【解決手段】多孔質フルオロポリマー支持体、及び架橋結合されたポリマー網目構造を含有する被覆を含む、親水性複合多孔質膜であって、多孔質フルオロポリマー支持体を、溶媒、架橋剤、光開始剤、及び重合された1,5−シクロオクタジエン繰返し単位からなる主鎖を含み、繰返し単位の少なくとも1つが、主鎖に結合したペンダント親水性基を含み、繰返し単位の少なくとも1つが、主鎖に結合したペンダントフッ素化疎水性基を含有する、テレケリックポリマーを含む被覆組成物で被覆し、得られた被覆をin−situ架橋結合させることによって製造される親水性複合多孔質膜。
多孔質フルオロポリマー支持体、及び架橋結合されたポリマー網目構造を含む被覆を含む、親水性複合多孔質膜であって、多孔質フルオロポリマー支持体を、溶媒、架橋剤、光開始剤、及び重合された1,5−シクロオクタジエン繰返し単位からなる主鎖を含み、前記繰返し単位の少なくとも1つが、主鎖に結合したペンダント親水性基を含み、前記繰返し単位の少なくとももう1つが、主鎖に結合したペンダントフッ素化疎水性基を含む、テレケリックポリマーを含む被覆組成物で被覆し、得られた被覆をin situ架橋結合させることによって製造される、親水性複合多孔質膜。
光開始剤が、カンファーキノン、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン、アセトフェノン誘導体、ホスフィンオキシド及び誘導体、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルケタール、フェニルグリオキサルエステル及びその誘導体、二量体フェニルグリオキサルエステル、ペルエステル、ハロメチルトリアジン、ヘキサアリールビスイミダゾール/共開始剤系、フェロセニウム化合物、チタノセン、並びにその組み合わせから選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の親水性複合多孔質膜。
前記多孔質フルオロポリマー支持体が、PTFE、PVDF、PVF(ポリフッ化ビニル)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)、ETFE(ポリエチレンテトラフルオロエチレン)、ECTFE(ポリ(エチレンクロロトリフルオロエチレン))、PFPE(パーフルオロポリエーテル)、PFSA(パーフルオロスルホン酸)、及びパーフルオロポリオキセタンから選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の親水性複合多孔質膜。
請求項1〜15のいずれか一項に記載の親水性複合多孔質膜又は請求項17に記載の親水性改質フルオロポリマー多孔質膜に流体を通すステップを含む、流体を濾過する方法。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施形態の親水性フッ素化ポリマーを被覆する方法を説明する図である。
【
図2】本発明の一実施形態の親水性フッ素化ポリマーを被覆し、架橋結合させる方法を説明する図である。
【
図3】CH
2Cl
2における、ポリ(COD)及びポリ(gly−hb−COD−hb−gly)のGPCトレースである。
【0007】
[発明の詳細な説明]
[0009]一実施形態によれば、本発明は、多孔質フルオロポリマー支持体、及び架橋結合されたポリマー網目構造を含む被覆を含む、親水性複合多孔質膜であって、多孔質フルオロポリマー支持体を、溶媒、架橋剤、光開始剤、及び重合された1,5−シクロオクタジエン繰返し単位からなる主鎖を含み、前記繰返し単位の少なくとも1つが、主鎖に結合したペンダント親水性基を含み、該繰返し単位の少なくとももう1つが、主鎖に結合したペンダントフッ素化疎水性基を含む、テレケリックポリマーを含む被覆組成物で被覆し、得られた被覆をin situ架橋結合させることによって製造される、親水性複合多孔質膜を提供する。
【0008】
[0010]テレケリックポリマーの末端基は、疎水性末端及び/又は親水性末端であることができる。一実施形態において、末端基は疎水性である。他の実施形態において、末端基は親水性である。
【0009】
[0011]一実施形態によれば、テレケリックポリマーは、繰返し単位B及びCの少なくとも1つ、並びに任意選択で、1つ又は複数の繰返し単位Aを含み、繰返し単位A〜Cは次式のものであり、
【化1】
式中、Rは親水性基である。
