【解決手段】信号解析装置10は、RF信号入力端子11から入力した無線周波数信号を所定周波数の信号に周波数変換するミキサ13と、DUT1と無線通信を行う場合のDUT1のアンテナ接続端子とRF信号入力端子11との間の無線信号伝搬環境に関する予め取得されたSパラメータを記憶するSパラメータ記憶部31と、Sパラメータ記憶部31に記憶されたSパラメータに基づいて設定されたフィルタ係数を有し、ミキサ13によって周波数変換された信号に対しフィルタ係数によりフィルタ処理を行うFIRフィルタ33と、フィルタ処理された信号を解析する信号解析部16と、を備える。
試験対象の無線端末(1)との無線通信に代えてケーブル(7)を介して前記無線端末から入力する無線周波数信号を解析する試験装置(10)を用いた試験方法であって、
前記ケーブルを介して入力した前記無線周波数信号を所定周波数の信号に周波数変換する周波数変換ステップ(S13)と、
前記無線端末と前記無線通信を行う場合における前記無線周波数信号の伝搬環境に関する予め取得されたパラメータに基づいて設定されたフィルタ係数を有するフィルタ処理手段(33)により、前記周波数変換ステップにおいて周波数変換された前記信号に対し前記フィルタ係数によりフィルタ処理を行うフィルタ処理ステップ(S17)と、
フィルタ処理された前記信号を解析する信号解析ステップ(S18)と、
を含むことを特徴とする試験方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のものでは、試験対象の移動機を試験前に電波シールドボックス内に収納し、試験後に電波シールドボックスから取り出す必要があるので、移動機の測定が煩雑で手間がかかるという課題があった。
【0007】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、従来よりも容易に無線端末を試験することができる試験装置及び試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る試験装置は、試験対象の無線端末(1)との無線通信に代えてケーブル(7)を介して前記無線端末から入力する無線周波数信号を解析する試験装置(10)であって、前記ケーブルを介して入力した前記無線周波数信号を所定周波数の信号に周波数変換する周波数変換手段(13)と、前記無線端末と前記無線通信を行う場合における前記無線周波数信号の伝搬環境に関する予め取得されたパラメータを記憶するパラメータ記憶手段(31)と、前記パラメータ記憶手段に記憶された前記パラメータに基づいて設定されたフィルタ係数を有し、前記周波数変換手段によって周波数変換された前記信号に対し前記フィルタ係数によりフィルタ処理を行うフィルタ処理手段(33)と、フィルタ処理された前記信号を解析する信号解析手段(16)と、を備えた構成を有している。
【0009】
この構成により、本発明の請求項1に係る試験装置は、フィルタ処理手段が、無線端末と無線通信を行う場合における無線信号伝搬環境に関する予め取得されたパラメータに基づいて設定されたフィルタ係数を有し、周波数変換手段によって周波数変換された信号に対しフィルタ係数によりフィルタ処理を行うので、無線通信に代えて有線通信により無線端末を試験することができる。
【0010】
したがって、本発明の請求項1に係る試験装置は、従来よりも容易に無線端末を試験することができる。
【0011】
本発明の請求項2に係る試験装置は、試験対象の無線端末(1)との無線通信に代えてケーブル(7)を介して前記無線端末に出力する無線周波数信号を生成する試験装置(20)であって、所定周波数の信号を出力する信号出力手段(21)と、前記無線端末と前記無線通信を行う場合における前記無線周波数信号の伝搬環境に関する予め取得されたパラメータを記憶するパラメータ記憶手段(31)と、前記パラメータ記憶手段に記憶された前記パラメータに基づいて設定されたフィルタ係数を有し、前記信号出力手段から出力された前記信号に対し前記フィルタ係数によりフィルタ処理を行うフィルタ処理手段(33)と、フィルタ処理された前記信号を所定の無線周波数に周波数変換し前記ケーブルを介して前記無線端末に出力する周波数変換手段(26)と、を備えた構成を有している。
【0012】
この構成により、本発明の請求項2に係る試験装置は、フィルタ処理手段が、無線端末と無線通信を行う場合における無線信号伝搬環境に関する予め取得されたパラメータに基づいて設定されたフィルタ係数を有し、信号出力手段から出力された信号に対しフィルタ係数によりフィルタ処理を行うので、無線通信に代えて有線通信により無線端末を試験することができる。
【0013】
したがって、本発明の請求項2に係る試験装置は、従来よりも容易に無線端末を試験することができる。
【0014】
