特開2016-193754(P2016-193754A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社悠心の特許一覧

特開2016-193754撥水もしくは撥油処理を施した帯電防止フィルムからなるフィルム状注出ノズルおよびそのフィルム状注出ノズルの融着構造
<>
  • 特開2016193754-撥水もしくは撥油処理を施した帯電防止フィルムからなるフィルム状注出ノズルおよびそのフィルム状注出ノズルの融着構造 図000003
  • 特開2016193754-撥水もしくは撥油処理を施した帯電防止フィルムからなるフィルム状注出ノズルおよびそのフィルム状注出ノズルの融着構造 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-193754(P2016-193754A)
(43)【公開日】2016年11月17日
(54)【発明の名称】撥水もしくは撥油処理を施した帯電防止フィルムからなるフィルム状注出ノズルおよびそのフィルム状注出ノズルの融着構造
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/38 20060101AFI20161021BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20161021BHJP
【FI】
   B65D33/38
   B65D30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-74940(P2015-74940)
(22)【出願日】2015年4月1日
(71)【出願人】
【識別番号】307028493
【氏名又は名称】株式会社悠心
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二瀬 克規
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AA05
3E064BA26
3E064BA30
3E064BA46
3E064BA55
3E064BB03
3E064BC20
3E064EA30
(57)【要約】
【課題】フィルム状注出ノズルのセルフシール逆止機能の発揮はそのままに、該注出ノズルの帯電を有効に防止することで、すぐれた液切れ性を長期間にわたって発揮させることができるフィルム状注出ノズルおよびその注出ノズルの包装袋本体への融着構造を提供する。
【解決手段】ベースフィルム層を挟んでシーラント層を直接的もしくは間接的に積層してなる注出ノズルフィルムを、中央部で半折り、もしくは二枚を重ね合わせた後、周縁部分を基端部分を除いて融着して中央部分に注出通路を区画してなるセルフシール逆止機能を具えるフィルム状注出ノズルであって、該フィルム状注出ノズルの外表面に、撥水もしくは撥油処理を施すとともに、前記注出ノズルフィルムに帯電防止処理を施したこと。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルム層を挟んでシーラント層を直接的もしくは間接的に積層してなる注出ノズルフィルムを、中央部で半折り、もしくは二枚を重ね合わせた後、周縁部分を基端部分を除いて融着して中央部分に注出通路を区画してなるセルフシール逆止機能を具えるフィルム状注出ノズルであって、
該フィルム状注出ノズルの外表面に、撥水もしくは撥油処理を施すとともに、前記注出ノズルフィルムに帯電防止処理を施したことを特徴とするフィルム状注出ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルム状注出ノズルを、その外表面のシーラント層によって基端部分で包装袋本体の内表面に融着してなり、該融着部が、ローレット状もしくは梨地状の広幅融着域と、包装袋本体の被包装物収納スペース寄りの狭幅の筋状融着域とからなることを特徴とするフィルム状注出ノズルの包装袋本体への融着構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、撥水もしくは撥油処理を施してなるフィルム状注出ノズルの、その撥水もしくは撥油機能の低下を防止し、液状の被包装物の注出性および液切れ性を向上させる技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
