(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-193083(P2016-193083A)
(43)【公開日】2016年11月17日
(54)【発明の名称】歯間清掃具用線材
(51)【国際特許分類】
A61C 15/04 20060101AFI20161021BHJP
【FI】
A61C15/04 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-74586(P2015-74586)
(22)【出願日】2015年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000219288
【氏名又は名称】東レ・モノフィラメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友和
(72)【発明者】
【氏名】山本 博之
(72)【発明者】
【氏名】西本 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 啓介
(72)【発明者】
【氏名】清水 崇
(57)【要約】 (修正有)
【課題】歯との接触による不快感の発生を防止できるとともに、歯間の清掃性を十分に確保でき、しかも耐久性に優れるとともに安価に製作可能で、金属アレルギーが発生することもない歯間清掃具用線材を提供する。
【解決手段】樹脂材料で構成した中実の芯材2と、芯材2を構成する樹脂材料とは異なる樹脂材料で構成した羽材3であって、芯材2に外装される鞘部3aと、鞘部3aから芯材2の長さ方向と直交する方向の外方側へ延びる少なくとも1枚の羽部3bを有する羽材3とを備え、芯材2と羽材3とが同時一体成形され、芯材2の長さ方向と直交する断面方向における、芯材2の最大幅αと、羽部3bの先端部から芯材2の中心Pまでの最大距離βとの比率α/2βを0.025〜0.75に設定した。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料で構成した中実の芯材と、
前記芯材を構成する樹脂材料とは異なる樹脂材料で構成した羽材であって、前記芯材に外装される鞘部と、前記鞘部から芯材の長さ方向と直交する方向の外方側へ延びる少なくとも1枚の羽部を有する羽材と、
を備え、前記芯材と羽材とが同時一体成形され、前記芯材の長さ方向と直交する断面方向における、前記芯材の最大幅αと、前記羽部の先端部から前記芯材の中心までの最大距離βとの比率α/2βを0.025〜0.75に設定した、
ことを特徴とする歯間清掃具用線材。
【請求項2】
前記芯材が塑性変形可能に構成されている請求項1記載の歯間清掃具用線材。
【請求項3】
前記芯材の最大幅αを0.2〜1.5mmに設定した請求項1又は2記載の歯間清掃具用線材。
【請求項4】
前記羽部の先端部から前記芯材の中心までの最大距離βを1.0〜5.0mmに設定した請求項1〜3のいずれか1項記載の歯間清掃具用線材。
【請求項5】
前記芯材の長さ方向と直交する断面方向における、前記羽部の最大長さγを0.75〜3.85mmに設定した請求項1〜4のいずれか1項記載の歯間清掃具用線材。
【請求項6】
前記羽部の厚さを0.05〜0.20mmに設定した請求項1〜5のいずれか1項記載の歯間清掃具用線材。
【請求項7】
前記芯材の長さ方向と直交する断面方向における、前記鞘部の最大幅δを0.3〜2.0mmに設定した請求項1〜6のいずれか1項記載の歯間清掃具用線材。
【請求項8】
単位長さ当たりにおける、前記芯材の重量W1と、前記羽材の重量W2との重量比率W1/W2を20/80〜60/40に設定した請求項1〜7のいずれか1項記載の歯間清掃具用線材。
【請求項9】
前記芯材の長さ方向と直交する断面の形状が、円形、2個以上の円若しくは偏平円が部分的に重なった形状、楕円形、多角形又は不定形である請求項1〜8のいずれか1項記載の歯間清掃具用線材。
【請求項10】
前記芯材を構成する樹脂材料が、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から選ばれた少なくとも1つの樹脂からなる請求項1〜9のいずれか1項記載の歯間清掃具用線材。
【請求項11】
前記羽材を構成する樹脂材料が、熱可塑性エラストマー、ポリエステル、ポリアミドから選ばれた少なくとも1つの樹脂からなる請求項1〜10のいずれか1項記載の歯間清掃具用線材。
【請求項12】
前記芯材を構成する樹脂材料が、重量平均粒径5μm以下の無機粒子を10〜60質量%含有する熱可塑性組成物である請求項1〜11のいずれか1項記載の歯間清掃具用線材。
