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特開2016-196084高気孔率超砥粒樹脂製品および製造方法
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  • 特開2016196084-高気孔率超砥粒樹脂製品および製造方法 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-196084(P2016-196084A)
(43)【公開日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】高気孔率超砥粒樹脂製品および製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24D 3/32 20060101AFI20161028BHJP
   B24D 3/02 20060101ALI20161028BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20161028BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20161028BHJP
【FI】
   B24D3/32
   B24D3/02 A
   B24D3/00 320B
   H01L21/304 622F
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-140779(P2016-140779)
(22)【出願日】2016年7月15日
(62)【分割の表示】特願2014-247815(P2014-247815)の分割
【原出願日】2009年5月7日
(31)【優先権主張番号】61/132,867
(32)【優先日】2008年6月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/387,792
(32)【優先日】2009年5月7日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】391010770
【氏名又は名称】サンーゴバン アブレイシブズ,インコーポレイティド
(71)【出願人】
【識別番号】507169495
【氏名又は名称】サン−ゴバン アブラジフ
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188857
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 智文
(72)【発明者】
【氏名】ラチャナ・ディー・ウパディヤイ
【テーマコード(参考)】
3C063
5F057
【Fターム(参考)】
3C063AA02
3C063AB05
3C063BA03
3C063BB02
3C063BB03
3C063BB07
3C063BC03
3C063BC09
3C063BD01
3C063BG10
3C063EE10
3C063FF08
3C063FF23
5F057AA03
5F057AA23
5F057BA21
5F057BB03
5F057CA14
5F057DA11
5F057EB16
5F057EB17
5F057EB18
5F057EB20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】十分な強度および磨耗特性を有し、硬い加工物を荒削りまたは仕上げすることができる研削工具を提供する。
【解決手段】超砥粒からなる砥粒セグメント18を備える工具10などの超砥粒製品であって、超砥粒粒子成分、および超砥粒成分が分布している熱可塑性ポリマー成分、および熱硬化性ポリマー成分を含む多孔質連続相を含む。また、超砥粒製品の超砥粒製品前駆体は、超砥粒粒子成分、結合剤成分、および被包ガスのポリマー発泡剤を含む。該超砥粒製品を形成する方法は、超砥粒、結合剤成分、および被包ガスのポリマー発泡剤を混合して、超砥粒製品前駆体を形成するステップを含み、混合された超砥粒、結合剤成分、および被包ガスのポリマー発泡剤は、発泡剤内の被包から少なくとも一部のガスを放出させる温度まで一定時間加熱される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)超砥粒粒子成分;および
b)熱可塑性ポリマー成分及び熱硬化性ポリマー成分を含む多孔質連続相
