【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、請求項1記載のプロセスにより、また従属請求項の有利な実施形態およびさらなる実施形態により、この目的が達成される。これらの問題を解決するため、本発明は、標準化(normierten)DNAメチル化の決定のための方法、および少なくとも2個の試料間で相対DNAメチル化レベルを決定するための方法を提供する。
【0008】
第1の態様において、前記標準化(normierten)DNAメチル化レベルを決定するプロセスが開示され、該プロセスは:
a)DNAにおけるトランスポゾンまたはその断片の存在の定量的測定;
b)前記トランスポゾンまたはその断片内における、少なくとも1個の、CpGジヌクレオチドのメチル化が異なるC(einem differentiell methylierten C eines CpG Dinukleotids)の存在の定量的測定;および
c)工程a)およびb)で測定された値に基づく標準化(normierten)DNAメチル化レベルの決定;
という工程を含む。
【0009】
本発明は、ゲノム全体にわたってランダムに分布するトランスポゾンのメチル化レベルがゲノム全体のメチル化レベルを反映すると考えることが出来るという、驚くべき結果を利用するものである。本発明の原理は、第1の工程における、例えば試料由来の、DNA内のトランスポゾン(またはその断片)の存在の定量的測定;およびさらなる工程における、同一のDNA内の同一のトランスポゾン(またはその断片)内の少なくとも1個の、メチル化が異なるCpGジヌクレオチドのシトシンの存在の定量的測定;にある。そして、ゲノム全体を反映する標準化(normierten)DNAメチル化レベルを、測定された値同士の比率によって決定することが出来る。
【0010】
DNAのメチル化は、真核生物における遺伝子調節において、極めて重要な複製後のエピジェネティックな機構である。真核生物において、シトシンピリミジン塩基の5番目の炭素原子にメチル基が付加され、5−メチルシトシン(5mC)が形成されることには、重要な役割がある。このメチル基付加は、生体内において、メチル基のS−アデノシルメチオニン(メチル基供与体)からシトシン(メチル基受容体)へのDNAメチラーゼ(DNMTs)による転移によって触媒され、好ましくはグアニンの5’側に位置するシトシン(CpG)で起こる。
【0011】
脊椎動物のゲノムにおいて、5mCはCpGジヌクレオチドにおいてのみ生じ(Bestor. The DNA methyltransferases of mammals. Hum Mol Genet 2000; 2395−2402)、ヒトゲノムにおいて、多くの場合、パリンドローム型のCpGジヌクレオチドの両シトシンはメチル化されている。
【0012】
進化学的なメカニズム、およびメチルシトシンが自然に脱アミノ化されやすい傾向を有することにより、CpGジヌクレオチドは少なくとも哺乳類ゲノムにおいては極めて過小であって、0.8%という頻度となっており(ヒトの平均GC含量は約40%であり、ここからCpGジヌクレオチドの計算上の頻度は4%となるであろう)、通常、遺伝子の5’−または3’−NTRにしばしば局在する「CpGアイランド」においてのみ、より多く生ずる(Gardiner−Garden & Frommer. CpG islands in vertebrate genomes. J Mol Biol 1987; 261−282)。非コード領域への限定が存在する理由は、おそらく5mCのチミンへの脱アミノ化による点突然変異のリスクが増加することにある(Laird & Jaenisch. The role of DNA methylation in cancer genetic and epigenetics. Annu Rev Genet 1996; 441−464)。
【0013】
CpGアイランドは、500bp〜4kbのサイズと、>55%という高いGC含量を有する。CpGアイランドにおけるジヌクレオチド5’−CpG−3’の頻度は10〜20倍増加している。ヒトの全遺伝子(約25,000個)のうち3/4超はその開始領域にCpGアイランドを有する。
【0014】
一般に、高い転写活性を有する遺伝子は非メチル化ゲノム領域内に位置している。一方、メチル化領域においては、転写活性がほとんど、あるいは全く無い遺伝子が存在する。DNAメチル化とクロマチン凝縮との間には相関があり、これは密に凝縮したヘテロクロマチンにある遺伝子が一般に不活発なためである。クロマチンのこのような密な凝縮はヒストンH3およびH4の脱アセチル化およびメチル化により誘導され、これがヌクレオソームのDNAへのより強い結合をもたらし、そのため転写機構がDNAにアクセスすることがより難しくなる(Jenuwein. Re−SET−ting heterochromatin by histone methyltransferases. Trends Cell Biol 2001; 266−273)。CpG−メチル化DNAに結合するタンパク質MeCP2はヒストン脱アセチル化酵素をリクルートしてクロマチンの凝縮を開始する(Razin & Razin. CpG methylation, chromatin structure and gene silencing−a three−way connection. EMBO J. 1998; 4905−4908)。しかし、ヒストンメチル化酵素もDNAメチル基転移酵素をヘテロクロマチン領域に導くことができ、それによりそこでDNAメチル化が誘発される(Tamaru & Selker. A histone H3 methyltransferase controls DNA methylation in Neurospora crassa. Nature 2001; 277−283)。さらに、ヒストンアセチル化はおそらく対象となる遺伝子セグメントの活発な脱メチル化を引き起こす(Cervoni & Szyf. Demethylase activity is directed by histone acetylation. L Biol. Chem. 2001; 40778−40787)。
【0015】
先に述べたとおり、誤ったDNAメチル化は多くの場合娘細胞に安定に遺伝し、そのため生物体レベルで疾患を引き起こすことが多い。特に、例えば腫瘍細胞は、正常組織とは大きく異なるメチル化パターンを示す場合が多い。従って、メチル化レベルの分析を、例えば診断用途に用いることが考えられる。さらに、メチル化状態を直接に修飾/修正することも遺伝子調節の目的のために考えられる(Weiterhin wird auch eine gerichtete Anderung/Korrektur des Methylierungszustands zum Zwecke der Genregulation erwogen)。
【0016】
核酸のメチル化状態、特に特定のCpG部位のメチル化状態の分析のため、Frommerほか(Proc Natl Acad Sci U S A. 1992; 89(5):1827−31)によって最初に記載された、亜硫酸水素塩処理と、例えばその後の増幅/シーケンシングによる方法が確立されている。亜硫酸水素塩処理により核酸の非メチル化シトシン塩基がウラシル塩基に変換され、一方でメチル化シトシン塩基は変化しないままとなる。核酸のメチル化状態の分析のための各種技術、特に亜硫酸水素塩処理の概論は、Fraga et al., Biotechniques. 2002; 33(3):632, 634, 636−49、およびLaird, Nat Rev Cancer. 2003;3(4):253−66に記載されている。従って、出発材料の核酸のメチル化状態に依存して亜硫酸水素塩処理の反応から異なる配列を有する核酸配列が生じ、それを中でもPCRまたはシーケンシングによって分析した後、出発材料の核酸のメチル化状態を決定することができる。
【0017】
組織または生検試料等の試料のメチル化レベルの分析は、該試料が他の試料と比較され、両試料が異なるゲノム上の背景を有している場合には、従来の方法では常に容易にその限界に達する。すなわち、上述のように、腫瘍細胞は多くの場合アンバランスな染色体異常を有している。これらには、染色体全体、個々の染色体腕、およびより短いDNA配列セグメントの、獲得や喪失が含まれる。いくつかの研究は、腫瘍細胞のこれらのゲノムの不安定性がDNAのメチル化度が低いことによって引き起こされるという証拠を提供している。DNAの低メチル化の度合いは、ゲノムの不安定性および腫瘍の悪性度に対して比例的であることが見いだされている。
【0018】
本発明は、ゲノム全体にわたってランダムに分布するトランスポゾンのメチル化レベルがゲノム全体のメチル化レベルを反映すると考えることが出来るという、驚くべき結果を利用するものである。従って、ゲノムのメチル化レベルの標準化(normierte)された測定は、ゲノムにおけるトランスポゾン「それ自体」の定量的な存在を、該トランスポゾン内の少なくとも1つのメチル化差異の定量的な存在とともに測定すれば可能である。
【0019】