【0010】
[0012]上記実施形態において、親水性基Rは、カルボキシアルキル、スルホンアルキル、及びヒドロキシアルキルの各基から選択される。
【0011】
[0013]本発明の実施形態において、繰返し単位A、B及び/又はCは、任意の適切な形態で、例えば、ブロック、又はランダムに配置されたブロックとして、存在することができる。
【0012】
[0014]一実施形態において、テレケリックポリマーは、繰返し単位A、B及びCを含む。例えば、テレケリックポリマーは次式のものであり、
【化2】
式中、x及びmは、独立してn+m+xの0〜35モル%であり、但し、n+m+x=10〜1000、n及びmは、独立して約10〜約1000であり、Rは親水性基である。
【0013】
[0015]一実施形態において、テレケリックポリマーは、親水性末端基を含む。例えば、親水性末端基は、ポリヒドロキシアルキルエーテル基を含む。
【0014】
[0016]一実施形態において、テレケリックポリマーは以下の式のものを含む。
【化3】
式中、Rは、親水性基、例えば、カルボキシアルキル、スルホンアルキル、又はヒドロキシアルキルの各基であり、nは約10〜約1000であり、但し、Pは重合開始可能な基である。
【0015】
[0017]一実施形態において、テレケリックポリマーは次式のものであり、
【化4】
式中、Pは重合開始可能な基であり、x及びmは、独立してn+m+xの0〜35モル%であり、但し、n+m+x=10〜1000、Rは親水性基である。
【0016】
[0018]テレケリックポリマーは、任意の適切な架橋剤、好ましくはバイチオール又はマルチチオールによって架橋結合させることができる。
【0017】
[0019]任意の適切な光開始剤、例えば、カンファーキノン、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン、アセトフェノン誘導体、ホスフィンオキシド及び誘導体、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルケタール、フェニルグリオキサルエステル及びその誘導体、二量体フェニルグリオキサルエステル、ペルエステル、ハロメチルトリアジン、ヘキサアリールビスイミダゾール/共開始剤系、フェロセニウム化合物、チタノセン、並びにその組み合わせから選択される光開始剤を用いることができる。
【0018】
[0020]いずれかの適切な多孔質フルオロポリマー支持体を親水性改質することができ、例えば、多孔質フルオロポリマー支持体は、PTFE、PVDF、PVF(ポリフッ化ビニル)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、FEP(フッ化エチレンプロピレン)、ETFE(ポリエチレンテトラフルオロエチレン)、ECTFE(ポリ(エチレンクロロトリフルオロエチレン))、PFPE(パーフルオロポリエーテル)、PFSA(パーフルオロスルホン酸)、及びパーフルオロポリオキセタンから選択することができる。
【0019】
[0021]一実施形態によれば、被覆の架橋結合は、被覆をUV放射に曝すことによって形成される。
【0020】
[0022]本発明は、次式のテレケリックポリマーをさらに提供する。
【化5】
式中、Pは重合開始可能な基であり、x及びmは、独立してn+m+xの0〜35モル%であり、但し、n+m+x=10〜1000、Rは親水性基である。
【0021】
[0023]本発明は、
[0024](i)多孔質フルオロポリマー支持体を用意するステップと、
[0025](ii)溶媒、架橋剤、光開始剤、及び上記のテレケリックポリマーを含む溶液で、多孔質フルオロポリマー支持体を被覆するステップと、
[0026](iii)(ii)からの被覆フルオロポリマー支持体を乾燥させて、被覆溶液から溶媒の少なくとも一部を取り除くステップと、
[0027](iv)被覆に存在する前記テレケリックポリマーを架橋結合させるステップと
を含む、多孔質フルオロポリマー支持体を親水性改質する方法をさらに提供する。
【0022】
[0028]本発明は、上記の方法によって製造された親水性改質フルオロポリマー膜をさらに提供する。
【0023】
[0029]本発明は、上記親水性複合多孔質膜のいずれかに流体を通すステップを含む、流体を濾過する方法をさらに提供する。
【0024】
