【解決手段】超音波センサを適用した生体検知装置1は、人物10からの反射波を処理してセンサからの距離に応じた反射強度を算出する強度算出部と、強度の時間変化を算出する強度変化算出部と、距離と反射強度とその時間変化を組にした反射場情報を装置本体200に送信する超音波センサ100を有する。装置本体200は、反射強度と反射場情報の変化から人物10反射強度の時間変化を参照して、人物10が通常の安静状態であるのか、呼吸が止まって危険な状態であるのかを判定する判定部を有し、危険な状態と判定されると、通報部は直ちに外部に通報する処理を行う。
前記超音波センサは、さらに、反射強度閾値以上である前記反射強度を参照し、当該反射強度の前記距離情報が略時不変な距離を、前記反射体の状態を判定するための基準面までの距離を表す設置距離に決定する反射体距離位置特定部を有し、
前記判定部は、さらに、前記反射体の不存在を判定した後に、前記設置距離以上離隔した位置にて前記反射体距離範囲が特定され、当該反射体距離範囲の強度変化量が活動閾値以上のとき、反射体の新規出現を判定する請求項2に記載の超音波センサ。
前記判定部は、さらに、前記人物の横臥を判定した後に、前記反射体距離範囲における前記強度変化量が安静判定時間にわたり前記活動閾値未満、かつ該活動閾値より小さな安静閾値以上であると、当該人物の安静状態を判定する請求項4に記載の超音波センサ。
前記判定部は、さらに、前記人物の安静状態を判定した後、体位変換時間にわたり当該人物の横臥状態を判定して再び当該人物の安静状態を判定すると、当該人物の寝返り動作を判定する請求項5に記載の超音波センサ。
前記判定部は、さらに、前記人物の横臥状態を判定した後に、停止判定時間にわたり前記反射体距離範囲における前記強度変化量が前記安静閾値未満であると、当該人物の異常を判定する請求項4または5に記載の超音波センサ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態として、本発明にかかる超音波センサを人物の状態を検知する装置、つまり生体検知装置に適用した場合について、図を参照しつつ説明する。
本実施の形態にかかる生体検知装置は、特に就寝動作や就寝中の人物の呼吸の状況などを把握するもので、呼吸停止などの異常状態を検知して外部に通報することを目的とする。
【0017】
図1は、本実施の形態にかかる生体検知装置が設置され、運用される様子を示す模式図である。
図1には、検知対象である人物10が、ベッド11の上に横たわり、布団12が掛けられて就寝している様子が示されている。
生体検知装置1は、超音波センサ100と装置本体200から構成され、両者は無線にて通信する機能を有している。また超音波センサ100は、ベッド11が置かれている床面から2.5[m]の高さに、図示しない取り付け器具にて設置、固定されているとする。
符号13の矢印は超音波の送信方向であり人物10がいる方向に送信される。また超音波センサ100は、人物10または布団12の表面にて反射した反射波を受信するが、実際には符号14の矢印に示す人物10までの最短距離の反射波のみならず、人物10または布団12の表面の各所、あるいは図示しない壁や家具にて反射した反射波が重畳される。なお、超音波は布団12を一部透過し、人物10の表面にて反射することが実験で確認されている。
【0018】
図2は、超音波センサ100の概略構成を示すブロック図である。
図2に示すように、超音波センサ100は、送受波制御部105、送波部110、受波部115、強度算出部120、強度情報バッファ125、強度変化算出部130、反射場情報生成部135、無線送信部140、電池145から構成される。
【0019】
送受波制御部105は、送波部110から出力される送信波のタイミングと受波部115での受信のタイミングを制御する。本実施の形態では200[ms]ごとに、すなわち1秒に5回、送信波を出力するよう制御信号を送波部110に出力する。そのために送受波制御部105は、予め作成しておいた周波数40[kHz]、長さ500[ns]を表す正弦波デジタルデータを出力用の制御信号として生成して、送波部110に出力する。また送波部110が有するD/A変換手段と受波部115が有するA/D変換手段を同期させるよう制御信号を送波部110と受波部115に出力する。
