以下であれば、発泡シートの耐熱性が確保されやすくなる。
【0080】
ポリスチレン系樹脂(PS系)とアイオノマーとの配合比率は、ポリスチレン系樹脂/アイオノマーで表される質量比(以下「PS系/アイオノマー」とも表す。)で1.6〜5.5が好ましく、2.2〜5.3がより好ましい。
PS系/アイオノマーが前記範囲の好ましい下限値以上であれば、発泡シートの強度、耐熱性が維持されやすくなる。PS系/アイオノマーが前記範囲の好ましい上限値以下であれば、発泡シートの柔軟性がより高められる。
【0081】
前記原料組成物は、ポリスチレン系樹脂を含む樹脂成分を含有するものである。
該樹脂成分は、ポリスチレン系樹脂に加えて、アイオノマーを含むものが好ましい。また、該樹脂成分は、ポリスチレン系樹脂に加えて、アイオノマーと水素添加ポリスチレン系エラストマーとを含むものが好ましい。
さらに、該樹脂成分は、ポリスチレン系樹脂と、アイオノマーと、水素添加ポリスチレン系エラストマーと、ポリエチレン系樹脂及びゴム変性ポリスチレン系樹脂からなる群より選択される1種以上と、を含むものも好ましい。
前記原料組成物としては、本発明の効果がより高められることから、前記樹脂成分の総量(100質量%)に対して、ポリスチレン系樹脂45〜75質量%と、アイオノマー6〜30質量%と、水素添加ポリスチレン系エラストマー5〜20質量%と、ポリエチレン系樹脂0〜15質量%と、ゴム変性ポリスチレン系樹脂0〜30質量%と、を含有するものが好ましい。
【0082】
以上説明した本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法によれば、柔軟性が高められ、充分な強度を有し、耐熱性及び成形性も良好なポリスチレン系樹脂発泡シートを製造できる。
【0083】
(成形体)
本発明の成形体は、上記本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートを、公知の成形方法等を用いて、所望の形状に成形してなるものである。
ポリスチレン系樹脂発泡シートの成形方法としては、例えば、真空成形又は圧空成形が挙げられる。真空成形又は圧空成形としては、プラグ成形、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースドロー成形などが挙げられる。
本発明の成形体は、柔軟性が高められ、充分な強度を有し、耐熱性が良好なものであり、特に、シート一面に果菜を収容するための複数の凹部が形成された果菜包装用容器として有用なものである。
【0084】
(果菜包装用容器)
本発明の果菜包装用容器は、温度180℃及び周波数1Hzの条件下で粘弾性測定により求められる複素粘度が3500〜7000Pa・sである発泡樹脂層を備えるものである。
【0085】
図1は、本発明の果菜包装用容器の一実施形態を示し、
図2は、
図1のX−X断面図である。
本実施形態の果菜包装用容器10は、例えば、リンゴ、梨、桃などの果菜を収容するためのものである。
果菜包装用容器10は、平面視略長方形であり、シートの一方の面10aに開口し、該シートの他方の面10bに半円球状に膨出する、12個の凹部12が形成されている。
1個の凹部12は、1個の果菜の半分程度が埋まる大きさである。
図2に示すように、隣り合う凹部12の間には、仕切り部15が形成されている。仕切り部15は、隣り合う凹部12の各周壁12bと、凹部12間に設けられた接続部14とからなる。
凹部12の内底面の中央には、開口している面10a方向に突起し、果菜の凹み部分に沿う形状の凸部12aが形成されている。
【0086】
果菜包装用容器10は、例えば、温度180℃及び周波数1Hzの条件下で粘弾性測定により求められる複素粘度が3500〜7000Pa・sである発泡樹脂層を備えるポリスチレン系樹脂発泡シートを、所定の形状に熱成形することにより製造される。前記の複素粘度の好ましい範囲は4000〜6500Pa.sであり、より好ましい範囲は4300〜6500Pa.sである。
