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特開2016-192275銀ワイヤーおよび銀ワイヤーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-192275(P2016-192275A)
(43)【公開日】2016年11月10日
(54)【発明の名称】銀ワイヤーおよび銀ワイヤーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20161014BHJP
   H01B 1/02 20060101ALI20161014BHJP
   H01B 5/02 20060101ALI20161014BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20161014BHJP
【FI】
   H01B13/00 501Z
   H01B1/02 ZZAA
   H01B5/02 Z
   H01B5/00 H
   H01B13/00 565D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-70788(P2015-70788)
(22)【出願日】2015年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】松田 元秀
(72)【発明者】
【氏名】志田 賢二
(72)【発明者】
【氏名】吉川 駿一
【テーマコード(参考)】
5G301
5G307
5G321
【Fターム(参考)】
5G301AA01
5G301AD06
5G301AE10
5G307AA08
5G307CA03
5G307CB03
5G307CC04
5G321AA06
5G321BA99
(57)【要約】
【課題】容易に製造可能な銀ワイヤーの製造方法を提供する。
【解決手段】銀ワイヤーの製造方法は、金属酸化物およびハロゲン化銀を混合した混合物(C)を用意する工程と、混合物(C)を熱処理することにより、混合物(C)の表面に銀ワイヤー(W)を生成する工程とを包含する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物およびハロゲン化銀を混合した混合物を用意する工程と、
前記混合物を熱処理することにより、前記混合物の表面に銀ワイヤーを生成する工程と
を包含する、銀ワイヤーの製造方法。
【請求項2】
前記熱処理の前に、前記混合物に圧力を印加して前記混合物を成形する工程をさらに包含する、請求項1に記載の銀ワイヤーの製造方法。
【請求項3】
前記混合物から、前記熱処理によって生成された銀ワイヤーを単離する工程をさらに包含する、請求項1に記載の銀ワイヤーの製造方法。
【請求項4】
前記銀ワイヤーを単離する工程は、前記金属酸化物を溶解させる工程を含む、請求項3に記載の銀ワイヤーの製造方法。
【請求項5】
前記混合物を熱処理する間に、前記混合物に向かって注入ガスを注入する工程をさらに包含する、請求項1から4のいずれかに記載の銀ワイヤーの製造方法。
【請求項6】
前記注入ガスを注入する工程において、前記注入ガス中の酸素濃度は大気中の酸素濃度よりも低い、請求項5に記載の銀ワイヤーの製造方法。
【請求項7】
前記注入ガスを注入する工程において、前記注入ガス中の窒素濃度は大気中の窒素濃度よりも高い、請求項5または6に記載の銀ワイヤーの製造方法。
【請求項8】
前記用意する工程において、前記ハロゲン化銀はヨウ化銀を含む、請求項1から7のいずれかに記載の銀ワイヤーの製造方法。
【請求項9】
前記用意する工程において、前記金属酸化物は層状構造を有する、請求項1から8のいずれかに記載の銀ワイヤーの製造方法。
【請求項10】
前記用意する工程において、前記金属酸化物はBi系超電導体を含む、請求項1から9のいずれかに記載の銀ワイヤーの製造方法。
【請求項11】
前記用意する工程において、前記金属酸化物は酸化鉄を含む、請求項1から8のいずれかに記載の銀ワイヤーの製造方法。
【請求項12】
前記用意する工程において、前記金属酸化物は酸化銅または酸化鉄を含む、請求項1から8のいずれかに記載の銀ワイヤーの製造方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の銀ワイヤーの製造方法によって製造された銀ワイヤー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀ワイヤーおよび銀ワイヤーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銀ワイヤーは、導電性または透明導電性を利用した配線材料として、電子機器、タッチパネル、太陽電池等に用いることが検討されている。さらに、銀ワイヤーは、抗菌性を活用した衛生材料として利用することが期待されている。
【0003】
銀ワイヤーは、銀化合物をポリオ―ルと混合して加熱することにより、銀化合物を還元して銀ワイヤーを製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、エチレングリコールのポリビニルピロリドン溶液にエチレングリコールの硝酸銀溶液を添加することにより、特定方向の結晶成長を促進させた銀ワイヤーを製造することが記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の製造方法は、多量のエチレングリコールを用いる液相合成法であり、複雑な処理を行う必要がある。また、溶媒中の銀濃度をそれほど高くできないため、銀ワイヤーの大量生産が困難である。
【0005】
そこで、特許文献2では、気相中で銀ワイヤーを製造することが検討されている。特許文献2には、減圧下において反応炉の長手方向に沿って不活性ガスを流した状態で、反応炉の前端部で貴金属化合物を気化させて反応炉の後端部で単結晶基板上にナノワイヤーを形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0056118号明細書
