(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-193719(P2016-193719A)
(43)【公開日】2016年11月17日
(54)【発明の名称】自動運転システムのための間隔に基づく速度制御法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/095 20120101AFI20161021BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20161021BHJP
G05D 1/02 20060101ALI20161021BHJP
B60W 30/09 20120101ALI20161021BHJP
【FI】
B60W30/095
G08G1/16 C
G05D1/02 S
B60W30/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-65227(P2016-65227)
(22)【出願日】2016年3月29日
(31)【優先権主張番号】14/674,774
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】長坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】奥村 文洋
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
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3D241DC57Z
5H181AA01
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5H301LL01
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5H301LL07
5H301LL11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】自律的車両における運転者及び乗客に対する快適さの感覚を良好に提供するために、関心対象物体の近傍において速度及び距離が調和された制御を実施する。
【解決手段】自動運転システムは、自律的車両に関連付けられた感知システムを含む。感知システムと通信する各センサは、関心対象物体を検出し得る。自律的車両の周囲の環境に特有の情報に基づき、自動運転システムは、関心対象物体の近傍における車両経路を決定し得る。関心対象物体の特性に基づき、自動運転システムは、車両経路と関心対象物体との間の好適間隔を決定し得る。自動運転システムはまた、車両経路と関心対象物体との間の実際間隔を決定し得る。好適間隔と実際間隔との間の差に基づき、自動運転システムは、車両経路に沿う自律的車両に対する速度変化特性を決定し、且つ、自律的車両を制御して速度変化特性に従い車両経路を辿り得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律的車両に関連付けられた感知システムと、
前記感知システムと通信する演算デバイスであって、
該演算デバイスの動作を制御する一つ以上のプロセッサと、
前記一つ以上のプロセッサにより使用されるデータ及びプログラム指令を記憶するメモリであって、
前記一つ以上のプロセッサは、該メモリに記憶された指令を実行することにより、
前記感知システムを用いて、関心対象物体を検出し、
前記自律的車両の周囲の環境に特有の情報に基づき、前記関心対象物体の近傍における車両経路を決定し、
前記関心対象物体の特性に基づき、前記車両経路と前記関心対象物体との間の好適間隔を決定し、
前記車両経路と前記関心対象物体との間の実際間隔を決定し、
前記好適間隔と前記実際間隔との間の差に基づき、前記車両経路に沿う前記自律的車両に対する速度変化特性を決定し、
一つ以上の車両システムに対して命令を送信し、前記自律的車両を制御して前記速度変化特性を用いて前記車両経路を辿る、
ように構成される、
というメモリとを備える、
という演算デバイスと、
を備える、自動運転システム。
【請求項2】
前記自律的車両の周囲の環境に特有の情報は、道路の幾何学形状及び交通量箇所及び交通規則を含む、請求項1に記載の自動運転システム。
【請求項3】
前記関心対象物体の特性は、形式及びサイズ、及び、前記自律的車両に関する相対速度を含む、請求項1に記載の自動運転システム。
【請求項4】
前記関心対象物体形式は、障害物及び歩行者及び車両範疇の内の一つである、請求項3に記載の自動運転システム。
【請求項5】
前記好適間隔を決定する前記段階は更に、前記自律的車両の周囲の環境に特有の情報に基づく、請求項1に記載の自動運転システム。
【請求項6】