かかる果菜包装用容器10は、前記複素粘度が3500〜7000Pa・sである発泡樹脂層を備えることにより、高い柔軟性が発現され、また、充分な強度及び耐熱性を兼ね備える。
【0087】
果菜を凹部12に収容すると、果菜は、その下半分程度が凹部12内に埋まる。果菜包装用容器10の柔軟性が高められていることで、凹部12の周壁12bが果菜に沿うように接するため、果菜は、周壁12bと密接した状態で凹部12内に安定に収容される。
【0088】
隣り合う凹部の一方に、凹部の開口径よりも大きいサイズの果菜が収容された場合、従来の果菜包装用容器では、かかる大きいサイズの果菜が収容された凹部は容積が大きくなり、開口部が広がるのに伴って仕切り部が他方の凹部に倒れ込み、他方の凹部の開口部が狭くなり、他方の凹部に果菜を収容しにくいものであった。
本実施形態の果菜包装用容器10においては、周壁12b及び接続部14(仕切り部15)の柔軟性が高められているため、かかる大きいサイズの果菜が凹部12に収容された場合でも、凹部12の開口部が広がるのに伴って仕切り部15が圧縮される。これにより、隣り合う他方の凹部は、その容積が維持されて開口部は狭くなることがない。このため、隣り合う凹部12にそれぞれ果菜を容易に収容することができる。
【0089】
加えて、果菜包装用容器10を構成する発泡樹脂層は、柔軟性が高められているのに伴って適度に弾性的な変形をし得る。このため、周壁12bと密接した状態で凹部12内に収容された果菜は、輸送又は保管などの際に振動などの衝撃力を受けても、玉回り等を生じにくく、果菜が傷みにくい。
【実施例】
【0090】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
本実施例で用いた原料を以下に示す。
【0091】
・樹脂成分
ポリスチレン(MFR:1.5g/10分、重量平均分子量:34万、製品名:HRM26、東洋スチレン株式会社製)。
【0092】
ポリエチレン系樹脂(超低密度ポリエチレン、MFR:0.8g/10分、重量平均分子量:11万、製品名:ルミタック12−1、東ソー株式会社製)。
【0093】
水素添加ポリスチレン系エラストマー(スチレン−エチレン/ブタジエン−スチレンブロック共重合体、水素添加率:95モル%、反発弾性率:4%、デュロメータタイプA硬度:87、MFR:3.5g/10分、重量平均分子量:15万、製品名:SOE−S1605、旭化成ケミカルズ株式会社製)。
尚、上述の原料についてのデュロメータタイプA硬度は、以下のようにして測定した。
【0094】
[デュロメータタイプA硬度]
水素添加ポリスチレン系エラストマーのデュロメータタイプA硬度を、デュロメータASKER A型(高分子計器株式会社製)及び10Nの荷重がかけられる定圧荷重器を用い、JIS K7215に準拠した方法により測定した。
具体的には、水素添加ポリスチレン系エラストマーからなる縦30mm×横50mm×厚み4mmの平面長方形状の試験片を12枚作製し、これらのうちの2枚を重ねて、厚み8mmの測定サンプルを6個作製した。
各測定サンプルについて、デュロメータタイプA硬度の値(HDA)を6回測定し、相加平均値を算出した。
【0095】
ゴム変性ポリスチレン系樹脂(スチレン系単量体単位:94質量%、MFR:2.7g/10分、重量平均分子量:24万、製品名:E640N、東洋スチレン株式会社製)。
【0096】
アイオノマーA(金属イオンNa
+、MFR:1.3g/10分、製品名:ハイミラン1601、三井デュポンポリケミカル株式会社製)。
アイオノマーB(金属イオンZn
+、MFR:1.0g/10分、製品名:ハイミラン1855、三井デュポンポリケミカル株式会社製)。
【0097】
・気泡調整剤
