特開2016-191680(P2016-191680A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-191680(P2016-191680A)
(43)【公開日】2016年11月10日
(54)【発明の名称】積雪耐荷重試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/32 20060101AFI20161014BHJP
【FI】
   G01N3/32 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-72847(P2015-72847)
(22)【出願日】2015年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000201641
【氏名又は名称】全国農業協同組合連合会
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】三浦 実
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AB05
2G061BA01
2G061CB02
2G061CB04
2G061DA01
2G061EA01
2G061EA02
(57)【要約】
【課題】 一つのアーチパイプを架構モデルとすることで、パイプハウスの積雪の耐荷重を試験する試験方法を提供する
【解決手段】 アーチパイプの曲率が変わる点を節点とする節点決定工程と、節点にかかるパイプハウスの固定荷重を計算する固定荷重計算工程と、節点の勾配に基づいて、各節点における単位積雪深さ当たりの積雪荷重を計算する積雪荷重計算工程と、固定荷重計算工程で決定された固定荷重を節点に付加する固定荷重載荷工程と、積雪荷重計算工程で決定された積雪荷重を前記節点に付加する積雪荷重載荷工程と、積雪荷重積荷工程におけるアーチパイプの変形量を測定する載荷時変形量測定工程と、積雪荷重載荷工程で付加された積雪荷重を除去し、アーチパイプの変形量を測定する除載時変形量測定工程とを備え、積雪荷重載荷工程記載荷時変形量測定工程と除載時変形測定量工程とを積雪荷重を増やしながら繰り返し実施する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つのアーチパイプを架構モデルとしてパイプハウスの積雪の耐荷重を試験する積雪耐荷重試験方法であって、
アーチパイプの曲率が変わる点を節点とする節点決定工程と、
前記節点にかかるパイプハウスの固定荷重を計算する固定荷重計算工程と、
前記節点の勾配に基づいて、各節点における単位積雪深さ当たりの積雪荷重を計算する積雪荷重計算工程と、
前記固定荷重計算工程で決定された固定荷重を前記節点に付加する固定荷重載荷工程と、
前記積雪荷重計算工程で決定された積雪荷重を前記節点に付加する積雪荷重載荷工程と、
前記積雪荷重積荷工程におけるアーチパイプの変形量を測定する載荷時変形量測定工程と、
前記積雪荷重載荷工程で付加された積雪荷重を除去し、アーチパイプの変形量を測定する除載時変形量測定工程とを備え、
前記積雪荷重載荷工程と前記載荷時変形量測定工程と前記除載時変形測定量工程とを積雪荷重を増やしながら繰り返し実施することを特徴とする積雪耐荷重試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積雪耐荷重試験方法に関し、詳しくは、一つのアーチパイプを架構モデルとしてパイプハウスの積雪の耐荷重を試験する積雪耐荷重試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス室、プラスチックハウスといった施設園芸用施設の構造計算については、それらに適用される基準(非特許文献1)が設けられている。また、非特許文献1の基準が適用されない地中押し込み式パイプハウスに適用される指針(非特許文献2)が別途設けられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「園芸用施設安全構造基準(暫定基準)平成9年版」、社団法人日本施設園芸協会、平成9年6月
【非特許文献2】「地中押し込み式パイプハウス安全構造指針」、社団法人日本施設園芸協会、平成10年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1の基準を構造計算に用いることで、施設用園芸の積雪に対する耐荷重を求めることができるが、地中押し込み式パイプハウスについては、非特許文献2の指針にはパイプハウスの変形限度が示されているのみで、積雪に対する耐荷重を具体的に構造計算できるものではなかった。
