【実施例】
【0017】
図1〜
図3に示すように、実施例に係るダクト10は、内部に空気(流体)が流通するダクト流体通路(流体通路)16を形成するダクト部12と、該ダクト部12に対してダクト延在方向に相対移動可能な筒状の可動部36と、前記ダクト部12の内周面に配設された環状のシール材34と、ダクト延在方向にシール材34を挟んで位置するようダクト部12および可動部36の夫々に設けられてダクト延在方向にシール材34を圧縮可能な圧縮部20,40と、圧縮部20,40によりシール材34をダクト延在方向に圧縮した状態でダクト部12および可動部36の相対位置を保持する保持部22とを備えている。そして、ターボチャージャーやエンジンのスロットルバルブ等の連結対象物52に設けた連結部54を、前記ダクト10(具体的には可動部36)の端部で開口する差込口10aから差し込んでシール材34の内側に嵌挿することにより、ダクト部12の内周面と連結部54の外周面との間をシールするよう構成されている。前記ダクト10は、エンジンルームに配設される他の部材を避けたり、連結対象物52の位置関係等により適宜に弯曲したり屈曲した形状とされるが、ダクト10において連結部54が差し込まれる範囲は直線状に延在するよう形成されており、当該ダクト10において連結部54が差し込まれる端部の延在方向をダクト延在方向と指称するものとする(
図3参照)。そして、前記連結部54の外周面において前記シール材34により最終的にシールされる位置をシール予定部54aと指称する(
図4(b)参照)。なお前記ダクト部12や可動部36の材質としては、耐熱性や成形性の観点から、高剛性のポリアミド(PA)や、繊維補強ポリアミド(PA)を用いることが多く、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の合成樹脂を用いることができる。
【0018】
ここで、連結対象物52に形成される連結部54の形態は、連結対象物52の種類や要求される性能等に応じて様々名タイプが存在する。例えば、連結対象物52には、外郭部56から一定の外径形状で筒状に突出する連結部54や、その先端に径方向外側へ突出する抜け止め用の突起を一段または複数段有する連結部54等が一般に設けられて、当該連結部54にダクト10が連結されるようになっている。なお、このような連結部54は、横断面が円形をなす円筒状や矩形をなす矩形筒状或いは楕円状等に形成される。
図3および
図4には、横断面が円形をなす円筒状に形成されると共にその先端に一段の突起が形成された連結部54を図示してある。以下の説明では、連結部54において一定の外径寸法で円筒状に形成された部分を同径筒部60と指称し、当該同径筒部60の先端に全周に亘って延在するよう形成された抜け止め用の突起を突出部62と指称する場合がある。なお、前記連結部54には、空気(流体)が流通する連結流体通路58が貫通形成されており、ダクト10に対してシール材34によりシール状態で連結部54が連結されることで、ダクト10のダクト流体通路16と連結部54の連結流体通路58とが密封状態で連通するようになっている。
【0019】
(ダクト部)
図3、
図4に示すように、前記ダクト部12は、前記流体通路16が形成されてダクト10の本体を形成する筒状のダクト本体19と、前記ダクト本体19の端部に形成されて前記シール材34が配置された摺動筒部18とを有している。そして、摺動筒部18におけるダクト本体19と反対側の端部開口(以下ダクト部開口12aという)を介して、前記可動部36がダクト延在方向に移動可能な状態で摺動筒部18に内挿されている。ここで、前記摺動筒部18は、前記ダクト本体19の内径寸法より大きな内径寸法に設定されており、ダクト部12の内周面側において当該ダクト本体19および摺動筒部18の境界位置が段差状に形成されている。すなわち、前記ダクト本体19における摺動筒部18側の端部20は、当該摺動筒部18に内挿された前記可動部36の端部40とダクト延在方向に対向するようになっている。なお、実施例では、前記ダクト本体19の外径寸法よりも摺動筒部18の外径寸法が大きく設定されており、ダクト部12の外周面側においてもダクト本体19および摺動筒部18の境界位置が段差状になっている。なお、前記実施例のダクト本体19および摺動筒部18の夫々は円筒状に形成されているが、連結部54の断面形状に合わせた断面形状とすることができる。すなわち、矩形筒状に形成された連結部54が連結されるダクト10の場合には、ダクト本体19および摺動筒部18を同様に矩形筒状とすることが好ましい。
