【解決手段】本発明の粘着シートは、重合体を構成するモノマー単位として、脂環式構造を有するモノマーと、窒素原子を有するモノマーとを含有する(メタ)アクリル酸エステル重合体と、活性エネルギー線硬化性成分と、を含む粘着剤組成物で形成されることを特徴とする。前記(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、前記脂環式構造を有するモノマーを3質量%以上20質量%以下含有し、前記窒素原子を有するモノマーを1質量%以上20質量%以下含有することが好ましい。
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、前記脂環式構造を有するモノマーを3質量%以上20質量%以下含有し、前記窒素原子を有するモノマーを1質量%以上20質量%以下含有する請求項1に記載の粘着シート。
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、前記脂環式構造を有するモノマーおよび前記窒素原子を有するモノマーを合計5質量%以上40質量%以下含有する請求項1または2に記載の粘着シート。
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、前記活性エネルギー線硬化性成分を0.1質量部以上、30質量部以下含有する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の粘着シート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<1>粘着剤組成物
本実施形態の粘着シートを構成する粘着剤組成物は、重合体を構成するモノマー単位として、脂環式構造を有するモノマーと、窒素原子を有するモノマーとを含有する(メタ)アクリル酸エステル重合体と、活性エネルギー線硬化性成分と、を含んでなるものである。
【0023】
上記のような特徴を有することにより、本実施形態の粘着シートは、種々の被着体(特にITOやガラス)に対して、貼付後に活性エネルギー線を照射することにより、得られる粘着シートの硬化物(以下、「硬化後粘着シート」と称する場合がある。)が、高い粘着力を有するものとなる。また、被着体の貼合面に段差がある場合に、本実施形態の粘着シートは、その段差に容易に追従することができ、その後、活性エネルギー線を照射することにより、耐久(高温高湿)条件で保存した後であっても、被着体の貼合面と硬化後粘着シートとの間に空隙または気泡が発生するのを防止することができる(段差追従性に優れる)。また、本実施形態の粘着シートは、耐久条件下でのブリスター性が問題となるプラスチック板等を被着体とする場合であっても、当該被着体と貼合後、活性エネルギー線を照射することにより、その後、耐久条件に曝しても前記被着体と硬化後粘着シートとの界面での気泡の発生等を有効に防止することができる(耐ブリスター性に優れる)。
【0024】
以下、粘着剤組成物を構成する各成分について詳細に説明する。
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体
粘着シートを構成する粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸エステル重合体を含んでいる。
【0025】
本実施形態において(メタ)アクリル酸エステル重合体は、重合体を構成するモノマー単位として、脂環式構造を有するモノマー(以下、単に、脂環式構造含有モノマーともいう)と、窒素原子を有するモノマー(以下、単に、窒素原子含有モノマーともいう)とを含有している。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0026】
本実施形態の粘着シートを構成する粘着剤組成物が上記(メタ)アクリル酸エステル重合体を含むことにより、本実施形態の粘着シートは、活性エネルギー線照射後、透明導電膜(特にスズドープ酸化インジウム(lTO)からなる透明導電膜)、ガラス、およびプラスチック(特にポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル等のプラスチック)等のディスプレイに用いられる種々の被着体に対して強い粘着力を発揮するものとなる。
【0027】
なお、透明導電膜に対する粘着力は、主に脂環式構造含有モノマーが寄与するものと考えられる。また、ガラスおよびプラスチックに対する粘着力は、主に窒素原子含有モノマーが寄与すると考えられる。これに加えて、嵩高い脂環式構造含有モノマーを構成単位として重合体中に存在させることにより、重合体同士の間隔を広げ、得られる粘着シートを柔軟性に優れたものとすることができる。これにより、粘着シートは、被着体の表面凹凸への追従性に優れたものとなる。さらに、窒素原子含有モノマーを構成単位として重合体中に存在させることにより、粘着剤組成物に所定の極性を付与し、透明導電膜やガラスといったある程度の極性を有する被着体に対しても、親和性に優れたものとすることができる。その結果、上記追従性および上記親和性の性質が相まって、得られる粘着シートは、活性エネルギー線照射後、透明導電膜やガラスに対しても粘着力に優れたものになるものと推定される。
【0028】
脂環式構造含有モノマーにおける脂環式構造の炭素環は、飽和構造のものであってもよいし、不飽和結合を有するものであってもよい。また、脂環式構造は、単環の脂環式構造であってもよいし、二環、三環等の多環の脂環式構造であってもよい。脂環式構造の炭素数は、5以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、7以上であることがさらに好ましい。また、脂環式構造の炭素数は、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、12以下であることがさらに好ましい。
【0029】