本発明の請求項3に係る試験装置は、前記パラメータ記憶手段は、前記パラメータとしてSパラメータを記憶するものであり、前記Sパラメータを時間領域のインパルス応答に変換するインパルス応答変換手段(32)をさらに備え、前記フィルタ処理手段は、前記インパルス応答を前記フィルタ係数として前記信号に畳み込むものである構成を有するのが好ましい。
【0015】
本発明の請求項4に係る試験装置は、前記無線端末は、第1のアンテナ(3)が接続される第1の端子(2)を有し、前記無線通信を行う場合に前記第1のアンテナと無線通信する第2のアンテナ(4)が接続される第2の端子(11、27)をさらに備え、前記パラメータ記憶手段は、前記第1の端子と前記第2の端子との間の、前記第1及び前記第2のアンテナを含む前記無線周波数信号の伝搬環境に関する予め取得されたパラメータを記憶するものである構成を有するのが好ましい。
【0016】
本発明の請求項5に係る試験方法は、試験対象の無線端末(1)との無線通信に代えてケーブル(7)を介して前記無線端末から入力する無線周波数信号を解析する試験装置(10)を用いた試験方法であって、前記ケーブルを介して入力した前記無線周波数信号を所定周波数の信号に周波数変換する周波数変換ステップ(S13)と、前記無線端末と前記無線通信を行う場合における前記無線周波数信号の伝搬環境に関する予め取得されたパラメータに基づいて設定されたフィルタ係数を有するフィルタ処理手段(33)により、前記周波数変換ステップにおいて周波数変換された前記信号に対し前記フィルタ係数によりフィルタ処理を行うフィルタ処理ステップ(S17)と、フィルタ処理された前記信号を解析する信号解析ステップ(S18)と、を含む構成を有している。
【0017】
この構成により、本発明の請求項5に係る試験方法は、フィルタ処理ステップにおいて、無線端末と無線通信を行う場合における無線信号伝搬環境に関する予め取得されたパラメータに基づいて設定されたフィルタ係数を有するフィルタ処理手段により、周波数変換ステップにおいて周波数変換された信号に対しフィルタ係数によりフィルタ処理を行うので、無線通信に代えて有線通信により無線端末を試験することができる。
【0018】
したがって、本発明の請求項5に係る試験方法は、従来よりも容易に無線端末を試験することができる。
【0019】
本発明の請求項6に係る試験方法は、試験対象の無線端末(1)との無線通信に代えてケーブル(7)を介して前記無線端末に出力する無線周波数信号を生成する試験装置(20)を用いた試験方法であって、所定周波数の信号を出力する信号出力ステップ(S21)と、前記無線端末と前記無線通信を行う場合における前記無線周波数信号の伝搬環境に関する予め取得されたパラメータに基づいて設定されたフィルタ係数を有するフィルタ処理手段(33)により、前記信号出力ステップにおいて出力された前記信号に対し前記フィルタ係数によりフィルタ処理を行うフィルタ処理ステップ(S24)と、フィルタ処理された前記信号を所定の無線周波数に周波数変換し前記ケーブルを介して前記無線端末に出力する周波数変換ステップ(S27)と、を含む構成を有している。
【0020】
この構成により、本発明の請求項6に係る試験方法は、フィルタ処理ステップにおいて、無線端末と無線通信を行う場合における無線信号伝搬環境に関する予め取得されたパラメータに基づいて設定されたフィルタ係数を有するフィルタ処理手段により、信号出力ステップにおいて出力された信号に対しフィルタ係数によりフィルタ処理を行うので、無線通信に代えて有線通信により無線端末を試験することができる。
【0021】
したがって、本発明の請求項6に係る試験方法は、従来よりも容易に無線端末を試験することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、従来よりも容易に無線端末を試験することができるという効果を有する試験装置及び試験方法を提供することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0025】
[第1実施形態]
この実施形態では、本発明に係る試験装置を信号解析装置に適用した例を挙げて説明する。
【0026】
(信号解析装置10の概要)
まず、本実施形態における信号解析装置10の概要について説明する。
【0027】
図1は、信号解析装置10を従来の試験方法に適用した例を模式的に示した図である。
図1に示すように、無線端末であるDUT1は、アンテナ接続端子2(第1の端子)に接続されたアンテナ3(第1のアンテナ)を有し、電波シールドボックス5内に収納されている。信号解析装置10は、同軸ケーブル6、RF信号入力端子11及び電波シールドボックス5内に収納されたアンテナ4(第2のアンテナ)を介し、無線通信によりDUT1の出力信号を入力して解析するようになっている。
