【実施例】
【0017】
  以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0018】
  [第1実施例]
  (構成)
  
図1は、第1実施例に係る音場補正システムの全体構成を示す。サーバ10と、車両7において使用される携帯端末20とはネットワーク5を通じて通信可能となっている。ネットワーク5の典型的な例はインターネットである。
【0019】
  サーバ10は、複数の携帯端末20から車種別に車内音場の測定データを受信する。そして、サーバ10は、車種ごとに車室用の音場補正データを生成して記憶し、車両7の携帯端末20にその車両の音場補正データを送信する。
【0020】
  車両7において、携帯端末20は、音響機器である車載器30に接続されている。携帯端末20は、車室の音場特性の測定データをサーバ10へ送信する。また、携帯端末20はサーバ10から音場補正データを受信し、車載器30に転送する。転送された音場補正データは車載器30に設定される。こうして、車載器30により音楽を再生する際には、設定された音場補正データに基づいた音場補正が行われる。
【0021】
  次に、サーバ10について詳しく説明する。
図2は、サーバ10の内部構成を示す。サーバ10は、通信部11と、制御部12と、記憶部13と、補正データDB(データベース)14とを備える。
【0022】
  通信部11は、ネットワーク5を介して携帯端末20と通信するためのユニットである。制御部12は、サーバ10の全体を制御する。制御部12はCPUなどのコンピュータにより構成され、予め用意されたプログラムを実行することにより各種の制御を行う。
【0023】
  記憶部13は、ROM、RAM、ハードディスクなどにより構成され、制御部12により実行される各種のプログラムを記憶している。また、記憶部13は、制御部12が各種の処理を行う際のワークメモリとしても機能する。
【0024】
  補正データDB14は、車両の車種ごとに音場補正データ(以下、単に「補正データ」と呼ぶ。)を記憶している。補正データは、車両7に搭載された音響機器に設定され、車内で音響機器が音楽を再生する際の車内の音場特性を補正するためのデータである。
【0025】
  図3は、補正データDB14の記憶内容の一例を示す。補正データDB14は、車種ごとに、その車両の車室において適切な音場補正を行うための補正データを記憶している。なお、好ましくは「車種」の情報には「車種名」に加えて「年式」も含まれる。
【0026】
  次に、車両7における構成について説明する。
図4は、車両7における携帯端末20及び車載器30の構成を示す。携帯端末20は車載器30に接続されており、車載器30は車両に搭載されたスピーカ35に接続されている。なお、携帯端末20と車載器30はケーブルなどにより有線接続されていてもよく、Bluetooth(登録商標)などにより無線接続されていてもよい。
【0027】
  携帯端末20は、通信部21と、制御部22と、記憶部23と、タッチパネル24と、マイク25と、出力部26とを備える。
【0028】
  通信部21は、ネットワーク5を介してサーバ10と通信するためのユニットである。制御部22は、携帯端末20の全体を制御する。制御部22は、CPUなどのコンピュータにより構成され、予め用意されたプログラムを実行することにより各種の制御、特に後述する補正データ提供処理を行う。
【0029】
  記憶部23は、ROM、RAM、ハードディスクなどにより構成され、制御部22により実行される各種のプログラムを記憶している。また、制御部22は各種の処理を行う際のワークメモリとしても機能する。さらに、記憶部23は、車内での音場測定に使用するテスト信号を記憶している。テスト信号Stは車内で音場測定を行う前にサーバ10からダウンロードされ、記憶部23に記憶されている。
【0030】
  タッチパネル24は表示機能と入力機能とを併せ持つ。ユーザに対して表示される情報・画像はタッチパネル24に表示され、ユーザがタッチパネルに指などでタッチすることにより行われる入力はタッチパネル24により取得される。
【0031】