【0020】
送波部110は、周知の超音波送信手段であり内部にD/A変換手段、パワーアンプ、超音波送信素子を有し、人物10に向けて超音波を出力する。超音波送信素子の代わりに超音波周波数領域に出力感度がある圧電スピーカを用いてもよい。
送波部110は、送受波制御部105からの超音波の出力用の制御信号を受けると、周波数40[kHz]、長さ500[ns]の超音波パルスを出力する。出力する超音波パルスは周波数と長さが別の値のものを用いてもよい。これらの値は送波部110や受波部115によって適宜好適なものを採用する。超音波パルスのパルス幅は距離分解能の観点からは短い方が良いが、検波処理のしやすさからは長い方がよい。これらのバランスから決定される。
【0021】
受波部115は、内部に増幅器およびA/D変換手段を有し人物10などからの反射波を捉える周知の超音波受信手段である。反射波が受信されると増幅器により適切な電圧に昇圧され、A/D変換手段によりデジタル信号に変換されて強度算出部120に出力される。超音波受信素子の代わりに超音波周波数領域に入力感度があるマイクロホンを用いても良い。
【0022】
送波部110のD/A変換手段と受波部115のA/D変換手段が使用するサンプルリング周波数は、送波部110にて出力する超音波の周波数の2倍より大きい値を選ぶ必要がある。本実施の形態では周波数を40[kHz]の超音波を出力することを考慮し、また後述するダウンサンプリング処理との関係で102[kHz]とする。他の周波数でもよい。
【0023】
強度算出部120は、受波部115から出力された反射波のデジタル信号から、超音波センサ100からの超音波の送信方向の距離に応じた反射波のパワーを表す反射強度系列を、出力のタイミングと同じく1秒に5回求める。
強度算出部120は、まず受波部115から出力された反射波のデジタル信号に対して40[kHz]の正弦波を乗算して周波数シフト処理を行い、適宜後続の処理に好適なダウンサンプリング処理を行った後に、出力を2乗して反射強度系列とする。本実施の形態では102[kHz]から3.4[kHz]にダウンサンプリングすることで、測定間隔として5[cm]ごとの反射強度の情報を得ることにする。これらのサンプリング周波数やダウンサンプリングレートは、強度情報をどれくらいの間隔で必要かで適宜変更が可能である。
これら反射強度系列を求める処理は当該分野では公知であるので詳細は省略する。
【0024】
図3(a)に、反射強度系列を模式的に示す。反射強度系列30は、超音波センサ100からの超音波の送信方向の距離について、本実施の形態では測定間隔5[cm]ごとに反射強度の値が対応付いたものである。
符号31aは超音波センサ100からの距離が50[cm]の位置での反射強度、以下同様に符号31bは距離が100[cm]の位置での反射強度、符号31cは距離が150[cm]の位置での反射強度、符号31dは距離が200[cm]の位置での反射強度、符号31eは距離が250[cm]の位置での反射強度、符号31fは距離が300[cm]の位置での反射強度を表す。
【0025】
図3(b)は、同図(a)では折れ線グラフで表した反射強度系列30を、超音波センサ100からの距離に対する反射強度の値として、表形式で表現した強度情報32である。反射強度の値は、本実施の形態では説明の簡単のため、0〜1の範囲に正規化した値を表示している。符号31aなどの値は、同図(a)と同じくその距離の欄に記憶されている。
【0026】
なお、本実施の形態では、超音波センサ100は、ベッド100が置かれた床面から2.5[m]の距離に設置されているが、人体は大きさを持っているため反射位置は超音波センサ100直下のみとは限らない。また、後述するようにベッド100の周囲においても就寝しようとする人物の動きを判定し、ベッド100に人物10が横たわる(横臥する)ことを確認するために、超音波センサ100の測定範囲は2.5[m]以上必要である。本実施の形態では5[m]としている。