【0020】
図3、
図4に示すように、前記シール材34は、前記摺動筒部18の内周面18aに外周端が当接すると共に、前記ダクト本体19における摺動筒部18側の端部20に、ダクト延在方向の一端(ダクト部12の奥側の端部)が当接する状態で配置されている。すなわち、可動部36をダクト部12の奥側へ向けて相対移動した際に、当該ダクト本体19の端部20と可動部36の端部40との間にシール材34が挟み込まれて、ダクト延在方向にシール材34を圧縮し得るようになっている。このように、実施例のダクト10では、ダクト本体19における摺動筒部18側の端部20および可動部36の端部40の夫々がダクト部12および可動部36の夫々に設けられた前記圧縮部20,40となっている。なお、ダクト部12に設けられる圧縮部を第1の圧縮部20と指称し、可動部36に設けられる圧縮部を第2の圧縮部40と指称する。
【0021】
ここで、前記シール材34には、ダクト延在方向に圧縮した際にダクトの径方向に広がるよう弾性変形するものが採用される。実施例では、シール材34として、横断面形状がO形(円形)の所謂Oリングが用いられて、摺動筒部18の内周面18aの全周に亘ってシール材34の外周側が当接するよう構成されている。すなわち、前記ダクト部12の第1の圧縮部20および可動部36の第2の圧縮部40に挟まれてダクト延在方向にシール材34が圧縮された際に、当該シール材の外周側への弾性変形が前記摺動筒部18の内周面18aにより規制されて、当該シール材34の内周側(ダクト径方向内側)に弾性変形するよう構成されている。すなわち、摺動筒部18の内周面18aがシール材34の外周側への弾性変形を規制する規制部となっている。なおシール材34は、中実形状であっても、中空形状であってもよい。シール材34の材質としては、ゴムやエラストマーを用いることができ、耐熱性や耐油性等の観点からフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル樹脂、フッ素系ゴム、シリコーン系ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が好ましい。
【0022】
また、
図3および
図4に示すように、前記ダクト部12(摺動筒部18)におけるダクト部開口12a側の開口端部には、前記保持部22を構成する前記第1の係合部24が設けられている。この第1の係合部24は、後述するように前記可動部36に設けられた保持部22を構成する第2の係合部44に係合するよう構成されて、当該第1の係合部24および第2の係合部44の係合により、ダクト部12に対してダクト部開口12aから抜け出る方向へ可動部36が移動するのを防止するようになっている。すなわち、第1および第2の係合部24,44の係合により、前記シール材34をダクト延在方向に圧縮する位置に前記第1および第2の圧縮部20,40が保持される。前記第1の係合部24は、ダクト部12の周方向に均等に離間して複数設けられている。実施例では、ダクト部12の開口端部に、周方向に約180度離間して2つの第1の係合部24が形成されている。前記第1の係合部24は、ダクト延在方向に延在するよう開口端部から突出形成されると共にダクト径方向に弾性変形可能な差込片26と、該差込片26の延出端部からダクト径方向外側に延出する爪部28とを備え、該爪部28の外周面には、前記差込片26から離間するにつれて径方向内側に傾斜する傾斜面28aが形成されている。
【0023】
(可動部)
