【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明は、パパイヤ及びカムカムベリーを有効成分として含有することによりプロテアーゼ活性促進作用を示す、化粧用組成物、プロテアーゼ活性促進用組成物及びプロテアーゼ活性促進剤である。本明細書では、本発明を総称して、「本発明の組成物及び剤」とよぶ。
【0016】
パパイヤは熱帯アメリカ原産の果物として知られる、パパイヤ属植物であれば特に限定されず、例えば、
Carica papayaが挙げられる。また、カムカムベリーは、南アメリカの熱帯雨林原産のベリー系のフトモモ科植物であれば特に限定されず、例えば、
Myrciaria dubiaが挙げられる。パパイヤ及びカムカムベリーは、全体を用いてもいずれの部位を用いても良いが、種子を除く部位が好ましく用いられ、果実の種子を除く部位である果皮及び果肉部(以下、単に果実部とよぶ。)がより好ましく用いられる。
【0017】
パパイヤ及びカムカムベリーは、収穫直後のもの又は収穫後直ちに処理されたものであることが好ましい。処理までに時間を要する場合、パパイヤ及びカムカムベリーの変質を防ぐために低温貯蔵などの当業者が通常用いる貯蔵手段により貯蔵することが好ましい。
【0018】
パパイヤ及びカムカムベリーは、これらの加工物であってもよい。パパイヤ及びカムカムベリーの加工物としては、例えば、パパイヤ及びカムカムベリーの乾燥粉末、パパイヤ及びカムカムベリーの細片化物及びその乾燥粉末、パパイヤ及びカムカムベリーの搾汁及びその乾燥粉末、パパイヤ及びカムカムベリーの抽出物及びその乾燥粉末などが挙げられるが、これらに限定されない。ただし、加工、貯蔵、運搬などの容易性や使用形態の汎用性といった観点から、最終的に乾燥粉末の形態をしていることが好ましい。例えば、カムカムベリーについてはカムカムベリーの果実部の乾燥粉末が好ましく、パパイヤについてはパパイヤ抽出物及びその乾燥粉末であることが好ましい。
【0019】
例えば、パパイヤ及びカムカムベリーを乾燥粉末化するには従来公知の方法を用いることができる。そのような方法としては、パパイヤ及びカムカムベリーに対して、乾燥処理及び粉砕処理を組み合わせた方法を用いることができる。乾燥処理及び粉砕処理はいずれを先に行ってもよいが、乾燥処理を先に行うことが好ましい。乾燥粉末化は、この方法に、さらに必要に応じて殺菌処理などの処理から選ばれる1種又は2種以上の処理を組み合わせてもよい。また、粉砕処理を行う回数は1回又は2回以上の処理を組み合わせてもよいが、粗粉砕処理を行った後に、より細かく粉砕する微粉砕処理を組み合わせることが好ましい。
【0020】
殺菌処理は当業者に通常知られている処理であれば特に限定されないが、例えば、温度、圧力、電磁波、薬剤などを用いて物理的又は化学的に微生物を殺滅させる処理であるということができる。乾燥処理及び粉砕処理に追加して殺菌処理を行う場合、殺菌処理は、乾燥処理の後か、粉砕処理の前又は後に行われることが好ましい。
【0021】
乾燥処理は特に限定されないが、例えば、パパイヤ及びカムカムベリーの水分含量が10%以下、好ましくは5%以下となるように乾燥する処理が挙げられる。乾燥処理は、例えば、熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、凍結乾燥などの当業者に公知の任意の方法により行われ得る。加熱による乾燥は、例えば、40℃〜140℃、好ましくは80℃〜130℃にて加温によりパパイヤ及びカムカムベリーが変色しない温度及び時間で行われ得る。
【0022】
