【課題】ブラシ部材と柄との結合強度を向上でき、剛毛に対する応力集中の発生を防止して、剛毛の折れ曲がりを防止でき、細隙部への挿入性を向上して清掃性を向上でき、ブラシ部の先端部の密度を高め得るブラシ具を提供する。
【解決手段】複数本の剛毛21を基台部22に一体成形してなるブラシ部材20を、柄10の先端部にインサート成形により一体的に設けたブラシ1であって、柄10の先端部にヘッド部11を設け、ヘッド部11に前後面を連通する連通孔を設け、基台部20に、ヘッド部11の前面側の基台前部22aと、ヘッド部11の後面側の基台後部22bと、連通孔を通って基台前部22aと基台後部22bとを連結する連結部22cとを設けた。
前記剛毛の側面視における第1側に、第2側の側方に中心を有する少なくとも2個以上の突面円弧部を形成し、前記剛毛の第2側にその全長にわたって基台前面と略直交する直交直線部を形成した請求項1記載のブラシ具。
前記突面円弧部として、前記第1側の先端部に先端側突面円弧部を形成するとともに、前記第1側の基端側部分に基端側突面円弧部を形成し、前記第1側の先端側部分に両突面円弧部に連なる直線状の突面側直線部を形成した請求項2記載のブラシ具。
前記剛毛を先細りに構成し、前記剛毛の全長Lに対する、前記剛毛の先端からの長さの割合が、15%位置における横断面積を基端部の横断面積の10〜20%に、また25%位置における横断面積を基端部の横断面積の20〜40%に、更に50%位置における横断面積を基端部の横断面積の60〜80%に設定した請求項1〜4のいずれか1項記載のブラシ具。
前記基台部に設ける複数本の剛毛における前記平坦面を、前記柄の長手方向の先端側にのみ又は基端側にのみ、或いは基台部における剛毛の行毎の先端側又は基端側に設けた請求項6記載のブラシ具。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシとして、植毛台に形成した複数個の植設孔に、複数本のフィラメントを束ねてなる毛束を、平線を用いて植設してなる平線歯ブラシ(例えば、特許文献1参照。)や、ハンドル部材を成形する金型に複数本のフィラメントを束ねてなる毛束をセットし、該毛束の成形空間側の端部を加熱融着させて焼玉を形成し、この状態で焼玉がインサート成形されるようにハンドル部材を射出成形して、ハンドル部材に毛束を植設してなる無平線歯ブラシ(例えば、特許文献2参照。)が広く実用化されている。
【0003】
一方、平線歯ブラシや無平線歯ブラシよりも安価に製作可能な歯ブラシとして、ハンドル部材(柄)を射出成形により製作し、このハンドル部材の植毛台に対して、複数本の剛毛と、該剛毛を支持する基台部とからなるブラシ部材をインサート成形して製作した歯ブラシが提案され、実用化されている。
【0004】
例えば、特許文献3、4には、植毛台と共に一体的に形成される剛毛を持つ植毛台と、第一端部と第二端部を持ち、第一端部が植毛台に接続している首部と、前端部と後端部を持ち、前端部が首部の第二端部に接続しているハンドル部とを備え、植毛台と首部とハンドル部とが同じプラスチック材料で作られている、一体成形歯ブラシが提案されている。
【0005】
また、特許文献5には、ベース板と、該ベース板に立設配置した複数本の剛毛とを有するブラシ部材を製作し、このブラシ部材をハンドル部材の射出成形用の金型にセットして、ハンドル部材の植毛台にブラシ部材をインサート成形してなる歯ブラシが記載されている。
【0006】
また、フィラメントの先端部をテーパー形状に構成した歯ブラシとして、フィラメントのテーパー先端部から1mm,3mm,5mm,8mmの各部位における刷毛径が基部の刷毛径に対し、25〜35%,55〜70%,80〜90%,90〜100%で、それぞれ特定されるテーパー形状のフィラメントを植毛して植毛部が形成されているものが提案されている(例えば、特許文献6参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3、4記載の歯ブラシでは、剛毛と、ハンドル部や首部を同じ合成樹脂材料で構成しているが、両者は要求特性が異なるので、例えばハンドル部の操作性を高めるため、剛性の高い素材を用いると、剛毛の毛腰が強くなり過ぎて、ブラッシング時に歯肉を傷つけ易くなったり、剛毛が根元から折れ曲がったりするなどの問題が発生する。また反対に、歯肉に対するソフト感が得られるように、軟質な素材を用いると、ハンドル部や首部の剛性が低下して、ブラッシング操作性が低下するという問題が発生する。
【0009】