【0005】
したがって、地中押し込み式パイプハウスの積雪に対する耐荷重を具体的に知る方法はなかった。
【0006】
そこで本発明は、一つのアーチパイプを架構モデルとすることで、パイプハウスの積雪の耐荷重を試験する試験方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の積雪耐荷重試験方法は、一つのアーチパイプを架構モデルとしてパイプハウスの積雪の耐荷重を試験する積雪耐荷重試験方法であって、アーチパイプの曲率が変わる点を節点とする節点決定工程と、前記節点にかかるパイプハウスの固定荷重を計算する固定荷重計算工程と、前記節点の勾配に基づいて、各節点における単位積雪深さ当たりの積雪荷重を計算する積雪荷重計算工程と、前記固定荷重計算工程で決定された固定荷重を前記節点に付加する固定荷重載荷工程と、前記積雪荷重計算工程で決定された積雪荷重を前記節点に付加する積雪荷重載荷工程と、前記積雪荷重積荷工程におけるアーチパイプの変形量を測定する載荷時変形量測定工程と、前記積雪荷重載荷工程で付加された積雪荷重を除去し、アーチパイプの変形量を測定する除載時変形量測定工程とを備え、前記積雪荷重載荷工程と前記載荷時変形量測定工程と前記除載時変形測定量工程とを積雪荷重を増やしながら繰り返し実施することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の試験方法によれば、各節点に固定荷重と積雪荷重を付加することで、実際の積雪状況に近いモデルを設定し、その荷重を実載荷できることから、パイプハウスの耐荷重を具体的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の積雪耐荷試験方法の架構モデルの一例を示す説明図である。
図2】同じく積雪荷重の載荷に関する説明図である。
図3】本発明の積雪耐荷試験方法を実施する装置の一例を示す説明図である。
図4図3のVI−VI矢視図である。
図5】積雪荷重と載荷時変形量(棟たわみ量)との相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本形態例に示す積雪耐荷試験方法の架構モデルとして用いられるアーチパイプの一例を図1に示す。アーチパイプ1は、2本の同形状の曲線のパイプ材1a,1aを図1のP8の位置で外ジョイント(図示しない)を介して結合されて、アーチ状に形成される。各パイプ材1aは防錆処理が施された鋼管材である。
【0011】
本形態例のアーチパイプ1は、間口が約6mのものである。各パイプ材1aのアーチパイプの曲率が変わる点をまず測定し、節点とする(本発明の節点決定工程)。本形態例では、図1に示すP3乃至P13が節点に相当する。また、アーチパイプ1の両端部を後述する短筒11に挿入されるが、この短筒11の上端部とアーチパイプ1の接触点でアーチパイプ1が固定されていると仮定し、P1及びP15とする。
【0012】
さらに、このP1及びP15から鉛直方向に300mm上の部分を仮想の地盤面として、仮想地盤面とアーチパイプ1の交点をP2及びP14とする。
【0013】
各節点間の長さや勾配については、図1に示される通りである。
【0014】
実際に建設されるパイプハウスは、アーチパイプ1を奥行方向(桁行方向)に等間隔で配置し、棟部(図1のP8の位置)及び両肩部(図1のP3及びP13の位置)に桁行方向の直管を連結して、パイプハウスの骨組みとする。さらに、その骨組に対して、被覆材として透明の樹脂フィルムを展張し、パイプハウスとする。
【0015】
したがって、実際のパイプハウスでは、前記直管や樹脂フィルムの重量が各節点にかかることになるので、これらの固定荷重を計算する(本発明の固定荷重計算工程)。本形態例では、アーチパイプ1が桁行方向に40cm間隔で設けられている条件とする。骨組みの重量を2.11kg/mとし、樹脂フィルムの重量を0.21kg/mとした場合、図1に示すアーチパイプ1については、固定荷重は表1のようになる。なお、P3,P4,P12,P13については、後述する積雪荷重がかからない。固定荷重については、柱脚とP3の中間点からP5とP6の中間点までの材長をP5の負担区間として算定した(図2参照。)。P11についても同様とする。