[0030]テレケリックポリマーは、任意の適切な分子量、例えば、一実施形態において、数平均分子量又は重量平均分子量(Mn又はMw)が、約10kDa〜約1000kDa、好ましくは約75kDa〜約500kDa、より好ましくは約250kDa〜約500kDaであることができる。
【0025】
[0031]本発明のテレケリックポリマーは、任意の適切な方法、例えば、1,5−シクロオクタジエン(COD)の開環メタセシス重合によって、調製することができる。一般に、カルベン配位子を含む遷移金属触媒がメタセシス反応を媒介する。
【0026】
[0032]任意の適切なROMP触媒、例えば、第一世代、第二世代、第三世代のグラブス触媒、ユミコア(Umicore)触媒、ホベイダ−グラブス(Hoveyda−Grubbs)触媒、シュロック(Schrock)触媒、及びシュロック−ホベイダ(Schrock−Hoveyda)触媒を用いることができる。かかる触媒の例として、以下のものが挙げられる。
【化6】
【化7】
【化8】
【0027】
[0033]一実施形態において、第三世代グラブス触媒は、空気中での安定性、複数の官能基への耐性、及び/又は速い、重合開始速度及び連鎖成長速度などの利点のために、特に適している。さらに、第三世代グラブス触媒を用いて、末端基に、任意の相溶性基を取り入れるように処理することができ、触媒を容易に再生利用することができる。かかる触媒の好ましい例としては、
【化9】
がある。
【0028】
[0034]上記第三世代グラブス触媒(G3)は、市販のものを得てもよいし、以下のように、第二世代グラブス触媒(G2)から調製してもよい。
【化10】
【0029】
[0035]モノマーの重合は、適切な溶媒、例えば、ROMP重合の実施に一般に用いられる溶媒中で行われる。適切な溶媒の例として、ベンゼン、トルエン、及びキシレンなどの芳香族炭化水素、n−ペンタン、ヘキサン、及びヘプタンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、及びトリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、並びにその混合物が挙げられる。
【0030】
[0036]モノマー濃度は、1〜50重量%の範囲であってよく、好ましくは2〜45重量%の範囲であってよく、より好ましくは3〜40重量%の範囲であってよい。
【0031】
[0037]重合は、任意の適切な温度、例えば、−20〜+100℃、好ましくは10〜80℃で実施することができる。
【0032】
[0038]重合は、ポリマーの適切な分子鎖長を得るのに適した、約1分〜100時間であり得る、任意の時間で実施することができる。
【0033】
[0039]触媒の量は、任意の適切な量で選択することができる。例えば、触媒対モノマーのモル比は、約1:10〜約1:1000であってよく、好ましくは約1:50〜1:500であってよく、より好ましくは約1:100〜約1:200であってよい。例えば、触媒対モノマーのモル比は、1:n及び1:mであることができ、ここで、n及びmは平均重合度である。
【0034】
[0040]ポリマーは、適切な技術、例えば非溶媒を用いた沈殿によって、単離することができる。
【0035】
[0041]ポリマーは、いずれかの既知の技術によって、分子量及び分子量分布について特性決定することができる。例えば、MALS−GPC技術を用いることができる。MALS−GPC技術は、移動相を用いて、高圧ポンプによって、ポリマー溶液を、固定相を充填したカラム群を通して溶出する。固定相により、ポリマー試料が分子鎖の大きさによって分離され、次いで3つの異なる検出器によってポリマーが検出される。直列の検出器を用いることができ、例えば、一列に並んだ、紫外線検出器(UV検出器)、続いて多角度レーザー光散乱検出器(MALS検出器)、続いて示差屈折率検出器(RI検出器)である。UV検出器によって、波長254nmでポリマーの光吸収が測定され、MALS検出器によって、移動相に相対的な、ポリマー鎖からの散乱光が測定される。
【0036】
[0042]本発明のコポリマーは、高単分散である。例えば、コポリマーでは、Mw/Mnが1.05〜1.5であり、好ましくは1.1〜1.2である。
【0037】
[0043]一実施形態によれば、ポリシクロオクタジエン(ポリ(COD)又はPCOD)は、ROMP触媒によりCODを重合することによって得られ、次いで、以下に説明するように、重合を終わらせることができる。
