【課題】半導体ウェハの裏面を研削して薄型化する際、バンプが存在する部分と存在しない部分との高低差に起因し破損を起こす。バンプの吸収性に優れ、半導体ウェハから剥離する際にも粘着剤層が破断せず、かつ、バンプ部への粘着剤の残渣発生を防止する半導体加工用粘着シートを提供する。
【解決手段】半導体加工用粘着シート10は、基材3上に、周波数1Hzで測定した50℃における貯蔵弾性率Iが200,000Pa以下である中間層2及びエネルギー線硬化型ゴム系粘着剤から形成される粘着剤層1をこの順で有する。
前記周波数1Hzで測定した50℃における粘着剤層の貯蔵弾性率Aと中間層の貯蔵弾性率Iとの比[A/I]が1.8以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着シート。
前記中間層がウレタン(メタ)アクリレート及びチオール基含有化合物を含む樹脂組成物から形成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着シート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中の記載において、「重量平均分子量(Mw)」、「数平均分子量(Mn)」及び「分子量分布(Mw/Mn)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
また、本明細書中の記載において、例えば、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」と「メタクリレート」の双方を意味する用語であり、他の類似用語も同様である。
また、本明細書中の記載において、例えば、「エネルギー線」とは、公知のγ線、電子線、紫外線、可視光等のエネルギー線を意味する用語である。
また、後述する半導体加工用粘着シートを構成する基材、中間層、粘着剤層及び任意で設けられる剥離材の厚さは、定圧厚さ測定器により測定した値である。
【0012】
[半導体加工用粘着シート]
本発明の半導体加工用粘着シートは、半導体ウェハの保護、特にバンプ付き半導体ウェハのバンプ部分を有する表面(以下、単に「バンプ付きウェハの表面」ともいう)を保護するために貼付し、その表面を保護するために使用されるものである。
図1に示すように、本発明の半導体加工用粘着シート10は、基材3上に、中間層2と粘着剤層1とをこの順で有し、該中間層及び粘着剤層が、後述する要件を満たす中間層及び粘着剤層である半導体加工用粘着シートである。
以下、半導体加工用粘着シートの各部材について説明する。
【0013】
<基材>
本発明で用いる基材は、特に制限されないが、紙や不織布と比べて塵芥発生が少ないために電子部品の加工部材に好適であり、入手が容易であるとの観点から、樹脂フィルムであることが好ましい。半導体加工用粘着シートに基材を設けることで、半導体加工用粘着シートの形状安定性を向上させたり、半導体加工用粘着シートにコシを与えたりすることができる。また、半導体加工用粘着シートをバンプが存在する被着面に貼付したときに半導体加工用粘着シートの貼付面と逆の面が平滑に保たれやすい。
また、本発明で用いる基材は、1つの樹脂フィルムからなる単層フィルムからなる基材であってもよく、複数の樹脂フィルムが積層した複層フィルムからなる基材であってもよい。
該基材の厚さは、半導体加工用粘着シートに適度な弾力を与える観点、また、半導体加工用粘着シートの巻収時の取り扱い性の観点から、好ましくは5〜250μm、より好ましくは10〜200μm、更に好ましくは25〜150μmである。
【0014】
本発明の基材として用いられる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリオレフィン系フィルム、ハロゲン化ビニル重合体系フィルム、アクリル樹脂系フィルム、ゴム系フィルム、セルロース系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、シクロオレフィンポリマー系フィルム、ウレタン樹脂を含むエネルギー線硬化性組成物の硬化物からなるフィルム等が挙げられる。
これらの中でも、ウェハ等のワークを極薄にまで研削する際にもワークを安定して保持できるという観点から、厚さの精度が高いフィルムが好ましく、具体的には、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、シクロオレフィンポリマー系フィルム、ウレタン樹脂を含むエネルギー線硬化性組成物の硬化物からなるフィルム等が好ましく、ポリエステル系フィルムがより好ましい。
【0015】
ポリエステル系フィルムを構成するポリエステルとしては、例えば、芳香族二塩基酸又はそのエステル誘導体と、ジオール又はそのエステル誘導体とから重縮合して得られるポリエステルが挙げられる。
具体的なポリエステル系フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフテレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等のポリエステルからなるフィルムが挙げられる。
なお、本発明で用いるポリエステル系フィルムは、ポリエステルの共重合体からなるフィルムであってもよく、上記ポリエステルと比較的少量の他樹脂との混合物からなる樹脂混合フィルムであってもよい。
これらのポリエステル系フィルムの中でも、入手が容易で、厚さ精度が高いとの観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0016】
なお、基材と中間層との接着性を向上させる観点から、樹脂フィルムの表面に更に易接着層又は粘着剤層を積層した基材を用いてもよい。
更に、本発明で用いる基材には、本発明の効果を損なわない範囲において、フィラー、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒等を含有させてもよい。
また、当該基材は、透明なものであっても、不透明なものであってもよく、所望により着色又は蒸着されていてもよいが、粘着剤の硬化に十分な程度にエネルギー線を透過するものが好ましい。
【0017】
<中間層>
本発明で用いる中間層は、周波数1Hzで測定した50℃における貯蔵弾性率Iが200,000Pa以下である(以下、単に「要件(a)」ともいう。)。当該中間層の貯蔵弾性率Iが、200,000Paを越えると、十分なバンプ吸収性及び良好な貼付状態を得ることができない。
そして、当該中間層は、バンプ付きウェハに対するより良好な貼付状態を得る観点から、更に、中間層の前記貯蔵弾性率Iが、好ましくは180,000Pa以下、より好ましくは150,000Pa以下である。
また、半導体加工用粘着シートの厚さ方向に圧力が加えられた際に、中間層が半導体加工用粘着シートの端部からはみ出すことを抑制する観点から、当該中間層の貯蔵弾性率Iは、好ましくは10,000Pa以上、より好ましくは50,000Pa以上、更に好ましくは70,000Pa以上、より更に好ましくは80,000Pa以上、より更に好ましくは100,000Pa以上である。
【0018】
また、本発明で用いる中間層は、周波数1Hzで測定した50℃における損失正接(tanδ)(以下、単に「中間層の損失正接」ともいう)が1.0以上である中間層を有することが好ましい。当該中間層の損失正接が、1.0以上であると、本発明の半導体加工用粘着シートをバンプ付きウェハの表面に貼付する際に、中間層が十分に変形して、バンプに追従し、より良好なバンプ吸収性を得ることができる。中間層がバンプを十分吸収して、バンプ付きウェハの表面に対する良好な貼付状態を得る観点から、当該中間層の損失正接は、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは1.8以上、より更に好ましくは2.0以上、より更に好ましくは3.0以上である。