【特許文献2】特表2010−532308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の製造方法では、減圧下で貴金属化合物を850℃以上の高温下で加熱することが必要であり、銀ワイヤーを容易に製造することができない。また、特許文献2の製造方法では、貴金属を一旦気化させて基板上に析出させているため、短時間に大量の金属ワイヤーを製造することは困難であった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、容易に製造可能な銀ワイヤーおよび銀ワイヤーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による銀ワイヤーの製造方法は、金属酸化物およびハロゲン化銀を混合した混合物を用意する工程と、前記混合物を熱処理することにより、前記混合物の表面に銀ワイヤーを生成する工程とを包含する。
【0010】
ある実施形態において、前記銀ワイヤーの製造方法は、前記熱処理の前に、前記混合物に圧力を印加して前記混合物を成形する工程をさらに包含する。
【0011】
ある実施形態において、前記銀ワイヤーの製造方法は、前記混合物から、前記熱処理によって生成された銀ワイヤーを単離する工程をさらに包含する。
【0012】
ある実施形態において、前記銀ワイヤーを単離する工程は、前記金属酸化物を溶解させる工程を含む。
【0013】
ある実施形態において、前記銀ワイヤーの製造方法は、前記混合物を熱処理する間に、前記混合物に向かって注入ガスを注入する工程をさらに包含する。
【0014】
ある実施形態において、前記注入ガスを注入する工程では、前記注入ガス中の酸素濃度は大気中の酸素濃度よりも低い。
【0015】
ある実施形態において、前記注入ガスを注入する工程では、前記注入ガス中の窒素濃度は大気中の窒素濃度よりも高い。
【0016】
ある実施形態において、前記用意する工程では、前記ハロゲン化銀はヨウ化銀を含む。
【0017】
ある実施形態において、前記用意する工程では、前記金属酸化物は層状構造を有する。
【0018】
ある実施形態において、前記用意する工程では、前記金属酸化物はBi系超電導体を含む。
【0019】
ある実施形態において、前記用意する工程では、前記金属酸化物は酸化鉄を含む。
【0020】
ある実施形態において、前記用意する工程では、前記金属酸化物は酸化銅または酸化鉄を含む。
【0021】
本発明による銀ワイヤーは、上記に記載の銀ワイヤーの製造方法によって製造される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、銀ワイヤーを容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(a)および(b)は、本実施形態による銀ワイヤーの製造方法を説明するための模式図である。
図2】(a)〜(c)は、本実施形態による銀ワイヤーの製造方法を説明するための模式図である。
図3】(a)〜(d)は、本実施形態による銀ワイヤーの製造方法を説明するための模式図である。
図4】本実施形態による銀ワイヤーの製造方法に好適に用いられる加熱炉の模式図である。
図5】本実施形態による銀ワイヤーの製造方法に好適に用いられる加熱炉の模式図である。
図6】サンプルB、IBおよびABのX線回析測定結果を示すグラフである。
図7】(a)はサンプル1cの表面上に生成された生成物の元素分析の測定結果を示す図であり、(b)はサンプル2bの表面上に生成された生成物の元素分析の測定結果を示す図である。
図8】サンプル1cのX線回析測定結果を示すグラフである。
図9】サンプルACおよびサンプル2bのX線回析測定結果を示すグラフである。
図10】サンプルAFおよびサンプル3bのX線回析測定結果を示すグラフである。
図11】(a)〜(j)は実施例1におけるサンプル1a〜1c、2a〜2c、3a〜3cのSEMによる観察結果を示す図である。
図12】(a)〜(c)は実施例2におけるサンプル4aのSEMによる観察結果を示す図である。
図13】(a)〜(f)は実施例2におけるサンプル5a〜5fのSEMによる観察結果を示す図である。
図14】(a)〜(f)は実施例2におけるサンプル6a〜6fのSEMによる観察結果を示す図である。
図15】(a)〜(c)は実施例3におけるサンプル7aのSEMによる観察結果を示す図である。
図16】(a)〜(i)は実施例3におけるサンプル8a〜8iのSEMによる観察結果を示す図である。
図17】(a)〜(n)は実施例3におけるサンプル9a〜9iのSEMによる観察結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明による銀ワイヤーおよび銀ワイヤーの製造方法の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0025】
まず、図1を参照して本実施形態の銀ワイヤーの製造方法を説明する。図1は、本実施形態の銀ワイヤーの製造方法を説明するための模式図である。
【0026】
図1(a)に示すように、金属酸化物およびハロゲン化銀を混合した混合物Cを用意する。金属酸化物は、特定の結晶構造を有している。
【0027】
混合物Cは、層状構造を有する金属酸化物にハロゲン化銀をインターカレートしたものであってもよい。金属酸化物が層状構造を有する場合、金属酸化物はハロゲン化銀をインターカレートすることができる。あるいは、混合物Cにおいて、ハロゲン化銀は金属酸化物に溶解した形態であってもよい。
【0028】