  マイク25は携帯端末20に内蔵されているマイクである。また、出力部26は、車両7において音場測定を行う際に、テスト信号Stを車載器30に出力する。
【0032】
  上記の構成において、通信部21は本発明の送信手段、受信手段及び転送手段として機能し、制御部22、マイク25及び出力部26は本発明の測定手段として機能し、タッチパネル24は本発明の取得手段として機能する。また、出力部26は本発明の出力手段として機能し、マイク25は本発明の収音手段として機能する。
【0033】
  (音場測定の方法)
  次に、車両7の車内で行われる音場測定について説明する。音場測定においては、携帯端末20は予め用意されたテスト信号Stを車載器30に出力し、車載器30はスピーカ35によりテスト信号Stを再生して車室内にテスト音Sを出力する。なお、テスト信号Stは、音場特性として、インパルス応答、周波数特性、残響特性などを測定するために用意される信号である。
【0034】
  車室内に出力されたテスト音Sはマイク25により収音され、一時的に記憶部23に記憶される。制御部22は、収音されたデータを測定データとして通信部21を介してサーバ10へ送信する。なお、携帯端末20は、測定データをサーバ10へ送信する際、車両7の車種情報を付加する。即ち、測定データは、その測定を行った車両の車種情報とともにサーバ10にアップロードされる。
【0035】
  (補正データの生成方法)
  次に、サーバ10において補正データを生成する方法について説明する。上記のように、複数の携帯端末20が測定データをサーバ10にアップロードすることにより、サーバ10には多数の測定データが集められる。サーバ10は、複数の車両の携帯端末20からアップロードされた測定データを車種ごとに分類し、補正データを生成する。具体的には、サーバ10は、同一の車種について複数の携帯端末20からアップロードされた複数の測定データを同期加算することにより補正データを生成する。同期加算により、その車種に固有の音場特性が強調されるとともに、個々の車両における固有の特性や特性のバラツキは平滑化され、その車種の車室の音場特性を的確に表した補正データが得られる。
【0036】
  基本的に、同期加算の対象とする測定データの数(以下、「サンプル数」とも呼ぶ。)が多いほど、正確な補正データを作成することができる。一方で、各車両7において、測定を繰り返し行ったり、長時間の測定を行うのはユーザの負担が大きい。そこで、各車両7では携帯端末20は1回の測定により1つの測定データを取得してサーバ10へアップロードすることとし、サーバ10は複数の携帯端末20から多数の測定データを取得することにより、同期加算の対象とするサンプル数を増加させる。これにより、各車両7における測定の負荷が過大となることと防止しつつ、多数のサンプルを収集して車種ごとに的確な補正データを生成することが可能となる。
【0037】
  なお、実際の音場補正の例としては、例えばタイムアライメント補正、周波数特性の補正、残響特性の補正などが挙げられる。タイムアライメント補正とは、車両に搭載された複数のスピーカと、車室における聴取位置との距離差を補正し、複数のスピーカから出力された音が同時に聴取位置に到達するようにする補正である。周波数特性の補正とは、基本的に車室内における周波数特性がフラットになるように、帯域毎のゲインを調整する補正である。残響特性の補正とは、車室における残響時間を適切な時間となるように調整する補正である。
【0038】
  (補正データ提供処理)
  次に、補正データ提供処理について説明する。
図5は第1実施例による補正データ提供処理のフローチャートである。この処理は、主としてサーバ10の制御部12と携帯端末20の制御部22が予め用意されたプログラムを実行することにより行われる。
【0039】
  まず、携帯端末20において、ユーザがタッチパネル24を操作して車両7の車種情報を入力し、携帯端末20はこれを取得する(ステップS11)。次に、携帯端末20は、車室内で上述のように音場測定を行い、測定データを生成する(ステップS12)。そして、携帯端末20は、車種情報と測定データをサーバ10へ送信する(ステップS13)。
【0040】