また、中間層の加熱時の流動性を適切な範囲に調整する観点から、当該中間層の損失正接は、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下である。
なお、上記した中間層の損失正接は、より具体的には、後述する実施例に記載した中間層の貯蔵弾性率Iを測定する際と同様の方法に基づいて得られる50℃における貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)との比〔G”/G’〕として算出される値である。
また、当該中間層の厚さは、保護対象となる半導体表面のバンプ高さに応じて適宜調整することができるが、比較的高さの高いバンプも吸収することが可能となる観点から、好ましくは50〜400μm、より好ましくは70〜300μm、更に好ましくは80〜250μmである。
【0019】
本発明で用いる中間層は、当該要件(a)を満たす中間層であれば、特に制限されないが、当該要件を満たし易く、より優れたバンプ吸収性を得る観点から、ウレタン(メタ)アクリレート及びチオール基含有化合物を含む樹脂組成物から形成されることが好ましい。
以下、当該樹脂組成物(以下、単に「中間層用樹脂組成物」ともいう)に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0020】
(ウレタン(メタ)アクリレート)
ウレタン(メタ)アクリレートは、少なくとも(メタ)アクリロイル基及びウレタン結合を有する化合物であり、エネルギー線照射により重合する性質を有するものである。
ウレタン(メタ)アクリレート中の(メタ)アクリロイル基数は、単官能、2官能、又は3官能以上でもよいが、上記要件(a)を満たす中間層を形成する観点から、単官能ウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
単官能ウレタン(メタ)アクリレートを製膜用組成物中に含むと、単官能ウレタン(メタ)アクリレートは重合構造において3次元網目構造の形成に関与しないために、3次元網目構造が形成されにくくなり、特に、前記要件(a)を満たす中間層を形成しやすくなる。
中間層用樹脂組成物中に用いられるウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得ることができる。
なお、ウレタン(メタ)アクリレートは、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
〔ポリオール化合物〕
ポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2つ以上有する化合物であれば特に制限されない。
具体的なポリオール化合物としては、例えば、アルキレンジオール、ポリエーテル型ポリオール、ポリエステル型ポリオール、ポリカーボネート型ポリオール等が挙げられる。
これらの中でも、ポリエーテル型ポリオールが好ましい。
なお、ポリオール化合物としては、2官能のジオール、3官能のトリオール、4官能以上のポリオールのいずれであってもよいが、入手の容易性、汎用性、反応性等の観点から、2官能のジオールが好ましく、ポリエーテル型ジオールがより好ましい。
【0022】
ポリエーテル型ジオールは、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【化1】
【0023】
上記式(1)中、Rは、2価の炭化水素基であるが、アルキレン基が好ましく、炭素数1〜6のアルキレン基がより好ましい。炭素数1〜6のアルキレン基の中でも、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基が好ましく、プロピレン基、テトラメチレン基がより好ましい。
また、nは、アルキレンオキサイドの繰り返し単位数であり、好ましくは10〜250、より好ましくは25〜205、更に好ましくは40〜185である。nが上記範囲であれば、得られるウレタン(メタ)アクリレートのウレタン結合濃度を適度にし、上記要件(a)を満たすように中間層を調製することが容易となる。
上記式(1)で表される化合物の中でも、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが好ましく、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールがより好ましい。
ポリエーテル型ジオールと多価イソシアネート化合物との反応により、エーテル結合部〔-(-R-O-)n-〕が導入された末端イソシアネートウレタンプレポリマーを生成する。このようなポリエーテル型ジオールを用いることで、ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリエーテル型ジオールから誘導される構成単位を含有する。
【0024】
ポリエステル型ポリオールの製造に用いられる多塩基酸成分としては、一般にポリエステルの多塩基酸成分として知られている化合物を使用することができる。
具体的な多塩基酸成分としては、例えば、アジピン酸、マレイン酸、コハク酸、シュウ酸、フマル酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の二塩基酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の二塩基酸や、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多塩基酸等の芳香族多塩基酸、これらに対応する無水物やその誘導体及びダイマー酸、水添ダイマー酸等が挙げられる。
これらの中でも、適度な硬度を有する塗膜を形成する観点から、芳香族多塩基酸が好ましい。
ポリエステル型ポリオールの製造するためのエステル化反応には、必要に応じて各種公知の触媒を使用してもよい。
当該触媒としては、例えば、ジブチルスズオキサイド、オクチル酸第一スズ等のスズ化合物、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のアルコキシチタン等が挙げられる。
ポリカーボネート型ポリオールとしては、特に限定されず、例えば、前述したグリコール類とアルキレンカーボネートとの反応物等が挙げられる。
【0025】
ポリオール化合物の水酸基価から算出した数平均分子量としては、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜9,000、更に好ましくは3,000〜7,000である。当該数平均分子量が1,000以上であれば、過剰な量のウレタン結合の生成に起因して中間層の粘弾性特性の制御が困難となるという事態が回避されるため好ましい。一方、当該数平均分子量が10,000以下であれば、得られる中間層が過度に軟化することを防ぐことができるため好ましい。
なお、ポリオール化合物の水酸基価から算出した数平均分子量は、〔ポリオール官能基数〕×56.11×1000/〔水酸基価(単位:mgKOH/g)〕から算出された値である。
【0026】
〔多価イソシアネート化合物〕
多価イソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ω,ω’−ジイソシアネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族系ジイソシアネート類;4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート類等が挙げられる。
これらの中でも、取り扱い性の観点から、イソホロンジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0027】
{ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート}