前記好適間隔を決定する前記段階は更に、自律的車両速度及び自律的動作のレベルを含む前記自律的車両の特性に基づく、請求項1に記載の自動運転システム。
【請求項7】
前記速度変化特性を決定する前記段階は更に、前記関心対象物体の特性及び前記自律的車両の特性に基づく、請求項6に記載の自動運転システム。
【請求項8】
前記速度変化特性は、前記実際間隔が前記好適間隔より小さいとき、前記関心対象物体の近傍において前記自律的車両に対する低減速度を含む、請求項1に記載の自動運転システム。
【請求項9】
自律的車両に関連付けられた感知システムを用いて、関心対象物体を検出する段階と、
前記自律的車両の周囲の環境に特有の情報に基づいて、前記関心対象物体の近傍における車両経路を決定する段階と、
前記関心対象物体の特性に基づいて、前記車両経路と前記関心対象物体との間の好適間隔を決定する段階と、
前記車両経路と前記関心対象物体との間の実際間隔を決定する段階と、
前記好適間隔と前記実際間隔との間の差に基づいて、前記車両経路に沿う前記自律的車両に対する速度変化特性を決定する段階と、
一つ以上の車両システムに対して命令を送信し、前記自律的車両を制御して前記速度変化特性に従って前記車両経路を辿る段階と、
を有する、コンピュータ実行型の自動運転方法。
【請求項10】
前記自律的車両の周囲の環境に特有の情報は、道路の幾何学形状及び交通量箇所及び交通規則を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記関心対象物体の特性は、形式及びサイズ、及び、前記自律的車両に関する相対速度を含み、
前記関心対象物体形式は、障害物及び歩行者及び車両範疇の内の一つである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記好適間隔を決定する前記段階は更に、前記自律的車両の周囲の環境に特有の情報、及び、自律的車両速度及び自律的動作のレベルを含む前記自律的車両の特性、の少なくとも一方に基づく、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記速度変化特性を決定する前記段階は更に、前記関心対象物体の特性及び前記自律的車両の特性に基づく、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記速度変化特性は、前記実際間隔が前記好適間隔より小さいとき、前記関心対象物体の近傍において前記自律的車両に対する低減速度を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
当該演算デバイスの動作を制御する一つ以上のプロセッサと、
前記一つ以上のプロセッサにより使用されるデータ及びプログラム指令を記憶するメモリであって、
前記一つ以上のプロセッサは、該メモリに記憶された指令を実行することにより、
自律的車両に関連付けられた感知システムを用いて、関心対象物体を検出し、
前記自律的車両の周囲の環境に特有の情報に基づき、前記関心対象物体の近傍における車両経路を決定し、
前記関心対象物体の特性に基づき、前記車両経路と前記関心対象物体との間の好適間隔を決定し、
前記車両経路と前記関心対象物体との間の実際間隔を決定し、
前記好適間隔と前記実際間隔との間の差に基づき、前記車両経路に沿う前記自律的車両に対する速度変化特性を決定し、
一つ以上の車両システムに対して命令を送信し、前記自律的車両を制御して前記速度変化特性を用いて前記車両経路を辿る、
ように構成される、
というメモリとを備える、
演算デバイス。
【請求項16】
前記自律的車両の周囲の環境に特有の情報は、道路の幾何学形状及び交通量箇所及び交通規則を含む、請求項15に記載の演算デバイス。
【請求項17】
前記関心対象物体の特性は、形式及びサイズ、及び、前記自律的車両に関する相対速度を含み、
前記関心対象物体形式は、障害物及び歩行者及び車両範疇の内の一つである、請求項15に記載の演算デバイス。
【請求項18】
前記好適間隔を決定する前記段階は更に、前記自律的車両の周囲の環境に特有の情報、及び、自律的車両速度及び自律的動作のレベルを含む前記自律的車両の特性、の少なくとも一方に基づく、請求項15に記載の演算デバイス。
【請求項19】
前記速度変化特性を決定する前記段階は更に、前記関心対象物体の特性及び前記自律的車両の特性に基づく、請求項18に記載の演算デバイス。
【請求項20】
前記速度変化特性は、前記実際間隔が前記好適間隔より小さいとき、前記関心対象物体の近傍において前記自律的車両に対する低減速度を含む、請求項15に記載の演算デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例えば、自動運転車両もしくは自律的車両などの車両を、運転者の相互作用もしくは他の外部制御なしで道路上にて操作すべく、完全にもしくは高度に自動化された運転システムが設計される。