を含む超砥粒製品であって、前記超砥粒粒子成分が前記多孔質連続相中に分布し、かつ
前記連続相における熱可塑性ポリマー成分対熱硬化性ポリマー成分の比が、容積で50
:30から80:10の範囲であり、
前記超砥粒製品の前記超砥粒粒子成分対前記連続相の比が、容積で約4:96から約3
0:70の範囲である超砥粒製品。
【請求項2】
前記多孔質連続相が、実質的に開放多孔質連続相である、請求項1に記載の超砥粒製品
【請求項3】
前記超砥粒粒子成分が、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、ジルコニアおよび酸化アル
ミニウムからなる群から選択される少なくとも1種のメンバーを含む、請求項2に記載の
超砥粒製品。
【請求項4】
前記熱硬化性ポリマー成分が、フェノール−ホルムアルデヒド、ポリアミド、ポリイミ
ドおよびエポキシ変性フェノール−ホルムアルデヒドからなる群から選択される少なくと
も1種のメンバーを含む、請求項3に記載の超砥粒製品。
【請求項5】
前記熱硬化性ポリマー成分が、フェノール−ホルムアルデヒドを含む、請求項4に記載
の超砥粒製品。
【請求項6】
前記超砥粒粒子成分がダイヤモンドを含む、請求項3に記載の超砥粒製品。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリマー成分が、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデン、ポリスチレン
、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリメチルメタクリレートからなる群
から選択される少なくとも1種のメンバーを含む、請求項1に記載の超砥粒製品。
【請求項8】
前記熱可塑性ポリマー成分がポリアクリロニトリルを含む、請求項7に記載の超砥粒製
品。
【請求項9】
前記熱可塑性ポリマー成分がポリビニリデンを含む、請求項7に記載の超砥粒製品。
【請求項10】
前記ポリビニリデンがポリ塩化ビニリデンを含む、請求項9に記載の超砥粒製品。
【請求項11】
前記熱可塑性ポリマー成分が、ポリアクリロニトリルおよびポリ塩化ビニリデンを含む
、請求項7に記載の超砥粒製品。
【請求項12】
前記熱硬化性ポリマー成分がフェノール−ホルムアルデヒドを含む、請求項11に記載
の超砥粒製品。
【請求項13】
前記超砥粒粒子成分が、0.25μmから30μmの範囲の数平均粒径を有する、請求
項1に記載の超砥粒製品。
【請求項14】
前記超砥粒製品が、容積で70%から90%の範囲の気孔率を有する、請求項13に記
載の超砥粒製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2008年6月23日に出願された
米国仮特許出願第61/132,867号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
小型化の世界的傾向とともに、電子装置はますます小さくなっている。高出力レベルで
操作させることが必要な半導体装置について、ウェーハの薄化は、熱を消散する能力を改
善させる。最終厚さが減少するにつれて、ウェーハはそれ自体重さを支持しおよび裏面研
削処理により生じる応力に抵抗するために、次第に弱くなる。したがって、裏面研削によ
り生じる損傷を低減させおよびその品質を向上させることが重要である。
【0003】
チップ製作の間のシリコンウェーハの初期の厚さは8インチウェーハについて725〜
680μmである。より速く、より小さい電子装置を得るために、ウェーハは、個々のチ
ップにダイスカットする前に薄くすることが必要である。その研削処理は2工程からなる
。最初に、粗砥粒ホイールは、その表面を約270〜280μmに研削するが、Siウェ
ーハの(裏側)表面である、Si表面の損傷を残す。次いで、精密砥粒ホイールは、表面
の損傷部分を平滑化し、ウェーハを250μmに研削する。100〜50μmまで薄い厚
さのウェーハは実質的に、一部のICチップ用途の標準要件である。これまで長期間、ス
マートカードにおいて最も一般的な厚さであった約180μmは、ますます薄いICチッ
プに置き換えられている。
【0004】
金属結合超砥粒ホイールによる裏面研削は一般に、汚染問題のために得策でない。ウェ
ーハの前面上の回路は、ホイールからの金属干渉を生じ得る。したがって、金属結合超砥