粉砕処理は特に限定されないが、例えば、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などの粉砕用の機器や器具などを用いて、当業者が通常使用する任意の方法により植物体を粉砕する処理が挙げられる。粉砕されたパパイヤ及びカムカムベリーは、必要に応じて篩にかけられ、例えば、30〜250メッシュを通過するものをパパイヤ及びカムカムベリーの粉末として用いることが好ましい。粒径が250メッシュ通過のもの以下とすることで、さらなる加工時にパパイヤ及びカムカムベリーの粉末が取り扱いやすくなり、粒径が30メッシュ通過以上のものとすることで、パパイヤ及びカムカムベリーの粉末と他の素材との均一な混合が容易になる。
【0023】
具体的な乾燥粉末化の方法としては、例えば、パパイヤ及びカムカムベリーを切断した後、水分含量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥し、その後粉砕する方法が挙げられる。この他にも、例えば、パパイヤ及びカムカムベリーを切断した後、揉捻し、その後、乾燥し、粉砕する方法;パパイヤ及びカムカムベリーを乾燥し、粗粉砕した後、110℃以上で加熱し、さらに微粉砕する方法などが挙げられる。
【0024】
パパイヤ及びカムカムベリーを細片化する方法は特に限定されないが、例えば、スライス、破砕、細断などの当業者が植物体を細片化する際に通常使用する方法を用いることができる。細片化の一例として、スラリー化してもよい。スラリー化は、パパイヤ及びカムカムベリーをミキサー、ジューサー、ブレンダー、マスコロイダーなどにかけ、パパイヤ及びカムカムベリーをどろどろした粥状(液体と固体との懸濁液)にすることにより行う。
【0025】
パパイヤ及びカムカムベリーを搾汁する方法は特に限定されないが、例えば、パパイヤ及びカムカムベリー又はその細片化物を圧搾する方法、パパイヤ及びカムカムベリーの細片化物を遠心やろ過する方法などを挙げることができる。具体的な搾汁方法の例としては、ミキサー、ジューサーなどの機械的破砕手段によって搾汁し、必要に応じて、篩別、濾過などの手段によって粗固形分を除去することにより搾汁液を得る方法が挙げられる。
【0026】
パパイヤ及びカムカムベリーの抽出物(エキス)を得る方法は特に限定されないが、例えば、パパイヤ及びカムカムベリー又はその細片化物に、エタノール、水、含水エタノールなどの当業者が通常用いる抽出溶媒を加え、必要に応じて攪拌や加温して抽出する方法などを挙げることができる。抽出物は、必要に応じて濃縮してもよい。ただし、パパイヤ抽出物は、パパインなどのパパイヤ由来酵素を含有することが好ましい。
【0027】
パパイヤ及びカムカムベリーの抽出物を得る際に用いる抽出溶媒としては、例えば、水、有機溶媒、含水有機溶媒(含水エタノールなどの含水アルコール)が挙げられるが、これらに限定されない。水を溶媒に用いる場合には、温水又は熱水を用いてもよい。抽出に用いる有機溶媒としては、通常天然物成分を抽出するのに際して許容される有機溶媒が用いられ、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブタン、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,2−トリクロロエテンなどが挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で、又は2種以上を組合せて用いられ得る。これらの溶媒の中でも、熱水、含水エタノール及び含水プロピレングリコールが好ましく用いられる。
【0028】
パパイヤ及びカムカムベリーの抽出方法は、通常天然物成分を抽出するのに際して許容される方法であれば特に限定されないが、例えば、加温抽出法、超臨界流体抽出法などの固液抽出法が挙げられる。
【0029】
加温抽出法は、例えば、被験物質と溶媒とを接触させ、溶媒の沸点以下の温度などで処理して、被験物質に含まれる成分を溶媒に抽出する方法である。還流抽出法であってもよい。
【0030】