  サーバ10は、車種情報に基づいて、補正データDB14に既に記憶されている同一車種の測定データ、即ち、それまでに他の車両7の携帯端末20から送信された測定データを抽出する。そして、ステップS13で受信した測定データと補正データDB14から抽出した測定データを利用して上述のように同期加算を行って補正データを生成し(ステップS14)、その補正データを携帯端末20へ送信する(ステップS15)。
【0041】
  携帯端末20は、補正データを受信すると、車両7内の車載器30へ転送する(ステップS16)。これにより、車載器30には、サーバ10から送信された補正データが設定される。よって、車載器30により再生される音楽は、補正データに基づいてその車種に適した音場補正がなされたものとなる。
【0042】
  以上のように、第1実施例によれば、サーバ10は、複数の車両7において測定された測定データを各携帯端末20から収集し、多数のサンプル数の測定データを使用して同期加算を行って補正データを生成する。よって、各車両における測定時間を短くすることができ、そのためユーザは音場測定中に車内にいることできる。こうして、各車両における測定の負担を軽減しつつ、車両の種類に適合した音場補正データを生成することができる。
【0043】
  (変形例)
  上記の例では、携帯端末20から車種情報をサーバ10へ送信し、サーバ10は車種ごとに補正データを生成して携帯端末20に提供している。これに加えて、車両で使用されている車載器の情報も携帯端末20からサーバ10へ送信し、サーバ10は車種ごと、かつ、車載器30の種類ごとに補正データを生成して携帯端末20へ提供してもよい。
【0044】
  [第2実施例]
  第2実施例は、音場補正のために複数の測定項目がある場合の処理に関するものである。いま、音場補正のための測定項目として測定項目A〜Cの3つがあるとする。例えば、測定項目Aはインパルス応答、測定項目Bは周波数特性、測定項目Cは残響特性としてもよい。この場合、サーバ10は、各測定項目について、車種ごとに複数の携帯端末20から測定データを受信して同期加算により補正データを生成するのであるが、前述のように測定データのサンプル数が不足していると、生成される補正データの精度を確保することが難しい。そこで、サーバ10は、測定項目ごとに、収集できた測定データのサンプル数を記憶部13に記憶しておき、サンプル数が不足している測定項目(以下、「サンプル不足項目」と呼ぶ。)を携帯端末20に通知してその測定項目についての測定データを要求する。
【0045】
  図6は、サーバ10の記憶部13に記憶される測定項目別のサンプル数の例である。車種ごとに、測定項目A〜Cについて既に得られている測定データのサンプル数が記憶されている。いま、作成される補正データの精度を確保するために50以上のサンプル数が必要であると仮定すると、
図6中のサンプル数が50未満である測定項目(数値に下線を伏して示す)はサンプル不足項目となる。よって、サーバ10は、サンプル不足項目を有する車種の車両について、サンプル不足項目を通知して測定データの送信を要求する。これにより、サーバ10は、サンプル不足項目について測定データの収集を促進し、携帯端末20に提供する補正データの精度を確保することが可能となる。
【0046】
  図7は、第2実施例における補正データ提供処理のフローチャートである。まず、携帯端末20において、ユーザがタッチパネル24を操作して車両7の車種情報を入力すると、携帯端末20はこれを取得し(ステップS21)、サーバ10へ送信する(ステップS22)。
【0047】
  サーバ10は、車種情報を受信すると、
図6に例示したような測定項目別のサンプル数を参照し、その車種についてのサンプル不足項目を特定する(ステップS23)。そして、サーバ10は、特定したサンプル不足項目を携帯端末20に通知する(ステップS24)。
【0048】
  携帯端末20は、サンプル不足項目の通知を受け取り、その測定項目について測定を行って測定データを生成し(ステップS25)、サーバ10へ送信する(ステップS26)。
【0049】