例えば、混合物Cに用いられる金属酸化物は、層状構造を有してもよい。金属酸化物は、Bi系銅酸化物超電導体であってもよい。Bi系銅酸化物超電導体の一例として、Bi2Sr2Cax-1Cux8+yが挙げられる。xは1、2または3である。これらのうち、合成の容易さの観点から、Bi系銅酸化物超電導体として、x=2の化合物、すなわち、Bi2Sr2CaCu28+yを用いることが好ましい。なお、本明細書において、化合物Bi2Sr2CaCu28+yを「Bi2212」と記載することがある。
【0029】
あるいは、金属酸化物は、層状構造を有しない化合物であってもよい。例えば、金属酸化物は、酸化鉄または酸化銅であってもよい。
【0030】
例えば、ハロゲン化銀として、フッ化銀、塩化銀、臭化銀および/またはヨウ化銀が好適に用いられる。特に、ハロゲン化銀としてヨウ化銀を用いることが好ましい。
【0031】
混合物Cは、金属酸化物とハロゲン化銀とを混合することによって作製される。なお、必要に応じて、混合物Cを加圧して成形してもよい。後述の熱処理の前に加圧することにより、熱処理の時間を短縮化することができる。
【0032】
次に、図1(b)に示すように混合物Cを熱処理することにより、混合物Cの表面に銀ワイヤーWを生成する。例えば、銀ワイヤーWの粒径は数十nm〜数μmであり、銀ワイヤーWの長さは数nm〜数mmである。銀ワイヤーWは、混合物Cにおける金属酸化物の結晶構造の隙間から生成する。
【0033】
混合物Cの種類および熱処理の条件を変更することにより、銀ワイヤーWの形状を種々変更させることができる。銀ワイヤーWの形状はロッド形状であってもよい。ロッド形状の銀ワイヤーWは、導電性材料または透明導電性材料として電子機器に好適に用いられる。電子機器は、例えば、タッチパネル、精密回路または太陽電池である。
【0034】
あるいは、銀ワイヤーWの形状は特異形状であってもよい。特異形状は、例えば、紡績形状、蹴鞠状、コイル状および湾曲状である。特異形状の銀ワイヤーWは、高抗菌性を有する衛生機器に好適に用いられる。
【0035】
混合物Cを熱処理する場合、混合物CからハロゲンガスGが生成する。ハロゲンガスGは、混合物Cに混合されたハロゲン化銀のハロゲンに由来するガスである。
【0036】
混合物Cの熱処理は、混合物C内における金属酸化物の構造を実質的に変更させることなく、混合物C内におけるハロゲン化金属に相当する成分の結合および配置を変更させるように行われることが好ましい。例えば、熱処理の温度は、300℃以上1000℃以下であることが好ましく、400℃以上800℃以下であることがさらに好ましく、500℃以上700℃以下であることがさらに好ましい。また、熱処理の時間は、15分以上15時間以下であることが好ましく、30分以上8時間以下であることがさらに好ましく、1時間以上5時間以下であることがさらに好ましい。
【0037】
なお、混合物Cの熱処理は、大気圧下で行うことが好ましい。ただし、混合物Cの熱処理は、減圧下で行われてもよい。
【0038】
なお、混合物Cの表面に生成された銀ワイヤーWは、必要に応じて、混合物Cから単離される。例えば、銀ワイヤーWの単離は、銀ワイヤーWを溶解することなく、混合物C(特に、金属酸化物)を溶解する溶液を用いて行われる。溶液は、例えば、アルコールまたは酸である。なお、金属酸化物の溶解は、金属酸化物を粉砕した後に行われてもよい。また、銀ワイヤーWの生成された金属酸化物を溶解させ後、必要に応じて溶液を遠心分離して銀ワイヤーWを抽出してもよい。
【0039】
本実施形態によれば、金属酸化物およびハロゲン化銀を混合した混合物Cに熱処理を行うことにより、複雑な工程を経ることなく、銀ワイヤーWを容易に製造できる。
【0040】
次に、図2を参照して本実施形態の銀ワイヤーの製造方法を説明する。
【0041】
図2(a)に示すように、金属酸化物およびハロゲン化銀を混合した混合物Cを用意する。混合物Cにおいて、金属酸化物MOは層状構造を有している。 この場合、ハロゲン化銀は、ハロゲンイオンha-および銀イオンAg+の状態で金属酸化物MOの層状構造における層空間に位置していると考えられる。
【0042】
例えば、金属酸化物MOは、Bi系超電導体であってもよい。Bi系超電導体としてBi2212を用いることが特に好ましい。
【0043】
なお、混合物Cは、金属酸化物MOおよびハロゲン化銀を混合した後に、加圧によって成形された成形物であってもよい。
【0044】
図2(b)に示すように、混合物Cを熱処理すると、混合物CからハロゲンガスGが発生する。混合物CからハロゲンガスGが発生すると、金属酸化物MOの層空間に位置している銀イオンAg+が過剰になる。
【0045】
図2(c)に示すように、銀イオンAg+は、金属酸化物MOの層空間から混合物Cの表面にまで移動して銀ワイヤーWが生成される。熱処理をさらに続けると、銀イオンAg+が金属酸化物MOの層空間から混合物Cの表面に移動し、これにより、銀ワイヤーWが成長する。
【0046】
なお、図2を参照した説明では、金属酸化物MOは層状構造を有していたが、本発明はこれに限定されない。金属酸化物MOは層状構造を有しなくてもよい。
【0047】
次に、図3を参照して本実施形態の銀ワイヤーの製造方法を説明する。
【0048】
図3(a)に示すように、金属酸化物MOおよびハロゲン化銀Aghaを混合した混合物Cを用意する。ここでは、金属酸化物MOは、層状構造を有しない化合物である。混合物Cにおいて、ハロゲン化銀Aghaは金属酸化物MOに溶解している。例えば、金属酸化物MOは酸化鉄または酸化銅であってもよい。
【0049】
金属酸化物MOは、複数の価数を取り得る金属のうち価数の低い金属を含むことが好ましい。例えば、酸化銅は、室温および大気圧下において、酸化銅(I)(Cu2O)および酸化銅(II)(Cu2O)として存在し得るが、金属酸化物MOとして酸化銅(I)を用いることが好ましい。同様に、酸化鉄は、室温および大気圧下において、酸化鉄(II)(FeO)および酸化(III)(Fe23)として存在し得るが、金属酸化物MOとして酸化鉄(II)を用いることが好ましい。なお、ここでも、混合物Cは、金属酸化物MOおよびハロゲン化銀Aghaを混合させた後、混合物を加圧して成形された成形物であってもよい。
