特開2016-193845(P2016-193845A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-193845(P2016-193845A)
(43)【公開日】2016年11月17日
(54)【発明の名称】ポリフェノール吸収促進用物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/97 20060101AFI20161021BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20161021BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20161021BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161021BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20161021BHJP
【FI】
   A61K8/97
   A61Q19/00
   A61K36/185
   A61P43/00 105
   A61P1/00
   A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-73640(P2015-73640)
(22)【出願日】2015年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】友澤 寛
(72)【発明者】
【氏名】鍔田 仁人
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083CC03
4C088AB12
4C088AB99
4C088AC04
4C088MA07
4C088NA14
4C088ZA66
4C088ZC01
4C088ZC75
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、日常的に使用可能であり、かつ、腸管内へのポリフェノールの吸収を促進することができる天然物由来成分を有効成分として含有する組成物又は剤を提供することにある。
【解決手段】
上記目的は、パパイヤ及びマキベリーを含有する、化粧用組成物、ポリフェノール吸収促進用組成物、ポリフェノール吸収促進剤及びポリフェノール腸内吸収促進剤により解決される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パパイヤ及びマキベリーを含有する化粧用組成物。
【請求項2】
パパイヤ及びマキベリーを含有するポリフェノール吸収促進用組成物。
【請求項3】
パパイヤ及びマキベリーを含有するポリフェノール吸収促進剤。
【請求項4】
パパイヤ及びマキベリーを含有するポリフェノール腸内吸収促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェノール吸収促進作用を示す組成物及び剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェノールは、天然物、特に植物に含まれる有用な物質として注目を集め、その研究開発が続けられている。ポリフェノールには、様々な種類が知られており、例えば、ゴマリグナン類、クルクミン、クマリン、フラボノイドなどが挙げられる。フラボノイドとしては、例えば、イソフラボン、カテキン、タンニン、アントシアニン、プロアントシアニジン、ルチン、ケルセチン、レスベラトロールなどが挙げられる。
【0003】
これらのポリフェノールは種々の生理活性を有することが知られている。例えば、カテキンは体脂肪蓄積抑制作用や体内脂肪燃焼促進作用を有することが知られており、ソバの全草などに含まれるルチン及びケルセチンは抗酸化作用を有することが知られている。
【0004】
しかしながら、ポリフェノールは高分子量のものが多く、生体内への吸収性が小さい傾向があり、摂取されたポリフェノールが生体内に取り込まれる量は非常に少ない。また、ポリフェノールの生体内への吸収の機序もポリフェノールの種類により様々であり、特に、カテキン、プロアントシアニジン、ケルセチンなどの水溶性ポリフェノールは、ヒトや哺乳動物の腸管から吸収されにくいという欠点があり、カテキンなどの吸収率は5%以下であるとされている(非特許文献1を参照)。
【0005】