超臨界流体抽出法は、例えば、物質の気液の臨界点(臨界温度、臨界圧力)を超えた状態の流体である超臨界流体を用いて抽出を行う方法である。超臨界流体としては、二酸化炭素、エチレン、プロパン、亜酸化窒素(笑気ガス)などが挙げられるが、好ましくは二酸化炭素である。
【0031】
超臨界流体抽出法では、目的成分を超臨界流体によって抽出する抽出工程と、目的成分と超臨界流体を分離する分離工程とを行う。分離工程では、圧力変化による抽出分離、温度変化による抽出分離、吸着剤・吸収剤を用いた抽出分離のいずれを行ってもよい。
【0032】
エントレーナー添加法による超臨界流体抽出を行ってもよい。この方法は、抽出流体に、例えば、エタノール、プロパノール、n−ヘキサン、アセトン、トルエン、その他の脂肪族低級アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類を2〜20W/V%程度添加し、この流体を用いて超臨界流体抽出を行うことによって、目的とする抽出物の抽出溶媒に対する溶解度を飛躍的に上昇させる、又は分離の選択性を増強させる方法であり、効率的なパパイヤ及びカムカムベリーの抽出物を得ることができる。
【0033】
超臨界流体抽出法は、比較的低い温度で操作できるため、高温で変質・分解する物質にも適用できるという利点、抽出流体が残留しないという利点、溶媒の循環利用が可能であるため、脱溶媒工程などが省略でき、工程がシンプルになるという利点がある。
【0034】
パパイヤ及びカムカムベリーの抽出方法は、上述の抽出法以外に、液体二酸化炭素回分法、液体二酸化炭素還流法、超臨界二酸化炭素還流法などにより行ってもよい。また、複数の抽出方法を組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成のパパイヤ及びカムカムベリーの抽出物を得ることが可能となる。
【0035】
抽出により得られたパパイヤ及びカムカムベリーの抽出物は、限外濾過、吸着性担体(ダイヤイオンHP−20、Sephadex−LH20、キチンなど)を用いたカラム法、バッチ法などにより精製を行うことが安全性の面から好ましい。
【0036】
本発明において、有効成分として用いられるパパイヤ及びカムカムベリー並びにパパイヤ及びカムカムベリーの加工物は市販されているものを用いてもよく、例えば、後述する実施例に記載されているものが挙げられる。
【0037】
本発明の組成物及び剤は、パパイヤ及びカムカムベリーを含有することにより、後述する実施例によって実証されているとおり、脂肪分を含まないよう調製されたカゼインに対するプロテアーゼ活性を促進する作用を示す。本発明の組成物及び剤におけるプロテアーゼ活性促進作用の程度は特に限定されないが、例えば、後述する実施例に記載のたん白消化力の測定によって、たん白消化力がパパイヤ抽出物単独よりも高い程度、好ましくはたん白消化力が55,000単位/g以上、より好ましくはたん白消化力が58,000単位/g以上、さらに好ましくはたん白消化力が60,000単位/g以上、なおさらに好ましくは62,000単位/g以上である。
【0038】
また、本発明の組成物及び剤は、パパイヤ及びカムカムベリーを含有することにより、プロテアーゼ活性促進作用を通じて、栄養吸収促進剤、タンパク質分解剤、タンパク質活性調節剤、皮膚老化抑制剤、皮膚外用剤などの態様を採り得る。
【0039】
本発明の組成物及び剤におけるパパイヤ及びカムカムベリーの含有量は、少なくともプロテアーゼ活性促進作用を奏し得る有効量であれば、有効成分のみからなるものであってもよい。
【0040】
パパイヤ及びカムカムベリーの含有量は特に限定されず、例えば、パパイヤ抽出物及びカムカムベリー果実粉末の質量比([パパイヤ抽出物]:[カムカムベリー果実粉末])が1:0.001〜1であり、好ましくは1:0.005〜0.5であり、より好ましくは1:0.01〜0.2である。
【0041】
