特開2016-191226(P2016-191226A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-191226(P2016-191226A)
(43)【公開日】2016年11月10日
(54)【発明の名称】アンカーの取付構造及び取付方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/41 20060101AFI20161014BHJP
   A47G 29/00 20060101ALI20161014BHJP
   F16B 35/04 20060101ALI20161014BHJP
【FI】
   E04B1/41 503Z
   A47G29/00 H
   F16B35/04 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-70912(P2015-70912)
(22)【出願日】2015年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】390022389
【氏名又は名称】サンコーテクノ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】藤井 保也
(72)【発明者】
【氏名】今井 清史
(72)【発明者】
【氏名】小林 薫
(72)【発明者】
【氏名】平林 雅也
【テーマコード(参考)】
2E125
3K100
【Fターム(参考)】
2E125AA53
2E125AE01
2E125AG12
2E125BA12
2E125BD01
2E125BD03
2E125CA05
2E125CA93
3K100AB10
3K100AF04
3K100AG01
(57)【要約】
【課題】高い取付強度でアンカーを壁体に取り付けるアンカーの取付構造を提供する。
【解決手段】壁体5にスリット状の貫通孔50を形成する。アンカー10の先端の係止体12を、スリット状の貫通孔50に通して、壁体5の裏側Bまで挿入する。アンカーの棒材11を介して、係止体12を、その長手方向がスリット状の貫通孔50の長手方向と交差する位置まで壁体5の裏側にて回転させる。係止体12の回転を止めた状態で、棒材11に引き抜き方向の力を加えることで、係止体12を壁体の裏側壁面5Bに係止させる。
【選択図】図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体に、前記壁体の表側壁面から裏側壁面まで貫通するスリット状の貫通孔が形成され、
前記貫通孔に、棒材の先端部に係止体を固定したアンカーが挿入されて、前記係止体が前記壁体の裏側に達しており、
前記アンカーは、前記壁体の裏側にて回転された状態で、前記棒材に引き抜き方向の力が加えられることで、前記係止体が前記壁体の裏側壁面に係止されていることを特徴とするアンカーの取付構造。
【請求項2】
前記係止体は、前記棒材の長手方向と直交する方向に延在し前記スリット状の貫通孔に挿通可能で且つ長手方向の長さが前記スリット状の貫通孔の長手方向と直交する短手方向の寸法よりも大きく設定されており、
前記アンカーは、前記棒材の先端部に前記係止体がその長手方向の中間部で固定されており、前記係止体の長手方向が前記スリット状の貫通孔の長手方向と交差する位置まで前記壁体の裏側にて回転された状態で、前記棒材に引き抜き方向の力が加えられることで、前記係止体が前記壁体の裏側壁面に係止されていることを特徴とする請求項1に記載のアンカーの取付構造。
【請求項3】
壁体に、前記壁体の表側壁面から裏側壁面まで貫通するスリット状の貫通孔を形成する穿孔工程と、
棒材の先端部に係止体を固定したアンカーを用意する準備工程と、
前記アンカーを、前記スリット状の貫通孔に、前記係止体が前記壁体の裏側に達するまで挿入する挿入工程と、
前記棒材を介して前記係止体を前記壁体の裏側にて回転させる回転工程と、
前記係止体の回転を止めた状態で、前記棒材に引き抜き方向の力を加えることで、前記係止体を前記壁体の裏側壁面に係止させる係止工程と、
を有することを特徴とするアンカーの取付方法。
【請求項4】
前記アンカーは、前記棒材の先端部に前記係止体が固定されており、
前記係止体が、前記棒材の長手方向と直交する方向に延在し前記スリット状の貫通孔に挿通可能で且つ長手方向の長さが前記スリット状の貫通孔の長手方向と直交する短手方向の寸法よりも大きく設定され、
前記回転工程において、前記棒材を介して前記係止体を、該係止体の長手方向が前記スリット状の貫通孔の長手方向と交差する位置まで前記壁体の裏側にて回転させることを特徴とする請求項3に記載のアンカーの取付方法。
【請求項5】
前記穿孔工程では、回転する穿孔工具により、複数の孔を列の端から順番に、隣合う孔同士の一部を重複させながら一列に穿設して、前記スリット状の貫通孔を形成することを特徴とする請求項3または4に記載のアンカーの取付方法。
【請求項6】
前記穿孔工程では、先行して穿設した貫通孔の隣に次の貫通孔を穿設するに当たり、先行して穿設した貫通孔の中に、次の貫通孔を穿設する穿孔工具の位置ずれによる侵入を規制する穿孔治具を挿入し、この穿孔治具に沿って、次の貫通孔を前記穿孔工具により形成し、順次これを繰り返して、スリット状の貫通孔を形成することを特徴とする請求項5に記載のアンカーの取付方法。
【請求項7】
前記穿孔治具が、先行して穿設された貫通孔に挿入されることで前記貫通孔の内壁に当接または近接する治具基体を備え、
前記治具基体は、前記穿孔工具の外周が接することで前記穿孔工具の位置ずれを規制する凹状案内壁を有し、