本明細書で用いられる「トランスポゾン」という語は、ゲノム中のある長さのDNAセグメントのことを指す。トランスポゾンは1または複数個の遺伝子を含み、ゲノム内におけるその位置を変化させることが可能である(トランスポジション)。トランスポゾンは、その移動性中間体がRNAによって構成される因子(レトロエレメント;クラスIトランスポゾン)でもよいし、またはその移動性中間体がDNAである因子(DNAトランスポゾン;クラスIIトランスポゾン)でもよい。
【0020】
本明細書で用いられる「トランスポゾン」という語は、このようなトランスポゾンの断片も常に包含する。トランスポゾンのこのような断片は進化過程においてゲノム中に生ずる。なぜなら、「ジャンプした」トランスポゾンは何ら選択圧を受けず、従って、もとの配列がゲノム中で突然変異により変化しうるからである。そのため、完全なトランスポゾンよりも、その部分領域のみがゲノム中に見いだされることが多く、これらは、多くの場合5’領域に局在する他のトランスポゾンの挿入や欠失により生成する。「トランスポゾンの断片」は、好ましくは核酸の連続する領域であって、≧40bp、≧80bp、≧100bp、好ましくは≧150bp、より好ましくは≧200bpの長さを有し、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、好ましくは98.5%、99%、99.5%、およびさらに好ましくは99.7%、99.9%、またはそれよりも高い相同性を、前記トランスポゾンの対応する核酸領域に対して有する領域を意味することを意図している。このような相同性は、例えば、FASTAアルゴリズムによって決定することができる。「トランスポゾン」および「転位因子」という語は互換的である。
【0021】
自律的DNAトランスポゾンはトランスポゼース酵素をコードするDNA配列からなる。トランスポゼースはトランスポゾンをゲノムから「切り出し」することができ、ゲノム中の新規サイトへ運び、そこでゲノム中へと挿入する。この過程は「保存的トランスポジション(conservative transposition)」と呼ばれる。DNAトランスポゾンの例としては:Ac(activator;活性化因子)転位因子(自律的トランスポゾン)およびDs(dissociator;解離因子)転位因子(自身のトランスポゼースを持たない非自律的トランスポゾン)が挙げられる。
【0022】
レトロトランスポゾンは真核生物の転位因子の大部分であり、より複雑な構造を有する。これらは宿主細胞にゲノム内部の「正常な」DNA配列として認識され、そのため宿主細胞の転写機構によって読み込まれ、RNAに転写される。しかし、レトロトランスポゾンは逆転写酵素をコードしており、それがこのRNAをDNAへと変換することを可能にしている。トランスポゼースは、生成したDNAの、宿主細胞のゲノム内への挿入も行う。このプロセスは「複製的トランスポジション(replicative transposition)」とも呼ばれる。従って、レトロトランスポゾンが機能的である限り、ゲノム中にいくつかのコピーが生産される。
【0023】
生物のゲノム中のアクティブなトランスポゾンの数は、種によって大きく異なる。例えばヒトゲノムにおいては、ごくわずかな割合のトランスポゾンしかアクティブではない。わずか約50個のLINEトランスポゾン(下記参照)がアクティブであり、DNAトランスポゾンは事実上アクティブではないと考えられ、そのためトランスポゾンの数はヒトの生涯でほぼ一定であると考えることができる。
【0024】
レトロトランスポゾンには主に2つのタイプがある:ウイルス型および非ウイルス型レトロトランスポゾンである。
【0025】
ウイルス型レトロトランスポゾンは概してレトロウイルスと極めて似た性質を有する。ウイルス型レトロトランスポゾンの例としては:Ty転位因子およびDrosophila copia転位因子が挙げられる。
【0026】
非ウイルス型レトロトランスポゾンは哺乳類の全トランスポゾンの大部分である。例としては、特に:LINE(long interspersed(transposable) element)、SINE(short interspersed(transposable) element)、およびAlu因子などが挙げられる。
【0027】
ヒトゲノムでは、約850,000個のLINEおよび1,500,000個のSINEが存在する。SINEにはAlu因子が含まれ、これはヒトゲノム内に最も高頻度に存在する転位因子のグループであって、ゲノムの約5%を占める。
【0028】
ウイルス型レトロトランスポゾンには、HERV(human endogenous retrovirus)も含まれる。これらは特徴的なアミノ酸部位に基づいてサブファミリーに分類される(例:HERV−KおよびHERV−W)。これらはヒトゲノムの8%を占めると見積もられている。これらは、ヒトの進化過程において繰り返し起こった、生殖細胞系列のレトロウイルス感染に由来する。しかし、これらの遺伝因子のほとんどは突然変異や欠失により転写的に不活性になった。少数のもののみがウイルス遺伝子であるgag、polおよびenvを含む全長の構成を有している。この場合、これらには調節配列モジュールを含むLTR(long terminal repeat)配列が隣接している。潜在的にアクティブなHERVは、正常細胞の遺伝子発現の完全性に干渉しないように、DNAメチル化によってサイレンシングされている。これに対して、HERVの転写やタンパク質生合成の増進が、各種腫瘍実体において見いだされる。
【0029】
ここで、「メチル化レベル」という語はDNAの脱メチル化またはメチル化を意味することを意図している。対象となるDNAは、少なくともその1カ所の部位でメチル化、または非もしくは脱メチル化している可能性がある。この状態は2値状態であり、そのため特定部位の脱メチル化およびメチル化は直接お互いに関連しており、メチル化レベルはこの少なくとも1カ所の部位の脱メチル化および/またはメチル化によって決定することができる。従って、標準化(normierten)DNAメチル化レベル、および相対メチル化レベルは、該DNAのメチル化および/または脱メチル化に基づいて決定することができる。
【0030】
ここで、「プライマー」および「オリゴヌクレオチド」という語は互換的に用いられる。プライマーが特定の配列に対して特異的であると考えられるのは、その対象となる相補的配列に対して≧75%、≧80%、≧85%、≧90%、好ましくは≧95%、≧97%、より好ましくは≧99%、または≧99.5%の配列同一性を有する場合である。特に好ましい実施形態においては、プライマーは対象となる配列またはその相補的配列に対して100%の配列同一性を有する。他の好ましい実施形態において、プライマーが特定の配列に対して特異的であると考えられるのは、それが高塩条件下で前記配列(またはその相補的配列)にハイブリダイズするであろう場合である。
【0031】
以下、「高塩条件」という語は、高塩濃度緩衝液、好ましくはカオトロピック塩を含有する高塩濃度緩衝液を意味することを意図する。高塩、好ましくはカオトロピック塩を含有する高塩は、水における核酸の溶解度を減少させる。その理由は、水素結合の断裂により、水中の核酸の二次および三次構造の安定性が減少することにある。そこで、もし極性表面が水素結合ドナーとして提供されれば、核酸はこの表面に結合する。なぜなら該核酸はそこで水中で存在するよりも良好な安定性で存在するためである。塩濃度が減少した場合、水は再び極性表面よりも良好な水素結合ドナーとなり、前記核酸は該表面から再び分離されうる。
【0032】
特に、しかし限定されることなく、「高塩濃度緩衝液」は、好ましくは≧100mM、より好ましくは≧500mM、さらに好ましくは≧1Mの高い塩(好ましくはカオトロピック物質)濃度を有する緩衝液を意味すると理解される。
【0033】
特に、しかし限定されることなく、「カオトロピック物質」または「カオトロピック塩」という語は、タンパク質および/または核酸の二次、三次および/または四次構造を変える物質であって、少なくとも一次構造をそのまま残し、極性物質の水中への溶解度を減少させ、および/または疎水性相互作用を高める物質を意味すると理解される。好ましいカオトロピック物質としては、塩酸グアニジン、(イソ)チオシアン酸グアニジン、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、(イソ)チオシアン酸ナトリウム、および/または尿素などが挙げられる。
【0034】
「増幅」または「増幅反応」の語は、対象となる核酸配列の濃度を少なくとも倍増させることを可能にするプロセスを意味することが意図される。
【0035】
等温および熱サイクル増幅反応は互いに区別される。前者において温度はプロセスを通じて一定であるが、後者は、反応および増幅を制御する手段である熱サイクルを経て行われる。
【0036】
好ましい等温増幅反応としては、例えば:
・ループ媒介等温増幅(loop mediated isothermal amplification;LAMP)、
・核酸配列ベース増幅(nucleic acid sequence based amplification;NASBA)、
・ローリングサークル連鎖反応(rolling circle chain reaction;RCCR)もしくはローリングサークル増幅(rolling circle amplification;RCA)、および/または
・転写媒介増幅(transcription mediated amplification;TMA)
が挙げられる。
【0037】