タルク(粉末タルク、製品名:DSM−1401A、東洋スチレン株式会社製)。
【0098】
(実施例1)
[ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造]
ポリスチレン(HRM26)100質量部、ポリエチレン系樹脂(ルミタック12−1)10質量部、水素添加ポリスチレン系エラストマー(SOE−S1605)15質量部、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(E640N)15質量部、及び、アイオノマーA(ハイミラン1601)10質量部を含む樹脂成分と、気泡調整剤としてタルク(樹脂成分100質量部に対して1.5質量部)と、を含有する原料組成物を調製した。
次いで、前記原料組成物を押出機に供給し、最高温度が245℃となるように溶融混練すると共に、溶融状態の原料組成物中に、物理発泡剤としてブタンガス(イソブタン/ノルマルブタン=68/32(質量比))5.3質量部(前記原料組成物100質量部に対し)を圧入し、ブタンガスを原料組成物中に均一に分散させた。
この後、原料組成物を、その温度が138℃となるまで冷却した上で、押出機の先端に取り付けられた口径180mmのサーキュラーダイからクリアランスを0.28mmとして押出発泡して、円筒状の発泡体を得た。続けて、この円筒状の発泡体を、拡径した上で冷却マンドレルに供給し、冷却した。
冷却の後、円筒状の発泡体を、その直径方向に対向する二箇所において内外周面間に亘って押出方向に連続的に切断して展開することにより、2枚のポリスチレン系樹脂発泡シートを得た。
【0099】
[果菜包装用容器の製造]
得られたポリスチレン系樹脂発泡シートを、その気泡内のブタンガスを、空気に完全に置換するため、14日間に亘って常温、常圧条件下で放置した。
この後、ポリスチレン系樹脂発泡シートを、縦470mm×横350mmの平面長方形状に切断した上で、プラグアシスト成形方法を用いて熱成形することにより、果菜1個ずつを収容するための凹部12個が形成された、
図1、2に示す実施形態の果菜包装用容器を得た。
【0100】
(実施例2〜5及び比較例1〜4)
樹脂成分の配合組成を、表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂発泡シートを製造し、これを成形して果菜包装用容器を得た。
【0101】
製造されたポリスチレン系樹脂発泡シートについて、複素粘度(Pa・s)、厚み(mm)、坪量(g/m
2)、発泡倍率(倍)、吸光度比(D698/D2850)、経日5日目の残存発泡剤量(質量%)をそれぞれ求めた。加えて、製造されたポリスチレン系樹脂発泡シートについて、耐熱性、柔軟性、成形性の評価を行った。
また、製造された果菜包装用容器について、輸送テストを行った。
以上の結果を表1に示した。
【0102】
[ポリスチレン系樹脂発泡シートの複素粘度、果菜包装用容器の複素粘度]
発泡シート又は容器について、Anton Paar社製の粘弾性測定装置「PHYSICA MCR301」と温度制御システム「CTD450」とソフトウェア「レオプラス」とを組み合わせて動的粘弾性測定を行い、複素粘度(η*)を求めた。
詳しくは、以下の手順により動的粘弾性測定を行った。
発泡シート又は容器の製造に用いた原料組成物、又は、発泡シートもしくは容器から採取した試料を、熱プレス機にて温度150℃、5分間、プレス回数5回の条件下で、直径25mm、厚さ3mmの円盤状のサンプルを作製した。
次に、サンプルを、測定開始温度200℃に加熱した粘弾性測定装置のプレート上にセットし、窒素雰囲気下で、5分間に亘って放置し、溶融させた。
その後、直径25mmのパラレルプレートにて間隔を2.0mmまで押しつぶし、プレートからはみ出した溶融物を取り除いた。