脂環式構造としては、例えば、シクロへキシル骨格、ジシクロペンタジエン骨格、アダマンタン骨格、イソボルニル骨格、シクロアルカン骨格(シクロヘプタン骨格、シクロオクタン骨格、シクロノナン骨格、シクロデカン骨格、シクロウンデカン骨格、シクロドデカン骨格等)、シクロアルケン骨格(シクロヘプテン骨格、シクロオクテン骨格等)、ノルボルネン骨格、ノルボルナジエン骨格、多環式骨格(キュバン骨格、バスケタン骨格、ハウサン骨格等)、スピロ骨格などを含むものが挙げられ、中でも、より優れた粘着力を発揮するイソボルニル骨格を含むものが好ましい。
【0030】
上記脂環式構造含有モノマーとしては、上記の骨格を含む(メタ)アクリル酸エステルモノマーが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、より優れた粘着力を発揮する(メタ)アクリル酸イソボルニルを用いるのが好ましい。
【0031】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、脂環式構造含有モノマーを3質量%以上含有するのが好ましく、6質量%以上含有するのがより好ましく、9質量%以上含有するのがさらに好ましい。これにより、得られる粘着シートが、活性エネルギー線照射後、透明導電膜とガラスおよびプラスチックとに対する優れた粘着力(特に透明導電膜に対する優れた粘着力)を十分に発揮することができる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、脂環式構造含有モノマーを20質量%以下含有するのが好ましく、18質量%以下含有するのがより好まししく、15質量%以下含有するのがさらに好ましい。これにより、他のモノマー成分の含有量を十分に確保することができ、得られる粘着シートは、活性エネルギー線照射後に優れた粘着力を十分に発揮することができる。
【0032】
(メタ)アクリル酸エステル重合体が当該重合体を構成するモノマー単位として含有する窒素原子含有モノマーとしては、例えば、アミノ基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、窒素含有複素環を有するモノマー等が挙げられる。これらの中でも、窒素含有複素環を有するモノマーが好ましい。
【0033】
窒素含有複素環を有するモノマーとしては、例えば、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−(メタ)アクリロイルピロリドン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−(メタ)アクリロイルアジリジン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルピラジン、1−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルフタルイミド等が挙げられる。これらの中でも、より優れた粘着力を発揮するN−(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、特に、N−アクリロイルモルホリンが好ましい。
【0034】
なお、窒素原子含有モノマーとして、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等を使用することもできる。
【0035】
以上の窒素原子含有モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを1質量%以上含有するのがこのましく、3質量%以上含有するのがより好ましく、5質量%以上含有するのがさらに好ましい。これにより、得られる粘着シートが、活性エネルギー線照射後、透明導電膜とガラスおよびプラスチックとに対する優れた粘着力(特にガラスおよびプラスチックに対する優れた粘着力)を十分に発揮することができる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを20質量%以下含有するのが好ましく、15質量%以下含有するのがより好まししく、10質量%以下含有するのがさらに好ましい。これにより、他のモノマー成分の含有量を十分に確保することができるとともに、(メタ)アクリル酸エステル重合体が硬くなり過ぎることを抑制することができる。その結果、得られる粘着シートは、活性エネルギー線照射後、優れた粘着力を十分に発揮することができる。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、脂環式構造含有モノマーおよび窒素原子含有モノマーを、合計5質量%以上含有するのが好ましく、合計10質量%以上含有するのがより好ましく、合計15質量%以上含有するのがさらに好ましい。これにより、得られる粘着シートが、活性エネルギー線照射後、透明導電膜とガラスおよびプラスチックとに対する優れた粘着力を十分に発揮することができる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、脂環式構造含有モノマーおよび窒素原子含有モノマーを、合計40質量%以下含有するのが好ましく、合計35質量%以下含有するのがより好ましく、合計30質量%以下含有するのがさらに好ましい。これにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体が硬くなり過ぎることを抑制することができる。その結果、得られる粘着シートは、活性エネルギー線照射後、優れた粘着力を十分に発揮することができる。
【0038】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、上記脂環式構造含有モノマーおよび窒素原子含有モノマー以外のモノマーを構成単位として含有していてもよい。
【0039】
このようなモノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いるのが好ましく、アルキル基の炭素数が1以上20以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いるのがより好ましい。これにより、粘着シートの粘着性を良好なものとすることができる。