前記凹状案内壁は、前記穿孔工具が入り込む切欠部を画成するように形成されていることを特徴とする請求項6に記載のアンカーの取付方法。
【請求項8】
前記穿孔工具に前記穿孔治具を取り付け、次の貫通孔の穿設の際に該貫通孔への前記穿孔工具の挿入と並行して、先行して穿設された隣の貫通孔に前記穿孔治具を挿入することで、この穿孔治具によって、前記次の貫通孔を穿設する穿設工具の位置ずれを規制することを特徴とする請求項6または7に記載のアンカーの取付方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載のアンカーの取付構造に用いられるアンカーであって、
前記棒材の先端部に、前記係止体が固定され、
前記係止体は、前記貫通孔を通して前記壁体の裏側に達して前記アンカーが回転された状態で、前記棒材に引き抜き方向の力が加えられることで、前記壁体の裏側壁面に係止可能であることを特徴とするアンカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の側壁などの壁体にアンカーを取り付けたアンカーの取付構造及び取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の側壁などの壁体に、あと施工アンカーを取り付けることがある。例えば、鉄筋コンクリート製の壁体の剪断破壊強度を増大させるため、あるいは、壁体に他の物品を取り付けるために、壁体に貫通孔を形成し、その貫通孔にアンカーボルトを取り付ける方法がある(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
図29は、従来のアンカーボルトの構成を示す図であり、図30(a)〜(d)は、アンカーボルトの取付手順を示す図である。
このアンカーボルト200は、基端側のネジ部に締結用のナット230を取付可能なボルト本体201の先端部に、スリット202を有する係止体支持部203が設けられている。この係止体支持部203の2つの腕部間のスリット202には、帯板状の係止体205が挿入されている。そして、係止体205は、係止体支持部203の2つの腕部に通したピン206で、回動自在に固定されている。
【0004】
係止体205は、長さの二等分点(中央点)より一端部に近い位置(偏心した位置)でピン206により回動自在に支持されている。そのため、アンカーボルト220を水平な姿勢としてスリット202を鉛直方向に向けると、係止体205は、他端部が自重で下方に向くように回動し、ボルト本体201に対して直交した姿勢となる。
【0005】
このアンカーボルト200を壁体に取り付ける場合、まず、図30(a)に示すように、内部Aと外部Bを仕切る壁体215に、ドリル101によって貫通孔216を穿設する。貫通孔216は、壁体215の表側壁面215Aから裏側壁面215Bまで貫通するように穿設する。ここでは、単一の穿孔操作により、独立した1つの円形の貫通孔216を形成する。
【0006】
次に、図30(b)に示すように、この円形の貫通孔216に、アンカーボルト200の先端部を通す。その際、係止体205を、アンカーボルト200の軸方向に向けて貫通孔216に通す。図30(c)に示すように、係止体205を、壁体215の裏面側まで完全に挿入すると、貫通孔216から解放された係止体205が自重で回転し、アンカーボルト200の軸方向に直交した姿勢となる。
【0007】
その状態で、図30(d)に示すように、壁体215の表側(内部A)で、アンカーボルト200の基端側に被取付部材240を介してナット230を取付ける。このナット230を締め込むと、ボルト本体201に引き抜き方向の力が付与されて、係止体205が、壁体215の裏側壁面215Bに係止する。これにより、アンカーボルト200が壁体215に固定されると同時に、被取付部材240がアンカーボルト200に支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2003/087592号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した従来のアンカー(アンカーボルト200)の取付方法では、係止体205がボルト本体201に回動可能にピン206で取り付けられており、しかも係止体支持部203にスリット202が設けられているので、アンカーの取付強度を高くするには限界があった。
【0010】
本発明は、上記事情を考慮し、高い取付強度でアンカーを壁体に取り付けることのできるアンカーの取付構造及び取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、壁体に、前記壁体の表側壁面から裏側壁面まで貫通するスリット状の貫通孔が形成され、前記貫通孔に、棒材の先端部に係止体を固定したアンカーが挿入されて、前記係止体が前記壁体の裏側に達しており、前記アンカーは、前記壁体の裏側にて回転された状態で、前記棒材に引き抜き方向の力が加えられることで、前記係止体が前記壁体の裏側壁面に係止されているアンカーの取付構造を提供する。
【0012】
本発明によれば、棒材の先端部に動かないように固定した係止体を、その固定した姿勢のまま、スリット状の貫通孔に通して、壁体の裏側まで挿入することができる。
係止体を、壁体の裏側壁面に係止し得る位置まで回転させ、その状態で棒材に引き抜き方向の力を付与することで、壁体の裏側壁面に係止させることができるため、スリットやピン等の強度低下を招く要素を必要としない構造のアンカー、すなわち係止体と棒材を強固に接合した構造のアンカーを用いることができる。したがって、壁体に対するアンカーの取付強度を高めることができる。