更に、測定開始温度200±1℃に達してから5分間放置した後、歪み5%、周波数1Hz、降温速度2℃/分、測定間隔30秒、ノーマルフォース0N、測定温度200〜100℃の条件下にて複素粘度η*(Pa・s)を測定し、180℃時の複素粘度η*(Pa・s)値を読み取った。
尚、発泡シートについて測定された複素粘度η*(Pa・s)値は、原料組成物及び果菜包装用容器について測定された各複素粘度η*(Pa・s)値とほぼ同じ値であった。発泡シートについて測定された複素粘度η*(Pa・s)値を、表1中に「複素粘度(Pa・s)」として示した。
【0103】
[ポリスチレン系樹脂発泡シートの厚み]
発泡シートの厚み(mm)は、発泡シートの任意部分の厚さを5箇所測定し、その5箇所の厚みの相加平均値を算出して求めた。
【0104】
[ポリスチレン系樹脂発泡シートの坪量]
発泡シートの坪量は、以下のようにして求めた。
発泡シートの幅方向の両端20mmを除き、幅方向に等間隔に、10cm×10cmの切片10個を切り出し、各切片の質量(g)を0.001g単位まで測定した。各切片の質量(g)の平均値を1m
2当たりの質量に換算した値を、発泡シートの坪量(g/m
2)とした。
【0105】
[ポリスチレン系樹脂発泡シートの発泡倍率]
発泡シートの発泡倍率(倍)は、以下のようにして求めた。
発泡シートを所定の大きさに切り出した試料について、その大きさ(面積:S)と厚み(t)とを測定し、これらを乗じて試料の見掛け上の体積(V=S×t(cm
3))を求め、これと該試料の質量(M(g))とから、発泡シートの見掛け密度(d=M/V(g/cm
3))を算出した。
そして、発泡シートを形成している混合樹脂の密度(ρ:1.05g/cm
3とする)を、発泡シートの見掛け密度(d)で除して、発泡シートの発泡倍率(倍)を求めた。
発泡倍率(倍)=混合樹脂の密度(ρ)÷発泡シートの見掛け密度(d)
【0106】
[ポリスチレン系樹脂発泡シートの吸光度比(D698/D2850)]
発泡シートの吸光度比(D698/D2850)は、以下のようにして求めた。
無作為に選択した3個の各例の発泡シート(発泡樹脂層)の表面について、赤外分光分析ATR測定法により表面分析を行って赤外吸収スペクトルを得た。
各赤外吸収スペクトルから吸光度比(D698/D2850)をそれぞれ算出し、算出された吸光度比の相加平均を求め、これを発泡シートの吸光度比(D698/D2850)とした。
吸光度(D698)及び吸光度(D2850)は、それぞれ、Nicolet社から商品名「フーリエ変換赤外分光光度計 MAGN−560」で販売されている測定装置に、ATRアクセサリーとしてSpectra−Tech社製「サンダードーム」を接続して測定した。
【0107】
以下の条件にてATR−FTIR測定を行った。
高屈折率結晶種:Ge(ゲルマニウム)。
入射角:45°±1°。
測定領域:4000cm
−1〜675cm
−1。
測定深度の端数依存性:補正せず。
反射回数:1回。
検出器:DTGS KBr。
分解能:4cm
−1。
積算回数:32回。
その他:試料と接触させずに測定した赤外線吸収スペクトルをバックグラウンドとして測定スペクトルに関与しない処理を実施。
ATR法では、試料と高屈折率結晶との密着度合によって、得られる赤外吸収スペクトルの強度が変化する。このため、ATRアクセサリーの「サンダードーム」により最大荷重を掛けて密着度合をほぼ均一に制御し、測定を行った。発泡シートは、前処理を行わずに用いてサンダードームにセットし、かかる測定を行った。
【0108】
吸光度(D698)及び吸光度(D2850)は、上記の条件で得られた赤外線吸収スペクトルを次のようにピーク処理してそれぞれ求めた。
【0109】
赤外吸収スペクトルから得られる698cm
−1での吸光度(D698)は、スチレン系単量体単位に含まれるベンゼン環の面外変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。この吸光度の測定では、698cm