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、少なくとも1分子中にヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば、特に限定されない。
具体的なヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリルアミド;ビニルアルコール、ビニルフェノール、ビスフェノールAのジグリシジルエステルに(メタ)アクリル酸を反応させて得られる反応物等が挙げられる。
これらの中でも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
末端イソシアネートウレタンプレポリマー及びヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させる条件としては、必要に応じて添加される溶剤、触媒の存在下、60〜100℃で、1〜4時間反応させる条件が好ましい。
【0028】
このようにして得られる中間層用樹脂組成物用のウレタン(メタ)アクリレートは、オリゴマー、高分子量体、又はこれらの混合物のいずれであってもよいが、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
該ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは3,000〜80,000、更に好ましくは5,000〜65,000である。当該重量平均分子量が1,000以上であれば、ウレタン(メタ)アクリレートと後述する重合性単量体との重合物において、ウレタン(メタ)アクリレート由来の構造同士の分子間力に起因して、中間層に適度な硬さが付与されるため好ましい。
中間層用樹脂組成物中のウレタン(メタ)アクリレートの配合量は、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは25〜60質量%、更に好ましくは30〜50質量%、より更に好ましくは33〜47質量%である。ウレタン(メタ)アクリレートの配合量がこのような範囲にあれば、上記要件(a)を満たす中間層を形成することや、周波数1Hzで測定した50℃における中間層の貯蔵弾性率Iを、上述した範囲に調整することがより容易となる。
【0029】
(チオール基含有化合物)
チオール基含有化合物としては、分子中に少なくとも1つのチオール基を有する化合物であれば、特に制限されないが、上記要件(a)を満たす中間層を形成しやすくする観点から、多官能のチオール基含有化合物が好ましく、4官能のチオール基含有化合物がより好ましい。
具体的なチオール基含有化合物としては、例えば、ノニルメルカプタン、1−ドデカンチオール、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、トリアジンチオール、トリアジンジチオール、トリアジントリチオール、1,2,3−プロパントリチオール、テトラエチレングリコール−ビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグルコレート、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス[(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル]−イソシアヌレート、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン等が挙げられる。
なお、これらのチオール基含有化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
チオール基含有化合物の分子量は、好ましくは200〜3,000、より好ましくは300〜2,000である。当該分子量が上記範囲であれば、ウレタン(メタ)アクリレートとの相溶性が良好となり、製膜性を良好にすることができる。
チオール基含有化合物の配合量は、ウレタン(メタ)アクリレート及び後述する重合性単量体の合計100質量部に対して、好ましくは1.0〜4.9質量部、より好ましくは1.5〜4.8質量部である。
当該配合量が1.0質量部以上であれば、上記要件(a)を満たす中間層を形成しやすくなり、パンプ吸収性を向上させることができる。一方、当該配合量が4.9質量部以下であれば、ロール状に巻き取った際の中間層の浸み出しを抑制することができる。
【0031】
(重合性単量体)
本発明で用いる中間層用樹脂組成物には、製膜性を向上させる観点から、更に、重合性単量体を含むことが好ましい。
重合性単量体は、上記のウレタン(メタ)アクリレート以外の重合性化合物であって、エネルギー線の照射により他の成分と重合可能な化合物であって、樹脂成分を除くものであって、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。
なお、本明細書において、「樹脂成分」とは、構造中に繰り返し構造を有するオリゴマー又は高分子量体を指し、重量平均分子量が1,000以上の化合物をいう。
【0032】
重合性単量体としては、例えば、炭素数1〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリレート、脂環式構造を有する(メタ)アクリレート、芳香族構造を有する(メタ)アクリレート、複素環式構造を有する(メタ)アクリレート、スチレン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル化合物等が挙げられる。
【0033】
炭素数1〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
官能基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有化合物;第1級アミノ基含有(メタ)アクリレート、第2級アミノ基含有(メタ)アクリレート、第3級アミノ基含有(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香族構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェニルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
複素環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
これらの中でも、上記ウレタン(メタ)アクリレートとの相溶性の観点からは、比較的嵩高い基を有するものが好ましく、より具体的には、脂環式構造を有する(メタ)アクリレート、芳香族構造を有する(メタ)アクリレート、複素環式構造を有する(メタ)アクリレートが好ましく、脂環式構造を有する(メタ)アクリレートがより好ましい。また、要件(a)を満たす中間層を形成しやすい中間層用樹脂組成物を得る観点から、重合性単量体として、官能基を有する(メタ)アクリレート及び脂環式構造を有する(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。
【0037】
中間層用樹脂組成物中の脂環式構造を有する(メタ)アクリレートの配合量は、上記観点から、好ましくは32〜53質量%、より好ましくは35〜51質量%、更に好ましくは37〜48質量%、より更に好ましくは40〜47質量%である。
また、中間層用樹脂組成物中に含まれる重合性単量体の全量に対する、脂環式構造を有する(メタ)アクリレートの配合量は、上記観点から、好ましくは52〜87質量%、より好ましくは55〜85質量%、更に好ましくは60〜80質量%、より更に好ましくは65〜77質量%である。脂環式構造を有する(メタ)アクリレートの配合量がこのような範囲であると、周波数1Hzで測定した50℃における中間層の貯蔵弾性率Iを、上述した範囲に調整することがより容易となる。
【0038】