好ましい熱サイクル増幅反応としては、例えば:
・リガーゼ連鎖反応(ligase chain reaction;LCR)、および/または
・ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction;PCR)
が挙げられる。
【0038】
「ポリメラーゼ連鎖反応」(PCR)という語は、例えばBartlett & Stirling (2003)に記載のような、核酸のin vitroでの増幅のためのプロセスを意味することが意図される。
【0039】
「リガーゼ連鎖反応」(LCR)という語は、微量の核酸の検出工程であって、ポリメラーゼ連鎖反応と類似の様式で機能するが異なる酵素(ポリメラーゼではなくリガーゼ)を用いる検出工程、を意味することが意図される。DNA鎖あたり2種のプローブを連結して1つのプローブにする。1サイクルで生成した増幅産物は30〜50bpの長さしかないことが多く、それ自身が以降のサイクルで補充されるプライマーのための開始点として働く。
【0040】
「ループ媒介等温増幅」(LAMP)は等温核酸増幅のための方法であって、標的配列上の特定の領域を認識してそこに結合する6種の異なるプライマーが用いられる方法、を意味することが意図される。LAMPは鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを利用し、約65℃の等温で進行する。標的配列の増幅および置換は単一工程で行われる。
【0041】
「核酸配列ベース増幅」(NASBA)はRNAの増幅のための方法(Compton 1991)を意味することが意図される。この方法では、RNA鋳型が反応混合液に添加され、第1のプライマーが鋳型の3’末端の領域内の相補的配列に結合する。次いで、前記鋳型に相補的なDNA鎖が逆転写酵素により重合される。そして、前記RNA鋳型はRNase H(RNase HはRNA−DNAハイブリッドのRNAのみを消化し、一本鎖RNAは消化しない)により消化される。次に、第2のプライマーがDNA鎖の5’末端に結合する。T7RNAポリメラーゼがそれを前記DNA鎖に相補的なRNA分子の合成のための開始点として利用し、次いで該RNA分子を再び開始鋳型として利用することができる。NASBAは通常41℃の等温で行われ、特定の状況では、PCRと比べ、より速く、より良好な結果をもたらす。
【0042】
「転写媒介増幅」(TMA)は米国企業Gen−Probeにより開発された等温増幅法であって、NASBAに類似し、RNAポリメラーゼと逆転写酵素も用いられる方法(Hill,2001)を意味することが意図される。
【0043】
「ローリングサークル連鎖反応」(RCCR)または「ローリングサークル増幅」(RCA)は、ローリングサークル原理による通常の核酸複製を模倣した増幅法についてであり、特に米国特許5,854,033号に記載されている。
【0044】
定量PCRまたはqPCRとも呼ばれる「リアルタイムPCR」(逆転写PCRと混同しないこと)という語は、公知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の原理に基づき、さらに増幅されたDNAの定量を可能にする方法を意味することが意図される。定量はPCRサイクルの最中に行われる蛍光測定によっておこなわれる(「リアルタイム」の名称の由来)。蛍光はPCR産物の量に対して比例的に増加する。反応(数サイクルからなる)終了時、PCRの対数期において、得られた蛍光シグナルで定量がなされる。PCRの対数期(反応中の少数のサイクルに該当)にのみ、正確な定量が可能であり、それはこの段階で最適な反応条件が優勢であるためである。このように、この方法は、PCR(競合PCR等)完了後にのみ最初の評価を行い、多くの場合PCR断片のゲル電気泳動による分離を行う、他の定量的PCR法とは異なる。
【0045】
検出には、エチジウムブロマイドおよびSYBR Green I等の色素や、FRETプローブ、またはいわゆるDouble−dyeオリゴ(TaqManプローブとも呼ばれる)を使用してもよい。
【0046】
「Ct値」(閾値サイクル)という語は、増幅産物が初めて検出されうるPCRサイクルのことを指し、通常、蛍光が測定され、この蛍光が初めて有意にバックグラウンド蛍光よりも高くなるサイクルをCtという。
【0047】
PCR反応の最初の段階では、鋳型(すなわち増幅されるDNA)の量はまだ限られているが、増幅の最終段階では、産物の量はこれら産物による阻害が発生する程度まで増加し、産物の断片はますます互いにハイブリダイズするようになり、遊離体(educt)はゆっくりと消費される。中間段階においてのみ、増幅サイクル数と増幅産物の量との間に指数関数的な関係が存在する(「対数期」)。対数期が開始する時間の決定のため、上述のCt値が利用される。
【0048】
さらに、低いCt値は、少ない回数のPCRサイクルでバックグラウンドノイズを超える蛍光の有意な上昇が初めて起こるのに十分である(すなわち、比較的多量の鋳型が存在した)ことを意味し、一方で同様に、高いCt値はこれに多くのPCRサイクルが必要であること(すなわち、比較的少量の鋳型が存在した)を意味する。
【0049】
第1の態様において、本発明は、
a)DNAにおけるトランスポゾンまたはその断片の存在の定量的測定;
b)同一のトランスポゾンまたはその断片内における、少なくとも1個の、メチル化が異なるCpGジヌクレオチドのCの存在の定量的測定;および
c)工程a)およびb)で測定された値に基づく標準化(normierten)DNAメチル化レベルの決定;
の工程を含む、標準化(normierten)DNAメチル化レベルの測定のためのプロセスに関する。
【0050】
従って、本発明によると、特定のDNA(生検試料から単離されたもの等)内のトランスポゾンの存在が第1の工程で定量的に測定される。この工程は、試験したDNA中における前記トランスポゾンの密度/頻度(用いたDNAに対する)または数、すなわち、例えば試験したDNA中に存在するトランスポゾンのコピー数、に関する情報を提供する値を生成する。好ましい一実施形態において、この測定は、あらかじめ亜硫酸水素塩処理したDNAで行われる。
【0051】
そして第2の工程において、第1の工程で検出されたトランスポゾン内における、少なくとも1個の、メチル化が異なるCpGジヌクレオチドのシトシンの存在が定量的に測定される。好ましい一実施形態において、第1の工程においては同一のDNAがここで用いられる。例えば、試料から単離されたDNAを、好ましくはそれぞれ等量のDNAを含んだ2つに分割することができる。他の好ましい一実施形態においては、第2工程のこの測定は亜硫酸水素塩処理したDNAに対して行われる(この工程は以下でより詳細に論じる)。このように、得られた値は、ゲノム中の多数の異なるランダムな位置に分布するメチル化または非メチル化シトシンの存在に関する情報を提供する。すなわち、この第2工程は第1工程において測定されたトランスポゾン内のメチル化の異なるシトシンの数/量に関する情報を提供する。従って、試験されたトランスポゾン内のシトシンのメチル化の違いの程度を決定することができる。
【0052】
トランスポゾンはゲノム全体にランダムに分布するため、次の工程では、得られた前記2つの値によって標準化を行うことができ、ここで第1および第2工程で測定された値は相互の関係で評価される。ゲノム中にはトランスポゾンは多数存在するため、大きなサンプルサイズが得られる。そのため、得られた標準化(normierten)DNAメチル化の値は、対象のそれぞれのゲノムに対して標準化されたものと考えることができる、メチル化の相違(der differentiellen Methylierung)の値を反映する。
【0053】
さらなる実施形態において、第1および第2工程は順序が逆になってもよく、または同時に、例えばリアルタイムPCRによって行われてもよい。
【0054】
ここで、「定量的測定」とは、トランスポゾンの存在またはメチル化の相違(einer differentiellen Methylierung)の存在の検出を意味することが意図される。前記検出は単に定性的であるだけでなく、すなわちトランスポゾンまたはメチル化の相違(eine differentiellen Methylierung)が試験対象のDNA中に存在するか否かという疑問に答えるだけではなく、このような存在の定量も(例えば量、コピー数等を示すことにより)行われる。
【0055】
このような定量的測定を行うための各種方法は当業者に公知である。好ましい一実施形態において、このような定量的測定は、増幅、およびそれに続く生成された増幅産物の量の測定により達成される。より好ましい一実施形態において、前記増幅はPCRである。さらに好ましい一実施形態において、前記定量的測定はリアルタイムPCRでCt値を決定することにより達成される。さらなる一実施形態において、前記定量的測定はマーカーを付加したプローブ(例えば核酸プローブ)のハイブリダイゼーションと、それに続く、前記マーカーにより生成されたピークの高さを(直接または間接的に)測定することにより達成される。さらなる一実施形態においては、in situハイブリダイゼーション(FISH等)が行われ、その後、前記マーカーによって生成されたピークの高さが測定される。このような定量的測定のための他の方法としては、5−メチルシトシン特異的抗体を用いた検出や、メチル化DNAに結合する因子の特異的抗体を用いた間接的な検出などが挙げられる。このような因子としては、例えば、ゲノムの対称的にメチル化されたCpG部位に結合する核内抑制因子MeCP2、ならびにMBD1、MBD2およびMBD4などが挙げられる。