図3に示すように、前記可動部36は、前記ダクト部12(具体的には摺動筒部18)のダクト部開口12aから内挿されると共にダクト延在方向に貫通する筒状の基部38と、前記基部38の一方端部からダクト径方向外側へ突出する張出部41とを備えている。すなわち、前記基部38が摺動筒部18の内周面18aに沿って摺動する状態で、ダクト部12に対して可動部36をダクト延在方向(すなわちダクト部12の奥側へ基部38が移動する方向および当該ダクト部12から基部が抜け出る方向)に相対移動させ得るようになっている。ここで、前記基部38の内径寸法は、前記連結部54の外径寸法以上(より詳細には、突出部62の外径寸法B2以上)に設定され、摺動筒部18に基部38を内挿した状態で、連結部54を基部38に差し込み可能となっている。すなわち、前記可動部36における前記張出部41側の開口が、前記連結対象物52の連結部54が差し込まれるダクト10の差込口10aとなっている。
【0024】
そして、
図4に示すように、ダクト部12に内挿された基部38の端部が、ダクト部12の第1の圧縮部20に対してシール材34を挟んで対向する前記第2の圧縮部40となっており、ダクト部12と可動部36との相対移動(具体的にはダクト部12の奥側へ向けた基部38の相対移動)に伴って、当該第1および第2の圧縮部20,40によりシール材34がダクト延在方向に圧縮される。すなわち、第2の圧縮部40がシール材34から離間した状態から(
図4(a)参照)、シール材34に第2の圧縮部40が近づくようダクト部12(第1の圧縮部20)および可動部36(第2の圧縮部40)がダクト延在方向に相対移動することで、第1の圧縮部20および第2の圧縮部40の間でシール材34がダクト延在方向に圧縮されるようになっている(
図4(b)参照)。ここで、前記第1および第2の圧縮部20,40は、前記シール材34におけるダクト延在方向の端部の全周に当接するよう構成されており、当該第1および第2の圧縮部20,40によりシール材34の全周を均等に圧縮し得るようになっている。
【0025】
ここで、前記両圧縮部20,40によりシール材34がダクト延在方向に圧縮された際には、ダクト部12の摺動筒部18によりダクト径方向外側へのシール材34の変形が制限されるので、シール材34はダクト径方向内側へ広がるよう弾性変形する。このとき、
図5(e)に示すように、連結部54を嵌挿していない状態で両圧縮部20,40により圧縮されたシール材34の内径寸法A2は、前記連結部54の同径筒部60(シール予定部54a)の外形寸法B1より小さくなるよう設定され、両圧縮部20,40の圧縮に伴ってダクト延在方向内側に弾性変形したシール材34が、連結部54のシール予定部54aに押し付けられてシールするよう構成されている。すなわち、シール材34の内径寸法は、連結部54を差し込まない状態で両圧縮部20,40により圧縮されたシール材34の内径寸法A2が、前記連結部54の同径筒部60(シール予定部54a)の外形寸法B1より小さくなる範囲で、連結部54を差し込み可能であれば、最終的に発揮させるシール力に応じて設定できる。実施例では、
図5(a)に示すように、連結部54を差し込まない状態で、両圧縮部20,40によりダクト延在方向に圧縮する前のシール材34の内径寸法A1が、前記連結部54の同径筒部60(シール予定部54a)の外形寸法B1以上に設定されている。より詳細には、シール材34の前記内径寸法A1は、同径筒部60の外径寸法B1より大きく設定されて、同径筒部60によりシール材34がダクト径方向に圧縮されないよう構成されている。また、シール材34の前記内径寸法A1は、連結部54における突出部62の外径寸法B2より小さくなるよう設定されており、当該シール材34の配設位置よりも突出部62をダクト部12の奥側まで差し込むことで、ダクト10が連結部54から脱落するのを抑制するようになっている。
【0026】
また、
図1、
図2または