一方、特許文献5記載の歯ブラシのように、ベース板に剛毛を一体成形したブラシ部材を製作し、これをハンドル部材の一端部にインサート成形する場合には、前述のような問題を解決できる。しかし、特許文献5記載の歯ブラシでは、ベース板が植毛台に対して機械的に結合していないので、ベース板とハンドル部材とを相溶性を有さない異種材料で構成すると、両者の接合強度を十分に確保できないという問題がある。また、特許文献5記載の歯ブラシでは、ブラシ部材を構成する剛毛は、平線歯ブラシや無平線歯ブラシのフィラメントと比較して太いので、歯間への挿入性がどうしても低下するが、特許文献5記載の歯ブラシでは、剛毛の先端部を先細りに構成しているものの、歯間の清掃性を十分に確保できるものではなく、また剛毛の側面視の両側を先端部のみを突面状の円弧部で構成し、その他の部分を剛毛植設面に直交する直線部で構成しているので、ブラッシング時等において剛毛の基端部に応力集中が発生し易く、剛毛が根元から折れ曲がり易いという問題がある。更に、特許文献5記載の歯ブラシでは、複数本の剛毛が平板状のベース板に対して略垂直に立設されていることから、剛毛の先端部がブラシ部の前端部の中央部側に配置されるように、剛毛を傾斜状に設けた歯ブラシと比較して、ブラシ部の先端部の剛毛の密度が低くなることから、歯頸部に対するブラシ部の接触面積が少なくなり、歯頸部の清掃性がその分低下するという問題がある。更にまた、ベース板の前面(剛毛側の面)がハンドル部材の前面と面一なので、ブラシ部材の成形後、剛毛間から金型を抜き取るときに、ベース板を取り囲むハンドル部材の前面外周部を保持できず、大変離型し難いものとなる。
【0010】
本発明の目的は、ブラシ部材と柄との結合強度を向上でき、剛毛に対する応力集中の発生を防止して、剛毛の折れ曲がりを防止でき、細隙部への挿入性を向上して清掃性を向上でき、ブラシ部の先端部の密度を高め得るブラシ具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るブラシ具は、複数本の剛毛を基台部に一体成形してなるブラシ部材を、柄の先端部にインサート成形により一体的に設けたブラシ具であって、前記柄の先端部にヘッド部を設け、前記ヘッド部に前後面を連通する連通孔を設け、前記基台部に、前記ヘッド部の前面側の基台前部と、前記ヘッド部の後面側の基台後部と、前記連通孔を通って基台前部と基台後部とを連結する連結部とを設けたものである。
【0012】
このブラシ具では、例えば柄を成形した後、該柄を、ブラシ部材を成形する金型にセットして、該柄のヘッド部に複数本の剛毛と基台部とを有するブラシ部材をインサート成形してブラシ具を製作できるので、手動歯ブラシや電動歯ブラシの替えブラシを製作する場合において、平線歯ブラシや無平線歯ブラシと比較して歯ブラシの製作コストを安くできる。また、柄のヘッド部には、ヘッド部の前後面を連通する連通孔が形成され、インサート成形により成形されたブラシ部材の基台部には、ヘッド部の前面側の基台前部と、ヘッド部の後面側の基台後部と、連通孔を通って基台前部と基台後部とを連結する連結部とが形成されるので、柄に対するブラシ部材の結合強度を容易に向上できる。また、機械的な結合により、柄に対してブラシ部材が結合されるので、柄及びブラシ部材を構成する素材として、相溶性を有するものを採用することもできるし、相溶性を有さないものを採用することもできる。相溶性を有さないものを採用する場合には、柄及びブラシ部材を構成する素材の選択自由度が大きくなり、柄及びブラシ部材のそれぞれの要求特性に応じた最適な素材で両者を構成することができるので好ましい。
【0013】
ここで、前記剛毛の側面視における第1側に、第2側の側方に中心を有する少なくとも2個以上の突面円弧部を形成し、前記剛毛の第2側にその全長にわたって基台前面と略直交する直交直線部を形成することが好ましい。このように剛毛の第1側に2個以上の突面円弧部を形成すると、少なくとも突面円弧部においては、ブラッシング時における応力集中を防止できるので、剛毛の折れ曲がりを防止できる。また、剛毛の第2側にその全長にわたって基台前面と略直交する直交直線部を形成しているので、ブラシ部を成形する金型構造を簡単にできる。
【0014】
特に、前記突面円弧部として、前記第1側の先端部に先端側突面円弧部を形成するとともに、前記第1側の基端側部分に基端側突面円弧部を形成し、前記第1側の先端側部分に両突面円弧部に連なる直線状の突面側直線部を形成することが好ましい。この場合には、ブラッシング時における応力集中を剛毛の略全長にわたって防止して、剛毛の折れ曲がりを防止できるので好ましい。
【0015】
前記剛毛の側面視における第1側の基端部に、前記基台前面に連なる凹面円弧部を形成することも好ましい実施の形態である。この場合には、剛毛の基端部における応力集中を防止して、ブラッシング時などにおいて、剛毛が根元から折れ曲がることを防止できる。
【0016】
前記剛毛を先細りに構成し、前記剛毛の全長Lに対する、前記剛毛の先端からの長さの割合が、15%位置における横断面積を基端部の横断面積の10〜20%に、また25%位置における横断面積を基端部の横断面積の20〜40%に、更に50%位置における横断面積を基端部の横断面積の60〜80%に設定することが好ましい実施の形態である。このように構成することで、細隙部に対する剛毛の毛先の挿入性を向上して、例えば歯ブラシにおいては、歯間部や歯頚部の清掃性を向上できる。
【0017】
前記剛毛の第2側に柄の長手方向と略直交する平坦面を形成することが好ましい。この場合には、剛毛を成形する一方の金型の成形面を平坦面で構成でき、剛毛から金型を離型するときにおける離型性を大幅に向上できる。また、本発明を歯ブラシに適用すると、平坦面の両側が角部となるので、歯表面に付着した歯垢等を該角部で掻き落とすことができ、清掃性を向上できる。