【背景技術】
【0002】
自律的車両の運転者は、自動運転システムが該自律的車両に対し、運転者自身の手動的な制御判断と一致した様式で運転の判断を行うならば、更に良好なレベルの快適さを体験し得る。このことは特に、自律的車両に付随する感知システムが、近傍の車両、道路工事の領域、歩行者などの如き関心対象物体であって、典型的には、手動制御の状況に在る運転者に対しては該物体の近傍にて運転挙動を変更させるであろうという物体を検出したときに当てはまる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
関心対象物体に反応する先行技術の運転システムとしては、例えば、先行車両に基づいて当該車両の速度を変更し得る適応走行制御装置(ACC)が挙げられる。先行技術の運転システムとしては、車両の企図経路を変更して当該車両と関心対象となる種々の物体との間の距離を最大化し得る種々の距離制御システムも挙げられる。しかし、自律的車両における運転者及び乗客に対する快適さの感覚を更に良好に提供するためには、関心対象物体の近傍において速度及び距離が調和された制御を実施するという自動運転システムが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下においては、関心対象物体の近傍における自動運転のための間隔に基づく速度制御方法及びシステムが記述される。自律的車両に関連付けられた感知システムは、別の車両、歩行者、または、工事区域の如き関心対象物体を検出し得る。上記自律的車両の周囲の環境に特有の情報に基づき、自動運転システムは、上記関心対象物体の近傍における上記自律的車両に対する車両経路を決定し得る。相対速度、サイズ及び形式の如き上記関心対象物体の特性に基づき、上記自動運転システムは、上記車両経路と上記関心対象物体との間の好適間隔を決定することで、運転者の快適さ、ならびに、上記車両経路に対する一切の制約条件に基づき生ずるであろう実際間隔を確実にする。上記好適間隔と上記実際間隔との間の差に基づき、上記自動運転システムは、上記車両経路に沿う上記自律的車両に対する速度変化特性を決定し、且つ、上記自律的車両を制御して上記速度変化特性に従い上記車両経路を辿り得る。
【0005】
一つの実施形態においては、自動運転システムが開示される。該自動運転システムは、自律的車両に関連付けられた感知システムと、該感知システムと通信する演算デバイスとを含む。該演算デバイスは、該演算デバイスの動作を制御する一つ以上のプロセッサと、該一つ以上のプロセッサにより使用されるデータ及びプログラム指令を記憶するメモリとを含む。上記一つ以上のプロセッサは、上記メモリに記憶された指令を実行することにより:上記感知システムを用いて、関心対象物体を検出し;上記自律的車両の周囲の環境に特有の情報に基づき、上記関心対象物体の近傍における車両経路を決定し;上記関心対象物体の特性に基づき、上記車両経路と上記関心対象物体との間の好適間隔を決定し;上記車両経路と上記関心対象物体との間の実際間隔を決定し;上記好適間隔と上記実際間隔との間の差に基づき、上記車両経路に沿う上記自律的車両に対する速度変化特性を決定し;且つ、一つ以上の車両システムに対して命令を送信し、上記自律的車両を制御して上記速度変化特性を用いて上記車両経路を辿る;ように構成される、
【0006】
別の実施形態においては、コンピュータ実行型の自動運転方法が開示される。該方法は、自律的車両に関連付けられた感知システムを用いて、関心対象物体を検出する段階と;上記自律的車両の周囲の環境に特有の情報に基づいて、上記関心対象物体の近傍における車両経路を決定する段階と;上記関心対象物体の特性に基づいて、上記車両経路と上記関心対象物体との間の好適間隔を決定する段階と;上記車両経路と上記関心対象物体との間の実際間隔を決定する段階と;上記好適間隔と上記実際間隔との間の差に基づいて、上記車両経路に沿う上記自律的車両に対する速度変化特性を決定する段階と;一つ以上の車両システムに対して命令を送信し、上記自律的車両を制御して上記速度変化特性に従って上記車両経路を辿る段階と;を含む。
【0007】
別の実施形態においては、演算デバイスが開示される。上記演算デバイスは、該演算デバイスの動作を制御する一つ以上のプロセッサと、上記一つ以上のプロセッサにより使用されるデータ及びプログラム指令を記憶するメモリとを含む。上記一つ以上のプロセッサは、該メモリに記憶された指令を実行することにより:自律的車両に関連付けられた感知システムを用いて、関心対象物体を検出し;上記自律的車両の周囲の環境に特有の情報に基づき、上記関心対象物体の近傍における車両経路を決定し;上記関心対象物体の特性に基づき、上記車両経路と上記関心対象物体との間の好適間隔を決定し;上記車両経路と上記関心対象物体との間の実際間隔を決定し;上記好適間隔と上記実際間隔との間の差に基づき、上記車両経路に沿う上記自律的車両に対する速度変化特性を決定し;且つ、一つ以上の車両システムに対して命令を送信し、上記自律的車両を制御して上記速度変化特性を用いて上記車両経路を辿る;ように構成される。