【0028】
DUT1は、例えば
図2に示す構成を有する。すなわち、DUT1は、ベースバンド(BB)の信号を処理するBBIC50と、無線周波数(RF)の信号を処理するRFIC60と、を備えている。
【0029】
BBIC50は、全体の制御を行う制御回路51、送信処理を行う送信回路52、デジタル信号をアナログ信号に変換するDAC53、アナログ信号をデジタル信号に変換するADC54、受信処理を行う受信回路55を備えている。
【0030】
RFIC60は、RF送信信号にアップコンバートするRF送信部61、RF信号を受信してBB信号にダウンコンバートするRF受信部62、送信又は受信を切り替える切替器63を備えている。
【0031】
以上のように、
図1に示した試験構成により、信号解析装置10は、外来ノイズを遮断した状態で、アンテナ3を含めたDUT1の評価を行うことができる。
【0032】
しかしながら、前述の試験構成では、DUT1を電波シールドボックス5内に収納する必要があるので、例えば、DUT1を交換したり、アンテナ3のみを交換したりする試験では手間がかかり、試験時間が増大していた。
【0033】
そこで、本実施形態では、
図3に示すように、DUT1と信号解析装置10とを同軸ケーブル7で接続して、従来よりも容易にDUT1を試験できる構成としている。なお、同軸ケーブル7は、ケーブルの一例である。
【0034】
(信号解析装置10の構成)
次に、本実施形態における信号解析装置10の構成について説明する。
【0035】
図4に示すように、本実施形態における信号解析装置10は、同軸ケーブル7を介して接続された試験対象のDUT1の出力信号を解析するものである。この信号解析装置10は、試験装置の一例である。
【0036】
信号解析装置10は、RF信号入力端子11、局部発振器12、ミキサ13、ADC14、歪み補正部15、特性補正装置30、信号解析部16、表示部17、操作部18を備えている。なお、信号解析装置10は、例えばCPU、ROM、RAM等を備え、ROMに予め記憶されたプログラムに従って動作するようになっている。
【0037】
RF信号入力端子11は、同軸ケーブル7を介し、DUT1からRF信号を入力してミキサ13に出力するようになっている。このRF信号入力端子11は、第2の端子の一例である。
【0038】
局部発振器12は、所定周波数の局部発振信号を生成してミキサ13に出力するようになっている。
【0039】
ミキサ13は、RF信号入力端子11が入力したRF信号と局部発振器12からの局部発振信号とを混合してベースバンド信号に変換し、ADC14に出力するようになっている。このミキサ13は、周波数変換手段の一例である。
【0040】
ADC14は、ミキサ13の出力信号をアナログ値からデジタル値に変換し、歪み補正部15に出力するようになっている。
【0041】
歪み補正部15は、例えばデジタルフィルタで構成され、自装置で発生する歪みを補正し、補正した信号を特性補正装置30に出力するようになっている。
【0042】
特性補正装置30は、Sパラメータ記憶部31、IFFT部32、FIRフィルタ33を備え、DUT1との通信が同軸ケーブル7を介した有線通信であっても、無線通信を行ったのと等価な信号が得られるよう、歪み補正部15の出力信号を補正するようになっている。具体的には、特性補正装置30は、以下に示す構成を有する。
【0043】
Sパラメータ(Scattering parameter:散乱パラメータ)記憶部31は、
図1に示したように、DUT1が有するアンテナ接続端子2と信号解析装置10のRF信号入力端子11との間の無線信号伝搬環境に関するSパラメータを記憶している。このSパラメータは、例えばネットワークアナライザを用いて、又は、計算機シミュレーション解析によって予め取得されたものである。なお、Sパラメータ記憶部31は、パラメータ記憶手段の一例である。また、本実施形態では、Sパラメータを例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されず、無線信号伝搬環境を表すことが可能なパラメータを用いることができる。
【0044】
IFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)部32は、Sパラメータ記憶部31に記憶された周波数領域のSパラメータを時間領域のインパルス応答に変換するようになっている。このIFFT部32は、インパルス応答変換手段の一例である。
【0045】