【0040】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、1以上20以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分(重合体を構成するモノマー中、最も多い成分)として含有することが好ましい。
【0041】
アルキル基の炭素数が1以上20以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1以上8以下の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸n−ブチルおよび(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシが特に好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50質量%以上含有することが好ましく、55質量%以上含有することがより好ましく、60質量%以上含有することがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを95質量%以下含有することが好ましく、90質量%以下含有することがより好ましく、80質量%以下含有することがさらに好ましい。
【0043】
粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、架橋剤と反応可能な官能基を有する反応性官能基含有モノマーを含有することが好ましい。
【0044】
上記反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシル基を有するモノマー(カルボキシル基含有モノマー)などが挙げられる。ただし、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシル基含有モノマーを含有しないことが好ましい。これにより、得られる粘着シートは、被着体である透明導電膜を腐食させたり、透明導電膜の抵抗値を変化させることを抑制することができる。
【0045】
ここで、「カルボキシル基含有モノマーを含有しない」とは、カルボキシル基含有モノマーを実質的に含有しないことを意味し、カルボキシル基含有モノマーを全く含有しない他、カルボキシル基による透明導電膜の腐食が生じない程度にカルボキシル基含有モノマーを含有することを許容するものである。具体的には、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に、モノマー単位として、カルボキシル基含有モノマーを1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下の量で含有することを許容するものである。
【0046】
上記の理由から、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成する反応性官能基含有モノマーとして、水酸基含有モノマーを含有することが好ましい。
【0047】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、架橋剤との反応性および他のモノマーとの共重合性の点から(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルまたは(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性官能基含有モノマーを5質量%以上含有することが好ましく、10質量%以上含有することがより好ましく、15質量%以上含有することがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性官能基含有モノマーを30質量%以下含有することが好ましく、25質量%以下含有することがより好ましく、20質量%以下含有することがさらに好ましい。
【0049】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、上記以外の他のモノマーを含有してもよい。当該他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
(メタ)アクリル酸エステル重合体の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0051】
(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量は、300,000以上であるのが好ましく、400,000以上であるのがより好ましく、6500,000以上であるのがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量は、1,200,000以下であるのが好ましく、1,000,000以下であるのがより好ましく、700,000以下であるのがさらに好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0052】
なお、粘着剤組成物において、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、粘着剤組成物は、脂環式構造含有モノマーおよび/または窒素原子含有モノマーを構成モノマー単位として含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体をさらに含有してもよい。
【0053】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、本実施形態の粘着シートの効果を十分に発揮させる観点から、粘着剤組成物中(粘着シート中にそれ自体あるいは反応物が残存する成分の混合物であって、後述の重合溶媒や希釈溶媒等は含まれない)に50質量%以上含有されることが好ましく、60質量%以上含有されることがより好ましく、70質量%以上含有されることが特に好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、他の成分の添加を許容する観点から、粘着剤組成物中に99質量%以下含有されることが好ましく、98質量%以下含有されることが好ましく、97質量%以下含有されることが特に好ましい。