【0050】
図3(b)に示すように、混合物Cを熱処理すると、混合物Cの内部において発生したハロゲンガスGは混合物Cの外部へ移動し、混合物Cの表面に銀ワイヤーWが生成する。このとき、銀ワイヤーWは、混合物Cにおける金属酸化物MOの結晶構造の隙間に発生していると考えられる。
【0051】
図3(c)に示すように、混合物Cの熱処理を続けると、混合物Cの表面の銀ワイヤーWが成長する。
【0052】
図3(d)に示すように、熱処理をさらに続けると、混合物Cの表面に生成された銀ワイヤーWの長さがさらに増大する。
【0053】
以上のように、金属酸化物MOとして、層状構造を有しない一般的な金属酸化物を用いても、混合物Cを熱処理することにより、銀ワイヤーWを生成できる。
【0054】
図4は、本実施形態の銀ワイヤーの製造方法における熱処理に好適に用いられる加熱炉110の模式図である。
【0055】
加熱炉110には直線状のガラス管Tが設置可能である。ガラス管T内には混合物Cが載置される。ガラス管Tの開口部は、貫通孔の設けられたゴム栓で閉められており、ゴム栓の貫通孔にはゴム栓の径よりも細い管が貫通している。
【0056】
加熱炉110においてガラス管T内の混合物Cを加熱すると、混合物CからハロゲンガスGが発生する。混合物CからハロゲンガスGが発生すると、ハロゲンガスGはガラス管T内からゴム栓に設けられた管を通過して外部に排気される。加熱炉110により、混合物Cの熱処理を容易に行うことができる。
【0057】
なお、混合物Cから発生するハロゲンガスGの量が多すぎて、ガラス管T内にハロゲンガスGが充満してしまうと、混合物C近傍のハロゲンガスGの濃度が高く維持されることがある。この場合、その後、混合物CからハロゲンガスGが発生しにくくなり、結果として、銀ワイヤーWの生成速度が低下してしまうことがある。
【0058】
そのため、混合物Cを熱処理する際に、混合物Cに向かって注入ガスを注入し、混合物Cの周囲のハロゲンガスGを効率的に除去してもよい。注入ガスを注入することにより、太く、長い銀ワイヤーWを効率的に製造できる。
【0059】
図5は、本実施形態の銀ワイヤーの製造方法における熱処理に好適に用いられる加熱炉120の模式図である。
【0060】
加熱炉120にはU字形状のガラス管Tが設置可能である。ガラス管T内には混合物Cが載置される。ガラス管Tの2つの開口部T1、T2は開放されている。ガラス管Tには、開口部T1から注入ガスIGが注入される。混合物Cを通過した注入ガスIGは、混合物Cから発生したハロゲンガスGとともに、ガラス管T内を通過して開口部T2から外部に流出する。
【0061】
なお、外部から混合物Cに向かって注入ガスIGを注入する場合、注入ガスとして空気を用いることが好ましい。
【0062】
また、注入ガスを注入する場合、注入ガス中の酸素濃度は大気中の酸素濃度よりも低いことが好ましい。例えば、注入ガス中の窒素濃度を大気中の窒素濃度よりも高く設定し、酸素濃度を減らしてもよい。注入ガスとして、窒素ガスを用いることが好ましい。
【0063】
加熱炉120により、混合物Cの熱処理を効率的に行うことができる。また、加熱炉120により、太く、かつ、長い銀ワイヤーWを効率的に製造できる。
【実施例】
【0064】
本発明の実施例を説明する。以下、実施例1〜3の銀ワイヤーの製造方法、測定方法、観察方法、測定結果および観察結果を順に説明する。なお、実施例1の銀ワイヤーの製造方法では、ガスを注入することなく熱処理を行った。実施例2の銀ワイヤーの製造方法では、注入ガスとして空気を注入して熱処理を行った。実施例3の銀ワイヤーの製造方法では、注入ガスとして窒素を注入して熱処理を行った。
【0065】
(実施例1)
[Bi2212の作製]
酸化ビスマスBi23(和光純薬工業株式会社製)、炭酸ストロンチウムSrCO3(関東化学株式会社製)、炭酸カルシウムCaCO3(関東化学株式会社製)、および、酸化銅Cu2O(和光純薬工業株式会社製)を、モル比でBi:Sr:Ca:Cu=2:2:1:2となるように調製し、エタノール中で1時間混合した。その後、混合物を800℃で10時間加熱した。
【0066】
混合物をX線回折装置(株式会社リガク製、製品名「Ultima IV」)を用いて測定した。測定は、管電圧40kV、管電流40mA、測定速度2degree/分で行った。測定の結果、混合物はBi2212の単相とはいえなかった。その後、乳鉢内で混合物を粉砕した。
【0067】
次に、粉砕された粉末を840℃で10時間加熱した。上記X線回折装置を用いて混合物を上記測定条件で測定した。測定の結果、混合物はBi2212の単相とはいえなかった。その後、乳鉢内で混合物を粉砕した。
【0068】
次に、粉砕された粉末を860℃で10時間加熱した。上記X線回折装置を用いて混合物を上記測定条件で測定した。測定の結果、混合物はBi2212の単相とはいえなかった。その後、乳鉢内で混合物を粉砕した。
【0069】
次に、粉砕された粉末を直径10mm厚さ1mmの円柱ペレットに付与し、圧力50MPaで3分間、一軸方向に加圧して成形した。その後、860℃で24時間加熱してサンプルBを生成した。上記X線回折装置を用いて混合物を上記測定条件で測定した。測定の結果、サンプルBはBi2212の単相であることを確認した。
【0070】
[サンプルIBの作製]
100質量部のサンプルBおよび50質量部のヨウ素(関東化学株式会社製)を秤量し、ガラス管内にサンプルBおよびヨウ素を入れ、そのガラス管内を真空引きした後に封じた。その後、箱型加熱炉にて200℃で72時間熱処理してサンプルIBを生成した。
【0071】
[サンプルABの作製]
100質量部のサンプルIBおよび50質量部のヨウ化銀(ナカライテスク株式会社製)を秤量し、エタノール中でサンプルIBおよびヨウ化銀を10分間混合した。その後、混合物を直径10mm厚さ1mmの円柱ペレットに付与し、圧力50MPaで3分間、一軸方向に加圧して成形した。