このようなポリフェノールの生体内吸収性が小さいことを改善するものとして、特許文献1にはクエン酸塩またはクエン酸を活性成分とするポリフェノール吸収促進剤が記載されている。また、特許文献2には血中ポリフェノール濃度を高め得る天然物由来成分を含有するポリフェノール吸収促進用組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−37258号公報
【特許文献2】特開2013−135655号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Catterall Fら、Xenobiotica、33、743−753(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載のポリフェノール吸収促進剤は、有機化合物を有効成分とすることから、摂取量によっては副作用が生じ、日常的な使用に適さないものである。また、特許文献2に記載のポリフェノール吸収促進用組成物は天然物由来成分を含有するものであるものの、ポリフェノールの腸管内への吸収促進作用については定かではない。
【0009】
そこで、本発明は、日常的に使用可能であり、かつ、腸管内へのポリフェノールの吸収を促進することができる天然物由来成分を有効成分として含有する組成物又は剤を提供することを発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題について鋭意研究を積み重ね、種々の物質についてポリフェノールの吸収促進性を調べてみた結果、驚くべきことにパパイヤ及びマキベリーはそれら単独ではほとんど作用を示さないものの、これらを組み合わせることによって、相加的よりもむしろ相乗的にポリフェノールの腸管吸収を促進することを見出した。そして、ポリフェノール吸収促進用組成物及びポリフェノール吸収促進剤として、パパイヤとマキベリーとを含有する組成物及び剤の創作に成功した。本発明は、かかる知見や成功例に基づいて完成された発明である。
【0011】
したがって、本発明によれば、パパイヤ及びマキベリーを含有する化粧用組成物が提供される。
【0012】
本発明の別の側面によれば、パパイヤ及びマキベリーを含有するポリフェノール吸収促進用組成物が提供される。
【0013】
本発明の別の側面によれば、パパイヤ及びマキベリーを含有するポリフェノール吸収促進剤が提供される。
【0014】
本発明の別の側面によれば、パパイヤ及びマキベリーを含有するポリフェノール腸内吸収促進剤が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、パパイヤ及びマキベリーを含有するものであることにより、日常的に使用可能であり、かつ、腸管内へのポリフェノールの吸収を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例に記載の腸管サック法による内液中のポリフェノール量(カテキン当量)を示した図である。*は群間比較で危険率5%での有意差があったことを示す。グラフは平均値を、バーは標準偏差を示す。
図2図2は、実施例に記載の腸管サック法による内液中のポリフェノール量(カテキン当量)について、各被験物質群の量をコントロール群の量で引いた値についてグラフ化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明は、パパイヤ及びマキベリーを有効成分として含有することによりポリフェノール吸収促進作用を示す、化粧用組成物、ポリフェノール吸収促進用組成物、ポリフェノール吸収促進剤及びポリフェノール腸内吸収促進剤である。本明細書では、本発明を総称して、「本発明の組成物及び剤」とよぶ。
【0018】
パパイヤは熱帯アメリカ原産の果物として知られる、パパイヤ属植物であれば特に限定されず、例えば、Carica papayaが挙げられる。また、マキベリーは、南アメリカのチリ南部原産のベリー系の植物として知られる、アリストテリア属植物であれば特に限定されず、例えば、Aristotelia Chilensisが挙げられる。パパイヤ及びマキベリーは、全体を用いてもいずれの部位を用いても良いが、種子を除く部位が好ましく用いられ、果実の種子を除く部位である果皮及び果肉部(以下、単に果実部とよぶ。)がより好ましく用いられる。
【0019】
パパイヤ及びマキベリーは、収穫直後のもの又は収穫後直ちに処理されたものであることが好ましい。処理までに時間を要する場合、パパイヤ及びマキベリーの変質を防ぐために低温貯蔵などの当業者が通常用いる貯蔵手段により貯蔵することが好ましい。
【0020】