【0016】
【表1】
【0017】
次に、各節点にかかる単位積雪深さ当たりの積雪荷重を計算する(本発明の積雪荷重計算工程)。積雪深さ1cmに対し、1m当たりの重量は、1.0kg/cm・mとして計算でき、また、下記表2に基づいて、勾配軽減をすることができる。
【0018】
【表2】
【0019】
図2に示されるように、節点P5にかかる積雪荷重は、P4−P5間の積雪と、P4−P6間の半分の積雪である。また、節点P6にかかる積雪荷重は、P5−P6間の半分の積雪と、P6−P7間の半分の積雪である。節点P7にかかる積雪荷重は、P6−P7間の半分の積雪と、P7−P8間の半分の積雪である。節点P8にかかる積雪荷重はP7−8間の半分の積雪と、P8−9間の半分の積雪である。その他の節点についても、同様である。
【0020】
上記のような条件に基づき、各節点にかかる積雪5cm当たりの積雪荷重は表3及び図2のようになる。
【0021】
【表3】
【0022】
本形態例の積雪耐荷試験方法の装置例を図3及び図4に示す。地面に載置されたH鋼12の上に、アーチパイプ1の両端が挿入される短筒11が溶接されている。短筒11の高さは10cm程度であり、アーチパイプ1の角度に併せて、やや傾斜して固定されている。また、壁面付近の2本の鉄骨間柱13,13と、アーチパイプ1より上方で水平方向に延びる上部水平ポスト14と、アーチパイプ1の肩部(P3,P13の位置)付近の高さで水平方向に延びる下部水平ポスト15と、該下部水平ポスト15の両端を地面から支える一対の支持ポスト16,16と、前記下部水平ポスト15の前面側にクランプ等を介して連結され、アーチパイプ1の肩部(P3,P13の位置)より前面側に設けられる肩部前面側ポスト17,17と、上部水平ポスト14と下部水平ポスト15とをアーチパイプ1の棟部(P8の位置)近傍において前面側で連結する棟部前面側ポスト18aと背面側で連結する棟部背面側ポスト18bとで、アーチパイプ1を囲むようにして、装置本体の骨組が構成されている。このように構成されることで、アーチパイプ1の桁行方向の動きが、棟部(P8の位置)及び肩部(P3,P13)で拘束される。
【0023】
各節点には、ワイヤで載荷袋19が吊るされ、載荷袋19の内部には、載荷袋19の自重と合わせて、前記表1の固定荷重となるような錘がそれぞれ入れられている(本発明の固定荷重載荷工程)。
【0024】
次に、表3の積雪5cmあたりの積雪荷重に相当する錘を載荷袋19の内部に入れ(本発明の積雪荷重載荷工程)、アーチパイプ1の変形量として棟部(P8)の鉛直方向へのたわみ量を計測する(載荷時変形量測定工程)。その後、積雪荷重に相当する錘を取り除き、アーチパイプ1の変形量(復元具合)として、棟部(P8)の鉛直方向へのたわみ量を計測する(本発明の除載時変形量測定工程)。
【0025】
次に、積雪荷重の重さを上述の2倍の量、すなわち、積雪10cmに相当する量を載荷袋19の内部に入れ、同様の作業を繰り返す。これをアーチパイプ1が崩壊してしまうか、除載時にアーチパイプ1が全く復元しなくなるまで繰り返す。適宜、積雪深さ5cm刻みでなく、10cm刻み等で測定してもよい。
【実施例1】
【0026】
パイプ材1aとして、普通材を用いた場合の試験結果を表4に示す。
【0027】
【表4】
【実施例2】
【0028】
パイプ材1aとして、高強度材を用いた場合の試験結果を表5に示す。
【0029】
【表5】
【0030】
また、実施例1及び実施例2における積雪荷重と載荷時変形量(棟たわみ量)との相関関係を図5に示す。崩壊する前の荷重を限界耐力として評価することができる。したがって、実施例1の場合は30cm、実施例2の場合は50cmとなる。また、除載時の変形量が10mmを超える段階を許容耐力として評価することができる。上記実施例1及び実施例2では、積雪深さ5cm刻みで実施したため測定結果に不確かさが残るものの実施例1の場合は25cm近傍、実施例2の場合は30cm近傍にあると推測される。
【0031】
なお、積雪深さを5cm刻みではなく、さらに細かく刻むことでより正確に試験することができる。
【符号の説明】
【0032】
1…アーチパイプ、1a…パイプ材、11…短筒、12…H鋼、13…鉄骨間柱、14…上部水平ポスト、15…下部水平ポスト、16…支持ポスト、17…肩部前面側ポスト、18a…棟部前面側ポスト、18b…棟部背面側ポスト、19…載荷袋
図1
図2
図3
図4
図5