【0072】
その後、成形物を大気下において昇温速度5℃/分で250℃まで昇温し、250℃を30時間維持してサンプルABを生成した。サンプルBと同様に、X線回折装置を用いてサンプルABを測定した。測定の結果、サンプルABはAgIBi2212の単相であることを確認した。
【0073】
図6は、サンプルB、サンプルIBおよびサンプルABのX線回析測定結果を示すグラフである。図6のサンプルIBおよびサンプルABに示されるように、サンプルIBおよびサンプルABの構造は、それぞれ擬似的に正方晶として指数付できた。
【0074】
サンプルB、サンプルIBおよびサンプルABの格子定数cを求めたところ、サンプルBの格子定数cは30.55Åであり、サンプルIBの格子定数cは36.94Åであり、サンプルABの格子定数cは45.40Åであった。サンプルBにヨウ素Iをインターカレートすると格子定数が大きくなり、さらに、サンプルIBにヨウ化銀AgIをインターカレートすると格子定数が大きくなっていた。これは、インターカレーションによって層間が広がり、c軸方向に伸びていたためと考えられる。
【0075】
[サンプル1aの作製]
図4に示した加熱炉110と同様の構造を有する加熱炉に、サンプルABを入れたガラス管を設置した。昇温速度5℃/分で温度500℃まで加熱し、加熱温度500℃を3時間維持するように熱処理を行い、サンプル1aを生成した。
【0076】
[サンプル1aの表面観察]
サンプル1aの表面を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、製品名「JSM−5600」)を用いて観察した。観察は加速電圧15kV、スポットサイズ20で行った。
【0077】
[サンプル1bの作製および観察]
熱処理の加熱温度500℃を650℃に変更した点を除いて、サンプル1aと同様にサンプルABの熱処理を行い、サンプル1bを生成した。その後、サンプル1aと同様にサンプル1bの表面を観察した。
【0078】
[サンプル1cの作製および観察]
熱処理の加熱温度500℃を700℃に変更した点を除いて、サンプル1aと同様にサンプルABの熱処理を行い、サンプル1cを生成した。その後、サンプル1aと同様にサンプル1cの表面を観察した。
【0079】
[元素分析]
エネルギー分散型X線分析装置(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy:EDX、日本電子株式会社製)を用いてサンプル1cの生成物の元素分析を行った。
【0080】
図7(a)にサンプル1cの表面上に生成された生成物の元素分析の測定結果を示す。図7(a)では、銀成分を点線でマッピングして示している。サンプル1cの表面に銀ワイヤーが生成されていたことが確認できた。
【0081】
微小X線回折装置(株式会社リガク製、製品名「Rint 2500」)を用いてサンプル1cの生成物を測定した。測定条件は、管電圧40kV、管電流200mA、計数時間360秒とし、試料台のω、φ、χ軸搖動条件は、ω軸5〜25 degree(60degree/分)の範囲、φ軸−180〜180degree(360degree/分)の範囲、χ軸固定として測定を行った。
【0082】
図8は、サンプル1cの生成物の微小X線回析測定結果を示すグラフである。なお、図8には、サンプル1cの生成物の微小X線回析測定結果に加えて、PDF(Powder Diffraction File) Agも併せて示している。PDF Agのデータは01−071−4613である。サンプル1cの表面に銀ワイヤーが生成されていたことが確認できた。
【0083】
[サンプルACの作製]
100質量部のCu2O(和光純薬工業株式会社製)および33.3質量部のヨウ化銀(ナカライテスク株式会社製)を秤量し、エタノール中でCu2Oおよびヨウ化銀を10分間混合した。その後、混合物を直径10mm厚さ1mmの円柱ペレットに付与し、圧力50MPaで3分間、一軸方向に加圧してサンプルACを生成した。
【0084】
サンプルBと同様に、X線回折装置を用いてサンプルACを測定した。測定の結果、サンプルACがAgI−Cu2Oの単相であることを確認した。
【0085】
[サンプル2aの作製および観察]
サンプルABをサンプルACに変更した点を除いて、サンプル1aと同様にサンプル2aを生成した。その後、サンプル1aと同様にサンプル2aの表面を観察した。
【0086】
[サンプル2bの作製および観察]
熱処理の加熱温度500℃を650℃に変更した点を除いて、サンプル2aと同様にサンプルACの熱処理を行い、サンプル2bを生成した。その後、サンプル2aと同様にサンプル2bの表面を観察した。
【0087】
さらに、サンプル1cと同様にサンプル2bの表面に生成された物質の元素分析を行った。図7(b)に、サンプル2bの表面上に生成された生成物の元素分析の測定結果を示す。図7(b)では、銀成分を点線でマッピングして示している。サンプル2bの表面に銀ワイヤーが生成されていたことが確認できた。サンプル1cと同様に、微小X線回折装置を用いてサンプル2bを測定した。
【0088】
[サンプル2cの作製および観察]
熱処理の加熱温度500℃を700℃に変更した点を除いて、サンプル2aと同様にサンプルACの熱処理を行い、サンプル2cを生成した。その後、サンプル2aと同様にサンプル2cの表面を観察した。
【0089】
図9は、サンプルACおよびサンプル2bのX線回析測定結果を示すグラフである。なお、図9には、サンプルACおよびサンプル2bのX線回析測定結果に加えて、PDF AgI、PDF Cu2O、PDF CuO、PDF Agも併せて示している。なお、PDF AgIのデータは00−009−0374であり、PDF Cu2Oのデータは01−071−3645であり、PDF CuOのデータは01−073−6023であり、PDF Agのデータは01−071−4613である。図9から、熱処理により、サンプル2bにおいて、成分Cu2Oは成分CuOに酸化され、Cuの価数が1価から2価に増加したと考えられる。