パパイヤ及びカムカムベリーの含有量の総量は、1日あたりの使用量として下限値をパパイヤ及びカムカムベリーの乾燥質量で、例えば、5mg以上、好ましくは10mg以上、より好ましくは15mg以上となるように設定することができる。また、1日あたりの使用量として上限値をパパイヤ及びカムカムベリーの乾燥質量で、例えば、2,000mg以下、好ましくは1,500mg以下、より好ましくは1,000mg以下となるように設定することができる。
【0042】
具体的には、有効成分の含有量は、1日あたりの使用量としてパパイヤ及びカムカムベリーの乾燥質量で、5〜5,000mgであり、好ましくは10〜2,000mgである。ただし、本発明の組成物及び剤がプロテアーゼ活性促進作用を有する他の物質を含有する場合は、それに合わせてパパイヤ及びカムカムベリーの含有量を減らすなど適宜調整できる。
【0043】
本発明の組成物及び剤は、有効成分に加えて、適宜選択したその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、種々の賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、希釈剤、増量剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、添加剤、化粧品原料、医薬品原料などを挙げることができる。その他の成分の含有量は、本発明の組成物及び剤の利用形態などに応じて適宜選択することができる。
【0044】
本発明の組成物及び剤は、プロテアーゼ活性促進作用を示すことを目的とした種々の形態で利用することができ、例えば、経口用又は非経口用の形態とすることができる。本発明の組成物及び剤は、その形態に応じて、そのまま経口的又は非経口的に使用してもよいし、パパイヤ及びカムカムベリーを溶解するための溶媒などに溶解して経口的又は非経口的に使用してもよい。
【0045】
本発明の組成物及び剤の形態は特に限定されず、任意の形態とすることができる。経口用の組成物及び剤の形態としては、例えば、経口的な使用に適した形態、具体的には、顆粒状、粉末状、タブレット状、チュアブル状、カプセル状、液状、シロップ状などが挙げられる。
【0046】
非経口用の組成物及び剤の形態としては、例えば、非経口的な使用に適した形態、具体的には、ローション状、クリーム状、リキッド状、ファンデーション状、ミスト状、エマルション状、スプレー状、ムース状、ジェル状などが挙げられる。
【0047】
本発明の組成物及び剤の包装形態は特に限定されず、剤形などに応じて適宜選択できるが、例えば、PTPなどのブリスターパック;ストリップ包装;ヒートシール;アルミパウチ;プラスチックや合成樹脂などを用いるフィルム包装;バイアルなどのガラス容器;アンプルなどのプラスチック容器などが挙げられる。
【0048】
本発明の組成物及び剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、期待される作用効果が奏される限り特に限定はなく、ヒト以外の動物に対して適用することができる。本発明の組成物及び剤の使用者は特に限定されず、例えば、健常者であってもよいが、プロテアーゼによる生理活性が期待される者であることが好ましく、40歳以上の中高年者がより好ましい。本発明の組成物及び剤の使用頻度は特に限定されず、例えば、1週間に1度以上であり、好ましくは1週間に2度以上である。
【0049】
本発明の組成物及び剤におけるパパイヤ及びカムカムベリーの配合量は、その投与形態や剤形などによって適宜設定することができ、特に限定されない。例えば、パパイヤ及びカムカムベリーの総配合量は、全体を100質量部として、下限値は乾燥質量で、0.0001質量部以上、0.001質量部以上、好ましくは0.003質量部以上と設定することができ、上限値は乾燥質量で、例えば、100質量部以下、好ましくは50質量部以下、より好ましくは10質量部以下と設定することができる。
【0050】