【0054】
2.活性エネルギー線硬化性成分
粘着シートを構成する粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化性成分を含んでいる。
【0055】
このように、活性エネルギー線硬化性成分を含み、被着体に貼合後に活性エネルギー線を照射して硬化することにより、硬化後粘着シートは、段差追従性および耐発泡性(耐ブリスター性能)に優れたものとなる。
【0056】
ここで、活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
【0057】
活性エネルギー線硬化性成分は、本発明の効果を妨げることなく、活性エネルギー線の照射によって硬化する成分であれば特に制限されず、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。中でも、上述した(メタ)アクリル酸エステル重合体等との相溶性に優れる分子量1000未満の多官能アクリレート系モノマーを好ましく用いることができる。
【0058】
分子量1000未満の多官能アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の2官能型;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能型;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能型などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、活性エネルギー線照射による硬化後粘着シートの耐ブリスター性および段差追従性をより優れたものとする観点から、当該多官能アクリレート系モノマーとしては、3官能型以上のものを含有させることが好ましく、当該多官能アクリレート系モノマー全体における3官能型以上のものの割合を50質量%以上とすることが好ましく、70質量%以上とすることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。なお、当該割合の上限は100質量%である。
【0059】
活性エネルギー線硬化性成分としては、活性エネルギー線硬化型のアクリレート系オリゴマーを用いることもできる。このアクリレート系オリゴマーは重量平均分子量50,000以下のものが好ましい。このようなアクリレート系オリゴマーの例としては、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系等が挙げられる。
【0060】
上記アクリレート系オリゴマーの重量平均分子量は、50,000以下であることが好ましく、40,000以下であることがより好ましい。また、上記アクリレート系オリゴマーの重量平均分子量は、500以上であることがより好ましく、3,000以上であることがさらに好ましい。これらのアクリレート系オリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
また、活性エネルギー線硬化性成分としては、(メタ)アクリロイル基を有する基が側鎖に導入されたアダクトアクリレート系ポリマーを用いることもできる。このようなアダクトアクリレート系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に架橋性官能基を有する単量体との共重合体を用い、当該共重合体の架橋性官能基の一部に、(メタ)アクリロイル基および架橋性官能基と反応する基を有する化合物を反応させることにより得ることができる。
【0062】
上記アダクトアクリレート系ポリマーの重量平均分子量は、50,000以上であることが好ましく、100,000以上であることがより好ましい。また、アダクトアクリレート系ポリマーの重量平均分子量は、900,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましい。
【0063】
活性エネルギー線硬化性成分は、前述した多官能アクリレート系モノマー、アクリレート系オリゴマーおよびアダクトアクリレート系ポリマーの中から、1種を選んで用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできるし、それら以外の活性エネルギー線硬化性成分と組み合わせて用いることもできる。
【0064】
粘着剤組成物中における活性エネルギー線硬化性成分の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることがさらに好ましい。また、活性エネルギー線硬化性成分(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることがさらに好ましく、10質量部未満であることが特に好ましい。
【0065】
3.架橋剤
粘着シートを構成する粘着剤組成物は、架橋剤を含んでいてもよい。
【0066】
架橋剤を含有する粘着剤組成物を架橋すると、架橋剤は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する反応性官能基含有モノマー由来の反応性官能基と反応する。これにより、架橋剤によって(メタ)アクリル酸エステル重合体が架橋された構造が形成され、得られる粘着シートの凝集力が向上する。
【0067】