【化11】
【0038】
[0044]上記方法において、重合は、適切な方法、例えば、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテルを用いることによって、終わらせることができる。
【0039】
[0045]他の実施形態によれば、テレケリックポリCODは、以下に説明するように、ROMPを用いて調製することができる。
【化12】
【0040】
[0046]テレケリックポリ(COD)をさらに改質して、複数のヒドロキシル基を有するテレケリックポリ(COD)をもたらすことができる。例えば、以下に説明するように、上記テレケリックポリ(COD)をヒドロキシメチルエチレンオキシドと反応させて、複数のヒドロキシル基を有するテレケリックポリ(COD)を得ることができる。
【化13】
【0041】
[0047]多孔質フルオロポリマー支持体、例えばPTFEに付着させるために、フッ素化チオールと反応させることによって、親フッ素性部分がもたらされる。親水性官能基は、親水性モノチオールによって加えられ得る。その反応を以下に説明する。
【化14】
但し、m+x=n。
【化15】
【0042】
[0048]他の実施形態によれば、テレケリックポリ(COD)を以下のように改質することができる。
【化16】
但し、m+x=y+1(XIII)。
【0043】
[0049]上記構造は、ハイパーブランチポリ(gly−COD−gly)系の改質の結果もたらされ、架橋結合させるステップの間に、膜上にin situ生成される。
【0044】
[0050]また、本発明は、次式の、改質された直鎖樹状ポリ(COD)を提供する。
【化17】
式中、n+m+x=y+1(VII)。
【0045】
[0051]ハイパーブランチPCODを、まずグリシドールと反応させ、反応生成物は、親水性側鎖及びフッ素化側鎖の両方を導入することによって改質される。チオール・エン反応により、PCOD主鎖に親水性側鎖及びフルオロ側鎖の両方が導入される。フルオロ側鎖をPCODと反応させ、続けて親水性成分と反応させる逐次反応か、又はフルオロ側鎖と親水性成分の混合物をPCODと反応させて、フルオロ側鎖と親水性成分の両方を同時に導入する。
【0046】
[0052]PCOD系の分子量は、チオール・エン官能基及び架橋結合のための二重結合を十分にもたらすように調整される。
【0047】
[0053]本発明は、多孔質フルオロポリマー、及びコポリマー、又は上記の改質ホモポリマーを含む、親水性複合膜をさらに提供するものであり、コポリマー又は改質ホモポリマーは、任意選択で架橋結合される。
【0048】
[0054]得られる多孔質膜の表面張力は、以下のように測定することができる。例えば、任意選択で、PTFE膜シートをIPA溶媒で予め湿らせ、0.1質量%〜10質量%の濃度範囲のポリマー溶液にその膜を浸漬することによって、室温でPTFE膜シートが被覆される。PTFEシートの被覆時間は、1分〜12時間の範囲である。膜は、浸漬後、100℃〜160℃の対流オーブンで乾燥させる。乾燥時間は、10分〜12時間の範囲である。PTFE膜のぬれ特性を、臨界ぬれ表面張力を測定することによって評価する。被覆方法、及び架橋結合させる方法を
図1に説明する。
図2は、本発明の一実施形態の多孔質フルオロポリマー支持体の被覆を架橋結合させる方法を説明する。
【0049】
[0055]表面張力に関して、表面改質の変化は、固体表面よりもむしろ多孔質膜の表面張力を測定するように開発された方法によって測定された。その方法は、一定の組成の一組の溶液に依存するものである。各溶液は、特定の表面張力をもつ。溶液の表面張力は、わずかな非等価増分で、25〜92dyne/cmの範囲である。膜の表面張力を測定するために、白色光テーブルの上に膜を配置し、ある表面張力の溶液一滴を膜表面に付与し、液滴が、膜に浸透し、光が膜を透過する指標として明るい白色になる時間を記録する。液滴が膜を浸透するのにかかる時間が10秒以下である場合、瞬間ぬれと考えられる。その時間が10秒より長い場合、溶液は膜を部分的にぬらすと考えられる。
【0050】
[0056]任意の適切な方法、例えば、光開始剤、及びUVなどの高エネルギー放射線を用いて、架橋結合を形成することができる。架橋結合は、膜に非常に安定なポリマー網目構造をもたらすことになると考えられる。
【0051】