また、中間層用樹脂組成物中の重合性単量体の配合量は、好ましくは30〜80質量%、より好ましくは40〜75質量%、更に好ましくは50〜70質量%、より更に好ましくは53〜67質量%である。重合性単量体の配合量がこのような範囲にあれば、中間層中における重合性単量体が重合してなる部分の運動性が高いために、中間層が柔軟となる傾向があり、上記要件(a)を満たす中間層を形成することや、周波数1Hzで測定した50℃における中間層の貯蔵弾性率Iを、上述した範囲に調整することがより容易となる。
また、同様の観点から、中間層用樹脂組成物中のウレタン(メタ)アクリレートと重合性単量体との質量比〔ウレタン(メタ)アクリレート/重合性単量体〕は、好ましくは20/80〜60/40、より好ましくは30/70〜50/50、更に好ましくは35/65〜45/55である。
【0039】
(エネルギー線重合開始剤)
紫外線等をエネルギー線として使用して、中間層用樹脂組成物からなる塗膜を硬化させ、中間層を形成する場合、中間層用樹脂組成物には、更にエネルギー線重合開始剤を含むことが好ましい。エネルギー線重合開始剤は、一般的に、「光重合開始剤」ともいうため、本明細書では、以下、単に「光重合開始剤」ともいう。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィノキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光重合開始剤、アミンやキノン等の光増感剤等が挙げられ、より具体的には、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤の配合量は、ウレタン(メタ)アクリレート及び重合性単量体の合計100質量部に対して、好ましくは0.05〜15質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.3〜5質量部である。
【0040】
(その他の添加剤)
中間層用樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の添加剤を含有させてもよい。
その他の添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、染料等が挙げられる。
これらの添加剤を配合する場合、その他の添加剤の配合量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜6質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
なお、中間層用樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、ウレタン(メタ)アクリレート以外の樹脂成分を含有してもよいが、樹脂成分としてウレタン(メタ)アクリレートのみを含有することが好ましい。
中間層用樹脂組成物中に含まれるウレタン(メタ)アクリレート以外の樹脂成分の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、より更に好ましくは0質量%である
【0041】
また、中間層は、上記(a)の要件を満たすものである限り、上記の中間層用樹脂組成物から形成する以外にも、非反応性のウレタンポリマー又はオリゴマーと、重合性単量体とを含む硬化性組成物の硬化物や、エチレン−α−オレフィン共重合体を用いて形成してもよい。非反応性のウレタンポリマー又はオリゴマーは、公知のものを用いればよく、重合性単量体としては、上述したものと同じものを用いることができる。このような硬化性組成物は、上述したエネルギー線重合開始剤を含有していてもよい。
【0042】
エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンとα−オレフィンモノマーとを重合して得られる。α−オレフィンモノマーとしては、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、2,2−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセン、2,2−ジメチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、2,2,3−トリメチル−1−ブテン、1−オクテン、2,2,4−トリメチル−1−オクテンなどが挙げられる。これらのα−オレフィンモノマーは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、エチレン−α−オレフィン共重合体には、上記モノマー以外に、他の重合性単量体を用いることもできる。他の重合性単量体としては、例えば、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルケトン等のビニル化合物;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル等の不飽和カルボン酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド等が挙げられる。これらの重合性単量体は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
<粘着剤層>
本発明の半導体加工用粘着シートは、中間層上に更に粘着剤層を有することで、半導体ウェハの表面、特にバンプ付きウェハの表面に当該粘着シートを確実に固定して保護することができる。
本発明で用いる粘着剤層は、エネルギー線硬化型ゴム系粘着剤(以下、単に「本発明で用いる粘着剤組成物」ともいう。)から形成される。当該エネルギー線硬化型ゴム系粘着剤以外の粘着剤を用いる場合、良好なバンプ吸収性、半導体加工用粘着シートの剥離時における粘着剤の破断防止、及び半導体加工用粘着シートの剥離時におけるバンプ部への粘着剤残渣防止の全てを奏する半導体加工用粘着シートを得ることが困難である。特に、エネルギー線硬化型ゴム系粘着剤は、他の粘着剤と異なり、室温よりも温度を上げた場合に引っ張りに対して破断が起きにくく、40℃程度に加熱して剥離した場合のバンプ部への粘着剤残渣防止の効果に優れている。
【0044】
(エネルギー線硬化型ゴム系粘着剤)
エネルギー線硬化型ゴム系粘着剤とは、エネルギー線の照射により硬化するゴム系粘着剤をいい、ゴム系化合物を含む粘着剤に、エネルギー線重合性の官能基を導入した化合物を配合したものであれば特に制限されず、好ましくは、エネルギー線硬化型ゴム系粘着剤は、ゴム系化合物にエネルギー線重合性の官能基を導入した樹脂(以下、単に「エネルギー線重合性ゴム系化合物」ともいう。)を含む。
エネルギー線重合性ゴム系化合物としては、ゴム系化合物が、(メタ)アクリロイル基等のエネルギー線、特に紫外線の照射により重合する反応性基を有し、エネルギー線により重合が可能であるものを指す。エネルギー線重合性ゴム系化合物は、カルボキシ基等の反応性基を有し、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アミノ化合物等による架橋が可能であるものであってもよい。
【0045】
ゴム系化合物としては、例えば、天然ゴム、天然ゴムに(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン、(メタ)アクリロニトリルから選ばれる1種又は2種以上の単量体をグラフト重合させた変性天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等のジエン系ホモポリマー、ポリスチレン−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリイソプレン等のジエン系コポリマー、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ウレタンゴム、ポリイソブチレン系樹脂、ポリブテン樹脂等が挙げられる。