【0013】
前記係止体は、前記棒材の長手方向と直交する方向に延在し前記スリット状の貫通孔に挿通可能で且つ長手方向の長さが前記スリット状の貫通孔の長手方向と直交する短手方向の寸法よりも大きく設定されており、前記アンカーは、前記棒材の先端部に前記係止体がその長手方向の中間部で固定されており、前記係止体の長手方向が前記スリット状の貫通孔の長手方向と交差する位置まで前記壁体の裏側にて回転された状態で、前記棒材に引き抜き方向の力が加えられることで、前記係止体が前記壁体の裏側壁面に係止されていることが好ましい。
【0014】
本発明によれば、アンカーを取り付ける貫通孔を、従来のように円形孔ではなく、一方に長いスリット状の貫通孔としている。そのため、係止体を、壁体の裏側壁面に係止し得る位置まで回転させ、その状態で棒材に引き抜き方向の力を付与することで、係止体を壁体の裏側壁面に押圧係止させることができる。
したがって、壁体に対するアンカーの取付強度を高めることができる。
【0015】
本発明は、壁体に、前記壁体の表側壁面から裏側壁面まで貫通するスリット状の貫通孔を形成する穿孔工程と、棒材の先端部に係止体を固定したアンカーを用意する準備工程と、前記アンカーを、前記スリット状の貫通孔に、前記係止体が前記壁体の裏側に達するまで挿入する挿入工程と、前記棒材を介して前記係止体を前記壁体の裏側にて回転させる回転工程と、前記係止体の回転を止めた状態で、前記棒材に引き抜き方向の力を加えることで、前記係止体を前記壁体の裏側壁面に係止させる係止工程と、を有するアンカーの取付方法を提供する。
【0016】
本発明によれば、棒材の先端部に動かないように固定した係止体を、その固定した姿勢のまま、スリット状の貫通孔に通して、壁体の裏側まで挿入することができる。
係止体を、壁体の裏側壁面に係止し得る位置まで回転させ、その状態で棒材に引き抜き方向の力を付与することで、壁体の裏側壁面に係止させることができるため、スリットやピン等の強度低下を招く要素を必要としない構造のアンカー、すなわち係止体と棒材を強固に接合した構造のアンカーを用いることができる。したがって、壁体に対するアンカーの取付強度を高めることができる。
【0017】
前記アンカーは、前記棒材の先端部に前記係止体が固定されており、前記係止体が、前記棒材の長手方向と直交する方向に延在し前記スリット状の貫通孔に挿通可能で且つ長手方向の長さが前記スリット状の貫通孔の長手方向と直交する短手方向の寸法よりも大きく設定され、前記回転工程において、前記棒材を介して前記係止体を、該係止体の長手方向が前記スリット状の貫通孔の長手方向と交差する位置まで前記壁体の裏側にて回転させることが好ましい。
【0018】
本発明によれば、アンカーを取り付ける貫通孔を、従来のように円形孔ではなく、一方に長いスリット状の貫通孔としている。そのため、係止体を、壁体の裏側壁面に係止し得る位置まで回転させ、その状態で棒材に引き抜き方向の力を付与することで、係止体を壁体の裏側壁面に押圧係止させることができる。
したがって、壁体に対するアンカーの取付強度を高めることができる。
【0019】
前記穿孔工程では、回転する穿孔工具により、複数の孔を列の端から順番に、隣合う孔同士の一部を重複させながら一列に穿設して、スリット状の貫通孔を形成することができる。
1つの回転する穿孔工具を用いて順番に穿孔することにより、スリット状の貫通孔を形成することができる。
【0020】
前記穿孔工程では、先行して穿設した貫通孔の隣に次の貫通孔を穿設するに当たり、先行して穿設した貫通孔の中に、次の貫通孔を穿設する穿孔工具の位置ずれによる侵入を規制する穿孔治具を挿入し、この穿孔治具に沿って、次の貫通孔を前記穿孔工具により形成し、順次これを繰り返して、スリット状の貫通孔を形成することができる。
先行して穿設した貫通孔に穿孔治具を挿入することにより、次の貫通孔を位置ずれせずに形成することができる。したがって、精度の良いスリット状の貫通孔を形成することができる。
【0021】
前記穿孔治具は、先行して穿設された貫通孔に挿入されることで前記貫通孔の内壁に当接または近接する治具基体を備え、前記治具基体は、前記穿孔工具の外周が接することで前記穿孔工具の位置ずれを規制する凹状案内壁を有し、前記凹状案内壁は、前記穿孔工具が入り込む切欠部を画成するように形成されていることが好ましい。
この構成によれば、先行して穿設した貫通孔に挿入した穿孔治具の凹状案内壁によって、次の貫通孔を穿設する穿孔工具の位置ずれを防止することができる。したがって、精度の良いスリット状の貫通孔を形成することができる。
【0022】
本発明では、前記穿孔工具に前記穿孔治具を取り付け、次の貫通孔の穿設の際に該貫通孔への前記穿孔工具の挿入と並行して、先行して穿設された隣の貫通孔に前記穿孔治具を挿入することで、この穿孔治具によって、前記次の貫通孔を穿設する穿設工具の位置ずれを規制することができる。
この方法によれば、穿孔工具に穿孔治具を取り付けることによって、穿孔工具の位置ずれを防止することができる。したがって、穿孔治具の取り扱いを容易にすることができる。
【0023】
本発明は、前記アンカーの取付構造に用いられるアンカーであって、前記棒材の先端部に前記係止体が固定され、前記係止体は、前記貫通孔を通して前記壁体の裏側に達して前記アンカーが回転された状態で、前記棒材に引き抜き方向の力が加えられることで、前記壁体の裏側壁面に係止可能であるアンカーを提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、棒材の先端部に動かないように固定した係止体を、その固定した姿勢のまま、スリット状の貫通孔に通して、壁体の裏側まで挿入することができる。