[0001]架橋結合は、以下のように実施することができる。ポリマー被覆PTFEシートを、IPAで予め湿らせ、次いでシートを光開始剤が調製される溶媒で洗浄して、IPAと溶媒を交換する。その後、シートを、一定濃度の光開始剤溶液に一定時間浸漬し、次いでUV照射に曝した。光開始剤溶液中の浸漬時間は、1分〜24時間の範囲である。UV照射時間は、30秒〜24時間の範囲である。次に、膜の臨界ぬれ表面張力(CWST)、性能特性決定、及び/又はSPM試験を測定した。「SPM」は、120〜180℃での、高温硫酸過酸化水素混合物(H
2SO
4(96%):H
2O
2(30%)が体積で80:20である)を意味する。
【0052】
[0002]本発明の一実施形態によれば、親水性フルオロポリマー膜は多孔質膜であり、例えば、直径1nm〜100nmの孔を有するナノ多孔質膜、又は直径1μm〜10μmの孔を有する微多孔質膜である。
【0053】
[0003]本発明の実施形態による、親水性フルオロポリマー多孔質膜は、多様な用途において使用することができ、例えば、診断的用途(例えば、サンプル調製及び/又は診断用側方流動装置を含む)、インクジェット用途、リソグラフィー、例えばHD/UHMWPEをベースとする媒体の置き換えとして、製薬産業用流体の濾過、金属の除去、超純水の製造、産業用水及び地表水の処理、医療用途用の流体の濾過(例えば、静脈内適用などの、家庭での使用及び/又は患者への使用を含み、また例えば、血液などの生体液の濾過(例えば、ウイルスの除去)も含む)、電子工学産業用流体の濾過(例えば、超小型電子技術産業及び高温SPMでのフォトレジスト液の濾過)、食品及び飲料産業用の流体の濾過、ビールの濾過、浄化、抗体含有流体及び/又は蛋白質含有流体の濾過、核酸含有流体の濾過、細胞検出(in situを含む)、細胞採取、及び/又は細胞培養液の濾過が挙げられる。代替的に、又は追加的に、本発明の実施形態の膜は、空気及び/又はガスを濾過するのに使用することができ、及び/又は通気の用途(例えば、空気及び/又はガスは通すが、液体は通さない)に使用することができる。本発明の実施形態の膜は、例えば、眼科用手術用品など、外科用装置及び外科用品などの、多様な装置において使用することができる。
【0054】
[0004]本発明の実施形態によれば、親水性フルオロポリマー多孔質膜は、平面、平坦なシート、ひだ状、管状、らせん状、及び中空繊維などの、多様な形状であることができる。
【0055】
[0005]本発明の実施形態の親水性フルオロポリマー多孔質膜は、典型的には、少なくとも1つの注入口及び少なくとも1つの注出口を備え、注入口と注出口の間に少なくとも1つの流体流路を画定するハウジング内に配置されており、少なくとも1つの本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルタは、流体流路の全域にわたっていて、それにより、濾過装置又はフィルタモジュールを提供する。一実施形態において、注入口及び第1の注出口を備え、注入口と第1の注出口の間に第1の流体流路を画定するハウジングと、少なくとも1つの本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルタを備え、本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルタはハウジング内に第1の流体流路の全域にわたって配置されている、濾過装置が提供される。
【0056】
[0006]クロスフロー適用に関して、少なくとも1つの本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルタが、少なくとも1つの注入口及び少なくとも2つの注出口を備え、注入口と第1の注出口の間に少なくとも1つの第1の流体流路を画定し、注入口と第2の注出口の間に第2の流体流路を画定するハウジング内に配置されており、本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルタが、第1の流体流路の全域にわたっていて、それにより、濾過装置又はフィルタモジュールを提供することが好ましい。例示的一実施形態において、濾過装置は、クロスフローフィルタモジュール、並びに注入口、濃縮液出口を有する第1の注出口、及び浸透液出口を有する第2の注出口を備え、注入口と第1の注出口の間に第1の流体流路を画定し、注入口と第2の注出口の間に第2の流体流路を画定するハウジングを備え、少なくとも1つの本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルタが、第1の流体流路の全域にわたって配置されている。
