【解決手段】金属酸化物(A)の粒子とラジカル重合性モノマー(B)とラジカル開始剤(C)とを含有する組成物であって、金属酸化物(A)の粒子の体積平均粒径が1nm〜500nmであり、ラジカル重合性モノマー(B)の重合物(BP)の含有量がラジカル重合性モノマー(B)の全重量に基づいて5重量%以下であるハードコート用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
金属酸化物(A)の粒子とラジカル重合性モノマー(B)とラジカル開始剤(C)とを含有する組成物であって、金属酸化物(A)の粒子の体積平均粒径が1nm〜500nmであり、ラジカル重合性モノマー(B)の重合物(BP)の含有量がラジカル重合性モノマー(B)の全重量に基づいて5重量%以下であるハードコート用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
ラジカル重合性モノマー(B)が2〜6個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートを含む請求項1に記載のハードコート用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
金属酸化物(A)がシリカ、チタニア、ジルコニア及びアルミナからなる群から選ばれる1種以上である請求項1又は2に記載のハードコート用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のハードコート用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、金属酸化物(A)の粒子とラジカル重合性モノマー(B)とラジカル開始剤(C)とを含有する組成物であって、金属酸化物(A)の粒子の体積平均粒径が1nm〜500nmであり、ラジカル重合性モノマー(B)の重合物(BP)の含有量がラジカル重合性モノマー(B)の全重量に基づいて5重量%以下であるハードコート用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である。金属酸化物(A)の粒子の体積平均粒径が1nm〜500nmであり、更に、ラジカル重合性モノマー(B)の重合物(BP)の含有量が少ないことが特徴でもあり、ラジカル重合性モノマー(B)の全重量に基づいて5重量%以下である。
【0009】
本発明のハードコート用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、金属酸化物(A)の粒子を配合することで硬化物の硬度、耐擦傷性を向上させることができる。
【0010】
本発明で用いる金属酸化物(A)としては、公知のものを使用することができる。具体例としては、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物を挙げることができる。また、その形状は、粒子状になるものであって、球状でも不定形のものでもよく、中空粒子、多孔質粒子、コア・シェル型粒子等であっても構わない。
金属酸化物(A)の好ましい例としては、シリカ、チタニア、ジルコニア及びアルミナである。
また、動的光散乱法で求めた金属酸化物(A)粒子の体積平均粒子径は1〜500nmであり、好ましくは1〜100nmであり、更に好ましくは1〜80nmである、特に好ましくは1〜30nmである。金属酸化物(A)粒子の体積平均粒子径が1nm未満であると、硬化膜の硬度が低下するおそれがあり、500nmを超えると硬化膜の全光線透過率が低下する恐れがある。
【0011】
本発明の全光線透過率としては、85%以上が好ましく、87%以上が更に好ましく、90%以上が特に好ましい。85%以下では、液晶等の表示素子上に膜を形成する場合、視認性の低下や美観を損ねてしまう。
【0012】
金属酸化物(A)の添加量としては、本発明の樹脂組成物中の成分(溶剤を使用する場合は溶剤を除く)の合計に基づいて、好ましくは5〜50重量%であり、より好ましくは10〜50重量%、更に好ましくは15%〜50重量%である。5重量%以下では硬度が不十分となり、50重量%以上であると該組成物の塗工性が悪くなり、均一な膜厚の硬化膜を得ることが困難になる恐れがある。
【0013】
本発明のラジカル重合性モノマー(B)としては、硬化物としたときの硬度の観点から2〜6個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。なお、(メタ)アクリロイル基とは、メタクリロイル基又はアクリロイル基を意味する。
【0014】
(メタ)アクリロイル基が2個の化合物としては、例えば、 1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0015】