強度算出部120は、作成した強度情報を強度情報バッファ125および強度変化算出部130に出力する。
【0027】
強度情報バッファ125は、強度算出部120にて求められた強度情報を一時記憶するいわゆるバッファであり、半導体メモリにて実現される。光学記憶媒体でも良い。
一時記憶される強度情報は、一計測時刻前(200[ms]前)で取得されたものとする。一計測時刻以上過去の計測時刻、例えば10[s]前までの強度情報を逐次記憶してもよい。
記憶された強度情報は、強度変化算出部130にて、その変化を求めるために用いられる。
【0028】
強度変化算出部130は、最新の計測時刻にて得られた強度情報と、強度情報バッファ125に記憶されている強度情報とを、超音波センサ100からの距離ごとに比較して変化を求める。これを
図4を用いて説明する。
図4(a)には、強度情報バッファ125に記憶されている強度情報40が示されている。
図4(b)には、最新の計測時刻にて得られた強度情報42が示されている。なお、
図4の強度情報では、説明の都合上、距離が3[m]の範囲までのみを示している。
強度変化算出部130は、2つの強度情報40、42について、同じ距離における反射強度の値を比較して変化量を求め、反射場情報生成部135に出力する。
強度変化算出部130は、強度情報バッファ125に記憶されている一計測時刻前の強度情報と最新の強度情報を比較して変化量を求めるが、さらに過去の計測時刻の強度情報との変化量を求めたり、指定時間にわたる強度情報の分散値や、平均値からの差分の絶対値の最大値としても良い。
【0029】
反射場情報生成部135は、強度変化算出部130からの出力を受け、反射場情報を生成する。
反射場情報とは、
図4(c)に示すように、強度情報42に、強度変化算出部130が算出した強度変化のフィールド(符号45)を追加したものである。
つまり反射場情報44は、超音波センサ100からの超音波の送信方向の距離ごとに、その距離の位置における反射波の強度と、その時間変化である強度変化から成り、後述するように、装置本体200において当該反射場情報を参照することで
図1の模式図における人物10が超音波センサ100からどのくらいの距離に位置しているか、およびその人物10がどのような状態であるかの判定に用いられる。
反射場情報44は、
図1の模式図に示すように超音波センサ100と人物10の間にある超音波が伝播する空間、およびその周辺の空間がどのような伝達特性と反射特性を示しているのかを表すものであり、人物10の状態判定に有用な情報である。特に反射場情報には強度変化45をフィールドに持つので、距離の変化を捉えるよりも反射体の状態の変化を微細に捉えることが可能となっている。
反射場情報生成部135は、生成した反射場情報を無線送信部140に出力する。
【0030】
無線送信部140は、反射場情報生成部135が生成した反射場情報を、装置本体200に送信する公知の送信手段である。
電池145は、超音波センサ100を構成する各部が動作するための駆動電源である。これまで述べてきたように、超音波センサ100の構成はシンプルなものであり各部の処理負荷は低いので電池駆動が可能である。送波部110が遠距離まで届く超音波を出力することが求められるなどの事情がある場合には、適宜AC電源に置き換えてもよい。
【0031】
図5は、装置本体200の概略構成を示すブロック図である。
図5に示すように、装置本体200は、パラメータ記憶部205、無線受信部215、反射場情報記憶部220、反射体距離範囲特定部225、反射体距離位置特定部210、判定部230、通報部235、電源240から構成されている。
これら各構成要素は、公知のハードウェアにて、またはCPU上で動作するソフトウェアモジュールにて実現される。
【0032】
パラメータ記憶部205は、半導体メモリやハードディスク、光学式記録手段などで実現され、後述する各処理に必要な各種パラメータを記憶しておく。またソフトウェアモジュールで実現される構成要素のプログラムを記憶しても良い。