  サーバ10は、送信された測定データを使用して当該サンプル不足項目についての補正データを生成して補正データDB14に記憶する(ステップS27)。そして、サーバ10は、その車種に関する補正データ(本例では測定項目A〜Cについての補正データ)を補正データDB14から取得し、携帯端末20へ送信する(ステップS28)。これにより、サンプル不足項目については、ステップS26で携帯端末20から送信された測定データを利用して新たに作成された補正データが携帯端末20へ送信されることになる。
【0050】
  そして、携帯端末20は、補正データを受信すると、車両7内の車載器30へ転送する(ステップS29)。これにより、車載器30には、サーバ10から送信された補正データが設定される。よって、車載器30により再生される音楽は、補正データに基づいてその車種に適した音場補正がなされたものとなる。
【0051】
  なお、サーバ10は上記のように測定データが不足しているサンプル不足項目を携帯端末20に通知するだけでなく、このサンプル不足項目を測定するためのテスト音を携帯端末20に送信してもよい。テスト音はサンプル不足項目に応じて、インパルス応答、周波数特性、残響特性などを測定するために用意された信号とする。例えば、サンプル不足項目が測定項目Aである場合は、サーバ10は、テスト音としてインパルス応答を測定するための信号を送信する。同様に、サンプル不足項目が測定項目Bである場合は、サーバ10は、テスト音として周波数特性を測定するための信号を送信する。
【0052】
  以上のように、第2実施例によれば、サーバ10は、サンプル数が不足している測定項目を携帯端末20に通知して、その測定項目についての測定データの収集を促進する。このため、サーバ10は補正データの精度を確保するために必要なサンプル数の測定データを迅速に収集することができ、携帯端末20に提供される補正データの精度を迅速に確保することが可能となる。
【0053】
  [第3実施例]
  第3実施例は、車両7で音場測定に使用される携帯端末20の測定における適正度を考慮して補正データを作成するものである。車両7では多種の携帯端末20が使用され、内蔵するマイク25の性能も異なる。よって、性能の低いマイク25を備える携帯端末20で測定された測定データは、サーバ10側での補正データ作成に不適当なこともある。
【0054】
  そこで、第3実施例では、携帯端末20が測定データをサーバ10へアップロードする際、その携帯端末20の機種情報も送信する。サーバ10では、車種ごと、かつ、携帯端末20の機種毎に補正データを作成し、各車種について各携帯端末20の適正度を評価する。
【0055】
  図8は、携帯端末20の評価結果の一例を示す。携帯端末20と車種との組合せに対して車種別適正度が決定される。車種別適正度は、その携帯端末20と車種との相性を示すものと考えることもできる。そして、全ての車種についての車種別適正度を総合して、その携帯端末20に対する総合適正度が決定される。なお、これらの評価は、基本的には各携帯端末20を用いて生成された補正データの値の分布を生成し、偏差値を算出することにより行われる。即ち、得られた補正データの値が標準値に近い場合には適正度は高く、標準値から遠い場合には適正度は低いと判定される。例えば、音場補正としてタイムアライメントの補正を行う際、補正データは最も遠いスピーカからの遅延量で与えられる。よって、各携帯端末と車種との組合せについて補正データとして遅延量を算出し、その分布に基づいて適正度を決定する。
図8の例では、補正データの値が標準値に近いか否かに基づいて、適正度をA〜Cランクの3段階で決定している。なお、適正度Aランクが最も標準値に近く、適正度Cランクは最も標準値から遠いものとする。
【0056】
  サーバ10は、車種別適正度及び総合適正度を算出し、これを考慮して最終的に補正データDB14に記憶する補正データを作成する。一例では、総合適正度がCランクである携帯端末20から取得した測定データは、補正データの生成に使用しないこととする。他の例では、総合適正度に応じて重み付けをして測定データを使用する。例えば、総合適正度がAランクの携帯端末20から取得した測定データには重み値「2」を付与し、総合適正度がBランクの携帯端末20から取得した測定データには重み値「1」を付与し、総合適正度がCランクの携帯端末20から取得した測定データには重み値「0.5」を付与して補正データを生成する。このように、測定データをアップロードする携帯端末20毎に適正度を評価し、適正度を考慮して補正データを生成することにより、携帯端末20の性能差の影響を受けずに精度の高い補正データを生成することが可能となる。