−1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離は実施していない。吸光度(D698)は、2000cm
−1と815cm
−1とを結ぶ直線をベースラインとして、710cm
−1と685cm
−1との間の最大吸光度を意味する。
【0110】
赤外吸収スペクトルから得られる2850cm
−1での吸光度(D2850)は、エチレン系単量体単位に含まれるC−H伸縮振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。この吸光度の測定では、2850cm
−1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離は実施していない。吸光度(D2850)は、3130cm
−1と2620cm
−1とを結ぶ直線をベースラインとして、2875cm
−1と2800cm
−1との間の最大吸光度を意味する。
吸光度比(D698/D2850)は、吸光度(D698)を吸光度(D2850)で除した値である。
【0111】
[ポリスチレン系樹脂発泡シートにおける、経日5日目の残存発泡剤量]
発泡シートにおける、経日5日目の残存発泡剤量(質量%)は、以下のようにして求めた。
製造から経日5日目の発泡シートを用いた。かかる発泡シートの幅方向の両端20mmを除き、幅方向に等間隔に10cm×10cmの切片10個を切り出し、10個の合計質量を測定し、「加熱前のシート質量(g)」とした。
これらの切片を重ね合わせ、アルミホイルで包んでサンプルを作製し、この質量を測定し、「加熱前のシート質量+アルミ質量(g)」とした。
次いで、サンプルをオーブンに投入し、150℃×1時間の条件で、発泡シート中の発泡剤を逸散させた。
その後、サンプルをオーブンから取り出し、デシケーターに1時間保管した後、質量を測定し、「加熱後のシート質量+アルミ質量(g)」とした。
そして、発泡シートについて、経日5日目の残存発泡剤量(質量%)を次式で求めた。
残存発泡剤量(質量%)={(加熱前のシート質量+アルミ質量)−(加熱後のシート質量+アルミ質量)}÷加熱前のシート質量×100
【0112】
[ポリスチレン系樹脂発泡シートの耐熱性]
各例の発泡シートから、それぞれ10cm×10cmの切片5枚を切り出し、その切片5枚を重ね、さらに厚さ1mm程度の同じ大きさのアルミ板2枚で上下を挟んだ状態で、70℃に設定したオーブン中に水平に静置した。次いで、上側のアルミ板上に5kgの分銅を載せ、その状態で24時間加熱した。
その後、オーブンから取り出し、切片(発泡シート)同士の剥離性(融着剥離性)を調べた。重ねられた5枚の切片(発泡シート)を1枚ずつ剥がしていき、その際の剥がれ具合を、下記の評価基準に従ってA、B、C、Dの4段階で判定し、発泡シートの耐熱性を評価した。
評価基準
A:ほとんど力をかけずに切片同士が剥がれ、その際にほとんど音もしない(極めて良好)。
B:切片同士を剥がし始める際にわずかな力が必要であるが、切片同士が剥がれ始めた後はほとんど音がせず、力もいらない(さらに良好)。
C:切片同士が剥がれる際にパリパリ程度の音はするが、切片同士を剥がすのに力はそれほどいらない(良好)。
D:切片同士が剥がれる際にバリバリと音がし、力をかけなければ切片同士が剥がれない(不良)。
【0113】
[ポリスチレン系樹脂発泡シートの柔軟性]
オリエンテック社製のテンシロンUCT−10を使用し、部分圧縮試験を以下のようにして行い、発泡シートの柔軟性を評価した。
発泡シートを50mm×50mmに切り抜き、試料サンプルとした。
部分圧縮変位量測定には最大荷重25kgfのロードセルを用い、ロードセルに、先端がR=10mmの半球形状をしたφ20mm、長さ25mmの直棒形状の押し治具を装着して、部分圧縮試験を行った。