【0090】
[サンプルAFの作製]
100質量部のFeO(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)および33.3質量部のヨウ化銀(ナカライテスク株式会社製)を秤量し、エタノール中でFeOおよびヨウ化銀を10分間混合した。その後、混合物を直径10mm厚さ1mmの円柱ペレットに付与し、圧力50MPaで3分間、一軸方向に加圧してサンプルAFを生成した。サンプルBと同様に、X線回折装置を用いてサンプルAFを測定した。測定の結果、サンプルAFがAgI−FeOのほぼ単相であることを確認した。
【0091】
[サンプル3aの作製および観察]
サンプルABをサンプルAFに変更した点を除いて、サンプル1aと同様にサンプル3aを生成した。その後、サンプル1aと同様にサンプル3aの表面を観察した。
【0092】
[サンプル3bの作製および観察]
熱処理の加熱温度500℃を650℃に変更した点を除いて、サンプル3aと同様にサンプルAFの熱処理を行い、サンプル3bを生成した。その後、サンプル3aと同様にサンプル3bの表面を観察した。また、サンプル1cと同様に、微小X線回折装置を用いてサンプル3bを測定した。
【0093】
[サンプル3cの作製および観察]
熱処理の加熱温度500℃を700℃に変更した点を除いて、サンプル3aと同様にサンプルAFの熱処理を行い、サンプル3cを生成した。その後、サンプル3aと同様にサンプル3cの表面を観察した。
【0094】
図10は、サンプルAFおよびサンプル3bのX線回析測定結果を示すグラフである。なお、図10には、サンプルAFおよびサンプル3bのX線回析測定結果に加えて、PDF AgI、PDF FeO、PDF Fe23、PDF Fe34、PDF Agも併せて示している。なお、PDF AgIのデータは00−009−0374であり、PDF FeOのデータは00−006−0615であり、PDF Fe23のデータは01−076−4579であり、PDF Fe34のデータは01−071−6337であり、PDF Agのデータは01−071−4613である。図10から、熱処理により、サンプル3bにおいて、成分FeOは成分Fe23に酸化され、Feの価数が2価から3価に増加したと考えられる。
【0095】
図11は、実施例1におけるサンプル1a〜1c、2a〜2cおよび3a〜3cのSEMによる観察結果を示す図である。詳細には、図11(a)〜図11(c)は、実施例1におけるサンプル1a〜1cのSEMによる観察結果をそれぞれ示す図であり、図11(d)〜図11(f)は、実施例1におけるサンプル2a〜2cのSEMによる観察結果をそれぞれを示す図である。また、図11(g)は、実施例1におけるサンプル3aのSEMによる観察結果を示す図であり、図11(h)および図11(i)は、実施例1におけるサンプル3bのSEMによる観察結果を示す図であり、図11(j)は、実施例1におけるサンプル3cのSEMによる観察結果を示す図である。
【0096】
金属酸化物としてAgIBi2212を用いた場合、加熱温度500℃のサンプル1aでは、熱処理をしても銀ワイヤーの生成量はそれほど多くなかったが、加熱温度650℃のサンプル1bでは、熱処理をすると長さ5〜10μm程度の比較的短い銀ワイヤーが生成した。なお、加熱温度700℃のサンプル1cでは、熱処理の後には、サンプル1bよりも長く多量の銀ワイヤーが生成した。なお、加熱温度700℃以上の場合、銀ワイヤーは溶解して互いに接触し、それほど成長しなかった。
【0097】
金属酸化物としてAgI−Cu2Oを用いた場合、加熱温度500℃のサンプル2aでは、熱処理をしても銀ワイヤーの生成量はそれほど多くなかったが、加熱温度650℃のサンプル2bでは、熱処理すると比較的長く絡み合った形状の銀ワイヤーが生成した。なお、加熱温度700℃のサンプル2cでは、熱処理をしても、銀ワイヤーはそれほど生成しなかった。
【0098】
金属酸化物としてAgI−FeOを用いた場合、加熱温度500℃のサンプル3aでは、直径約50nm、長さ約1〜2μm程度の非常に細く短い銀ワイヤーが生成した。また、加熱温度650℃のサンプル3bでも、同様に、直径約50nm、長さ約1〜2μm程度の非常に細く短い銀ワイヤーが生成した。一方、加熱温度700℃のサンプル3cでは、熱処理をしても、銀ワイヤーはそれほど生成しなかった。
【0099】
(実施例2)
[サンプル4aの作製および観察]
図5に示した加熱炉120と同様の構造を有する加熱炉に、サンプルABを入れたガラス管を設置した。注入ガスとして空気を流量0.5L/分で注入した。昇温速度5℃/分で温度650℃まで昇温し、加熱温度650℃を3時間維持するように熱処理を行い、サンプル4aを生成した。その後、サンプル1aと同様に、走査型電子顕微鏡を用いてサンプル4aの表面を観察した。
【0100】
図12は、実施例2におけるサンプル4aのSEMによる観察結果を示す図である。詳細には、図12(a)〜図12(c)は、実施例2におけるサンプル4aのSEMによる観察結果を示す図である。図12(b)は図12(a)よりも約1.3倍拡大した図であり、図12(c)は図12(b)よりもさらに3倍拡大した図である。
【0101】
サンプル4aのほぼ表面全体が銀ワイヤーで覆われていた。また、図11(b)に示したサンプル1bの観察結果と比較して比較的長い銀ワイヤーが生成された。
【0102】
[サンプル5aの作製および観察]
サンプルABをサンプルACに変更し、かつ、注入ガスとして空気を流量0.1L/分で注入した点を除いて、サンプル4aと同様にサンプル5aを生成した。その後、サンプル1aと同様にサンプル5aの表面を観察した。
【0103】
[サンプル5bの作製および観察]
注入ガスの流量を0.1L/分から0.5L/分に変更した点を除いて、サンプル5aと同様にサンプルACの熱処理を行い、サンプル5bを生成した。その後、サンプル5aと同様にサンプル5bの表面を観察した。