架橋剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の反応性官能基と反応するものであれば、特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル重合体が有する反応性官能基が水酸基の場合、上記の中でも、水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0068】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、およびそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体等が挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートが好ましい。
【0069】
粘着シートを構成する粘着剤組成物中における架橋剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、0.05質量部以上であるのが好ましく、0.10質量部以上であるのがより好ましく、0.15質量部以上であるのがさらに好ましい。また、粘着剤組成物中における架橋剤の含有量は、3.00質量部以下であるのが好ましく、2.00質量部以下であるのがより好ましく、1.00質量部以下であるのがさらに好ましい。
【0070】
4.光重合開始剤
本実施形態の粘着シートを構成する粘着剤組成物は、光重合開始剤を含んでもよい。粘着剤組成物に光重合開始剤を含有させることにより、例えば、段差を有する保護板と表示パネルを前記段差が表示パネルと対向するように粘着シートを用いて貼合し、その後、活性エネルギー線を照射する場合、当該粘着シートが効率よく硬化され、硬化後粘着シートは、耐ブリスター性と段差追従性に優れたものとなる。結果、得られる画像表示装置は耐久性に優れたものとなる。
【0071】
光重合開始剤としては、通常使用されるものであれば特に制限されることなく、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、(2,4,6−トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2−ベンゾチアゾール−N,N−ジエチルジチオカルバメート等を使用することができる。なお、光重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0072】
また、光重合開始剤は、活性エネルギー線硬化性成分(B)100質量部に対して、0.1質量部以上含有させることが好ましく、1質量部以上含有させることがより好ましい。また、光重合開始剤は、活性エネルギー線硬化性成分(B)100質量部に対して、30質量部以下含有させることが好ましく、15質量部以下含有させることがより好ましい。
【0073】
5.その他の成分
粘着シートを構成する粘着剤組成物には、必要に応じて、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば、シランカップリング剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。
【0074】
<2>粘着剤組成物の製造
粘着シートを形成する粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸エステル重合体を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体と、活性エネルギー線硬化性成分とを混合するとともに、所望により架橋剤、光重合開始剤、およびその他添加剤を加えることで製造することができる。
【0075】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、ポリマーを構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。
【0076】
(メタ)アクリル酸エステル重合体を構成するモノマーの重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法等により行うことができる。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0077】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。
【0078】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0079】
なお、上記重合工程において、2−メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0080】
(メタ)アクリル酸エステル重合体が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体の溶液に、活性エネルギー線硬化性成分、並びに所望により架橋剤、光重合開始剤、およびその他添加剤を添加し、十分に混合することにより、粘着剤組成物を得る。
【0081】
<3>粘着シートおよび粘着シートの製造
粘着シートは、上述した粘着剤組成物を架橋してなるものである。
粘着シートは、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0082】
まず、剥離シートを用意する。
次に、剥離シートの剥離面に、上記粘着剤組成物の塗布液を塗布する。
【0083】
そして、塗布層に対して、加熱処理を行って粘着剤組成物を架橋することにより、粘着シート(本発明の粘着シート)が得られる。
【0084】
なお、必要に応じて、粘着シートの露出した粘着面に他の剥離シート1の剥離面を重ね合わせてもよい。
【0085】
上記粘着剤組成物の塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0086】
また、粘着剤組成物の架橋は、加熱処理によって行うことができる。この加熱処理は、粘着剤組成物の塗布後の乾燥処理で兼ねることもできる。加熱処理の加熱温度は、50℃以上であるのが好ましく、70℃以上であるのがより好ましい。また、加熱処理の加熱温度は、150℃以下であるのが好ましく、120℃以下であるのがより好ましい。また、加熱時間は、10秒以上であるのが好ましく、50秒以上であるのがより好ましい。また、加熱時間は、10分以下であることが好ましく、2分以下であることがより好ましい。