【0057】
  なお、上記の例では、適正度をA〜Cの3ランクで設定し、それぞれに重み値を設定しているが、本発明の適用はこれには限られない。代わりに、例えば適正度を0〜1の数値で設定し(「0」は適正度が最低、「1」は適正度が最高)、その値を重み値として使用してもよい。
【0058】
  図9は第3実施例による補正データ提供処理のフローチャートである。まず、携帯端末20において、ユーザがタッチパネル24を操作して車両7の車種情報を入力し、携帯端末20はこれを取得する(ステップS31)。次に、携帯端末20は、携帯端末20の機種情報を取得する(ステップS32)。具体的には、携帯端末20の記憶部23にその携帯端末20の型番などの機種情報が記憶されている場合には、携帯端末20は単にその機種情報を読み出せばよい。一方、記憶部23などに機種情報が記憶されていない場合には、携帯端末20はユーザに機種情報の入力を要求し、ユーザがタッチパネル24を操作して入力した機種情報を取得する。
【0059】
  次に、携帯端末20は、車室内で上述のように音場測定を行い、測定データを生成する(ステップS33)。そして、携帯端末20は、車種情報と、機種情報と、測定データとをサーバ10へ送信する(ステップS34)。
【0060】
  サーバ10は、車種情報に基づいて、補正データDB14に既に記憶されている同一車種の測定データ、即ち、それまでに他の車両7の携帯端末20から送信された測定データを抽出する。そして、ステップS34で受信した測定データと補正データDB14から抽出した測定データを利用して上述のように同期加算を行って補正データを生成する(ステップS35)。この際、サーバ10は上述のように、受信した携帯端末20の機種情報に基づいてその携帯端末20の適正度を参照し、必要な重み付けなどを行って補正データを生成する。そして、サーバ10は、生成した補正データを携帯端末20へ送信する(ステップS36)。
【0061】
  携帯端末20は、補正データを受信すると、車両7内の車載器30へ転送する(ステップS37)。これにより、車載器30には、サーバ10から送信された補正データが設定される。よって、車載器30により再生される音楽は、補正データに基づいてその車種に適した音場補正がなされたものとなる。
【0062】
  以上のように、第3実施例によれば、サーバ10は、測定データを生成して送信する携帯端末20の性能差の影響を排除して精度の高い補正データを生成することができ、携帯端末20もそのような精度の高い補正データに基づいて車室内の音場補正を行うことができる。
【0063】
  [第4実施例]
  第4実施例は、車両7で音場測定を行った際の車室内における位置に応じて補正データを作成するものである。車両7で音場測定を行う際、測定位置(即ち、聴取位置)は携帯端末20を配置した位置となる。即ち、携帯端末20を運転席に配置して音場測定を行えば、得られたデータは運転席を聴取位置とする測定データとなり、携帯端末20を助手席に設置して音場測定を行えば、得られた測定データは助手席を聴取位置とする測定データとなる。よって、第4実施例では、携帯端末20は測定データをサーバ10へアップロードする際に、測定位置を示す位置情報を一緒に送信する。サーバ10は、複数の携帯端末20から収集した測定データを測定位置毎に分類し、測定位置毎に補正データを生成する。
【0064】
  図10は、車室の測定位置毎に補正データを生成した場合の補正データDB14に記憶される補正データの例を示す。この例では、測定位置として、運転席、助手席、後席(後部座席)の3つを使用している。なお、実際には、ユーザがこれらの座席に座って携帯端末20を頭部付近で保持した状態で測定を行うことになる。
【0065】