粒ホイールは、裏面研削用途に用いられるべきでない。他方、同一サイズの粒子を有する
ガラス結合超砥粒ホイールは、より多くの表面下損傷を引き起こし、仕上げシリコンウェ
ーハの表面粗さに悪影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況において、樹脂結合超砥粒製品が好ましい。この結合の追従的な性質の
ために、これは表面粗さを向上させ、表面下損傷をあまり引き起こさない。この結合は通
常、回路に干渉しない。したがって、樹脂結合製品は、裏面研削用途に最も適する。
【0006】
さらに、超砥粒工具は通常、研削中に生じた削りくずの蓄積を最小化し、および研削工
具が適用される加工物における一貫した表面温度を冷却しまたは少なくとも維持するため
に、開放多孔質構造を有しなければならない。十分な強度および磨耗特性を有し、十分な
気孔率も有する工具の製造は、特に、このような工具が置かれている用途の数がますます
増加することを考慮すると、持続的な課題である。
【0007】
したがって、上述の問題を低減しまたは無くする、硬い加工物を荒削りまたは仕上げす
ることができる研削工具に対する、ならびにこのような工具を製造する方法に対する必要
性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は一般に、超砥粒製品、超砥粒製品の超砥粒製品前駆体、および超砥粒製品を製
造する方法に関する。
【0009】
超砥粒製品は、超砥粒粒子成分、および熱可塑性ポリマー成分を含む多孔質連続相を含
み、ここで、超砥粒粒子成分は、多孔質連続相に分布している。超砥粒粒子成分は、例え
ば、ダイヤモンド、立方窒化ホウ素、ジルコニアまたは酸化アルミニウムとし得る。連続
相は、熱硬化性樹脂成分、例えば、フェノール−ホルムアルデヒドを含み得る。熱可塑性
ポリマー成分には、例えば、ポリアクリロニトリルおよびポリビニリデンが含まれ得る。
好ましくは、超砥粒製品は、開放多孔質構造を有し、それにより、この製品の気孔の実質
的部分は相互接続され、超砥粒製品の表面と流体連通している。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、超砥粒製品の超砥粒製品前駆体である。超砥粒製品
前駆体は、超砥粒粒子成分、結合剤成分およびポリマー発泡剤を含み、ここで、ポリマー
発泡剤はガスを被包する。超砥粒製品前駆体の好ましい超砥粒粒子成分はダイヤモンドで
ある。結合剤成分は、例えば、熱硬化性樹脂、例えば、フェノール−ホルムアルデヒドで
ある。ポリマー発泡剤は、離散粒子、少なくとも一部の、ガスを被包するシェルを有する
粒子を含む。好ましくは、熱可塑性ポリマーは、ポリアクリロニトリルとポリ塩化ビニリ
デンの組合せである。通常、被包ガスは、イソブタンおよびイソペンタンの少なくとも1
種である。
【0011】
さらに別の実施形態において、本発明は、超砥粒製品を形成する方法である。この方法
は、超砥粒、結合剤成分および被包ガスのポリマー発泡剤を混合するステップを含む。こ
の混合された超砥粒、結合剤成分およびポリマー発泡剤は、発泡剤内の被包から少なくと
も一部のガスを放出させる温度まで一定時間加熱される。通常、超砥粒はダイヤモンドで
あり、結合剤成分は、熱硬化性樹脂、例えば、フェノール−ホルムアルデヒドを含み、被
包ガスの発泡剤は、イソブタンおよびイソペンタンの少なくとも1種のガスを被包する少
なくともポリアクリロニトリルおよびポリ塩化ビニリデンの熱可塑性シェルを含む。
【0012】
本発明は多くの利点を有する。例えば、本発明の超砥粒製品は、ガラス質結合を用いる
超砥粒工具を超えることが多い(熱硬化性樹脂と熱可塑性ポリマーのブレンドの特徴であ
る)強度特性、例えば、硬度を示すが、ガラス質結合を用いる工具にしばしば関連する脆
性がない。さらに、本発明の超砥粒製品は、ダイヤモンドなどの超砥粒粒子成分を非常に
有効に結合することができ、より広い範囲の粒子成分の粒径を有する製作工具を可能にす
る。さらに、本発明の工具は、比較的高い気孔率を有し、それにより、工具をより有効に
冷却することが可能になる。結果として、加工物の研削はよりよく制御され、研削工具の
磨耗は著しく減少する。本発明の超砥粒工具は、他の種類の超砥粒工具、例えば、ガラス
質結合を用いる工具を製作するのに必要とされる方法の中で一般的であるよりも、より低
温で、より短いサイクルでおよびより環境的に優しい条件下で、比較的容易に製作され得