【0104】
[サンプル5cの作製および観察]
注入ガスの流量を0.1L/分から1.0L/分に変更した点を除いて、サンプル5aと同様にサンプルACの熱処理を行い、サンプル5cを生成した。その後、サンプル5aと同様にサンプル5cの表面を観察した。
【0105】
[サンプル5dの作製および観察]
熱処理の加熱温度650℃を700℃に変更した点を除いて、サンプル5aと同様にサンプルACの熱処理を行い、サンプル5dを生成した。その後、サンプル5aと同様にサンプル5dの表面を観察した。
【0106】
[サンプル5eの作製および観察]
注入ガスの流量を0.1L/分から0.5L/分に変更した点を除いて、サンプル5dと同様にサンプルACの熱処理を行い、サンプル5eを生成した。その後、サンプル5aと同様にサンプル5eの表面を観察した。
【0107】
[サンプル5fの作製および観察]
注入ガスの流量を0.1L/分から1.0L/分に変更した点を除いて、サンプル5dと同様にサンプルACの熱処理を行い、サンプル5fを生成した。その後、サンプル5aと同様にサンプル5fの表面を観察した。
【0108】
図13は、実施例2におけるサンプル5a〜5fのSEMによる観察結果を示す図である。サンプル5a〜5fでは、表面に銀ワイヤーが溶解して固まっており、他の銀ワイヤーと独立した状態の銀ワイヤーは比較的少なかった。また、サンプル5a〜5fでは、空気の流量および加熱温度が変化しても、表面はそれほど変化しなかった。
【0109】
[サンプル6aの作製および観察]
サンプルACをサンプルAFに変更した点を除いて、サンプル5aと同様にサンプル6aを生成した。その後、サンプル1aと同様にサンプル6aの表面を観察した。
【0110】
[サンプル6bの作製および観察]
注入ガスの流量を0.1L/分から0.5L/分に変更した点を除いて、サンプル6aと同様にサンプルAFの熱処理を行い、サンプル6bを生成した。その後、サンプル6aと同様にサンプル6bの表面を観察した。
【0111】
[サンプル6cの作製および観察]
注入ガスの流量を0.1L/分から1.0L/分に変更した点を除いて、サンプル6aと同様にサンプルAFの熱処理を行い、サンプル6cを生成した。その後、サンプル6aと同様にサンプル6cの表面を観察した。
【0112】
[サンプル6dの作製および観察]
熱処理の加熱温度650℃を700℃に変更した点を除いて、サンプル6aと同様にサンプルAFの熱処理を行い、サンプル6dを生成した。その後、サンプル6aと同様にサンプル6dの表面を観察した。
【0113】
[サンプル6eの作製および観察]
注入ガスの流量を0.1L/分から0.5L/分に変更した点を除いて、サンプル6dと同様にサンプルAFの熱処理を行い、サンプル6eを生成した。その後、サンプル6aと同様にサンプル6eの表面を観察した。
【0114】
[サンプル6fの作製および観察]
注入ガスの流量を0.1L/分から1.0L/分に変更した点を除いて、サンプル6dと同様にサンプルAFの熱処理を行い、サンプル6fを生成した。その後、サンプル6aと同様にサンプル6fの表面を観察した。
【0115】
図14は、実施例2におけるサンプル6a〜6fのSEMによる観察結果を示す図である。サンプル6a〜6fでは、表面に銀ワイヤーが溶解して固まっており、他の銀ワイヤーと独立した状態の銀ワイヤーは比較的少なかった。また、サンプル6a〜6fでは、空気の流量および加熱温度が変化しても、表面はそれほど変化しなかった。
【0116】
(実施例3)
[サンプル7aの作製および観察]
注入ガスを空気から窒素に変更した点を除いて、サンプル4aと同様にサンプルAFの熱処理を行い、サンプル7aを生成した。その後、サンプル1aと同様にサンプル7aの表面を観察した。
【0117】
図15は、実施例3におけるサンプル7aのSEMによる観察結果を示す図である。詳細には、図15(a)〜図15(c)は、実施例3におけるサンプル7aのSEMによる観察結果を示す図である。図15(b)は図15(a)よりも5倍拡大した図であり、図15(c)は図15(b)よりもさらに2倍拡大した図である。
【0118】
サンプル7aでは、表面を覆う銀は比較的少なく、注入ガスとして空気を用いた場合の図12と比較して、銀ワイヤーの生成量がさらに多かった。
【0119】
[サンプル8aの作製および観察]
サンプルABをサンプルACに変更し、注入ガスとして空気を流量0.1L/分で注入し、さらに、加熱温度を650℃から500℃に変更した点を除いて、サンプル7aと同様にサンプル8aを生成した。その後、サンプル1aと同様にサンプル8aの表面を観察した。
【0120】
[サンプル8bの作製および観察]
注入ガスの流量を0.1L/分から0.5L/分に変更した点を除いて、サンプル8aと同様にサンプルACの熱処理を行い、サンプル8bを生成した。その後、サンプル8aと同様にサンプル8bの表面を観察した。
【0121】
[サンプル8cの作製および観察]
注入ガスの流量を0.1L/分から1.0L/分に変更した点を除いて、サンプル8aと同様にサンプルACの熱処理を行い、サンプル8cを生成した。その後、サンプル8aと同様にサンプル8cの表面を観察した。
【0122】
[サンプル8dの作製および観察]
熱処理の加熱温度500℃を650℃に変更した点を除いて、サンプル8aと同様にサンプルACの熱処理を行い、サンプル8dを生成した。その後、サンプル8aと同様にサンプル8dの表面を観察した。
【0123】
[サンプル8eの作製および観察]
注入ガスの流量を0.1L/分から0.5L/分に変更した点を除いて、サンプル8dと同様にサンプルACの熱処理を行い、サンプル8eを生成した。その後、サンプル8aと同様にサンプル8eの表面を観察した。
【0124】
[サンプル8fの作製および観察]
