【解決手段】ロールと、油圧ポンプ12と油圧モータ14とを接続する油圧回路と、油圧ポンプ12と油圧モータ14とを連通するとともに油圧モータ14と作動油タンク11とを連通する振動発生位置と、油圧モータ14への作動油の供給を遮断するとともに油圧ポンプ12からの作動油を直接作動油タンク11に戻す中立位置と、に切り換わる切換弁13と、を備えた振動ローラであって、切換弁13が振動発生位置から中立位置に切り換わったとき、油圧モータ14の吐出ポート側の圧力が所定圧以上であるときに連通し、油圧モータ14の吐出ポートから吐出された作動油を油圧モータ14の吸入ポートに流す循環回路J1を有することを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る振動タイヤローラ(振動ローラ)Rは、振動する複数のタイヤMを備えた締め固め機械である。振動タイヤローラRは、タイヤMを振動させながら前後進することで、舗装路面(被転圧面)を転圧することができる。
【0017】
振動タイヤローラRは、前部車体1と、後部車体2と、前部車体1と後部車体2とを連結する連結部3と、前部タイヤアッセンブリ4と、後部タイヤアッセンブリ5と、駆動源としてエンジンEとを主に含んで構成されている。振動タイヤローラRは、前部車体1と後部車体2とが連結部3を中心に鉛直軸周りに回動可能なアーティキュレート式振動ローラである。ここにおける駆動源としては、電動モータでもよい。
【0018】
前部タイヤアッセンブリ4及び後部タイヤアッセンブリ5は、空気入りタイヤMを3つ又は4つ並設して構成されている。タイヤMの本数は限定されるものではない。前部タイヤアッセンブリ4は、防振ゴムを含むタイヤ支持部材6を介して前部車体1に接続されている。後部タイヤアッセンブリ5は、図示しないブラケットを介して後部車体2に接続されている。エンジンEは、後記する油圧ポンプ12の駆動源である。振動タイヤローラRは、運転席Sにある操作レバー(図示省略)を前後に傾倒させることにより、車両を前後進させることができる。
【0019】
前部タイヤアッセンブリ4及び後部タイヤアッセンブリ5は、起振機ケースを備えたタイヤ取付手段と、走行用油圧モータ(いずれも図示省略)と、タイヤ取付手段に取り付けられた3つ又は4つのタイヤMと、起振用の油圧モータ14(
図2参照)と、を主に含んで構成されている。起振機ケースには、後記する起振部15が内蔵されている。
【0020】
各タイヤアッセンブリの構造は、例えば、特開平9−31912に記載された公知の構造と略同等であるため、詳細な説明は省略する。本実施形態の前部タイヤアッセンブリ4及び後部タイヤアッセンブリ5は、いずれも振動可能な構成になっており両者の構造は略同等であるため、後部タイヤアッセンブリ5を例に説明する。
【0021】
なお、本実施形態では、ロールとして複数のタイヤ(空気入りタイヤ)Mを用いているが、鉄輪を用いてもよい。また、本発明は、アーティキュレート式だけでなく、リジッドフレーム式に採用することも可能であるし、タンデムローラ、マカダムローラ等に採用してもよい。
【0022】
図2は、本実施形態に係る振動用油圧装置の油圧回路図である。
図2に示すように、本実施形態の振動用油圧装置10は、作動油タンク11と、油圧ポンプ12と、切換弁13と、油圧モータ14と、各機器を連結する流路とを含んで主に構成されている。振動用油圧装置10は、油圧回路内に作動油を流通させて、油圧モータ14を駆動させることにより振動を発生させる装置である。振動用油圧装置10は、本実施形態では、低い振幅の「低振幅モード」と、高い振幅の「高振幅モード」と、振動を停止させる「振動停止モード」の3つのモードに切り換えることができる。
【0023】
図3は、本実施形態に係る起振部を示す図であって、(a)は模式側断面図であり、(b)は低振幅モードを示す正面図であり、(c)は高振幅モードを示す正面図である。