係止体を、壁体の裏側壁面に係止し得る位置まで回転させ、その状態で棒材に引き抜き方向の力を付与することで、壁体の裏側壁面に係止させることができるため、スリットやピン等の強度低下を招く要素を必要としない構造のアンカー、すなわち係止体と棒材を強固に接合した構造のアンカーを用いることができる。
したがって、壁体に対するアンカーの取付強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態のアンカーの取付構造の断面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3】アンカーの斜視図である。
図4】貫通孔及びアンカーの平面図である。
図5】壁体に形成したスリット状の貫通孔を示す斜視図である。
図6】穿孔治具を示す斜視図である。
図7】アンカーの取付手順の説明図であり、壁体に第1の貫通孔を穿設している状態を示す斜視図である。
図8】アンカーの取付手順の説明図であり、第1の貫通孔の周壁部に穿孔治具の回転止めのための小孔を穿設している状態を示す斜視図である。
図9】穿孔工具(ドリル)を用いて壁体に孔を穿設する方法の説明図である。
図10】アンカーの取付手順の説明図であり、第1の貫通孔に穿孔治具を挿入した状態を示す斜視図である。
図11】アンカーの取付手順の説明図であり、第1の貫通孔に挿入した穿孔治具の規制作用を受けながら壁体に第2の貫通孔を穿設している状態を示す斜視図である。
図12】アンカーの取付手順の説明図であり、第2の貫通孔の周壁部に穿孔治具の回転止めのための小孔を穿設している状態を示す斜視図である。
図13】アンカーの取付手順の説明図であり、第2の貫通孔に穿孔治具を挿入した状態を示す斜視図である。
図14】アンカーの取付手順の説明図であり、第2の貫通孔に挿入した穿孔治具の規制作用を受けながら壁体に第3の貫通孔を穿設している状態を示す斜視図である。
図15】アンカーの取付手順の説明図であり、第3の貫通孔の周壁部に穿孔治具の回転止めのための小孔を穿設している状態を示す斜視図である。
図16】アンカーの取付手順の説明図であり、第3の貫通孔に穿孔治具を挿入した状態を示す斜視図である。
図17】第1の貫通孔から第5の貫通孔までを同じ手順で順次形成することにより、所定長さを有するスリット状の貫通孔を完成させた状態を示す斜視図である。
図18】スリット状の貫通孔にアンカーの先端部の係止体を挿入しようとしている状態を示す斜視図である。
図19】スリット状の貫通孔を通して、アンカーの先端部の係止体を、壁体の裏側まで挿入した状態を示す斜視図である。
図20】アンカーの先端部の係止体を、壁体の裏側で90°回転させた状態を示す斜視図である。
図21】アンカーの基端側に座金板を介してナットを螺合することにより、係止体を壁体の裏側壁面に押圧係止させた状態を示す斜視図である。
図22】本発明の他の実施形態の説明図であり、円弧状の曲線に沿って形成されたスリット状の貫通孔にそれに対応した形状の係止体を有するアンカーを挿通した状態を、アンカーの基端側から見た図である。
図23】本発明の他の実施形態の説明図であり、十字状に形成されたスリット状の貫通孔にそれに対応した十字状の係止体を有するアンカーを挿通した状態を、アンカーの基端側から見た図である。
図24】穿孔治具の他の例を示す斜視図である。
図25】貫通孔の形成方法の他の例を示す説明図である。
図26】穿孔治具の他の例および穿孔工具の他の例を示す斜視図である。(a)は全体図、(b)は(a)のC−C断面図、(c)は(a)のD−D断面図である。
図27】前図の穿孔治具および穿孔工具を示す分解斜視図である。
図28】貫通孔の形成方法の他の例を示す説明図である。
図29】従来のアンカーボルトの構成を示す側面図である。
図30】(a)〜(d)は、従来のアンカーボルトを壁体に取り付ける手順を説明するための側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は実施形態のアンカーの取付構造の断面図、図2図1の要部拡大図、図3はアンカーの斜視図、図4は貫通孔およびアンカーの平面図である。また、図5は壁体に形成したスリット状の貫通孔を示す斜視図である。
【0027】
図1に示すように、鉄筋コンクリート構造物2は、地下に構築されたトンネル状の構造物であり、下壁3と、下壁3の側縁部に立設された側壁5(以下「壁体」と言う)と、壁体5の上縁部に設けられた上壁4とを有する。側壁5の内部には縦鉄筋6や横鉄筋7が設けられており、貫通孔50は鉄筋6、7を避けて形成されている。符号1は地面である。Aは内空側(内部)、Bは土砂側(外部)を示す。
この実施形態のアンカーの取付構造及び取付方法は、側壁5に対して適用されている。施工は内空側Aからのみ行うことができる。
【0028】
<アンカーの取付構造の概略>
実施形態の取付構造は、図1及び図2に示すように、壁体5に、壁体5の表側壁面5Aから裏側壁面5Bまで貫通するスリット状の貫通孔50を形成し、そのスリット状の貫通孔50に、アンカー10が取り付け固定されている。
【0029】
<スリット状の貫通孔の定義>
ここで、スリット状の貫通孔50は、穿孔方向に垂直な面内において、第1の方向(実施形態では水平方向)の開口寸法が長く、第1の方向と交差する第2の方向(実施形態では上下方向)の開口寸法が短い貫通孔を指す。なお、長い方向である第1の方向を長手方向、短い方向である第2の方向を幅方向または短手方向と呼ぶ。本実施形態では、スリット状の貫通孔50は、水平方向(長手方向)に直線状に形成されている。