【0018】
前記のように剛毛に平坦面を形成する場合には、前記基台部に設ける複数本の剛毛における前記平坦面を、前記柄の長手方向の先端側にのみ又は基端側にのみ、或いは基台部における剛毛の行毎の先端側又は基端側に設けることができる。
【0019】
前記剛毛の先端部を半径0.1mm以上の部分球面状に形成することが好ましい実施の形態である。このように構成することで、体に対する刺激を抑制して、ブラッシング時における使用感を向上できる。例えば、本発明を歯ブラシに適用すると、歯肉に対する刺激を抑制して、ブラッシング時における使用感を向上できる。
【0020】
前記基台前部をヘッド部から0.5mm以上1.0mm以下の範囲で前方へ突出させることが好ましい実施の形態である。このように構成すると、剛毛を成形する金型とヘッド部の外周部間に、基台前部の突出部分の外周部を成形する外周成形部が配置されるので、剛毛を成形する金型を離型するときに、前記外周成形部でヘッド部を保持しながらブラシ部分を先に離型することが可能となるので、ブラシ具の離型性を向上できる。
【0021】
前記複数本の剛毛からなるブラシ部の先端幅を基端幅の75%以上95%以下に設定することが好ましい実施の形態である。この場合には、ブラシ部の先端部の密度を高く設定して細隙部の清掃性を向上できる。例えば、本発明を歯ブラシに適用すると、歯間部や歯頚部などの細隙部の清掃性を向上できる。
【0022】
前記ブラシ部材をエラストマで構成することができる。この場合には、体に対する刺激を抑制して、ブラッシング時における使用感を向上できる。例えば、本発明を歯ブラシに適用すると、歯肉に対する刺激を少なくでき、使用感を向上できる。
【0023】
なお、前述した構成は、複数本の剛毛を基台部に一体成形してなるブラシ部材を、柄の先端部にインサート成形により一体的に設けたブラシ具に対して、独立に或いは任意に組み合わせて設けることができる。また、次のような構成を、独立に或いは前述した構成に任意に組み合わせて備えさせることも可能である。
【0024】
前記ヘッド部の前後面の少なくとも一方に固定用凹部を形成し、前記固定用凹部を設けた側の基台前部又は基台後部を固定凹部内に配置することが好ましい実施の形態である。このように構成すると、歯ブラシにおいては、ヘッド部及び基台部からなる植毛台の厚さを極力薄くして、ブラッシングし難い奥歯の清掃性を向上できる。
【0025】
前記柄に、手で把持するためのグリップ部と、前記グリップ部とヘッド部とを連結する首部を設けるとともに、前記ヘッド部の後面側に固定用凹部を形成し、前記基台後部を固定用凹部内に配置し、前記首部の後面側の先端部に長さ方向に延びて、先端部が固定用凹部に連通する変形促進用凹部を形成し、前記基台後部に変形促進用凹部内へ延びる弾性変形促進部を設けることが好ましい実施の形態である。ブラシ部材の素材は、柄の素材と比較して、軟質で柔軟性に富む素材が採用されるので、首部の後面側の先端部に基台後部に連なる弾性変形促進部を設けることで、ヘッド部と首部間における柄の弾性変形を促進して、ブラッシング操作性を向上できるとともに、ブラッシング圧のコントロールが容易になる。
【0026】
前記ブラシ部材を成形するための金型のゲートを基台後部に対応させて設けることが好ましい。また、前述のように基台後部に連なる弾性変形促進部を設ける場合には、この弾性変形促進部に対応する位置に、ブラシ部材を成形するための金型のゲートを設けることが好ましい。
【0027】
前記ヘッド部の外周部を構成する枠部を設け、前記ヘッド部の幅方向の中央部に長さ方向に延びて、両端部が枠部に連結された縦桟を設け、前記ヘッド部の長さ方向の途中部に幅方向に延びて、両端部が枠部に連結された1乃至複数の横桟を設け、前記枠部内に縦桟と横桟とを格子状に設けて、前記連通孔をヘッド部に複数個設けることもできる。このように構成することで、ヘッド部の強度剛性を十分に確保しつつ、ブラシ部材の基台部の成形性を向上できる。
【0028】
前記剛毛の横断面を、三角形、台形、半円形、半長円形のいずれかに形成することができる。剛毛の横断面は、任意の形状に形成することができるが、成形性を考慮して、三角形、台形、半円形、半長円形のいずれかに形成することが好ましい。また、剛毛として、横断面形状の異なる剛毛や、同一高さ位置における横断面の寸法の異なる剛毛や、毛丈の異なる剛毛を混在させることも可能である。剛毛の毛丈は、7.5mm以上12mm以下が好ましく、8.5mm以上11mm以下がより好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るブラシ具によれば、例えば柄を成形した後、該柄を、ブラシ部材を成形する金型にセットして、該柄のヘッド部に複数本の剛毛と基台部とを有するブラシ部材をインサート成形してブラシ具を製作できるので、手動歯ブラシや電動歯ブラシの替えブラシを製作する場合において、平線歯ブラシや無平線歯ブラシと比較して歯ブラシの製作コストを安くできる。また、柄のヘッド部には、ヘッド部の前後面を連通する連通孔が形成され、インサート成形により成形されたブラシ部材の基台部には、ヘッド部の前面側の基台前部と、ヘッド部の後面側の基台後部と、連通孔を通って基台前部と基台後部とを連結する連結部とが形成されるので、柄に対するブラシ部材の結合強度を容易に向上できる。また、機械的な結合により、柄に対してブラシ部材が結合されるので、柄及びブラシ部材を構成する素材として、相溶性を有するものを採用することもできるし、相溶性を有さないものを採用することもできる。相溶性を有さないものを採用する場合には、柄及びブラシ部材を構成する素材の選択自由度が大きくなり、柄及びブラシ部材のそれぞれの要求特性に応じた最適な素材で両者を構成することができるので好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施の形態は、手動歯ブラシに本発明のブラシ具を適用した場合のものである。