図4に示すように、前記可動部36の基部38をダクト部12の摺動筒部18に内挿した状態において、前記ダクト部開口12aから前記張出部41が突出するよう構成されている。すなわち、前記差込口10aに連結部54を差し込んだ際に、前記第1および第2の圧縮部20,40によりシール材34をダクト延在方向に圧縮する前の状態で、ダクト部12の外側に突出した張出部41側の可動部36の端部45を連結対象物52の外郭部56に当接させて、連結対象物52に対して可動部36を位置規制し得るようになっている。以下の説明では、前記可動部36において、ダクト部12の外側に突出して連結対象物52の外郭部56に当接可能な端部を当接部45と指称する。すなわち、当接部45を連結対象物52に当接することで、当該連結対象物52に対して位置規制された可動部36に対してダクト部12をダクト延在方向に移動することで、当該ダクト延在方向にシール材34を圧縮し得るようになっている。
【0027】
また、
図1、
図2および
図4に示すように、前記張出部41は、前記基部38の外周面から前記ダクト部12における前記摺動筒部18の外周面より径方向外側まで延出するよう形成されており、当該張出部41に、前記保持部22を構成して前記ダクト部12の第1の係合部24と係合可能な第2の係合部44が設けられている。ここで、前記第2の係合部44は、ダクト延在方向に開口して前記第1の係合部24(差込片26および爪部28)を差し込み可能な挿入口46と、前記挿入口46におけるダクト径方向外側の開口縁を形成し、挿入口46に差し込まれた第1の係合部24の爪部28と係合可能な係止片50とを備えている。このように、前記ダクト部12の第1の係合部24と、可動部36の第2の係合部44は、ダクト延在方向に離間するよう位置している。すなわち、ダクト部12および可動部36を両係合部24,44が近接するようダクト延在方向に相対移動することにより、第1の係合部24を第2の係合部44の挿入口46に差し込んで、当該第1の係合部24の爪部28を第2の係合部44の係止片50に係合させ得るよう構成される。なお、第1の係合部24の爪部28を前記挿入口46に差し込む際には、当該挿入口46の開口縁に爪部28の傾斜面28aが当接して、当該傾斜面28aにより差込片26がダクト径方向内側に弾性変形すると共に、爪部28が挿入口46を通過することで差込片26が弾性帰することで、当該爪部28が係止片50に係合するようになっている。
【0028】
ここで、
図4に示すように、第1の圧縮部20から第1の係合部24の爪部28(第2の係合部44との係合位置)までの寸法Cは、第2の圧縮部40から第2の係合部44の係止片50(第1の係合部24との係合位置)までの寸法Dより長くなるよう設定されている。そして、前記寸法Cと前記寸法Dとの差が、両圧縮部20,40で圧縮される前のシール材34におけるダクト延在方向の寸法E(
図5(d)参照)より小さくなるよう設定されている。このため、
図4および
図5(d)に示すように、両係合部22,44が係合した状態では、第1の圧縮部20および第2の圧縮部40により挟まれたシール材34がダクト延在方向に圧縮される。すなわち、第1の係合部24と第2の係合部44とが係合することで、圧縮部20,40により圧縮されたシール材34の復元力によりダクト部12のダクト部開口12aから可動部36が抜け出る方向へ相対移動するのを規制して、圧縮部20,40によりシール材34をダクト延在方向に圧縮する位置にダクト部12および可動部36を保持するようになっている。
【0029】
(仮止部)
また、
図3および
図4に示すように、前記ダクト10は、ダクト部12に対して可動部36を仮止めする仮止部30を備えている。前記仮止部30は、ダクト部12の摺動筒部18に設けられてダクト径方向に貫通する仮止開口32と、前記可動部36の基部38における前記仮止開口32と対応する位置に設けられ、ダクト径方向外側に突出して仮止開口32に挿入される仮止突起42とから構成されている。すなわち、実施例のダクト部12および可動部36は、仮止開口32のダクト延在方向の開口縁に仮止突起42が接触する範囲で相対移動させ得るようになっており、ダクト部開口12aから脱落することなくダクト部12および可動部36を一体に扱い得るようになっている。なお、仮止開口32および仮止突起42のダクト延在方向の幅は、第2の圧縮部40がシール材34から離間する状態と、当該第2の圧縮部40を第1の圧縮部20に相対的に近接移動させて両圧縮部20,40によりシール材34をダクト延在方向に圧縮する状態(第1および第2の係合部24,44が係合する状態)との間で、ダクト部12および可動部36をダクト延在方向に相対移動し得るよう寸法設定される。