そして、当該ゴム系化合物を重合する際に、共重合体成分として官能基含有モノマーを使用することにより、エネルギー線重合性ゴム系化合物を得ることが容易となる。当該官能基含有モノマーは、後述する当該官能基と結合可能な反応性基とエネルギー線重合性の官能基の双方を有する化合物及び後述する架橋剤のいずれか一方又は両方との反応のために必要な官能基を提供する。官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基とを分子内に有するモノマーである。
【0046】
エネルギー線重合性ゴム系化合物は、共重合体成分として、官能基含有モノマーを共重合体成分全量に対して、0.1〜40質量%含む共重合体成分を共重合したものであることが好ましい。官能基含有モノマーの含有量が上記範囲内となることで、エネルギー線重合性ゴム系化合物は後述する架橋剤で適切に架橋することが可能になる。
また、官能基含有モノマーの上記含有量は、0.2〜30質量%であることがより好ましい。官能基含有モノマーが0.2〜30質量%であると、適切な粘着性能を確保しつつ、後述する架橋剤でエネルギー線重合性ゴム系化合物を適切に架橋することが可能になる。
これらのエネルギー線重合性ゴム系化合物を含む材料として、好ましくは、エネルギー線重合性のポリイソプレン材料を用いることができる。当該材料の市販品としては、例えば、メタクリロイル基及びカルボキシル基を有する「クラプレン UC−203」、「クラプレン UC−102」(いずれも製品名、クラレ社製)等が挙げられる。
当該ポリイソプレン材料に含有されるポリイソプレン系化合物の数平均分子量(Mn)は、良好な剥離性を得る観点から、好ましくは40,000以下、より好ましくは37,000以下である。また、良好なバンプ吸収性及び剥離性を得る観点から、好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上である。
なお、該エネルギー線重合性ゴム系化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、エネルギー線重合性の官能基を導入していないゴム系化合物を併用してもよく、このような材料の市販品としては、カルボキシル基を有する「クラプレン LIR−403」、「クラプレン LIR−410」(いずれも製品名、クラレ社製)等が挙げられる。
なお、上記した数平均分子量(Mn)は、より具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法に基づいて測定したポリスチレン換算値である。
【0047】
(架橋剤)
また、粘着剤層は、上記のエネルギー線重合性ゴム系化合物等を架橋させた架橋構造を有することが好ましい。本発明で用いる粘着剤組成物に含有される架橋剤としては、有機多価イソシアネート化合物、有機多価エポキシ化合物、有機多価イミン化合物等が挙げられる。
有機多価イソシアネート化合物としては、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物、脂環族多価イソシアネート化合物及びこれらの有機多価イソシアネート化合物の三量体、ならびにこれら有機多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等を挙げることができる。
有機多価イソシアネート化合物のさらなる具体的な例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物等が挙げられる。
【0048】
有機多価エポキシ化合物の具体的な例としては、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。
有機多価イミン化合物の具体的な例としては、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート及びN,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等を挙げることができる。
架橋剤の含有量は、エネルギー線重合性ゴム系化合物100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.1〜15質量部、更に好ましくは0.5〜8質量部の比率で用いられる。架橋剤の含有量を上記上限以下とすると、粘着剤層が過度に架橋するのを防止し、適切な粘着力が得られやすくなる。
【0049】
(エネルギー線重合開始剤)
また、本発明で用いる粘着剤組成物は、更にエネルギー線重合開始剤(本明細書中では「光重合開始剤」ともいう)を含むことが好ましい。
エネルギー線重合開始剤としては、例えば、上述した中間層用樹脂組成物の説明で挙げられたエネルギー線重合開始剤が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エネルギー線重合開始剤の配合量は、本発明で用いる粘着剤組成物の合計100質量部に対して、好ましくは0.05〜15質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.3〜5質量部である。
【0050】
(その他の添加剤)
また、上述した本発明で用いる粘着剤組成物には、粘着付与剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、劣化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、防錆剤、充填剤、シリコーン化合物、連鎖移動剤等の上記成分以外の成分が適宜含有されてもよい。
【0051】
本発明で用いられる粘着剤層は、半導体ウェハから剥離する際に粘着剤層が破断を防止する観点から、引張り破断伸度が、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上である。また、引張り破断伸度の上限は特に制限されないが、好ましくは200%以下、より好ましくは150%以下、更に好ましくは130%以下である。
また、本発明で用いられる粘着剤層は、良好なバンプ吸収性を得る観点から、周波数1Hzで測定した50℃におけるその貯蔵弾性率Aが好ましくは100,000Pa以下、より好ましくは90,000Pa以下、更に好ましくは80,000Pa以下、より更に好ましくは70,000Pa以下である。
また、粘着剤層の厚さの安定を図ることや、粘着剤層が半導体加工用シート端面からはみ出してくることを防止する観点から、当該粘着剤層の貯蔵弾性率Aは、好ましくは10,000Pa以上、より好ましくは25,000Pa以上、更に好ましくは35,000Pa以上である。
また、該粘着剤層の厚さは、保護対象となる半導体表面のバンプ高さに応じて適宜調整することができるが、好ましくは5〜200μm、より好ましくは7〜150μm、更に好ましくは10〜100μmである。
【0052】
<粘着剤層の貯蔵弾性率Aと、中間層の貯蔵弾性率Iとの比[A/I]>
また、本発明の半導体加工用粘着シートは、上記周波数1Hzで測定した50℃における粘着剤層の貯蔵弾性率Aと、周波数1Hzで測定した50℃における中間層の貯蔵弾性率Iとの比[A/I](以下、単に「貯蔵弾性率の比[A/I]」ともいう)が1.8以下であることが好ましい。
当該貯蔵弾性率の比[A/I]が、1.8以下であると、十分にバンプに追従できる程度の粘着剤層の変形が起こり、半導体加工用粘着シートのバンプ吸収性に優れる。バンプを十分に吸収して貼付可能であり、貼付後の半導体加工用粘着シートの表面を平滑にできる観点から、当該貯蔵弾性率の比[A/I]は、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.0以下、より更に好ましくは0.5以下である。特に、当該貯蔵弾性率の比[A/I]が1.0以下であると、バンプ付きウェハの表面に貼付した後の半導体加工用粘着シートの表面を、より平滑に保つことができる。