パパイヤ及びマキベリーは、これらの加工物であってもよい。パパイヤ及びマキベリーの加工物としては、例えば、パパイヤ及びマキベリーの乾燥粉末、パパイヤ及びマキベリーの細片化物及びその乾燥粉末、パパイヤ及びマキベリーの搾汁及びその乾燥粉末、パパイヤ及びマキベリーの抽出物及びその乾燥粉末などが挙げられるが、これらに限定されない。ただし、加工、貯蔵、運搬などの容易性や使用形態の汎用性といった観点から、最終的に乾燥粉末の形態をしていることが好ましい。例えば、マキベリーについてはマキベリーの果実部の乾燥粉末が好ましく、パパイヤについてはパパイヤ抽出物及びその乾燥粉末であることが好ましい。
【0021】
例えば、パパイヤ及びマキベリーを乾燥粉末化するには従来公知の方法を用いることができる。そのような方法としては、パパイヤ及びマキベリーに対して、乾燥処理及び粉砕処理を組み合わせた方法を用いることができる。乾燥処理及び粉砕処理はいずれを先に行ってもよいが、乾燥処理を先に行うことが好ましい。乾燥粉末化は、この方法に、さらに必要に応じて殺菌処理などの処理から選ばれる1種又は2種以上の処理を組み合わせてもよい。また、粉砕処理を行う回数は1回又は2回以上の処理を組み合わせてもよいが、粗粉砕処理を行った後に、より細かく粉砕する微粉砕処理を組み合わせることが好ましい。
【0022】
殺菌処理は当業者に通常知られている処理であれば特に限定されないが、例えば、温度、圧力、電磁波、薬剤などを用いて物理的又は化学的に微生物を殺滅させる処理であるということができる。乾燥処理及び粉砕処理に追加して殺菌処理を行う場合、殺菌処理は、乾燥処理の後か、粉砕処理の前又は後に行われることが好ましい。
【0023】
乾燥処理は特に限定されないが、例えば、パパイヤ及びマキベリーの水分含量が10%以下、好ましくは5%以下となるように乾燥する処理が挙げられる。乾燥処理は、例えば、熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、凍結乾燥などの当業者に公知の任意の方法により行われ得る。加熱による乾燥は、例えば、40℃〜140℃、好ましくは80℃〜130℃にて加温によりパパイヤ及びマキベリーが変色しない温度及び時間で行われ得る。
【0024】
粉砕処理は特に限定されないが、例えば、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などの粉砕用の機器や器具などを用いて、当業者が通常使用する任意の方法により植物体を粉砕する処理が挙げられる。粉砕されたパパイヤ及びマキベリーは、必要に応じて篩にかけられ、例えば、30〜250メッシュを通過するものをパパイヤ及びマキベリーの粉末として用いることが好ましい。粒径が250メッシュ通過のもの以下とすることで、さらなる加工時にパパイヤ及びマキベリーの粉末が取り扱いやすくなり、粒径が30メッシュ通過以上のものとすることで、パパイヤ及びマキベリーの粉末と他の素材との均一な混合が容易になる。
【0025】
具体的な乾燥粉末化の方法としては、例えば、パパイヤ及びマキベリーを切断した後、水分含量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥し、その後粉砕する方法が挙げられる。この他にも、例えば、パパイヤ及びマキベリーを切断した後、揉捻し、その後、乾燥し、粉砕する方法;パパイヤ及びマキベリーを乾燥し、粗粉砕した後、110℃以上で加熱し、さらに微粉砕する方法などが挙げられる。
【0026】
パパイヤ及びマキベリーを細片化する方法は特に限定されないが、例えば、スライス、破砕、細断などの当業者が植物体を細片化する際に通常使用する方法を用いることができる。細片化の一例として、スラリー化してもよい。スラリー化は、パパイヤ及びマキベリーをミキサー、ジューサー、ブレンダー、マスコロイダーなどにかけ、パパイヤ及びマキベリーをどろどろした粥状(液体と固体との懸濁液)にすることにより行う。
【0027】
パパイヤ及びマキベリーを搾汁する方法は特に限定されないが、例えば、パパイヤ及びマキベリー又はその細片化物を圧搾する方法、パパイヤ及びマキベリーの細片化物を遠心やろ過する方法などを挙げることができる。具体的な搾汁方法の例としては、ミキサー、ジューサーなどの機械的破砕手段によって搾汁し、必要に応じて、篩別、濾過などの手段によって粗固形分を除去することにより搾汁液を得る方法が挙げられる。
【0028】