る。本発明上の超砥粒工具には、固定砥粒垂直(FAVS)スピンドルタイプ工具、ホイ
ール、ディスク、ホイールセグメント、砥石およびホーンが含まれる。1つの実施形態に
おいて、本発明の超砥粒製品は、固定砥粒垂直スピンドル(FAVS)−タイプの用途で
用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ビトリファイド超砥粒製品を用いる工具の一実施形態の断面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述は、同様の参照文字は異なる図を通して同じ部分を指す添付の図面で示されるよう
に、本発明の実施例の実施形態の以下のより特定の説明から明らかである。図面は必ずし
も縮尺率は一定ではなく、その代わりに本発明の実施形態を例示することが強調されてい
る。
【0015】
本発明は一般に、超砥粒工具を含む超研摩製品に関する。本発明はまた、超砥粒製品の
前駆体である超砥粒製品前駆体、および本発明の超砥粒製品を製造する方法に関する。
【0016】
本発明の超砥粒製品は、超砥粒粒子成分および多孔質連続相を含む。連続相は、超砥粒
粒子成分が分布している熱可塑性ポリマー成分を含む。一般に、この超砥粒工具は、例え
ば、被覆された砥粒工具とは対照的に、結合された砥粒工具である。
【0017】
「超砥粒」は、その用語が本明細書で用いられる場合、ヌープ硬度尺度で測定して、少
なくとも炭素窒化ホウ素(CBN)の硬度、すなわち、少なくとも4,700のK100
の硬度を有する砥粒を意味する。立方晶窒化ホウ素に加えて、超砥粒材料の他の例には、
天然および合成のダイヤモンド、ジルコニアならびに酸化アルミニウムが含まれる。好適
なダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素材料は、結晶または多結晶であり得る。好ましく
は、超砥粒材料はダイヤモンドである。
【0018】
超砥粒材料は、「グリット」としても知られている粒子の形態である。本発明の超砥粒
粒子成分は、商業的に得ることができるかまたは注文製造され得る。一般に、本発明で用
いられる超砥粒は、約0.25ミクロンから50ミクロンの範囲の平均粒径を有する。好
ましくは、粒径は、約0.5ミクロンから30ミクロンの範囲である。特定の実施形態に
おいて、グリットの平均粒径は、約0.5ミクロンから1ミクロン、約3ミクロンから約
6ミクロン、または約20ミクロンから25ミクロンの範囲であり得る。
【0019】
1つの実施形態において、超砥粒粒子成分は、超砥粒工具の容積で少なくとも35%の
量で存在する。別の実施形態において、超砥粒粒子成分は、超砥粒工具の容積で約3%か
ら約25%、より好ましくは超砥粒工具の容積で約6%から約20%の範囲の量で存在す
る。さらに別の実施形態において、超砥粒製品の超砥粒粒子成分対連続相の比は、容積で
約4:96から約30:70の範囲、またはより好ましくは容積で約15:85から約2
2:78の範囲である。
【0020】
多孔性は、研削において重要な役割を果たす。多孔性は、加工物と複合ミクロ構造の間
の接触面積を調節する。多孔性はミクロ構造の周りの冷却剤の動きを容易にして、研削表
面の温度をできるだけ低く保つ。複数の異なるサイズの気孔発生剤を用いることによって
生成した異なる構造を理解することが重要である。
【0021】
磨耗抵抗性ミクロ構造は、比較的大きな、例えば、120〜420μmの直径の物理的
発泡剤を用いることによって生成する。この構造は一般に、大きな気孔は、より少ないが
より強い架橋を生成するので、良好な寿命をもたらす。この構造は、研削中により多くの
電力を消費するが、チップの良好な除去およびより良好な冷却材の流れを可能にする。他
方、自生発刃構造の多くは、10〜80μmのサイズの間の物理的発泡剤を用いることに
よって生成する。この構造は、研削中により速く磨耗するが、あまり電力を消費しない、
より多数のより小さい架橋を生成する。より小さい気孔発生剤とより大きい気孔発生剤の
良好なバランスが、良好な寿命をもつミクロ構造を生成するが、研削中に比較的少ない電
力しか消費しない。
【0022】
超研砥粒製品の連続相は、熱硬化性ポリマー成分を含む。本発明の超砥粒製品の連続相
における使用に好適な熱硬化性ポリマー成分の例には、ポリフェノール−ホルムアルデヒ
ドポリアミド、ポリイミドおよびエポキシ変性フェノールホルムアルデヒドが含まれる。