【0008】
本明細書における記述は、幾つかの図を通して同様の参照番号が同様の部材を指すという添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1の演算デバイスを含む自律的車両の概略図である。
【
図3】隣接する車線における別の車両の近傍における
図2の自律的車両に対する車両経路を示す図である。
【
図4】
図3の車両経路に沿う
図2の自律的車両に対する速度変化特性を示す図である。
【
図5】工事区域の近傍における
図2の自律的車両に対する車両経路を示す図である。
【
図6】
図5の車両経路に沿う
図2の自律的車両に対する速度変化特性を示す図である。
【
図7】隣接する各車線における複数台の車両の近傍における
図2の自律的車両に対する車両経路を示す図である。
【
図8】
図7の車両経路に沿う
図2の自律的車両に対する速度変化特性を示す図である。
【
図9】自動運転システムにより実施される間隔及び速度変化特性の決定プロセスの論理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
自律的車両のための自動運転システムが開示される。上記自動運転システムは、上記自律的車両を制御して車両経路を辿り得る。上記車両経路は、交通量密度、道路の幾何学形状などの如き上記自律的車両の周囲の環境に特有の情報と、他の車両、歩行者、及び、工事区域の如き上記車両経路上で上記自律的車両が側方通過し得る関心対象物体と、の両方に基づいて選択され得る。運転者の快適さのために、上記車両経路と所定の関心対象物体との間で最適化された距離は、好適な間隔に関して算出され得る。同様に、選択された車両経路と所定の関心対象物体との間の実際の距離は、実際の間隔に関して算出され得る。選択された車両経路上での側方通過動作の間において、もし、実際の間隔が好適な間隔より小さいなら、すなわち、もし、自律的車両の運転者が関心対象物体の近接性により不快であり得るなら、上記自律的車両は、該自律的車両が関心対象物体を側方通過する間に減速することで運転者の快適さを高める、という速度変化特性を辿るべく制御され得る。
【0011】
図1は、例えば、自動運転システムと共に使用される演算デバイス(computing device)100のブロック図である。演算デバイス100は、任意の形式の、車載式、携帯式、デスクトップ式、または、他の形態の単一の演算デバイスであり得るか、複数の演算デバイスで構成され得る。上記演算デバイスにおける処理ユニットは、習用の中央処理ユニット(CPU)102、または、情報を取り扱いまたは処理し得る他の任意の形式の単一もしくは複数のデバイスであり得る。上記演算デバイスにおけるメモリ104は、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、または、他の任意の適切な形式の記憶デバイスであり得る。メモリ104は、バス108を用いてCPU102によりアクセスされるデータ106を含み得る。
【0012】
メモリ104はまた、オペレーティング・システム110、及び、以下に記述される自動運転方法をCPU102が実施することを許容するプログラムを含むインストール済みのアプリケーション112も含み得る。演算デバイス100はまた、例えば、メモリ・カード、フラッシュ・ドライブ、または、他の任意の形態のコンピュータ可読媒体などの、補助的、付加的、または、外部的な記憶装置114も含み得る。インストールされたアプリケーション112は、外部記憶装置114内に全体的もしくは部分的に記憶され得ると共に、処理のために必要に応じてメモリ104内へとロードされ得る。
【0013】
演算デバイス100は、感知システム116と通信し得る。感知システム116は、自律的車両の周囲の環境に特有の情報を捕捉し得る、慣性測定装置(IMU)、推測航法システム、全地球的航法衛星システム(GNSS)、光検出と測距(LIDAR)システム、レーダ・システム、ソナー・システム、画像系センサ・システム、または、他の任意の形式のシステムにより、処理のためのデータ及び/または信号を捕捉すべく構成され得る。上記環境に特有の情報としては、道路の幾何学形状、交通量箇所(traffic location)、交通規則に対して特有である情報、または、捕捉されてCPU102に対して送信され得る他の任意の局所的な位置的データ及び/または信号が挙げられる。
【0014】