  このように、車室内の測定位置ごとに携帯端末20からサーバ10へ測定データをアップロードし、サーバ10が測定位置ごとに補正データを生成することにより、車室内における実際のユーザの聴取位置を考慮した高精度な音場補正が可能となる。
【0066】
  なお、
図10の例では、測定位置を運転席、助手席、後席の3つに分類しているが、本発明の適用はこれには限られない。例えば、後席をさらに後部左座席と後部右座席に分けてもよい。また、別の分類方法として、運転席、助手席、前席、後席、全席に分類してもよい。この場合、「前席」は測定位置(=聴取位置)が運転席と助手席の間にある場合を指し、「後席」は測定位置が後部左座席と後部右座席の間にある場合を指し、「全席」は測定位置が車室のほぼ中央(前席と後席の間、かつ、左右の座席の間)にある場合を指す。
【0067】
  図11は第4実施例による補正データ提供処理のフローチャートである。まず、携帯端末20において、ユーザがタッチパネル24を操作して車両7の車種情報を入力し、携帯端末20はこれを取得する(ステップS41)。次に、携帯端末20は、測定位置情報を取得する(ステップS42)。具体的には、携帯端末20はユーザに測定位置の入力を要求し、ユーザがタッチパネル24を操作して入力した測定位置を測定位置情報として取得する。
【0068】
  次に、携帯端末20は、車室内で上述のように音場測定を行い、測定データを生成する(ステップS43)。そして、携帯端末20は、車種情報と、測定位置情報と、測定データとをサーバ10へ送信する(ステップS44)。
【0069】
  サーバ10は、車種情報に基づいて、補正データDB14に既に記憶されている同一車種の測定データ、即ち、それまでに他の車両7の携帯端末20から送信された測定データを抽出する。そして、ステップS44で受信した測定データと補正データDB14から抽出した測定データを利用して上述のように同期加算を行って補正データを生成する(ステップS45)。この際、サーバ10は上述のように、ステップS44で取得した測定位置について、補正データを生成する。そして、サーバ10は、生成した補正データを携帯端末20へ送信する(ステップS46)。
【0070】
  携帯端末20は、補正データを受信すると、車両7内の車載器30へ転送する(ステップS47)。これにより、車載器30には、サーバ10から送信された補正データが設定される。よって、車載器30により再生される音楽は、補正データに基づいてその車種に適した音場補正がなされたものとなる。
【0071】
  以上のように、第4実施例によれば、サーバ10は、測定位置ごとに補正データを生成して提供することができるので、車室内の聴取位置に応じて最適な音場補正を行うことができる。
【0072】
  [第5実施例]
  第5実施例は、サーバ10で補正データを作成する際の測定データのサンプル数が不足している場合に、サーバ10はまずその不足した数で補正データを作成して携帯端末20に提供し、その後に必要なサンプル数が得られたときに再度補正データを作成してその携帯端末20へ送信するものである。
【0073】
  前述のように、測定データのサンプル数が十分な場合にはサーバ10で生成される補正データの精度が確保できるが、測定データのサンプル数が少ない場合には生成される補正データの精度を確保することは難しい。しかしながら、サーバ10が十分なサンプル数の測定データが得られるまで補正データを提供しないこととすると、ユーザ側としてはせっかく音場測定を行って測定データをサーバ10にアップロードしたのに補正データの提供を受けられないこととなり、測定データをアップロードしようという意欲が低下してしまう。
【0074】
  そこで、第5実施例では、サーバ10は、サンプル数が不足している状態であっても、まずは補正データを生成して携帯端末20へ提供する。但し、その時点で提供した補正データは精度が必ずしも十分とは言えないので、その後に十分なサンプル数が得られて精度の高い補正データが生成できた時点で、その精度の高い補正データを改めて携帯端末20へ提供する。こうすることにより、ユーザからの測定データの収集を促進し、サーバ10から早期に精度の高い補正データを提供できるようにする。
【0075】