パパイヤ及びマキベリーの抽出物(エキス)を得る方法は特に限定されないが、例えば、パパイヤ及びマキベリー又はその細片化物に、エタノール、水、含水エタノールなどの当業者が通常用いる抽出溶媒を加え、必要に応じて攪拌や加温して抽出する方法などを挙げることができる。抽出物は、必要に応じて濃縮してもよい。ただし、パパイヤ抽出物は、パパインなどのパパイヤ由来酵素を含有することが好ましい。
【0029】
パパイヤ及びマキベリーの抽出物を得る際に用いる抽出溶媒としては、例えば、水、有機溶媒、含水有機溶媒(含水エタノールなどの含水アルコール)が挙げられるが、これらに限定されない。水を溶媒に用いる場合には、温水又は熱水を用いてもよい。抽出に用いる有機溶媒としては、通常天然物成分を抽出するのに際して許容される有機溶媒が用いられ、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブタン、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,2−トリクロロエテンなどが挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で、又は2種以上を組合せて用いられ得る。これらの溶媒の中でも、熱水、含水エタノール及び含水プロピレングリコールが好ましく用いられる。
【0030】
パパイヤ及びマキベリーの抽出方法は、通常天然物成分を抽出するのに際して許容される方法であれば特に限定されないが、例えば、加温抽出法、超臨界流体抽出法などの固液抽出法が挙げられる。
【0031】
加温抽出法は、例えば、被験物質と溶媒とを接触させ、溶媒の沸点以下の温度などで処理して、被験物質に含まれる成分を溶媒に抽出する方法である。還流抽出法であってもよい。
【0032】
超臨界流体抽出法は、例えば、物質の気液の臨界点(臨界温度、臨界圧力)を超えた状態の流体である超臨界流体を用いて抽出を行う方法である。超臨界流体としては、二酸化炭素、エチレン、プロパン、亜酸化窒素(笑気ガス)などが挙げられるが、好ましくは二酸化炭素である。
【0033】
超臨界流体抽出法では、目的成分を超臨界流体によって抽出する抽出工程と、目的成分と超臨界流体を分離する分離工程とを行う。分離工程では、圧力変化による抽出分離、温度変化による抽出分離、吸着剤・吸収剤を用いた抽出分離のいずれを行ってもよい。
【0034】
エントレーナー添加法による超臨界流体抽出を行ってもよい。この方法は、抽出流体に、例えば、エタノール、プロパノール、n−ヘキサン、アセトン、トルエン、その他の脂肪族低級アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類を2〜20W/V%程度添加し、この流体を用いて超臨界流体抽出を行うことによって、目的とする抽出物の抽出溶媒に対する溶解度を飛躍的に上昇させる、又は分離の選択性を増強させる方法であり、効率的なパパイヤ及びマキベリーの抽出物を得ることができる。
【0035】
超臨界流体抽出法は、比較的低い温度で操作できるため、高温で変質・分解する物質にも適用できるという利点、抽出流体が残留しないという利点、溶媒の循環利用が可能であるため、脱溶媒工程などが省略でき、工程がシンプルになるという利点がある。
【0036】
パパイヤ及びマキベリーの抽出方法は、上述の抽出法以外に、液体二酸化炭素回分法、液体二酸化炭素還流法、超臨界二酸化炭素還流法などにより行ってもよい。また、複数の抽出方法を組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成のパパイヤ及びマキベリーの抽出物を得ることが可能となる。
【0037】
抽出により得られたパパイヤ及びマキベリーの抽出物は、限外濾過、吸着性担体(ダイヤイオンHP−20、Sephadex−LH20、キチンなど)を用いたカラム法、バッチ法などにより精製を行うことが安全性の面から好ましい。
【0038】
本発明において、有効成分として用いられるパパイヤ及びマキベリー並びにパパイヤ及びマキベリーの加工物は市販されているものを用いてもよく、例えば、後述する実施例に記載されているものが挙げられる。
【0039】
本発明の組成物及び剤は、パパイヤ及びマキベリーを含有することにより、後述する実施例によって実証されているとおり、腸管におけるポリフェノールの吸収を促進する作用を示す。
【0040】
本発明の組成物及び剤におけるパパイヤ及びマキベリーの含有量は、少なくともポリフェノール吸収促進作用を奏し得る有効量であれば、有効成分のみからなるものであってもよい。
【0041】