【0057】
[0007]濾過装置又はフィルタモジュールは殺菌することができる。適切な形状であり、注入口及び1つ又は複数の注入口を提供する、任意のハウジングを用いることができる。
【0058】
[0008]ハウジングは、処理される流体と適合性のある、任意の不浸透性熱可塑性材料などの、任意の適切な剛性不浸透性材料で製作することができる。例えば、ハウジングは、ステンレス鋼などの金属、又はポリマー、例えば、アクリル、ポリプロピレン、ポリスチレン、若しくはポリカーボネート樹脂などの、透明若しくは半透明のポリマーで製作することができる。
【0059】
[0009]一実施形態によれば、親水性フルオロポリマー多孔質膜は、任意の適切な多孔質フルオロポリマー支持体、例えば、PTFE、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVF(ポリフッ化ビニル)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)、ETFE(ポリエチレンテトラフルオロエチレン)、ECTFE(ポリ(エチレンクロロトリフルオロエチレン))、PFPE(パーフルオロポリエーテル)、PFSA(パーフルオロスルホン酸)、及びパーフルオロポリオキセタンでつくられた支持体を含む。多孔質支持体は、例えば、約10nm〜約10ミクロンの任意の適切な孔径をもつことができ、好ましくは、PTFE及びPVDFである。
【0060】
[0010]本発明は、上記方法によって製造される親水性改質フルオロポリマー膜をさらに提供する。
【0061】
[0011]本発明は、上記親水性フルオロポリマー膜に流体を通すステップを含む、流体を濾過する方法をさらに提供する。
【0062】
[0012]以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、勿論、本発明の範囲を決して限定するものではないと解釈されたい。
【0063】
実施例1
[0013]材料:以下の材料を購入し、そのまま使用した。
【0064】
[0014]ジメチル5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシレート(C3)はAlfa Aesar社から購入した。
【0065】
[0015]ジクロロメタン(DCM)を活性アルミナで保存し、使用前にアルゴンでパージした。イソプロピルアルコール(IPA)、ジシクロペンタジエン(DCPD)、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、N−フェニルマレイミド、アセトニトリル、メタノール、第二世代グラブス触媒、3−ブロモピリジン、及びペンタンはSigma−Aldrich Co.社から購入し、さらなる処理を行わずに使用した。ジクロロペンタンもまた、Sigma−Aldrich Co.社から購入し、使用前に塩基性アルミナで処理をした。1,5−シクロオクタジエン(COD)は、真空蒸留によって、三フッ化ホウ素から精製し、直ちに使用した。
【0066】
実施例2
[0016]本実施例は、ジクロロ[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン](ベンジリデン)ビス(3−ブロモピリジン)ルテニウム(II)(G3)触媒の調製を説明する。
【化18】
【0067】
[0017]上記の第二世代グラブス触媒(G2)(1.0g、1.18mmol)を、50mLフラスコ内で3−ブロモピリジン(1.14mL、11.8mmol)と混合した。室温で5分間撹拌すると、赤色の混合物が鮮緑色に変わった。ペンタン(40mL)を、撹拌しながら15分かけて添加し、緑色の固体を得た。混合物を冷凍機で24時間冷却し、真空下で濾過した。緑色の固体である、得られたG3触媒を冷ペンタンで洗浄し、室温、真空下で乾燥させて、収量0.9g、収率88%をもたらした。
【0068】
実施例3
[0018]本実施例は、本発明の一実施形態の、ホモポリマー及びコポリマーの、ゲル浸透クロマトグラフィーによる特性決定を説明する。
【0069】