【0032】
図1〜
図7に示すように、歯ブラシ1は、持ち手としての棒状の柄10と、柄10の先端部のヘッド部11に設けた、複数本の剛毛21を基台部22に一体成形してなるブラシ部材20とを備え、ヘッド部11とブラシ部材20とでブラシ部2を形成したものである。
【0033】
柄10に対するブラシ部材20の取付けは、射出成形により予め成形した柄10を、ブラシ部材20を成形するための金型にセットした状態で、柄10のヘッド部11にブラシ部材20をインサート成形することで取り付けられている。ただし、予めブラシ部材20を製作し、柄10を成形する金型に該ブラシ部材20をセットして、ブラシ部材20に柄10をインサート成形することも可能である。また、柄10とブラシ部材20とを別個に製作し、柄10のヘッド部11に対して凹凸嵌合や無理嵌めなどにより、柄10の先端部にブラシ部材20を取り付けることも可能である。
【0034】
柄10は、手で把持するためのグリップ部12と、グリップ部12から先端部側へ延びるグリップ部12よりも小さな横断面の首部13と、首部13の先端部に設けたヘッド部11とを備え、合成樹脂材料を用いて射出成形などにより一体成形されている。なお、柄10のうちのヘッド部11以外は任意に構成することが可能で、例えばグリップ部12にエラストマからなる滑り止め部を成形により設けたり、インクジェットやパッド印刷により意匠性を高めたりしたものを用いることもできる。
【0035】
柄10を構成する合成樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチルテレフタレート、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、スチレン・アクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、セルロースプロピオネート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリアリレート等の硬質の合成樹脂材料を用いることが可能である。
【0036】
ヘッド部11は、外周部を構成する長さ方向に細長い環状の枠部11aと、ヘッド部11の幅方向の中央部に長さ方向に延びて、両端部が枠部11aに連結された1本の縦桟11bと、縦桟11bの長さ方向の途中部からヘッド部11の幅方向に延びて枠部11aに連結された4本の横桟11cとを備えている。ヘッド部11の前面側には前部固定用凹部11dが形成され、ヘッド部11の後面側には後部固定用凹部11eが形成され、枠部11a内には前後の固定用凹部11d、11eを連通する6つの連通孔11fが縦桟11b及び横桟11cにより形成されている。なお、枠部11aの外縁形状は、周知の歯ブラシ1の植毛台の形状などに応じて任意に設定可能である。また、縦桟11b及び横桟11cの本数、幅、厚さ、ヘッド部11の厚さ方向に対する形成位置は、それぞれ任意に設定可能である。更に、固定用凹部11d、11eは、ヘッド部11の前後面に設けることが好ましいが、片面にのみ設けることもできる。
【0037】
首部13の先端部にはヘッド部11に滑らかに連なるように、先端側へ行くにしたがって幅広に構成した連設部13aが形成され、連設部13aの後面側には首部13の長さ方向に延びて、先端部が後部固定用凹部11eに連通された変形促進用凹部13bが形成されている。なお、変形促進用凹部13bの幅や長さや深さは、ブラッシング時における荷重で首部13が破損しない範囲で任意に設定可能である。ただし、変形促進用凹部13bは
図8に示すように省略することも可能である。
【0038】
ブラシ部材20は、予め製作した柄10のヘッド部11をブラシ部材20の成形用の金型にセットして、インサート成形により柄10に一体成形されており、複数本の剛毛21からなるブラシ部2と、該ブラシ部2を構成する複数の剛毛21の基端部をヘッド部11に固定する基台部22とを備えている。基台部22は、ヘッド部11の前面側の基台前部22aと、ヘッド部11の後面側の基台後部22bと、基台前部22aと基台後部22bとを連結する連結部22cとを備え、縦桟11b及び横桟11cの前面側の基台前部22aと後面側の基台後部22bとが連結部22cにより連結されることで、ヘッド部11に機械的に連結されている。ブラシ部2を構成する複数本の剛毛21は、基台前部22aの前面に前方へ突出状に一体的に設けられている。