パパイヤ及びマキベリーの含有量は特に限定されず、例えば、パパイヤ抽出物及びマキベリー果実粉末の質量比([パパイヤ抽出物]:[マキベリー果実粉末])が1:0.001〜10であり、好ましくは1:0.01〜1であり、より好ましくは1:0.05〜0.5である。
【0042】
パパイヤ及びマキベリーの含有量の総量は、1日あたりの使用量として下限値をパパイヤ及びマキベリーの乾燥質量で、例えば、5mg以上、好ましくは6mg以上、より好ましくは7mg以上となるように設定することができる。また、1日あたりの使用量として上限値をパパイヤ及びマキベリーの乾燥質量で、例えば、2,000mg以下、好ましくは1,500mg以下、より好ましくは1,000mg以下となるように設定することができる。
【0043】
具体的には、有効成分の含有量は、1日あたりの使用量としてパパイヤ及びマキベリーの乾燥質量で、5〜5,000mgであり、好ましくは6〜2,000mgである。ただし、本発明の組成物及び剤がポリフェノール吸収促進作用を有する他の物質を含有する場合は、それに合わせてパパイヤ及びマキベリーの含有量を減らすなど適宜調整できる。
【0044】
本発明の組成物及び剤は、有効成分に加えて、適宜選択したその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、種々の賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、希釈剤、増量剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、添加剤、化粧品原料、医薬品原料などを挙げることができる。その他の成分の含有量は、本発明の組成物及び剤の利用形態などに応じて適宜選択することができる。
【0045】
本発明の組成物及び剤は、ポリフェノール吸収促進作用を示すことを目的とした種々の形態で利用することができ、例えば、経口用又は非経口用の形態とすることができる。本発明の組成物及び剤は、その形態に応じて、そのまま経口的又は非経口的に使用してもよいし、パパイヤ及びマキベリーを溶解するための溶媒などに溶解して経口的又は非経口的に使用してもよい。
【0046】
本発明の組成物及び剤の形態は特に限定されず、任意の形態とすることができる。経口用の組成物及び剤の形態としては、例えば、経口的な使用に適した形態、具体的には、顆粒状、粉末状、タブレット状、チュアブル状、カプセル状、液状、シロップ状などが挙げられる。
【0047】
非経口用の組成物及び剤の形態としては、例えば、非経口的な使用に適した形態、具体的には、ローション状、クリーム状、リキッド状、ファンデーション状、ミスト状、エマルション状、スプレー状、ムース状、ジェル状などが挙げられる。
【0048】
本発明の組成物及び剤の包装形態は特に限定されず、剤形などに応じて適宜選択できるが、例えば、PTPなどのブリスターパック;ストリップ包装;ヒートシール;アルミパウチ;プラスチックや合成樹脂などを用いるフィルム包装;バイアルなどのガラス容器;アンプルなどのプラスチック容器などが挙げられる。
【0049】
本発明の組成物及び剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、期待される作用効果が奏される限り特に限定はなく、ヒト以外の動物に対して適用することができる。本発明の組成物及び剤の使用者は特に限定されず、例えば、健常者であってもよいが、ポリフェノールによる生理活性が期待される者であることが好ましく、40歳以上の中高年者がより好ましい。本発明の組成物及び剤の使用頻度は特に限定されず、例えば、1週間に1度以上であり、好ましくは1週間に2度以上である。
【0050】
本発明の組成物及び剤におけるパパイヤ及びマキベリーの配合量は、その投与形態や剤形などによって適宜設定することができ、特に限定されない。例えば、パパイヤ及びマキベリーの総配合量は、全体を100質量部として、下限値は乾燥質量で、0.0005質量部以上、0.00025質量部以上、好ましくは0.001質量部以上と設定することができ、上限値は乾燥質量で、例えば、100質量部以下、好ましくは50質量部以下、より好ましくは10質量部以下と設定することができる。
【0051】