FIR(Finite Impulse Response:有限インパルス応答)フィルタ33は、IFFT部32によって変換されたインパルス応答をフィルタ係数として歪み補正部15からの入力信号に畳み込むようになっている。すなわち、FIRフィルタ33は、Sパラメータに基づいて設定されたフィルタ係数を有し、このフィルタ係数によりミキサ13によって周波数変換された信号に対しフィルタ処理を行うものである。このFIRフィルタ33は、フィルタ処理手段の一例であり、他のデジタルフィルタを用いてもよい。
【0046】
信号解析部16は、操作部18を介して試験者が設定した解析項目や解析条件等に基づいて、特性補正装置30の出力信号を解析するようになっている。この信号解析部16は、信号解析手段の一例である。
【0047】
表示部17は、例えば液晶ディスプレイで構成され、信号解析部16の解析結果を表示するようになっている。
【0048】
操作部18は、信号解析部16で解析する解析項目や解析条件、判定条件等を設定するため試験者が操作するものである。例えば、操作部18は、各種条件を設定するための設定画面を表示するディスプレイ、キーボード、ダイヤル又はマウスのような入力デバイス、これらを制御する制御回路等を備える。
【0049】
(信号解析装置10の動作)
次に、本実施形態における信号解析装置10の動作について
図5を用いて説明する。
【0050】
RF信号入力端子11は、同軸ケーブル7を介し、DUT1からRF信号を入力する(ステップS11)。
【0051】
局部発振器12は、所定周波数の局部発振信号を生成する(ステップS12)。
【0052】
ミキサ13は、RF信号入力端子11が入力したRF信号と局部発振器12からの局部発振信号とを混合してベースバンド信号に変換する(ステップS13)。
【0053】
ADC14は、ミキサ13の出力信号をアナログ値からデジタル値に変換する(ステップS14)。
【0054】
歪み補正部15は、自装置で発生する歪みを補正する(ステップS15)。
【0055】
IFFT部32は、Sパラメータ記憶部31に記憶された周波数領域のSパラメータを時間領域のインパルス応答に変換する(ステップS16)。
【0056】
FIRフィルタ33は、IFFT部32によって変換されたインパルス応答をフィルタ係数として歪み補正部15からの入力信号に畳み込む(ステップS17)。
【0057】
信号解析部16は、操作部18を介して試験者が設定した解析項目や解析条件等に基づいて、特性補正装置30の出力信号を解析する(ステップS18)。
【0058】
表示部17は、信号解析部16の解析結果を表示する(ステップS19)。
【0059】
以上のように、本実施形態における信号解析装置10は、RF信号入力端子11と、DUT1が有するアンテナ接続端子2との間の無線信号伝搬環境に関するSパラメータに基づいて設定されたフィルタ係数を有し、このフィルタ係数によりミキサ13によって周波数変換された信号に対しフィルタ処理を行うFIRフィルタ33を備える構成を有する。
【0060】
よって、
図3に示したように、本実施形態における信号解析装置10は、無線通信に代えて同軸ケーブル7を用いた有線通信によりDUT1を試験することができる。
【0061】
したがって、本発明の請求項1に係る試験装置は、従来よりも容易に無線端末を試験することができる。
【0062】
(変形例1)
前述の信号解析装置10の変形例1として、DUT1に接続されたアンテナ3に代わる各種アンテナごとにSパラメータを予め求めてSパラメータ記憶部31に記憶させておき、所望のアンテナのSパラメータを選択して用いることにより、信号解析装置10は、DUT1と有線接続された状態で容易にアンテナの評価を行うことが可能になる。その結果、信号解析装置10は、アンテナの評価環境を簡略化し、アンテナの試作段階においての特性評価を効率的に進めることに資することができる。
【0063】
(変形例2)
前述の信号解析装置10の変形例2として、無線信号伝搬環境に関する種々のSパラメータを予め求めてSパラメータ記憶部31に記憶させておくことにより、信号解析装置10は、DUT1と有線接続された状態で、例えばフェージングのシミュレーション解析を容易に行うことができる。
【0064】
(変形例3)
前述の説明では、無線端末全体をDUT1として説明したが、これに限定されない。例えば、
図2に示したDUT1の構成において、BBIC50をDUTとし、RFIC60や、アンテナ3、アンテナ3とアンテナ4との間の電波伝搬環境に関するSパラメータを予め求めておくことで、信号解析装置10は、各構成要素の評価環境を簡略化し、各構成要素の特性評価を効率的に進めることに資することができる。また、Sパラメータは、多段接続が可能であるので、信号解析装置10は、アンテナや電波伝搬環境、RFIC60内のフィルタ等さまざまなSパラメータを任意に接続し試験結果に反映させることができる。
【0065】
(変形例4)