また、中間層の柔軟性をより高い程度に維持したり、粘着剤層の凝集性を維持したりすることが容易となる観点から、当該貯蔵弾性率の比[A/I]は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.15以上である。
なお、上記した周波数1Hzで測定した50℃における粘着剤層の貯蔵弾性率Aと、周波数1Hzで測定した50℃における中間層の貯蔵弾性率Iは、より具体的には、後述する実施例に記載した方法に基づいて測定した値である。
【0053】
<剥離材>
本発明の半導体加工用粘着シートは、前記粘着剤層上に、更に剥離材を有していてもよい。
剥離材としては、両面剥離処理をされた剥離シートや、片面剥離処理された剥離シート等が用いられ、剥離材用の基材上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
剥離材用基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム等が挙げられる。
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
剥離材の厚さは、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜120μm、更に好ましくは15〜80μmである。
【0054】
<半導体加工用粘着シートの製造方法>
本発明の半導体加工用粘着シートの製造方法としては、特に制限されず、公知の方法により製造することができる。以下、中間層用樹脂組成物又は本発明で用いる粘着剤組成物の塗工により中間層又は粘着剤層を形成する方法を例として説明する。中間層の形成については、以下に示す方法は硬化性組成物を流延して硬化させることにより中間層を得る場合に適している。また、粘着剤層の形成については、以下に示す方法は一般的に用いられている方法である。
図1に示すような、半導体加工用粘着シートの製造方法としては、例えば、基材3上に中間層2を形成し、その後、粘着剤層1を形成する方法が挙げられる。基材3上に中間層2を形成する方法としては、基材3の一方の面に、中間層用樹脂組成物の溶液を直接塗布し塗布膜を形成した後、硬化処理を行って、中間層2を形成させる方法や、剥離材の剥離処理面に、中間層用樹脂組成物の溶液を直接塗布し塗布膜を形成した後、半硬化処理を行って、剥離材上に半硬化層を形成し、当該半硬化層と基材3とを貼り合わせ、剥離材を除去する前、又は除去した後、半硬化層を完全に硬化させて中間層2を形成させる方法等が挙げられる。
次に、上述の方法で作製した中間層2上に、本発明で用いる粘着剤組成物の溶液を直接塗布し、乾燥させて粘着剤層1を形成させて製造する方法や、剥離材の剥離処理面に、本発明で用いる粘着剤組成物の溶液を直接塗布し、乾燥させて剥離材上に粘着剤層1を形成し、粘着剤層1と上述の方法で作成した中間層2とを貼り合わせて、一旦、半導体加工用粘着シート10を製造し、その後、剥離材を除去する方法等が挙げられる。
【0055】
中間層2や粘着剤層1を形成する際には、中間層用樹脂組成物又は本発明で用いる粘着剤組成物に、更に有機溶媒を配合して、中間層用樹脂組成物又は本発明で用いる粘着剤組成物の溶液の形態としてもよい。
用いる有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、トルエン、キシレン、n−プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。
なお、これらの有機溶媒は、中間層用樹脂組成物又は本発明で用いる粘着剤組成物中に含まれる各成分の製造時に使用された有機溶媒をそのまま用いてもよいし、それ以外の1種以上の有機溶媒を加えてもよい。
中間層用樹脂組成物又は本発明で用いる粘着剤組成物の溶液の固形分濃度としては、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜50質量%、更に好ましくは15〜45質量%である。
【0056】
中間層用樹脂組成物又は本発明で用いる粘着剤組成物の溶液は、基材又は剥離材上に、公知の塗布方法により塗布して塗布膜を形成することができる。
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
また、中間層用樹脂組成物又は本発明で用いる粘着剤組成物の溶液が有機溶媒を含む場合は、これを塗布した後、80〜150℃の温度で30秒〜5分間加熱して乾燥処理を行うことが好ましい。
【0057】
中間層用樹脂組成物を塗布して塗布膜形成後の硬化処理としては、形成した塗布膜に、紫外線等のエネルギー線を照射して、重合硬化させて製膜する方法が好ましい。また、硬化処理は、一度に完全に硬化させてもよいし、複数回に分けて硬化させてもよい。
エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線等が挙げられ、紫外線が好ましい。
また、エネルギー線の照射量は、エネルギー線の種類によって適宜変更される。例えば、紫外線を用いる場合、照射する紫外線の照度は、好ましくは50〜500mW/cm
2、より好ましくは100〜340mW/cm
2であり、紫外線の照射量は、好ましくは100〜2,500mJ/cm
2、より好ましくは150〜2,000mJ/cm
2である。
また、中間層2や粘着剤層1を押出し成型により形成してもよく、このような方法は、中間層2や粘着剤層1が、オレフィン系材料を主たる材料とする場合に適している。共押出し法により、中間層2と粘着剤層1が積層された状態の積層体を得てもよい。
【0058】
[半導体加工用粘着シートの使用方法]
本発明の半導体加工用粘着シートは、剥離フィルムを有する場合には、剥離フィルムを剥離した後、半導体加工用粘着シートの粘着剤層面を、半導体ウェハの表面、特にバンプ付きウェハの表面に貼付してその表面を保護するために使用されるものである。
具体的には、半導体加工用粘着シートが貼付されたバンプ付きウェハは、研磨加工されるが、半導体加工用粘着シートは、当該研磨工程においてバンプ付きウェハ表面を保護し、当該バンプが潰れることを防止し、研磨面におけるディンプルやクラックの発生を抑制することができる。また、半導体加工用粘着シートは研磨工程を含む加工が終わり、表面保護の必要がなくなった時点で、バンプ付きウェハから剥離される。
なお、半導体加工用粘着シートをバンプ付きウェハに貼付する際には、ラミネーター等を用いて貼付されるが、本発明の半導体加工用粘着シートを用いることで、貼付時の圧力及び温度下において、適度に半導体加工用粘着シートの中間層及び粘着剤層が変形し、バンプに追従することによって、良好なラミネート状態を得ることができる。
なお、半導体加工用粘着シートの貼付時の圧力は、特に制限されないが、好ましくは0.05〜1.0MPa、より好ましくは0.1〜0.5MPaである。また、半導体加工用粘着シートの貼付時の温度は、特に制限されないが、好ましくは30〜100℃、より好ましくは40〜80℃である。
【実施例】
【0059】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって制限されるものではない。
【0060】
本発明における測定方法及び評価方法は以下のとおりである。
[測定方法]
<中間層の貯蔵弾性率I>
以下の各実施例及び比較例で用いた中間層形成用のUV硬化型樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム系剥離フィルム(製品名「SP−PET381031」、厚さ38μm、リンテック社製)上にファウンテンダイ方式で塗布して塗膜を形成した。そして、塗膜側から紫外線を照射して半硬化層を形成した。