図3に示すように、起振部15は、起振軸16と、起振軸16に固定された固定偏心錘17と、起振軸16に対して可動式となる可動偏心錘18とで構成されている。
【0024】
起振部15は、起振軸16を回転させることにより、式1に示す振動力FをタイヤMに上下方向に発生させるものである。
F=mrω
2×sinωt(式1)
ここで、mは固定偏心錘17及び可動偏心錘18の質量であり、rは起振軸16の回転中心と固定偏心錘17及び可動偏心錘18全体の重心との距離であり、ωは起振軸16の角速度であり、tは時間である。
【0025】
起振部15は、固定偏心錘17の他に、起振軸16に対して可動式となる可動偏心錘18が設けられており、起振軸16の回転方向の正逆によって固定偏心錘17に対する可動偏心錘18の位相を変え、結果として距離rの値を変化させて、振動力の強弱を発生させるものである。
【0026】
図3の(b)に示すように、起振軸16が正回転(一方向回転)すると、可動偏心錘18,18が固定偏心錘17のストッパに当たるところまで起振軸16に対して相対的に回転し、固定偏心錘17に対して両側の可動偏心錘18,18の偏位の方向が逆となって起振力は打ち消す方向に作用し、低い振幅となる(低振幅モード)。
【0027】
一方、
図3の(c)に示すように、起振軸16が逆回転(他方向回転)すると、可動偏心錘18,18が固定偏心錘17のストッパに当たるところまで起振軸16に対して相対的に逆方向に回転し、固定偏心錘17に対して両側の可動偏心錘18,18の偏位の方向が一致し、振動力が合成されて高い振幅となる(高振幅モード)。
【0028】
また、起振軸16の回転を停止することにより、タイヤMの振動が停止される(振動停止モード)。運転席S(
図1参照)にこの「低振幅モード」、「高振幅モード」又は「振動停止モード」を切り換える切換スイッチが設けられており、例えば、アスファルト舗装では「低振幅モード」で転圧を行い、路盤では「高振幅モード」で締め固め転圧が行われる。
【0029】
図2に戻り、振動用油圧装置10について詳細に説明する。作動油タンク11は、作動油を貯留するタンクである。油圧ポンプ12は、エンジンEによって駆動され、作動油を油圧モータ14に供給する作動油の供給源である。
【0030】
図2の(b)に示すように、切換弁13は、振動モードに応じて作動油の流れを切り換える弁である。切換弁13は本実施形態では3位置6ポートの電磁弁を用いている。切換弁13は、ソレノイド13a,13bがそれぞれ励磁されることにより、右位置(低振幅モード)、左位置(高振幅モード)及び中立位置(振動停止モード)に位置するように構成されている。切換弁13の右位置及び左位置は、特許請求の範囲の「振動発生位置」に相当する。切換弁13には、第一ポートP1、第二ポートP2、第三ポートP3、第四ポートP4、第五ポートP5及び第六ポートP6がそれぞれ形成されている。
【0031】
油圧モータ14は、作動油が供給されることによって起振軸16を回転させる油圧式のモータである。油圧モータ14は、作動油の流通方向に応じて正逆回転可能になっている。油圧モータ14には、第一ポートQ1と、第二ポートQ2とが形成されている。第一ポートQ1及び第二ポートQ2は、作動油の流通方向(起振軸16の回転方向)によって吸入ポート又は吐出ポートとなる。つまり、第一ポートQ1が吸入ポートとなる場合、第二ポートQ2が吐出ポートとなる。一方、第二ポートQ2が吸入ポートとなる場合、第一ポートQ1が吐出ポートとなる。
【0032】
振動用油圧装置10の流路は、第一流路T1と、第二流路T2と、第三流路T3と、第四流路T4と、第五流路T5と、第六流路T6とで主に構成されている。第一流路T1は、油圧ポンプ12の吐出ポートP0と切換弁13の第一ポートP1とを連結している。第二流路T2は、切換弁13の第二ポートP2と作動油タンク11とを連結している。