【0056】
さらなる実施形態において、前記DNAは生物、組織、細胞、生検材料または試料に由来するものである。好ましくは、前記DNAは単離されたDNAである。一実施形態において、単離されたDNAはゲノムおよび/または真核生物DNAである。好ましくはこのDNAは脊椎動物、より好ましくはヒトのDNAである。さらなる好ましい一実施形態において、前記DNAの提供はサンプリングそのものを含まず、既に得られたサンプル材料を基盤としたものである。さらなる好ましい一実施形態において、前記DNAが由来する組織、細胞、生検材料または試料は、正常な被検者または罹病した被検者もしくは患者からのものである。
【0057】
さらなる実施形態において、前記試料は血液試料、組織試料、唾液試料、尿試料、塗抹および糞便試料からなる群より選択される。好ましい一実施形態において、前記試料は尿試料である。これは特に、膀胱および/または前立腺癌の検出に有利である。
【0058】
本発明のさらなる実施形態において、前記トランスポゾンはLINEエレメント、Aluエレメント(Aluコンセンサス配列;Kariya et al. Gene. 1987;53(1):1−10)、HERVエレメントおよびこれらの断片からなる群より選択される。特定の一実施形態において、前記トランスポゾンはLINE−1エレメント(GenBank Accession M80343)またはその断片である。より好ましくは、前記トランスポゾンの断片はトランスポゾンのプロモーター領域である。これにはCpGが高頻度で存在するという利点があり、メチル化レベルを測定するのが容易である。最も好ましい実施形態において、前記トランスポゾンの断片はLINE−1エレメントのプロモーター領域である。
【0059】
ここで、「メチル化の相違」とは、異なる可能な形式で存在する、あるDNAのメチル化状態を意味することが意図される。「シトシン(C)のメチル化の相違」という場合、対象となるシトシンのメチル化状態のことを意味する。二者択一的に、それはメチル化した、すなわち前記シトシンが5mCの、状態であってもよく;あるいはそれは非メチル化(もしくは脱メチル化)の、すなわち対象となるシトシンが5’メチル基を有していない、状態であってもよい。
【0060】
メチル化の相違の存在(またはシトシンのメチル化の相違の存在)を測定するための好ましい1つの方法は、DNAの亜硫酸水素塩処理し、続いて生産された亜硫酸水素塩処理DNAの分析することに基づくものである。
【0061】
単離されたDNAから亜硫酸水素塩変換DNAを得るためには、その単離されたDNAを当業者に周知の亜硫酸水素塩反応により変換する。この反応において、DNAの非メチル化シトシンは亜硫酸水素塩によりウラシルに変換される。この変換の結果、変換された核酸の各種バリアントが、このような核酸の非メチル化シトシンの数に依存して存在しうる。例えば、2個のシトシンを含む核酸は、これらシトシンのメチル化状態次第で亜硫酸水素塩処理後に4種の異なるバリアントを生じうる。なぜなら、第1、第2または両方のシトシンが非メチル化状態であってウラシルに変換されるか、あるいは両方とも非メチル化状態でないことがありうるからである。好ましい一実施形態において、これらの各種バリアントは特異的プライマーまたはプライマーのセットを用いて検出することができる。一実施形態において、前記変換後に亜硫酸水素塩処理DNAの精製の工程をさらに行っても良い。さらなる一実施形態において、DNAの亜硫酸水素塩処理は本発明のプロセスの他の工程に含められてもよく、好ましくは、第1の工程として、またはCpGジヌクレオチドのメチル化が異なるシトシンの存在の定量的測定の前に、含められる。
【0062】
さらなる特に好ましい一実施形態において、工程a)は、トランスポゾンもしくはその断片に特異的な少なくとも1つのプライマー対による亜硫酸水素塩未処理DNAの増幅、または、亜硫酸水素塩処理トランスポゾンもしくはその断片に特異的な少なくとも1つのプライマー対による亜硫酸水素塩処理DNAの増幅であって、前記プライマーは前記トランスポゾンのメチル化の異なる部位を含まない、すなわちCpGジヌクレオチドのCもしくは変換されたU/Tを含まない、増幅を含み;さらに工程b)は、前記トランスポゾンまたはその断片に特異的な少なくとも1つのプライマー対(工程a)で決定したもの)による亜硫酸水素塩処理DNAの増幅を含み、該プライマー対は前記トランスポゾンのメチル化が異なる少なくとも1つの部位を含むプライマーを少なくとも1つ含み、すなわちメチル化されたCpGの少なくとも1個のCと、亜硫酸水素塩処理された非メチル化CpGの少なくとも1個のU/Tとを区別することができ;さらに工程c)は、工程a)およびb)において形成された増幅産物の比率によって、標準化(normierten)DNAメチル化レベルを決定することを含む。
【0063】
言い換えると、前記DNAは亜硫酸水素塩未処理(すなわち、例えば試料からの単離直後)のものであっても、工程a)における測定のために既に亜硫酸水素塩処理されていてもよい。前者のケースでは、トランスポゾンに特異的などのようなプライマーでもその増幅に用いてもよく、後者のケースでは、メチル化の異なる部位を含まない(すなわちCpGジヌクレオチドのシトシンを含まない)プライマーを用いるように留意すべきである。好ましい一実施形態において、工程a)およびb)には同じ量のDNAが用いられ、ここで前記DNAは、好ましくは1つの試料から一度の操作で単離されたものである。より好ましくは、等量のDNAが工程a)およびb)で用いられる。この場合も、該DNAは、好ましくは1つの試料から一度の操作で単離されたものである。
【0064】
常に亜硫酸水素塩処理DNAを用いて行われる工程b)においては、状況は逆になる;少なくとも1つのプライマーが工程a)において増幅されたトランスポゾンのメチル化が異なるサイト(すなわち、少なくとも1個のCpGジヌクレオチドのシトシン)を含んでいる必要がある。前記の少なくとも1つのプライマーが特異的な、前記の少なくとも1個のメチル化が異なるサイトは、センス鎖であってもアンチセンス鎖であっても問題ない。よって、このプライマーを使用し、出発DNAのメチル化の有無を、対象となる試験部位において検出することができる。CpGに特異的なプライマーを用いて増幅産物が得られた場合、もとのDNAでは対象となるサイトにメチル化が存在したことになる。これは、亜硫酸水素塩反応で変換が起こらなかったためである。もし亜硫酸水素塩処理CpGに特異的なプライマーを用いて増幅産物が得られた場合、もとのDNAでは対象となるサイトにメチル化が存在しなかった(脱メチル化が存在した)ことになる。従って、用いたプライマーの種類によってメチル化または脱メチル化を検出できる。
【0065】
本発明によるメチル化レベルの測定のため、トランスポゾンのDNAのメチル化または脱メチル化のいずれを測定してよい。これら2つの状態は直接的な対応関係にあるためである。従って、CpG特異的プライマー対が使用された場合、DNAメチル化レベルはメチル化を用いて測定される。亜硫酸水素塩処理CpG特異的プライマー対が使用された場合、DNAメチル化レベルは脱メチル化を用いて測定される。
【0066】
好ましい一実施形態において、前記の少なくとも1つのプライマー対の少なくとも1個のプライマーは、前記トランスポゾンの少なくとも1個のメチル化の異なる部位に対して特異的であり;より好ましくは、前記の少なくとも1つのプライマー対の両プライマーは前記トランスポゾンの少なくとも1個のメチル化の異なる部位に対して特異的である。これは、より良好な特異性と改善された増幅とが達成される利点を有する。
【0067】
さらに好ましい実施形態において、使用されるプライマーは、複数のメチル化の異なる部位に対して特異的である。このようなプライマーはCpGまたは亜硫酸水素塩処理CpGの複数のシトシンに対して特異的である。特に好ましい実施形態において、前記プライマーは2、3、4または4超の個数のメチル化の異なる部位に対して特異的である。
【0068】
さらに、前記プライマーはトランスポゾンに対して特異的であることから、これらは好ましい一実施形態においてLINEエレメント、Aluエレメント、HERVエレメント、HERV−Kエレメントまたはその断片に対して特異的である。特に好ましい一実施形態においては、前記プライマーはLINE−1エレメントまたはその断片に対して特異的である。より好ましくは、前記プライマーはトランスポゾンのプロモーター領域に対して特異的である。これはCpGの存在頻度が高く、そのためメチル化レベルの測定が容易であるという利点を有する。最も好ましい実施形態において、前記プライマーはLINE−1エレメントのプロモーター領域に対して特異的である。
【0069】
他の一実施形態において、使用される前記プライマーは少なくとも15ヌクレオチド、好ましくは18、19、20、21、22、23、24、25または25超のヌクレオチドの長さを有する。プライマー対には異なる長さを有するプライマーが含まれてよい。好ましい一実施形態において、前記プライマーは18〜35ヌクレオチドの長さを有し、より好ましい実施形態においては、前記プライマーは20〜30ヌクレオチドの長さを有する。