好ましい実施形態において、熱硬化性ポリマー成分はポリフェノール−ホルムアルデヒド
である。
【0023】
本発明の超砥粒製品の連続は、熱可塑性ポリマー成分も含む。好適な熱可塑性ポリマー
成分の例には、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデン、ポリスチレンおよびポリメチル
メタクリレート(PMMA)からなる群から選択される少なくとも1種のメンバーが含ま
れる。好ましい熱可塑性ポリマー成分の例には、ポリアクリロニトリルおよびポリ塩化ビ
ニリデンが含まれる。特に好ましい実施形態において、超砥粒製品の連続相は、ポリアク
リロニトリルとポリ塩化ビニリデンの組合せを含む。1つの実施形態において、ポリアク
リロニトリルとポリ塩化ビニリデンの重量比は、約60:40から約98:2の範囲であ
る。特に好ましい実施形態において、ポリアクリロニトリルとポリ塩化ビニリデンの比は
、約50:50から90:10の比である。
【0024】
連続相における熱可塑性ポリマー成分と熱硬化性ポリマー成分の間の容積比は通常、約
80:15から約80:10の範囲である。特に好ましい実施形態において、連続相の熱
可塑性ポリマー成分と熱硬化性ポリマー成分の容積比は、約70:25から約70:20
の範囲である。別の好ましい実施形態において、連続相中の熱可塑性ポリマー対熱硬化性
ポリマーの容積比は、約50:30から約50:40の範囲である。
【0025】
超砥粒製品の他の成分は、例えば、約0.5容積パーセントから約3容積パーセントの
範囲でシリカ(シリカゲル)のような無機フィラーを含み得る。
【0026】
別の実施形態において、本発明は、超砥粒製品の超砥粒製品前駆体である。超砥粒製品
前駆体は、超砥粒粒子成分、結合剤成分および被包ガスのポリマー発泡剤を含む。超砥粒
製品前駆体の超砥粒粒子成分は、超砥粒製品に関して上に記載されたとおりである。結合
剤成分は通常、超砥粒製品前駆体の超砥粒製品への変換の間に重合する熱硬化性樹脂成分
である。好適な結合剤成分の例には、当該技術分野で知られているもの、例えば、フェノ
ール−ホルムアルデヒド、ポリアミド、ポリイミド、およびエポキシ変性フェノール−ホ
ルムアルデヒドが含まれる。
【0027】
1つの実施形態において、発泡剤は離散粒子を含み、少なくとも一部の粒子は、ガスを
被包するシェルを有する。一般に、少なくとも一部の粒子は、熱可塑性ポリマーを含む。
好適な熱可塑性ポリマーの例には、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデン(ポリ塩化ビ
ニリデンなど)、ポリスチレン、ナイロン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)およ
びメチルメタクリレートの他のポリマーが含まれる。1つの実施形態において、離散粒子
は、それぞれの種類が熱可塑性シェルの異なる組成物を含む少なくとも2つの別個の種類
からなる。例えば、1つの実施形態において、少なくとも1種の離散粒子は、ポリアクリ
ロニトリルを実質的に含む熱可塑性シェルを有する。別の実施形態において、少なくとも
1種の離散粒子は、ポリ塩化ビニリデンを実質的に含む熱可塑性シェルを有する。さらに
別の実施形態において、発泡剤の少なくとも1種の離散粒子は、ポリアクリロニトリルを
実質的に含む熱可塑性シェルを有し、発泡剤の別の種類の離散粒子は、ポリ塩化ビニリデ
ンを実質的に含む熱可塑性シェルを有する。
【0028】
通常、イソブタンおよびイソペンタンの少なくとも1種を被包し、ポリアクリロニトリ
ル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ナイロンおよびポリメチルメタクリレート(P
MMA)、ならびにメチルメタクリレート(MMA)の他のポリマーの少なくとも1種を
含むものなどの、ガスを被包するポリマー球体は、「膨張形態」および「非膨張形態」で
市販されている。球体の「膨張」バージョンは一般に、球体のポリマーシェルを破裂させ
、被包ガスを放出させる温度に加熱する間に著しく膨張しない。他方、「非膨張」バージ
ョンは、ポリマーシェルを破裂させる温度に加熱する間にまさに膨張する。いずれの種類
のポリマー球体も本発明における使用に適するが、膨張ポリマー球体が好ましい。特に断
らない限り、本明細書におけるポリマー球体のサイズへの言及は、膨張球体に関する。