【0033】
第三流路T3は、切換弁13の第四ポートP4と油圧モータ14の第一ポートQ1とを連結している。第四流路T4は、切換弁13の第五ポートP5と油圧モータ14の第二ポートQ2とを連結している。第五流路T5は、切換弁13の第六ポートP6と第二流路T2の一部とを連結している。第六流路T6は、第一流路T1の一部と切換弁13の第三ポートP3とを連結している。第六流路T6には、第一流路T1側から切換弁13側への一方向の流路を開通するチェックバルブ21が設けられている。特許請求の範囲の「油圧回路」とは、油圧ポンプ12、油圧モータ14及び第一流路T1〜第六流路T6で構成される部位である。
【0034】
振動用油圧装置10の流路は、さらに、第七流路T7、第八流路T8、第九流路T9及び第十流路T10を備えている。第七流路T7は、第一流路T1の一部と第五流路T5の一部とを連結している。第七流路T7には、リリーフバルブ22が設けられている。リリーフバルブ22は、所定の圧力が作用した場合に開通するように構成されている。リリーフバルブ22を通過した作動油は、第五流路T5及び第二流路T2を介して作動油タンク11に戻る。つまり、第七流路T7は、第一流路T1と第七流路T7との分岐点G1よりも下流側において故障によって作動油の流れが止まった場合に、迂回路となる流路である。迂回路となる第七流路T7を設けることで、故障時に振動用油圧装置10の各機器に過剰圧が作用して各機器が破損するのを防ぐことができる。
【0035】
第八流路T8は、第三流路T3の一部と第五流路T5の一部とを連結している。第八流路T8には、ポートリリーフバルブ23が設けられている。ここにおけるポートリリーフバルブ23は、チェックバルブ23a付のリリーフバルブである。ポートリリーフバルブ23は、チェックバルブ23aによって第五流路T5→第八流路T8→第三流路T3の流路を常に開通するとともに、所定の圧力が作用する場合以外は、第三流路T3→第八流路T8→第五流路T5の流通を遮断するように構成されている。
【0036】
第九流路T9は、第四流路T4の一部と第五流路T5の一部とを連結している。第九流路T9と第五流路T5との分岐点G3は、第八流路T8と第五流路T5との分岐点G2よりも第二流路T2に近い側(下流側)に位置している。第九流路T9には、ポートリリーフバルブ24が設けられている。ここにおけるポートリリーフバルブ24は、チェックバルブ24a付のリリーフバルブである。ポートリリーフバルブ24は、チェックバルブ24aによって第五流路T5→第九流路T9→第四流路T4の流路を常に開通するとともに、所定の圧力が作用する場合以外は、第四流路T4→第九流路T9→第五流路T5側への流通を遮断するように構成されている。
【0037】
ポートリリーフバルブ23,24は、所定圧以上の圧力が作用すると開弁することにより、この作動油を迂回させて振動用油圧装置10を構成する各機器に過剰圧が作用するのを防ぐバルブである。ポートリリーフバルブ23,24の「所定圧」は、例えば、本実施形態のように後記する循環回路J1の流れを遮断したときに油圧モータ14等の各機器が破損しないような値に設定することができる。
【0038】
第十流路T10は、油圧モータ14の第三ポートQ3と作動油タンク11とを連結している。第十流路T10は、油圧モータ14のドレン流路となる部位である。
【0039】
次に、振動用油圧装置10の作用について説明する。操作者は、エンジンEを駆動させた状態で、運転席Sの切換スイッチ(図示省略)を操作することにより、振動モードを変更することができる。本実施形態では、「低振幅モード」、「高振幅モード」、「振動停止モード」の3つの振動モードを備えている。
【0040】
<振動停止モード>
「振動停止モード」は、油圧回路に作動油を流通させるが、タイヤMは振動させない状態である。