本発明の組成物及び剤は、有効成分に加えて、ポリフェノール吸収促進作用を示す第2の生理活性成分を含有することができる。このような第2の生理活性成分としては、これまでに知られているポリフェノール吸収促進作用を示すものであれば特に限定されない。例えば、特許文献1及び2に記載のポリフェノール吸収促進作用を示す組成物や剤の有効成分が挙げられる。パパイヤ及びマキベリー並びに第2の生理活性成分を含有することにより、本発明の組成物及び剤は、相乗的なポリフェノール吸収促進作用を示す組成物及び剤であり得る。第2の生理活性成分は、1種又は2種以上の成分であり得る。第2の生理活性成分の配合量は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されず、適宜調整される。
【0052】
本発明の組成物及び剤の製造方法は特に限定されず、使用態様に応じて当業者に知られる一般的な製造方法に準じて製造される。例えば、顆粒状や固形状のものについては、パパイヤ抽出物及びマキベリー果実粉末をそのまま又は上記のその他の成分や第2の生理活性成分と同時又は数段階に分けて混和したものを、流動層造粒法、攪拌造粒法、押出造粒法などの造粒方法に従って造粒して顆粒状とし、さらに打錠機などを用いる常法に従って圧縮成形することによって錠状に成形できる。
【0053】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【実施例】
【0054】
パパイヤ抽出物及びマキベリー果実粉末を含有する組成物が、格別顕著なポリフェノール吸収促進作用を有することを以下のとおりに実証した。
【0055】
(1)被験試料の調製
被験物質として市販のパパイヤ抽出物(タンパク質分解力価:NFPU/mg≧6,000)及びマキベリー果実粉末を用いた。
【0056】
30mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)は、トリスアミノメタン(Tris)3.63gを約800mLの純水に溶解した後、pHメーター(東亜DDK社)を用いて1N HClを滴下しながらpHを7.4に調製し、最後に1Lにフィルアップすることにより調製した。
【0057】
内液(30mM Tris−HCl、125mM NaCl、4mM KCl、10mM グルコース)(pH 7.4)は、NaCl 1.461g、KCl 0.059g及びグルコース0.3603gを30mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)に溶解し200mLとすることにより調製した。なお、使用時はウォーターバス(WATERBATH TM−1;アズワン社)で37℃にした。
【0058】
外液A(30mM Tris−HCl、125mM NaCl、4mM KCl、10mM グルコース)(pH 7.4)は、NaCl 3.653g、KCl 0.146g及びグルコース 0.9008gを30mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)に溶解し、500mLとすることにより調製した。
【0059】
試験当日、外液A 100mLにマキベリー果実粉末を0.5%(w/v)となるように入れ、均一に懸濁させた(外液B)。外液B 100mLを50mLごとに2つに分け、そのうちの1つにパパイヤ抽出物を溶液に対して5%(w/v)となるように入れ、均一に懸濁させた(外液C)。これにより、被験物質が何も入っていない外液A(コントロール群)と、0.5%(w/v)マキベリー果実粉末を含む外液B(マキベリー0.5%群)と、0.5%(w/v)マキベリー果実粉末及び5%(w/v)パパイヤ抽出物を含む外液C(マキベリー0.5%+パパイヤ抽出物5%群)とを調製した。外液A〜Cはサックを投入する1時間前から酸素飽和させた(医療用酸素ボンベ;福岡酸素社)。各溶液はウォーターバス(WATERBATH TM−1;アズワン社)で37℃にした。
【0060】
(2)実験動物
7週齢雄性SD系ラット(九動社)を2日間馴化させた。飼育環境として、照明時間は12時間とし、ケージは木材チップ(ソフトチップ;日本エスエルシー社)を床じきとしたポリカーボネイト製平底ケージ(W260×D420×H180mm;日本クレア社)を用い、1ケージあたりの収容個体数は2〜3匹とした。
【0061】
給餌方法は原則として自由摂取とした。飼料はMF固形飼料(オリエンタル酵母工業社)を用い、飲水は水道水を用いた。試験日の前日から試験開始まで16時間以上(24時間未満)絶食させた。
【0062】
(3)実験方法
雄性7週齢のSD系ラットを16時間以上絶食させ、麻酔下で放血死(安楽死)させた。直ちに、胃幽門部下の十二指腸から盲腸回盲弁上までの回腸を摘出し、生理食塩水(生食)で洗浄し、小腸全長を3等分に切断した。十二指腸部分を上部、回腸部分を下部、その中間部を中部とし、各部位とも5mLのシリンジを用いて内部を生食で洗浄した。各部位をそれぞれ5.0cmにカットした腸管を4つずつ作製した(1つは予備分とした)。すなわち、上部腸管、中部腸管及び下部腸管を1セットとして、4セット作製した。