注入ガスの流量を0.1L/分から1.0L/分に変更した点を除いて、サンプル8dと同様にサンプルACの熱処理を行い、サンプル8fを生成した。その後、サンプル8aと同様にサンプル8fの表面を観察した。
【0125】
[サンプル8gの作製および観察]
熱処理の加熱温度500℃を700℃に変更した点を除いて、サンプル8aと同様にサンプルACの熱処理を行い、サンプル8gを生成した。その後、サンプル8aと同様にサンプル8gの表面を観察した。
【0126】
[サンプル8hの作製および観察]
注入ガスの流量を0.1L/分から0.5L/分に変更した点を除いて、サンプル8gと同様にサンプルAC熱処理を行い、サンプル8hを生成した。その後、サンプル8aと同様にサンプル8hの表面を観察した。
【0127】
[サンプル8iの作製および観察]
注入ガスの流量を0.1L/分から1.0L/分に変更した点を除いて、サンプル8gと同様にサンプルACの熱処理を行い、サンプル8iを生成した。その後、サンプル8aと同様にサンプル8iの表面を観察した。
【0128】
図16は、実施例3におけるサンプル8a〜8iのSEMによる観察結果を示す図である。詳細には、図16(a)〜図16(i)は、実施例3におけるサンプル8a〜8iのSEMによる観察結果をそれぞれ示す図である。
【0129】
サンプル8a〜8iにおいて、表面に銀ワイヤーが溶解して固まっており、他の銀ワイヤーと独立した状態の銀ワイヤーは比較的少なかった。また、サンプル8a〜8iでは、窒素の流量および加熱温度が変化しても、表面はそれほど変化しなかった。
【0130】
[サンプル9aの作製および観察]
サンプルACをサンプルAFに変更した点を除いて、サンプル8aと同様にサンプル9aを生成した。その後、サンプル1aと同様にサンプル9aの表面を観察した。
【0131】
[サンプル9bの作製および観察]
注入ガスの流量を0.1L/分から0.5L/分に変更した点を除いて、サンプル9aと同様にサンプルAFの熱処理を行い、サンプル9bを生成した。その後、サンプル9aと同様にサンプル9bの表面を観察した。
【0132】
[サンプル9cの作製および観察]
注入ガスの流量を0.1L/分から1.0L/分に変更した点を除いて、サンプル9aと同様にサンプルAFの熱処理を行い、サンプル9cを生成した。その後、サンプル9aと同様にサンプル9cの表面を観察した。
【0133】
[サンプル9dの作製および観察]
熱処理の加熱温度500℃を650℃に変更した点を除いて、サンプル9aと同様にサンプルAFの熱処理を行い、サンプル9dを生成した。その後、サンプル9aと同様にサンプル9dの表面を観察した。
【0134】
[サンプル9eの作製および観察]
注入ガスの流量を0.1L/分から0.5L/分に変更した点を除いて、サンプル9dと同様にサンプルAFの熱処理を行い、サンプル9eを生成した。その後、サンプル9aと同様にサンプル9eの表面を観察した。
【0135】
[サンプル9fの作製および観察]
注入ガスの流量を0.1L/分から1.0L/分に変更した点を除いて、サンプル9dと同様にサンプルAFの熱処理を行い、サンプル9fを生成した。その後、サンプル9aと同様にサンプル9fの表面を観察した。
【0136】
[サンプル9gの作製および観察]
熱処理の加熱温度500℃を700℃に変更した点を除いて、サンプル9aと同様にサンプルAFの熱処理を行い、サンプル9gを生成した。その後、サンプル9aと同様にサンプル9gの表面を観察した。
【0137】
[サンプル9hの作製および観察]
注入ガスの流量を0.1L/分から0.5L/分に変更した点を除いて、サンプル9gと同様にサンプルAFの熱処理を行い、サンプル9hを生成した。その後、サンプル9aと同様にサンプル9hの表面を観察した。
【0138】
[サンプル9iの作製および観察]
注入ガスの流量を0.1L/分から1.0L/分に変更した点を除いて、サンプル9gと同様にサンプルAFの熱処理を行い、サンプル9iを生成した。その後、サンプル9aと同様にサンプル9iの表面を観察した。
【0139】
図17は、実施例3におけるサンプル9a〜9fのSEMによる観察結果を示す図である。詳細には、図17(a)〜図17(c)はサンプル9a〜9cのSEMによる観察結果をそれぞれ示す図である。図17(d)はサンプル9dのSEMによる観察結果を示す図であり、図17(e)〜図17(g)はサンプル9eのSEMによる観察結果を示す図であり、図17(h)はサンプル9fのSEMによる観察結果を示す図である。図17(i)はサンプル9gのSEMによる観察結果を示す図であり、図17(j)〜図17(m)はサンプル9hのSEMによる観察結果を示す図である。図17(n)はサンプル9iのSEMによる観察結果を示す図である。
【0140】
サンプル9a〜9iにおいて、直径約20μmの長い銀ワイヤーが大量に生成された。なお、図11(g)〜図11(j)に示したように注入ガスを注入しなかったサンプル3a〜3cと比較すると、サンプル9a〜9iでは、径および長さの大きく異なる銀ワイヤーが生成された。また、サンプル9a〜9iでは、窒素の流量および加熱温度が増加するほど、銀ワイヤーの生成量が増加した。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明による銀ワイヤーの製造方法によれば、銀ワイヤーを容易に製造できる。製造された銀ワイヤーは、配線材料および/または抗菌材料として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0142】
C 混合物
W 銀ワイヤー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図8
図9
図10
図7
図11
図12
図13
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図15
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図17