(メタ)アクリロイル基が3個以上の化合物としては、例えば、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(以下「EO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(以下「PO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加物、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、フェノールノボラックポリグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート等を例示することができる。好ましくは、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートである。
上記に挙げたラジカル重合性モノマーは各々1種単独で又は2重以上組み合わせて用いても良い。
また、ラジカル重合性モノマー(B)は、フッ素原子、イソシアネート基、カルボキシル基、グリシジル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、エーテル基、エステル基などの官能基を分子内に含んでいてもよい。
【0016】
ラジカル重合性モノマー(B)の含有量は、本発明の樹脂組成物中の成分(溶剤を使用する場合は溶剤を除く)の合計に基づいて、5〜97重量%が好ましい。5重量%未満となると、硬化性組成物を硬化させてなる硬化物の耐擦傷性が低下する場合があるためであり、一方、添加量が97重量%を超えると、硬化性組成物の硬化物の硬度が低下するおそれがある。
【0017】
本発明で用いるラジカル開始剤(C)としては、光ラジカル開始剤(C1)が挙がられる。光ラジカル開始剤(C1)としては、光照射により分解してラジカルを発生して重合を開始せしめるものであれば特に制限はなく、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)等を挙げることができる。
【0018】
本発明においてラジカル開始剤(C)の含有量は、本発明の組成物中の全成分(溶剤を使用する場合は溶剤を除く)の合計に基づいて、好ましくは0.01〜20重量%、更に好ましくは0.1〜10重量%である。0.01重量%未満であると、硬化物としたときの硬度が不十分となることがあり、20重量%を超えると、硬化物としたときに内部(下層)まで硬化しないことがある。
【0019】
本発明のハードコート用硬化性樹脂組成物には、組成物の硬化時における硬化収縮を抑制し基材との密着性向上の観点から、多分岐ポリマーを更に含有させることが好ましい。
この目的で含有させる多分岐ポリマーは、デンドリマー、ハイパーブランチポリマー及びスターバーストポリマーが好ましい。
【0020】
多分岐ポリマーの多価の基核(基本骨格)は、有機残基、窒素原子、ケイ素原子又はリン原子を核とする多官能性化合物であれば、特に限定はない。
有機残基としては、炭素原子、芳香族炭化水素環(ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フェナントレン環、トリフェニレン環等)、酸素、窒素、硫黄から選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を含有する単環式もしくは多環式の環構造を有する複素環(例えば、ピラジン環、ヒドロピラジン環、ピペラジン環、トリアジン環、ヒドロトリアジン環、フェナジン環、キサンテン環、チオキサンテン環等)、カリックスアレン構造、アザクリプタント構造、クラウンエーテル構造、ポルフィリン構造等が挙げられる。
【0021】
多分岐ポリマーは、重縮合サイクルによって調製された分子であることが好ましい。各サイクルは、基核の反応性官能基の全てと、分岐鎖延長化合物の1当量とを反応させることを含む。サイクルの数(n)により「第n世代」の多分岐分子と称される。
本発明のハードコート用硬化性樹脂組成物に添加する多分岐ポリマーとしては、第1世代〜第6世代のものが好ましい。特に好ましくは第2世代〜第4世代のものである。
【0022】
本発明の組成物は、扱いを容易にするために有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤の種類は、有機溶剤以外の成分を均一に溶解又は分散させることができれば特に限定されない。
【0023】
本発明で使用される有機溶剤の具体例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、2−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族類、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族類等から選択される一種又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