以下に記述される各例において、感知システム116は、演算デバイス100が、例えば、障害物、歩行者、もしくは、車両の範疇などの、自律的車両の近傍における関心対象物体の形式、該関心対象物体のサイズ、及び/または、当該画像内における一切の関心対象物体の相対速度を検出し得る如く、画像系センサ・システムに対して少なくとも画像を捕捉すべく構成され得る。演算デバイス100はまた、車両ブレーキ・システム、車両推進システム、車両操舵システムの如き、一つ以上の車両システム118とも通信し得る。車両システム118もまた、感知システム116と通信し得、該感知システム116は、種々の車両システム118の動作を表すデータを捕捉すべく構成される。
【0015】
図2は、
図1の演算デバイス100を含む自律的車両200の概略的図解である。演算デバイス100は、
図2に示された如く自律的車両200内に配置され得るか、または、(不図示の)代替的な箇所において自律的車両200から遠隔的に配置され得る。演算デバイス100が自律的車両200から遠隔的に配置されるなら、該自律的車両200は演算デバイス100と通信する機能を含み得る。
【0016】
自律的車両200はまた、複数のセンサ202も含み得、各センサ202は、
図1に関して記述された感知システム116の一部である。示された一つ以上のセンサ202は、画像センサによる処理のための画像;複数の衛星からの信号に基づく大域的座標における車両位置;自律的車両200及び周囲環境における関心対象物体の位置、配向及び速度を評価すべく演算デバイス100により使用されるための周囲環境における関心対象物体までの距離;または、自律的車両200の現在状態を決定すべく、もしくは、自律的車両200の近傍における関心対象物体の存在、位置及び速度などの周囲環境における現在状態を決定すべく使用され得る他の一切のデータ及び/または信号;を捕捉すべく構成され得る。
【0017】
図3は、隣接する車線における他の車両302の近傍における
図2の自律的車両200に対する車両経路300を示している。自律的車両200上に配設された各センサ202は自律的車両200及び車両302の周囲の環境に特有の情報を検出し得る。例えば、各センサ202は、この場合には当該各車線を分離する境界線304を備えた同一方向に進行する2本の車線が在るという、車両200、302の近傍の道路の幾何学形状を検出し得る。この道路の幾何学形状に基づき、且つ、自律的車両200に関する車両302の位置及び速度が与えられたなら、上記自動運転システムは、例えば、自律的車両200は、現在の進行車線内に留まり乍ら、車両302を安全に側方通過し得るということを表す交通規則を認識し得る。
【0018】
上記自動運転システムはまた、側方通過動作の間において運転者の快適さに対して十分である自律的車両200と車両302との間の間隙もしくは距離を決定する様にも構成され得る。この例において、十分な間隙は、運転者の快適さを許容する自律的車両200と車両302との間の距離であるという好適間隔306により表され得る。好適間隔306に対して選択された距離は、例えば、関心対象物体の形式、該物体のサイズ、自律的車両200に関する該物体の相対速度などの、該物体の特性に基づき得る。
図3の例における車両302は、自律的車両200よりも低速で進行している中型の乗用車であることから、好適間隔306は、運転者の快適さに対して過度に大きくされる必要はない。
【0019】
好適間隔306の選択はまた、道路の幾何学形状、自律的車両200に関する交通量の位置及び密度を含む交通量箇所、及び、交通規則の如き、該自律的車両200の周囲の環境に特有の情報にも基づき得る。好適間隔306の選択は、自律的車両200の速度、及び、自律的動作のレベルの如き、自律的車両200の特性にも基づき得る。例えば、車両経路300により表された側方通過動作が、自律的車両200及び車両302の両方に対して低速にて行われるならば、好適間隔306は、側方通過動作が更に高レベルの速度で行われる場合よりも小さくされ得る。
【0020】
車両経路300が一旦選択されたなら、上記自動運転システムは、自律的車両200が車両経路300上で車両302を側方通過する箇所における、該自律的車両200と車両302との間の実際間隔308を決定し得る。
図3の例において、実際間隔308は好適間隔306より大きく、すなわち、自律的車両200は、側方通過動作の間において、選択された車両経路300を進行し且つ運転者の快適さに対して十分以上の間隙を維持し得る。好適間隔306よりも大きい実際間隔308に基づき、上記自動運転システムは、車両経路300に沿い、
図4に示され且つ記述される如き自律的車両200に対する速度変化特性を決定し得る。
【0021】
図4は、
図3の車両経路300に沿う