【0070】
好ましい一実施形態において、プライマー対の前記プライマーは少なくとも1個のCpGジヌクレオチドのシトシンに対してのみ特異的であるか、または少なくとも1個の亜硫酸水素塩処理CpGジヌクレオチドのシトシンに対してのみ特異的である。
【0071】
前記プライマーは任意の部位、すなわち、プライマーオリゴヌクレオチドの5’末端、3’末端、またはその間のいずれかの部位、のメチル化の異なる部位に対して特異的な、前記の少なくとも1個のヌクレオチドを含みうる。特に好ましい一実施形態において、メチル化の異なる部位に特異的な前記の少なくとも1個のヌクレオチドは、プライマーヌクレオチドの3’末端に位置する。これは、特異性が高いという利点を有する。
【0072】
さらなる特に好ましい一実施形態において、工程a)および工程b)で用いられる前記プライマー対はトランスポゾンの増幅された領域上で直接に近接する。「直接に近接する」という語は、≦6000bp、≦5000bp、≦4000bp、≦3000bp、≦2000bp、≦1000bp、≦800bp、≦600bp、≦500bp、より好ましくは≦400bpまたは≦300bp、およびさらに好ましくは≦200bpまたは≦100bpの距離が工程a)および工程b)で増幅されたトランスポゾンの領域間に存在することを意味することが意図される。さらに好ましい実施形態において、この距離は≦80bp、≦50bp、または≦10bpである。さらになお好ましい実施形態において、この距離は0bpであるか、または増幅された領域同士が重複する。
【0073】
当業者はその専門知識により、トランスポゾンの少なくとも1個のメチル化が異なる部位に対して特異的な、本発明の広範なプライマーを生産することができる。これはLINE−1エレメントのプロモーター領域を対象として以下に記載される。
【0074】
LINE−1エレメントのプロモーター領域の核酸配列(GenBank Accession M80343)は:
ggggggaggagccaagatggcCGaataggaacagctcCGgtctacagctcccagCGtgag
CGaCGcagaagaCGgtgatttctgcatttccatctgaggtacCGggttcatctcactagg
gagtgccagacagtgggCGcaggccagtgtgtgtgCGcacCGtgCGCGagcCGaagcagg
gCGaggcattgcctcacctgggaagCGcaaggggtcagggagttccctttctgagtcaaa
gaaaggggtgaCGgtCGcacctggaaaatCGggtcactcccaccCGaatattgCGctttt
cagacCGgcttaagaaaCGgCGcaccaCGagactatatcccacacctggctCGgagggtc
ctaCGcccaCGgaatctCGctgattgctagcacagcagtctgagatcaaactgcaaggCG
である。配列中、CpGは大文字で強調されている。
【0075】
従って、このプロモーター配列が完全にメチル化され、その後亜硫酸水素塩処理されると、次の核酸配列(配列番号1)になるはずである。
ggggggaggagTTaagatggTCGaaTaggaaTagTtTCGgtTtaTagTtTTTagCGtgag
CGaCGTagaagaCGgtgatttTtgTatttTTatTtgaggtaTCGggttTatTtTaTtagg
gagtgTTagaTagtgggCGTaggTTagtgtgtgtgCGTaTCGtgCGCGagTCGaagTagg
gCGaggTattgTTtTaTTtgggaagCGTaaggggtTagggagttTTTtttTtgagtTaaa
gaaaggggtgaCGgtCGTaTTtggaaaatCGggtTaTtTTTaTTCGaatattgCGTtttt
TagaTCGgTttaagaaaCGgCGTaTTaCGagaTtatatTTTaTaTTtggTtCGgagggtT
TtaCGTTTaCGgaatTtCGTtgattgTtagTaTagTagtTtgagatTaaaTtgTaaggCG
配列中、メチル化CpG、および亜硫酸水素塩処理によりCからU(またはT)に変換されたヌクレオチドは大文字で記載されている。
【0076】
このプロモーター配列が完全に脱メチル化され、その後亜硫酸水素塩処理されると、次の核酸配列(配列番号2)になるはずである。
ggggggaggagTTaagaTggTTGaaTaggaaTagTTTTGgTTTaTagTTTTTagTGTgagTGaTGTagaagaTGgTgaTTTTTgTaTTTTTaTTTgaggTaTTGggTTTaTTTTaTTagggagTgTTagaTagTgggTGTaggTTagTgTgTgTgTGTaTTGTgTGTGagTTGaagTagggTGaggTaTTgTTTTaTTTgggaagTGTaaggggTTagggagTTTTTTTTTTgagTTaaagaaaggggTgaTGgTTGTaTTTggaaaaTTGggTTaTTTTTaTTTGaaTaTTgTGTTTTTTagaTTGgTTTaagaaaTGgTGTaTTaTGagaTTaTaTTTTaTaTTTggTTTGgagggTTTTaTGTTTaTGgaaTTTTGTTgaTTgTTagTaTagTagTTTgagaTTaaaTTgTaaggTG
配列中、脱メチル化(および変換された)CpG、および亜硫酸水素塩処理によりCからU(またはT)に変換されたヌクレオチドは大文字で記載されている。
【0077】
このように、配列番号1および配列番号2に基づき、少なくとも1個のサイトで異なるメチル化を受けたDNA同士を区別するためにプライマーを選択することができる。もちろん、当業者は示されたセンス鎖に対応するアンチセンス鎖も存在するという事実を熟知している。アンチセンス鎖においては、前記5’−CpG−3’ジヌクレオチドに対応する5’−CpG−3’ジヌクレオチドが存在しており、これも異なるメチル化を受ける。従って、プライマーはアンチセンス鎖の配列情報に基づいて選択されてもよい。
【0078】
センスおよびアンチセンス鎖は亜硫酸水素塩処理後にはもはや相補的ではないため、1カ所のメチル化が異なる部位が存在する場合、4種の異なる特異的プライマーがまず生成されうる:1)同一の配列であって変換されたセンス鎖に特異的なもの;2)相補的であって変換されたセンス鎖に特異的なもの;3)同一の配列であって変換されたアンチセンス鎖に特異的なもの;4)相補的であって変換されたアンチセンス鎖に特異的なもの。メチル化が異なる部位は2つの状態でありうるため、8種の可能なプライマーが存在する。
【0079】
例として、まず2本鎖DNA配列:
5’−AGCACGT−3’(センス)
3’−TCGTGCA−5’(アンチセンス)
から出発する。
【0080】
亜硫酸水素塩処理後、これがそれぞれ、メチル化状態により、もはや相補鎖ではない鎖を生ずる:
メチル化:5’−AGUACGT−3’ および 3’−TUGTGCA−5’;
脱メチル化:5’−AGUAUGT−3’ および 3’−TUGTGUA−5’。
【0081】
ここで、これら4つの配列に対し、同一の配列を有するプライマー、およびその配列に相補的なプライマーが生成される。すなわち:
メチル化:
5’−AGUACGT−3’ および 5’−ACGTACT−3’、
5’−ACGTGUT−3’ および 5’−AACACGT−3’、
脱メチル化:
5’−AGUAUGT−3’ および 5’−ACATACT−3’、
5’−AUGTGUT−3’ および 5’−AACACAT−3’。
【0082】
トランスポゾンの1または複数個の(亜硫酸水素塩処理された)CpGジヌクレオチドのシトシンに対して、従って少なくとも1個のメチル化が異なる部位に対して特異的なこのようなプライマーの例およびさらに好ましい実施形態を、配列番号3〜1048または表1〜12において示す。これらのうち、表1〜4にはLINE−1エレメントに対する特に好ましいプライマーを記載し、表5〜8にはAluエレメントに対する特に好ましいプライマーを記載し、表9〜12にはHERV−Kエレメントに対する特に好ましいプライマーを記載する。前記プライマーは5’から3’の方向で記載されている。
【0083】
好ましい実施形態において、本発明は、本発明のプロセスにおける、これらオリゴヌクレオチドの以下のもの、およびその使用に関する。
【0084】
LINE−1エレメントのプロモーター領域における、亜硫酸水素塩で変換済のメチル化または脱メチル化センスまたはアンチセンス鎖に対して特異的な、同一の配列または相補的なプライマー配列、すなわち、配列番号3〜436;より好ましくは配列番号3〜112、または配列番号113〜220、または配列番号221〜336、または配列番号337〜436;さらに好ましくは配列番号3〜57、または配列番号58〜112、または配列番号113〜166、または配列番号167〜220、または配列番号221〜278、または配列番号279〜336、または配列番号337〜386、または配列番号387〜436。
【0085】