重ね合わせた表裏二枚の、平坦な薄肉の積層フィルム、もしくは半折りした一枚の薄肉の積層フィルムを、基端部分を除く周縁部分で融着させて、中央部分に非融着の注出通路を区画してなり、セルフシール逆止機能を発揮するフィルム状注出ノズルを具えた包装袋内としては、特許文献1、2に記載されたものがある。
【0003】
このフィルム状注出ノズルのセルフシール逆止機能により、袋内に充填した液状被包装物を注出する際、包装袋本体自身が収縮ないしは潰れ変形することによって外気が逆流して袋内に入り込むのを防止し、また、液状被包装物(内容物)の注出の停止と同時に、該注出ノズルの注出通路が液状の被包装物の薄膜の介在下で表裏に密着して包装袋内への外気の進入が確実に阻止されて、袋内の被包装物を、酸化、汚損等から十分に保護することができる。
【0004】
そして、特許文献3に記載の包装袋では、フィルム状注出ノズルの外表面への撥水物質または撥油物資の塗布層の作用により、被包装物の注出の停止時の液切れ性が向上し、また、前記注出通路内の濡れ処理層により、セルフシール逆止機能がより高まり、包装袋内への外気の進入を一層効果的に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−15029号公報
【特許文献2】特開2004−59958号公報
【特許文献3】特開2010−18323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のフィルム状注出ノズルを介して被包装物を繰り返し注出したところ、フィルム状注出ノズルの外表面に撥水塗布層または撥油塗布層を設けたにも係わらず、液切れ性が低下すること、とくに湿度が低いときにその傾向が強くなることがわかった。
その理由としては、被包装物の繰り返しの注出による流路摩擦等によってフィルム状注出ノズルに静電気が発生し、一旦、静電気が発生すると、水や醤油等の被包装物が、たとえば正の電荷を帯び、その被包装物が、たとえば負の電荷を帯びる注出ノズルの外表面に引っ張られることによって注出通路開口の下端部分に液滴状となって吸着されることによるものと考えられる。
【0007】
そこで、この発明は、このようなフィルム状注出ノズルの液切れ性の低下の問題を解決することを課題とするものであり、フィルム状注出ノズルのセルフシール逆止機能の発揮はそのままに、該注出ノズルの帯電を有効に防止することで、すぐれた液切れ性を長期間にわたって発揮させることができるフィルム状注出ノズルおよびその注出ノズルの包装袋本体への融着構造を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の、フィルム状注出ノズルは、ベースフィルム層を挟んでシーラント層を直接的もしくは間接的に積層してなる注出ノズルフィルムを、中央部で半折り、もしくは二枚を重ね合わせた後、周縁部分を基端部分を除いて融着して中央部分に注出通路を区画してなるセルフシール逆止機能を具えるフィルム状注出ノズルであって、該フィルム状注出ノズルの外表面に、撥水もしくは撥油処理を施すとともに、前記注出ノズルフィルムに帯電防止処理を施したことを特徴とするものである。
【0009】
ここで、前記帯電防止処理は、一般的に用いられるカーボン、酸化亜鉛、酸化錫、金属塩等の導電材料を、ベースフィルム層やシーラント層、または接着材に練り込み、もしくはサンドイッチ状にコーティングし、またはベースフィルム層やシーラント層に蒸着させることにより施すことが好ましい。
【0010】
そして、フィルム状注出ノズルの、包装袋本体への融着構造は、フィルム状注出ノズルの外表面の、包装袋本体の内表面への融着を、ローレット状もしくは梨地状の広幅融着域と、包装袋本体の被包装物収納スペース寄りを狭幅の筋状融着域、いいかえれば、狭幅のベタシール域とで行うものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明のフィルム状注出ノズルでは、該注出ノズルの、セルフシール逆止機能は従来技術で述べたと同様に維持できることはもちろん、該注出ノズルの静電気による帯電が、帯電防止処理によって有効に防止されることになるので、該注出ノズルの外表面の撥水もしくは撥油機能を長期間にわたって十分に確保することができる。そのため、本発明によれば、フィルム状注出ノズルの液切れ性を高く保ち、袋内の被包装物の意図しないたれ落ち、付着等のおそれを有効に取り除くことができる。
【0012】