これらのうち、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、2−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類が好ましく、より好ましくはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、t−ブタノールの一種単独又は二種以上との組み合わせが挙げられる。
【0024】
本発明の組成物には、本発明の目的や効果を損なわない範囲において、光増感剤、熱重
合開始剤、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑
剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、顔料、染料等の添
加剤を更に含有させてもよい。
【0025】
本発明における金属酸化物とラジカル重合性モノマーからなる分散体は、実質的に重合禁止剤を添加することを必要としない。
本発明における重合禁止剤は、原料である単量体に由来するものであり、重合禁止剤の含有量はシール剤中の重合性単量体の重量に対して0.1重量%未満である。好ましくは0.02重量%(200ppm)以下である。
重合禁止剤の含有量が0.1重量%以上の場合、シール剤の硬化物中でのオリゴマー生成量が多くなり、硬度が低下するという問題がある。しかし、問題のない範囲内で重合禁止剤を使用することは可能である。なお、「重合禁止剤」とは、一般的な重合性組成物に配合されているものを意味し、具体的には、例えば、フェノール系酸化防止剤、ヒンダード・アミン光安定剤、リン系酸化防止剤、広く(メタ)アクリルモノマーに用いられるハイドロキノンモノメチルエーテルの他、ハイドロキノン、t−ブチルカテコール、及びピロガロール等を挙げることができる。
【0026】
本発明において、ラジカル重合性モノマー(B)の重合物(BP)の含有量は、ラジカル重合性モノマー(B)の全重量に基づいて5重量%以下である。重合物(BP)の含有量は、ハードコート用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の物性の観点から、ラジカル重合性モノマー(B)の全重量に基づいて好ましくは2重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。
5重量%を超える場合、硬化物の硬度が低下する。そのため、従来の物理的な剪断を利用したサンドグラインダー及びサンドミル等では上記重合禁止剤量では実現できず、圧縮性流体の体積膨張を利用して分散する方法が最適である。
【0027】
本発明において、金属酸化物(A)をラジカル重合性モノマー(B)に分散したものを分散体(Y)とする。
圧縮性流体としては、例えば後述する超臨界二酸化炭素、亜臨界二酸化炭素、又は液体二酸化炭素などが用いられる。
【0028】
重合物(BP)の含有量を求める方法は、
1H−NMR法を用いて検出した金属酸化物(A)を分散した後の組成物中のラジカル重合性基由来の信号の積分値(r1)とラジカル重合性基以外の構造由来の信号の積分値(s1)の比(r1/s1)と、上記組成物と同一組成に配合した分散前の組成物中のラジカル重合性基由来の信号の積分値(r0)と、ラジカル重合性基以外の構造由来の信号の積分値(s0)の比(r0/s0)とを用い、求める方法である。
【0029】
以下に具体例を用いて説明する。
<
1H−NMRの測定条件>
測定機器:AVANCE300(日本ブルカー株式会社製)
周波数:300MHz
重水素化溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
ここでの重水素化溶媒は、重水素化ジメチルスルホキシド、重水素化クロロホルム、重水素化トルエン、重水素化ジメチルホルムアミド等であり、試料を溶解させる溶媒を適宜選択できる。
【0030】
<重合物(BP)の含有量の計算方法>
ここでは、ラジカル重合性モノマー(B)としてスチレンを例に説明する。
金属酸化物(A)を分散後のスチレンを
1H−NMR測定すると、ラジカル重合性基(ビニル基)由来の信号(r1)は6.7ppm付近に観測され、ラジカル重合性基以外の構造由来(芳香環)由来の信号(s1)は7.3〜7.4ppm付近に観測される。
同様に金属酸化物(A)を分散させていないスチレンを
1H−NMR測定し、ラジカル重合性基(ビニル基)由来の信号(r0)及びラジカル重合性基以外の構造(芳香環)由来の信号(s0)を観測すると、重合物(BP)の含有量は下式〔1〕により算出される。
重合物(BP)の含有量(%)
={1−(r1/s1)/(r0/s0)}×100 〔1〕
【0031】
ただし、
r1:分散処理後の6.7ppm付近のビニル基由来の信号の積分値