【0063】
腸管をプラスチック製の楊枝で反転させ、内液 0.8〜1.0mLを入れ、両端を縫合糸(ネスコスーチャー(登録商標)絹製縫合糸GAO3EW;アルフレッサファーマ社)で結紮した腸管サックを作製した。酸素飽和させた外液A〜C 10mLを入れた50mL遠沈管に腸管サック(外液ごとに1セット)を外液に完全に浸るように吊るした。振盪培養器(BioShaker BR−43FL;タイテック社)を用いて、37℃で90rpm/minの条件下で30分間インキュベートした。培養後、腸管サックの内液を採取した後に、サック重量(内液採取前後)及びサック結紮部間の長さを測定した。なお、採取した内液は測定まで−30℃で冷凍保存し、後日、Folin−Denis法にて、内液中のポリフェノール量をカテキン当量として測定した。
【0064】
1.5mLエッペンチューブに採取した内液 50μL及びFolin試薬 50μLを加え、3分間室温で静置した。同じエッペンチューブに50μLの10%(w/v)炭酸ナトリウム水溶液を加え、1時間室温で、暗所にて静置した。13,000rpmで5分間遠心し、その上清 100μLを96ウェルプレートに移し、730nmの吸光度を測定した。
【0065】
また、未使用の内液に1.0%(w/v)となるようにカテキン一水和物(標準品;シグマ合同会社)を懸濁した原液を用いて、希釈段階液(0.2%から3倍公比で5段階)を作製して検量線を作成した。内液の吸光度を検量線に当てはめ、ポリフェノール量をカテキン当量として算出した。なお、ブランクは未使用の内液とした。
【0066】
算出されたポリフェノール量について、サック結紮部間の長さで除した値を、吸収ポリフェノール量として求めた。
【0067】
(4)統計処理
得られた吸収ポリフェノール量について、群ごとに腸管1セットの平均値(mean)及び標準偏差(S.D.)を算出した。検定は2群間比較(Fisher’s PLDE検定及び対応のないt検定)により、コントロール群と各被験物質群との間で、及び異なる被験物質群の間で比較を行った。有意水準は、危険率5%とした。
【0068】
(5)実験結果
各群の吸収ポリフェノール量の測定結果を図1及び図2に示す。図1及び図2が示すとおり、マキベリー果実粉末0.5%+パパイヤ抽出物5%群は、コントロール群及びマキベリー果実粉末0.5%群と比べて、有意に内液中のポリフェノール量が上昇した。この結果は、マキベリー果実粉末0.5%群はコントロール群に比べて有意な差がなかったことを考慮すれば、驚くべき結果である。これらの結果を踏まえて、雄性9週齢のSD系ラットを用いて、5%(w/v)パパイヤ抽出物(パパイヤ抽出物5%群)による内液中のポリフェノール量に与える影響を検証するために同様の試験を実施したところ、コントロール群と比べてパパイヤ抽出物5%群では内液中のポリフェノール量は増えたものの、有意な差ではなかった。このことより、マキベリー果実粉末単体ではほとんどポリフェノールは腸管に吸収されないが、パパイヤ抽出物を混合添加することによってポリフェノールの吸収性が高まることが示唆された。このメカニズムの詳細については未だ不明である。ただし、これらの結果からは、パパイヤ抽出物とマキベリー果実粉末とを組み合わせることによって、相加的よりもむしろ相乗的にポリフェノール吸収促進作用を示すことがわかった。
【0069】
なお、腸管のセット内では、上部(十二指腸から空腸上部)において他の小腸部位よりもポリフェノール吸収性が高いことが示された。
【0070】
参考文献:
(1)土屋ら:ラット反転小腸のブドウ糖吸収に関する研究−経時的観察法の開発−:日本消化器病学会誌、80(5)1138−1143、1983
(2)高木ら:ラット反転小腸におけるβ‐カロテンの吸収と代謝挙動:日本栄養・食糧学会誌、47(4)287−293、1994
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、ポリフェノール吸収促進作用を有するパパイヤ及びマキベリーの含有物が得られ、ポリフェノールによる生理活性を期待する者にとって有益な一般飲食品、特定保健用飲食品、栄養機能飲食品、保健機能飲食品、特別用途飲食品、栄養補助飲食品、健康補助飲食品、サプリメント、美容飲食品、その他の健康飲食品、医薬用部外品、化粧品、医薬品として利用できる。
図1
図2