ところで、この発明のフィルム状注出ノズルの融着構造によれば、該注出ノズルを、包装袋本体に筋状融着(ベタシール)をもって包装袋本体に融着させる従来技術と比較して、該注出ノズルの融着腰度および該注出ノズル自体の剛性が低下し、被包装物の注出をより円滑なものとするとともに、注出ノズルの注出通路から包装袋本体内への被包装物の戻りを一層円滑にして、液切れ性をより大きく向上させることができる。
【0013】
以上に述べたところにおいて、より好ましくは、セルフシール逆止機能を有するフィルム状注出ノズルは、注出通路の延在方向の中間位置、好ましくは注出ノズルの基端部に、一般的な融着強度の半分以下の融着強度を有し、作為的に融着を剥離させてなお、他の融着部に影響を及ぼすことのない仮封止部を設けることもでき、この場合にあってなお、仮封止部の位置等との関連の下で、該注出ノズルは、セルフシール逆止機能を十分に発揮できるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の実施の形態を示す平面図である。
図2】この発明の実施形態を示す注出ノズルの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下にこの発明の実施形態を図1、2に示すところに基づいて説明する。
図1に示すところにおいて、1はフィルム状注出ノズルを示し、このフィルム状注出ノズル1は、前述したセルフシール逆止機能を発揮して、包装袋本体2内への外気の進入を確実に阻止するべく機能する。
【0016】
ここで、相互に重ね合わせた二枚の、または半折りした一枚の積層フィルムからなる平坦な薄肉の注出ノズルフィルムは、一軸もしくは二軸延伸ベースフィルム層と、このベースフィルム層を表裏両面側から挟む、中間層を介在させることも可とするシーラント層との積層構造により、ベースフィルム層は、たとえば、8〜30μmの厚さの、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、ナイロン樹脂フィルム(NY)、エチレンビニルアルコール共重合樹脂フィルム(EVOH)などにて構成することができ、シーラント層は、10〜50μm厚さの、無延伸のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、メタロセン触媒ポリエチレン、アイオノマー、エチレンアクリル酸エチル共重合樹脂などにより構成することができる。
【0017】
ところで、ベースフィルム層の厚みを8μm未満としたときは、各種のバリア性が不足することがあり、一方、30μmを超える厚みとしたときは、ノズルフィルムの曲げ強さが大きくなりすぎて、被包装物の注出の停止後の、注出通路の密着性、いいかえればセルフシール逆止機能が損なわれるおそれがある。
【0018】
また、シーラント層については、それが10μm未満の厚さでは、十分な融着強度を確保できないおそれがあり、50μmを越えると、ノズルフィルムの曲げ強さが大きくなりすぎるおそれがある。
【0019】
なお、ノズルフィルムの厚みが、合計で補償される限りは、ベースフィルム層およびシーラント層の厚みを種々の変更することができる。また、ノズルフィルムは、所要の物性の中間層を介在させることも可能であるが、薄くて腰の弱い、平坦度の高いものほど、フィルム状注出ノズルのセルフシール逆止機能を向上させることができる。
【0020】
以上に述べたようなノズルフィルムは、周縁部分を基端部分を除いて図1に斜線を施して示すように融着し、中央部分に非融着の注出通路3を区画することで、フィルム状注出ノズル1とされる。
【0021】
フィルム状注出ノズル1は、先端が融着されているので、注出通路3を開口させるに当たっては、先端融着部分を、Vノッチ4その他に始点として、引裂き誘導疵5に沿って引裂き除去、切除することが必要になる。
なお、図示のフィルム状注出ノズル1では、被包装物の注出に際し、注出ノズル基端部分が被包装物の水頭圧を受けた場合に、フィルム状注出ノズル1の注出通路3の開放を容易にするため、表面側のノズルフィルムの端縁と、裏面側のノズルフィルムの端縁が位相差をもつように、凹凸形状とすることが好ましい。これによれば、表裏のノズルフィルム間に隙間を発生させることができるため、被包装物の注出に際して、その水頭圧によってフィルム状注出ノズル1の基端辺を容易に開放することができ、注出通路3内への液状の被包装物の流入が円滑となって、被包装物の注出に際するタイムラグをより効果的に抑制することができる。