s1:分散処理後の7.3〜7.4ppm付近の芳香族由来の信号の積分値
r0:分散処理前の6.7ppm付近のビニル基由来の信号の積分値
s0:分散処理前の7.3〜7.4ppm付近の芳香族由来の信号の積分値
である。
【0032】
本発明における分散体(Y)を用いることで、ハードコート用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における重合物の含有量も低減することができ硬度と透明性を両立したハードコート用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0033】
本発明の分散体(Y)の作製について以下の通り詳述する。
本発明の分散体(Y)の作製に用いられる圧縮性流体は、メタン、エチレン、代替フロン等でもよいが、安全性や取り扱いの容易さ等の点から、好ましくは二酸化炭素であり、更に好ましくは液体二酸化炭素、亜臨界二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素が好ましい。なお、圧縮性流体とは、常温で常圧以上の圧力により圧縮されている流体のことを意味する。
【0034】
本発明において、少なくとも金属酸化物(A)とラジカル重合性モノマー(B)と圧縮性流体とから構成されるものを混合物(X)とする。混合物(X)中で金属酸化物(A)の粒子間に圧縮性流体を浸透させ、更に金属酸化物(A)の粒子間で圧縮性流体を体積膨張させることで作製される。
【0035】
また、圧縮性流体〔特に超臨界二酸化炭素、亜臨界二酸化炭素、又は液体二酸化炭素〕を混合する際の圧力は、金属酸化物(A)を圧縮性流体と良好に混合させるために、好ましくは2MPa以上、より好ましくは4MPa以上であり、更に好ましくは6MPa以上であり、特に好ましくは8MPa以上である。設備コスト、運転コストの観点から、好ましくは40MPa以下である。より好ましくは4〜35MPa、更に好ましくは8〜30MPa、特に好ましくは8.5〜25MPaである。
【0036】
金属酸化物(A)が固体として存在しているならば、他に例えば分散剤等の添加剤や溶剤等の各種媒体が混合されてもかまわない。
また、圧縮性流体として二酸化炭素を用いる場合には、圧縮性流体における二酸化炭素の純度は高いほうが望ましいが、一部気体が混入していてもかまわない。
【0037】
圧縮性流体を混合する際の、金属酸化物(A)とラジカル重合性モノマー(B)と圧縮性流体からなる混合物における圧縮性流体の重量分率は、目的の温度、圧力であれば、いかなる比率であっても構わないが、分散体中における金属酸化物の分散性の観点から、圧縮性流体(F)の割合は混合物(X)の重量に基づいて1〜99重量%であり、好ましくは5〜90重量%、更に好ましくは10〜80重量%、特に好ましくは15〜70重量%である。
【0038】
圧縮性流体を混合する際の、金属酸化物(A)とラジカル重合性モノマー(B)と圧縮性流体からなる混合物における圧縮性流体の体積比率は、混合物(X)が目的の温度、圧力であれば、いかなる比率であっても構わないが、圧縮性流体/混合物が好ましくは0.2以上0.9以下、より好ましくは0.3以上0.8以下、特に好ましくは0.4以上0.7以下である。
【0039】
本発明において、液体二酸化炭素とは、二酸化炭素の温度軸と圧力軸とで表す相図上において、二酸化炭素の三重点(温度=−57℃、圧力0.5MPa)と二酸化炭素の臨界点(温度=31℃、圧力=7.4MPa)を通る気液境界線、臨界温度の等温線、及び固液境界線に囲まれた部分の温度・圧力条件である二酸化炭素を表し、超臨界二酸化炭素とは、臨界温度以上の温度・圧力条件である二酸化炭素を表す(ただし、圧力は、2成分以上の混合ガスの場合、全圧を表す)。媒体の溶解性、不活性性及び拡散性の観点から、例えば超臨界二酸化炭素、亜臨界二酸化炭素、又は液体二酸化炭素等が挙げられる。
【0040】
混合時に使用できる溶剤としては、特に制限はないが、常温常圧で液体であり、例えばケトン溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エーテル溶剤(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、環状エーテル等)、エステル溶剤(酢酸エステル、ピルビン酸エステル、2−ヒドロキシイソ酪酸エステル、乳酸エステル等)、アミド溶剤(ジメチルホルムアミド等)、アルコール溶剤(メタノール、エタノール、イソプロパノール、フッ素含有アルコール等)、芳香族炭化水素溶剤(トルエン、キシレン等)、及び脂肪族炭化水素溶剤(オクタン、デカン等)、水、及びこれらの混合物、並びに低分子化合物溶解液、及び高分子化合物溶解液等が挙げられる。
【0041】
溶剤は混合物(X)の体積膨張後、エバポレーターでの減圧等による任意の方法で除去することで、溶剤を含まない分散体(Y)を得ることができる。
【0042】