図2の自律的車両200に対する速度変化特性400を示している。該速度変化特性400は、自律的車両200により進行される距離にわたる車両速度のグラフとして示される。該グラフは、表示された側方通過箇所404にて自律的車両200が車両302を側方通過する前に、それが到達すべき目標速度402を示している。目標速度402は、速度変化特性400の一部として、上記自動運転システムにより選択される。上記グラフはまた、自律的車両200が進行しつつある箇所に対する制限速度などの交通規則との整合性のために速度変化特性400に対する制約条件の役割を果たす最高速度406も表している。速度変化特性400は、車両経路300が決定されるのと同時に決定され得る、と言うのも、速度変化特性400を決定するためには、環境に特有の情報の如き同様の入力が使用されるからである。代替的に、速度変化特性400は、車両経路300が選択された後に決定され得る。
【0022】
図4の例において、速度変化特性400は、自律的車両200が側方通過箇所404にて車両302を側方通過する僅か以前に目標速度402に到達するために、自律的車両200がその速度を速度変化特性400に沿い増大し得ることを示している。選択された目標速度402は、少なくとも部分的に、側方通過箇所404における好適間隔306よりも大きいという実際間隔308に基づき、自律的車両200の現在速度よりも大きい。目標速度402はまた、交通規則に対する整合性及び運転者の快適さに対しても選択される、と言うのも、手動的に運転される車両は、最高速度406の如き制限速度が速度の増大を許容する限りにおいて、更に低速で移動している車両を側方通過するために自車の速度を増大すべく制御されることが多いからである。目標速度402はまた、一切の先行車両までの距離、及び、車両動態に関する一切の制約条件に基づいても選択され得、すなわち、速度の最適化は、自律的車両200により行われるべき動作と、該自律的車両200の周囲の環境とに依存する。
【0023】
図5は、工事区域502の近傍における
図2の自律的車両200に対する車両経路500を示している。再び、自律的車両200上に配設された各センサ202は、該自律的車両200の周囲の環境に特有の情報を検出し得る。例えば、各センサ202は、到来しつつある工事区域502を特定するために進行車線が複数の工事コーン504を含むことを検出し得る。工事区域502の存在に基づき、上記自動運転システムは、例えば、自律的車両200は工事区域502に在る間にその速度を落とさねばならないことを表す交通規則を特定し得る。
【0024】
これに加え、上記自動運転システムは、側方通過動作の間において運転者の快適さのために十分である、自律的車両200と各工事コーン504との間における間隙もしくは距離を決定すべく構成され得る。この例において、十分な間隙は好適間隔506により表され得る。再び、好適間隔506に対して選択される距離は、例えば、側方通過されつつある関心対象物体の形式、物体のサイズ、及び、自律的車両200に関する物体の相対速度などの、該物体の特性に基づき得る。
図5の例における関心対象物体は複数の工事コーン504に表される静止的な工事区域502であることから、好適間隔506は、運転者の快適さと、工事区域502内に存在し得る一切の工事作業者の更なる安全性との両方に対し、幾分か大きくされるべきである。
【0025】
車両経路500が一旦選択されたなら、上記自動運転システムは、自律的車両200が車両経路500上で工事区域502を側方通過する箇所における該自律的車両200と工事区域502との間の実際間隔508を決定し得る。
図5の例において、実際間隔508は好適間隔506より小さく、すなわち、自律的車両200は、該自律的車両200が工事区域502を通過して進行する間に、選択された車両経路500に沿い運転者の快適さに対して十分な間隙を維持し得ない。実際間隔508よりも大きな好適間隔506に基づき、上記自動運転システムは、車両経路500に沿う自律的車両200に対し、
図6に示されて記述される如き速度変化特性を決定し得る。
【0026】
図6は、
図5の車両経路500に沿う
図2の自律的車両200に対する速度変化特性600を示している。再び、速度変化特性600は、進行される距離にわたる車両速度のグラフとして示されると共に、該特性は、車両経路500が決定されるのと同時に、または、車両経路500が決定された後に、生成され得る。上記グラフは、示された工事箇所604にて自律的車両200が工事区域502に進入する前に、それが到達すべき目標速度602を含んでいる。該グラフはまた、交通規則に整合する最高速度606も含んでいる。
図6の例において、速度変化特性600は、自律的車両200が工事箇所604において工事区域502に進入する僅か以前に目標速度602に到達すべく速度変化特性600に沿い該車両がその速度を落とすことを示している。選択された目標速度602は、少なくとも部分的に、運転者の快適さに対して選択された好適間隔506よりも小さいという工事箇所604における実際間隔508に基づき、自律的車両200の現在速度よりも低い。目標速度602はまた、交通規則に対する整合性に対しても選択される、と言うのも、手動的に運転される車両は、工事箇所604にて工事区域502に進入すると同時に自車の速度を落とすことが必要とされるからである。