【0029】
しばしば、市販されている好適なポリマー球体は、炭酸カルシウム(CaCO)また
は二酸化ケイ素(SiO)で処理されている。好適な市販のポリマー球体の例には、E
xpanded DE40、DE80および950 DET120(すべてAkzo No
bel製)が含まれる。他の例には、Dualite E135−040D、E130−
095DおよびE030(すべてHenkel製)が含まれる。
【0030】
別の実施形態において、超砥粒製品前駆体の発泡剤は、ポリアクリロニトリルとポリ塩
化ビニリデンのコポリマーを含むシェルの離散粒子を含む。ポリアクリロニトリル対ポリ
塩化ビニリデンの重量比は、例えば、約40:60から約99:1の範囲であり得る。発
泡剤の平均粒径は、例えば、約10ミクロンから約420ミクロンの範囲であり得る。具
体的な実施形態において、発泡剤の平均粒径は、約20ミクロンから50ミクロンの範囲
であり得る。この実施形態において、ポリアクリロニトリル対ポリ塩化ビニリデンの重量
比は、例えば、約40:60から60:40の間の範囲であり得る。好ましくは、この実
施形態におけるポリアクリロニトリル対ポリ塩化ビニリデンの重量比は、約50:50で
ある。
【0031】
別の実施形態において、発泡剤の平均粒径は、85ミクロンから約105ミクロンの範
囲である。この実施形態において、ポリアクリロニトリルとポリ塩化ビニリデンの重量比
は好ましくは、約60:40と約80:20の間の範囲であり、特に好ましい比は、約7
0:30である。
【0032】
さらに別の実施形態において、発泡剤の平均粒径は、約125ミクロンより大きい。こ
の実施形態において、ポリアクリロニトリル対ポリ塩化ビニリデンの重量比は、好ましく
は約92:8から約93:2の範囲であり、特に好ましい比は、約95:5である。
【0033】
離散粒子の被包ガスの例には、イソブタンおよびイソペンタンからなる群から選択され
る少なくとも1種のメンバーが含まれる。好適なガスがイソブタンおよびイソペンタンの
少なくとも1種を含む実施形態において、離散粒子の大きさは、好ましくは約8ミクロン
から約420ミクロンの範囲であり、ガスを被包する離散粒子の壁の厚さは、好ましくは
約0.01ミクロンから約0.08ミクロンの範囲である。
【0034】
超砥粒製品前駆体における発泡剤対結合剤成分の離散物体の比は一般に、容積で約2:
1から約30:35の範囲である。具体的な実施形態において、容積比は80:15であ
り、別の実施形態において、容積比は70:25である。
【0035】
本発明の超砥粒製品を形成する方法は、超砥粒、結合剤成分および被包ガスのポリマー
発泡剤を混合するステップを含む。
【0036】
混合された超砥粒、結合剤成分およびポリマー発泡剤は、少なくとも実質的な一部の被
包ガスを砥粒製品前駆体から放出させる温度まで一定時間加熱され、それにより、形成さ
れた超砥粒製品は、実質的に開放多孔性である多孔性を有する。本明細書で定義される場
合、「開放多孔性」は、気孔の少なくとも一部、または実質的な一部が互いにおよび超砥
粒製品の表面と流体連通であることを意味する。1つの実施形態において、超砥粒製品の
容積の約70%から約90%が気孔で占められる場合、その製品は本質的にすべて開放多
孔性である。超砥粒製品が約40%から約70%の範囲の気孔率を有する場合、気孔の一
部は閉じており、その残りは開いている。さらに別の実施形態において、気孔率が約20
%から約40%の範囲である場合、気孔の本質的にすべては閉じている。
【0037】
1つの実施形態において、超砥粒製品前駆体の形態において混合された超砥粒、結合剤
成分およびポリマー発泡剤は加熱され、その間に超砥粒製品前駆体は正のゲージ圧下にあ
る。通常、本発明の超砥粒製品前駆体に関して上に記載されたとおりに、ポリマー発泡剤
は熱可塑性ポリマーを含み、結合剤成分は熱硬化性ポリマーを含む。1つの実施形態にお
いて、超砥粒製品前駆体は、少なくとも2トンの圧力下で少なくとも約100℃の第1の
温度に予備加熱される。次いで、超砥粒製品前駆体は、第1の温度から少なくとも約18
0℃の第2のソーク温度に加熱される。次いで、超砥粒製品前駆体は、そのソーク温度で
少なくとも約15分間維持され、それにより、超砥粒粒子を形成する。通常、超砥粒製品
前駆体は、当該技術分野で知られているような型内にある間、第1の温度、第2のソーク
温度に加熱され、そのソーク温度で維持される。
【0038】