前記の試料サンプル4枚を重ね、測定装置荷台に隙間ができないように、4枚が重ねられた試料サンプルを測定装置荷台に密着させてセットした。このときの厚みを、測定試料厚み(単位:mm)とした。
試料サンプルの厚み方向上端部に押し治具下端部が接触した状態を基点とし、押し治具を速度10mm/minにて降下させ、試料サンプルを圧縮した。
その際、試料サンプルへの荷重が1kgf時の治具の、基点からの変位(mm)を、試料サンプルの1kgf荷重時の部分圧縮変位量とした。サンプル数5の測定値平均を、その試料サンプルの1kgf荷重時の部分圧縮変位量(単位:mm)とした。
そして、下式により発泡シートの柔軟性(%)を求めた。
柔軟性(%)=試料サンプルの1kgf荷重時の部分圧縮変位量(単位:mm)/測定試料厚み(単位:mm)×100
かかる柔軟性(%)の数値が高いほど、発泡シートの柔軟性が高いことを示す。
下記の評価基準に従い、発泡シートの柔軟性を評価した。
評価基準
◎:柔軟性13%を超え、18%未満(柔軟性が特に良好)。
○:柔軟性10〜13%、又は、柔軟性18〜24%(柔軟性が良好)。
×:柔軟性10%未満のもの(柔軟性に劣り不良)、又は、柔軟性24%を超えるもの(柔軟すぎて不良)。
【0114】
[ポリスチレン系樹脂発泡シートの成形性]
開口径100mm、深さ40mmの凹部12個を持つ金型を用い、加熱炉内温度を130℃に設定して発泡シートを熱成形し、成形体として
図1に示す実施形態の果菜包装用容器を得た。
そして、かかる成形体表面の状態や成形体厚みを観察し、下記の評価基準に従い、発泡シートの成形性を評価した。
評価基準
○:不具合が認められなかった(良好)。
×:表面が熱やけ状態であった、裂けが発生した、又は、成形品の厚みが不充分なものしか得られなかった(不良)。
【0115】
[果菜包装用容器についての輸送テスト]
12個のリンゴを、上記で得られた成形体(
図1に示す実施形態の果菜包装用容器)の凹部1箇所に1つずつ収容した後、各リンゴの上面部に目印のためにシールを貼着した。その際、凹部へのリンゴの収容しやすさを評価した。
次いで、果菜包装用容器を段ボール箱に収容し、この段ボール箱を、トラックに載せて長野県から奈良県まで輸送した。
かかる輸送の後、果菜包装用容器の破損状態を目視観察し、容器の強度を評価した。
さらに、果菜包装用容器の凹部に収容したリンゴが、凹部内で振動して回転し(玉回りを生じ)ていたか否かについて、目印のシールの位置を目視観察により判定した。
尚、各リンゴを鉛直上方から観察し、リンゴの芯を中心として、予め貼着したシールが水平方向に90°以上移動していた場合を「玉回りを生じていた」と判定した。
そして、下記の評価基準に従い、果菜包装用容器における果菜の傷みにくさを評価した。
評価基準
A:凹部へのリンゴの収容が容易であり、玉回りを生じたリンゴの数が3個未満であった(極めて良好)。
B:凹部へのリンゴの収容が容易であり、玉回りを生じたリンゴの数が3個以上、5個未満であった(更に良好)。
C:凹部へのリンゴの収容が容易であり、玉回りを生じたンゴの数が5個以上、7個未満であった(良好)。
D:凹部へのリンゴの収容が容易でなく、玉回りを生じたリンゴの数が7個以上であった(不良)。
【0116】
【表1】
【0117】
表1に示す結果から、本発明を適用した実施例1〜5のポリスチレン系樹脂発泡シートは、柔軟性、耐熱性及び成形性をいずれも兼ね備えていることが確認できる。
また、実施例1〜5のポリスチレン系樹脂発泡シートを成形してなる果菜包装用容器は、隣り合う凹部にリンゴを容易に収容することができた。
加えて、かかる実施例1〜5のポリスチレン系樹脂発泡シートを成形してなる果菜包装用容器は、輸送テストにおいて、破損は認められず、強度の点で問題ないことが確認された。また、実施例1〜4の果菜包装用容器によれば、かかる輸送テストにおいて、玉回りを生じにくく、果菜が傷みにくいこと、も確認された。