【0039】
ブラシ部材20を構成する素材としては、柄10を構成する合成樹脂材料と相溶性を有する合成樹脂材料で構成することも可能であるが、使用可能な材料が限定されるので、相溶性を有さない材料で構成することが好ましい。例えば、低密度ポリエチレンやポリプロピレンやメタロセンベース軟質ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂や、6ナイロン、6−6ナイロン、6−10ナイロン、6−12ナイロン等のナイロン系樹脂などの合成樹脂材料や、スチレン系、オレフィン系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリウレタン系等の熱可塑性エラストマや、シリコンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、合成ゴムなどの熱硬化性エラストマなどを採用できる。
【0040】
基台前部22aはヘッド部11の前側の前部固定用凹部11d内に、ヘッド部11から前方へ突出するように収容され、基台後部22bはヘッド部11の後側の後部固定用凹部11e内に、後方へ突出しないように収容されている。基台前部22aのヘッド部11からの突出高さHは任意に設定可能であるが、例えば0.5mm以上1.0mm以下に設定され、これにより、剛毛21を成形する金型とヘッド部11の外周部間に、基台前部22aの突出部分の外周部を成形する外周成形部を配置させて、剛毛21を成形する金型を離型するときに、該外周成形部でヘッド部11を保持しながら離型することが可能となるので、歯ブラシ1の離型性を向上できる。
【0041】
基台後部22bには首部13の変形促進用凹部13b内へ延びる弾性変形促進部22dが基台後部22bと一体的に設けられ、この弾性変形促進部22dにより、植毛台と首部13間における柄10の前後方向への弾性変形を促進して、ブラッシング操作性を向上できるとともに、ブラッシング圧のコントロールが容易になるように構成されている。
【0042】
剛毛21は、基台前部22aの前面(剛毛の立設面)と略直交するように前方へ突出状に設けることも可能であるが、剛毛21の先端部がブラシ部2の幅方向の中央部側へ配置されるように傾斜状に設けて、
図4に示すように、ブラシ部2の先端幅WTが、基端幅WRの75%以上95%以下になるように構成されている。ブラシ部2の先端幅WTは、基端幅WRと同じに設定してもよいが、先端幅WTが基端幅WRよりも小さくなるように設定すると、ブラシ部2の先端部の剛毛21の密度が高くなり、歯間部や歯頚部などの細部の清掃性を向上できるとともに、ブラシ部2の先端部を歯頸部に当て易くなる。
【0043】
剛毛21は先細りに構成され、剛毛21の全長Lに対する、剛毛21の先端からの長さの割合が、15%位置における横断面積を基端部の横断面積の10〜20%に、また25%位置における横断面積を基端部の横断面積の20〜40%に、更に50%位置における横断面積を基端部の横断面積の60〜80%に設定され、歯間部や歯頚部などの細隙部への挿入性を向上して清掃性を高めるとともに、ブラッシングによる剛毛21の折れ曲がりを防止でき、しかもブラシ部2の耐久性を向上できるように構成されている。
【0044】
図5(b)に示すように、剛毛21の側面視における第1側(柄10の長手方向の基端側)23には、剛毛21の先端側から順番に、先端側突面円弧部23aと、突面側直線部23bと、第1基端側突面円弧部23cと、第2基端側突面円弧部23dと、凹面円弧部23eとが滑らかに連なって形成されている。突面円弧部23a、23c、23dは、第2側(柄10の長手方向の先端側)24側に中心を有する円弧で構成されている。凹面円弧部23eは、第2側24とは反対側に中心を有する円弧で構成されている。剛毛21の側面視における第2側24には、剛毛21の全長にわたって基台部22の前面(剛毛21の立設面)と略直交する直交直線部24aが形成されている。このように、剛毛21の第1側23と第2側24とを構成することで、ブラッシング時における応力集中の発生を防止して、応力集中により剛毛21が折れ曲がることを防止できる。
【0045】
先端側突面円弧部23aの半径は0.05〜0.25mmに設定され、剛毛21の長手方向の長さL1は0.1〜0.25mmに設定され、突面側直線部23bの剛毛21の長手方向の長さL2は3.5〜6.0mmに設定されている。第1基端側突面円弧部23cの半径は5〜20mmに設定され、剛毛21の長手方向の長さL3は0.1〜3.0mmに設定され、第2基端側突面円弧部23dの半径は65〜120mmに設定され、剛毛21の長手方向の長さL4は3.5〜6.0mmに設定されている。凹面円弧部23eの半径は0.1〜0.25mmに設定され、剛毛21の長手方向の長さL5は0.1〜0.25mmに設定されている。
【0046】
ただし、第1側23は、第2側24側に中心を有する少なくとも2つ以上の突面円弧部を備えるように構成してあれば、ブラッシング時における剛毛21の折れ曲がりを防止することが可能で、例えば突面側直線部23bに代えて突面円弧部を設けて、第1側23を4つの突面円弧部で構成したり、基端側突面円弧部23c、23dを単一の円弧部で構成して、第1側23を2つの突面円弧部と突面側直線部23bとで構成したりすることもできる。