【0030】
<アンカーの構成>
アンカー10は、図3に示すように、棒材11の先端部11aに長円形板状の係止体12を固着したもので、側方から見た形状がT字形をなしている。棒材11の基端部11bには、ナット15(図1及び図2参照)を螺合するための雄ねじ13が形成されている。
アンカー10は、「アンカーボルト」とも言う。棒材11はボルト本体11ともいう。なお、係止体12の平面視形状は図示例に限定されない。係止体12は、第1の方向の寸法が第2の方向の寸法より大きくされていればよく、例えば長方形板状であってもよい。
【0031】
係止体12は、棒材11の長手方向と直交する方向に延在しスリット状の貫通孔50に挿通可能で且つ長手方向の長さがスリット状の貫通孔50の長手方向と直交する短手方向の寸法よりも大きく設定された板体である。係止体12は、その長手方向の中間部(例えば略中央部)で、棒材11の先端部に固定されている。棒材11と係止体12の固定は、例えば、溶接などの強固な接合手段を用いるのが望ましい。
棒材11及び係止体12は、例えばステンレス鋼などの金属製とすることができる。アンカー10は、金属製に限らず、樹脂製、炭素繊維製などであってもよい。なお、係止体12が棒材11に固定される位置は、係止体12の長手方向の中間部に限らず、係止体12の長手方向の端部であってもよい。
【0032】
<スリット孔の貫通孔>
図5に示すように、スリット状の貫通孔50は、穿孔工具により、複数の貫通孔51を列の端から順番に、隣合う孔同士の一部を重複させながら、一列に直線に沿って穿設することにより形成されている。
【0033】
<アンカーの取付構造の説明>
アンカー10は、スリット状の貫通孔50に挿入されて係止体12が壁体5の裏側(土砂側B)に達し、係止体12を、図4に示すように、係止体12の長手方向がスリット状の貫通孔50の長手方向と交差する位置(例えば、挿入した位置から90°回転した位置)まで、壁体5の裏側にて矢印Rで示すように回転し、その状態で、棒材11に引き抜き方向の力を加えることで、壁体5に固定されている。
係止体12は、図2に示すように、棒材11の基端側に当て板18を介してナット15を締め込むことで、棒材11に引き抜き方向の力が加えられて、壁体5の裏側壁面5Bに押圧係止されており、それにより、アンカー10が壁体5に固定されている。この場合の当て板18は、スリット状の貫通孔50の開口を覆う大きさに設定されている。
【0034】
<アンカーの取付方法と穿孔治具>
次に、実際に行うアンカーの取付方法とその際に使用する穿孔治具について説明する。
アンカー10を壁体5に取り付ける手順について概略を述べると、まず、図5に示すように、壁体5に、回転する穿孔工具を用いて、壁体5の表側壁面5Aから裏側壁面5Bまで貫通するスリット状の貫通孔50を形成する(穿孔工程)。
【0035】
次に、図3に示すように、棒材11の先端部に係止体12を固定した側面視T字状のアンカー10を用意する(準備工程)。そして、アンカー10の係止体12を、スリット状の貫通孔50に通して、壁体5の裏側まで挿入する(挿入工程)。
【0036】
図4に示すように、アンカー10を貫通孔50に挿入したら、棒材11を介して係止体12を、係止体12の長手方向がスリット状の貫通孔50の長手方向と交差する位置まで壁体5の裏側(土砂側B)にて回転させる(回転工程)。
次いで、図2に示すように、係止体12の回転を止めた状態で、当て板18を介してナット15を締め付けることにより、棒材11に引き抜き方向の力を加える。それにより、係止体12を壁体5の裏側壁面5Bに押圧係止させることができ(係止工程)、アンカー10を壁体5に固定することができる。
【0037】
以上の一連の工程の中のスリット状の貫通孔50の穿孔工程では、図6に示す穿孔治具70を用いる。この穿孔治具70は、先行して穿設した貫通孔の隣に次の貫通孔を穿設するに当たり、先行して穿設した貫通孔の中に挿入して、次の貫通孔を穿設する穿孔工具の位置ずれによる侵入を規制するためのものである。
【0038】
<穿孔治具の構成>
具体的に述べると、図6に示すように、この穿孔治具70は、円柱体71の外周面で構成された治具基体72を有する。治具基体72は、先行して穿設された貫通孔に挿入されることで、貫通孔の内壁に当接または近接する直径寸法を有している。実際には、治具基体72の外周と前記孔の内壁との間に、治具基体72の挿入及び抜き取りが容易にできる程度の僅かな隙間が確保されているのがよい。
【0039】
なお、本例では、中実の円柱体71の外周面で治具基体72を構成しているが、中空構造の円筒体(パイプ等)の周壁で治具基体72を構成してもよい。構成材料は軽量で硬質なものであれば何でもよいが、一般的に金属を用いる関係から、治具基体72は、剛性の高い鋼管の周壁で構成するのがよい。その際、鋼管の内部に補強材を入れたり、鋼管の両端開口を端面板で塞いだりしてもよい。
【0040】
治具基体72の外周には、貫通孔に挿入された治具基体72の回転を阻止する、回転止め手段としての2つのストッパ75が設けられている。
ストッパ75は、小円柱体(丸鋼など)で構成されており、治具基体72が貫通孔の中に挿入された際に前記孔の内壁に係合して、治具基体72の無用の回転を阻止する。ストッパ75は、治具基体72の回転を有効に阻止するために2つ以上間隔をおいて設けられているのがよい。1つでも、設ける場所によっては回転を止めることができるが、安定して回転を止めるには、2つ以上設けるのがよい。なお、ストッパ75は、治具基体72の外周に突設されたものであれば形状を問わない。例えば、治具基体72が貫通孔の中に挿入するときに、一緒に貫通孔の周壁(土砂)に切り込んで行けるリブ状の板片であってもよい。