なお、紫外線照射は、紫外線照射装置として、ベルトコンベア式紫外線照射装置(製品名「ECS-4011GX」、アイグラフィクス社製)を用い、紫外線源として、高圧水銀ランプ(形式「H04−L41」、アイグラフィクス社製)を使用し、照射条件として光波長365nmの照度112mW/cm
2、光量177mJ/cm
2(アイグラフィクス社製の紫外線光量計「UVPF−A1」にて測定)の条件下にて行った。
形成した半硬化層の上に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム系剥離フィルム(製品名「SP−PET381031」、厚さ38μm、リンテック社製)をラミネートし、更に紫外線照射(上記の紫外線照射装置、紫外線源を用い、照射条件として、照度271mW/cm
2、光量1,200mJ/cm
2)を行い、完全に硬化させて、両面に剥離フィルムが貼付された厚さ200μmの中間層を形成した。
このように形成した中間層を5つ準備し、PET系剥離フィルムを剥離して剥離面同士を合わせて順次積層することで中間層積層体(厚さ1,000μm)を調製した。
次に、得られた中間層積層体を直径10mmの円形に打ち抜き、粘弾性を測定するための試料を得た。
粘弾性測定装置(製品名「ARES」、ティー・エイ・インスツルメント社製)により、上記の試料に周波数1Hzのひずみを与え、4℃/分の昇温速度で−50〜150℃の貯蔵弾性率(G’)を測定し、50℃における貯蔵弾性率の値を貯蔵弾性率Iとして得た。
【0061】
<粘着剤層の貯蔵弾性率A>
以下の各実施例及び比較例で用いた粘着剤組成物を用いて、ナイフコーターにより、両面にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム系剥離フィルム(製品名「SP−PET381031」、厚さ38μm、リンテック社製)が貼付された厚さ50μmの粘着剤層を形成した。
このように形成した粘着剤層を複数準備し、PET系剥離フィルムを剥離して剥離面同士を合わせて順次積層することで粘着剤層積層体(厚さ1,000μm)を調製した。
次に、得られた粘着剤層積層体を直径10mmの円形に打ち抜き、粘弾性を測定するための試料を得た。
粘弾性測定装置(製品名「ARES」、ティー・エイ・インスツルメント社製)により、上記の試料に周波数1Hzのひずみを与え、4℃/分の昇温速度で−50〜150℃の貯蔵弾性率を測定し、50℃における貯蔵弾性率の値を貯蔵弾性率Aとして得た。
【0062】
<粘着剤層の引張り破断応力及び引張り破断伸度>
以下の各実施例及び比較例で用いた粘着剤組成物を用いて、ナイフコーターにより、両面にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム系剥離フィルム(製品名「SP−PET381031」、厚さ38μm、リンテック社製)が両面に貼付された厚さ50μmの粘着剤層を形成した。このように形成した粘着剤層を複数枚準備し、一方のPETフィルム系剥離フィルムを剥離して、剥離した面同士を貼り合わせることを繰り返し、4枚を積層することで、粘着剤層の積層体を作製した。
なお、エネルギー線硬化型粘着剤の場合は、紫外線照射装置(製品名「RAD−2000m/12」、リンテック社製)を用いて、照射速度15mm/秒の条件で紫外線を照射した後、得られた試料を15mm×140mmの形状に切り出して、長辺の両端20mm部分に、フィルム引張り用のラベルを貼付し、15mm×100mmのダンベル型の測定試料を作成した。
このように作成した測定試料を、引張試験機(製品名「オートグラフ AG−IS 500kN」、島津製作所社製)を用いて、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張り速度200mm/分の条件で引張り、破断時の応力(引張り破断応力)、及び破断時の伸度(引張り破断伸度)を測定した。
【0063】
[評価方法]
<バンプ吸収性評価>
バンプ高さ80μm、ピッチ200μm、直径100μmのSn−3Ag−0.5Cu合金からなる球状バンプ付きウェハ(8インチウェハ、Waltz社製)に、以下の実施例及び比較例で作製した半導体加工用粘着シートを、ラミネーター(製品名「RAD−3510F/12」、リンテック社製)を用いて貼付した。なお、貼付する際、装置のラミネートテーブル及びラミネートロールの温度は50℃に設定した。
ラミネート後、デジタル光学顕微鏡(製品名「VHX−1000」、KEYENCE社製)を用いて基材側からバンプ周辺に生じた円形の空隙の直径を測定した。
空隙の直径が小さいほど、半導体加工用粘着シートのバンプ吸収性が高いことを示す。以下の基準より、バンプ吸収性の優劣を判定した。
A:空隙の直径が120μm未満である。
B:空隙の直径が120μm以上130μm未満である。
C:空隙の直径が130μm以上である。
【0064】
<表面保護シートの粘着剤の破断評価>
バンプ高さ80μm、ピッチ200μm、直径100μmのSn−3Ag−0.5Cu合金からなる球状バンプ付きウェハ(8インチウェハ、Waltz社製)に、以下の実施例及び比較例で作製した半導体加工用粘着シートを、ラミネーター(製品名「RAD−3510F/12」、リンテック社製)を用いて貼付した。なお、貼付する際、装置のラミネートテーブル及びラミネートロールの温度は50℃に設定した。
ラミネート後、エネルギー線硬化型粘着剤の場合は、UV照射装置(製品名「RAD−2000m/12」、リンテック社製)にて照射速度15mm/秒で、半導体加工用粘着シート側からUVを照射した。次いで、評価ウェハから、ウェハマウンター(製品名「RAD−2700F/12」、リンテック社製)を用いて、剥離速度4mm/秒、表1に記載の温度条件で半導体加工用粘着シートを剥離した。電子顕微鏡(製品名「VE−9800」、KEYENCE社製)を用いて、剥離後の半導体加工用粘着シートの粘着剤層面のバンプを埋め込んでいた部分を観察角度45°から観察して、粘着剤層の破断有無を確認した。
以下の基準より、その優劣を判定した。
A:破断箇所なし。
B:破断箇所あり。
【0065】
<表面保護シートのバンプ部への粘着剤残渣の発生有無>
バンプ高さ80μm、ピッチ200μm、直径100μmのSn−3Ag−0.5Cu合金からなる球状バンプ付きウェハ(8インチウェハ、Waltz社製)に、以下の実施例及び比較例で作製した半導体加工用粘着シートを、ラミネーター(製品名「RAD−3510F/12」、リンテック社製)を用いて貼付した。なお、貼付する際、装置のラミネートテーブル及びラミネートロールの温度は50℃に設定した。
ラミネート後、エネルギー線硬化型粘着剤の場合は、UV照射装置(製品名「RAD−2000m/12」、リンテック社製)にて照射速度15mm/秒で、半導体加工用粘着シート側からUVを照射した。次いで、評価ウェハから、ウェハマウンター(製品名「RAD−2700F/12」、リンテック社製)を用いて、剥離速度4mm/秒、表1に記載の温度条件で半導体加工用粘着シートを剥離した。
剥離後の球状バンプ付きウェハをチップに分割し、電子顕微鏡(製品名「VE−9800」、KEYENCE社製)を用いて、バンプ部分を観察角度45°から観察して、バンプ個数縦18個、横18個の1チップ当り合計324個における粘着剤残渣の個数をカウントした。
表1中、例えば「180/324」とは、合計324個のバンプ中、180個のバンプで粘着剤の残渣が確認されたことを表す。
【0066】
[製造例1]
<中間層付基材Aの作製>
単官能ウレタンアクリレートを40質量部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を45質量部及びヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)を15質量部、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(製品名「カレンズMT PE1」、第2級4官能のチオール含有化合物、昭和電工社製)を3.5質量部、架橋剤を1.8質量部、及び光重合開始剤として、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(製品名「ダロキュア1173」、BASF社製)を1.0質量部配合して調製した中間層用樹脂組成物であるUV硬化型樹脂組成物1を得た。