【0047】
剛毛21の長さ方向と直交する横断面形状は、円形、半円形、半長円形、楕円形、半楕円形、三角形、台形や長方形や正方形などの四角形、5角形以上の多角形状などの任意の形状に構成可能である。特に、剛毛21の第2側24(柄10の長さ方向の先端側)に、該長さ方向と略直交する平坦面21aを形成した、
図7(a)に示す剛毛21のような半長円形や、
図7(b)に示す剛毛21Aのような半楕円形や、
図7(c)に示す剛毛21Bのような三角形や、
図7(d)に示す剛毛21Cのような等脚台形などの横断面形状の剛毛を採用することもできる。このように平坦面21aを設けると、剛毛21を成形する金型の一方の成形面を平坦面21aで構成でき、剛毛21から金型を離型するときにおける離型性を大幅に向上できる。また、平坦面21aの両側が角部となるので、歯表面に付着した歯垢等を該角部で掻き落とすことができ、清掃性を向上できる。
【0048】
剛毛21の先端部は、
図6に示すように、半径Rが0.1mm以上の部分球状に構成すると、歯肉を傷つけることを防止できるので好ましい。ただし、剛毛21の先端形状は、任意に設定可能であり、先鋭に構成したり、半球状や球状に形成することも可能である。
【0049】
剛毛21の毛丈は、清掃性や耐久性を考慮して、7.5mm以上12mm以下が好ましく、8.5mm以上11mm以下がより好ましい。
【0050】
基台部22に対する剛毛21の配列は、行方向(柄10の幅方向)に直列状に配置されていれば列方向(柄10の長手方向)に関しては任意に設定可能である。また、剛毛21は、全ての剛毛21の平坦面21aが、
図2(a)に示すように、柄10の長手方向の先端側にのみ配置されるように構成したり、基端側にのみ配置されるように構成したり、剛毛21の行毎に先端側又は基端側に任意に組み合わせて設けることができる。また、剛毛として、横断面形状、断面寸法、毛丈などを変更した複数種類の剛毛21を基台部22に設けることができる。
【0051】
この歯ブラシ1では、歯ブラシ1の柄10を射出成形した後、該柄10を、ブラシ部材20を成形する金型にセットして、ブラシ部材20を構成する溶融樹脂材料をゲートGから射出することで、該柄10のヘッド部11に複数本の剛毛21と基台部22とを有するブラシ部材20をインサート成形して、歯ブラシ1を製作することになる。なお、ゲートGは、ブラシ部材20に対応する任意の位置に設けることが可能であるが、基台後部22bの後面中央部に設けたり、弾性変形促進部22dの後面中央部に対応させて設けることが好ましい。
【0052】
柄10のヘッド部11には、ヘッド部11の前後面を連通する連通孔11fが形成されており、インサート成形により成形されたブラシ部材20の基台部22には、ヘッド部11の前面側の基台前部22aと、ヘッド部11の後面側の基台後部22bと、連通孔11fを通って基台前部22aと基台後部22bとを連結する連結部22cとが形成されることになり、柄10に対するブラシ部材20の結合強度を容易に向上できる。また、このような機械的な結合により、柄10に対してブラシ部材20が結合されるので、柄10及びブラシ部材20を構成する素材として、相溶性を有さないものを採用することが可能となるので、柄10及びブラシ部材20を構成する素材の選択自由度が大きくなり、柄10及びブラシ部材20のそれぞれの要求特性に応じた最適な素材で両者を構成することができる。
【0053】
なお、
図8に示す歯ブラシ1Aのように、枠部11aの先端部に溝部30を形成し、ブラシ部材20の成形時に該溝部30にブラシ部材20を構成する樹脂材料を充填させて、歯との接触時における衝撃を吸収する衝撃吸収部31を形成することもできる。つまり、ブラッシング時には、ヘッド部11の先端部が歯に当たることがあるが、この歯ブラシ1Aでは、柄10よりも軟質なブラシ部材20を構成する樹脂材料からなる衝撃吸収部31がヘッド部11の先端部に配置され、この衝撃吸収部31が歯に当たることで、歯に対して大きな衝撃力が作用することを効果的に防止できる。
【0054】
また、
図9に示す歯ブラシ1Bのブラシ部材20Bのように、基台後部22bの後面に、基台前部22aと同様に、後方へ突出する複数本の剛毛21からなるブラシ部2Bを形成することも可能である。
【0055】
なお、本実施の形態では、柄10を手で把持してブラッシングする手動歯ブラシに本発明を適用した場合について説明したが、電動歯ブラシの替えブラシ、歯肉マッサージ用のブラシ、洗顔ブラシ、フェイスマッサージ用のブラシ、ボディーブラシなどのブラシ具に本発明を適用することも可能である。
【0056】
次に、歯ブラシ1の性能試験について説明する。
歯ブラシとして、次のような構成の実施例1〜3と比較例1〜4の歯ブラシを製作した。
【0057】
(実施例1)
図1〜