【0033】
無線受信部215は、超音波センサ100から無線送信されてきた反射場情報を受信する公知の受信手段である。無線受信部215は、受信した反射場情報を反射場情報記憶部220と反射体距離範囲特定部225と反射体距離位置特定部210に出力する。
【0034】
反射場情報記憶部220は、超音波センサ100から送られてきた反射場情報を、所定の数だけ記憶しておく手段であり、半導体メモリやハードディスクなどで実現される。記憶する反射場情報の数は、記憶容量や後述する各処理にて必要な枚数を考慮して決めればよい。本実施の形態では、超音波センサ100からの送信間隔を踏まえて、10[s]に対応するそれぞれ50個とする。50個を超えると、順次時刻の古いものから消去していくこととし、最新の50個が常に記憶されているものとする。
【0035】
反射体距離位置特定部210は、反射場情報49の反射強度48を参照して、所定の反射強度閾値以上で最大値を示す距離を特定し、さらにそれが時間的に概略変化しない場合に、当該距離の位置にベッド11の表面が存在するとして、ベッド11の表面を基準面とした設置距離に決定する。これは超音波センサ100はベッド11が置かれている床面から距離は既知であっても、ベッド11の表面までの距離はベッドの種類によって多少異なることを考慮したものである。本実施の形態では反射強度閾値を0.5とするが、例えば
図6の反射場情報49では、距離が190[cm]〜210[cm]にて最大値の“0.8”となっているが、この距離範囲が時間的に概略変化しない場合に、その範囲の中央値である195[cm]を設置距離とする。
【0036】
反射体距離範囲特定部225は、反射場情報49の強度変化45を参照して、反射体(人物10)の存在により反射強度が大きくなっている、超音波センサ100からの連続的な距離の範囲を特定する。これを
図6に示す反射場情報を用いて説明する。
図6には、
図4(c)と同様の反射場情報49が示されている。ただし、
図4(c)とは異なり、距離範囲フラグ46のフィールドが追加されている。
距離範囲フラグ46とは、
図6では強度変化45の値を参照して、その値が強度変化閾値以上である距離には“1”、強度変化閾値未満の距離には“0”が付与される。本実施の形態では強度変化閾値を0.5とする。そして
図6の反射場情報49では、“1”が付与された最小の距離は170cmであり、最大の距離は210cmであるので、170cmから210cmが反射体距離範囲47である。
【0037】
なお、強度変化45の全ての値の大きさが強度変化閾値未満の場合には強度範囲フラグ46には全て“0”が付与されるが、その場合は、反射体距離範囲は特定されないとする。
また反射体距離範囲が活動状態距離(本実施の形態では1[m]とする)以上の長さとして特定された場合には、後述するように反射体(人物10)はベッド11の上で単に横臥しているよりも大きな動きである活動状態であると判定される。
【0038】
判定部230は、パラメータ記憶部205に記憶されているパラメータを参照しつつ、反射場情報および反射体距離範囲を参照して人物10の状態を判定して、その結果を通報部235に出力する。
【0039】
判定部230は、反射体距離範囲特定部225が反射体距離範囲を特定できない場合は、超音波センサ100が検知可能な範囲には反射体が存在しないと判定する。
判定部230は、反射体距離範囲特定部225が反射体距離範囲47を特定すると、反射体距離特定部210が特定した超音波センサ100からベッド11の表面までの距離である設置距離その特定された反射体距離範囲、反射体距離範囲の長さ、反射体距離範囲47に含まれる強度変化45の値を参照して、人物10の状態を判定する。
【0040】
判定部230は、反射体距離範囲に含まれる強度変化45の絶対値の平均値(以下「当該平均値」)を求め、それが活動閾値以上であり、かつ反射体距離範囲の長さが活動状態距離以上の場合、人物10は超音波センサ100が設置された部屋にて活動状態と判定する。