【請求項13】
前記無機粒子が硫酸バリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムから選ばれた少なくとも1種である請求項12記載の歯間清掃具用線材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料からなる歯間清掃具用線材に関する。
【背景技術】
【0002】
歯間清掃具として、金属細線からなるワイヤー素線を二つ折りにしてその間にフィラメントを配置させ、このワイヤー素線を捩じってワイヤー素線に対してフィラメントを植毛し、その後フィラメントを所望長さにカットして円筒状や円錐台状に成形してなるブラシ本体とを備えた歯間ブラシが広く実施されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、合成樹脂からなる基材部と、エラストマーからなる軟質部とを備え、前記基材部は、ハンドル基材部と、前記ハンドル基材部の先端部に設けた細長い軸状の芯基材部とを有し、前記軟質部は、前記芯基材部を被覆する清掃用軟質部を少なくとも有し、前記ハンドル基材部で持ち手としてのハンドル部を構成し、前記芯基材部と清掃用軟質部とで歯間清掃用の清掃部を構成した歯間清掃具も提案され、実用化されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
一方、結束具として、硫酸バリウムおよび/または炭酸カルシウムからなる無機粒子を含有する熱可塑性樹脂組成物からなる賦形性モノフィラメントを芯材として用い、テープ状の2枚の樹脂フィルム間に該芯材を配置させて、両樹脂フィルムを張り合わせてなる結束具であって、外部応力を作用させて捩じると、該捩じった状態を保持し得る結束具が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−33869号公報
【特許文献2】特許第4236571号公報
【特許文献3】特開2014−88636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の歯間ブラシでは、ワイヤー素線を捩じってフィラメントを植設している関係上、製作工程数が多く、製作コストが高いこと、金属ワイヤーの先端部が歯に当たったり、ワイヤーの先端部の折り返し部分が歯間に引っ掛かったりして、不快な思いをすることがあること、金属アレルギーの人は使用できないこと、金属疲労によりワイヤーが折れること、などの問題がある。
【0007】
一方、特許文献2記載の歯間清掃具では、合成樹脂からなる芯材をエラストマーからなる軟質部で被覆しているので、前述のような歯との接触や引っ掛かりによる不快感を防止でき、金属アレルギーの人でも使用できる。しかし、合成樹脂からなる芯基材部は、金属製ワイヤーと比較して強度剛性が低いことから、大径に構成すると歯間への挿入性が低下し、また反対に歯間への挿入性を考慮して小径に構成すると、比較的容易に折れてしまうこと、芯基材部がワイヤーのように塑性変形しないので、ワイヤーを用いた歯間ブラシと比較して、歯間に対する挿入性が低下すること、清掃部がエラストマーで構成されているので、歯間ブラシと比較して歯間の清掃性が劣ること、などの問題がある。
【0008】
本発明の目的は、歯との接触による不快感の発生を防止できるとともに、歯間の清掃性を十分に確保でき、しかも耐久性に優れるとともに安価に製作可能で、金属アレルギーが発生することもない歯間清掃具用線材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る歯間清掃具用線材は、樹脂材料で構成した中実の芯材と、前記芯材を構成する樹脂材料とは異なる樹脂材料で構成した羽材であって、前記芯材に外装される鞘部と、前記鞘部から芯材の長さ方向と直交する方向の外方側へ延びる少なくとも1枚の羽部を有する羽材とを備え、前記芯材と羽材とが同時一体成形され、前記芯材の長さ方向と直交する断面方向における、前記芯材の最大幅αと、前記羽部の先端部から前記芯材の中心までの最大距離βとの比率α/2βを0.025〜0.75に設定したものである。
【0010】