  図12は、第5実施例において、サーバ10の補正データDB14に記憶されるデータの例である。車種に対応付けて、その時点で生成されている補正データが記憶されるとともに、その補正データを生成した際に使用した測定データのサンプル数が記憶される。いま、十分な精度の補正データを生成するために必要な測定データのサンプル数を「50」と仮定する。即ち、測定データのサンプル数が50以下である状態はサンプル数が不足している状態となる(
図12では、不足状態のサンプル数に下線を付している)。そこで、サンプル数が不足している状態で生成された補正データ(以下、「サンプル不足補正データ」と呼ぶ。)については、それを提供した携帯端末20の端末IDを対応付けて記憶しておく。
図12の例では、車種「A社AAA  2012〜現在」については、測定データのサンプル数が「15」であり、その補正データはサンプル数不足補正データであるので、サーバ10はそのサンプル数不足補正データを提供した際に提供先の端末IDを記憶しておく。そして、その後に測定データのサンプル数が「50」を超え、一定の精度が確保された補正データが生成できた際に、提供先端末IDとして記憶されている携帯端末20に改めて提供する。
【0076】
  図13は第5実施例による補正データ提供処理のフローチャートである。まず、携帯端末20において、ユーザがタッチパネル24を操作して車両7の車種情報を入力し、携帯端末20はこれを取得する(ステップS51)。
【0077】
  次に、携帯端末20は、車室内で上述のように音場測定を行い、測定データを生成する(ステップS52)。そして、携帯端末20は、車種情報と測定データとをサーバ10へ送信する(ステップS53)。
【0078】
  サーバ10は、車種情報に基づいて、補正データDB14に既に記憶されている同一車種の測定データ、即ち、それまでに他の車両7の携帯端末20から送信された測定データを抽出する。そして、ステップS53で受信した測定データと補正データDB14から抽出した測定データを利用して上述のように同期加算を行って補正データを生成する(ステップS54)。この際、サーバ10は、補正データの作成に使用した測定データのサンプル数を参照し、サンプル数が足りているか、即ち、生成した補正データがサンプル数不足補正データに該当するか否かを判定する(ステップS55)。
【0079】
  サンプル数不足補正データに該当する場合(ステップS55:Yes)、サーバ10は
図12に例示するように、補正データDB14にそのときの携帯端末20の端末IDを記憶する(ステップS56)。一方、サンプル数不足補正データに該当しない場合(ステップS55:No)、ステップS56の処理は行われない。そして、サーバ10は、生成した補正データを携帯端末20へ送信する(ステップS57)。
【0080】
  携帯端末20は、補正データを受信すると、車両7内の車載器30へ転送する(ステップS58)。これにより、車載器30には、サーバ10から送信された補正データが設定される。よって、サーバ10からサンプル数不足補正データが送信された場合には、その補正データが車載器30に設定されるので、車室内の音場補正の精度は必ずしも十分ではない状態となる。
【0081】
  しかし、その後にサーバ10において同一車種の測定データのサンプル数が増加して十分なサンプル数に達した場合、サーバ10は高精度の補正データを生成し、補正データDB14を参照して過去にサンプル数不足補正データを送信した携帯端末20へ高精度の補正データを送信する。よって、携帯端末20は、その高精度の補正データを受信し、車載器30に転送して設定することにより、高精度の音場補正が可能となる。
【0082】
  なお、サーバ10は、ステップS57でサンプル数不足補正データを携帯端末20へ送信する際には、その旨のメッセージなどを送信して携帯端末20のユーザに通知してもよい。例えば、「今回送信する補正データはサンプル数が不十分な状態で生成されたものです。後日サンプル数が十分な数になった際には、より高精度の補正データをお送りします。」などのメッセージを送信してもよい。これにより、ユーザは最初に送信された補正データによる音場補正が多少満足できないものであったとしても、高精度の補正データを待つことができる。