超砥粒製品前駆体を、ソーク温度で超砥粒製品を形成するのに十分な時間維持した後、
超砥粒製品は、ソーク温度から約100℃から約170℃の範囲の第1の低下温度に約4
5分から約10分の範囲の時間をかけて冷却される。次いで、超砥粒製品は通常、第1の
低下温度から、約30℃から約100℃の範囲の第2の低下温度に約10分から約30分
の範囲の時間をかけて冷却される。
【0039】
通常、超砥粒製品は、空気冷却によって第1の低下温度に冷却され、次いで、液体冷却
によって第1の低下温度から第2の低下温度に冷却される。次いで、超砥粒物品は、第2
の低下温度に冷却された後に型から取り出される。
【0040】
通常、本発明のビトリファイド超砥粒製品は、研削工具の少なくとも一構成要素として
構成される。好適な研削工具の例はホイールである。
【0041】
1つの好ましい実施形態において、ビトリファイド超砥粒製品は、固定砥粒垂直スピン
ドル(FAVS)である。FAVSの例は、図で示される。図で示されるように、工具1
0は、軸14の周りにベース12を有するホイールとして構成される。ホイールの隆起し
た周辺部16は、ベース12の周辺部の周りの砥粒セグメント18を支持する。砥粒セグ
メントは、本発明のビトリファイド超砥粒製品の一実施形態である。通常、ベースは約6
インチから約12インチの範囲の直径を有し、砥粒セグメントの高さは約2ミリメートル
(mm)から約10ミリメートルの範囲であり、約2ミリメートルから約4.5ミリメー
トルの幅を有する。図を参照して説明されるように、ホイールは、それらの軸の周りの回
転よるウェーハ研削に適する。軸の回転に対して反時計周りの方向で、ウェーハは工具に
よって研削される。図に関して一般に説明されるように、研削ホイールを用いてウェーハ
を研削する方法は、当該技術分野で知られている。
【0042】
本発明は、限定的であることが意図されない以下の実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0043】
樹脂複合ミクロ構造を、樹脂、超砥粒グリットおよび気孔発生剤、すなわち「発泡剤」
を用いて生成させた。ミクロ構造に用いた樹脂は、フェノール−ホルムアルデヒドであっ
た。物理的発泡剤は、HenkelのDualite由来のPANとPVDCとのコポリ
マー球体であった。粒子はダイヤモンド(3〜6ミクロン)であった。
【0044】
複合ミクロ構造を製造するために、材料を秤量し、ステンレススチールボウル中で撹拌
することによって混合し、次いで、165メッシュスクリーンを通して3回ふるいにかけ
た(米国標準サイズ)。次いで、これを適当なデザインのスチール型に入れて、以下の寸
法を有する試験試料を生成させた:5.020インチ×1.25インチ×0.300イン
チ。各混合物をスプーンで型に充填し、レベリングパドルを用いて型中で平らにした。次
いで、完全に詰めた型パッケージを電気プレスに運搬した。型パッケージをプレス内に置
いたら、2トンの圧力をかけ、確実に上部プレートが型パッケージ内に均等に乗り入れる
ようにした。2トンの圧力をかけた後に、温度を100℃に上昇させた。型パッケージに
かけた圧力を締め固めた。型パッケージの温度を180℃に上昇させ、次いで、15分間
ソークした。ソークサイクルが終了したら、プレスを空気冷却で100℃に、その後水冷
却で室温に冷やした。型パッケージをプレスから取り出し、「ストリッピング」アーバプ
レス設備に運搬した。型パッケージ(上部プレートおよび底部プレートに加えてそのバン
ド)をストリッピングアーバ、ストリップバンド上に置いた。型のプレートおよび試料を
取り出し、すぐに使用できた。形成されたディスクを180℃で10時間ポストベークし
た。
【0045】
ホイールを3つの異なる仕様に作製した。仕様は以下のとおりである:
【0046】
【表1】
【0047】
次いで、それらを、Strasbaugh裏面研削7AF機械を用いて試験した。ホイ
ールは、超精密ドレッシングパッドを用いて表面をドレッシングした。このホイールを用
いて、8インチシリコンウェーハを研削した。シリコンウェーハを粗ホイール、その後に
精密ホイールで粗研削した。
【0048】
ホイール性能を、市場の現行SGホイールの研削力および寿命と比較した。以下のグラ
フは研削データを示す。
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