混入できる気体としては、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気等の不活性気体等が挙げられる。二酸化炭素と気体の合計中の二酸化炭素の重量分率は、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、とくに好ましくは90重量%以上である。
【0043】
混合物(X)の体積膨張後の圧力としては、金属酸化物(A)の気化、圧縮性流体等の凝固が発生しない条件であれば特に制限はないが、金属酸化物(A)を良好に分散させる観点から混合物(X)の体積膨張前と体積膨張後の圧力差が2〜100MPaとなる条件とすることが好ましく、上記圧力差は更に好ましくは5〜30MPa、特に好ましくは7〜25MPaである。
【0044】
分散体(Y)の作製は、バッチ式混合方式と連続式混合方式等で製造することが可能である。バッチ式混合方式としては耐圧容器内で行う方法等が、連続式混合方式等ではラインブレンド(インライン混合)方法が挙げられ、連続式混合方式であるラインブレンドにより連続的に行うことが、生産性の向上、品質の一定化、製造スペースの縮小化等の面から好ましい。
【0045】
バッチ式混合方式に用いる装置の具体例として、耐圧釜のような混合機が挙げられ、バッチ式混合方式の場合、ラジカル重合性モノマー、金属酸化物(A)を耐圧釜に仕込み、必要により加熱し、耐圧釜に備え付けたポンプ等の加圧手段により、所望の圧力に達するまで圧縮性流体を釜に導入する。その後、所定の時間、撹拌等により混合を行い、取り出し用のノズルから混合物(X)を高圧状態から所定の圧力又は大気中に一気に噴出させることで分散体を製造する。装置のミキサー部分の長さ及び配管径、ミキシング装置(エレメント)数に何ら限定はないが使用圧力に耐え得るものでなければならない。
【0046】
バッチ式混合方式に用いる装置の出口には、前述の通り、取り出し用のノズルを備えているのが好ましい。使用圧力に耐えうるものであれば特に制限はなく、混合物(X)を高圧状態から所定圧力又は大気中に一気に噴出させることができるものが好ましい。
【0047】
ラインブレンド方式の場合、ラジカル重合性モノマー、金属酸化物及び必要に応じて媒体を混合した混合物と圧縮性流体を、それぞれポンプを用いてライン中を輸送し、取り出し用のノズルから混合物(X)を高圧状態から所定の圧力又は大気中に一気に噴出させることで分散体(Y)を製造する。装置のミキサー部分の長さ及び配管径、ミキシング装置(エレメント)数に何ら限定はないが使用圧力に耐え得るものでなければならない。
【0048】
装置内の滞留時間は、混合が充分に行われるのであれば特に限定されないが、0.1〜1800秒が好ましい。
【0049】
ラインブレンド方式に用いる装置の具体例として、スタティックミキサー、インラインミキサー、ラモンドスーパーミキサー、スルザーミキサーのような静止型インライン混合機や、バイブミキサー、ターボミキサーのような撹拌型インライン混合機等が挙げられる。装置のミキサー部分の長さ及び配管径、ミキシング装置(エレメント)数に何ら限定はないが、目的圧力に耐え得るものでなければならない。
【0050】
ラインブレンド方法に用いる装置の出口には、耐圧容器と同様の、取り出し用のノズルを備えているのが好ましい。
【0051】
このようなラインブレンド方法に用いる装置について図面を用いて説明する。
図1は、本発明における、ラインブレンドによる混合方法での分散体(Y)の作製に用いる実験装置のフローチャートである。
【0052】
分散体(Y)の作製における、圧縮性流体としての液状又は超臨界状態の二酸化炭素の混合方法としては、まず、圧縮性流体を、二酸化炭素ボンベB1から二酸化炭素ポンプP2を通じてラインブレンドを行う装置内(スタティックミキサーM1)に導入し、二酸化炭素が液状又は超臨界状態となる圧力及び温度となるよう調整し、次いでラジカル重合性モノマーと金属酸化物の混合物を溶解槽T1から溶液ポンプP1を通じて液状又は超臨界状態の二酸化炭素に導入する方法が好ましい。
ラインブレンドを行う温度は、前記の耐圧容器を用いて混合する場合と同様である。また、装置内の滞留時間は、混合が充分行われるのであれば特に限定されないが、0.1〜1800秒が好ましい。
次に、耐圧受け槽T2に通じるバルブV1を開くことによりラインブレンド後の混合物を大気圧まで減圧膨張させ、圧縮性流体を気化させて除くことで、金属酸化物が分散した分散体(Y)が得られる。
【0053】
前述の2方式において、混合物を体積膨張する際、効率よく粉砕、解砕力を得るためには、目的の圧力まで一気に減圧されることが好ましい。そのため、圧縮性流体(F)を除去し分散体(Y)を得る場合は、一気に混合物を目的圧力まで減圧できる排圧弁を要する。また、混合物(X)が耐圧釜、又はライン中で調製されてから混合物(X)を目的の圧力に調製された別の受け容器へ移送する場合は、混合物(X)を移送できる口径のノズルと受け容器を同じ圧力に保つレギュレーターが必要である。ただし、後者の場合、受け容器の圧力を大気圧とするのであれば、レギュレーターは不要である