前述の信号解析装置10の変形例4として、RF信号をADC14でサンプリングし、IQデータとして波形メモリに記録するデジタイズ機能を信号解析装置10に持たせれば、信号解析装置10は、波形メモリに記録したのと同じRF信号にそれとは違うSパラメータを使い解析することにより、アンテナや伝搬環境による改善具合や劣化具合等を容易に比較することができる。
【0066】
(変形例5)
信号解析装置10は、Sパラメータを用いる構成を有するので、解析済みのデータの再利用が可能である。例えば、信号解析装置10は、あるアンテナAを用いた場合の解析済みのデータに対し、そのアンテナAのSパラメータでその特性をキャンセルし、アンテナAとは別のアンテナBのSパラメータを用いて再計算を行うこともできる。
【0067】
(変形例6)
信号解析装置10は、Sパラメータを用いる構成を有するので、各種構成要素のSパラメータをデータベース化することにより、再利用可能な資産として活用することができる。
【0068】
[第2実施形態]
この実施形態では、本発明に係る試験装置を信号生成装置に適用した例を挙げて説明する。
【0069】
(信号生成装置20の概要)
まず、本実施形態における信号生成装置20の概要について説明する。なお、第1実施形態と同様な構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0070】
図6は、信号生成装置20を従来の試験方法に適用した例を模式的に示した図である。
図6に示すように、無線端末であるDUT1は、アンテナ接続端子2に接続されたアンテナ3を有し、電波シールドボックス5内に収納されている。信号生成装置20は、RF信号出力端子27、同軸ケーブル6及び電波シールドボックス5内に収納されたアンテナ4を介し、無線通信によりDUT1に出力する信号を生成するようになっている。なお、DUT1は、
図2に示した構成を有する。
【0071】
以上のように、
図6に示した試験構成により、信号生成装置20は、外来ノイズを遮断した状態で、アンテナ3を含めたDUT1の評価を行うことができる。
【0072】
しかしながら、前述の試験構成では、DUT1を電波シールドボックス5内に収納する必要があるので、例えば、DUT1を交換したり、アンテナ3のみを交換したりする試験では手間がかかり、試験時間が増大していた。
【0073】
そこで、本実施形態では、
図7に示すように、DUT1と信号生成装置20とを同軸ケーブル7で接続して、従来よりも容易にDUT1を試験できる構成としている。
【0074】
(信号生成装置20の構成)
次に、本実施形態における信号生成装置20の構成について説明する。
【0075】
図8に示すように、本実施形態における信号生成装置20は、同軸ケーブル7を介して接続された試験対象のDUT1に試験信号を出力するものである。この信号生成装置20は、試験装置の一例である。
【0076】
信号生成装置20は、波形データ記憶部21、操作部22、歪み補正部23、特性補正装置30、DAC24、局部発振器25、ミキサ26、RF信号出力端子27を備えている。なお、信号生成装置20は、例えばCPU、ROM、RAM等を備え、ROMに予め記憶されたプログラムに従って動作するようになっている。
【0077】
波形データ記憶部21は、DUT1を試験するための試験信号のベースバンドの波形データを予め生成して記憶し、操作部22からの指示信号に基づいて所定の波形データを出力するようになっている。この波形データ記憶部21は、信号出力手段の一例である。
【0078】
操作部22は、波形データ記憶部21から出力させる各種波形データを指定する際に試験者が操作するものである。例えば、操作部22は、波形データを指定するための設定画面を表示するディスプレイ、キーボード、ダイヤル又はマウスのような入力デバイス、これらを制御する制御回路等を備える。
【0079】
歪み補正部23は、例えばデジタルフィルタで構成され、自装置で発生する歪みを補正し、補正した信号を特性補正装置30に出力するようになっている。
【0080】
特性補正装置30は、Sパラメータ記憶部31、IFFT部32、FIRフィルタ33を備え、DUT1との通信が同軸ケーブル7を介した有線通信であっても、無線通信を行ったのと等価な信号が得られるよう、歪み補正部23の出力信号を補正するようになっている。なお、特性補正装置30は、第1実施形態と同じ構成であるので、構成の説明を省略する。また、本実施形態では、Sパラメータを例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されず、無線信号伝搬環境を表すことが可能なパラメータを用いることができる。
【0081】
DAC24は、特性補正装置30の出力信号をデジタル値からアナログ値に変換し、ミキサ26に出力するようになっている。
【0082】