【0087】
上記のようにして得られた粘着シートの厚さ(JIS K7130に準じて測定した値)は、段差追従性を優れたものとする観点から、10μm以上であるのが好ましく、30μm以上であるのがより好ましく、50μm以上であるのがさらに好ましい。また、粘着シートの厚さは、粘着シートの加工性を確保する観点から、1000μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましい。なお、粘着シートは単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
【0088】
また、粘着シートは、以下のようにしても製造することができる。
まず、2枚の剥離シートを用意する。
【0089】
用意した一方の剥離シートの剥離面に、上記粘着剤組成物の塗布液を塗布し、塗布層に対して、加熱処理を行って粘着剤組成物を架橋させ、第1の粘着シートを形成する。また、他方の剥離シートの剥離面に、上記粘着剤組成物の塗布液を塗布し、塗布層に対して、加熱処理を行って粘着剤組成物を架橋させ、第2の粘着シートを形成する。そして、前記2つの粘着シートの露出した粘着面同士を互いに接触するように貼り合わせ、第1の粘着シートと第2の粘着シートの合計の厚さを有する第3の粘着シート(本発明の粘着シート)を得る。
【0090】
上記粘着剤組成物の塗布液を塗布する方法、および、塗布した粘着剤組成物に対する加熱処理の条件は、前述した通りである。
【0091】
<4>ディスプレイ(画像表示装置)
図1は、本発明の粘着シートを用いて保護板と表示パネルとを貼合したディスプレイの一例を示す断面図である。なお、以下の説明では、図中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0092】
ディスプレイ(画像表示装置)100は、保護板21と、表示パネル22と、活性エネルギー線照射により硬化された硬化後粘着シート11(本発明の粘着シートの硬化物)とを有している。
【0093】
保護板21は、
図1に示すように、前記硬化後粘着シート11と接する側に段差(印刷層)3を有するのが好ましい。また、この段差3の高さは、3μm以上45μm以下であるのが好ましい。このような段差3がある場合であっても、本発明の粘着シートは、段差3に良好に追従する。そして、保護板21または表示パネル22のいずれかの一方または両方の面を通して活性エネルギー線を照射することにより、得られた硬化後粘着シート11は、高い粘着力、耐ブリスター性、および段差追従性を十分に発揮することができる。
【0094】
なお、前記活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、例えば、紫外線や電子線などが挙げられる。取り扱い容易性の観点から、紫外線が好ましい。
【0095】
紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等により行うことができる。紫外線の照射量は、照度が50〜1000mW/cm
2程度であることが好ましい。また、光量は、50〜10000mJ/cm
2であることが好ましく、100〜5000mJ/cm
2であることがより好ましく、200〜1500mJ/cm
2であることが特に好ましい。
【0096】
ディスプレイ100としては、例えば、液晶(LCD)ディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電子ペーパー等が挙げられ、タッチパネルであってもよい。
【0097】
保護板21は、ガラス板、プラスチック板等の他、それらを含む積層体などからなる保護板であることが好ましい。この場合、印刷層3は、保護板21における硬化後粘着シート11側に、額縁状に形成されることが一般的である。
【0098】
表示パネル22は、表示体モジュール(例えば、液晶(LCD)モジュール、発光ダイオード(LED)モジュール、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)モジュール等)またはその一部(例えば、偏光板等の光学部材)であることが好ましい。
【0099】
上記ガラス板としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。ガラス板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.1〜5mmであり、好ましくは0.2〜2mmである。
【0100】
上記プラスチック板としては、特に限定されることなく、例えば、アクリル板、ポリカーボネート板等が挙げられる。プラスチック板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.2〜5mmであり、好ましくは0.4〜3mmである。
【0101】
なお、上記ガラス板やプラスチック板の片面または両面には、各種の機能層(透明導電膜、金属層、シリカ層、ハードコート層、防眩層等)が設けられていてもよいし、光学部材が積層されていてもよい。また、透明導電膜および金属層は、パターニングされていてもよい。
【0102】
上記光学部材としては、例えば、偏光板(偏光フィルム)、偏光子、位相差板(位相差フィルム)、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、液晶ポリマーフィルム、拡散フィルム、ハードコートフィルム、半透過反射フィルム等が挙げられる。
【0103】
印刷層3を構成する材料は特に限定されることなく、印刷用の公知の材料が使用される。印刷層3の厚さ、すなわち段差の高さは、3μm以上45μm以下であることが好ましく、5μm以上35μm以下であることがより好ましく、7μm以上25μm以下であることがさらに好ましく、7μm以上15μm以下であることが特に好ましい。
【0104】