【0041】
治具基体72には、先行して穿設された貫通孔の隣に次の貫通孔を孔同士の一部を重複させながら穿設する際に、回転する穿孔工具との干渉を避けるための断面円弧状の切欠部73が形成されている。切欠部73は、穿孔工具の外周が接することで穿孔工具の位置ずれを規制する凹状案内壁74によって画成されている。
【0042】
中実の円柱体71で治具基体72を構成する場合は、円柱体71の円筒周面の一部を円弧状に切欠くだけで、切欠部73を画成する凹状案内壁74を形成することができる。パイプ等の中空の円筒体の周壁で治具基体72を構成する場合は、凹状円弧壁を治具基体72の開口縁に接合して設けることができる。
【0043】
なお、穿孔治具70は、図6中の二点鎖線で示すように、長手方向に他の穿孔工具70を継ぎ足して長さ寸法を大きくしてもよい。
図示例では、第1の穿孔治具70Aの円柱体71の第2端部に、第2の穿孔治具70Bの円柱体71の第1端部が接合され、第2の穿孔治具70Bの円柱体71の第2端部に、第3の穿孔治具70Cの円柱体71の第1端部が接合されることによって、3つの穿孔治具70A〜70Cが直列に連結されている。円柱体71どうしの接合には、凹凸嵌合、ネジ止め等を採用できる。第2の穿孔治具70Bおよび第3の穿孔治具70Cは、ストッパ75がないことが好ましい。
複数の穿孔治具70A〜70Cからなる穿孔治具70Dを用いることによって、壁体5が厚い場合でも、深部に至るまで正確な位置に貫通孔51を形成することができる。
【0044】
次に、この穿孔治具70を用いてスリット状の貫通孔50を形成し、アンカー10を壁体5に取り付け固定する具体的な手順について述べる。
【0045】
<スリット状の貫通孔の形成手順の説明>
図7図21は貫通孔50を形成する手順を説明するための図である。
まず、図7に示すように、壁体5に、表側壁面5Aから大径の穿孔工具101で第1の貫通孔51Aを形成する。次に、図8に示すように、貫通孔の51Aの周壁の2箇所に、穿孔治具70のストッパ75の係合する小孔52を、小径ドリル102で形成する。
【0046】
図9に示すように、穿孔工具101、102は、穿孔装置110に装備されている。穿孔装置110は、壁体5の表側壁面5Aに必要に応じて支持固定されるベース111と、ベース111に立設された案内ロッド112と、案内ロッド112に案内されて穿孔方向に移動する回転駆動装置115とを有しており、回転駆動装置115の回転軸の先端に穿孔工具101、102が取り付けられている。したがって、ベース111を壁体5に支持固定し、穿孔工具101、102を回転させながら穿孔方向に推進させることによって、壁体5に垂直に孔を形成することができる。
図9に示す穿孔工具101、102は、ドリルビットである。穿孔工具101、102としては、耐久性に優れるドリルビットが好ましいが、コアドリルを使用してもよい。
【0047】
次に、図10に示すように、先に穿設した第1の貫通孔51Aに穿孔治具70を挿入する。その際、穿孔治具70の治具基体72の外周に設けた2つのストッパ75を、第1の貫通孔51Aの周壁に形成した2つの小孔52に挿入することにより、穿孔工具70を貫通孔51A内で回り止めすることができる。穿孔治具70の切欠部73は、次に穿孔しようとする貫通孔(第2の貫通孔51B)の中心に向ける。なお、小孔52は貫通孔50の一部である。
【0048】
次に、図11に示すように、第1の貫通孔51Aの隣に一部重複するように第2の貫通孔51Bを穿設する。その際、まず、第2の貫通孔51Bを穿設しようとする位置に大径の穿孔工具101を位置決めし、穿孔を開始する。そうすると、第1の貫通孔51Aに予め挿入されている穿孔治具70の切欠部73に、隣で回転する穿孔工具101の一部が入り込むので、第1の貫通孔51Aと一部が重複した形(連続した形)で第2の貫通孔51Bを形成することができる。
この際、回転する穿孔工具101の外周が穿孔治具70の凹状案内壁74に当たって穿孔工具101の位置ずれが規制されることによって、正しい位置に穿孔工具101が位置決めされながら第2の貫通孔51Bの穿設が行われる。
【0049】
第2の貫通孔51Bの穿設が完了したら、穿孔治具70を第1の貫通孔51Aから引き抜き、図12に示すように、第2の貫通孔51Bの周壁の2箇所に、穿孔治具70のストッパ75の係合する小孔52を、小径ドリル102で形成する。
図13に示すように、穿設した第2の貫通孔51Bに穿孔治具70を挿入する。この際、穿孔治具70の治具基体72の外周に設けた2つのストッパ75を、第2の貫通孔51Bの周壁に形成した2つの小孔52に挿入することにより、穿孔工具70を第2の貫通孔51B内で回り止めする。穿孔治具70の切欠部73は、次に穿孔しようとする貫通孔(第3の貫通孔51C)の中心に向ける。
【0050】
次に、図14に示すように、第2の貫通孔51Bの隣に一部重複するように第3の貫通孔51Cを穿設する。その際も、第3の貫通孔51Cを穿設しようとする位置に大径の穿孔工具101を位置決めし、穿孔を開始する。そうすると、第2の貫通孔51Bに予め挿入されている穿孔治具70の切欠部73に、隣で回転する穿孔工具101の一部が入り込むので、第2の貫通孔51Bと一部が重複した形(連続した形)で第3の貫通孔51Cを形成することができる。
この際、回転する穿孔工具101の外周が穿孔治具70の凹状案内壁74に当たって穿孔工具101の位置ずれが規制されることによって、正しい位置に穿孔工具101が位置決めされながら第3の貫通孔51Cの穿設が行われる。