図6に示すような形状で、ブラシ部材20をポリエチレン樹脂で構成するとともに、剛毛21の毛丈Lを10.5mmに設定し、側面視における第1側23の先端側突面円弧部23aの半径を0.1mm、長さL1を0.09mmに設定し、突面側直線部23bの長さL2を5.44mmに設定し、第1基端側突面円弧部23cの半径を10mm、長さL3を0.33mmに設定し、第2基端側突面円弧部23dの半径を108mm、長さL4を4.49mmに設定し、凹面円弧部23eの半径を0.4mm、長さL5を0.15mmに設定した。剛毛21の基端部の横断面積は0.36mm
2に設定した。側面視における第2側24は、柄10の長手方向と直交する直交直線部24aで構成した歯ブラシを製作した。
【0058】
(実施例2)
剛毛21に代えて、
図10(a)(b)に示す剛毛25Aを採用した以外は、実施例1と同様の構成の歯ブラシを製作した。剛毛25Aは、毛丈LAを8. 5mmに設定し、第1側23Aの先端側突面円弧部23Aaの半径を0.1mm、長さLA1を0.1mmに設定し、突面側直線部23Abの長さLA2を3.35mmに設定し、第1基端側突面円弧部23Acの半径を10mm、長さLA3を0.62mmに設定し、第2基端側突面円弧部23Adの半径を100mm、長さLA4を4.29mmに設定し、凹面円弧部23eの半径を0.4mm、長さLA5を0.15mmに設定した。第2側24Aは柄10の長手方向と直交する直交直線部24Aaで構成し、横断面形状及び基端部の横断面積は実施例1と同様に構成した。
【0059】
(実施例3)
剛毛21に代えて、
図11(a)(b)に示す剛毛25Bを採用した以外は、実施例1と同様の構成の歯ブラシを製作した。剛毛25Bは、毛丈LBを10. 5mmに設定し、第1側23Bの先端側突面円弧部23Baの半径を0.1mm、長さLB1を0.09mmに設定し、突面側直線部23Bbの長さLB2を5.66mmに設定し、基端側突面円弧部23Bcの半径を100mm、長さLB3を4.60mmに設定し、凹面円弧部23Beの半径を0.4mm、長さL5を0.15mmに設定した。第2側24Bは柄10の長手方向と直交する直交直線部24Baで構成し、横断面形状及び基端部の横断面積は実施例1と同様に構成した。
【0060】
(比較例1)
剛毛21に代えて、
図12(a)(b)に示す剛毛25Cを採用した以外は、実施例1と同様の構成の歯ブラシを製作した。剛毛25Cは、毛丈LCを8.0mmに設定し、第1側23Cの先端側突面円弧部23Caの半径を0.1mm、長さLC1を0.10mmに設定し、長さLC2が7.90mmの直線部23Cbを形成した。第2側24Cは柄10の長手方向と直交する直交直線部24Caで構成し、横断面形状は実施例1と同様に構成し、剛毛25Cの基端部の横断面積は0.28mm
2に設定した。
【0061】
(比較例2)
剛毛21に代えて、
図13(a(b)に示す剛毛25Dを採用した以外は、実施例1と同様の構成の歯ブラシを製作した。剛毛25Dは、毛丈LDを10.5mmに設定し、第1側23Dの先端側突面円弧部23Daの半径を0.1mm、長さLD1を0.10mmに設定し、長さLD2が10.40mmの直線部23Dbを形成した。第2側24Dは柄10の長手方向と直交する直交直線部24Daで構成し、横断面形状は実施例1と同様に構成し、剛毛25Dの基端部の横断面積は0.28mm
2に設定した。
【0062】
(比較例3)
剛毛21に代えて、
図14に示す剛毛25Eを採用した以外は、実施例1と同様の構成の歯ブラシを製作した。剛毛25Eは、毛丈LEが9.8mmで、先端部に半径が0.1mmの半球部23Eaを形成し、上部に長さLE1が1.9mmの第1円錐台部23Ebを形成し、途中部に長さLE2が3.0mmの第2円錐台部23Ecを形成し、下部に長さLE3が4.8mmの円柱部23Edを形成した。横断面形状は円形に構成し、剛毛25Eの基端部の横断面積は0.57mm
2に設定した。
【0063】
(比較例4)
直径1.5mmの植毛孔を
図2(a)の剛毛21と同様の配列で植毛台に形成し、該植毛孔に対して、剛毛21に代えて、
図15に示すように、植毛台からの突出長さLFが12mmとなるように、植毛台からの突出部分の基端部の横断面が直径0.16mmの円形で、基端部の横断面積が0.02mm
2で、側面視が2本の直線部からなる先鋭な、ポリブチレンテレフタレート製のフィラメント25Fを、各植毛孔に対してそれぞれ28本植設してなる歯ブラシを製作した。
【0064】
<清掃性試験>
歯ブラシのブラッシング圧及び移動速度を一定に保ちながら、固定した顎模型(D15−500H、ニッシン社)の歯をブラッシングできるように設計されたブラッシングシミュレータを用いた。プラークの代替として咬合チェック用スプレー・オクルード(パスカル社)の着色粉末を顎模型に塗布した。ブラッシング圧は200gに設定し、長手方向のストロークで、ストローク幅20mmにて3秒間、第一大臼歯をブラッシングした。その後、対象歯の撮影を行い、画像解析を行った。歯間部清掃性の評価は、着色粉末の除去率を、下記のように算出することでおこなった。表1において、歯間部プラーク除去率(%)が、50%以上の場合を「○」で表し、50%未満の場合を「×」で表した。
【0065】
着色粉末除去率(%)=[{(評価部位面積)−(着色粉末残存面積)}/(評価部位面積)]×100
【0066】
<耐久性試験>