本発明の組成物及び剤は、有効成分に加えて、プロテアーゼ活性促進作用を示す第2の生理活性成分を含有することができる。このような第2の生理活性成分としては、これまでに知られているプロテアーゼ活性促進作用を示すものであれば特に限定されない。例えば、特許文献1に記載のプロテアーゼ活性促進作用を示す組成物や剤の有効成分が挙げられる。パパイヤ及びカムカムベリー並びに第2の生理活性成分を含有することにより、本発明の組成物及び剤は、相乗的なプロテアーゼ活性促進作用を示す組成物及び剤であり得る。第2の生理活性成分は、1種又は2種以上の成分であり得る。第2の生理活性成分の配合量は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されず、適宜調整される。
【0051】
本発明の組成物及び剤の製造方法は特に限定されず、使用態様に応じて当業者に知られる一般的な製造方法に準じて製造される。例えば、顆粒状や固形状のものについては、パパイヤ抽出物及びカムカムベリー果実粉末をそのまま又は上記のその他の成分や第2の生理活性成分と同時又は数段階に分けて混和したものを、流動層造粒法、攪拌造粒法、押出造粒法などの造粒方法に従って造粒して顆粒状とし、さらに打錠機などを用いる常法に従って圧縮成形することによって錠状に成形できる。
【0052】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【実施例】
【0053】
パパイヤ抽出物及びカムカムベリー果実粉末を含有する組成物が、格別顕著なプロテアーゼ活性促進作用を有することを以下のとおりに実証した。
【0054】
(1)被験物質
被験物質として市販のパパイヤ抽出物(タンパク質分解力価:NFPU/mg≧6,000)及びカムカムベリー果実粉末を用いた。
【0055】
(2)チロシン検量線の作成
チロシンを105℃で3時間乾燥させた後、0.500gを正確に量り、0.2N 塩酸を加えて溶解し、正確に500mlとしたものを、チロシン標準溶液とした。このチロシン標準溶液 100μl、200μl、300μl及び400μlを正確に量り、0.2N 塩酸で10mlにメスアップして、検量線試液とした。
【0056】
0.2N 塩酸及び検量線試液の各溶液 2mlに0.55M 炭酸ナトリウム 5ml、Foline試薬 1mlを加え、37℃で30分間インキュベートした。ここで、Foline試薬はタングステン酸ナトリウム 5gとリンモリブテン酸 1gを純水 50mlに溶解し、リン酸 2.5mlを加え還流抽出後、200mLにメスアップすることによって調製した。試験は繰返し数2で実施した。
【0057】
96ウェルプレートに200μlずつ移し、660nmにおけるそれぞれの吸光度A
0、A
1、A
2、A
3及びA
4を測定した。ここで、A
0、A
1、A
2、A
3及びA
4のチロシン濃度は、それぞれ0、10、20、30及び40μg/mlである。
【0058】
測定値について、縦軸に吸光度差(A
n−A
0)、横軸に各溶液のチロシン濃度(μg/ml)をとり、検量線を作成した。得られた検量線から吸光度差1.000に対するチロシン量([F]μg/ml)を算出した。
【0059】
(3)たん白消化力の測定
カゼイン溶液は次のようにして調製した。すなわち、カゼイン(ウシ乳由来(Hammarsten処方);和光純薬工業社) 約1gを精密に量り、105℃で2時間インキュベートした後、乾燥重量を測定した。得られた乾燥カゼイン 1.20g相当を精密に量り、0.05M リン酸一水素二ナトリウム 160mlを加え、水浴中で加温して溶解した(40℃、約15分)。1M 塩酸を用いてpH7.5に調製し、超純水で200mlにメスアップすることにより、カゼイン溶液を調製した。
【0060】
タンパク沈殿溶液として、0.11M トリクロロ酢酸、0.22M 酢酸ナトリウム及び0.33M 酢酸を含有する溶液を調製した。