【0027】
図7は、隣接する各車線における複数台の車両702、704の近傍における
図2の自律的車両200に対する車両経路700を示している。再び、自律的車両200上に配設された各センサ202は、該自律的車両200の周囲の環境に特有の情報を検出し得る。例えば、各センサ202は、自律的車両200の右側における移動中の車両702、及び、自律的車両200の左側における停止した車両704の両方、ならびに、(不図示の)到来しつつある交差点を検出し得る。車両702、704の存在と、到来しつつある交差点の構造とに基づき、上記自動運転システムは、例えば、自律的車両200は車両704を側方通過して交差点に進入する間に自車の速度を落とすべきことを表す交通規則を認識し得る。
【0028】
これに加え、上記自動運転システムは、自律的車両200が上記交差点に接近するときにおいて運転者の快適さに対して十分であるという自律的車両200と車両702、704との間の一対の好適間隔706、708を決定すべく構成され得る。この例において、好適間隔706は好適間隔708よりも小さくされ得る、と言うのも、車両702は自律的車両200と同様の速度で移動する一方で、車両704は上記交差点の手前で旋回車線において停止しているので、自律的車両200と車両704との間には、該自律的車両200と車両702との間におけるよりも大きな相対速度が存在するからである。同様に、好適間隔708は好適間隔706よりも大きくされ得る、と言うのも、車両704は車両702よりも上記交差点に近く、且つ、交通規則は、付加的な注意を示唆することから、自律的車両200が上記交差点に一旦接近したならば該車両に対する更に低い速度を示唆するからである。
【0029】
車両経路700が一旦選択されたなら、上記自動運転システムは、自律的車両200が車両経路700上で車両702、704を側方通過するときにおける該自律的車両200と車両702、704との間の実際間隔710、712を決定し得る。
図7の例において、実際間隔710は好適間隔706と同一サイズであり、且つ、実際間隔712は好適間隔708よりも小さい。故に、自律的車両200は、選択された車両経路700に沿い車両702を側方通過する際には速度を落とさずに運転者の快適さに対して十分な間隙を維持し得るが、上記交差点の近傍にて車両704を側方通過する際には、運転者の快適さに対して十分な間隙を維持することはできない。基本的に、実際間隔712よりも小さいという好適間隔708に基づき、上記自動運転システムは、車両経路700に沿う自律的車両200に対し、
図8に示され且つ記述される如く速度変化特性を決定し得る。
【0030】
図8は、
図7の車両経路700に沿う
図2の自律的車両200に対する速度変化特性800を示している。再び、速度変化特性800は、進行される距離にわたる車両速度のグラフとして示されると共に、該特性は、車両経路700が決定されるのと同時に、または、車両経路700が決定された後に、生成され得る。上記グラフは、示された側方通過箇所804にて車両704を自律的車両200が側方通過する前に、それが到達すべき目標速度802を含んでいる。更に、車両704の向こうに交差点の存在が与えられることから、速度変化特性は、自律的車両200が上記交差点を通過するまで、更に低い速度のままである。上記グラフはまた、自律的車両200が進行しつつある道路の区画に対する交通規則に整合する最高速度806も含んでいる。
【0031】
図8の例において、速度変化特性800は、自律的車両200は、上記交差点に停止している車両704を側方通過する前に目標速度802に到達するために先ず自車の速度を落とし、その後、上記交差点を通過した後で自車の速度を最高速度806まで上げることを示している。選択された目標速度802は、車両704に対する好適間隔708よりも小さいという実際間隔712に基づき、自律的車両200の現在速度よりも低い。目標速度802はまた、交通規則に対する整合性に対しても選択される、と言うのも、手動的に運転される車両は、安全な運転習慣に適合すべく、交差点に進入する前に自車の速度を落とすべく制御されることが多いからである。
【0032】
図9は、上記自動運転システムにより実施される間隔及び速度変化特性の決定プロセス900の論理フローチャートである。プロセス900のステップ902において、上記自動運転システムは、感知システム116に付随する各センサ202を用いて、関心対象物体を検出し得る。該関心対象物体は、形式、サイズ、及び、自律的車両200に関する相対速度の如き、付随する特性を有し得る。上記関心対象物体は、