【0051】
第3の貫通孔51Cの穿設が完了したら、穿孔治具70を第2の貫通孔51Bから引き抜き、図15に示すように、第3の貫通孔51Cの周壁の2箇所に、穿孔治具70のストッパ75の係合する小孔52を、小径ドリル102で形成する。
図16に示すように、穿設した第3の貫通孔51Cに穿孔治具70を挿入する。この際、穿孔治具70の治具基体72の外周に設けた2つのストッパ75を、第3の貫通孔51Cの周壁に形成した2つの小孔52に挿入することにより、穿孔工具70を第3の貫通孔51C内で回り止めする。穿孔治具70の切欠部73は、次に穿孔しようとする貫通孔(第4の貫通孔51D)の中心に向ける。
【0052】
以上の工程を順次繰り返すことにより、図17に示すように、断面円形の貫通孔51A〜51Eが直線状に一列に連なった形のスリット状の貫通孔50が完成する。
【0053】
スリット状の貫通孔50が完成したら、図18及び図19に示すように、係止体12が壁体5の裏側(土砂側B)に達するまでアンカー10をスリット状の貫通孔50に挿入する。
【0054】
図20に示すように、棒材11を介して係止体12を、係止体12の長手方向がスリット状の貫通孔50の長手方向と交差する位置まで壁体5の裏側(土砂側B)にて矢印Rのように回転させる。この例では係止体12を約90°回転させる。
係止体12の回転を止めた状態で、図21に示すように、当て板18を介して棒材11の基端の雄ねじ13にナット15を螺合して締め付けることにより、棒材11に引き抜き方向の力を加える。そうすることにより、係止体12を壁体5の裏側壁面5Bに押圧係止させることができ、それにより、アンカー10を壁体5に固定することができる。
【0055】
以上説明したように、実施形態のアンカーの取付構造及び取付方法によれば、アンカー10を取り付ける貫通孔を、従来のように円形孔ではなく、スリット状の貫通孔50としている。そのため、アンカー10の棒材11の先端部11aに動かないように固定した係止体12を、その固定した姿勢のまま、スリット状の貫通孔50に通して、壁体5の裏側(土砂側B)まで挿入することができる。
壁体5の裏側で係止体12を、壁体5の裏側壁面5Aに係止し得る位置まで回転させ、その状態で棒材11に引き抜き方向の力を付与することで、係止体12を壁体5の裏側壁面5Bに押圧係止させることができるため、スリットやピン等の強度低下を招く要素を必要としない構造のアンカー10、すなわち係止体12と棒材11を強固に接合した構造のアンカー10を用いることができる。したがって、壁体5に対するアンカー10の取付強度を高めることができる。
【0056】
また、スリット状の貫通孔50は、1つの回転する穿孔工具101を用いて順番に穿孔することにより形成するので、最小の設備で施工を行うことができる。
【0057】
貫通孔50を形成する際には、先行して穿設した貫通孔に穿孔治具70を挿入することにより、穿孔治具70の凹状案内壁74によって、次の貫通孔を穿設する穿孔工具101の位置ずれを防止することができる。したがって、次の貫通孔を位置ずれせずに形成することができ、精度の良いスリット状の貫通孔50を形成することができる。
また、穿孔工具101の位置ずれを防ぐことができるため、穿孔位置の正確さを損なうことなく、耐久性に優れるドリルビットを使用することができる。
【0058】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0059】
例えば、切欠部73の形状を調整することにより、図22に示すように、略円弧形のスリット状の貫通孔60を形成することができる。アンカー80の係止体82の形状は、スリット状の貫通孔60の断面形状に対応させて略円弧形の湾曲形状に設定することができる。
【0060】
図23に示すように、2つのスリットを十文字に組み合わせた形状の貫通孔100を採用してもよい。その場合は、例えば十文字に形成した係止体92を有するアンカー90を使用する。係止体92は、長円形板状の係止体12(図4参照)を十文字に組み合わせた形状の板状である。係止体92を挿入位置から45°回転させた位置とすることにより、係止体92を壁体5の裏側壁面に係止させることができる。
図4図22および図23に示すように、スリット状の貫通孔を採用することによって、施工条件等に合わせて、その条件等に適した係止体の形状を選択できる。
【0061】
係止体は、壁体の裏側にて回転された状態で棒材に引き抜き方向の力が加えられることで、壁体の裏側壁面に係止可能であれば、その形状は限定されない。詳しくは、係止体は、係止体は、貫通孔に挿通するときの形態と、裏側壁面で回転させた後の形態が異なる形状であればよく、例えば三角形、矩形などの多角形の板体であってもよいし、半円形、不定形などであってもよい。
【0062】
なお、アンカー10の施工は、すべての操作を壁体5の内空側Aから行ってもよいが、一部の操作を壁体5の外側(土砂側B)から行ってもよい。例えば、図20に示すように、係止体12を回転させる際に、外側(土砂側B)から係止体12に回転方向の力を加えることもできる。これによって、係止体12を回転させる操作が容易になる。
また、上記実施形態では、係止体12は一定厚さの板状であるが、係止体12は、回転方向側の側縁部を他の部分より薄く形成してもよい。これによって、係止体12を土砂中で回転させる際の抵抗を少なくすることができる。
【0063】