図2の(a)に示すように、運転者が切換スイッチを「振動停止モード」に切り換えると、切換弁13が中立位置となる。「振動停止モード」では、油圧ポンプ12→第一流路T1→第二流路T2→作動油タンク11の経路で作動油が流通する。このとき、第一ポートP1は吸入ポートとなり、第二ポートP2は吐出ポートとなる。
【0041】
<低振幅モード>
「低振幅モード」は、起振軸16を正回転させて低い振幅でタイヤMを振動させる状態である。
図4の(a)に示すように、運転者が切換スイッチを「低振幅モード」に切り換えると、切換弁13のソレノイド13aが励磁されて切換弁13が右位置となり、「低振幅モード」となる。「低振幅モード」では、油圧ポンプ12→第一流路T1→第六流路T6→第三流路T3→油圧モータ14→第四流路T4→第五流路T5→第二流路T2→作動油タンク11の経路で作動油が流通する。このとき、切換弁13の第三ポートP3、第五ポートP5及び油圧モータ14の第一ポートQ1は、吸入ポートとなる。一方、切換弁13の第四ポートP4、第六ポートP6及び油圧モータ14の第二ポートQ2は、吐出ポートとなる。
【0042】
「低振幅モード」では、前記したように作動油が流れることで、油圧モータ14が正回転するとともに起振軸16も正回転する。これにより、タイヤMに低振幅の振動が発生する。
【0043】
<高振幅モード>
「高振幅モード」は、起振軸16を逆回転させて高い振幅でタイヤMを振動させる状態である。
図4の(b)に示すように、運転者が切換スイッチを「高振幅モード」に切り換えると、切換弁13のソレノイド13bが励磁されて切換弁13が左位置となり、「高振幅モード」となる。「高振幅モード」では、油圧ポンプ12→第一流路T1→第六流路T6→第四流路T4→油圧モータ14→第三流路T3→第五流路T5→第二流路T2→作動油タンク11の経路で作動油が流通する。このとき、切換弁13の第三ポートP3、第四ポートP4及び油圧モータ14の第二ポートQ2は、吸入ポートとなる。一方、切換弁13の第五ポートP5、第六ポートP6及び油圧モータ14の第一ポートQ1は、吐出ポートとなる。
【0044】
「高振幅モード」では、前記したように作動油が流れることで、油圧モータ14が逆回転するとともに起振軸16も逆回転する。これにより、タイヤMに高振幅の振動が発生する。
【0045】
<「低振幅モード」→「振動停止モード」>
次に、振動を停止させるときの作動油の流れについて説明する。
図5は、本実施形態に係る振動の停止操作時の作用を示す油圧回路図であって、(a)は低振幅モードから振動停止モードに切り換える場合を示し、(b)は高振幅モードから振動停止モードに切り換える場合を示す。
【0046】
図5の(a)に示すように、「低振幅モード」で起振軸16が回転しているときに、ソレノイド13aへの通電を切って切換弁13が中立位置に戻ると、前記した「振動停止モード」のように油圧ポンプ12→第一流路T1→第二流路T2→作動油タンク11の経路で作動油が流通する。これにより、油圧モータ14の第一ポートQ1に作動油が供給されなくなるが、起振軸16の回転は慣性のため、すぐには止まらず油圧モータ14も所定の時間回転し続ける。
【0047】
第三流路T3を流れていた作動油は、油圧モータ14の回転に伴い油圧モータ14の第二ポートQ2から吐出されて第四流路T4側に流れ出すが、切換弁13が中立位置であるため、第四流路T4内の作動油の流れが止められ回路圧力が急上昇する。
【0048】
そして、第四流路T4内の圧力がポートリリーフバルブ24の設定圧(所定圧)以上になると、ポートリリーフバルブ24の弁が開き、第四流路T4→第九流路T9→第五流路T5(T5b)→第八流路T8→第三流路T3→油圧モータ14の経路で作動油が流通する。つまり、第四流路T4→第九流路T9→第五流路T5(T5b)→第八流路T8→第三流路T3で作動油が循環する循環回路J1が形成され、油圧モータ14が回転する。なお、第五流路T5の下流部T5aには、油圧ポンプ12→第一流路T1→第二流路T2から分岐した作動油が補充されるため、ポートリリーフバルブ24を流通した作動油は、第五流路T5の下流部T5a側へは流れないようになっている。