【0054】
分散剤等の添加剤、溶剤を用いる場合、これらはラジカル重合性モノマー、金属酸化物と圧縮性流体を混合する際に同時に混合されても良く、またあらかじめ金属酸化物又は圧縮性流体と混合されていても構わない。更にはラジカル重合性モノマー、金属酸化物と圧縮性流体の混合後、体積膨張までの工程で、加圧導入し、混合しても構わない。
【0055】
本発明の組成物のコーティング方法は、通常のコーティング方法、例えばディッピングコート、スプレーコ−ト、フローコ−ト、シャワーコート、ロールコート、スピンコート、刷毛塗り等を挙げることができる。これらコーティングにおける塗膜の厚さは、乾燥、硬化後、通常0.1〜400μmであり、好ましくは、1〜200μmである。
【0056】
本発明の組成物は、熱及び/又は放射線(光)等の活性エネルギー線を照射して硬化させることができる。熱による場合、その熱源としては、例えば、電気ヒーター、赤外線ランプ、熱風等を用いることができる。放射線(光)による場合、その線源としては、組成物をコーティング後短時間で硬化させることができるものである限り特に制限はないが、例えば、赤外線の線源として、ランプ、抵抗加熱板、レーザー等を、また可視光線の線源として、日光、ランプ、蛍光灯、レーザー等を、また紫外線の線源として、水銀ランプ、ハライドランプ、レーザー等を、また電子線の線源として、市販されているタングステンフィラメントから発生する熱電子を利用する方式、金属に高電圧パルスを通じて発生させる冷陰極方式及びイオン化したガス状分子と金属電極との衝突により発生する2次電子を利用する2次電子方式を挙げることができる。また、アルファ線、ベータ線及びガンマ線の線源として、例えば、
60Co等の核分裂物質を挙げることができ、ガンマ線については加速電子を陽極へ衝突させる真空管等を利用することができる。これら放射線は1種単独で又は2種以上を同時に又は一定期間をおいて照射することができる。
【0057】
本発明の硬化物は、前記硬化性組成物を種々の基材、例えば、プラスチック基材にコーティングして硬化させることによりハードコート膜を得ることができる。具体的には、組成物をコーティングし、好ましくは、0〜200℃で揮発成分を乾燥させた後、熱及び/又は放射線で硬化処理を行うことにより被覆成形体として得ることができる。熱による場合の好ましい硬化条件は20〜150℃であり、10秒〜24時間の範囲内で行われる。放射線による場合、紫外線又は電子線を用いることが好ましい。そのような場合、好ましい紫外線の照射光量は0.01〜10J/cm2であり、より好ましくは、0.1〜2J/cm
2である。また、好ましい電子線の照射条件は、加速電圧は10〜300kV、電子密度は0.02〜0.30mA/cm
2であり、電子線照射量は1〜10Mradである。
【0058】
本発明の組成物は反射防止膜や被覆材の用途に好適であり、反射防止や被覆の対象となる基材としては、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS、AS、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレート等を挙げることができる。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよい。
【0059】
プラスチックフィルムに本発明の組成物を被覆してハードコート膜を有するハードコートフィルムを製造することができる。この場合に使用できるフィルムは上記の基材として挙げられたものを使用することができる。フィルムの厚さは用途に合わせて適宜調整することができるが、例えば10μm〜5mmのフィルムを使用することができる。また、フィルムの本組成物の硬化膜を形成した反対の面に粘着層を設けることもできる
【実施例】
【0060】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0061】
製造例1
攪拌棒及び温度計を備えた耐圧反応容器に、シリカ(A−1)[ YA010C−SM1、Admatechs社製]25部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(B−1)[ネオマーDA600 三洋化成工業(株)製]75部を反応容器の容積の40%まで仕込み、密閉して攪拌しながら加熱し、系内温度40℃まで昇温した。
昇温後、二酸化炭素を供給し10MPaにして15分間攪拌した後、容器下部に取り付けたノズルを全開して大気中(0.1MPa)に開放することで、二酸化炭素を気化させ除去して、シリカが分散した分散体(Y−1)を得た。
また、ラジカル重合性モノマーの重合物含有量(BP)の量は、