[0019]得られるホモポリマー及びブロックコポリマーは、分子量及び分子量分布の特性について、以下の条件でのMALS−GPC技術によって特性決定された。
[0020]移動相:ジクロロメタン(DCM)
[0021]移動相温度:30℃
[0022]UV波長:245nm
[0023]使用するカラム:3本のPSS SVD Lux分析カラム(スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー網目構造)、直径5μm、孔径が1000A、100,000A、及び1,000,000Aであるビーズを固定相として有するカラム、及びガードカラム
[0024]流量:1mL/分
[0025]GPCシステム:UV検出器及びRI検出器を備える、Waters HPLC Alliance e2695システム
[0026]MALSシステム:664.5nmのレーザーを作動させる、8個の検出器を備えるDAWN HELEOS8システム
【0070】
実施例4
[0100]本実施例は、本発明の一実施形態のポリシクロオクタジエン(P−COD)の合成方法を説明する。
【0071】
[0101]撹拌子を備えた50ml丸底フラスコで、第二世代グラブス触媒(3.0mg、0.004mmol)、2−ブテン−1,4−ジオール(10.0mg、0.12mmol)、及び1,5−シクロオクタジエン(490mg、4.54mmol)を混合させて、アルゴンで5分間脱気し、40℃のオイルバスへ移した。1時間加熱し続け、残りの1,5−シクロオクタジエン(4.5mg、4.2mmol)のDCM5ml溶液を混合物へ添加し、さらに6時間加熱し続けた。ヒドロキシル末端ポリマー(P−COD)を、メタノール中の沈殿によって、単離した。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ(ppm)5.3〜5.5(s,広幅,1H)、1.75〜2.5(s,広幅)。
【0072】
実施例5
[0102]本実施例は、本発明の一実施形態の式(X)、ポリ(gly−hb−COD−hb−gly)であるグリシジル末端基を有するテレケリックポリマーを合成する方法を説明する。
【0073】
[0103]撹拌子を備えた50ml丸底フラスコに、テレケリックポリシクロオクタジエン(ヒドロキシ末端化)(1.0g)をジグライムに90〜100℃で溶解させた。ヒドロキシル基は、1時間撹拌しながら、CaH
2(0.5g)で活性化させた。グリシドール(10.0g、135mmol)を、混合物へ30分かけて滴下で添加した。反応物は、12時間加熱され続けた。ポリマーを、ヘキサン中の沈殿によって、単離した。
1H−NMR(CDCl
3):δ(ppm)5.6(s 1H)、5.45〜5.3(m 広幅)、2.4(s 2H)、2.2〜1.9(m 広幅)。
【0074】
実施例6
[0104]本実施例は、ポリシクロオクタジエン及びそのハイパーブランチブロックコポリマーをフッ素含有試薬で後官能化する方法を説明する。
【0075】
[0105]PCODホモポリマー又は式Aのコポリマーのいずれかを、UV照射の下、光開始剤の存在下で、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオールで後官能化させ、次いで実質的に同じプロセスを続ける。例えば、PCOD(1.0g)をIrgacure2959光開始剤(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)を15質量%まで含有するテトラヒドロフランに溶解させる。溶液をUV照射(300〜480nm、150〜250ミリワット、60〜180秒)に曝す。反応混合物は、PTFEを被覆する方法、及び架橋結合させる方法において使用される。
【0076】
実施例7
[0106]本実施例は、PTFE多孔質支持体の、PCOD及びポリ(gly−hb−COD−hb−gly)を被覆する工程、及び架橋結合させる工程を説明する。
【0077】
[0107]フッ素化PCOD又はフッ素化ポリ(gly−hb−COD−hb−gly)ハイパーブランチブロックポリグリセロールを被覆する工程、及び架橋結合させる工程は、実質的に同じである。以下の例は、フッ素化PCODに基づくものである。
【0078】