この歯間清掃具用線材では、樹脂材料で構成した中実の芯材と、該芯材を構成する樹脂材料とは異なる樹脂材料で構成した羽材とで、歯間清掃具用線材を構成しているので、歯との接触による不快感の発生を防止できるとともに、樹脂材料を適正に選定することで耐久性を向上でき、しかも金属アレルギーの人でも使用できる歯間清掃具を実現できる。また、羽材に、芯材の長さ方向と直交する方向の外方側へ延びる羽部を形成し、この羽部により歯間を清掃できるので、歯間ブラシと同等の清掃性を確保することが可能となる。しかも、芯材の最大幅αと、羽部の先端部から芯材の中心までの最大距離βとの比率α/2βを0.025〜0.75に設定しているので、歯間清掃具用線材の歯間への挿入性を確保しつつ、歯間の清掃性を向上できる。更に、芯材と羽材とを同時一体成形して歯間清掃具用線材を製作しているので、この歯間清掃具用線材を歯間ブラシのブラシ部として活用すると、歯間ブラシと比較してブラシ部の製作コストを安くできる。
【0011】
ここで、前記芯材が塑性変形可能に構成されていることが好ましい実施の形態である。この場合には、歯間清掃具用線材を捩じると、その捩じった形状が芯材の塑性変形により維持される(以下、この物性を賦形性と称することがある)ので、例えば歯間清掃具用線材を、芯材を中心として捩じって、羽部を螺旋状に配置させ、この螺旋状の羽部を歯間清掃具の清掃部として用いることが可能となるので、羽部による掻き出し効果を高めて、歯間の清掃性を一層向上することができる。
【0012】
前記芯材の最大幅αを0.2〜1.5mmに設定することも好ましい実施の形態である。つまり、芯材の最大幅αが0.2mm未満の場合には、塑性変形時における歯間清掃具用線材の形状安定性を十分に確保することが困難になるとともに、歯間清掃具用線材の耐久性を十分に確保できず、1.5mmを超えると、歯間清掃具用線材の鞘部の外形が大きくなって、歯間への挿入性が低下するので、0.2〜1.5mmに設定することが好ましい。
【0013】
前記羽部の先端部から前記芯材の中心までの最大距離βを1.0〜5.0mmに設定することも好ましい実施の形態である。最大距離βは、歯間サイズに応じて適宜に設定できるが、本発明のように構成することで、歯間に対する歯間清掃具用線材の挿入性を十分に確保できるとともに、歯間の清掃性を十分に確保できる。
【0014】
前記芯材の長さ方向と直交する断面方向における、前記羽部の最大長さγを0.75〜3.85mmに設定することが好ましい実施の形態である。この場合には、歯間清掃具用線材の歯間への挿入性を十分に確保できる。
【0015】
前記羽部の厚さを0.05〜0.20mmに設定することが好ましい実施の形態である。羽部の厚さは、厚すぎると使用感が低下し、薄すぎると成形性が低下するとともに、歯間清掃時に羽部が破損することがあるので、0.05〜0.20mmに設定することが好ましい。
【0016】
前記芯材の長さ方向と直交する断面方向における、前記鞘部の最大幅δを0.3〜2.0mmに設定することが好ましい実施の形態である。このように構成すると、鞘部の剥離を防止しつつ、歯間清掃具用線材の歯間への挿入性を十分に確保できる。
【0017】
単位長さ当たりにおける、前記芯材の重量W1と、前記羽材の重量W2との重量比率W1/W2を20/80〜60/40に設定することが好ましい実施の形態である。
【0018】
前記芯材の長さ方向と直交する断面の形状が、円形、2個以上の円若しくは偏平円が部分的に重なった形状、楕円形、多角形又は不定形であることが好ましい。特に特に線対称又は点対称の断面形状が好ましい。
【0019】
前記芯材を構成する樹脂材料が、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から選ばれた少なくとも1つの樹脂からなることが好ましい実施の形態である。
【0020】
前記羽材を構成する樹脂材料が、熱可塑性エラストマー、ポリエステル、ポリアミドから選ばれた少なくとも1つの樹脂からなることが好ましい実施の形態である。
【0021】
前記芯材を構成する樹脂材料が、重量平均粒径5μm以下の無機粒子を10〜60質量%含有する熱可塑性組成物であることが好ましい実施の形態である。
【0022】