歯ブラシを37℃の温水に浸漬し、荷重300gをかけて、5,000回往復運動させた、(A)初期状態の歯ブラシの短軸方向のブラシ部の幅(植毛されているブラシ毛の先端における幅WA、(B)5,000回往復運動後の毛の開いた状態の歯ブラシの短軸方向のブラシ部の幅WBを測定し、下式により算定した耐久性指数(指数が低いほど耐久性に優れる。)を以下の基準で評価した。表1において、耐久性指数が、100〜140%の場合を「○」で表し、140%を超える場合を「×」で表した。
【0067】
耐久性指数(%)=[WB/WA]×100
【0068】
<官能試験1>
各歯ブラシについて10名の被験者により1回の使用による毛先耐久性試験を実施した。各被験者において剛毛先端部分の曲がりの有無を評価し、以下の判定基準で曲がりの1回使用での耐久性を判定した。
【0069】
(判定基準)
○:8人以上が曲がりなし
△:5〜8人が曲がりなし
×:5人より少ない
【0071】
表1から、歯間部の清掃性、ブラシ部の耐久性、使用後の剛毛の曲がりは、剛毛の側面視の形状に依存して、大きく変動することが判る。実施例1〜3のように第1側を2個以上の突面円弧部で構成し、第2側を柄(ブラシ部)の長手方向と直交する直交直線部で構成すると、比較例1〜4のように、第1側を直線部で構成した場合と比較して、良好な性能が得られることが判る。特に、剛毛の全長に対する、先端からの長さの割合が50%位置における横断面積SAと基端部の面積SBとの比率SA/SBが、60%未満の場合には、比較例1、2のように剛毛が曲がってしまい、使用に耐えないものとなる。また、比較例3、4のように、50%位置における比率SA/SBが、60%以上であっても、25%位置における、比率SA/SBが50%を超えると、15%位置における、比率SA/SBが20%を超えてしまい、剛毛の先端部が太くなることから、剛毛の耐久性が低下したり歯間部の清掃性が低下したりするという不具合が発生していることが判る。
【0072】
<官能試験2>
各歯ブラシについて、マッサージ実感、刺激の有無、刷掃性実感、歯頸部への当て易さの官能試験を10名の被験者により行い、それぞれ、以下に示す基準により評価した。
【0073】
(マッサージ実感)
◎:非常に実感できる
○:実感できる
×:全く実感できない
【0074】
(刷掃実感、歯頸部への当て易さ)
◎:非常に良い
○:良い
×:悪い
【0075】
(総合評価)
「マッサージ実感」と「刷掃実感、歯頸部への当て易さ」の評価における、「◎」および「○」の個数の割合をそれぞれ求めて総合評価した。
◎:80%以上
○:50%以上
×:50%より小さい
【0077】
表2から、ブラシ部の先端幅WTと基端幅WRの比率WT/WR(
図4参照)が実施例1〜3のように、比較例3、4と比較して小さくなると、ブラシ部の先端部における剛毛の密度が高くなって、清掃実感、歯頸部への当て易さ、マッサージ実感が向上することが判る。
【0078】
次に、1本の剛毛に対して外力を作用させたときの応力分布の解析結果について説明する。
【0079】
剛毛として、
図5、
図17に示すように、第1側23に3つの突面円弧部23a、23b、23cを形成し、第2側24に直交直線部24aを形成した実施例1の剛毛25と、
図11、
図18に示すように、第1側23Bに2つの突面円弧部23Bb、23Bcを形成し、第2側24Bに直交直線部24Baを形成した実施例3の剛毛25Bと、
図12、
図19に示すように、第1側23Cに直線部23Cbを形成し、第2側24Cに直交直線部24Caを形成した比較例1の剛毛25Cを用いた。また、
図20に示すように、第1側及び第2側を直線で構成した比較例5の剛毛を用いた。
【0080】
そして、Solid Works Simulation(Solid Works社製)を用いて、実施例1、3及び比較例1、5の剛毛について、剛毛の基端部Sを固定し、剛毛の第2側24の先端から2mmの位置に対して、
図16(a)に示すように、0.01Nの押圧力F1を作用させたときにおける応力分布と、
図16(b)に示すように、0.01Nの引張力F2を作用させたときにおける応力分布とをそれぞれ解析した。
図17(a)〜
図20(a)は、
図16(a)のように、押圧力F1を作用させた場合の解析結果を示し、
図17(b)〜
図20(b)は、
図16(b)のように、引張力F2を作用させた場合の解析結果を示す。なお、
図16〜
図20では、剛毛の外形が判別し易くなるように、剛毛の背景を網目で描写した。
【0081】
図17〜
図20から、押圧力F1を作用させたときにおいても、引張力F2を作用させたときにおいても、実施例1、3のように、第1側を3つの突面円弧部又は2つの突面円弧部で構成した剛毛は、剛毛の長さ方向の途中部の2ヶ所で応力が高くなるのに対して、比較例1、5のように、第1側を2つの直線部又は1つの直線部で構成した剛毛は、剛毛の長さ方向の途中部の1カ所で応力が高くなっており、実施例1、3の方が比較例1、5よりも、応力が分散して、剛毛が折れ難くっていることが分かる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲においてその構成を変更し得ることは勿論である。