図5の工事コーン504の如き障害物、歩行者、または、自転車、乗用車、商用車、または、緊急車両の如き車両範疇であり得る。関心対象物体のサイズ及び相対速度の両方が、側方通過動作の間における自律的車両200と該関心対象物体との間の好適間隔の算出に影響を及ぼし得る。
【0033】
プロセス900のステップ904において、上記自動運転システムは、例えば、
図3、
図5及び
図7に示された車両経路300、500及び700などの、関心対象物体の近傍における車両経路を決定し得る。該車両経路は、車両200の周囲の環境に特有の情報に基づいて選択され得る。環境に特有の情報は、車線構造、交差点の存在の如き、道路の幾何学形状を含み得る。環境に特有の情報はまた、交通量箇所に関する情報、すなわち、自律的車両200に隣接する各車両の位置、及び、近傍の交通量の密度も含み得る。環境に特有の情報はまた、交通規則、すなわち、例えば、道路の幾何学形状、制限速度、及び、隣接車両の存在に基づいて自律的車両200により追随されるべき交通法規も含み得る。
【0034】
プロセス900のステップ906において、上記自動運転システムは、
図3、
図5及び
図7における好適間隔306、506及び708の如き、車両経路と関心対象物体との間の好適間隔を決定し得る。好適間隔のサイズは、関心対象物体のサイズ、形式、または、自律的車両200に関する相対速度の如き、関心対象物体の特性に基づき得る。上記好適間隔のサイズはまた、道路の幾何学形状、交通量箇所、及び、交通規則の如き、上記車両の周囲の環境に特有の情報にも基づき得る。例えば、
図3における自律的車両200と車両302との間の好適間隔306はそれほど大きくなく、単純な車線幾何学形状と、車両302と比較した自律的車両200の相対速度、すなわち、自律的車両200は車両302よりも、高速ではあるが、それほど高速ではなく進行していることと、車両302のサイズ及び範疇、すなわち、中型の乗用車であることとを反映している。これらの特性の各々は、自律的車両200における運転者は、該自律的車両200と車両302との間における非常に大きな距離なしで、比較的に快適に車両302を側方通過することを表している。
【0035】
プロセス900のステップ908において、上記自動運転システムは、例えば、
図3、
図5及び
図7における実際間隔308、508及び712などの、車両経路と関心対象物体との間の実際間隔を決定し得る。該実際間隔は、自律的車両200が関心対象物体を側方通過するという上記車両経路上の箇所において、自律的車両200と関心対象物体との間に存在すべきと予測される距離である。
【0036】
プロセス900のステップ910において、上記自動運転システムは、少なくとも部分的に、関心対象物体の箇所における好適間隔と実際間隔との間の差に基づき、
図4、
図6及び
図8における速度変化特性400、600及び800の如き速度変化特性を決定し得る。もし、
図3に示された如く、実際間隔308と好適間隔306との間の比較により、実際間隔が好適間隔よりも大きいなら、速度変化特性は上記間隔により比較的に影響されないものであり得、すなわち、速度変化特性は代替的に、速度及び自律的動作のレベルの如き自律的車両200の特性に基づき得る。但し、実際間隔508及び712及び好適間隔506及び708による
図5及び
図7の両方の場合における如く、実際間隔が好適間隔より小さいなら、上記速度変化特性は、運転者の快適さを提供するために、関心対象物体の近傍にて自律的車両200に対する低減速度を含み得る。
【0037】
プロセス900のステップ912において、上記自動運転システムは一つ以上の車両システム118に対して命令を送信して自律的車両200を制御し、上記速度変化特性を用いて車両経路を辿る。例えば、自律的車両200が
図7の車両経路700に沿い
図8の速度変化特性800に追随するとき、上記ブレーキ・システムは、自律的車両200が
図7に示された如き車両704を側方通過する前に、該自律的車両の速度を落とすべく制御され得る。その後、自律的車両200が、到来しつつある交差点を通過した後、エンジン制御システムは該自律的車両200の速度を、交通規則に整合する最高速度806まで高め得る。ステップ912の後、プロセス900は終了する。
【0038】
上述の説明は、現在において最も実用的な実施形態と考えられるものに関している。但し、上記開示内容は、これらの実施形態に制限されるのではなく、逆に、添付の各請求項の精神及び有効範囲内に含まれる種々の改変例及び等価的な配置構成を包含することが意図されることを理解すべきである。各請求項の有効範囲は、法に基づいて許される如く、斯かる改変例及び等価的な構造の全てを包含すべく最も広範囲な解釈内容に従うものとする。
【外国語明細書】