Aluエレメントのプロモーター領域における、亜硫酸水素塩で変換済のメチル化または脱メチル化センスまたはアンチセンス鎖に対して特異的な、同一の配列または相補的なプライマー配列、すなわち、配列番号437〜612;より好ましくは配列番号437〜476、または配列番号477〜522、または配列番号523〜570、または配列番号571〜612;さらに好ましくは配列番号437〜456、または配列番号457〜476、または配列番号477〜499、または配列番号500〜522、または配列番号523〜546、または配列番号547〜570、または配列番号571〜591、または配列番号592〜612。
【0086】
HERV−Kエレメントのプロモーター領域における、亜硫酸水素塩で変換済のメチル化または脱メチル化センスまたはアンチセンス鎖に対して特異的な、同一の配列または相補的なプライマー配列、すなわち、配列番号613〜1048;より好ましくは配列番号613〜708、または配列番号709〜796、または配列番号797〜922、または配列番号923〜1048;さらに好ましくは配列番号613〜660、または配列番号661〜708、または配列番号709〜752、または配列番号753〜796、または配列番号797〜859、または配列番号860〜922、または配列番号923〜985、または配列番号986〜1048。
【0087】
表1:LINE−1エレメントのプロモーター領域における、亜硫酸水素塩で変換済のメチル化または脱メチル化「センス」鎖に対して特異的な、好ましい「同一配列」のプライマー配列
【0088】
【表1】
【0089】
表2:LINE−1エレメントのプロモーター領域における、亜硫酸水素塩で変換済のメチル化または脱メチル化「センス」鎖に対して特異的な、好ましい「相補的」プライマー配列
【0090】
【表2】
【0091】
表3:LINE−1エレメントのプロモーター領域における、亜硫酸水素塩で変換済のメチル化または脱メチル化「アンチセンス」鎖に対して特異的な、好ましい「同一配列」のプライマー配列
【0092】
【表3】
【0093】
表4:LINE−1エレメントのプロモーター領域における、亜硫酸水素塩で変換済のメチル化または脱メチル化「アンチセンス」鎖に対して特異的な、好ましい「相補的」プライマー配列
【0094】
【表4】
【0095】
表5:Aluエレメントにおける、亜硫酸水素塩で変換済のメチル化または脱メチル化「センス」鎖に対して特異的な、好ましい「同一配列」のプライマー配列
【0096】
【表5】
【0097】
表6:Aluエレメントにおける、亜硫酸水素塩で変換済のメチル化または脱メチル化「センス」鎖に対して特異的な、好ましい「相補的」プライマー配列
【0098】
【表6】
【0099】
表7:Aluエレメントにおける、亜硫酸水素塩で変換済のメチル化または脱メチル化「アンチセンス」鎖に対して特異的な、好ましい「同一配列」のプライマー配列
【0100】
【表7】
【0101】
表8:Aluエレメントにおける、亜硫酸水素塩で変換済のメチル化または脱メチル化「アンチセンス」鎖に対して特異的な、好ましい「相補的」プライマー配列
【0102】
【表8】
【0103】
表9:HERV−Kエレメントにおける、亜硫酸水素塩で変換済のメチル化または脱メチル化「センス」鎖に対して特異的な、好ましい「同一配列」のプライマー配列
【0104】
【表9】
【0105】
表10:HERV−Kエレメントにおける、亜硫酸水素塩で変換済のメチル化または脱メチル化「センス」鎖に対して特異的な、好ましい「相補的」プライマー配列
【0106】
【表10】
【0107】
表11:HERV−Kエレメントにおける、亜硫酸水素塩で変換済のメチル化または脱メチル化「アンチセンス」鎖に対して特異的な、好ましい「同一配列」のプライマー配列
【0108】
【表11】
【0109】
表12:HERV−Kエレメントにおける、亜硫酸水素塩で変換済のメチル化または脱メチル化「アンチセンス」鎖に対して特異的な、好ましい「相補的」プライマー配列
【0110】
【表12】
当業者は、表1〜12に記載されるオリゴヌクレオチド配列のそれぞれがコア配列としてのみ理解されるべきであると認識しており、該コア配列は5’末端から、および/または3’末端から、短縮または伸長していてよい。これは本発明に開示される全てのオリゴヌクレオチド/プライマーに適用される。好ましい一実施形態において、表1〜12に示すオリゴヌクレオチドは5’末端および/または3’末端から、1〜20ヌクレオチド伸長している。より好ましくは、前記オリゴヌクレオチドは5’末端から、および/または3’末端から、5〜15ヌクレオチド伸長している。他の一実施形態においては、前記オリゴヌクレオチドは5’末端から、および/または3’末端から、全部で5ヌクレオチドまで短縮しており、その際、該オリゴヌクレオチドは常に少なくとも1個のCpGまたは亜硫酸水素塩処理CpGに対して特異的なままである。
【0111】
他の好ましい一実施形態において、プライマー対の前記プライマーはほぼ同一のTmSを有し、互いのTmSのずれは、好ましくは≦3℃、≦2℃、≦1℃、≦0.5℃、≦0.2℃または≦0.1℃である。
【0112】
他の好ましい一実施形態において、前記プライマーに囲まれた配列領域は、≧1かつ≦3000bp、好ましくは≧10かつ≦2000bp、さらに好ましくは≧30かつ≦800bp、最も好ましくは≧50かつ≦300bpの長さを有する。
【0113】
当業者は、プライマーは1対のみに限られず、複数対を用いてもよいことを認識しているであろう。従って、他の一実施形態において、前記プロセスは、トランスポゾンまたはその断片に特異的な2、3、4、5または5超の個数のプライマー対であって、それぞれが少なくとも1個のCpGジヌクレオチドのシトシンまたはCpGジヌクレオチドの亜硫酸水素塩処理済シトシンに対して特異的な少なくとも1個のプライマーを含むプライマー対、を用いて行われてもよい。好ましくは、これらのいくつかのプライマー対はほぼ同一のTmSを有する。
【0114】
さらに、工程a)において、亜硫酸水素塩未処理DNAを、少なくとも1つの、同じトランスポゾンまたはその断片の領域に対して特異的なプライマーのプライマー対で増幅するか;または亜硫酸水素塩処理DNAを、少なくとも1つの、同様にトランスポゾンに特異的なプライマー対であるが、そのプライマーが該トランスポゾンのメチル化が異なる部位を含まないプライマー対で増幅する。好ましい一実施形態においては、前記トランスポゾンの常に非メチル化されている領域に対して特異的なプライマーが使用される。予備的な配列分析により、当業者は、あるゲノム内のどの部位が常に非メチル化されているか決定することができる。すなわち、5mCは脊椎動物ではCpGジヌクレオチドにのみ生ずるため、このようなCpG配列のシトシンを含まない領域をそのような場合に選択することができる。
【0115】
表13〜18は標準化(normierung wieder)のためのこのようなオリゴヌクレオチドの好ましいものを示したものであり、該オリゴヌクレオチドは前記プロセスの工程a)のために、そして亜硫酸水素塩処理DNAが使用される場合に、用いてよい。表13〜14はLINE−1エレメントのための好ましいプライマーを開示するものであり、表15〜16はAluエレメントのための好ましいプライマーを開示するものであり、そして表17〜18はHERV−Kエレメントのための好ましいプライマーを開示するものである。そして、この増幅工程で産生される増幅産物を本発明による標準化のために使用することができる。
【0116】
好ましい実施形態において、本発明は、本発明のプロセスにおける、標準化のためのこのようなオリゴヌクレオチドの以下のもの、およびその使用に関する。
【0117】
LINE−1エレメントのプロモーター領域における、亜硫酸水素塩で変換済のセンスまたはアンチセンス鎖に対して特異的な、同一の配列または相補的なプライマー配列、すなわち、配列番号1049〜1227;より好ましくは配列番号1049〜1145、または配列番号1146〜1227;さらに好ましくは配列番号1049〜1096、または配列番号1097〜1145、または配列番号1146〜1192、または配列番号1193〜1227。
【0118】
Aluエレメントのプロモーター領域における、亜硫酸水素塩で変換済のセンスまたはアンチセンス鎖に対して特異的な、同一の配列または相補的なプライマー配列、すなわち、配列番号1228〜1257;より好ましくは配列番号1228〜1243、または配列番号1244〜1257;さらに好ましくは配列番号1228〜1237、または配列番号1238〜1243、または配列番号1244〜1250、または配列番号1251〜1257。
【0119】
HERV−Kエレメントのプロモーター領域における、亜硫酸水素塩で変換済のセンスまたはアンチセンス鎖に対して特異的な、同一の配列または相補的なプライマー配列、すなわち、配列番号1258〜1415;より好ましくは配列番号125.8〜1323、または配列番号1324〜1415;さらに好ましくは配列番号1258〜1289、または配列番号1290〜1323、または配列番号1324〜1371、または配列番号1372〜1415。
【0120】
表13:LINE−1エレメントのプロモーター領域における、亜硫酸水素塩で変換済の「センス」鎖に対して特異的な、好ましい「同一配列」および「相補的」プライマー配列。
【0121】
【表13】
【0122】
表14:LINE−1エレメントのプロモーター領域における、亜硫酸水素塩で変換済の「アンチセンス」鎖に対して特異的な、好ましい「同一配列」および「相補的」プライマー配列。
【0123】
【表14】
【0124】