【0061】
酵素希釈溶液として、0.01M NaCl、0.002M 酢酸カルシウム及び0.002M 硫酸カルシウムを含有する溶液を調製した。
【0062】
カゼイン溶液 5mlを37℃で10分間インキュベートし、被験試料溶液 1mlを加え、ただちに振り混ぜた。得られた溶液を37℃で10分間インキュベートし、タンパク沈殿溶液 5mlを加え、37℃、30分間でインキュベートした後、ひだ折りにしたろ紙(No.5B:φ110mm;アドバンテック社)を用いてろ過した。
【0063】
また、ブランクとして試料溶液 1mlにタンパク沈殿溶液 5mlを加えて混合後、カゼイン溶液 5mlを添加したものを調製し、37℃、30分間でインキュベートした後、ひだ折りにしたろ紙(No.5B:φ110mm)を用いてろ過した。
【0064】
ろ液 2mlに0.55M 炭酸ナトリウム 5ml及びFoline試薬 1mlを加え、37℃で30分間インキュベートした。96ウェルプレートにインキュベート後の溶液を200μLずつ移し、660nmの吸光度(A
T)を測定した。また、ブランクにおける吸光度をA
Bとした。
【0065】
得られた吸光度に基づいて、以下の式を用いてたん白消化力を算出した:
たん白消化力(単位/g)=(A
T−A
B)×F×(反応溶液の量)×(1/10)×(1/W)
F:チロシン検量線より求めた吸光度差が1.000のときのチロシン量(μg/ml)
反応溶液:カゼイン溶液+被験試料溶液+タンパク沈殿溶液
W:反応溶液中の試料の量(g)
【0066】
(4)試験1:パパイヤ抽出物の濃度検討
パパイヤ抽出物を200mg/mLとなるように酵素希釈溶液に溶解し、0.0128、0.064、0.32、1.6、8及び40mg/mLに希釈して被験試料溶液を得た(公比5)。この被験試料溶液を用いて、たん白消化力を測定した。
【0067】
試験に適切なパパイヤ抽出物濃度を検討するため、0.0128〜200mg/mLに調製した被験試料溶液を用いて試験を実施した(n=1)。測定結果を表1に示す。表1が示すとおり、たん白消化力は0.32mg/mLにおいて最も高くなり、1.6mg/mL以上では、濃度依存的に低くなった。よって、以下の試験に用いるパパイヤ抽出物濃度は0.32mg/mLとした。
【0068】
【表1】
【0069】
(5)試験2:パパイヤ抽出物及びカムカムベリー果実粉末のたん白消化力
以下に調製したパパイヤ抽出物溶液と各濃度のカムカムベリー果実粉末溶液とを等量混合し、被験試料溶液とした。パパイヤ抽出物溶液は、パパイヤ抽出物を6.4mg/mLとなるように酵素希釈溶液に溶解し、640μg/mLに希釈した。カムカムベリー果実粉末溶液は、カムカム果実粉末を6.4mg/mLとなるように酵素希釈溶液に溶解し、2.56、6.4、12.8及び64μg/mLとなるように希釈した。
【0070】
パパイヤ抽出物溶液 320μg/mLとカムカムベリー果実粉末溶液とを組み合わせた被験試料溶液についてたん白消化力を測定した(n=3)。試験結果を
図1に示す。驚くべきことに、パパイヤ抽出物溶液と組み合わせるべきカムカムベリー果実粉末溶液の濃度が1.28及び3.2μg/mLの場合はパパイヤ抽出物溶液単独の場合と同等又はそれ以下であったが、カムカムベリー果実粉末溶液の濃度が6.4μg/mL以上である場合、パパイヤ抽出物溶液単独の場合より約1.2倍のたん白消化力が得られた。これらの結果からは、パパイヤ抽出物とカムカムベリー果実粉末とを組み合わせることによって、相加的よりもむしろ相乗的にたん白消化力が向上することが示された。
【0071】
参考文献:
(1)中央薬事審議会第523号通知による活性測定法;食品製造用プロテアーゼおよびパパイン製剤のタンパク消化力測定法の検討
(2)日本公定書協会編:改訂かぜ薬・解熱鎮痛薬試験法(付録2)〜胃腸薬の制酸力・pH試験法及び消化力試験法とその解説〜