【0049】
循環回路J1で作動油が循環した後に、循環回路J1内の圧力が、ポートリリーフバルブ24の設定圧未満になると、ポートリリーフバルブ24の弁が閉じて循環回路J1内の作動油の流れが遮断される。言い換えると、油圧モータ14の吐出ポート側に連結されている流路に設けられたポートリリーフバルブ(ここではポートリリーフバルブ24)が設定圧未満になると、当該ポートリリーフバルブの弁が閉じて循環回路J1内の作動油の流れが遮断される。これにより、油圧モータ14の第二ポート(吐出ポート)Q2側に連結されている第四流路T4側の圧力が上昇し、その圧力が油圧モータ14に作用するため、油圧モータ14の回転が強制的に停止される。よって、起振軸16の回転も止まり振動が停止する。
【0050】
<「高振幅モード」→「振動停止モード」>
図5の(b)に示すように、「高振幅モード」から「振動停止モード」に切り換える場合の停止に至る原理は、作動油の流通方向を除いて前記した「低振幅モード」から「振動停止モード」に切り換える場合と同じであるため、要点のみ説明する。
【0051】
「高振幅モード」から「振動停止モード」に切り換わると、切換弁13が中立位置に戻る。第四流路T4を流れていた作動油は、油圧モータ14の回転に伴い油圧モータ14の第一ポートQ1から吐出されて第三流路T3に流れ出すが、切換弁13が中立位置であるため、第三流路T3内の作動油の流れが止められ回路圧力が急上昇する。
【0052】
そして、第三流路T3内の圧力がポートリリーフバルブ23の設定圧(所定圧)以上になると、ポートリリーフバルブ23の弁が開き、第三流路T3→第八流路T8→第五流路T5(T5b)→第九流路T9→第四流路T4→油圧モータ14の経路で作動油が循環する。つまり、第三流路T3→第八流路T8→第五流路T5(T5b)→第九流路T9→第四流路T4で作動油が循環する循環回路J1が形成され、油圧モータ14が回転する。なお、第五流路T5の下流部T5aには、油圧ポンプ12→第一流路T1→第二流路T2から分岐した作動油が補充されるため、ポートリリーフバルブ23を流通した作動油は、第五流路T5の下流部T5a側へは流れないようになっている。
【0053】
循環回路J1で作動油が循環した後に、循環回路J1内の圧力が、ポートリリーフバルブ23の設定圧未満になると、ポートリリーフバルブ23の弁が閉じて循環回路J1内の作動油の流れが遮断される。言い換えると、油圧モータ14の吐出ポート側に連結されている流路に設けられたポートリリーフバルブ(ここではポートリリーフバルブ23)が設定圧未満になると、当該ポートリリーフバルブの弁が閉じて循環回路J1内の作動油の流れが遮断される。これにより、油圧モータ14の第一ポート(吐出ポート)Q1側に連結されている第三流路T3側の圧力が上昇し、その圧力が油圧モータ14に作用するため、油圧モータ14の回転が強制的に停止される。よって、起振軸16の回転も止まり振動が停止する。
【0054】
以上説明した本実施形態に係る振動タイヤローラRによれば、循環回路J1の流れが遮断されると、油圧モータ14の吐出ポートに接続されている流路(本実施形態では第三流路T3又は第四流路T4)の圧力が上昇し、当該圧力が油圧モータ14の吐出ポートに作用して強制的に起振軸16の回転が停止される。これにより、従来よりも短時間で油圧モータ14を停止させることができるため、振動を停止させる時における共振現象の発生を短くすることができる。よって、共振現象により車両が揺れることに起因する舗装路面の仕上がりに対する悪影響や、振動ローラに搭載さられた各装置及び運転者に対する悪影響も小さくすることができる。