1H−NMR法による測定で、ラジカル重合性基由来(アクリロイロキシ基由来)の信号の積分値と、ラジカル重合性基由来以外(アルキル基由来)の信号の積分値の比を用いて算出した結果0.1%であった。
分散体(Y−1)中のシリカの分散時の体積平均粒径及び重合物(BP)の含有量を表1に示す。
【0062】
製造例2〜6
製造例1のシリカ(A−1)25部及びジペンタエリスリトールペンタアクリレート(B−1)75部を、を表1に記載の金属酸化物(A−2)〜(A−4)及びジペンタエリスリトールペンタアクリレート(B−1)に変更した以外は製造例1と同様に行い。分散体(Y−2)〜(Y−6)を得た。また、製造例1と同様にして、ラジカル重合性モノマーの重合物含有量(BP)の量を算出した。分散体(Y−2)〜(Y−6)中のシリカの分散時の体積平均粒径及び重合物(BP)の含有量を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
なお、表1中の各記号は、以下の市販の固体原料である。
チタニア(A−2):TTO−51(A)、石原産業社製
ジルコニア(A−3):TECNAPOW−ZRO2−100G、TECNAN社製
アルミナ(A−4):TECNAPOW−Al2O2−100G、TECNAN社製
【0065】
比較製造例1
攪拌棒及び温度計を備えた混合槽に、シリカ(A−1)25部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(B−1)75部を仕込み、攪拌して、比較のための分散体(RY−1)を得た。分散体(RY−1)中のシリカの分散時の体積平均粒径及び重合物(BP)の含有量を表1に示す。
【0066】
比較製造例2
攪拌棒及び温度計を備えた混合槽に、シリカ(A−1)25部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(B−1)75部を仕込み、攪拌して、ビーズミルに供し比較のための分散体(RY−2)を得た。分散体(RY−2)中のシリカの分散時の体積平均粒径及び重合物(BP)の含有量を表1に示す。
【0067】
[分散体中の金属酸化物の分散体積平均粒径(nm)の測定方法]
製造例1〜6及び比較製造例1、2で得た分散体(Y−1)〜(Y−6)、(RY−1)及び(RY−2)に光硬化で硬化する程度の光開始剤を添加後、上記実施例及び製造例で製造した各組成物を80μm厚のTAC基材上に30ミルのバーコーターを用いて塗工し、膜厚が12μmの塗膜を得た。これを80℃のオーブンに1分間入れ、乾燥を行った後、このフィルムを、空気中で高圧水銀灯を用いて高圧水銀ランプコンベアに通し合計300mj/cm
2を照射して硬化を行った。
得られた硬化膜をTEM測定に供した。得られたTEM画像から金属酸化物の体積平均粒径を計測した。
【0068】
実施例1〜10[ハードコート用活性エネルギー性硬化性樹脂組成物(Q−1)〜(Q−10)を製造]
表2に示す重量部数の分散体(Y)と、ラジカル重合性モノマー(B)、ラジカル開始剤(C)、多分岐ポリマーを配合し、自転公転式攪拌装置用いて25℃で10分間混合して、本発明のハードコート用活性エネルギー性硬化性樹脂組成物(Q−1)〜(Q−10)を製造した。
なお、表2中の多分岐ポリマーはトリペンタエリスリトールオクタアクリレートを55質量%含有する 多官能アクリレート組成物 [ビスコートV#802、大阪有機工業社製]を使用した。
【0069】
比較例1と2
表2に示す重量部数の分散体(RY−1)、(RY−2)と、ラジカル重合性モノマー(B)、ラジカル開始剤(C)を配合し、自転公転式攪拌装置用いて25℃で10分混合して、比較となるハードコート用活性エネルギー性硬化性樹脂組成物(RQ−1)、(RQ−2)を製造した。
【0070】
【表2】
【0071】
以下の方法で本発明のハードコート用活性エネルギー性硬化性樹脂組成物とその硬化膜の物性測定と性能を評価した。
[硬化膜の製造]
上記実施例及び製造例で製造した各組成物を80μm厚のTAC基材上に30ミルのバーコーターを用いて塗工し、膜厚が12μmの塗膜を得た。これを80℃のオーブンに1分間入れ、乾燥を行った後、このフィルムを、空気中で高圧水銀灯を用いて高圧水銀ランプコンベアに通し合計300mJ/cm
2を照射して硬化を行った。
[ハードコート用活性エネルギー性硬化性樹脂組成物の硬化物中の金属酸化物の分散体積平均粒径(nm)の測定]
得られた硬化膜をTEM測定に供した。得られたTEM画像から金属酸化物の体積平均粒径を計測した。
【0072】
[鉛筆硬度の測定]
得られた硬化膜をJIS5600−5−4に準拠し、500gの荷重で鉛筆硬度を測定した。硬度の確認は、三波長管の下で行い、5回の試験で傷が付かない鉛筆の硬度を硬化膜の硬度とした。
【0073】
[全光線透過率の測定]
得られた硬化膜の全光線透過率を NDH7000[ヘーズメーター、日本電色工業社製]を用いて測定した。