当該UV硬化型樹脂組成物1を、ポリエチレンテレフタレート(PET)系剥離フィルム(製品名「SP−PET381031」、厚さ38μm、リンテック社製)上にファウンテンダイ方式で、塗布して塗膜を得た。
そして、塗膜側から紫外線を照射して当該UV硬化型樹脂組成物1からなる半硬化層を形成した。
なお、紫外線照射は、紫外線照射装置として、ベルトコンベア式紫外線照射装置(製品名「ECS-4011GX」、アイグラフィクス社製)を用い、紫外線源として、高圧水銀ランプ(形式「H04−L41」、アイグラフィクス社製)を使用し、照射条件として光波長365nmの照度112mW/cm
2、光量177mJ/cm
2(アイグラフィクス社製の紫外線光量計「UVPF−A1」にて測定)の条件下にて行った。
形成した半硬化層の上に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製品名「コスモシャインA4100」、厚さ50μm、東洋紡社製)をラミネートし、PETフィルム側から、更に紫外線照射(上記の紫外線照射装置、紫外線源を用い、照射条件として、照度271mW/cm
2、光量1,200mJ/cm
2)を行い、完全に硬化させて、基材のPETフィルム上に厚さ200μmの中間層付基材Aを形成した。
【0067】
[製造例2]
<中間層付基材Bの作製>
単官能ウレタンアクリレートを40質量部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を45質量部及びヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)を15質量部、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(製品名「カレンズMT PE1」、第2級4官能のチオール含有化合物、昭和電工社製)を1.5質量部、及び光重合開始剤として、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(製品名「ダロキュア1173」、BASF社製)を1.0質量部配合し調製した中間層用樹脂組成物であるUV硬化型樹脂組成物2を得た。
当該UV硬化型樹脂組成物2を用いること以外は、製造例1と同様の方法を用いて、基材のPETフィルム上に厚さ200μmの中間層付基材Bを形成した。
【0068】
[実施例1]
<半導体加工用粘着シート1の作製>
液状ポリイソプレン材料(製品名「クラプレン UC−203」、「クラプレン」は登録商標、クラレ社製)50質量部にトルエン50質量部添加し、固形分50質量%の材料Aを調製した。
更に、液状ポリイソプレン材料(製品名「クラプレン LIR−410」、「クラプレン」は登録商標、クラレ社製)50質量部にトルエン50質量部を添加し、固形分50質量%の材料Bを調製した。
材料Aを100質量部と材料Bを50質量部配合し、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(製品名「Irgacure 651」、「Irgacure」は登録商標、BASF社製)を4.0質量部添加し、架橋剤としてエポキシ材料(製品名「TETRAD−C」、「TETRAD」は登録商標、三菱ガス化学社製、固形分100%)を0.75質量部添加し、30分間撹拌を行って、粘着剤組成物1を調製した。
次いで、調製した粘着剤組成物1の溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)系剥離フィルム(製品名「SP−PET381031」、厚さ38μm、リンテック社製)に塗布して乾燥させ厚さ10μmの粘着剤層を剥離フィルム上に形成した。
予め作製した中間層付基材A上の剥離フィルムを除去し、表出しした中間層付基材Aの中間層表面と、当該粘着剤層とを貼り合わせた後、幅方向における端部の不要部分を裁断除去して半導体加工用粘着シート1を作製した。
【0069】
[実施例2]
<半導体加工用粘着シート2の作製>
材料Aを100質量部、材料Bを100質量部、架橋剤としてエポキシ材料(製品名「TETRAD−C」、「TETRAD」は登録商標、三菱ガス化学社製)を1.25質量部添加した以外は、実施例1と同様の方法を用いて粘着剤組成物2を調製した。
当該粘着剤組成物2を用いること以外は、実施例1と同様の方法を用いて半導体加工用粘着シート2を作製した。
【0070】
[比較例1]
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)94質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)6質量部からなるアクリル系共重合体に対して、2−イソシアナートエチルメタクリレート(製品名「カレンズ MOI」(登録商標)、昭和電工社製)を2HEA100モル%に対して付加率が50モル%となるように付加した樹脂の溶液(粘着剤主剤、固形分35.0質量%)を調製した。得られた樹脂の重量平均分子量(Mw)は900,000、Mw/Mnは9.07であった。
この粘着剤主剤100質量部に対して、光重合開始剤として1−ヒドロキシルシクロヘキシルフェニルケトン(製品名「Irgacure184」、「Irgacure」は登録商標、BASF社製)を1.0質量部添加し、架橋剤として多価イソシアネート化合物(製品名「BHS−8515」、トーヨーケム社製、固形分37.5質量%)を0.75質量部添加し、30分間攪拌を行って粘着剤組成物3を調製した。
次いで、調製した粘着剤組成物1の溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)系剥離フィルム(製品名「SP−PET381031」、厚さ38μm、リンテック社製)に塗布して乾燥させ厚さ10μmの粘着剤層を剥離フィルム上に形成した。
予め作製した中間層付基材B上の剥離フィルムを除去し、表出しした中間層付基材Aの中間層表面と、当該粘着剤層とを貼り合わせた後、幅方向における端部の不要部分を裁断除去して半導体加工用粘着シート3を作製した。
【0071】
[比較例2]
<半導体加工用粘着シート4の作製>
液状ポリブタジエン材料(製品名「NISSO−PB GQ−2000」、固形分45質量%、「NISSO−PB」は登録商標、日本曹達社製)100質量部に対して、架橋剤として多官能ポリブタジエンイソシアナート(製品名「NISSO−PB TP−1001」、固形分50質量%、日本曹達社製)を8.0質量部添加し、30分間撹拌を行って、粘着剤組成物4を調製した。
当該粘着剤組成物4を用いること以外は、比較例1と同様の方法を用いて、半導体加工用粘着シート4を作製した。
【0072】
【表1】
【0073】
表1より、実施例1及び2で作製した半導体加工用粘着シート1及び2は、バンプの吸収性に優れ、半導体ウェハから剥離する際に粘着剤層が破断せず、かつバンプ部への粘着剤の残渣発生を防止し得ることが確認された。
一方、粘着剤組成物としてアクリル系粘着剤を用いて作製した比較例1の半導体加工用粘着シート3は、バンプの吸収性に優れるものの、半導体ウェハから剥離する際に粘着剤層が破断し、かつバンプ部への粘着剤の残渣が発生した。
また、粘着剤組成物としてエネルギー線硬化型ではないゴム系粘着剤を用いて作製した比較例2の半導体加工用粘着シート4は、半導体ウェハから剥離する際に粘着剤層が破断せず、かつバンプ部への粘着剤の残渣発生がないものの、周波数1Hzで測定した50℃における粘着剤層の貯蔵弾性率Aが200,000Paを超えていたため、バンプ吸収性が著しく劣る結果となった。