表15:Aluエレメントにおける、亜硫酸水素塩で変換済の「センス」鎖に対して特異的な、好ましい「同一配列」および「相補的」プライマー配列。
【0125】
【表15】
【0126】
表16:Aluエレメントにおける、亜硫酸水素塩で変換済の「アンチセンス」鎖に対して特異的な、好ましい「同一配列」および「相補的」プライマー配列。
【0127】
【表16】
【0128】
表17:HERV−Kエレメントにおける、亜硫酸水素塩で変換済の「センス」鎖に対して特異的な、好ましい「同一配列」および「相補的」プライマー配列。
【0129】
【表17】
【0130】
表18:HERV−Kエレメントにおける、亜硫酸水素塩で変換済の「アンチセンス」鎖に対して特異的な、好ましい「同一配列」および「相補的」プライマー配列。
【0131】
【表18】
【0132】
当業者は上記で説明したスキームに従い、任意の他のトランスポゾンまたはその断片のためのプライマーを提供することも可能であろう。
【0133】
本発明によると、前記標準化(normierten)DNAメチル化レベルの決定は、前記の2つの増幅工程(工程a)およびb))で形成された増幅産物の比率に基づいて行われる。特定の実施形態において、該比率は、形成された増幅産物の量に基づき、より好ましくは増幅サイクルあたりの形成された増幅産物の増加に基づき、さらに好ましくはリアルタイムPCR中のサイクル閾値(Ct)に基づき、決定される。
【0134】
一実施形態においては、形成された2つの増幅産物の総量が同一回数の増幅サイクルの後に測定され、相互の関係において評価される。形成された増幅産物を測定するための各種方法は当業者に公知であり、その方法としては分光法、エチジウムブロマイドまたは銀による染色、デンシトメトリーによる測定、および、放射標識とその後のシンチレーション測定等による測定などが挙げられる。
【0135】
好ましい一実施形態において、前記の2つの増幅工程で形成された増幅産物の測定は、該増幅産物そのものの形成中にリアルタイムPCRによって達成される。他の好ましい一実施形態において、前記の2つの増幅工程で形成された増幅産物の測定は、同時にリアルタイムPCR中に行われる。
【0136】
前記の2つの増幅工程で形成された増幅産物の測定後、第2の増幅工程(工程b))の増幅産物の数値は、第1の増幅工程(工程a))の増幅産物の数値を用いて、例えば測定された値の除算または減算により、標準化される。このように、試験されたDNA領域の出現全体に対して標準化(normierten)メチル化レベル(すなわち、標準化された(脱)メチル化)が決定され、これは全ゲノムのメチル化レベルを反映していると仮定することができる。
【0137】
好ましい一実施形態において、工程a)およびb)の増幅、ならびに形成された増幅産物の測定は、リアルタイムPCRによって達成される。すなわち、前記トランスポゾンのメチル化が異なる少なくとも1個の部位に特異的なプライマー対(工程b)、Ctm);および、前記トランスポゾンのメチル化が異ならない領域に特異的なプライマー対(工程a)、Ctk);の両者に対してサイクル閾値(Ct)を決定する。Ct値とは、蛍光が初めてバックグラウンド蛍光よりも高くなるPCRのサイクルを記述するものであり、従ってPCRの対数期の開始を示すものである。その後、工程a)のCt値を工程b)のCt値から減算し、標準化(normierten)メチル化レベル(ΔCt)が得られる。従って、ΔCtは次のように算出することができる:ΔCt=Ctm−Ctk。
【0138】
前述の通り、本発明のプロセスは、異なるゲノム上の背景(例えば、腫瘍細胞に部分的に起こる個々の染色体の複製の誤り;トリソミー等、におけるもの)を有する2つのゲノムのメチル化レベル同士を比較することも可能にする。「正常ゲノム」(コントロール)からのDNAの標準化(normierten)メチル化レベルが患者からのものと比較される場合、この2つのゲノム間のメチル化レベルの相違が疾患の指標となりうる。よって、相対DNAメチル化レベルを測定するための本発明のプロセスは、(臨床)診断に対して極めて重要である。
【0139】
従って、本発明の第2の態様は、相対DNAメチル化レベルの決定のためのプロセスに関するものであり、該プロセスは:
a)第1のDNAおよび第2のDNAに対する、本発明の第1の態様の工程a)〜c)による標準化(normierten)メチル化レベルの測定;および
b)第1および第2のDNAに対して測定された標準化(normierten)メチル化レベルの比に基づく、相対DNAメチル化レベルの決定;
という工程を含む。
【0140】
言い換えると、本発明の第1の態様の上記プロセスを、例えば、異なる(臨床)試料に由来するものであってよい2種の異なるDNAに対して行い、得られた前記2種のDNAの標準化(normierten)メチル化レベルを互いに除算する。その後、前記2つのメチル化レベルの比から、例えば癌に関して判定を行い、および/または診断を行うことができる。
【0141】
一実施形態においては、2種を超えるDNAの相対メチル化レベルが決定される。他の一実施形態においては、試験すべき少なくとも1種のDNAのメチル化レベルを、複数の「正常ゲノム」のメチル化レベルの平均値で除算する。このように、例えば、≧10、≧50、または≧100の正常被検者の標準化(normierten)メチル化レベルを測定し、そこから算出された平均値を用いて、患者の標準化(normierten)メチル化レベルから比を算出する。他の一実施形態においては、患者の標準化(normierten)DNAメチル化レベルを用いて、個々の試料の標準化(normierten)DNAメチル化レベルから、またはいくつかの試料/DNA(好ましくは≧10、≧50、または≧100)の平均標準化DNAメチル化レベルから、比を算出し、ここで、これら後者の試料は疾患のメチル化パターンを有するDNAを含む。
【0142】
一実施形態において、前記2種のDNAのうち少なくとも一方は試料に由来し;好ましくは、該DNAはこの試料から単離されたものである。好ましい一実施形態においては、両者DNAがそれぞれの試料に由来する。他の好ましい一実施形態において、第1の試料は正常被検者からの試料であり、一方、第2の試料は患者からの試料である。さらに好ましい一実施形態において、第1の試料は少なくとも1個の腫瘍細胞を含む試料であり、第2の試料は患者からの試料である。従って、第1の試料/DNAはこれと患者からの試料とが比較されるネガティブまたはポジティブコントロールの役割をする。他の一実施形態において、前記ポジティブコントロールはHT1376DNAである。
【0143】
他の一実施形態において、前記2種のDNAのうちの一方の標準化(normierten)メチル化レベルの測定は、第2のDNAの標準化(normierten)メチル化レベルの測定の1日、1週間、1ヶ月または1年前に行われる。
【0144】
他の一実施形態において、前記2種の試料のうちの少なくとも一方は、血液試料、組織試料、唾液試料、尿試料、塗抹および糞便試料からなる群より選択される。好ましい一実施形態において、前記試料は尿試料である。
【0145】
本発明のプロセスの他の一工程においては、相対DNAメチル化レベルの決定が、第1および第2のDNAの標準化(normierten)メチル化レベルの比率によって、例えば測定された数値を除算または減算することにより、行われる。
【0146】
好ましい一実施形態においては、標準化(normierten)メチル化レベルの測定は上記のようにリアルタイムPCRによって行われる。例えば試験される患者試料に由来してもよい、第2のDNAのΔCt値(ΔCt2)と、例えば標準試料に由来してもよい、第1のDNAのΔCt値(ΔCt1)との相違が、ΔΔCt=ΔCt2−ΔCt1として計算される場合、前記第2のDNAの相対メチル化レベルは2−ΔΔCtとして示すことができる。このように、第2のDNAの第1のDNAに対する相対的なメチル化は、CpGのシトシンに対して特異的なプライマーが増幅に使用された場合に算出され、相対的な脱メチル化は、亜硫酸水素塩処理されたCpGのシトシンに対して特異的なプライマーが増幅に使用された場合に算出される。
【0147】
前記の2つの増幅工程で形成された増幅産物の比率を、プロセスの正確さを高めるために、反復的な測定および平均値の生成によって決定することができるということは、当業者に公知である。従って、本発明の一実施形態においては、増幅産物のいくつかの量、またはDNAに対して測定されたCt値、の平均値が算出される。
【0148】
他の一実施形態において、本発明は変化したDNAメチル化と関連する疾患の検出または診断のためのプロセスを開示する。好ましい一実施形態において、このような疾患は腫瘍である。他の好ましい一実施形態においては、標準試料からのDNAの相対メチル化レベル、および試験する試料からの(例えば患者からの尿または唾液試料といった、上述の試料のうちの1つからの)DNAの相対メチル化レベルが決定される。好ましい一実施形態においては、前記腫瘍は、患者、または患者からの試料において、診断/検出される。
【0149】