【0030】
また、仮止開口32および仮止突起42のダクト周方向の幅は、概ね一致した大きさに設定されており、ダクト部12および可動部36がダクト周方向に相対移動するのを仮止部30で規制するようになっている。すなわち、実施例のダクト10は、前記第1の係合部24および第2の係合部44が常にダクト延在方向に並ぶよう構成されており、圧縮部20,40によりシール材34をダクト延在方向に圧縮するようダクト部12および可動部36を相対移動することにより、第1の係合部24および第2の係合部44を係合し得るようになっている。
【0031】
ここで、
図4に示すように、前記仮止開口32は、前記シール材34の配設位置よりもダクト部開口12a(差込口10a)側に位置するよう摺動筒部18に設けられ、シール材34によるシール性が当該仮止開口32により損なわれないようになっている。また、実施例の前記基部38には、各仮止突起42を周方向に挟む1対のスリット43が形成され、仮止突起42をダクト径方向内側に弾性変形させながらダクト部開口12aから基部38を摺動筒部18に差し込むことで、仮止突起42を仮止開口32に容易に臨ませ得るようになっている。なお、前記スリット43は、前記連結部54の外側に位置するためシール性に影響を及ぼすことはない。
【0032】
(実施例の作用)
次に、実施例に係るダクト10およびシール構造の作用について説明する。実施例に係るダクト10およびシール構造では、シール材34を挟んで位置する第1の圧縮部20および第2の圧縮部40によりシール材34をダクト延在方向に圧縮した際に、摺動筒部18の内周面18aにより外周側への弾性変形が規制されたシール材34をダクト径方向内側に突出するよう弾性変形させて連結部54の外周面に該シール材34が押し付けられることで、最終的に要求されるシール力を発揮する。すなわち、両圧縮部20,40によりシール材34をダクト延在方向に圧縮する前の段階(すなわち、最終的なシール力が得られる前の段階)では、両圧縮部20,40によりシール材34をダクト延在方向に圧縮した状態と比べて、シール材34の内径寸法を大きくできる。すなわち、ダクト延在方向への圧縮に伴ってシール材34の径が縮小される前の段階で連結対象物52の連結部54をシール材34に嵌挿することができるから、連結部54をシール材34に嵌挿する際の挿入荷重を軽減することが可能となり、連結部54をシール材34に嵌挿し易くなる。そして、連結部54を所定の取付位置まで差し込んだ状態において、第1の圧縮部20および第2の圧縮部40によりダクト延在方向に圧縮したシール材34を連結部54の外周面に押し付けることで、最終的に必要なシール力を得ることができ、シール性が損なわれるのを防ぐことができる。
【0033】
このように、シール材34に連結部54を嵌挿した状態で、当該シール材34をダクト延在方向に圧縮し得るよう構成することで、ダクト10と連結部54とを連結する際の抵抗を抑制して連結対象物52の連結作業性を高めつつ、所要のシール力を得ることができる。また、シール材34に連結部54を嵌挿してから当該シール材34をダクト延在方向に圧縮することにより、シール材34をダクト延在方向に圧縮する前の段階では、連結部54をシール材34に嵌挿し易く、シール材34をダクト延在方向に圧縮した後は、シール材34が連結部54の外周面に押し付けられるので連結部54がダクト10に対してダクト延在方向へ相対移動し難くなる。すなわち、シール材34に連結部54を嵌挿した状態で、当該シール材34をダクト延在方向に圧縮し得るよう構成することで、ダクト10を連結部54に連結し易く、ダクト10が連結部54から脱落し難い。
【0034】