前記無機粒子が硫酸バリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい実施の形態である。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る歯間清掃具用線材によれば、樹脂材料で構成した中実の芯材と、該芯材を構成する樹脂材料とは異なる樹脂材料で構成した羽材とで、歯間清掃具用線材を構成しているので、歯との接触による不快感の発生を防止できるとともに、樹脂材料を適正に選定することで耐久性を向上でき、しかも金属アレルギーの人でも使用できる歯間清掃具を実現できる。また、羽材に、芯材の長さ方向と直交する方向の外方側へ延びる羽部を形成し、この羽部により歯間を清掃できるので、歯間ブラシと同等の清掃性を確保することが可能となる。しかも、芯材の最大幅αと、羽部の先端部から芯材の中心までの最大距離βとの比率α/2βを0.025〜0.75に設定しているので、歯間清掃具用線材の歯間への挿入性を確保しつつ、歯間の清掃性を向上できる。更に、芯材と羽材とを同時一体成形して歯間清掃具用線材を製作しているので、この歯間清掃具用線材を歯間ブラシのブラシ部として活用すると、歯間ブラシと比較してブラシ部の製作コストを安くできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図5】(a)〜(c)は芯材の構成を変更した他の構成の歯間清掃具用線材の横断面図
【
図6】(a)(b)は羽部の枚数を変更した他の構成の歯間清掃具用線材の横断面図
【
図7】(a)〜(c)は羽部の先端部の形状を変更した他の構成の歯間清掃具用線材の横断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の歯間清掃具用線材は、樹脂材料で構成した中実の芯材と、芯材を構成する樹脂材料とは異なる樹脂材料で構成した羽材とを備えている。
【0026】
本発明の芯材を構成する樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTという)、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂およびその共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体等のポリアミド樹脂およびその共重合体、ポリフッ化ビニリデン、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂(以下、PPSという)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリアセタール樹脂、等の熱可塑性樹脂を好適に採用できるが、強度や靭性、口腔内での使用安全性の面から、ポリエステル、ポリアミド、PPS、PEEKから選ばれた少なくとも1つの樹脂材料を採用することが好ましい。
【0027】
本発明の羽材を構成する樹脂材料としては、歯間清掃性を考慮して、スチレン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリアミド系等の熱可塑性エラストマーや、PET、PBT、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂およびその共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体等のポリアミド樹脂およびその共重合体から選ばれた少なくとも1つの樹脂材料を採用することが好ましい。
【0028】
本発明の芯材の樹脂材料には無機粒子を含有させることが好ましい。この無機粒子の材質としては、ガラスビーズ、タルク、シリカ、マイカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、シリカアルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫化モリブデン、酸化アンチモン、クレー、珪藻土、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化鉄、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイド、モンモリロナイト、ベントナイト、鉄粉、鉛粉、亜鉛粉、アルミニウム粉、カーボンブラック等が例示できる。これらの中でも、熱可塑性樹脂中への分散性や価格の面から、特に硫酸バリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムから選ばれた少なくとも1種を採用することが好ましい。
【0029】
前記無機粒子は、重量平均粒径が5μm以下、特に2μm以下であることが重要であり、重量平均粒径が上記範囲を超えると、芯材の強度が低下する要因となる。また、繰り返しの使用に対する耐久性も低下する。重量平均粒径の下限は特に制限はないが、0.05μm以上が好ましい。
【0030】