活動状態とは、人物10がベッド11の上で横臥して通常の安静状態程度の反射強度よりも大きな反射強度を示しており、通常の安静状態や寝返りを打つのではなく、人物10が入室後にベッド11に近づいているような大きな動作にて活動していることを表すものである。本実施の形態では活動閾値は0.5、活動状態距離は1[m]として、通常の安静状態や寝返りを打つこととは区別するものとする。
なお、当該平均値の代わりに、強度変化45の絶対値の分散や、反射強度48の絶対値の平均値や分散値を併用してもよい。以下の判定部230の説明においては同様である。
【0041】
判定部230は、一旦反射体(人物)が存在しないと判定した後に、超音波センサ100とベッド11までの距離である設置距離以上にて反射体距離範囲特定部225が反射体距離範囲を特定し、当該平均値が活動閾値以上の場合には、人物10が新規に超音波センサ100の検知範囲に現れたと判定する。
本実施の形態では、設置距離が195[cm]と特定されているので、超音波センサ100からの距離が5[m]、あるいは3[m]という距離の近辺に着目すれば良い。
【0042】
判定部230は、一旦反射体(人物)が存在したと判定した後に、設置距離の位置を含み、活動状態距離よりも短い横臥距離以内の長さに反射体距離範囲が特定されて、人物10が基準面であるベッド11の上で横臥状態であると判定する。
図6に示す反射場情報49がその状態を表しており、本実施の形態の設置距離195[cm]の位置を含む170〜210[cm]の範囲に反射体距離範囲47が特定されており、その範囲の強度変化の平均値は、活動閾値の0.5より大きい0.59、反射体距離範囲47は40cmである。よって、判定部230は、ベッド11の上で人物10が横たわり、就寝しようと布団12をかける動作をしているなどの多少体を動かしていると判定する。横臥距離とは、人物10がベッド11の上で多少の動きをしている場合に、強度変化が検出される距離として、横臥した人の厚みや布団の厚み、および身長などを考慮して適宜決定される閾値であり、本実施の形態では50[cm]とする。
【0043】
判定部230は、一旦人物10の横臥状態を判定した後に、反射体距離範囲における強度変化45の値の平均値が所定の安静判定時間にわたって活動閾値未満であり、活動閾値よりも小さな安静閾値以上であると、人物10が通常の安静状態にあると判定する。
すなわち、人物10は横臥した後に大きな動作を止めるものの、呼吸に伴う胸郭の動き程度しか動きを示さないことを意味している。本実施の形態では安静判定時間を10[s]、安静閾値を0.1とする。別途タイマーを備えて参照しても良い。
なお、判定部230は、安静判定時間よりも短い体位変換時間(例えば3[s])にわたって横臥状態になったものの、すぐその後に再び安静状態を判定すると、寝返りを打ったと判定しても良い。
【0044】
判定部230は、一旦人物10の横臥を判定した後に、当該平均値が所定の停止判定時間にわたって安静閾値未満であると、人物10の異常判定をする。
すなわち、人物10は横臥した後に大きな動作を止めるものの、呼吸に伴う胸郭の動き程度の動きすら示さないことを意味しており、人物10の呼吸が止まった可能性があるとして直ちに外部へ通知する必要があるからである。本実施の形態では停止判定時間を1分とする。別途タイマーを備えて参照しても良い。
判定部230は、判定結果を通報部235に出力する。
【0045】
通報部235は、判定部230が出力した、人物10の状態を外部に通知する機能を有する。通報部235が通信I/Fにて実現され、通信回線と接続されている場合には、異常判定の際には警備会社などに即座に通報する。通報部235が、装置本体200に備えられている画面表示装置にて実現されている場合には、就寝中などを表す文字列が表示される。
【0046】
次に本実施の形態にかかる生体検知装置1の動作について説明する。
超音波センサ100の動作は、
図2のブロック図の説明において、構成要素を順を追って説明しているので省略する。
図7は、装置本体200の動作を示す状態遷移図である。一回の判定処理が行われる度に状態の変化の有無が決定される。