また、実施例に係るダクト10およびシール構造では、第1の圧縮部20および第2の圧縮部40をダクト延在方向に近接移動してシール材34をダクト延在方向に圧縮した際に、ダクト延在方向に並ぶように配置された第1の係合部24および第2の係合部44を係合させることができる。すなわち、シール材34をダクト延在方向に圧縮して所要のシール力でシールする状態とするのと同時に、第1の係合部24および第2の係合部44を係合させて当該シール力を発揮する状態を保持できる。
【0035】
実施例に係るダクト10およびシール構造では、差込口10aに対してダクト延在方向に連結部54を差し込んだ際に、可動部36に設けた当接部45が連結対象物52の外郭部56に当接することで連結対象物52に対して可動部36を位置規制することができる。このため、差込口10aに対する連結部54の差し込み動作に伴って、第1の圧縮部20および第2の圧縮部40によりシール材34をダクト延在方向に圧縮するようダクト部12を可動部36に対して相対移動させることができると共に、ダクト延在方向に並ぶように設けられたダクト部12の第1の係合部24と可動部36の第2の係合部44とを係合させることができる。すなわち、差込口10aに対して連結部54を差し込む一連の動作に伴って、シール材34をダクト延在方向に圧縮して所要のシール力でシールするのと同時に、両係合部24,44を係合させて当該シール力が得られる状態を保持することができる。
【0036】
実施例に係るダクト10およびシール構造では、仮止部30によりダクト部12に対して可動部36を仮止めできるので、連結対象物52と連結する前のダクト部12および可動部36を一体として扱うことができ、可動部36の紛失や別部材との取り違え等を抑制してダクト10の取り扱い性を向上できる。また、ダクト部12に対して可動部36を仮止めした状態で、第2の圧縮部40がシール材34から離間して両圧縮部20,40によりシール材34がダクト延在方向に圧縮される前の状態から、第2の圧縮部40が第1の圧縮部20に近接するようダクト部12および可動部36をダクト延在方向に相対移動して、両圧縮部20,40によりシール材34をダクト延在方向に圧縮することができる。このため、可動部36をダクト部12に対して仮止めしてダクト部12から可動部36が脱落しない状態で、差込口10aから連結部54を差し込むことができるので、連結部54を連結する際の作業性がよい。また、仮止部30によりダクト部12に対して可動部36を仮止めすることで、第1の係合部24および第2の係合部44がダクト延在方向に並んだ状態でダクト部12および可動部36のダクト周方向への相対移動が規制されるので、圧縮部20,40によりシール材34をダクト延在方向に圧縮するようダクト部12および可動部36を相対移動することにより、第1の係合部24および第2の係合部44を係合することができる。
【0037】
次に、
図5を参照してダクト10と連結部54とを連結する際の抵抗の変化について比較例と対比しながら説明する。
図5(a)〜(e)は、前述のように構成された実施例のダクト10と突出部62を有する連結部54とを連結する際の各段階でのシール材34周辺の拡大断面図である。一方、
図5(ax)〜(dx)は、比較例のダクト10Xと突出部62を有する連結部54とを連結する際の各段階でのシール材34X周辺の拡大断面図である。比較例は、従来技術で説明したシール構造と同様に、シール材34Xをダクト径方向へのみ圧縮することによってシールする構成であって、シール材34Xの内径寸法Axを連結部54の同径筒部60の外径寸法B1よりも小さくすることで、実施例と同じシール力Fを発揮するよう設定されている。
【0038】
図5(ax)に示すように、比較例のシール材34Xの内径寸法Axは、連結部54の同径筒部60(連結部54の先端)の外径寸法B1よりも小さいので、シール材34Xに連結部54の先端を嵌挿する際に、シール材34Xはその内径寸法Axと同径筒部60の外径寸法B1の差分だけ、すなわち最終的なシール状態と同じだけダクト径方向外側に拡張および圧縮するよう直ちに弾性変形する。これに対して、実施例では