上記ディスプレイ100を製造するには、一例として、最初に、両面に剥離シートを有する粘着シートを、保護板21および表示パネル22に対応する大きさに裁断する。
【0105】
次いで、粘着シートの一方の剥離シートを剥離して、粘着シートの露出した粘着面を、保護板21の印刷層3が存在する側の面に貼合する。その後、粘着シートから他方の剥離シートを剥離して、粘着シートの露出した粘着面と表示パネル22とを貼合する。その後、保護板21越し、または、表示パネル22越しに粘着シートに活性エネルギー線を照射して硬化後粘着シート11を得る。
【0106】
上記工程により得られたディスプレイ100は、粘着シートが段差追従性に優れるため、所定耐久条件後も、印刷層3による段差と硬化後粘着シート11との間に空隙ができ難く、美観に優れたものとなる。また、粘着シートは、粘着力、耐ブリスター性に優れているため、得られるディスプレイ100は、信頼性の高いものとなっている。
【0107】
以上、本発明の粘着シートの好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0108】
例えば、前述した実施形態では、保護板が印刷段差を有するものとして説明したが、本発明の粘着シートは、印刷段差無いものにも適用することができる。
【実施例】
【0109】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0110】
1.粘着シートの作製
(実施例1)
(1)(メタ)アクリル酸エステル重合体
アクリル酸2−エチルヘキシル65質量部、N−アクリロイルモルホリン5質量部、アクリル酸イソボルニル15質量部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル15質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)50万であった。
【0111】
(2)粘着剤組成物の調製
上記工程(1)で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、活性エネルギー線硬化性成分としてε-カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学社製,製品名「NKエステル A−9300−1CL」)5.0質量部、イソシアネート系架橋剤としてトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製、製品名「BHS8515」)0.15質量部と、光重合開始剤(BASF社製,製品名「イルガキュア500」)0.5質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度50質量%の粘着剤組成物の塗布溶液を得た。
【0112】
(3)粘着シートの製造
得られた粘着剤組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、90℃で1分間加熱処理し、厚さ25μmの第1の粘着シートを形成した。
【0113】
同様に、得られた粘着剤組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−PET382120」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、90℃で1分間加熱処理し、厚さ25μmの第2の粘着シートを形成した。
【0114】
次いで、上記で得られた第1および第2の粘着シートの露出した両粘着面が互いに接触するように貼合し、一方の面に軽剥離型剥離シート、他方の面に重剥離型剥離シートを有する、第3の粘着シート(厚さ:50μm)を作製した。なお、粘着シートの厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG−02」)を使用して測定した値である。
【0115】
(実施例2、3、比較例1〜3)
(メタ)アクリル酸エステル重合体を構成する各モノマーの割合、活性エネルギー線硬化性成分の種類および配合量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして第3の粘着シートを製造した。
【0116】
上記各実施例および各比較例の粘着シートの形成に用いた粘着剤組成物の組成等を表1に示した。
【0117】
なお、表1中、アクリル酸2−エチルヘキシルを「2EHA」、N−アクリロイルモルホリンを「ACMO」、アクリル酸イソボルニルを「IBXA」、アクリル酸2−ヒドロキシエチルを「HEA」、メチルメタクリレートを「MMA」、活性エネルギー線硬化性成分としてのε-カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学社製,製品名「NKエステル A−9300−1CL」)を「三官能」、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学社製、商品名「NKエステル A−DPH」)を「六官能」、粘着付与樹脂としてのテルペン樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、商品名「クリアロンK4100」)をテルペン樹脂と示した。
【0118】
また、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0119】
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC−8020・GPCカラム(以下の順に通過) :東ソー社製
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0120】
【表1】
【0121】
2.評価
[粘着力測定]