前記無機粒子の重量平均粒径は、例えば、光透過式遠心沈降法により測定することができる。粒子を水中で超音波により分散させ、ディスク遠心沈降式粒度分布測定装置(日機装(株)製、BI−XDC)により、粒子の粒度分布を重量基準で測定し、そのメディアン径(D50)を平均粒子径とする。
【0031】
このように、芯材を構成する樹脂材料に無機粒子を配合すると、芯材の弾性回復性を抑制し、芯材が塑性変形可能に構成されて、例えば歯間清掃具用線材を捩じると、その捩じった形状が芯材の塑性変形により維持されるという、優れた賦形性が得られる。無機粒子を含有することによる賦形性の向上の機構は明確ではないが、樹脂材料中に分散された無機粒子が、樹脂ポリマー鎖間の相互作用を部分的に阻害するため、芯材の変形時にミクロな空隙を作り出し、さらにこのミクロな空隙が歪んだり、裂けたりといった不可逆的な変形をするため、優れた賦形性を有するものと推定される。また、芯材としては、賦形性をより一層向上するため、延伸することが好ましい。
【0032】
芯材を構成する樹脂材料への無機粒子の含有割合は、10〜60質量%、望ましくは20〜50質量%であることが重要である。配合量が10質量%未満の場合には、十分な賦形性が得られず、60質量%を超えると芯材の強度が低下して、脆弱となり、曲げによって破断しやすくなる。また、樹脂材料内での無機粒子の凝集が起き易く、安定した生産が困難になるという問題がある。
【0033】
次に、歯間清掃具用線材の具体的な形状について図面を参照しながら説明する。
図1、
図2に示すように、歯間清掃具用線材1は、樹脂材料で構成した中実の芯材2と、芯材2を構成する樹脂材料とは異なる樹脂材料で構成した羽材3であって、芯材2に外装される鞘部3aと、鞘部3aから芯材2の長さ方向と直交する方向の外方側へ延びる少なくとも1枚の羽部3bを有する羽材3とを備え、芯材2と羽材3とが同時一体成形され、芯材2の長さ方向と直交する断面方向における、芯材2の最大幅αと、羽部3bの先端部から芯材2の中心Pまでの最大距離βとの比率α/2βを0.025〜0.75に設定したものである。
【0034】
芯材2は、それを構成する樹脂材料に対して、前述のように無機粒子を添加して、塑性変形可能に構成することが好ましい。このように構成することで、歯間清掃具用線材1を捩じると、その捩じった形状が芯材2の塑性変形により維持されるので、例えば
図3、
図4に示す歯間清掃具用線材11のように、芯材2を中心として歯間清掃具用線材1を捩じることによって、歯間清掃具用線材1の芯材2と羽材3と鞘部3aと羽部3bを捩じってなる、芯材12と羽材13と鞘部13aと羽部13bをそれぞれ形成し、螺旋状に形成される羽部13bを歯間清掃具の清掃部として用いることで、羽部13bにより掻き出し効果を高めて、歯間の清掃性を一層向上することができる。また、歯間への挿入方向を考慮して、歯間清掃具用線材1を折り曲げて、臼歯部間への挿入性を向上することもできる。ただし、無機粒子を添加しない場合でも、歯間清掃具用線材1を歯間に挿入した後、芯材2を中心に歯間清掃具用線材1を回転させることで、羽部3bにより歯間を効率的に清掃することができる。この場合には、羽部3bの枚数を増やして清掃性を高めるように構成することが好ましい。
【0035】
芯材2の長さ方向と直交する断面の形状(横断面形状)は、
図2に示す芯材2のように円形に形成することができる。ただし、芯材2の長さ方向と直交する断面の形状は、任意の形状に形成することが可能で、例えば2個以上の円若しくは偏平円が部分的に重なった形状、楕円形、多角形又は不定形に形成すると、歯間清掃具用線材1を捩じっても、芯材2と羽材3とが物理的、機械的に係合して、両者の相対回転を防止できるので、歯間清掃具用線材1を捩じった状態に形状維持する上で好ましい。具体的には、
図5(a)に示す歯間清掃具用線材1Aのように、芯材2Aの横断面形状を、2個の円が部分的に重なったマユ型形状に形成し、それに応じた形状に鞘部3Aaを形成したり、
図5(b)に示す歯間清掃具用線材1Bのように、芯材2Bの横断面形状を、3個の円が部分的に重なった三つ葉形状に形成したり、
図5(c)に示す歯間清掃具用線材1Cのように、芯材2Cの横断面形状を長方形状に形成し、それに応じた形状に鞘部3Caを形成したりすることができる。
【0036】
芯材2の最大幅αは、任意に設定可能であるが、0.2〜1.5mm、望ましくは0.4〜1.0mmに設定することが好ましい。つまり、芯材2の最大幅αが0.2mm未満の場合には、塑性変形時における歯間清掃具用線材1の形状安定性を十分に確保することが困難になるとともに、歯間清掃具用線材1の耐久性を十分に確保できず、1.5mmを超えると、歯間清掃具用線材1の鞘部3aの外形が大きくなって、歯間への挿入性が低下するので、0.2〜1.5mmに設定することが好ましい。