局部発振器25は、所定周波数の局部発振信号を生成してミキサ26に出力するようになっている。
【0083】
ミキサ26は、DAC24の出力信号であるベースバンド信号と局部発振器25からの局部発振信号とを混合して所定周波数のRF信号に変換し、RF信号出力端子27に出力するようになっている。このミキサ26は、周波数変換手段の一例である。
【0084】
RF信号出力端子27は、同軸ケーブル7を介し、DUT1にRF信号を出力するようになっている。このRF信号出力端子27は、第2の端子の一例である。
【0085】
(信号生成装置20の動作)
次に、本実施形態における信号生成装置20の動作について
図9を用いて説明する。
【0086】
波形データ記憶部21は、操作部22を介して試験者が設定した試験項目や試験条件等に基づいて、DUT1を試験するための試験信号のベースバンドの波形データを出力する(ステップS21)。
【0087】
歪み補正部23は、波形データ記憶部21の出力信号に対して、自装置で発生する歪みを補正する(ステップS22)。
【0088】
IFFT部32は、Sパラメータ記憶部31に記憶された周波数領域のSパラメータを時間領域のインパルス応答に変換する(ステップS23)。
【0089】
FIRフィルタ33は、IFFT部32によって変換されたインパルス応答をフィルタ係数として歪み補正部23からの入力信号に畳み込む(ステップS24)。
【0090】
DAC24は、ミキサ26の出力信号をデジタル値からアナログ値に変換する(ステップS25)。
【0091】
局部発振器25は、所定周波数の局部発振信号を生成する(ステップS26)。
【0092】
ミキサ26は、DAC24の出力信号であるベースバンド信号と局部発振器25からの局部発振信号とを混合してRF信号に変換する(ステップS27)。
【0093】
RF信号出力端子27は、同軸ケーブル7を介し、RF信号をDUT1に出力する(ステップS28)。
【0094】
以上のように、本実施形態における信号生成装置20は、RF信号出力端子27と、DUT1が有するアンテナ接続端子2との間の無線信号伝搬環境に関するSパラメータに基づいて設定されたフィルタ係数を有し、このフィルタ係数により波形データ記憶部21の出力信号に対しフィルタ処理を行うFIRフィルタ33を備える構成を有する。
【0095】
よって、
図7に示したように、本実施形態における信号生成装置20は、無線通信に代えて同軸ケーブル7を用いた有線通信によりDUT1を試験することができる。
【0096】
したがって、本発明の請求項1に係る試験装置は、従来よりも容易に無線端末を試験することができる。
【0097】
(変形例1)
前述の信号生成装置20の変形例1として、DUT1に接続されたアンテナ3に代わる各種アンテナごとにSパラメータを予め求めてSパラメータ記憶部31に記憶させておき、所望のアンテナのSパラメータを選択して用いることにより、信号生成装置20は、DUT1と有線接続された状態で容易にアンテナの評価を行うことが可能になる。その結果、信号生成装置20は、アンテナの評価環境を簡略化し、アンテナの試作段階においての特性評価を効率的に進めることに資することができる。
【0098】
(変形例2)
前述の信号生成装置20の変形例2として、無線信号伝搬環境に関する種々のSパラメータを予め求めてSパラメータ記憶部31に記憶させておくことにより、信号生成装置20は、DUT1と有線接続された状態で、例えばフェージングのシミュレーション解析を容易に行うことができる。
【0099】
(変形例3)
前述の説明では、無線端末全体をDUT1として説明したが、これに限定されない。例えば、
図2に示したDUT1の構成において、BBIC50をDUTとし、RFIC60や、アンテナ3、アンテナ3とアンテナ4との間の電波伝搬環境に関するSパラメータを予め求めておくことで、信号生成装置20は、各構成要素の評価環境を簡略化し、各構成要素の特性評価を効率的に進めることに資することができる。また、Sパラメータは、多段接続が可能であるので、信号生成装置20は、アンテナや電波伝搬環境、RFIC60内のフィルタ等さまざまなSパラメータを任意に接続し試験結果に反映させることができる。
【0100】
(変形例4)
信号生成装置20は、Sパラメータを用いる構成を有するので、解析済みのデータの再利用が可能である。例えば、信号生成装置20は、あるアンテナAを用いた場合の解析済みのデータに対し、そのアンテナAのSパラメータでその特性をキャンセルし、アンテナAとは別のアンテナBのSパラメータを用いて再計算を行うこともできる。
【0101】
(変形例5)
信号生成装置20は、Sパラメータを用いる構成を有するので、各種構成要素のSパラメータをデータベース化することにより、再利用可能な資産として活用することができる。