各実施例および各比較例で得られた第3の粘着シートの軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着面を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,PET A4300,厚さ:100μm)の易接着層に貼合した。その積層体を、幅25mm、長さ100mmに裁断し、これを粘着力測定用のサンプルとした。当該サンプルから重剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着面を、ソーダライムガラス(日本板硝子社製)に貼付し、下記条件にて紫外線を照射した。
【0122】
(紫外線照射条件)
・光源:高圧水銀灯
・光量:1000mJ/cm
2
・照度:200mW/cm
2
その後、常圧、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロン」)を用い、JIS Z0237:2009に準じて、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で粘着力(N/25mm)を測定した。
【0123】
また、上記サンプルから重剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着面を、片面にスズドープ酸化インジウム(lITO)からなる透明導電膜が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業社製、ITOフィルム、厚さ:125μm)の透明導電膜に貼付し、上記と同様にして粘着力(N/25mm)を測定した。
【0124】
[耐ブリスター性評価]
各実施例および各比較例で得られた第3の粘着シートの軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着面を、片面にスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業社製,ITOフィルム,厚さ:125μm)の透明導電膜と貼合した。次に、前記粘着シートの重剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着面を、ポリメチルメタクリレート(PMMA)からなるアクリル板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シート MR200」,厚さ:1mm)と貼合し、下記条件で紫外線を照射し、ITOフィルムとアクリル板が硬化後粘着シートで接合された積層体を得た。
【0125】
(紫外線照射条件)
・光源:高圧水銀灯
・光量:1000mJ/cm
2
・照度:200mW/cm
2
得られた積層体を、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理した後、常圧、23℃、50%RHにて15時間放置した。次いで、85℃、85%RHの耐久条件下にて72時間保管した。その後、23℃、50%RH下に取出し、その直後、硬化後粘着シートとアクリル板の界面で気泡、浮きまたは剥がれがないか否か、目視により確認し、以下の基準により耐ブリスター性を評価した。
【0126】
A :気泡、浮きおよび剥がれが全くなかった。
B :直径0.2mm以下の気泡のみが発生した。
C :直径0.2mm超の気泡、浮きまたは剥がれが発生した。
【0127】
[段差追従性評価]
ガラス板(NSGプレシジョン社製,製品名「コーニングガラス イーグルXG」,縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)の表面に、紫外線硬化型インク(帝国インキ社製,製品名「POS−911墨」)を塗布厚が25μmなるように額縁状(外形:縦90mm×横50mm,幅5mm)にスクリーン印刷した。次いで、紫外線を照射(80W/cm
2,メタルハライドランプ2灯,ランプ高さ15cm,ベルトスピード10〜15m/分)して、印刷した上記紫外線硬化型インクを硬化させ、印刷による段差(段差の高さ:25μm)を有する段差付ガラス板を作製した。
【0128】
各実施例および各比較例で得られた第3の粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着面を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合した。次いで、重剥離型剥離シートを剥がし、粘着面を表出させた。そして、ラミネーター(フジプラ社製,製品名「LPD3214」)を用いて、粘着剤層が額縁状の印刷全面を覆うように上記積層体を各段差付ガラス板にラミネートし、下記条件で紫外線を照射し、これを評価用サンプルとした。
【0129】
(紫外線照射条件)
・光源:高圧水銀灯
・光量:1000mJ/cm
2
・照度:200mW/cm
2
得られた評価用サンプルを、85℃、85%RHの耐久条件下にて72時間保管した。その後、23℃、50%RH下に取出し、その直後、当該サンプルの硬化後粘着シートとガラス板の界面(特に印刷による段差の近傍)に気泡が無いか否かを目視により確認し、以下の基準により段差追従性を評価した。
【0130】
A :気泡が全くなかった。
B :直径0.2mm以下の気泡のみ確認された。
C :直径0.2mm超の気泡、浮きまたは剥がれが確認された。
【0131】
[ヘイズ値の測定]
実施例および比較例で得られた第3の粘着シートについて、JIS K7361−1:1997に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH−5000」)を用いてヘイズ値(%)を測定した。ディスプレイでの使用を考えると、ヘイズ値は、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。
これらの結果を表2に示す。
【0132】
【表2】
【0133】
表2から明らかなように、本発明の粘着シートは、紫外線照射により、透明導電膜およびガラスに対して高い粘着力を示した。また、本発明の粘着シートは、紫外線照射により、耐ブリスター性および段差追従性に優れるものであった。これに対して、比較例では十分な結果が得られなかった。