【0037】
羽部3bは、その厚さ方向の中心を含む面内に芯材2の中心線が配置されるように形成されている。ただし、羽部3bの厚さ方向の中心を含む面が芯材2の中心線からオフセットした位置に配置されるように、羽部3bを形成することもできる。
【0038】
羽部3bの厚さTは、任意に設定可能であるが、厚すぎると歯間清掃時の使用感が低下し、薄すぎると成形性が低下するとともに、歯間清掃時に羽部3bが破損し易くなるので、0.05〜0.30mm、望ましくは0.05〜0.20mmに設定することが好ましい。
【0039】
羽部3bの枚数は、
図1、
図2に示す歯間清掃具用線材1の羽材3では2枚に設定したが、1枚でもよいし、3枚以上に設定することも可能である。例えば、
図6(a)に示す歯間清掃具用線材1Dの羽材3Dのように1枚でもよいし、
図6(b)に示す歯間清掃具用線材1Eの羽材1Eのように4枚設けることもできる。羽部3bを複数枚設ける場合には、隣接する羽部3bのなす角度は同じに設定することもできるし、異なる角度に設定することもできる。
【0040】
芯材2の長さ方向と直交する断面方向における、羽部3bの最大長さγは、任意に設定可能であるが、0.75mm未満の場合には、歯間の清掃性を十分に確保できず、3.85mmを超えると、歯間清掃具用線材1の歯間への挿入性が低下するので、0.75〜3.85mm、望ましくは1.0〜3.5mmに設定することが好ましい。
【0041】
羽部3bの先端部から芯材2の中心Pまでの最大距離βは、1.0〜5.0mm、望ましくは1.3〜4.0mmに設定することが好ましい。最大距離βは、歯間サイズに応じて適宜に設定できるが、最大距離βを1.0〜5.0mmに設定すると、歯間に対する歯間清掃具用線材1の挿入性を十分に確保できるとともに、歯間の清掃性を十分に確保できる。
【0042】
羽部3bの先端部(外側縁)は、
図7(a)に示す歯間清掃具用線材1Fの羽材3Fの羽部3Fbのように、先細りの先細部4で構成することもできるし、
図7(b)に示す歯間清掃具用線材1Gの羽材3Gの羽部3Gbのように、先端側へ行くにしたがって厚肉になる厚肉部5で構成することもできるし、
図7(c)に示す歯間清掃具用線材1Hの羽材3Hの羽部3Hbのように、横断面円形の柱状部で構成することもできる。歯間清掃具用線材1Fのように先細部4を形成すると、歯間への挿入性を向上でき、歯間清掃具用線材1G、1Hのように厚肉部5や柱状部6を形成すると、掻き出し効果をたかめて、歯間の清掃性を向上できる。
【0043】
芯材2の長さ方向と直交する断面方向における、鞘部3aの最大幅δは0.3〜2.0mmに、望ましくは0.5〜1.4mmに設定することが好ましい実施の形態である。このように構成すると、鞘部3aの剥離を防止しつつ、歯間清掃具用線材1の歯間への挿入性を十分に確保できる。
【0044】
単位長さ当たりにおける、芯材2の重量W1と、羽材3の重量W2との重量比率W1/W2を20/80〜60/40に設定することが好ましい。つまり、重量比率W1/W2は、20/80未満の場合には、賦形性が低下し且つ線材の剛性が低くて歯間に挿入し難くなり、60/40を超えると、太くなり過ぎて歯間に挿入し難くなるとともに、捩じり難くなるので、20/80〜60/40、望ましくは25/75〜40/60に設定することが好ましい。
【0045】
線材を製作するには、公知の溶融紡糸法が適用できる。例えば、2台の押出機をダイス直前で結合し、芯材2を構成する樹脂材料と、羽材3を構成する樹脂材料とを同時に口金ダイスから押出し、加熱延伸、必要に応じて熱セットして得られる。紡糸条件、延伸条件は、使用する熱可塑性樹脂の一般的な条件をそのまま用いることができる。ただし、賦形性付与の観点から、延伸倍率は比較的低倍率であることが好ましく、例えば、芯材2に熱可塑性樹脂として、PETを用いる場合には、延伸倍率は2.0〜3.0倍であることが好ましい。延伸倍率が上記範囲を下回ると、芯材2の強度及び剛性が低下するばかりか、防止安定性が悪化し、コブ糸が発生し易くなり、延伸倍率が上記範囲を上回ると、芯材2の賦形性が損なわれるため、好ましくない。
【0046】