[0108]多孔質PTFE膜は、フッ素化PCOD(1〜10%質量濃度)THF溶液、光開始剤(Irgacure、1〜15質量%)、3−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム塩(1〜15質量%、均一なTHF溶液を得るまで、THFと希塩酸(1規定)の水溶液で中和させる)を含有する溶液に膜を浸漬することによって、チオール・エン反応を介して改質された、いずれかのフッ素化PCODで被覆されており、膜は、UV照射(300〜480nm、150〜250ミリワット、60秒〜180秒)を用いて、この混合物と共に架橋結合される。次いで、膜をDI水で洗浄し、100℃で10分間乾燥させた。
【0079】
[0109]PCOD及びポリ(gly−hb−COD−hb−gly)のGPCトレースを
図3に示す。
【0080】
[0110]ポリ(gly−hb−COD−hb−gly)を、UV照射(90秒)の下、光開始剤(Irgacure2959、10%)の存在下で、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオールとin situ反応させた。得られたポリマー混合物を用いて、PTFE膜を被覆し、CWSTを測定し、次いで、前述したように、同じプロセスを行った。PTFE及び処理されたPTFE表面のCWSTを表1に示す。
【0081】
[0111]
【表1】
【0082】
[0112]本明細書に記載の、公表資料、特許出願、及び特許などの、全ての参考資料は、各参考資料が、参照によって組み込まれていることが個別に且つ明確に示され、その全体が本明細書に記載されているかのように、参照によって同じ範囲で本明細書に組み込まれている。
【0083】
[0027]本発明を説明する文脈における(特に、以下の特許請求の範囲の文脈における)、用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「その(the)」及び「少なくとも1つの」及び同様の指示対象の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方を含むと解釈されるべきである。用語「少なくとも1つの」、次いで1つ又は複数の項目の列挙(例えば、「A及びBの少なくとも1つ」)の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、列挙された項目(A若しくはB)から選択された1つの項目、又は列挙された項目(A及びB)の2つ以上の、任意の組み合わせを意味すると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含む(containing)」は、別段の指示がない限り、拡張可能な用語(すなわち、「含む(including)が、それらに限定されない」)として解釈されるべきである。本明細書の、値の範囲の記載は、本明細書において別段の指示がない限り、その範囲内にある別個の値を個々に参照する簡潔な方法となることを意図するのにすぎず、別個の値は、本明細書に個々に記載されているかのように、本明細書に組み込まれている。本明細書で説明された全ての方法は、本明細書において別段の指示がない限り、それとも文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書でもたらされる、任意の及び全ての例、又は例示的な言い回し(例えば、「などの」)の使用は、本発明をより明らかにしようと意図するのにすぎず、別段の要求がない限り、本発明の範囲を制限するものではない。本明細書において、全ての言語は、本発明を実施するのに必要な、任意の請求項にかかる構成要素を示すものとして解釈されるべきである。
【0084】
[0028]本発明者らに既知である、本発明を実施するための最良の態様を含む、本発明の好ましい実施形態を本明細書で説明する。前述の記載を読むと、これらの好ましい実施形態の変形形態は、当分野の技術者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者らがこうした変形形態を適切に用いることを期待し、本発明が、本明細書で特に説明されたもの以外でも、実施されることを意図する。したがって、適用可能な法律で許されるように、本発明は、本明細書に添付された、特許請求の範囲に記載の主題の、全ての改変及び等価物を含む。さらに、本明細書において別段の指示がない限り、それとも文脈によって明らかに矛盾しない限り、その全ての可能な変形形態の上記構成要素の任意の組み合わせは、本発明に含まれる。