【0022】
図1に示すように、包装袋本体2の上側シール部6に融着されて、その包装袋本体2の頂部から斜め上方へ突出されるフィルム状注出ノズル1は、少なくとも引裂き誘導疵5の近傍部分の外表面に、袋内の被包装物の種類に応じた撥水もしくは撥油処理を施すことで液切れ性を高めることができるが、作業性の観点から、フィルム状注出ノズル1の、いわゆる縦シール部6への融着部となる該注出ノズル1の基端部分を除いて、大部分の外表面領域に、所要の撥水もしくは撥油処理を施すことが好ましい。
【0023】
図1に示すところにおいて、包装袋本体2の斜線を施して示す部分は、間欠的に施される包装袋本体2の、内表面シーラント層どうしの、たとえば0.5〜5.0mm幅の側部シール部7を示す。
【0024】
上述したようにして上部シール部6に融着されるフィルム状注出ノズル1には、図にドットを施して示すような、通常の融着部の半分以下の融着強度をもつ、低温融着になる仮封止部8を設けることもできる。
この仮封止部8は、高温殺菌した被包装物(50〜100℃)が、注出通路3内へ入り込んで、該注出通路3を膨満変形等させて、ノズルフィルムに永久変形が生じるのを防止し、セルフシール逆止機能の発揮を十分に担保するべく機能する。
【0025】
ところで、フィルム状注出ノズル1の外表面への撥水処理としては、シリコーンオイルやフッ素系樹脂、アクリル系樹脂もしくはアミド系樹脂からなる撥水コート剤の塗布層を設けることができ、撥油処理としては、シリコーン樹脂やテフロン(登録商標)樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂などの撥油コート剤の塗布層を設けることができる。そしてさらに、これらの樹脂に、ウレタン系、アクリル系、エステル系、硝化綿系、アミド系、塩ビ系、ゴム系、スチレン系、オレフィン系、塩酸ビ系、セルロース系、フェノール系などの樹脂をバインダーとして添加することもできる。
【0026】
そしてこの発明では、包装袋本体2に上述したようにして融着されるフィルム状注出ノズル1への静電気の帯電を防止して、液切れ性の低下を防止するべく、図2にフィルム状注出ノズル1の横断面図を示すように、表裏面側のそれぞれのベースフィルム層9、9−1や、シーラント層10、11、10−1、11−1またはドライラミネート等の図示しない接着剤に、一般的に用いられているカーボン、塩化亜鉛、塩化錫、金属塩等の導電材料を練り込む方法や、各層間にサンドイッチ状にコーティングする方法、またはベースフィルム層やシーラント層に蒸着させる方法により帯電防止処理を施す。
なお、図中12は、撥水もしくは撥油処理層を示す。
【0027】
以上に述べたところにおいて、各種の融着、融着部、融着域、シール部等は、たとえばヒートシール、高周波シールまたはインパルスシール等によって行うことができる。
【0028】
さらに、図1に示すところにおいて、より好ましくは、フィルム状注出ノズル1の、上部シール部6への融着を、たとえば広幅の図にメッシュで示すローレット状融着域13と、上部シール部6の、被包装物の収納スペース側に最も近接して位置する狭幅の筋状融着域、いいかえれば狭幅のベタシール域14とで行う。
このことによれば、ベタシール域のみによって融着を行う従来技術に比し、フィルム状注出ノズル1、ひいてはノズルフィルムそれ自体の剛性、いいかえれば腰度を有効に低下させることができる。そのため、被包装物の注出性およびそれの注出後の注出通路内の被包装物の包装袋本体2内への戻流が十分円滑になり、結果として、被包装物の注出性および液切れ性が高まり、被包装物の所要位置への適切なる注出が可能となる。また、被包装物の不測の滴下、付着等のおそれをより有効に取り除くことができる。
そしてこれによってもまた、フィルム状注出ノズルのセルフシール逆止機能は十分に担保されることになる。
【0029】
以上この発明を図面に示すところに基づいて説明したが、各種の融着、融着部、融着域およびシール部、仮封止部等は、ヒートシールをもって融着接合させることもできる。
【符号の説明】
【0030】
1 フィルム状注出ノズル
2 包装袋本体
3 注出通路
4 Vノッチ
5 引裂き誘導疵
6 上部シール部
7 側部シール部
8 仮封止部
9、9−1 ベースフィルム層
10、10−1 シーラント層
11、11−1 シーラント層
12 撥水もしくは撥油処理層
13 ローレット状融着域
14 ベタシール域
図1
図2