この歯間清掃具用線材1では、樹脂材料で構成した中実の芯材2と、該芯材2を構成する樹脂材料とは異なる樹脂材料で構成した羽材3とで、歯間清掃具用線材1を構成しているので、歯との接触による不快感の発生を防止できるとともに、樹脂材料を適正に選定することで耐久性を向上でき、しかも金属アレルギーの人でも使用できる歯間清掃具を実現できる。また、羽材3に、芯材2の長さ方向と直交する方向の外方側へ延びる羽部3bを形成し、この羽部3bにより歯間を清掃できるので、歯間ブラシと同等の清掃性を確保することが可能となる。しかも、芯材2の最大幅αと、羽部3bの先端部から芯材2の中心までの最大距離βとの比率α/2βを0.025〜0.75に設定しているので、歯間清掃具用線材1の歯間への挿入性を確保しつつ、歯間の清掃性を向上できる。更に、芯材2と羽材3とを同時一体成形して歯間清掃具用線材1を製作しているので、この歯間清掃具用線材1を歯間ブラシのブラシ部として活用すると、歯間ブラシと比較してブラシ部の製作コストを安くできる。
【0047】
次に、歯間清掃具用線材の評価試験について説明する。
単一素材からなる線材として、横断面の外形が
図2に示すような形状で、各部の寸法を表1に示すように設定した、No.1〜14の14種類の線材を製作した。
【0048】
表1における素材略号は、下記素材を意味する。
PET:ポリエチレンテレフタレート
PBT:ポリブチレンテレフタレート
TPE:熱可塑性エラストマー
Ny610:ナイロン610
BaSO
4:硫酸バリウム
「PBT/PET/BaSO
4」は、ポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートと硫酸バリウムの混合材料を意味する。
【0049】
各線材について、芯部を中心に1cm当たり7回捩じって、捩じった形状に維持される度合い、即ち線材が外力により塑性変形する度合いを測定した。なお、表1における塑性変形度合の評価は、捩じった後、手を離したときにおける捩じり戻りの回転回数で評価し、捩じり戻りの回転回数が、2〜3回転の場合は記号「○」で表し、3回転以上の場合には記号「×」で表した。また、1cm当たり1回捩じるとは、芯材を中心にしてブラシ部を360°の角度だけ捩じることを意味し、7回捩じるとはその7倍の角度だけ捩じることを意味する。
【0051】
表1から、線材を構成する樹脂材料に硫酸バリウムを添加すると、線材が外力により塑性変形して、捩じった後、手を放しても捩じった状態が維持されることが分かる。
【0052】
次に、2種類の樹脂材料を用いて芯材と羽材とを形成した歯間清掃具用線材の評価試験について説明する。
【0053】
芯材及び羽材の素材と、線材の各部の寸法を表2に示すように設定してなる、No.15〜No.30の線材を製作した。No.15〜No.23の線材の横断面形状は、
図5(a)に示すような形状に形成し、No.24の線材の横断面形状は、
図5(b)に示すような形状に形成し、No.25〜No.30の線材の横断面形状は、
図2に示すような形状に形成した。No.18の線材では、羽材の素材としてJIS K 6253で規定するデュロメータタイプD硬さが55Dのポリエステル系エラストマーを用い、No.18、No.25〜No.30の線材では、羽材の素材としてJISK6253で規定するデュロメータタイプD硬さが72Dのポリエステル系エラストマーを用いた。
【0054】
各線材について、芯部を中心に1cm当たり7回捩じって、捩じった形状に維持される度合い、即ち線材が外力により塑性変形する度合いを測定した。なお、表2における塑性変形度合の評価は、捩じった後、手を離したときにおける捩じり戻りの回転回数で評価し、捩じり戻りの回転回数が、2回転以下の場合には記号「◎」で表し、2〜3回転の場合は記号「○」で表した。
【0056】
表2から、芯材重量比率が高く、且つ芯材直径が小さいほど、捩じった状態が維持されることが分かる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲においてその構成を変更し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1 歯間清掃具用線材
2 芯材
3 羽材
3a 鞘部
3b 羽部
4 先細部
5 厚肉部
6 柱状部
1A 歯間清掃具用線材
2A 芯材
3Aa 鞘部
1B 歯間清掃具用線材
2B 芯材
1C 歯間清掃具用線材
2C 芯材
3Ca 鞘部
1D 歯間清掃具用線材
3D 羽材
1E 歯間清掃具用線材
3E 羽材
1F 歯間清掃具用線材
3F 羽材
3Fb 羽部
1G 歯間清掃具用線材
3G 羽材
3Gb 羽部
1H 歯間清掃具用線材
3H 羽材
3Hb 羽部
11 歯間清掃具用線材
12 芯材
13 羽材
13a 鞘部
13b 羽部