本発明の一実施形態においては、前記標準試料は正常被検者に由来するものであり、および/または、そこから得られた前記DNAは腫瘍が存在しない場合に優位であることが知られるメチル化レベルを有する。本発明の他の実施形態において、前記標準試料は、腫瘍に罹患する患者に由来するものであり、および/または、腫瘍が存在する場合に優位であることが知られるメチル化レベルを有する。本発明の好ましい一実施形態においては、前記標準試料は、その腫瘍疾患が型が分類されている罹病被検者に由来するものである。前記標準試料は、培養された、好ましくは型が分類されている腫瘍細胞、例えばHT1376細胞からなっていてもよい。上述のように、いくつかの標準試料の平均値を前記標準試料に使用してもよい。
【0150】
本発明の一実施形態において、被検者からの試料の採取は本発明のプロセスの一部であり、本発明の他の特定の一実施形態においては、被検者からの試料の採取は本発明のプロセスの一部ではない。
【0151】
患者試料の標準化(normierten)DNAメチル化レベルが標準試料の標準化(normierten)DNAメチル化レベルからずれている場合、すなわち、相対DNAメチル化レベルを生成するための前記2つの数値を除算したものが、例えば1に等しくない数値を生じた場合、これは変化したDNAメチル化と関連する疾患、好ましくは腫瘍、の存在の指標となる。
【0152】
一実施形態においては、標準試料からのDNAとの比較した際の、試料からのDNAにおけるDNAメチル化の減少、DNA脱メチル化の減少、DNAメチル化の増加、またはDNA脱メチル化の増加は、このような疾患の存在を示す。
【0153】
好ましい一実施形態においては、標準試料からのDNAとの比較した際の、試料からのDNAにおけるDNAメチル化の減少またはDNA脱メチル化の増加は、腫瘍の存在を示す。本発明のより好ましい一実施形態においては、DNAメチル化の減少またはDNA脱メチル化の増加における相違は、前記腫瘍の悪性度と相関する。
【0154】
さらなる好ましい実施形態において、この腫瘍は:膀胱腫瘍、前立腺腫瘍、乳癌、気管支癌、白血病、腸癌、精巣腫瘍、鼻咽腔癌、子宮頸癌、膵癌および/または胃癌からなる群より選択される。
【0155】
さらなる一態様において、本発明は、例えば本発明のプロセスの増幅工程におけるプライマーとして使用することのできる、オリゴヌクレオチドに関する。
【0156】
一実施形態において、前記オリゴヌクレオチドはトランスポゾンまたはその断片に対して特異的であり、前記トランスポゾンはLINEエレメント、Aluエレメント、HERVエレメント、HERV−Kエレメントまたはその断片からなる群より選択される。特定の一実施形態において、前記トランスポゾンはLINE−1エレメントまたはその断片である。より好ましくは、前記トランスポゾンの断片はLINEエレメントのプロモーター領域である。特定の一実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは亜硫酸水素塩処理トランスポゾンのセンスまたはアンチセンス鎖に対して同一の配列を有するか、または相補的であり、少なくとも1個の、該トランスポゾンのメチル化が異なる部位を含む。さらに好ましい一実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは亜硫酸水素塩処理トランスポゾンのセンスまたはアンチセンス鎖に対して同一の配列を有するか、または相補的であり、該トランスポゾンのメチル化が異なる部位を含まない。
【0157】
好ましい一実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは少なくとも1つの、前記トランスポゾンのメチル化が異なる部位を含む。さらなる一実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは常に非メチル化されているトランスポゾンの領域に対して;好ましくはCpGジヌクレオチドのシトシンを含まない領域に対して;特異的である。
【0158】
さらに好ましい一実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは≧15ヌクレオチド;好ましくは≧18、≧19、≧20、≧21、≧22、≧23、≧24または25≧ヌクレオチドの長さを有する。さらに好ましい一実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは≧18かつ≦35ヌクレオチドの長さを有し;より好ましくは≧20かつ≦30ヌクレオチドの長さを有する。
【0159】
他の一実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは配列番号3〜1415からなる群より選択される配列を有する。
【0160】
さらなる一実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは配列番号3〜1048からなる群より選択される配列を有し、該配列は5’末端および/または3’末端から短縮または(個々のトランスポゾンによって)伸長していてよい。好ましい一実施形態において、本発明の前記オリゴヌクレオチドは5’末端および/または3’末端から1〜20ヌクレオチド伸長しており;より好ましくは、前記オリゴヌクレオチドは5’末端および/または3’末端から5〜15ヌクレオチド伸長している。他の一実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは5’末端および/または3’末端から全部で5ヌクレオチドまで短縮しており、その場合、該オリゴヌクレオチドは常に少なくとも1個のCpGまたは亜硫酸水素塩処理CpGに対して特異的なままである。
【0161】
さらなる一実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは、前記オリゴヌクレオチド内の任意の部位、すなわち、前記オリゴヌクレオチドの5’末端、3’末端、またはその間のいずれかの部位、のメチル化が異なる部位に対して特異的な、前記の少なくとも1個のヌクレオチドを含む。特に好ましい一実施形態において、メチル化が異なる部位に対して特異的な前記の少なくとも1個のヌクレオチドは、前記ヌクレオチドの3’末端に位置する。これは、特異性が高いという利点を有する。
【0162】
さらなる一実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは配列番号3〜436からなる群より選択され;より好ましくは配列番号3〜112、または配列番号113〜220、または配列番号221〜336、または配列番号337〜436;さらに好ましくは配列番号3〜57、または配列番号58〜112、または配列番号113〜166、または配列番号167〜220、または配列番号221〜278、または配列番号279〜336、または配列番号337〜386、または配列番号387〜436である。
【0163】
さらなる実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは配列番号437〜612からなる群より選択され;より好ましくは配列番号437〜476、または配列番号477〜522、または配列番号523〜570、または配列番号571〜612;さらに好ましくは配列番号437〜456、または配列番号457〜476、または配列番号477〜499、または配列番号500〜522、または配列番号523〜546、または配列番号547〜570、または配列番号571〜591、または配列番号592〜612である。
【0164】
さらなる実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは配列番号613〜1048からなる群より選択され;より好ましくは配列番号613〜708、または配列番号709〜796、または配列番号797〜922、または配列番号923〜1048;さらに好ましくは配列番号613〜660、または配列番号661〜708、または配列番号709〜752、または配列番号753〜796、または配列番号797〜859、または配列番号860〜922、または配列番号923〜985、または配列番号986〜1048である。
【0165】
さらなる実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは1049〜1227からなる群より選択され;より好ましくは配列番号1049〜1145、または配列番号1146〜1227;さらに好ましくは配列番号1049〜1096、または配列番号1097〜1145、または配列番号1146〜1192、または配列番号1193〜1227である。
【0166】
さらなる実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは配列番号1228〜1257からなる群より選択され;より好ましくは配列番号1228〜1243、または配列番号1244〜1257;さらに好ましくは配列番号1228〜1237、または配列番号1238〜1243、または配列番号1244〜1250、または配列番号1251〜1257である。
【0167】
さらなる実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは配列番号1258〜1415からなる群より選択され;より好ましくは配列番号1258〜1323、または配列番号1324〜1415;さらに好ましくは配列番号1258〜1289、または配列番号1290〜1323、または配列番号1324〜1371、または配列番号1372〜1415である。