本実施の形態では、装置本体200が判定する人物10の状態SはS1からS6までの6種類とする。
状態S1は、不在状態であり、超音波センサ100が設置された部屋に、人物10が居ない状態である。
状態S2は、活動状態であり、部屋に人物10が居て、入室後、ベッド11に接近するなど、ベッド11以外の場所で活動中であることを示している。
状態S3は、在室静止状態であり、部屋に人物10が居て、立ち止まるなど、状態S2よりも動きが小さいことを示している。
状態S4は、横臥状態であり、人物10がベッド11に横たわっていたり、布団をかけようとするなどの大きな動きを示している。
状態S5は、横臥微動有状態であり、人物10がベッド11に横たわって安静にしており、睡眠中で呼吸による微動が見られることを示している。
状態S6は、横臥微動無状態であり、人物10がベッド11に横たわっているが、呼吸による微動が見られない異常状態であることを示している。
【0047】
以下、各状態からの遷移の条件について説明する。
装置本体200の電源が投入されて、各構成要素に電源が供給されると、動作を開始する。この時点では超音波センサ100が設置された部屋に人物10は存在しないとする(状態S1)。
装置本体200は、順次超音波センサ100から、反射場情報を受信して反射場情報記憶手段記憶部220に記憶するとともに、反射体距離範囲特定部225は、強度変化45が大きい範囲を特定し、反射体距離範囲が存在するか否かを判定する。
また、反射体距離特定部210は、反射強度48を参照して、その最大値が概略時間変化しない距離を設置距離とする。これは、過去の動作時から、ベッドが移動したなどの設置距離が変化することも考えられるので、無人状態になるたびに設置距離を求めるのが好適である。
【0048】
判定部230は、設置距離(本実施の形態では195[cm])以上離隔した位置にて反射体距離範囲が特定され、その範囲の強度変化45の値について、平均値が活動閾値以上の場合に人物10が部屋に新規に出現したとして、状態S2に移行する。さもなくば状態S1を維持する。当該平均値の代わりに最大値や分散を用いても良い。以下の説明でも同様である。
【0049】
判定部230は、反射体距離範囲が特定されたものの、その範囲の強度変化45の値について、平均値が安静閾値をすぐに下回ると状態S1の不在状態に移行する。
当該平均値が活動閾値未満であり安静閾値以上の場合には、人物10が在室して静止状態であるとして状態S3の静止状態に移行する。
反射体距離範囲が設置距離の位置を含み、その長さが横臥距離以内の場合には人物10がベッド11の上にて横臥しているとして状態S4の横臥状態に移行する。
これらの条件が満たされない場合状態S2を維持する。
【0050】
判定部230は、状態S3の静止状態になった後、当該平均値が活動閾値を超えると、静止状態を脱しているとして状態S2の活動状態に移行する。さもなくば状態S3を維持する。
【0051】
判定部230は、状態S4になった後、反射体距離範囲特定部225が反射体距離範囲を特定できない場合、つまり当該平均値が安静閾値未満であると、人物10の動きが極めて小さいとして状態S6に移行する。
判定部230は、状態S4になった後、反射体距離範囲特定部が反射体距離範囲を特定したが、設置距離の位置を含まない場合、またはそれが横臥距離を越える長さの場合にはベッドを離れたとして状態S2に移行する。
判定部230は、状態S4になった後、当該平均値が活動閾値以上の場合には、布団をかけようとしているなどの横臥しながらの動きをしているとして状態S4を維持する。
判定部230は、状態S4になった後、上記いずれの条件を満たさないと状態S5の横臥微動有状態へ移行する。
【0052】
判定部230は、状態S5の横臥微動有状態になった後、安静判定時間にわたり状態S5を維持すると人物10は睡眠中であると判定する。また、当該平均値が活動閾値以上となったら、ベッド11の上で布団を動かす等の大きな動きをしているとして状態S4の横臥状態に移行する。当該平均値が安静閾値未満となったらS6の横臥微動無状態に移行する。
【0053】