【0055】
また、本実施形態では、振動用油圧装置10の油圧回路に循環回路J1を設けるとともにポートリリーフバルブ23,24を設けるだけであるため、簡易に製造することができる。
【0056】
ここで、
図6は比較例に係る振動用油圧装置の油圧回路図であって、(a)は低振幅モードを示し、(b)は振動停止モードを示す。
図6の(a)に示す比較例の油圧回路は、第八流路T8、第九流路T9、ポートリリーフバルブ23,24を備えていない点で前記した本実施形態と相違し、その他の構成は前記した本実施形態と同等である。つまり、比較例の油圧回路は前記した本実施形態の循環回路J1を備えていない。比較例の油圧回路では、本実施形態と同じ符号を付している。
【0057】
比較例の油圧回路において、
図6の(a)に示す「低振幅モード」から
図6の(b)に示す「振動停止モード」に切り換わると、第三流路T3及び第四流路T4を流れていた作動油の流れが遮断されるため、油圧モータ14の吐出ポートに連結された側の流路(ここでは第四流路T4)の圧力が急激に上昇し油圧回路を構成する機器(例えば、油圧モータ14)に過剰圧が作用して、破損するおそれがある。
【0058】
しかし、本実施形態によれば、
図5に示すように、ポートリリーフバルブ23,24の設定圧(所定圧)を、循環回路J1の流れを遮断したときに油圧モータ14等の各機器が破損しないような値に設定している。これにより、循環回路J1の流れが遮断されても油圧モータ14等の各機器に過剰圧が作用しないため、起振軸16を強制的に停止させても油圧モータ14の各機器が破損するのを防ぐことができる。
【0059】
また、従来のように「可変振幅振動機構」を採用すると、構造が複雑になり、製造コストが上昇するおそれがある。しかし、本実施形態の起振部15のように、固定偏心錘17及び可動偏心錘18を用いて油圧モータ14の回転方向に応じて振動モードを変化する構成にすることで、より簡易に製造することができる。また、油圧モータ14の回転方向に応じて二種類の振動モードを設けることができる。
【0060】
また、タイヤ(空気入りタイヤ)Mは、鉄輪(鋼製ロール)と比べて柔らかく、振動による影響を受け易いため、共振現象に起因する悪影響も大きくなる。しかし、本実施形態によれば、その共振現象の発生する時間を短くし、転圧ロールとしてタイヤMを採用した場合であっても、締固め施行に実質的な悪影響を与えないようにすることができる。
【0061】
以上本発明の実施形態について説明しが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態では一の油圧ポンプ12に対して、一の油圧モータ14を駆動させるようにしたが、一の油圧ポンプ12に対して二つ以上の油圧モータを駆動させるように油圧回路を構成してもよい。
【0062】
また、本実施形態では、高振幅モード及び低振幅モードの二種類の振動モードを設けたが、一種類であってもよい。
図7は、第一変形例に係る振動用油圧装置の油圧回路図であって、(a)は振動モードを示し、(b)は振動モードから振動停止モードに切り換える場合を示す。
【0063】
図7の(a)及び(b)に示すように、第一変形例に係る振動用油圧装置40は、振幅モードが一種類しかない点で前記した実施形態と相違する。つまり、振動用油圧装置40は、運転席Sの切換スイッチを切り換えることにより「振動モード」と「振動停止モード」の2つのモードに切り換えることができ、振動の振幅の変更はできない構成になっている。第一変形例では、前記した実施形態と相違する部分を中心に説明し、共通する部分は同じ符号を付して説明を省略する。
【0064】
第一変形例に係る起振部15’は、起振軸16と、固定偏心錘17とで構成されている。起振軸16は、油圧モータ14の一方向回転に伴って回転し、タイヤMに振動を発生させる。