次に、穿孔治具の他の例を説明する。図24は、この例の穿孔治具170を示す。穿孔治具170は治具基体172を有する。治具基体172は、隣合う複数の貫通孔51A,51Bにそれぞれ挿入される2つの挿入部177が互いに一体化された形状を有する。挿入部177は、それぞれ貫通孔51A,51Bの内壁に当接または近接する。
挿入部177は、図6に示す治具基体72と類似の形状を有する。穿孔治具170は、図6に示す治具基体72を2つ並列させ、一方の治具基体72の切欠部73内に他方の治具基体72の一部を配置した状態で、これら2つの治具基体72を一体化した形状を有する。なお、挿入部の数は3以上の任意の数でもよい。
【0064】
この穿孔治具170を用いて貫通孔50を形成する方法を、図25を参照して説明する。
図25(a)に示すように、この例の貫通孔50の形成方法は、第2の貫通孔51Bを穿設するまでは、図7図11により説明した方法と同じである。
図25(b)に示すように、貫通孔51A,51B内に穿孔治具170を挿入した状態で、図25(c)に示すように、穿孔治具170の切欠部173に穿孔工具101の一部が入り込むようにしつつ、穿孔工具101で第3の貫通孔51Cを形成する。この際、穿孔工具101の外周が穿孔治具170の凹状案内壁174に当たって穿孔工具101の位置ずれが規制されることによって、正しい位置に穿孔工具101が位置決めされながら第3の貫通孔51Cの穿設が行われる。次いで、図25(d)に示すように、穿孔治具170を貫通孔51A,51Bから引き抜く。これらの工程を順次繰り返すことにより、図17に示すスリット状の貫通孔50を形成することができる。
この方法では、貫通孔51B〜51Eについては小孔52を形成する必要がないため、作業が容易となる。
【0065】
次に、穿孔治具のさらに他の例を説明する。図26(a)はこの例の穿孔治具270及び穿孔工具301の全体図である。図26(b)は図26(a)のC−C断面図であり、図26(c)は図26(a)のD−D断面図である。図27は、穿孔治具270及び穿孔工具301の分解斜視図である。
穿孔治具270は、細径の連結軸部276により軸方向に互いに連結された2つの治具基体272(先端側の治具基体272Aと基端側の治具基体272B)を有する。治具基体272は、断面円弧状の切欠部273を画成する凹状案内壁274を有する。
【0066】
穿孔治具270は、穿孔工具301に取り付けられて用いられる。この例では穿孔工具301は、細径の連結軸部306により軸方向に互いに連結された2つのドリルビット302(先端側のドリルビット302Aと基端側のドリルビット302B)を有する。
穿孔治具270は、ドリルビット302Aの一部が治具基体272Aの切欠部273に入り込み、かつドリルビット302Bの一部が治具基体272Bの切欠部273に入り込んだ状態で、穿孔工具301と並列して配置される。
図26(a)および図26(b)に示すように、穿孔治具270の連結軸部276と、穿孔工具301の連結軸部306とは、ともに筒状の連結体280に挿通している。穿孔治具270と穿孔工具301とは、連結体280によって、互いに離間する方向の移動が規制されている。図26(c)に示すように、穿孔治具270は、穿孔工具301の回転を妨げることなく穿孔工具301に取り付け可能である。すなわち、ドリルビット302は、穿孔治具270が装着された状態のまま軸回り方向に回転可能である。
【0067】
図28(a)に示すように、穿孔治具270を用いて貫通孔50を形成するには、まず、穿孔工具101(図7参照)によって貫通孔51Aを穿設する。次いで、穿孔工具301を用いて貫通孔51Bを穿設する。この際、貫通孔51Bへの穿孔工具301の挿入と並行して、貫通孔51Aに穿孔治具270を挿入することで、穿孔治具270によって穿孔工具301の位置ずれを規制する。この工程を順次繰り返すことにより、スリット状の貫通孔50を形成する。この方法では、小孔52を形成する必要がないため、作業が容易となる。
【0068】
上記実施形態では、1つの貫通孔50に1つのアンカー10が設けられているが、1つの貫通孔50に複数のアンカー10を設けてもよい。その場合には、複数のアンカー10を貫通孔50の長手方向に間隔をおいて設けることができる。これによって、構造物の強度を高めることができる。
また、アンカー10を取り付けた後、貫通孔50の内部の空間にモルタル等の充填材を充填することによって、構造物の強度を高めることもできる。
【0069】
本発明では、穿孔工具を支持する部材(図9の穿孔装置110の穿孔工具101と一緒に前進後退する図示略のフレーム等)に穿孔治具70を取り付けることもできる。
次の貫通孔の穿設の際に貫通孔への穿孔工具101の挿入と並行して、先行して穿設された隣の貫通孔に穿孔治具70を挿入することで、穿孔治具70によって、次の貫通孔を穿設する穿設治具101の位置ずれを規制することができる。この際、穿孔工具101を支持する部材により、穿孔治具70の回転止めを行うことができるので、穿孔治具70の取付構造部分が回転止め手段に相当する。この方法を採用する場合は、穿孔治具70の取り扱いが容易となる。
【符号の説明】
【0070】
5 壁体
5A 表側壁面
5B 裏側壁面
10 アンカー
11 棒材
11a 先端部
11b 基端部
12 係止体
50 スリット状の貫通孔
51,50A〜50E 貫通孔
70,170,270 穿孔治具
72,172,272 治具基体
73,173,273 切欠部
74,174,274 凹状案内壁
101,301 穿孔工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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