判定部230は、睡眠中である状態S5が所定時間継続した後に、状態S4となって体位変換時間にわたり維持して、再度S5に戻ると、人物10の寝返りを判定する。
【0054】
判定部230は、状態S6の横臥微動無状態に移行した後、当該平均値が活動閾値以上となった場合にはベッドの上で布団を動かす等の大きな動きをしているとして状態S4の横臥状態に移行する。当該平均値が安静閾値以上となったら通常の安静状態であるとして状態S5の横臥微動有状態に移行する。さもなくば状態S6を維持する。
判定部230は、状態S6の横臥微動無状態の維持が停止判定時間以上にわたって繰り返された場合には、人物10の呼吸が止まった可能性があるとして異常判定をする。
判定部230にて、人物10の異常が判定されると通報部235は外部にその旨を出力する。
【0055】
これまで説明してきた生体検知装置は、超音波センサと装置本体とを別の筐体に収めて、無線通信をする形態であったが、超音波センサに装置本体の構成要素である判定部などを収納した一体型の超音波センサとして、生体検知装置は実現できる。その場合のブロック図を
図8に示す。
図2および
図5と比較すると無線通信に関する構成要素が省略されるが、その他の構成要素は、名称と付与した符号が同じであれば、これまで述べてきた実施の形態と同じ構成要素として実現できる。
【0056】
これまでに説明してきた生体検知装置は、反射強度の変動が発生している距離範囲を特定し、それが長いのか短いのか、および、その範囲がベッド位置に対してどういう位置関係にあるのかを、時間的な経緯を考慮して活用することにより、人がベッド上に居るのか居ないのか、ベッド上に居る場合、安静にしているのか、寝返っているのか、呼吸が停止しているのかを精度良く判定できる。
そのため、人が居ない状態と、人がベッド上に居て、かつ、呼吸が停止している状態とを正確に判定することが出来るので、人が不在で呼吸停止の異常判定するといった誤った判定を避けることができる。
【0057】
またこれまでの実施の形態では、送波部110は、パルス状の超音波を出力したが、これに代え、送波部110は、送受波制御部105からの超音波の出力の制御信号を受けると、周波数スイープ信号やM系列のような雑音系列を生成して、出力してもよい。
周波数スイープ信号とは、
図9のグラフ500に示すように、振幅は一定ながらも周波数が時間的に変化する性質を有する信号であり、周波数はグラフ501のように低下していく。強度算出部120では、受信した反射波からインパルス信号を生成して強度を算出する。このような信号を用いることで、単純なパルス信号を出力するよりも受信パワーを確保でき、測距結果の分解能が向上することが知られている。周波数を40[kHz]から24[kHz]の幅で周波数を変化させることで、超音波センサからの距離について約1cmの測定間隔とできる。
周波数スイープ信号を出力し、受信した反射波からインパルス信号を生成して、反射強度系列を求める方法などについては当該分野においては適宜公知の方法を採用すればよいので、詳細は省略する。
【0058】
なお、これまで述べてきた実施の形態では、超音波センサを一般家庭内において設置する生体検知装置に適用した場合について説明してきたが、これに限られない。例えば、超音波センサを無人の銀行ATMブースに設置して、泥酔者を含む不審者を対象にするのも好適である。つまり、不審者が銀行ATMブースに入室してきて、そのまま床面(基準面)に横たわって寝入ることを検出できる。この場合、呼吸が止まったことのほかにも、体を横たえて安静状態となったと判定されるとその旨外部に通報する。人が入室後、活動状態を維持して、そのまま退出すると特に通報処理はしない。
【0059】
さらには、これまで述べてきた実施の形態では、超音波センサを高所に取り付けて略直下に向けるものとしていたが、これに限られない。例えば壁にもたれて酔いつぶれる不審者を検出する場合には、超音波センサを斜め下向き、あるいは横向きにしても全く同様の判定手法にてそのような不審者の検出ができる。
このように、本発明の範囲を超えない形態にて実現が可能となる。