【0065】
振動用油圧装置40は、作動油タンク11と、油圧ポンプ12と、切換弁43と、油圧モータ14と、各機器を連結する流路とを含んで主に構成されている。切換弁43は、「振動モード」又は「振動停止モード」に応じて作動油の流れを切り換える弁である。切換弁43は、2位置6ポートの電磁弁を用いている。切換弁43は、ソレノイド43aが励磁されることにより、右位置(振動モード)又は左位置(振動停止モード)に位置するように構成されている。右位置は、特許請求の範囲の「振動発生位置」に相当し、左位置は、特許請求の範囲の「中立位置」に相当する。油圧モータ14は、第一ポートQ1が吸入ポートとなり、第二ポートQ2が吐出ポートとなる。
【0066】
第八流路T8には、チェックバルブ44が設けられている。チェックバルブ44は、第五流路T5→第八流路T8→第三流路T3の流路を常に開通し、逆流を防止している。チェックバルブ44を設けないと、油圧ポンプ12から供給された作動油が逆流して作動油タンク11に戻ってしまい油圧モータ14に作動油が供給されなくなる。
【0067】
第九流路T9には、リリーフバルブ45が設けられている。リリーフバルブ45は、第四流路T4内に、所定以上の圧力が作用する場合に第四流路T4→第九流路T9→第五流路T5の流路を開通し、所定の圧力未満の場合は流通を遮断する。
【0068】
<振動モード>
次に、第一変形例の作用について説明する。「振動モード」は、油圧モータ14に作動油を流通させてタイヤMを振動させる状態である。
図7の(a)に示すように、運転者が切換スイッチを「振動モード」に切り換えると切換弁43のソレノイド43aが励磁されて切換弁43が右位置となり、「振動モード」となる。「振動モード」では、油圧ポンプ12→第一流路T1→第六流路T6→第三流路T3→油圧モータ14→第四流路T4→第五流路T5→第二流路T2→作動油タンク11の経路で作動油が流通する。これにより、起振軸16が一方向回転し、タイヤMに振動が発生する。
【0069】
<振動停止モード>
「振動停止モード」は、油圧回路に作動油を流通させるが、タイヤMは振動させない状態である。
図7の(b)に示すように、運転者が切換スイッチを「振動停止モード」に切り換えると、切換弁43のソレノイド43aへの通電が切られて左位置となり「振動停止モード」となる。「振動停止モード」では、油圧ポンプ12→第一流路T1→第二流路T2→作動油タンク11の経路で作動油が流通する。
【0070】
<「振動モード」→「振動停止モード」>
次に、振動を停止させるときの作動油の流れについ説明する。
図7の(b)に示すように、「振動モード」で起振軸16が回転しているときに、ソレノイド43aへの通電を切って切換弁43が左位置に戻ると、前記した「振動停止モード」のように油圧ポンプ12→第一流路T1→第二流路T2→作動油タンク11の経路で作動油が流通する。これにより、油圧モータ14の第一ポートQ1に作動油が供給されなくなるが、起振軸16の回転は慣性のため、すぐには止まらず油圧モータ14も所定の時間回転し続ける。
【0071】
第三流路T3を流れていた作動油は、油圧モータ14の回転に伴い油圧モータ14の第二ポートQ2から吐出されて第四流路T4側に流れ出すが、切換弁43が左位置であるため、第四流路T4内の作動油の流れが止められ回路圧力が急上昇する。
【0072】
そして、第四流路T4内の圧力がリリーフバルブ45の設定圧(所定圧)以上になると、リリーフバルブ45の弁が開き、第四流路T4→第九流路T9→第五流路T5(T5b)→第八流路T8→第三流路T3→油圧モータ14の経路で作動油が流通する。つまり、第四流路T4→第九流路T9→第五流路T5(T5b)→第八流路T8→第三流路T3で作動油が循環する循環回路J2が形成され、油圧モータ14が回転する。
【0073】