図5(a)に示すように、両圧縮部20,40によりダクト延在方向に圧縮する前のシール材34の内径寸法A1が、同径筒部60(連結部54の先端)の外径寸法B1よりも大きいので、連結部54の突出部62における外径寸法が前記内径寸法A1に一致する部位でシール材34に接触し、そこから連結部54を更に差し込むことで、シール材34は突出部62の外周面に沿ってダクト径方向外側に徐々に拡張および圧縮するよう弾性変形する。このように比較例では、シール材34Xに連結部54の先端を嵌挿する際に、最終的なシール状態と同じだけシール材34Xを弾性変形させる必要があるのに対して、実施例では、シール材34を弾性変形することなくシール材34に連結部54の先端を差し込み、突出部62の外周面に沿って徐々にシール材34を弾性変形するので、連結部54の先端部をシール材34に嵌挿する際の抵抗が小さい。
【0039】
図5(b)および
図5(bx)に示すように、突出部62の突出端部がシール材34,34Xに嵌挿される際には、実施例および比較例では、何れも突出部62の外径寸法B2とシール材34の内径寸法A1,Axの差分だけダクト径方向外側に拡張および圧縮される。この際、実施例のシール材34の内径寸法A1は、比較例のシール材34Xの内径寸法Axより大きいので、実施例では比較例に比べてシール材34に突出部62を嵌挿する際の抵抗が小さい。
【0040】
図5(cx)に示すように、比較例では、シール材34Xに同径筒部60が嵌挿されている間、シール材34Xはその内径寸法Axと同径筒部60の外径寸法B1との差分だけ弾性変形するので、抵抗が発生する。これに対し、実施例では、
図5(c)に示すように、両圧縮部20,40によりダクト延在方向に圧縮する前のシール材34の内径寸法A1が、同径筒部60の外径寸法B1より大きいので、両圧縮部20,40によりダクト延在方向に圧縮する前のシール材34と同径筒部60とは接触しない。このように、実施例では、連結部54において同径筒部60をシール材34に嵌挿する際の抵抗を軽減できる。
【0041】
図5(dx)に示すように、比較例では、連結部54を所定の取付位置まで差し込んで連結が完了した状態では、シール材34Xはその内径寸法Axと同径筒部60(シール予定部54a)の外径寸法B1との差分だけダクト径方向外側に拡張および圧縮され、シール力Fを発揮する。一方実施例では、
図5(d)に示すように、連結部54を所定の取付位置まで差し込んで連結が完了した状態では、両圧縮部20,40によりダクト延在方向に圧縮されたシール材34が連結部54の外周面に押し付けられることでシール力Fを発揮する。
【0042】
このように、実施例では、シール材34に連結部54の先端部を嵌挿する際、シール材34に突出部62を嵌挿する際、およびシール材34に同径筒部60を嵌挿する際の各抵抗が、比較例の対応する抵抗より小さいので、比較例に比べてシール材34に連結部54を嵌挿する際の挿入荷重が低減されている。また、実施例では、所定の取付位置まで連結部54を差し込んで連結が完了すると、両圧縮部20,40によりダクト延在方向に圧縮されたシール材34が連結部54の外周面に押し付けられる状態が保持されるので、実施例のダクト10の連結部54からの脱落し難さは、比較例のダクト10Xの連結部54からの脱落し難さと同等以上となる。ここで、比較例では、シール材34Xに突出部62を嵌挿する際に、最終的なシール状態よりもシール材34Xが弾性変形した状態となるため、最終的なシール力の上限値は、シール材34Xに突出部62を嵌挿し得る範囲で設定する必要がある。実施例では、第1の圧縮部20および第2の圧縮部40によりシール材34をダクト延在方向に圧縮することで最終的なシール力を発現させることができるので、設定し得るシール力の上限値を比較例より上げることが可能である。
【0043】