上のグラフは、同じ供給速度でのすべてのホイールについての研削力を比較する。供給
速度は0.8、0.5、0.2ミクロン/秒であった。上のグラフからわかるように、新
規な仕様すべては、より低い研削力を示す。
【0052】
【表4】
【0053】
上のグラフはすべてのホイールについて磨耗データを比較する。磨耗/ウェーハは、等
式における「m」値によって計算することができる。(y=mx+c)(式中、「m」は
傾きである)。
【0054】
【表5】
【0055】
物理的発泡剤による仕様すべてについての「m」値は、「先行技術」のホイールより低
かった。物理的発泡剤によるホイールを用いることによって、本発明のホイールは、より
高い寿命を示し、より低い力で研削するであろうことが予測された。
【0056】
均等物
本発明を、特に、その好ましい実施形態に関して示し説明してきたが、形態および詳細
における様々な変化が、添付の特許請求の範囲で包含される本発明の範囲から逸脱するこ
となくそこでなされ得ることが当業者によって理解される。
図1
【手続補正書】
【提出日】2016年8月4日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)超砥粒粒子成分;および
b)熱可塑性ポリマー成分及び熱硬化性ポリマー成分を含む多孔質の連続相を含む超砥粒製品であって、
前記超砥粒製品の前記超砥粒粒子成分対前記連続相の比が、容積で約4:96から約30:70の範囲であり、
前記超砥粒製品は、開放気孔の多孔性を有し、
前記超砥粒粒子成分は、前記多孔質の連続相中に分布しており、
前記超砥粒粒子成分は、0.25μmから6μmの範囲の数平均粒径を有する、超砥粒製品。
【請求項2】
前記超砥粒粒子成分が、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、ジルコニアおよび酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種のメンバーを含む、請求項に記載の超砥粒製品。
【請求項3】
前記熱硬化性ポリマー成分が、フェノール−ホルムアルデヒド、ポリアミド、ポリイミドおよびエポキシ変性フェノール−ホルムアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1種のメンバーを含む、請求項に記載の超砥粒製品。
【請求項4】
前記熱硬化性ポリマー成分が、フェノール−ホルムアルデヒドを含む、請求項に記載の超砥粒製品。
【請求項5】
前記超砥粒粒子成分がダイヤモンドを含む、請求項に記載の超砥粒製品。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリマー成分が、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデン、ポリスチレン、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリメチルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のメンバーを含む、請求項1に記載の超砥粒製品。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリマー成分がポリアクリロニトリルを含む、請求項に記載の超砥粒製品。
【請求項8】
前記熱可塑性ポリマー成分がポリビニリデンを含む、請求項に記載の超砥粒製品。
【請求項9】
前記ポリビニリデンがポリ塩化ビニリデンを含む、請求項に記載の超砥粒製品。
【請求項10】
前記熱可塑性ポリマー成分が、ポリアクリロニトリルおよびポリ塩化ビニリデンを含む、請求項に記載の超砥粒製品。
【請求項11】
前記熱硬化性ポリマー成分がフェノール−ホルムアルデヒドを含む、請求項10に記載の超砥粒製品。
【請求項12】
前記超砥粒製品が、容積で約70%から約90%の範囲の気孔率を有する、請求項に記載の超砥粒製品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
1つの実施形態において、砥粒粒子成分は、超砥粒工具の容積で約3%から約25%、より好ましくは超砥粒工具の容積で約6%から約20%の範囲の量で存在する。さらに別の実施形態において、超砥粒製品の超砥粒粒子成分対連続相の比は、容積で約4:96から約30:70の範囲、またはより好ましくは容積で約15:85から約22:78の範囲である。