循環回路J2で作動油が循環した後に、循環回路J2内の圧力が、リリーフバルブ45の設定圧未満になると、リリーフバルブ45の弁が閉じて循環回路J2内の作動油の流れが遮断される。言い換えると、油圧モータ14の吐出ポート側に連結されている流路に設けられたリリーフバルブ45が設定圧未満になると、当該リリーフバルブ45の弁が閉じて循環回路J2内の作動油の流れが遮断される。これにより、油圧モータ14の第二ポート(吐出ポート)Q2側に連結されている第四流路T4側の圧力が上昇し、その圧力が油圧モータ14に作用するため、油圧モータ14の回転が強制的に停止される。よって、起振軸16の回転も止まり振動が停止する。
【0074】
以上説明した第一変形例のように振動モードが一種類であっても、前記した実施形態と略同等の効果を得ることができる。この場合、リリーフバルブ45は、油圧モータ14の吐出ポート(第二ポートQ2)に連結される流路(第四流路T4)に設けられる。また、第一変形例のように振動モードが一種類の場合、可動偏心錘18も省略できるため、より簡易に製造することができる。また、リリーフバルブ45に、チェックバルブを設けてもよい。
【0075】
なお、第一変形例において、チェックバルブ44をポートリリーフバルブ(チェックバルブ付のリリーフバルブ)23に換えるとともに、リリーフバルブ45をポートリリーフバルブ(チェックバルブ付のリリーフバルブ)24に換えてもよい。
本発明は、前記課題を解決するため、起振軸の回転により振動するロールと、駆動源により駆動される油圧ポンプと、当該油圧ポンプから供給される作動油により回転制御され前記起振軸を回転させる油圧モータと、を接続する油圧回路と、前記油圧ポンプの吐出ポートと前記油圧モータの吸入ポートとを連通するとともに前記油圧モータの吐出ポートと作動油タンクとを連通する振動発生位置と、前記油圧モータへの作動油の供給を遮断するとともに前記油圧ポンプからの作動油を直接前記作動油タンクに戻す中立位置と、に切り換わる切換弁と、を備え
かかる構成の循環回路は、油圧モータの吐出ポート側の圧力が所定圧以上であると連通し、所定圧未満であると作動油の流通が遮断される。循環回路の流れが遮断されると、油圧モータの吐出ポートに接続されている流路の圧力が上昇し、その圧力で強制的に起振軸の回転が停止される。これにより、従来よりも短時間で油圧モータを停止させることができるため、共振現象の発生を短くすることができる。
また、油圧回路に循環回路を設けるだけであるため、簡易に製造することができる。また、「所定圧」は、例えば、循環回路の流れを遮断したときに油圧モータ等の各機器が破損しないような値に設定することができる。これにより、油圧モータ等の各機器に過剰圧が作用しないため、強制的に停止させても振動用油圧装置の各機器が破損するのを防ぐことができる。
また、タイヤ(空気入りタイヤ)Mは、鉄輪(鋼製ロール)と比べて柔らかく、振動による影響を受け易いため、共振現象に起因する悪影響も大きくなる。しかし、本実施形態によれば、その共振現象の発生する時間を短くし、転圧ロールとしてタイヤMを採用した場合であっても、締固め
が、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態では一の油圧ポンプ12に対して、一の油圧モータ14を駆動させるようにしたが、一の油圧ポンプ12に対して二つ以上の油圧モータを駆動させるように油圧回路を構成してもよい。
の(b)に示すように、「振動モード」で起振軸16が回転しているときに、ソレノイド43aへの通電を切って切換弁43が左位置に戻ると、前記した「振動停止モード」のように油圧ポンプ12→第一流路T1→第二流路T2→作動油タンク11の経路で作動油が流通する。これにより、油圧モータ14の第一ポートQ1に作動油が供給されなくなるが、起振軸16の回転は慣性のため、すぐには止まらず油圧モータ14も所定の時間回転し続ける。