ここで、比較例のダクト10Xと突出部62のない連結部54(連結部54全体の外径寸法がシール予定部52aの外径寸法と同じ)とを連結する場合には、連結部54の先端をシール材34Xに嵌挿する段階で、シール材34は最終的なシール状態と同じだけ弾性変形し、この弾性変形に伴う復元力に応じた摩擦抵抗が生じた状態で連結部54を所定の取付位置まで差し込む必要がある。これに対し、実施例のダクト10と突出部62のない連結部54とを連結する場合には、両圧縮部20,40でダクト延在方向に圧縮する前の段階では、殆ど抵抗なく連結部54を差し込んでシールすることができる。
【0044】
(変更例)
・本発明に係る発明は、前述の実施例に限定されず、以下の如く変更することも可能である。なお、
図6〜
図8に示す変更例において、実施例と同じ機能を有する部材には同じ符号を付してある。
(1) ダクトは、自動車に用いられる吸気系のダクトに限定されず、住宅設備の配管などに用いられるダクトや、液体や紛体等が流通するダクト等であってもよい。また、ダクト本体に形成されるダクト流体通路の長さは任意に設定できる。
(2) 実施例では、圧縮前のシール材の内径寸法が、連結部におけるシール予定部の外径寸法より大きな例を挙げて説明したが、圧縮前のシール材の内径寸法はシール予定部の外径寸法以下であってもよい。
(3) 実施例では、シール材がダクト延在方向の一端を第1の圧縮部に当接する状態で配置されている例を挙げて説明したが、
図6(a)に示すように、シール材34が第2の圧縮部40にダクト延在方向の一端を当接した状態で固定される構成であってもよい。この場合、2色成形により可動部36とシール材34とを一体物として製造することができる。
(4) 実施例ではシール材として所謂Oリングを例に挙げて説明したが、例えば、
図6(b)に示すように、ダクト径方向に向けて傾斜する横断面形状のシール材34を用いて、両圧縮部20,40でシール材34をダクト延在方向に圧縮することで、シール材34を湾曲または屈曲させて連結部54の外周面に押し付けるようにしてもよい。また、
図6(c)に示すように蛇腹形状の横断面形状のシール材34を用いて、両圧縮部20,40でシール材34をダクト延在方向に圧縮することで、連結部54の外周面に押し付けるようにしてもよい。
(5) 本発明に係るシール構造は、
図7に示すように、可動部のないダクト10にも適用し得る。すなわち、連結部54の外周面に第1の圧縮部20との間でダクト延在方向にシール材34を挟んで位置するようダクト径方向外側に突出する第2の圧縮部40を設け、両圧縮部20,40が近接するようダクト延在方向にダクト10および連結対象物52を相対移動することで、両圧縮部20,40によりシール材34をダクト延在方向に圧縮するよう構成してもよい。またこの場合、連結対象物52(具体的には外郭部56)においてダクト10に設けた第1の係合部24と対応する位置に、該第1の係合部24に係合する第2の係合部44を形成し、前記両圧縮部20,40によりシール材34をダクト延在方向に圧縮するようダクト10および連結対象物52をダクト延在方向に相対移動することで、両圧縮部20,40によりシール材34をダクト延在方向に圧縮した位置で、第1の圧縮部20および第2の圧縮部40を保持することができる。
(6) 実施例では、ダクト部をダクト本体および摺動筒部で形成して、摺動筒部に可動部を内挿するようにしたが、可動部をダクト部に外挿するようにすることも可能である。具体的には、
図8に示すように、ダクト部12における差込口10a側の端部に第1の圧縮部20を設けると共に、可動部36をダクト部12に外挿されるよう構成すると共に、可動部36における差込口10a側の端部に、第1の圧縮部20との間でダクト延在方向にシール材34を挟んで位置するようダクト径方向内側へ突出する第2の圧縮部40を設けるようにしてもよい。この場合、可動部36における差込口10aとは反対側に位置する端部に第2の係合部44を形成すると共に、ダクト部12の外周面において第2の係合部44に対応する位置に該第2の係合部44に係合する第1の係合部24を設けることで、両圧縮部20,40でシール材34をダクト延在方向に圧縮した際に、両係合部24,44を係合させてダクト部12および可動部36の相対位置を保持することができる。
(7) 保持部は、ボルトとナットのような締結手段であってもよい。